ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第32話がベースとなります。
今回はドクルンがメインスポットとなります。


第113話「歓待」

 

ビョーゲンキングダムーーーー最近では、シンドイーネ、ドクルン、イタイノンが進化を遂げたばかりだったが、今回は幹部全員が召集されていた。

 

「お父さん」

 

「・・・どうした?」

 

「私の育てていたテラビョーゲンがようやく到着しました。あなたの新しい娘です」

 

まずはドクルンが報告を行う。自分が地球の病院で育てていたテラビョーゲンがようやく到着し、ここでお披露目ができることを話した。

 

「何よ〜!! また余計な奴が増えるのぉ〜!?」

 

「・・・別に仕事をしてくれるなら誰だっていいけど」

 

「それはヘバリーヌちゃんを、痛めつけてくれるのかなぁ〜??」

 

「・・・そんなわけないの」

 

新しいビョーゲンズが増えることを聞いた、幹部たちの反応は人それぞれであった。

 

「ほう・・・見せてみるがよい」

 

「かしこまりました。ハキケイラ」

 

キングビョーゲンに命じられ、ドクルンは背後を向いて名前を呼ぶと、ハキケイラは前に出てくる。そして、貴族のようなお辞儀をし始めた。

 

「初めまして、お父様。ハキケイラだよ」

 

「ようやく来たか・・・ハキケイラ」

 

ハキケイラは丁寧に自身の父親に挨拶を交わす。

 

「来るのが遅くなってすまない。地球で人間のフリをして潜入調査を行っていたんだ」

 

「ほう・・・それで、今の地球はどうだ?」

 

キングビョーゲンにそう問われると、ハキケイラは不快そうな表情をした。

 

「・・・・・・最悪だね。環境もよくないし、人間も自分勝手な奴らばっかりだ。僕の手で美しく染め上げれば、人間も環境も等しく綺麗になると思うんだ」

 

ハキケイラは地球を見てきたことの思いの丈を述べる。自分にとっては環境が不愉快だし、人間も生き生きしていて鬱陶しい。そんな命はいっそ病気で赤く染めれば、美しくなっていくだろうと考えている。

 

「ふむ・・・・・・今後のお前の活躍にも期待しよう。頼んだぞ、ハキケイラ」

 

「もちろんさ」

 

ハキケイラの思いを聞いたキングビョーゲンはそう言うと、彼女は笑みを浮かべながら答えた。

 

「ところで・・・お前たちに命じたいことがある」

 

キングビョーゲンはハキケイラとの接見を終えたところで、本題へと入った。

 

「え、俺たちもメガパーツを?」

 

「ヘバリーヌちゃんたちにも進化しろってことぉ〜?」

 

「シンドイーネとイタイノンがあれほどの成果を得られたのだ。お前たちもメガパーツを取り込み、後に続くがよい・・・」

 

キングビョーゲンは幹部や娘たちにメガパーツを使って進化することを命じた。シンドイーネとイタイノンが進化し、強力な力を得たことによってギガビョーゲンを生み出すこともできた。はっきり言ってそれが一番の成果だった。

 

他のビョーゲンズも進化することによって、今後の侵略活動を活発にして欲しいという命令であった。

 

「えぇ〜!? 進化は私一人で十分だと思いますぅ〜!! 大体、このグアイワル、ダルイゼン、クルシーナ、ヘバリーヌ、フーミン、カスミーナにギガビョーゲンは扱えないかと・・・!!」

 

「それはアンタの意見でしょうが」

 

シンドイーネは反対しているようだが、それに口を挟んだのはクルシーナだった。

 

「アタシを誰だと思ってんだよ? アンタができることをアタシらができないとでも思ってんの? むしろアンタら以上のことをできるけどね」

 

「っ・・・・・・」

 

クルシーナは手に持っているテラパーツを空中に放ってキャッチを繰り返しながら、不機嫌そうに返す。

 

「少し褒められたぐらいで調子に乗んなよ。結局は地球を病気に蝕めなきゃ意味ないんだからさ」

 

「わかってるわよ、そのくらい!!!」

 

「まあまあ、二人ともそのくらいに」

 

攻撃的な口調を崩さないクルシーナに図星を突かれて、ムキになるシンドイーネ。そんな二人をドクルンが諌めるように言う。

 

「ちなみに私はもう進化を終えています」

 

「お前、ドクルンだったのか・・・」

 

「あんた、いつの間に・・・!!!!」

 

「・・・格好、変わりすぎじゃない?」

 

「それだけすごいということですよ、進化は。あなた方も経験して見ればわかります」

 

ドクルンのあまりにも変わりすぎな外見に、グアイワルとダルイゼンは彼女とは気づかなかったようで二人とも驚いている。

 

「よいか、グアイワル、ダルイゼン、クルシーナ、ヘバリーヌ、フーミン・・・わかったな?」

 

キングビョーゲンは再度進化を促すと、その場からスッと消えていった。

 

「ふっ・・・言われなくても、最初から進化するつもりだったさ」

 

「ふむ・・・グアイワルはもう行きますか」

 

グアイワルはその場から立ち上がりながらそう言うと、持っていたメガパーツを取り出した。

 

「ふんっ、私とイタイノンとドクルンはたまたま体が持ったけど、あんたたちがメガパーツを取り込んで、ただで済むって保証はないんですからねぇ!!」

 

「だよねぇ・・・・・・」

 

シンドイーネの妙な忠告に、ダルイゼンが躊躇する。本当は進化してほしくないだけだが・・・・・・。

 

「お前たちに出来たことが、この俺に出来ぬ訳が無い!! ふんっ!!!!」

 

そんな中、グアイワルはメガパーツを上に掲げて、躊躇なく自分の体の中に突っ込んだ。

 

ドックン!!!!

 

「ぐっ・・・ぐあっ!! ぐぅ・・・ぬうあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

その瞬間、グアイワルの体から禍々しいオーラに包まれて苦しむ声が聞こえてくる。ダルイゼンやクルシーナたちはその様子を見つめていた。

 

「ぐぅぅぅぅぅ・・・うおあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

グアイワルは雄叫びを上げながらオーラを振り払うと、そこには姿の変わったグアイワルが立っていた。

 

シンドイーネと同じように背中には黒い翼が生え、ツノが大きく反り返って枝分かれして4本になっており、髪が胸元まで伸びている。顔には両目に涙のような装飾がついている。服装は色濃く華やかになり、両肩には鎧のようなものを身につけていた。

 

「どうだ!俺も・・・俺も進化したぞ!!」

 

「おぉ〜!! ワル兄カッコイイ〜!!!!」

 

グアイワルが変貌した姿を見て、大興奮のヘバリーヌ。そして、彼女もドクルンからもらっていたテラパーツを取り出す。

 

「じゃ〜あ〜、私もぉ〜・・・・・・」

 

「すぅ・・・すぅ・・・・・・」

 

ヘバリーヌがそう言ってテラパーツを掲げた直後、フーミンの眠っている声が近くから聞こえてきたので、顔を向けると足元にフーミンが眠っていた。

 

「フーちゃん、寝てないでさ〜、進化しよぉ?」

 

「んぅ・・・わかったれすぅ・・・・・・」

 

ヘバリーヌがペチペチとフーミンの顔を叩きながら言うと、彼女は目を擦って立ち上がりつつも、同じくもらっていたテラパーツを取り出す。

 

「いくよぉ〜?」

 

「んぅ・・・・・・」

 

ヘバリーヌとフーミンは、ほぼ同時に躊躇なくテラパーツを自分の体へと突っ込んだ。

 

ドックン!! ドックン!!!

 

「あっ・・・あぁぁぁぁ〜!!!! 痛い・・・痛い、気持ちいいぃ〜!!!! あぁ〜ん、激しいぃ〜!!!!」

 

「うっ・・・はぁっ・・・んぅ・・・んん・・・!!!!」

 

二人の体が禍々しいオーラに包まれていき、ヘバリーヌは体中を巡る激痛に喜びを感じているようだが、フーミンは呻き声を上げていた。

 

そして・・・・・・。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

 

「んぅっ・・・んんんんんんんんぅ!!!!」

 

一際大きな甘い声と、呻き声が聞こえてくると包んでいたオーラが晴れていき、そこから二人の姿は大きく変わっていた。

 

ヘバリーヌは、白を基調としていた白鳥のような羽を生やしていたバレリーナのような格好は、黒を基調とした黒鳥のような羽を生やした姿になり、金髪は銀髪へと変化して、頭の上のティアラはフェニックスのような両翼がついた派手なものになった。顔の装飾は目の周りにシャドウと、両頬に風のようなグルグルのマークがあり、頭の悪魔のツノも枝分かれして4本になっている。

 

フーミンは、藍色のシスター服がワインレッドのような鮮やかな色になり、髪が更に伸びてウェーブになっており、頭のツノは猫の耳のようなツノと悪魔のようなツノの4本がベール越しに見えている。顔の装飾は目に逆さ音符の装飾が両目で対になるようにされており、背中の天使のような翼は堕天使のような黒い翼へと変わった。

 

「見てみてぇ〜! ヘバリーヌちゃんも大へ〜んし〜ん!!!!」

 

「すぅ・・・進化したですぅ・・・・・・」

 

ヘバリーヌは両手を大きく広げて自慢するように披露し、フーミンは眠そうにしながらも自身の姿をお披露目する。

 

「むぅ・・・・・・ふんっ!!」

 

シンドイーネはその様子を不機嫌そうに視線を逸らした。

 

「みんな、あっさり進化できるものなのね」

 

「さすがは、幹部たちとお父さんの娘たちは違いますねぇ」

 

クルシーナやドクルンは感心するかのように言った。

 

「・・・まあ、別に何人進化したところで困るものはないの」

 

イタイノンはそれを見ながら、淡々と他の仲間が進化することを肯定する。

 

「はぁぁぁ・・・身体中に力が漲ってくる・・・早速この力でひと暴れしてきてやる!! ふっふっっふ、わ〜っはっはっは!!!!」

 

進化したグアイワルはそう言うと、早速単身地球へと向かっていった。

 

「むぅ・・・ヘバリーヌちゃんも遊びたいなぁ〜・・・」

 

「私は進化して、疲れたから眠るですぅ・・・・・・」

 

「フーちゃん、それならアジトに帰ろぉ〜?」

 

グアイワルを見て羨ましそうしていたヘバリーヌだが、フーミンが眠そうにしているのを見て、気が変わってフーミンを連れてアジトへと帰っていく。

 

「さて、クルシーナとダルイゼンは進化しないんですかぁ?」

 

ドクルンのニヤけた視線を向けられる中、クルシーナとドクルンはテラパーツとメガパーツをそれぞれ見つめる。

 

「アタシはここではやらない。アンタらに見せつけるほど暇じゃないの。ちょっとアイツのところに行ってくるわ」

 

「クラリエットのところですか?」

 

「決まってんでしょ。アイツが最後の一人なんだから」

 

クルシーナはこの場での進化を拒否すると、そのままアジトへと向かうべく姿を消す。

 

「ダルイゼンは?」

 

「いや・・・したくないわけじゃないけど、しばらく様子を見るよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

ダルイゼンのその言葉を聞いた、ドクルンはニヤけた表情を消して無表情で見つめる。

 

「・・・・・・ちゃんと進化してくださいね。お父さんに目をつけられる前に」

 

「・・・・・・わかってるさ」

 

ドクルンはそう淡々と言うと、ハキケイラを連れてその場から姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、のどか、ひなたは数名のクラスメイトたちと一緒に、学校の職業体験に沢泉家へとやってきていた。のどかとひなたの女子たちは制服を、男子生徒たちは半纏を身につけて行うことになっている。

 

旅館の若娘である、ちゆの指導の元、弟のとうじも参加の上で職業を勉強することになったのであった。

 

ちなみにアスミも来ており、この活動の様子を治めるべく、撮影係として手伝ってもらうことになっている。

 

「お客様がお部屋から見たときに、気になるところが無いか注意して、掃除してみてください」

 

「お客様からみて綺麗に・・・・・・」

 

「やってみるね!」

 

「はい」

 

ちゆはクラスメイトに中庭の掃除のやり方を教えて、他の場所の様子を見にいく。

 

アスミはその様子をカメラで撮影して収める。

 

「ラテは少しお昼寝をしていてくださいね?」

 

「フワゥ・・・・・・」

 

そして、腕に下げているバッグの中で眠っているラテに声をかけた。

 

「客間はお客様が過ごす大切なスペースです。小さな汚れも見逃さないよう、気をつけてください」

 

「はい!」

 

「わかりました」

 

「OK!!」

 

ちゆに客間の掃除のやり方を教えると、のどかとひなたととうじは早速掃除に取り掛かった。

 

「よ〜し、じゃんじゃん吸い込んじゃうよ!!」

 

「あっ、ひなたちゃん。ちょっとストップ」

 

掃除機を置いてかけようとしたひなたを静止し、のどかは手に持っていたハタキを見せる。

 

「まずはこれで埃を落とさないと。掃除機は最後でいいかも」

 

「なるほど・・・・・・」

 

「そうね。掃除は上から下へが基本よ。ひなたは洗面所をお願い」

 

「かしこまりー♪」

 

のどかやちゆがアドバイスをしてもらうと、ひなたは掃除機を置いて洗面所へ向かった。

 

「僕はこれを干してくるね〜」

 

「ええ、お願いね」

 

とうじは客間の中にある座布団を全て重ねると、部屋の外へと持っていく。

 

「よし・・・頑張るぞ!!」

 

とうじは部屋を出てそう言い、座布団を干す場所へと向かっていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

その様子をペギタンが一人で隠れながら見守っていた。

 

パタパタ、パタパタ・・・・・・。

 

「あとは床の間の・・・・・・」

 

のどかはハタキで上の方の埃を下に落として、真剣に掃除をしていた。

 

「なかなかやるじゃない、のどか」

 

「えへへ♪」

 

ちゆに褒められて、嬉しそうにするのどか。

 

「すみませ〜ん。掃除機、先に隣で使いますね〜」

 

隣の客間を掃除していた従業員が、のどかたちにそう言って掃除機を持っていった。

 

「わぁ、もうちょっと急がなきゃだね」

 

のどかはそう言って改めて部屋の掃除を再開し始める。

 

「大丈夫。まだ時間はあるし、お部屋を丁寧に掃除することは、お客様への大切なおもてなしだわ」

 

「うん。じゃあ、念入りに!」

 

ちゆからアドバイスをもらったのどかは真剣に、ゆっくりと掃除し始める。

 

その様子をアスミがカメラで写真に収める。

 

「のどかはきちんとやって偉いラビ!」

 

「ひなたも見に行こうぜ!!」

 

そんなアスミの制服の袖から顔を出したラビリンとニャトラン。次にひなたの様子を見に行くことにした。

 

「はい、これね」

 

「ありがとうございます」

 

女性の従業員から雑巾とバケツを受け取って、ひなたが元気にお礼を言っていた。

 

「まあ、いい返事ね」

 

「えへへ♪ 返事だけはいいってよく言われちゃってぇ〜」

 

「素敵、笑顔も大切なおもてなしよ」

 

「・・・あ、そっか、ありがとうございます」

 

女性の従業員に褒められて、ひなたは改めて満面の笑みでお礼を言った。

 

そんな元気なひなたの様子をアスミがカメラに収める。

 

「さすが、ひなた! ナイススマイルだぜ!!」

 

「みんな、頑張っていますね♪」

 

ニャトランとアスミはひなたの様子を見ながらそう言った。

 

そんな中、アスミは辺りをきょろきょろとし始める。

 

「・・・ところで、ペギタンはどちらへ?」

 

この場に一匹だけいないペギタンのことを探していたのであった。

 

一方、そのペギタンは見つからない場所で、とうじのことを見守っていた。

 

「これを運んじゃえば・・・終わりっ・・・・・・」

 

「ちょっと頑張りすぎペエ・・・・・・」

 

とうじは偉く張り切った様子で、客間にある座布団を10枚も重ねて運んでいた。座布団をこんなに重ねたら小さなとうじには重いはず、ペギタンはそんな彼を心配そうに見つめていた。

 

そんな時だった・・・・・・。

 

「うわぁっ!?」

 

とうじは足をがもたついて転倒してしまい、運んでいた座布団もバラバラになってしまった。

 

「とうじ!!」

 

そこへちょうどちゆが通りかかり、とうじを心配して駆け寄る。

 

「もしかして、二部屋分をいっぺんに・・・?」

 

「ぱぁっ、そのほうが早く終わると思って・・・・・・」

 

バラバラになった座布団の中から顔を出したとうじがそう答える。

 

ちゆととうじは二人で座布団を広い、分けて運び始めた。

 

「張り切るのはいいけれど、少しずつ分けて運んだ方がいいわ。客間の座布団は、それでなくても大きめだから」

 

「はい・・・・・・」

 

「・・・・・・やれやれペエ」

 

ちゆに指摘されたとうじは少し落ち込み、見ていたペギタンも掛けていたサングラスを外しながら息をついた。

 

座布団を運び終わった後、とうじはちゆの指示で温泉の床をデッキブラシで掃除をしていた。

 

「お風呂掃除で挽回しなきゃ・・・・・・!!」

 

「失敗しないかこっちが心配ペエ・・・・・・」

 

熱心に床をこする様子をペギタンは先ほどの失敗もあって、心配した様子で見守っていた。

 

キャン♪

 

そこへ一匹の子犬が浴場の入り口の前にきていた。

 

「あれ? 今は入浴時間じゃないけど・・・迷い込んで来ちゃったかな・・・?」

 

とうじが見ながらそう言っていた、その時だった・・・・・・。

 

キャンキャン♪

 

中を見ていた子犬が浴場の中へと入ってきた。そして、一直線に温泉の淵へと飛び移って温泉を覗き込んだ。

 

「あ、ダメダメ! 飼い主さんと一緒じゃないと危なーーーー」

 

クゥーン♪

 

とうじはその子犬を連れ戻そうと近づいていくが・・・・・・。

 

「わぁ、ダメだって!! うわぁっ!!!!」

 

ドボーン!!!!

 

「大変ペエ・・・・・・!!」

 

とうじは捕まえようとして、子犬はその場から移動したため、捕まえ損ねたとうじは温泉へと落ちてしまった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「どうしたの!?」

 

そこへ物音を聞きつけて、従業員の川井とちゆが駆けつける。

 

「ふわぁ、大変!!」

 

「ずぶ濡れじゃん!!」

 

さらに騒ぎを聞きつけて、のどかとひなたも駆けつけた。温泉へと落ちたとうじの半纏はすっかりびしょ濡れになってしまっていた。

 

「あの・・・・・・」

 

「大丈夫よ、とうじ。ここは任せて、濡れた服を着替えてきて」

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

「ペエ・・・・・・」

 

ちゆにそう言われるも、とうじは先ほどよりもさらに落ち込んだ様子で浴場を後にしていく。ペギタンはそれを心配そうに見つめていた。

 

「二人は、ここの掃除をお願いできる?」

 

「わかった♪」

 

「まっかせといて〜♪」

 

「ありがとう♪ 私は客室をチェックしてくるわ」

 

ちゆはのどかとひなたにそう指示を出すと、客室の様子を見に向かっていく。

 

「ふわぁ〜、さすがちゆちゃん♪ 突然のことにも慌てずに、この場を仕切って」

 

「うんうん♪ ハイジャンのちゆちーもカッコいいけど、旅館のちゆちーもめっちゃカッコいい〜♪」

 

「そりゃあ、ちゆさんはこの旅館の未来の女将ですから!!」

 

のどかとひなたは冷静に対処するちゆに感嘆の声を出していた。二人もちゆには負けていられないと、浴場の掃除を始めた。

 

ちゆはその後、従業員たちと一緒に客間のチェックを行っていた。

 

「すべてチェックOKですね!」

 

「はい♪」

 

全ての客間のチェックを終わり、ちゆたちはその場を後にしようとしていた。

 

「・・・・・・!」

 

ふとちゆが何かに気づいて立ち上がって近づいていく。それは花瓶に挿している花で、少し傾いているのが見えた。

 

それが気になったちゆはその花の傾きを直して見栄えをよくする。

 

「これでよし・・・!」

 

「よく気がついたわね」

 

「・・・!!」

 

ちゆは笑みを浮かべて呟くと、そんな彼女に声をかけたのは祖母のはるこであった。

 

「沢泉に来てくださったお客様に、笑顔になっていただきたいから・・・・・・」

 

「いい心がけね。これからもいろいろなことに気を配れるようにね、ちゆ」

 

「・・・はい!」

 

はるこの言葉に、少し嬉しげにちゆが返事をすると、二人は客間を後にした。

 

清掃などの一仕事を終えたのどかたちは休憩を行っていた。

 

「はい、あ〜ん」

 

「ハムッ。モグモグ・・・ワン♪」

 

「「可愛い〜♪♪」」

 

ひなたの友人である、さりなとみづきの二人はラテの食事を与え、笑顔になるその可愛さに悶える。

 

「ふわぁ〜、美味しい〜♪」

 

「甘いのが沁みる〜って感じ♪」

 

のどかとひなたはすこやかまんじゅうを摘みながら、その美味しさに舌鼓を打っていた。

 

そんな中、とうじは・・・・・・。

 

「・・・・・・はぁ」

 

先ほどの失敗を気にしていて、ため息をついていた。

 

「ねっ、一緒に食べようよ〜♪ めっちゃウマだよ〜♪」

 

「・・・・・・いいです」

 

そんなとうじにひなたが声をかけるも、とうじは俯いたまま力なく答えた。

 

「とうじくん・・・?」

 

「よく、失敗ばかりで・・・・・・それを全部お姉ちゃんに助けてもらって・・・・・・同じ姉弟なのに、どうしてうまくできないんだろう・・・・・・」

 

「・・・そんなこと」

 

「わかる!! それ!! すっごいできる兄妹いると、なんか焦るの!! めっちゃわかる!!」

 

「ぁ・・・・・・」

 

落ち込んでいたとうじに、似た境遇のひなたがそう言うと彼は顔を上げた。

 

「でも・・・・・・あんまり焦らなくて、いいと思うよ」

 

のどかは笑顔ですこやかまんじゅうを差し出しながらそう言うと、とうじも少しだけ笑みを浮かべてそれを受け取った。

 

「ペエ・・・・・・」

 

その様子を、ペギタンは心配そうに見つめていた。

 

その後、とうじは一人で旅館内を歩き始めた。

 

「・・・・・・はぁ」

 

とうじはのどかに慰められたものの、先ほどの失敗を完全に吹っ切れてはおらず、ため息をついていた。

 

「おっ? 大丈夫か? 少年」

 

「?・・・っ!! お、お客様!!」

 

その時、前から声をかけられてとうじが顔を上げると黄色い服を着たかなりガタイのいい筋肉質の男性がおり、その人がここに泊まっている客だとわかっていたとうじは驚いた。

 

「力様!! 大変、失礼いたしました」

 

そこへちゆが通りかかり、力と呼ばれた男性に頭を下げて謝罪する。

 

「いやいや! 若いうちは悩みもあるさ!! 元気出せよ!!」

 

「すみませんでした!!」

 

力は笑いながら、肩をポンと叩いて励ましの言葉を言うとその場から歩き去って行った。とうじは改めて謝罪をし、ちゆも一緒に頭を下げた。

 

「・・・・・・とうじ、ちょっとこっちへ」

 

力の姿が見えなくなると、ちゆはとうじと共に旅館の外へと出る。

 

「ミスは仕方ないけれど、お客様の前でため息なんて・・・おもてなしの心をなくすのだけは見過ごせないわ・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

「落ち着くまで、少し休んでいなさい・・・・・・ねっ、とうじ・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

ちゆに叱られたとうじは何も言わずに背を向け、俯いたまま歩いて行ってしまう。ちゆはそんな当時の背を心配そうに見守っていた。

 

うちに住んでいたかすみがいなくなってしまったことで、元気をなくしていたとうじはそれに落ち込んでいるのもあるかもしれない。でも、それはそれ、これはこれ。だからと言って大事なお客の前での、あの態度はさすがに許せなかった。

 

とうじがこれ以上落ち込まないかどうか、心配だ。

 

「ちゆさん!! ちょっとお願い!!」

 

「あっ、はい!!」

 

そんな間も無く従業員から呼ばれ、ちゆはその場から駆け出して行った。

 

「ペエ・・・・・・・・・」

 

ペギタンはとうじの寂しそうな背中を心配そうに見つめていた。

 

その時だった・・・・・・。

 

「おやおや? ヒーリングアニマルがパートナーと離れて、こんなところで何を?」

 

「ペエ??」

 

後ろからかけられた声にペギタンが振り向くと、そこには見たこともない姿の人物が立っていた。

 

「ふふふ・・・♪」

 

その人物は片手で氷の剣を作り出すと、その手を振り上げる。

 

「ペ、ペエ!? ペエェェェェェェェェェェ!!??」

 

ペギタンの動揺すると同時に絶叫をあげると、その氷の刃は無情にも振り下ろされたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、のどかたちが休憩している間、アスミはデジカメで中庭などを写真に納めて廻っていた。

 

「・・・・・・ふふっ♪」

 

納めた写真を見て、笑顔になっていると・・・・・・。

 

ェェェェェェェ・・・・・・

 

「っ?? ペギタンの声でしょうか?」

 

かすかに聞こえたペギタンの声に、アスミは振り向いた。

 

「ペギタン、どうしたラビ??」

 

「何かあったのか??」

 

「行ってみましょうか」

 

アスミはラビリンやニャトランと共に、その声のところへと向かっていく。

 

一方、その頃・・・・・・。

 

「・・・・・・はぁ」

 

ちゆに叱られたとうじは客のいない浴場内のベンチに元気なく腰を下ろして、ため息をついていた。

 

「どうしたら、お姉ちゃんみたいになれるのかな・・・・・・」

 

とうじは先ほどの失敗を気にしていた。同じ家族に生まれた姉弟なのに、能力の差は全然違う。ちゆは未来の女将としてちゃんとしているし、心遣いもできている。

 

それなのに自分はどうだ。張り切りすぎて失敗ばかりだ。先ほども心の油断を招いて、お客様に迷惑をかけてしまった。

 

どうしたら・・・どうしたら、姉のように慣れるのだろうか・・・・・・。とうじは落ち込むと同時に、焦りが生まれていた。

 

そんな時だった・・・・・・。

 

「とうじくん・・・・・・?」

 

「っ!!」

 

背中からかけられた声、とうじはそんな声に目を見開いた。この声はどこかで聞いたかは覚えていないが、昔知っている懐かしい声だ。

 

とうじはゆっくりと後ろを振り向くと、そこに立っていたのは・・・・・・。

 

「やっぱり、とうじくんよね? 少し見ないうちに大きくなったわね!」

 

緑色のショートパンツに、白のブラウスを着て、水色のコートを羽織っている少女だった。

 

「りょうお姉ちゃん・・・・・・?」

 

「そう。私が、りょうよ。ちゆの親友の」

 

とうじは微笑みながらこちらを見る、この少女を覚えていた。この人物がお姉ちゃんの親友だということを、幼い頃に家で一緒に三人で遊んだこともあるということを。

 

「りょうお姉ちゃん!!」

 

「っ・・・!?」

 

とうじは立ち上がって、彼女の体に抱きついた。

 

「会いたかったよぉ!! りょうお姉ちゃん!!」

 

「はいはい、いくつになっても甘えん坊なのは変わらないわね」

 

りょうに抱きついて涙をこぼすとうじ、そんな彼をりょうは優しく頭を撫でてあげる。

 

「ふふふ・・・♪」

 

しかし、その行動とは裏腹に、とうじの見えないところでりょうは不敵にほくそ笑んでいたのであった。

 

一方、その頃・・・・・・旅館の外では・・・・・・。

 

「さてと、僕の餌食になるのにふさわしい、生きているものはいないかなぁ?」

 

ハキケイラは旅館の屋根の上で、怪物にする素体にすべきものを探していた。

 

「まあ、この旅館でもいいんだけどねぇ。でも、それじゃあ面白くない」

 

正直、この旅館ごと蝕んでもいいが、それではあっさりしすぎて面白くない。どうせ蝕むのであれば、スリリングな方法を探さなければ・・・・・・。

 

そんな時だった・・・・・・。

 

キャンキャン!!

 

「??」

 

ふと犬の鳴き声のようなものが響き、ハキケイラは首そ傾げるとその屋根の上から飛び降りる。辺りをきょろきょろと見渡してみると・・・・・・。

 

スンスンスン、キャン!!

 

犬が何やら鼻で匂いを嗅ぎながら、探し回っていた。

 

「ふーん・・・・・・まあ、あれでもいいか」

 

ハキケイラはあの子犬に生き生きとしていることに不快さを覚え、あの動物を利用することを考えた。

 

パンパンパン!! パンパンパン!!

 

早速、ハキケイラはフラメンコのように3回手拍子をし、黒い塊が生成される。

 

「進化したまえ、ナノビョーゲン」

 

「ナノ〜・・・・・・」

 

生み出されたナノビョーゲンは鳴き声を上げながら、子犬へと飛んでいく。

 

キャインキャインキャインンンンン!!!!!!

 

無垢な子犬は悲痛な鳴き声を上げながら、ナノビョーゲンに取り込まれていく。

 

その取り込んだ子犬を主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてその素体を模倣する様々なものが姿として現れていき・・・。

 

「グガ!! ヴォーゲン!!!」

 

犬のような吠え声をあげる、ブラックドッグのような姿のギガビョーゲンが誕生したのであった。

 

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