ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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お待たせしました!後編になります。
ほぼほぼオリジナルですね。



第9話「苦業」

ーーーー私の中で何かが暴れている。

 

「うっ、うぅ・・・うぅぅぅ!!」

 

「のどか・・・のどかぁ・・・!!」

 

ーーーー私の中から耐え難いほどの苦痛が襲ってくる。

 

「うぅ・・・うっ! う、うぅ・・・」

 

「のどか・・・しっかりするラビ!!」

 

ーーーー苦しい・・・息ができない・・・体から力が抜けていく・・・

 

「う・・・うぅ!! あ、あ・・・」

 

「のどか!! のどかぁ!!」

 

ーーーーでも、ラビリンは無事みたい・・・よかった・・・

 

「うぅ・・・うぅぅ!! うぅぅ・・・!」

 

「う・・・あ・・・あぁ・・・」

 

ーーーー体がだんだんと動かなくなっていくのを感じる。気のせいか、心臓の鼓動が早くなっている。

 

ーーーー私・・・このまま、死んじゃうの、かな・・・?

 

「う・・・うぅ・・・うっ、くっ!!」

 

ーーーーちゆちゃん、ひなたちゃん・・・。

 

「うぅぅ・・・くっ、うぅ・・・!!」

 

ーーーーペギタン、ニャトラン・・・。

 

「うぅ・・・ううぅ・・・くっ・・・!!」

 

ーーーーラビリン・・・ラテ・・・。

 

ーーーーお父さん・・・お母さん・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふん、ふ〜ん♪」

 

クルシーナは足をぶらぶらとさせながら、まだ来ないプリキュアの二人を待っていた。

 

「プリキュアの二人、まだ来ないウツね」

 

「別にいいんじゃない? 待てば待つほど、アタシたちが有利になっていくだけだし。それに・・・」

 

クルシーナはそう言いながら、自分の後ろで今だに苦しむのどかの姿を見やる。

 

「うっ・・・くっうぅ・・・うぅぅぅ!!」

 

喉を押さえながら身をよじらせているが、よくなる気配は一向にない。

 

「のどか・・・負けないでラビ・・・」

 

ラビリンものどかに寄り添って元気づけようとしている。その声が彼女に聞こえてるのかどうかはまた別の話だが・・・。

 

「フフフ・・・この小娘の苦しむ顔が見れるのは最高だもんね」

 

クルシーナは微笑みながら、のどかにそっと手を伸ばして頭を撫でる。

 

可愛い・・・壊してやりたい・・・それとも、このまま、ビョーゲンズの一員にしちゃいたいくらい。

 

「うぅ・・・ふっ・・・くぅぅ!!」

 

「大丈夫・・・お仲間さえできれば、苦しくないでしょ?」

 

クルシーナはのどかの前髪をかきあげる。額には脂汗が滲んでいる。相当苦しい様子だ。

 

「のどかに触るなラビ!! あぁ!」

 

ラビリンはのどかに触れようとするクルシーナに抗議をするも、右手で払うように弾き飛ばした。

 

「性懲りも無く・・・」

 

ラビリンに呆れたように言うと、クルシーナは再びのどかの表情を見やる。

 

「全く、小娘のくせにビョーゲンズに楯突いちゃってさ」

 

「うぅ・・・あぁ・・・あっ、あ・・・」

 

手を額から頬の辺りへと動かし、わしわしするかのように指先を動かす。のどかは苦しむばかりで何も反応を示すことなく、すっかり彼女のなすがままだ。

 

「アタシがもっと・・・愉快になるようにしてあげる・・・」

 

そして再び手を前髪へと元に戻すとかきあげ、彼女の額に顔を近づけ、チュッと優しく口づけをした。

 

「フフ・・・」

 

クルシーナは今一番、ウツバットに見せたこともないような優しげで、ちょっと危うい笑みを浮かべた。

 

バァン!!!!!

 

「のどか!!」

 

「のどかっち!!」

 

「「ラビリン!!」」

 

扉が開け放たれ、フォンテーヌとスパークルが現れた。クルシーナはのどかを弄る手を止め、体から手をゆっくりと離すと、長テーブルの端から立ち上がり、声がした方へと向き直る。

 

「遅かったじゃない。このまま来ないかと思ったわよ」

 

「クルシーナ!!」

 

クルシーナはいつもの口調に戻して、二人の叫びに応える。

 

「!? のどか!?」

 

「のどかっち!?」

 

「う・・・あ・・・あぁ・・・」

 

フォンテーヌとスパークルが、ステージの真ん中に移動したクルシーナがいた場所を見ると、のどかが長テーブルの上で横たわっているのが見えた。しかし、寝ているわけではなく、表情はいまだ苦痛に歪み、手は喉へと添えられている様子だ。

 

「ラビリン!?」

 

「お、おい! 大丈夫かよ!?」

 

「あ・・・み、みんな・・・」

 

長テーブルの近くの床にボロボロになっているラビリンが転がっているのが見えた。ラビリンは観客席側に立っている2人と2匹の姿を見て、涙をポロポロとこぼす。

 

ーーーーやっと仲間が、来てくれた・・・!!

 

フォンテーヌはクルシーナのことを睨む。

 

「二人に何をしたの!?」

 

「そうだよ!しかものどかっちなんか、すごい苦しそうじゃん!!」

 

スパークルも酷いと言いたげな感情で叫ぶ。

 

「なーに、ちょっとメガビョーゲンの元にアタシの細胞を注ぎ込んでやっただけよ」

 

「メガビョーゲンの、元・・・?」

 

「細胞・・・?」

 

「ええ、プリキュアの小娘を病気に犯すとどうなるのかなと思ってね。で、案の定、何か抵抗してるみたいだけど、こんな苦しそうな顔が見れたってワケ。結構、感服なんだけど♪」

 

笑いながら言うクルシーナにスパークルは唖然としていたが、フォンテーヌは怒りの表情を滲ませていく。

 

ーーーーさっきのシンドイーネもそうだが、ビョーゲンズは他人のことをなんとも思っていないのか・・・?

 

「かわいそうに、プリキュアも変身できなきゃただの小娘だもんねぇ」

 

クルシーナはやれやれと首を振りながら言った。

 

「そこの弱虫ウサギはうるさいから、おとなしくさせてやっただけウツ」

 

クルシーナの帽子からコウモリのマスコットのような姿に戻ったウツバットが言う。

 

「モリリン!?」

 

「お前もビョーゲンズにかよ!!」

 

はいはい、二回目・・・といわんばかりにウツバットはため息を吐く。

 

「地球なんか癒す価値ないウツ。勝手な人間がいるだけで腐っていくだけウツ」

 

ウツバットは無表情でそう言い放った。

 

「大丈夫。あなたたちもすぐにあの娘のようにしてあげるから。そうすれば寂しくないでしょ」

 

気遣っているような言動ではなく、相手を嘲笑するかのような言動。フォンテーヌはステッキを持っている手を強く握りしめた。

 

「許せないッ・・・人を苦しめて楽しんでるなんて・・・!」

 

「そうだよ!病気になんかなったら楽しくないし!」

 

クルシーナはそれを聞くと分かりやすいようにため息を吐く。

 

「あっそ、一度苦しい思いをしないとわかんないわよねぇ。メガビョーゲン、プリキュアを叩きのめしな」

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンは2本の触手を伸ばして叩きつける。フォンテーヌとスパークルは飛び上がってメガビョーゲンに蹴りを入れる。

 

「メ、メガ、」

 

蹴りで体を押されたメガビョーゲンは体がよろける。

 

「「キュアスキャン!」」

 

ニャトランの目が光り、メガビョーゲンの中にいる、苦しんでいる様子のエレメントさんを見つける。

 

「花のエレメントさんニャ!!」

 

そのエレメントさんはどうやら腹の右上部分にいる模様。

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンは体勢をすぐに立て直すと、触手をすぐに戻してフォンテーヌを薙ぎ払う。

 

「きゃあぁぁ!!」

 

触手をぶつけられたフォンテーヌは赤く染まったプールへと落下する。

 

「フォンテーヌ!うわあぁぁ!!」

 

スパークルも触手で薙ぎ払われ、観客席へと落下する。

 

バシャアァァァン!!!!

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

プールから飛び出したフォンテーヌがステッキから水の光線を放つ。

 

「メガー!」

 

メガビョーゲンは触手を片方のばすと、光線を受け止めて触手の中へと吸収していく。

 

「そ、そんな!?」

 

「光線を吸収してるペエ!?」

 

「ビョーゲン!!」

 

さらに頭部から水の光線を吸収して変換した赤い霧を撒き散らす。

 

「う、ケホケホッ!! きゃあぁぁぁ!!」

 

フォンテーヌは赤い霧を浴びて咳き込み、ひるんでしまったところを触手で薙ぎ払われ吹き飛ばされる。

 

「ぷにシールド!!」

 

スパークルがステッキから肉球型のシールドを展開し、メガビョーゲンの元へと飛び出す。

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンは2本の触手を伸ばして、合掌するかのようにスパークルへと打ち合わせる。

 

「くっ・・・!!」

 

スパークルはそのまま押しのけようとするも、メガビョーゲンの触手はビクともしない。

 

やがて、肉球型のシールドにもヒビが入り始めた。

 

「う、嘘・・・!?」

 

「パワーが違いすぎるニャ・・・!!」

 

「メガー!!」

 

唖然とするしかないスパークルとニャトランが展開するシールドは徐々にヒビが増えていき・・・。

 

パリンッ!!!!

 

「あ、きゃあぁぁぁぁ!!!」

 

シールドは粉々に破壊されてしまい、さらにスパークルはメガビョーゲンが2つの触手を合わせて振るった攻撃に打ち据えられ、プールへと吹き飛ばされた。

 

「スパークル!!」

 

フォンテーヌは立ち上がるも、メガビョーゲンが触手からプールの水を吸収し始める。

 

「メガー!!」

 

そして、頭部から赤い霧を再び吐き出す。

 

「うっ・・・くっ・・・何、ゲホゲホッ!!」

 

「それは病気にされた水の霧ペエ! 吸っちゃダメペエ!!」

 

再び赤い霧を浴びせられたフォンテーヌは袖で鼻と口を押さえるも、少し吸ってしまい咳き込んでしまう。

 

「メガ、ビョーゲン!!」

 

「!!??」

 

そこへメガビョーゲンが2本の触手をフォンテーヌへと向けて赤い玉を何発も発射し、爆発音が響いた。

 

フォンテーヌは飛び退いてかわすが・・・。

 

「メガビョーゲン!!」

 

「ああぁぁ!!」

 

メガビョーゲンは2本の触手を床に叩きつけて飛ぶと、飛び蹴りのごとく4本の足を食らわせた。

 

「つくづくバカだよね。あがいたって無駄なことぐらいあるってのにさ」

 

その様子を見ながらクルシーナは嘲笑していた。メガビョーゲンは二人の攻撃をものともしていないどころか、完全に圧倒している。勝つのも時間の問題だろうと思っていた。

 

「うぅ・・・くぅぅ!! うぅぅ!!」

 

「のどか、頑張るラビ!! 今、二人がなんとかしてくれているラビ!!」

 

苦しんでいるのどかをラビリンが励ましている。でも、のどかが頑張っても容体が変わる気配がない。

 

ふと振り向いたクルシーナは二人に近づいていく。

 

「アンタ、その小娘に言葉をかけてるけどさあ、そもそもアンタのせいでそうなったんじゃない」

 

「ラビ・・・!?」

 

「アンタが間抜けにもアタシたちに捕まったせいで、その小娘はプリキュアに変身できなくなった。アンタがアタシたちに利用されるから、その小娘はアタシの手で苦しむことになった。あの二人がボロボロになっているのだってアンタのせいじゃない」

 

「ラビリンのせい・・・?」

 

「見捨てた仲間なんか追いかけてるからウツ」

 

ラビリンの励ましを馬鹿にするクルシーナとウツバット。

 

「まあ、メガビョーゲンに楯突いてるあの二人も、もうすぐ苦しむ羽目になるけどね」

 

「う、嘘ラビ!! プリキュアになって、仲間になった二人が負けるわけーーーー」

 

ドカーーーン!!!

 

破壊音が響くと、そこにはボロボロになって倒れて伏しているフォンテーヌとスパークルの姿があった。

 

「メガビョーゲン!!」

 

「「あぁぁ!!」」

 

更にその上からメガビョーゲンがのしかかる。

 

「メガー!!」

 

頭部の口から赤い霧を二人に向かって吐き出した。

 

「うっ・・・ゲホゲホゲホッ!!」

 

「ちょっ、何これ、苦し・・・ゲホゲホッ!!」

 

二人は吸わないように口を抑えるも、少し吸ってしまったのか咳き込みんでしまう。

 

その様子を見ていたクルシーナは「フフフ」と不敵な笑みを浮かべる。

 

「あーあ、かわいそうに・・・アンタのせいで苦しい目にあってさ、この小娘もあの二人も」

 

「そんな!ああ・・・あぁ・・・」

 

ラビリンは二人が倒されている姿を見て絶望の表情をする。そして、今だに喉を押さえているのどかの姿を見やる。

 

「ラビリンが・・・ラビリンが、捕まったりしなかったら・・・こんなことには・・・」

 

クルシーナに現実を突きつけられ、涙目のラビリンはのどかのそばに突っ伏す。

 

ーーー私があの時、勝手な行動をしなければ、人質になんかにされなければ、こんなことにはならなかったのかラビ・・・?

 

「・・・ラビ、リン・・・」

 

「!・・・のどか!」

 

すると、のどかが弱々しい声でラビリンの名前を呼ぶ。声を出すのもやっとで、顔は苦痛に歪んでいて、片目だけ開けてラビリンの姿を見ていた。

 

「ラビ、リン・・・のせい、じゃ・・・ない・・・よ」

 

「何を言ってるラビ! 私がのどかを放ったりしなければ、こんなことにはならなかったラビ!」

 

ラビリンは瞳をうるうると潤ませる。

 

「ちが、う・・・よ・・・」

 

「え・・・?」

 

「わた・・・し、が・・・ラビ、リン、を・・・すく・・・い、たいと・・・おも、ったから・・・だれ、かの・・・た、め、に・・・な、りたい、から・・・これは・・・わ、た・・・し、の・・・意志・・・だよ・・・もう、だ、れ、も・・・つ、ら、い・・・おも、い・・・を、させたく・・・な、い、から・・・」

 

「でも、それで自分が苦しい思いをしたら意味ないラビ!!」

 

涙をポロポロとこぼすラビリン。苦しみながら声を発するのどかを正直見ていられなかった。まるで、ラテ様の姿と重なるようで・・・。

 

「だい・・・じょう、ぶ・・・だよ・・・」

 

のどかは表情は苦痛ながらも、ラビリンに笑顔を見せる。

 

「きこ・・・えて、た・・・よ・・・ラビ、リン、の・・・声・・・がん・・・ば・・・って、って・・・それ、で、まだ・・・私・・・がん、ば・・・れる・・・よ・・・」

 

のどかはクルシーナに病気を体内に移され、苦痛に襲われながらも、あることを思い出していた。

 

ーーーーラテも、こんなに苦しい思いをしてたんだね。

 

メガビョーゲンが出現すると、体調が悪くなるラテ。その顔色は悪くなっていて、辛そうな顔をしている。病気でお外にも出られなくなった自分と重なったのだ。最初に出会って苦しそうなラテを見たとき、救いたいと思っていた。

 

でも、ラテがどんな思いをしているかまではわからなかった。病気に蝕まれそうになっている、今の私ならラテの気持ちがわかる気がする。

 

病気で苦しみが襲ったとき、もうダメだと思った・・・。私は死ぬんだと思った・・・。でも、意識が混濁する中で、ラビリンが寄り添って励ましている声が聞こえた。そんな声が聞こえてから、私は負けるわけにはいかないと思ったのだ。

 

「だか、ら・・・じぶ、ん、を・・・せめ、な・・・い・・・で・・・」

 

のどかは途切れそうな声で言う。その表情は病気で両親が励ましてくれたときと、同じような笑みだった。

 

「のどかぁ・・・」

 

ラビリンは不安そうな顔だったが、のどかの言葉に少し救われた気がした。

 

「のどか・・・」

 

「のどかっち・・・」

 

のどかの声を聞いていたプリキュアの二人。

 

「バッカみたい・・・頑張ったって苦しいだけじゃない」

 

その様子を不機嫌そうな顔で見ていたクルシーナは毒づいた。

 

のどかの声に奮い立たされた二人は意を決すると、メガビョーゲンを押しのけようと両手に力を入れる。

 

「確かに、頑張ろうとすることには苦しいこともあるかもしれない、でも・・・!」

 

「のどかっちが頑張ってるから、あたしたちも頑張る・・・! 一緒に頑張れば、きっと辛いことだって乗り越えられると思う・・・! だから・・・!」

 

「メ、メガ!?」

 

「私たちも、のどかの頑張りに応える!!」

「私たちも、のどかっちの頑張りに応える!!」

 

二人はメガビョーゲンを押しのけると、よろけた隙をついて仰向けになりステッキを向ける。

 

「「はあぁぁぁぁ!!」」

 

「メガァー!!??」

 

フォンテーヌは青色のエネルギー、スパークルは黄色のエネルギーをメガビョーゲンの頭部に向かって放つ。直撃を受けたメガビョーゲンは大きく後ろに倒れる。

 

「っ・・・!!」

 

クルシーナは苛立ちから、両手に握りこぶしを作って震えていた。

 

「うっ・・・くっ・・・」

 

「のどか、頑張ってラビ・・・」

 

ラビリンはのどかの汗を拭きながら、彼女を励ます。

 

クルシーナは二人の様子を見ると更に顔をしかめる。

 

そして、彼女にまた一つの映像がフラッシュバックする。

 

ーーーー自分の額をタオルで拭い、私の顔を見て何かを問いかけてくる男性。

 

クルシーナは一瞬動きが止まったが、すぐに右手の拳を震わせる。

 

「メガビョーゲン、何してる!? そいつらを叩き潰せ!」

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンに怒鳴るとすぐに起き上がり、触手を二人に振り下ろそうとする。

 

「「ぷにシールド!!」」

 

フォンテーヌとスパークルのステッキから肉球型のシールドを展開し、メガビョーゲンの触手を防ぐ。

 

「うぅ・・・!!」

 

「くっ・・・!!」

 

メガビョーゲンの触手攻撃はやはり重く、押されそうになる二人。

 

「そのまま押し返すニャ!!」

 

「っ・・・のどかが頑張ってるんだから、しっかりしなきゃ・・・!」

 

「私たちがのどかっちを救いたい・・・いや、救わなきゃいけないんだよ・・・大切な友達を・・・!!」

 

フォンテーヌとスパークルは再度自分を奮い立たせると、触手を徐々に押し返していく。

 

「メ、メガ!?」

 

「「はあぁぁぁぁぁぁ、あぁ!!」」

 

二人は更に力を入れて押していき、最終的に弾き飛ばした。メガビョーゲンはそれによって少しよろける。

 

その隙を二人は見逃さなかった。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「メガ!? ビョーゲン・・・」

 

飛び上がって、メガビョーゲンが態勢を立て直そうとしているところを同時に蹴りを入れる。頭部に直撃を受けたメガビョーゲンは腹部の檻がまるで折れ曲がるかのように倒れこんだ。

 

「なんだと!?」

 

クルシーナは予想外の事態に驚いていた。

 

「今だペエ!!」

 

「一緒に浄化技を!!」

 

二人はお互いに顔を見合わせて頷くと、フォンテーヌは水の模様が描かれたヒーリングボトル、スパークルは菱形の模様が描かれたヒーリングボトルをステッキへとかざす。

 

「「エレメントチャージ!!」」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「「ヒーリングゲージ上昇!!」」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングストリーム!!」

 

「プリキュア!ヒーリングフラッシュ!!」

 

フォンテーヌとスパークルはそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、青色の光線と黄色の光線を同時に放つ。光線は螺旋状になって混ざっていった後、メガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、4本の手が花のエレメントさんを優しく包み込む。

 

水型状に、菱形状にメガビョーゲンを貫きながら、光線は花のエレメントさんを外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「「「お大事に」」」」

 

花のエレメントさんは、深海魚コーナーのサンゴの中へと戻り、蝕んだ箇所も元に戻っていく。

 

そして、苦痛の表情に歪んでいたのどかからも蠢めく何かが消え、苦しさから解放された彼女はそのまま意識を失った。

 

「ワゥ~ン!」

 

体調不良だった子犬ーーーラテも額のハートマークが黄色から水色に戻り、元気になった。

 

「あーあ、やられちゃったウツ・・・」

 

「ふん・・・まあ、いいわ。種は撒いといたし」

 

クルシーナは眠っているのどかに目をやると、不敵な笑みを浮かべて撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー大丈夫だよ、のどか。

 

ーーーーお母さんたちがついてるからね。

 

ベッドに横になる自分へ手を握り、微笑みながら励ましの言葉をかけてくれるお父さんとお母さん。

 

花寺のどかは幼い頃、病弱だった。それでも、小さい頃は元気に外で遊べる子供だった。あの頃はまだ、お母さんやお父さんにもいろんなところに連れて行ってもらって、楽しかった。

 

でも、小学生にあがってから、病気をするようになり、病院へ入院をすることになったのだ。

 

入院生活は体がだるくてまともに歩けず、まるで重しでも背負わされているかのよう。

 

でも、お医者さんや看護婦さんは優しかった。幼い私の話し相手にもなってくれたし、病弱な私に気を使ってくれた。それが生きたいという彼女の気持ちにしてくれたのだ。

 

そんなみんなが支えてくれる入院生活で、のどかの容態は急変した。急に呼吸が苦しくなり、体がふらつき倒れてしまったのだ。

 

彼女はベッドに寝かされ、口元に人工呼吸器を着用したまま、そして額には脂汗が滲んでいる。

 

意識は混濁していたが、自分の手に誰かが触れる感触を感じる。それが、お父さんとお母さんだとわかるとのどかは弱弱しく微笑んだ。

 

そんな彼女に二人とは違う、もう一つの手の感触があった。

 

「だいじょうぶ・・・?」

 

のどかに声をかけるのは幼い少女の声、この手は・・・。

 

そうか、心配で見に来てくれたんだ・・・。あなたも病気なのに・・・。

 

「のどかを心配してくれるの?」

 

「うん」

 

お母さんの声が聞こえると、少女の肯定する声が聞こえてくれる。

 

ちょっぴりぶっきらぼうだけど、実はとても優しい。暗くなっている私を励ましてくれた。

 

と、手の感触が自分の頭のあたりに感じる。どうやら頭を撫でられているようだ。それはお母さんではなく、小さな少女の手。

 

撫でられると安心した。自分の母親でもないのに、幸せな感じがした。

 

そう、あなたは、私のーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どか・・・のどかぁ!!」

 

誰かの声が聞こえてくる。誰かが私に呼びかけてくる。

 

ーーーー苦しさはもう、感じない。

 

「うぅ・・・」

 

黒くなっていた視界が徐々に晴れながらもぼやけ、はっきりとしてくる。段々と映像がクリアになっていき、ピントが合ってくる。

 

そして、視界にはっきりと映ったのは友人二人と、小さなパートナーの姿だった。

 

目がはっきりと見えるようになるのを確認できると、目の前にいた友人ーーーーちゆ、ひなたは歓喜の表情を浮かべ、小さなパートナーーーーーラビリンは目をうるうると潤ませる。

 

「のどかぁ!!」

 

ラビリンは目を覚ましたのどかに抱きつく。彼女の服を涙で濡らすことも構わず。

 

「よかった・・・よかったラビ・・・!!」

 

泣きじゃくるラビリンに、のどかは安堵の表情を見せながら抱き返す。

 

そのラビリン以上に泣いているものがいた。

 

「うわ〜ん! のどかっち〜! よかったよぉ〜!!」

 

感情表現が豊かな友人、ひなたがのどかの体に顔を埋めて突っ伏している。

 

「ちょっと二人とも! のどかが困ってるでしょ!」

 

ちゆはそういうも、二人はのどかから体を話そうとしない。そういうちゆも目を潤ませていたのは解りやすいことだったが。

 

「だってだって〜! のどかっちが本当に死んじゃうのかと思ったんだも〜ん!!」

 

「もう、のどかのこと、離したくないラビ・・・!」

 

そんな様子を安堵しつつも、若干呆れたように見ていたのはニャトランだった。

 

「おいおい、だからってそこまで泣くか〜?」

 

「でも、のどかが元気になって本当によかったペエ」

 

ペギタンはみんなと同様に安堵の表情を見せていた。

 

「もう、心配させないでよ! 大切な友達が苦しんでいるのを見てたら、私は・・・」

 

ちゆは若干声を詰まらせながら言う。彼女も本当は強かったのだ。友達があんなに苦しい目にあっていて、もし命を落としたりなんかしたら・・・考えただけでも耐えられそうになかった。

 

「そうラビ! 二度と、あんなこと、しないでほしいラビ!」

 

ラビリンも声を詰まらせながら言う。パートナーが苦しい思いをしているなんて、ラビリンもきっといつかは心が壊れてしまうだろう。

 

「うん・・・ごめんね、ラビリン・・・二人とも・・・ありがとう・・・」

 

のどかは声に張りが戻っていないが、自分を気遣ってくれる3人に笑顔で感謝を示した。

 

「ワン!ワン!」

 

「あ、ラテ!」

 

のどかが体を起こすと、そこへラテが元気に飛び込んでくる。

 

「ラテにも心配かけたよね・・・でも、もう大丈夫、ピンピンしてるから!」

 

「ワン!」

 

のどかはラテを撫でながら言う。ラテものどかが元気になって嬉しそうだ。

 

「もう遅くなっちゃったし、帰りましょう」

 

「うん! ひなたちゃん、帰ろう?」

 

「そうだね。あーあ、もっとここでいろんな動物を見たかったのにな・・・」

 

「また、来ればいいわよ。今度は3人の行きたいところに」

 

「ふわぁ〜、それいいかも!!」

 

他愛のない会話をしていく3人。こうして、水族館を通してさらなる絆を深めていったのであった。

 

ーーーーなんだか、小さい頃の病気が治った時みたいで、生きてるって感じ!

 

・・・しかし、ちゆとひなた、ヒーリングアニマルたちはおろか、のどかですら気づいていなかった。

 

のどかの鼓動を打つ心臓部分に、小さな淀みのようなものが蛍の光のように蠢いていることに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んぅ・・・」

 

廃病院の地下の実験室、クルシーナは昏睡状態で横たわる少女に口づけを交わしていた。

 

メガビョーゲンから排出されたサンゴの卵のようなものを口の中に含み、呪詛した後、キュアグレースを病気に侵したのと同じように口づけをして、体内に移し込んでいた。

 

少女の表情がピクピクと顰め、その中には淀んだ何かが入り込んでいく。

 

「ぷぁ・・・」

 

移し終えると少女から口を離し、ベッドから降りると小部屋の外へと出る。

 

「ご苦労様でした。また一歩近づきそうですよぉ♪」

 

「・・・別にお前のためじゃないっての」

 

ドクルンの言葉にクルシーナはそう吐き捨てると、実験室から出ていく。

 

「フフフ・・・」

 

ドクルンは笑みを浮かべながら、小部屋にいる少女の姿を見ていた。

 

一方、クルシーナは廃病院の屋上にいた。ここも病気には蝕まれていて、白い柵らしきものは錆びたようにボロボロになっており、その外に向かって足をぶらぶらさせながら寝そべっていた。

 

クルシーナはいつものような不機嫌そうな顔を少ししかめて空を見上げている。

 

空に向かって手のひらを突き出すと、またある映像が頭の中に入ってくる。

 

ーーーー自分の目の前に病気で死にそうな少女。その子の手に触れ、頭を撫でた。

 

そういえば、敵であり、自分にとっては苦しめる対象の一つにしか過ぎない、キュアグレースの頭を、どうして撫でたりなんかしたんだ・・・?

 

考えてはみるが、何も思い浮かばない・・・あいつとは初対面のはず・・・。

 

あいつから何も感じず、気持ち悪さだけが残って、余計にイライラする。

 

その思考に拍車をかけるように、ある言葉も思い出させられ余計に腹がたつ。

 

ーーーーきこ・・・えて、た・・・よ・・・ラビ、リン、の・・・声・・・がん・・・ば・・・って、って・・・それ、で、まだ・・・私・・・がん、ば・・・れる・・・よ・・・

 

ーーーー頑張ろうとすることには苦しいこともあるかもしれない・・・

 

ーーーー 一緒に頑張れば、きっと辛いことだって乗り越えられると思う・・・!

 

プリキュアの3人の言葉、「頑張れる」「頑張ろうとする」「乗り越えられる」。その言葉を嫌でも思い出させられた彼女はそっぽを向くように鼻を鳴らす。

 

「ふん・・・何が、頑張りよ。無駄な抵抗なんかしちゃってさ・・・!」

 

メガビョーゲンを倒したのだって、あんなのまぐれに決まっている。プリキュアごときが、そんなに強いわけでもないのだ。頑張りなんて根拠のない言葉に、私たちがやられるわけじゃない。

 

「やめたやめた」と考えるのをやめて、横になろうとしたとき、何か風を切るような音が背後から聞こえた。

 

「・・・あれ? 機嫌、直ってる?」

 

「ん? って、ダルイゼン?」

 

聞き覚えのある少年のような声が聞こえて、後ろを向くとダルイゼンの姿があった。

 

まるで興味がないと言わんばかりに、横になると口を開く。

 

「あんた、何でここに?」

 

「・・・生気の感じるものの感覚をたどったら、ここに来た」

 

「・・・何、それ?」

 

生気の感じるものをたどってきた? ここには生気の感じるものなんか何もない。どう聞いても建前で言ってることが明らかだ。アタシに会いに来たとしか考えられない。

 

ダルイゼンは淡々に言うと、クルシーナの横にいつものように寝そべり始めた。

 

「アタシの隣に寝ないでくれる?」

 

「・・・別にいいじゃん。減るもんじゃないし」

 

クルシーナは嫌そうな顔をすると、ふんと鼻を鳴らして寝直す。物理的に追い払おうとしないということは肯定した証である。

 

「・・・ここ何なの?」

 

ダルイゼンが問いかけてくる。メガビョーゲンが出現しているわけでもなく、それでいて病気に蝕まれている箇所が多すぎる気がする。ここは、なんだか様子がおかしい。

 

クルシーナは体を起こすと、妖艶な微笑みを浮かべる。

 

「アタシたち、お父様の娘の本拠地。素敵でしょ? 赤く染まっててさ」

 

「・・・・・・」

 

クルシーナの言葉を、ダルイゼンはそれを無表情で黙って聞いていた。

 

「ここだけじゃなくて、あの辺だって全部赤く染まってるのよ。もうビョーゲンズの居心地がいいくらいにね」

 

クルシーナが指を指す方向には、寂れた家、寂れたビル、廃墟と化している店、そして街の木や奥の山が病気で赤く染められていて、人間のいる気配が全くしない光景が広がっていた。

 

そこはまさしくゴーストタウン。とても人が住めるような環境ではなかった。

 

ダルイゼンは体を起こして景色を見やる。これが、ビョーゲンズが目指している理想の世界、世界を切り取ったかのような、病気で溢れた世界で広がっていく・・・。

 

「ビョーゲンキングダムほどじゃないけど、素敵でしょ?」

 

クルシーナが微笑みながら言うと、いつもは無表情のダルイゼンが不敵な笑みを返す。

 

「・・・悪くないね。生きてるって感じがして」

 

それは、クルシーナのことなのか・・・ここ一帯の街のことを言ったのか・・・それは言った本人にしかわからない・・・。

 




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