ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
メガビョーゲンの元へと駆けつけたプリキュアたち。そして、ひなたとイタイノンの行方は??


第106話「特別」

「メッガメガァ!!!!」

 

メガビョーゲンはまだ発電所近くで暴れていた。アンテナから雷を放って、ここから数メートル離れた町を感電させて病気に蝕んでいた。

 

「メガメガァ!!!!」

 

メガビョーゲンはさらにアンテナから雷を上空へと放ち、街中に激しい雷が降り注がれる。

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うわあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「みんな!! こっちだ!!」

 

「逃げろー!!!!」

 

雷鳴によって恐慌状態になり、逃げ惑う人々。悲鳴をあげて逃げている男女や避難誘導をしているもの、雷を恐れて逃げ出す人々もいた。

 

「っ、メガビョーゲン!! やめてぇ!!!」

 

そこへプリキュアの三人が駆けつけ、グレースの叫び声と同時に飛び上がる。

 

「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

「メガメガ? メッガァ!!」

 

三人は同時に蹴りを繰り出すも、気づいたメガビョーゲンはロボットアームのような腕で受け止める。

 

お互いは同時に攻撃を押し返し、メガビョーゲンは少し押され、プリキュアは大きく退く。

 

すると・・・・・・・・・。

 

「うわぁ!? う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「「グレース!!」」

 

地面を踏ん張って倒れないようにした瞬間、グレースが足を取られて後ろへと倒れそうになる。フォンテーヌとアースが間一髪で腕を掴んで引っ張ったことで、倒れずに済んだ。

 

「大丈夫!?」

 

「うん・・・なんか落ちそうになって・・・っ!?」

 

「「!?」」

 

フォンテーヌが心配してそう言うと、グレースは違和感がして後ろを振り向くと驚愕し、フォンテーヌとアースも後ろを見て驚きの表情を浮かべた。

 

「ラビ!? な、何ラビ!? この大きな穴・・・!!」

 

ラビリンも後ろにできた大穴を見て驚く。

 

「こんな深そうな穴、落ちたら大変だったペエ・・・!」

 

「っ、さっきの爆発で空いた穴なのかしら・・・!?」

 

「凄まじい威力です・・・・・・!!」

 

グレースがもう少し下がったら危なかったとペギタンは安堵し、フォンテーヌとアースは爆発の凄まじさに驚いていた。

 

アースはふと周囲を見渡してあることに気づいた。

 

「ひなたがいませんね・・・??」

 

「もしかしたら・・・この穴の中にいるんじゃ・・・!?」

 

「そんな・・・・・・!!」

 

プリキュアとして戦っているはずのひなたの姿が見えないのだ。もしかしたら、爆発に巻き込まれてこの穴の中に落ちたのかもしれない。

 

「ひなたちゃーーーーーーん!!!!!」

 

「ひなたーーーーーーーーー!!!!!」

 

グレースとフォンテーヌは深そうな穴に向かって叫ぶ。しかし、音は反響するばかりでひなたの返事は返ってこない。

 

「おーーーーい!! みんなーーーーー!!!!」

 

「っ!! ニャトラン!!」

 

その代わりに姿を現したのは、ヒーリングステッキを持ったニャトランだった。

 

「みんな無事か・・・!?」

 

「なんとかね・・・・・・」

 

ニャトランはみんなを心配していたが、フォンテーヌからその言葉を聞いて安堵していた。

 

「って、うお!? なんだ、このでっかい穴!!」

 

ニャトランはふと視線にはいった穴に驚く。

 

「ひなたはどこにいったんだペエ・・・!?」

 

「それがわかんねぇんだ・・・あいつ、とっさにステッキをどこかに放り投げてイタイノンにしがみ付いて・・・爆発が起きたその後にはどっか遠く飛ばされちまってよぉ・・・やっとの想いでここに戻ってきたんだ・・・」

 

ペギタンが問うと、ニャトランが経緯を説明する。ビョーゲンズとの戦闘中に、ひなたの捨て身とも言える行為で離れ離れになってしまったのだ。

 

「もしかしたら、この穴に落ちたのかもしれない・・・!!」

 

「ニャ、ニャンだって!?」

 

グレースが穴の方を向きながら言うと、ニャトランは仰天する。

 

「おーーーい!! ひなたーーーーー!!!!」

 

ニャトランは大声で穴に向かって叫ぶも、やはり反響するばかりで何も返ってこない。

 

「っ・・・!!」

 

「グレース!? 何をする気ラビ!?」

 

するとグレースが立ち上がり、まさかと感じながらもラビリンが問いかける。

 

「この穴を降りて、ひなたちゃんを探す!!」

 

「おい、やめとけよ!!」

 

「無茶ラビ!! この穴がどれだけ深いのかもわからないラビ!!」

 

「でも、ひなたちゃんが危険な目に遭ってるかもしれない・・・!! それなのにここで待ってるなんて、私にはできないよ・・・!!!!」

 

グレースはそう言うとニャトランとラビリンは諭すように言う。この穴に落ちるのは正直、自殺行為だ。得体が知れない以上、この穴の中に入るのは危険すぎるとグレースにそう訴えたかったのだ。

 

しかし、グレースはその言葉を聞いて戸惑う。心配そうな表情を浮かべながら、泣きそうな声でそう言った。

 

「落ち着いてください、グレース。ひなたはまだ危険な目に遭ってると決まったわけではありません」

 

「でも・・・・・・!!」

 

「ひなただってプリキュアよ。自分の身は自分で守れるはずだもの」

 

アースやフォンテーヌが優しい声で諭しても、グレースは困ったような表情を浮かべている。穴の中にいるひなたが心配で仕方がないのだ。

 

「メッガメガァ!!メガァ!!」

 

そこへメガビョーゲンがアンテナから雷を何発も飛ばす。

 

「はぁっ!!!!」

 

フォンテーヌはぷにシールドを張って、被弾する雷を防ぐ。

 

「まずは目の前のメガビョーゲンをどうにかしないと、この辺一帯がそれこそ取り返しのつかないことになります」

 

「っ・・・・・・!!」

 

「大丈夫です。ひなたは反省もできる強い子です。そんな簡単に負けるわけがありません」

 

グレースはなおも心配していたが、アースは彼女にそう告げた。

 

「そう、だね・・・・・・ひなたちゃんを信じなくちゃダメ、だよね・・・・・・」

 

グレースは心配そうな表情はするものの、そう呟くと意を決してステッキを構える。

 

「ひなたは俺が探してくる!! その間にグレースたちはメガビョーゲンを!!」

 

「わかった!!」

 

ニャトランはそう言うと大穴の中へと飛び込んでいく。そして、グレースたち三人はメガビョーゲンに立ち向かっていく。

 

(ひなた・・・・・・無事でいてくれよ・・・!!!!)

 

ニャトランはひなたを心配しつつ、深い穴の中へと潜っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

壁にもたれながら苦しそうに呼吸をするひなた、その横で無表情で虚空を見つめるイタイノン。人間とビョーゲンズである二人が隣同士になって座っていた。

 

(私は・・・一体、何をしているの・・・??)

 

ふとひなたを見つめながら、イタイノンはそう思う。こんな病気に勝てる力もない人間など、その気になればすぐに始末できるはず・・・・・・なのに、自分はそれをしようとしない。

 

でも、こいつはなぜか倒せないのだ。なんだか倒すと後悔するような気がして・・・・・・。

 

「っ!?」

 

イタイノンはふと思ってしまったことに目を見開くと首を振り、その考えを振り払う。

 

「おい、お前・・・・・・」

 

「はぁ・・・はぁ・・・??」

 

イタイノンが顔を顰めながら呼ぶと、ひなたは力なく反応する。

 

「お前、私の何なの? さっきも言ったけど、私の中にお前がいたの。お前は私の何で、私はお前の何なの?」

 

「わ・・・わかん、ないよ・・・でも、あたしの中にも、あんたが出てくるの・・・!!!」

 

「そう・・・・・・」

 

イタイノンが問いかけると、ひなたは苦しそうにしながらもなんとか言葉を紡ぐ。

 

「あたしたち、いつも一緒にいたんじゃ、ないかな・・・・・・」

 

「??」

 

「だって、いろいろ一緒にいたこと、あったから・・・絵本読んでた、ときも・・・森でリボンをなくした、ときも・・・あんたがいたんだ・・・・・・」

 

「っ・・・・・・それ、本当なの??」

 

ひなたのその言葉を聞いたイタイノンが詰め寄ると、ひなたは弱々しく頷く。

 

「きっとあたしたち・・・仲良しだったんだじゃ・・・ない、かな・・・・・・?」

 

「っ・・・・・・」

 

「仲良しじゃなきゃ、一緒にいないし・・・笑顔でいないと、思うんだ・・・・・・」

 

ひなたがそう呟くとイタイノンは目を見開く。記憶がないからイタイノン似の少女が誰なのかはわからない。でも、これだけは言える・・・・・・友達だったと。

 

イタイノンはその言葉を聞くと、ひなたから目をそらすように前を向く。

 

「・・・・・・そんなの知らないの。お前と仲良しだったなんて、考えただけで虫酸が走るの」

 

「うぇぇ・・・ひどいよ〜・・・さっきだって、あたしのこと、気にしてくれたじゃん・・・・・・」

 

「あれは・・・・・・たまたまお前が哀れだったからいてあげただけなの・・・!! 別に深い意味はないの・・・・・・!!」

 

「こんなに優しい、のに・・・・・・」

 

「調子に、乗るななの!!」

 

イタイノンがそう呟くと、ひなたは苦しいながらも茶化し始め、イタイノンはそれにムキになる。

 

「ふん・・・・・・そういう態度してていいの? 私はその気になればお前をここに置き去りにして帰れるの。そうしたらお前は一人になるの。誰にも最後を気取られずに、なの・・・!!」

 

茶化されたことに憤慨するイタイノンは高慢な態度でそう言う。あまり調子に乗っていると、お前を見捨てることもできるということをひなたに主張した。

 

「・・・あんたは、そんなこと・・・しない、でしょ・・・??」

 

「っ・・・・・・!!!!」

 

「だって・・・あたしに構ってくれるほどに・・・優しいんだもん・・・・・・」

 

ひなたが儚げな声でそう言うと、イタイノンの心が乱される。何を言っているんだろうか、こいつは。自分が優しい? そんなこと思ったことなんて一度もない。

 

「ふ・・・ふざけるのも大概にするの!! 私は優しくなんかないし・・・お前のことなんかこれっぽちも気にしてないの・・・!!!!」

 

イタイノンは立ち上がって憤慨しながらそう言うと、ふとひなたがそんなイタイノンの手を震えながら取る。

 

「っ!!??」

 

「優しいよ・・・・・・だってこうやって、話して、くれるじゃん・・・・・・」

 

「っ・・・!!」

 

驚いているイタイノンにひなたは弱々しく首を振りながら答える。イタイノンはそれに気持ち悪さを覚えて彼女の手を振り払う。そして、ひなたから後ずさるように離れる。

 

「ね・・・・・・?」

 

「・・・・・・・・・」

 

手を振り払うなどの扱いをされても、動じようとしないひなたにイタイノンは困惑の表情を浮かべる。

 

そして、その微笑みが自分の中に現れるこの女そっくりの笑顔に重なり・・・・・・。

 

「!! っ・・・うっ・・・!」

 

すると、イタイノンは急に頭を抑え始める。

 

「?? どうし・・・たの・・・・・・?」

 

ひなたが心配して声をかける中、イタイノンの頭の中にある映像が甦った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・・・・』

 

『ぅ・・・うっ・・・・・・』

 

『・・・・・・・・・おい』

 

『うぇ!? な、何・・・!?』

 

『お前、組む相手がいないの? 私が一緒になってやるの』

 

『ぇ・・・ほ、本当・・・・・・?』

 

『嘘はついてないの・・・・・・』

 

ダンス教室に通っていた際、二つのリボンをつけている少女が孤立しているのを見て、自分が誘った。

 

『お前・・・名前は・・・・・・??』

 

『ひ・・・平光、ひなた・・・・・・』

 

『らむ・・・板井らむ・・・よろしくなの・・・・・・』

 

そして、映像が切り替わると別のシーンの映像になる。

 

『ねえ、この絵本のおばけとこの娘、らむっちとあたしの関係だよね!』

 

『どこがなの。どっちもどっちで全然似てないの』

 

『えぇぇぇ、似てるよぉ~。この怖がりながらも友達になろうとしている娘、らむっちじゃん!』

 

『どっちかと言えばひなたなの。弱虫なこのおばけとダブルパンチなの』

 

『それって、あたしが弱虫で、怖がりってこと!? ひど~い!!!』

 

二人で絵本を見ながら、互いに茶化しながら笑い合う。

 

『あ・・・・・・』

 

『どうしたの?』

 

『お姉からもらった大事なリボン・・・・・・』

 

『もしかして、途中で落としたの??』

 

『うぅぅぅ・・・お姉からの大切なリボン、なのに・・・・・・』

 

森から帰って来たときに、ひなたがリボンを落としたことに気づき、泣きそうに瞳が潤む。

 

『私が見てくるから、お前はここで待ってるの』

 

『で、でも、こんな中入ったら危ないよぉ・・・危険だよぉ・・・・・・』

 

『怖いならここにいるの。大丈夫なの。必ず、お前の落としたリボンを探してくるの』

 

そして、らむは森の中でひなたの大事なリボンを探して彷徨う。

 

『確か・・・この辺のはずなの・・・・・・』

 

らむはひなたと一緒に遊んだ場所を思い出しながら、その辺りにある草むらを掻き分けて探していく。

 

その時だった・・・・・・。

 

ガサガサ・・・ガサガサ・・・・・・。

 

らむの背後に忍び寄る影がいた。それは花の種のようなものに蜘蛛のような4本足がついた謎の物体だった。

 

その種はゆっくりとらむに気づかれないように近づいていき、彼女からある一定の距離を保つと・・・・・・。

 

『あった! やっと見つけたの!!』

 

らむが喜ぶのを尻目に、種は自分の体を開き赤い靄となってらむへと迫っていく。

 

『??・・・・・・っ!?』

 

その気配に気づいてらむが振り向いたときには、もうすでに遅かった。

 

『ら・・・らむっち!!』

 

『うっ・・・うっ・・・!』

 

戻らないらむを心配して森の中に入ったひなたが入っていくと、倒れて呻いているらむの姿を発見した。

 

『らむっち!! 大丈夫!? しっかりしてよぉ・・・!!!』

 

『うっ・・・お前の、大事な・・・うっ・・・!!』

 

らむは苦しみながらも、見つけたリボンをひなたの前に差し出す。

 

『あぁ・・・どうしよう!! どうしよう!!!!』

 

『落ち着くの・・・バカ!! 冷静に、なって・・・ママも・・・呼べ、なの・・・・・・!』

 

『そ、そうだよ・・・お姉やお兄、パパを呼ばないと・・・・・・!!』

 

ひなたは助けを呼ぶために、今来た森を戻っていく。そのまま救急車に運ばれたらむは病院で入院することになった。

 

そして・・・・・・・・・。

 

『やめろ!! やめろなの!!!!』

 

『大人しくしなさい!!!!』

 

らむは複数の医者に抑えられ、ベッドへと寝かされようとしていた。抵抗も虚しく、らむはベッドにベルトで縛られて拘束されてしまう。

 

『ひっ・・・・・・!!』

 

『安心しなさい。お前は絶対に私が治してやる・・・!! だから、少しの辛抱だ』

 

『い、いやなの・・・!! やめろ、やめてくれなの!! そ、そんなの刺したくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

主治医が持つ注射器に悲鳴を上げ、らむは体をバタつかせるも、無駄な努力にしかならずそのまま注射器を刺されて絶叫を上げた。

 

そして・・・・・・・・・。

 

『・・・・・・・・・』

 

らむはベッドに寝かされていたが、その表情は虚ろに目が見開かれ、口もポカリと空いている。まるで何も見えておらず、心を壊されてしまったかのような状態だ。

 

いやだ・・・もう嫌だ・・・・・・こんな仕打ち・・・・・・。

 

ひなた・・・・・・ひなた・・・また、お前に会いたいの・・・・・・。

 

なんで・・・・・・なんで会えないの・・・・・・?

 

そうだ。この病院が悪いんだ・・・・・・この病院が私をひなたと引き離した・・・・・・。

 

許せない・・・・・・許さないの・・・・・・!!

 

でも、怖い・・・・・・怖いの・・・・・・。

 

怖い奴らなんか・・・・・・みんな消えてしまえばいいの・・・・・・!!

 

らむは壊れたままの心で呪詛のように呟くと、ふと声が聞こえてきた。

 

『・・・痛いのか? 辛いのか?』

 

誰? 誰なの??

 

『自由に走り回りたいか?』

 

自由に動きたい・・・・・・動きたいの・・・・・・!! そして、私をこんな姿にした奴らを同じ目に遭わせたいの・・・・・・!!!!

 

『いい憎しみだ。まるで地球を憎んでいるとも思える。人間も憎んでいるとは、よほど復讐がしたいように見えるな』

 

許せない・・・許せないの・・・!!!! 人間なんか、みんな大嫌いなの・・・!!!!

 

『我が全て楽にしてやろう。自由に行動できるように力を与えてやる。その代わり、我のために働き、我のために尽くすのだ。地球を我らの住む世界のような、快適な環境にするために。我の大切な娘としてな』

 

誰なの?? 私にそんな声をかけてくるのは・・・・・・??

 

『我はキングビョーゲン。今からお前を娘とする、ビョーゲンズの支配者である』

 

そんならむの憎しみに呼応するように、声をかけたのはキングビョーゲン・・・後に自身の父親となる存在であった。

 

病室の中、何か物音がし、病院の窓から何かがすり抜けるように入ってくる。その紫がかったような赤黒い靄はらむが横になっているベッドの下へと素早く移動する。そして・・・・・・!!

 

ズオォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

『っ!!??』

 

ベッドの下から赤黒い靄がらむを包み込むように襲いかかる。らむは一瞬驚きの表情をしたまま、呆然としていたが、その意識は闇へと落ちていったのであった。

 

そして、自身が再び気がついた時には、あの声が響いていた。

 

『地球上にいるビョーゲンズたちよ・・・我はキングビョーゲン。時は満ちた・・・この星をビョーゲンズのものにするため、今こそ忌々しきヒーリングアニマルを滅する! さあ、我の元に集うがいい!!!』

 

その声が聞こえると同時に、目の前に光が見えていた。らむはそれに導かれるように手を伸ばしていった。

 

そして、ベッドに眠っているらむの瞳が大きく見開かれた。周囲から赤い靄を見ている人でもわかるように赤く光らせながら。その姿はすでに人の肌ではなく、悪魔のようなツノとサソリのような尻尾が生えていた。

 

やがて赤黒い靄はらむごと浮かび上がると、その勢いのまま病室の窓の外へと飛び出していく。

 

病院からは他の場所からも3つの赤い靄がその近くへと飛び出していったが、その一人であるらむは病院の近くの地面へと赤黒い靄に包まれたまま、着地したしゃがみ込む姿勢のまま静止する。

 

そしてゆっくりと立ち上がると、赤い靄が静かに薄れていき、その姿を晒した。

 

雪のような白い肌に、ゴシックロリータのような衣装、頭には悪魔のツノのようなもの、お尻にはサソリの尻尾のようなものが生えていた。

 

ビョーゲンズの一人、イタイノンの誕生であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その回想が終わったとき、抑えていた頭からはいつの間にか頭痛は無くなっていた。

 

(私は・・・人間・・・・・・人間だったの・・・・・・)

 

イタイノンは呆然と虚空を見つめながらそう考えた後、ひなたの姿を見やる。彼女は顔色を悪そうにしながらも、こちらを心配そうに見つめている。

 

それを見たイタイノンは両手を下に降ろすと、よろよろと歩きながらひなたの隣へと座る。

 

「大、丈夫・・・・・・?」

 

ひなたは苦しそうにしながらも、イタイノンを心配して声をかける。イタイノンはゆっくりと顔をひなたの方へと向ける。

 

イタイノンは呆然とした表情から顔を顰めると唐突に手を伸ばす。

 

ペチペチペチペチ!!

 

「い、痛い・・・痛いぃ・・・!!」

 

「お前に心配される筋合いはないの。自分の顔を見てから言えなの」

 

ひなたの頬に強めにビンタをして、素っ気なく返すとイタイノンは再び前を向いて押し黙った。

 

「何、だよ・・・せっかく、心配してる、のに・・・・・・!!」

 

「私はお前の方が心配なの」

 

「え・・・・・・??」

 

「っ!?」

 

ひなたがムッとしたような感じで言うと、イタイノンはそう答える。それにひなたがキョトンとすると、イタイノンはハッとしたようにそっぽを向く。

 

「な、なんでもないの・・・!!!!」

 

(私は、一体・・・何を言ってるの・・・・・・??)

 

イタイノンは自分の敵であるこの女のことを、反射的に変なことを言ったことに戸惑いを隠せなかった。

 

そして、その後は二人して何の会話も無いまま、数分間が過ぎた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・うぅ・・・」

 

(体調がどんどん悪くなってるの・・・・・・)

 

イタイノンは呼吸が荒くなっていくひなたを見つめていた。ひなたの顔は少しずつ土気色になり始めており、段々と表情に力が入らなくなっていた。

 

「おい、大丈ーーーー!?」

 

イタイノンはひなたに手を伸ばそうとしてその動きを止めた。

 

自分は今、何をしようとしていた? もしや、敵であるこいつを、気遣おうとした???? 助けようとした????

 

イタイノンはハッとすると、すぐにもう片方の手で抑え込むように引っ込める。

 

(私、どうしたの・・・?? こいつなんか大嫌いだし、消したい存在のはずなのに・・・・・・)

 

イタイノンは自分の手のひらを見つめながら動揺する。いつもだったらこんなやつ、すぐに痛めつけられるのに、それをしようとしない自分に恐ろしさを覚える。

 

「うっ・・・んぅ・・・・・・今なら・・・わかる、な・・・・・・」

 

「??」

 

「のどかっちも・・・病気に、なって・・・こんなに・・・・・・苦しかったん、だね・・・・・・」

 

ひなたは苦しそうに呻きながらも、イタイノンに向かって微笑んで見せる。その顔色はすでに土気色に近づいてきていた。

 

「お前・・・なんで苦しいのに笑ってられるの・・・・・・??」

 

「・・・・・・・・・」

 

「苦しいのに笑うとか、意味がわからないの。お前、おかしいの・・・!!」

 

「そう・・・なのかな・・・・・・」

 

イタイノンは理解が追いつかなかった。こいつは病気で苦しいのに、どうしてこうもヘラヘラしてられるのか。頭がおかしいとしか思えない。

 

「でも、笑ってないと・・・みんなに、暗い気持ちに・・・させる、から・・・・・・笑ったほうがいいんじゃない、かな・・・・・・?」

 

「病気になって暗くなるのは当たり前なの!! 病気になって、いつ死ぬかわからない・・・いつ苦しくなるかわからない・・・いつ体に痛みが来るかわからない・・・そういうわからない気持ちを抱きながら過ごすものなの!! お前は全然わかってないの!!!!」

 

こんな時でもそういうことを言うひなたは、イタイノンにとっては能天気そうに聞こえる。それに彼女はイライラして声を荒げた。

 

「わかん、ないし・・・だって、こんな苦しい気持ち・・・なったこと、ないもん・・・・・・」

 

ひなたはそう言いながらも苦笑いのような表情を浮かべて微笑んで見せる。

 

「お前、本当は怖いの・・・?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「怖いから笑ってごまかしてるの・・・!! 本当は怖いんだろう、なの・・・!! 怖いなら怖いって言え、なの・・・!!!」

 

イタイノンは絶対にこいつは恐怖をごまかすために笑っている、病気になったやつが笑顔になれるわけがないと、そうひなたの心を煽ろうとしていた。

 

しかし、ひなたはそれでもイタイノンに笑みを崩すことはなかった。

 

「怖く、ないよ・・・・・・!」

 

「どうして・・・!!??」

 

ひなたのこの答えに、イタイノンはさらに動揺する。怖いなら怖いといえばいいのに、どうしてこの女は言ってくれないのか・・・・・・?

 

「だって・・・一人じゃないもん・・・あんたが一緒にいるもん・・・見てくれてるもん・・・・・・だから、怖く、ないよ・・・・・・」

 

「っ!!!!」

 

イタイノンはこの言葉に衝撃を受け、少し後ずさるとその場に膝をついた。

 

「私はそんなつもりじゃ・・・・・・!」

 

自分はお前を苦しめて、痛めつけて、絶望を味合わせるために、今までそう思い込んでいたのに・・・・・・どうして私は心が揺れているのか・・・・・・?

 

「はっ、ぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

ひなたの表情が苦痛に歪み始め、まるで自分の周囲だけ酸素が薄くなったかのように呼吸が荒くなっていく。顔色はすでに土気色になっており、もう限界のようだった。

 

「イタイ・・・はぁ、はぁ、ノン・・・はぁ、はぁ」

 

「っ!! もうこれ以上喋るななの!! 死ぬの、お前!!」

 

ひなたはなんとか言葉を発して何かを伝えようとしたが、ハッとしたイタイノンがそう叫ぶ。

 

「イタイノン、はぁ、はぁ、は、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ビョー、はぁ、はぁ、ゲンズ、はぁ、はぁ、でも、はぁ、はぁ、あたしに、はぁ、はぁ、とって、はぁ、はぁ、特別、はぁ、はぁ、なのかも、はぁ、はぁ、しれない、ね、はぁ、はぁ、最初から、はぁ、はぁ、こうやって、はぁ、はぁ、話してれば、はぁ、はぁ、よかったなぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ」

 

懸命に言葉を伝えるひなたの視界は歪んでいく。苦しそうな呼吸も荒くなっていき、ひなたの体はうまく酸素を取り込めず力がなくなっていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

『あたしに構ってくれるほどに・・・優しいんだもん・・・・・・』

 

イタイノンの頭の中にひなたの言葉が甦ってくる。

 

「お前が・・・・・・」

 

『こうやって、話して、くれるじゃん・・・・・・』

 

バチバチバチバチ・・・・・・バチバチバチ・・・・・・。

 

それと同時にイタイノンの中の能力が再開したかのように電気が溢れていく。

 

「私は・・・お前が・・・・・・!!!!」

 

『一人じゃないもん・・・あんたが一緒にいるもん・・・見てくれてるもん・・・・・・だから、怖く、ないよ・・・・・・』

 

バリバリバリバリバリ・・・・・・バリバリバリバリバリ・・・・・・!!!!!

 

イタイノンは体をプルプルと震わせ、電気の帯電が大きくなっていく。

 

バリバリバリバリバリ・・・・・・!!!!!

 

「お前が死んだら、面白くないのッッッ!!!!」

 

イタイノンは苛立ちにも似た叫び声をあげると、ひなたへと飛ぶように近づく。

 

「っ・・・っ!!!!」

 

そして、ひなたの背中を抱くように持ち上げると、そのままもう片方の手を伸ばして彼女の体へと手を突っ込んだ。

 

「っ!!?? あ゛ぁっ・・・かはっ・・・!!」

 

その瞬間、ひなたの目が見開かれ、そのまま激痛に声をあげる。

 

「あ゛ぁ・・・あ゛っ・・・・・・が、あ゛ぁ・・・!!」

 

「どこなの!? どこを掴むの!!??」

 

イタイノンは手で体の中を弄るように動かし、ひなたはその度に激痛で声を上げていく。手を体の中に入れられただけでも激痛なのに、弄られるとなると相当な苦しみと激痛のはずだ。

 

「っ!! ふんっ!!!」

 

「うっ!? か、かはぁ・・・・・・!!」

 

イタイノンは何かを掴むと、それを躊躇なく引っ張る。ひなたは痛みから口から空気を大きく吐き出す。

 

「っ!! っ!!!!」

 

バリバリバリバリ!!!!

 

イタイノンは紫がかった赤い靄のようなものを引きずり出すと、電気を浴びせながら引っ張り出していく。

 

「おーーーい!!! イタイノン!!!!」

 

「っ??」

 

そこへ穴の中へと入り込んできたかすみが駆けつけてくる。イタイノンは顔をあげて視認すると驚いたような顔をする。

 

「無事だったんだな!!」

 

「お前、どうして・・・!?」

 

「ドクルンに様子を見てきてくれと頼まれたんだ!!」

 

「そう・・・・・・」

 

よりにもよって話したくもない奴が駆けつけてきた。イタイノンはかすみを見ながらそう思った。かすみから事情を聞くとイタイノンは顔を顰めながらボソリとそう呟いた。

 

「うぅぅぅ・・・うぁぁぁ、あぁぁぁ・・・!!!!」

 

「っ、ひなた!?」

 

苦しみに呻くような声に反応したかすみが足元を見てみると、ひなたの姿を視認して驚く。

 

「あぁ・・・そういえば、お前の元仲間だったの」

 

「何をしたんだお前!!??」

 

「別に・・・痛めつけるためにやってるわけじゃないの」

 

かすみとイタイノンがそう口論をしていると・・・・・・。

 

「ひなたに何してんだ、お前ら!!!」

 

「「!!」」

 

そこへ聞こえてくるもう一つの叫び声、かすみとイタイノンがそこを向くとそこにはこちらを睨みつけているニャトランの姿があったのであった。

 

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