ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第34話がベースです。
今回は珍しく、この二人にスポットを当てます。


第121話「思い」

 

「・・・・・・・・・はぁ」

 

「・・・・・・・・・」

 

キングビョーゲンの娘たちがアジトとする廃病院、その屋上ではクルシーナが何かをするわけでもなく、空を見上げていた。

 

その隣にはイタイノンがゲーム機をピコピコと動かしていたが、あまり集中できていないようで時折止まっていたりしていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

そんな空をナノビョーゲンの軍勢が群れを作りながら、飛び回っている。三人娘が主に使役しているストームビョーゲンというものだ。

 

クルシーナはその軍勢を眺めながら、何やら曇った表情をしていた。

 

ーーーーしんらちゃん、お加減はどう?

 

「っ・・・・・・はぁ」

 

中島先生の笑顔を思い出すと、悩ましそうにため息をついた。

 

唐突に見上げるのをやめると、コンクリートの上に寝そべり始める。

 

「・・・・・・・・・」

 

イタイノンはクルシーナの側でゲーム機の操作を変わらず続けていたが、時に手を止めて何か考え事をするかのように表情を曇らせる。

 

それを紛らわそうとゲーム機を動かすも、結局はその手を止めてしまう。さっきからそれをずっと繰り返しているのだ。

 

ーーーーらむっち~。

 

「っ!?」

 

なぜかイタイノンの頭の中にひなたの笑顔が映り、ハッとしたイタイノンは首を振って否定する。

 

ふと隣で寝そべっているクルシーナの方を見ると、何やら悩んでいるような表情をしていた。

 

「・・・・・・クルシーナ」

 

「っ?・・・何よ?」

 

イタイノンが声をかけると、クルシーナは淡々としたいつもの調子の声で言った。

 

「何か悩んでるの・・・・・・?」

 

「・・・・・・は?」

 

話しかける前の顔を見てイタイノンがそう言うと、クルシーナが不機嫌そうな顔をする。

 

「何言ってんの? アンタは」

 

「顔が暗そうだったの。帰ってきた後のクルシーナ、なんか変なの」

 

「っ、そんなわけないじゃん。見間違いよ」

 

イタイノンが指摘すると、クルシーナは素っ気なく否定する。

 

「そういうアンタも、ゲームに集中できてないでしょ」

 

「っ、相手が強すぎて不愉快なだけなの・・・!」

 

「嘘つけよ。アンタに限ってそんなことで、ゲームの手を止めるわけないでしょ。絶対に何かあったに決まってる・・・!」

 

「とにかくそうなの・・・!!!!」

 

「・・・・・・あっそ。アタシの考えすぎかもね」

 

クルシーナとイタイノンはお互いに言い合うと、クルシーナは背を向けて寝返り、イタイノンはゲーム機に視線を釘付けにした。その後は、何も話すことはなかったが・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

「っ・・・・・・・・・」

 

クルシーナも、イタイノンも、何だか寂しそうな表情へと変わっていた。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

その様子を屋上の扉の開いた隙間から、ヘバリーヌとフーミンが見つめていた。二人はお互いに顔を見合わせると、ゆっくりと屋上の扉を閉める。

 

「クルシーナお姉ちゃん、ノンお姉ちゃん・・・元気なさそうだったね~」

 

「なんだか悩んでいるようにも見えてたですぅ・・・・・・」

 

「お姉ちゃんたちの悩みって何かなぁ~?」

 

ヘバリーヌとフーミンはそんなことを話しながら、廃病院の廊下を歩いていた。

 

「フーちゃん、なんだと思う~?」

 

「地球を蝕むことがうまくいってない、とかですかぁ・・・?」

 

「でも、それはいつものことだよねぇ~?」

 

ヘバリーヌが問いかけてみると、フーミンはそう答える。でも、それがうまくいってないのはいつものことだから、別のことで悩んでいると考えてしまうのだ。

 

「んぅ・・・・・・イタイノンお姉様のことがわからないなんて・・・・・・!」

 

「フーちゃん・・・本当になんなんだろうねぇ~?」

 

「私たちにできることは、ないですかぁ・・・?」

 

ヘバリーヌとフーミンは一緒に考え始めた。

 

「やぁ、二人とも」

 

「あ、ケイラちゃん!」

 

「むぅ・・・・・・」

 

そこへ正面からハキケイラが現れ、ヘバリーヌとフーミンは想い想いの反応を返す。

 

「何を悩んでいるんだい?」

 

「それがね~・・・・・・」

 

ヘバリーヌはハキケイラに素直に考えていることを話す。

 

「なるほど、クルシーナ姉さんと、イタイノン姉さんがね・・・・・・」

 

「うん。何か力になれないのかなぁ~・・・・・・」

 

「私も、お姉様たちの力になりたいですぅ・・・・・・」

 

「それだったら、様子を見るよりは直接聞いたほうがいいんじゃないか? そのほうが早いだろう」

 

ハキケイラはそれを聞いて、どうしようか悩むヘバリーヌとフーミンに対して真剣に答える。

 

「でも~、お姉ちゃんたち、あれだと言ってくれなさそうなんだよねぇ~・・・・・・」

 

「さっきもクルシーナお姉様と喧嘩してたですぅ・・・・・・」

 

「う~ん・・・・・・」

 

ハキケイラのアドバイスはあまり参考にならず、三人はその場で悩み始めてしまった。何も答えてくれない姉たちに、どうすれば悩みを解決できるのか。

 

「あなたたち、ここにいたんですか」

 

「ドクルン姉さん!」

 

「ドクルンお姉ちゃん!」

 

「ドクルンお姉様・・・!」

 

「お父さんが呼んでますよ。進化した私たちの様子を伺いたいんですって」

 

と、そこへドクルンが現れ、キングビョーゲンの招集が掛かっていることを伝えるのであった。

 

場所は変わって、ビョーゲンキングダム。そこにはキングビョーゲンの招集の元、幹部全員とカスミーナが集まっていた。

 

「・・・皆、新たな力を得たようだな。さらに一歩抜き出るのは・・・誰か?」

 

キングビョーゲンがそう話す。進化したビョーゲンズたちの中で、一体誰が成果を上げてくるのか、今回の議題はそういうことであった。

 

「それはもう、このシンドイーネでございますっ。何しろ最初に新たな力を得たのは、この私でございますから♪」

 

「進化したっておばさん頭なのは変わんないの」

 

「誰がおばさんですってぇ!!??」

 

「前よりも怒りっぽくなってるの。立場が危うくなって、焦ってる証拠なの」

 

前に出るシンドイーネに対して、イタイノンはいつも以上の皮肉を返すと、二人は言い争いあう。

 

「それだけ必死になってるってことは、何か抜かれたくない何かがあるんじゃないの?」

 

「っていうか、焦ってるだけだろ」

 

クルシーナとダルイゼンは冷ややかな表情を見せながらそう言う。

 

「シンド姉、いつもより落ち着きないよね~」

 

「焦ってる・・・焦ってるですぅ・・・・・・むにゃむにゃ・・・・・・」

 

「僕はそういう女は好みじゃないんだけどなぁ」

 

ヘバリーヌはフーミンやハキケイラに投げかけると、それぞれの反応を返した。

 

「な、何よ・・・どいつもこいつも焦ってるって!!」

 

言い返すシンドイーネだが、イタイノンやダルイゼン、ヘバリーヌが言うように焦っているようにも見えてしまう。

 

「俺たちを出し抜いて、新たな力を得たつもりだったのかな?」

 

「ふ、ふざけないでよ!! 私のどこが焦ってるっていうのよ!!??」

 

「だって、いつもよりムキになってるよ~」

 

「焦ってる・・・焦ってるですぅ・・・すぅ・・・・・・」

 

「アタシたちが進化したから焦ってんだよ。焦りが顔に書いてあるもんね」

 

シンドイーネがムキになると、他のメンバーも次々に皮肉を漏らす。

 

「う、うるさいわよ!! 少なくとも、あんたらなんかには負けやしないわ!! ふんっ!!」

 

シンドイーネは怒りの声でそう言うと、その場から姿を消していった。

 

キングビョーゲンとの接見を終え、二人で一緒にいるヘバリーヌとフーミン。

 

「シンド姉、何焦ってんだろ~? シンド姉らしくないよね~」

 

「んぅ・・・知らないですぅ・・・・・・」

 

二人は先ほどのシンドイーネのことを思い出しながら話していた。

 

「あっ・・・お姉ちゃんだ~!」

 

「っ! イタイノンお姉様もいるですぅ・・・!!」

 

そんな二人の視線にクルシーナ、イタイノンの姿が見えた。フーミンはイタイノンを見るなり、目が覚めたように声をあげる。

 

「はぁ・・・ふぅ・・・・・・」

 

クルシーナはビョーゲンキングダムの暗い空を見上げながら、ため息をつき、自身の手に胸を当てていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

イタイノンはゲーム機をピコピコしていたが、時折手を止めてしまう。

 

「先生・・・・・・」

 

「あぁ~もぉ~・・・・・・イライラするの・・・・・・!!!!」

 

クルシーナは切なそうな表情をしながらそう呟き、イタイノンはゲーム機を地面に叩きつけながら頭を掻きむしっていた。

 

「お姉ちゃんたち、やっぱり元気ないよね~・・・・・・」

 

「んぅぅ・・・・・・」

 

二人はお互いに目を見合わせて、困ったようにそう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある週末の日、すこやか市にある陸上競技場では「秋の対抗陸上大会」が開かれている。そこでは多くの選手が競い合っており、その中にはもちろんちゆの姿もあった。

 

「・・・・・・・・・」

 

ハイジャンプの選手であるちゆの出番が丁度やってきたところであった。

 

「ちゆちゃ~ん!!」

 

「いっけぇ~!! ちゆち~!!」

 

のどかたちは、観客席からちゆを見守りながら応援していた。

 

「ちゆちゃーん、頑張ってぇー!!」

 

そこには病院がお休みの中島先生も一緒に観戦しに来ていた。

 

「ちゆ~!! 行くぺェェェェェ!!!!」

 

「ペギタン、ダメラビ!!」

 

「落ち着けって!!」

 

ラビリンたちヒーリングアニマルたちもこっそりと応援していたが、ペギタンが大きな声をあげて応援しようとしていたため、ラビリンとニャトランがとっさに抑えた。

 

「ふふふっ、元気なのね♪」

 

中島先生はペギタンの大きな応援の声を聞いて、笑みを漏らした。

 

ちゆは高く備えられた棒へと駆け出し始め、助走をつける。そして・・・・・・。

 

「・・・っ!!」

 

棒の上を華麗に飛び、無事にハイジャンプを成功させた。

 

「「っ、クリア~!!」」

 

「ワンワ~ン♪」

 

ちゆが成功したのを見て、のどかやひなたは喜び、アスミや中島先生は拍手を送った。

 

「やったあ!お姉ちゃ~ん!!」

 

「良いぞ~、ちゆ~!!」

 

「ちゆ~! 県大会の記録更新だよ~!!」

 

応援に来ていた弟・とうじや父・りゅうじも喜び、同じ部員であるりょうこは声援を送った。

 

計測員が先ほど跳んだ高さよりも高い位置に棒をセットする。

 

「・・・西中、高美ツバサさん」

 

「はいっ!!」

 

計測員に名前を呼ばれたすこやか西中の選手であるツバサが跳ぶことになり、ツバサは駆け出して助走を付けると、飛び上がった。

 

しかし・・・・・・。

 

「っ・・・くっ!」

 

跳び越えたと思った瞬間、足が棒に引っかかってしまい、ツバサはハイジャンプに失敗してしまう。

 

「まぁ、惜しかったわね・・・!!」

 

「こ、これって・・・ちゆちーが飛べたら優勝じゃん!?」

 

「ふわぁぁぁ・・・ドキドキするよぉ・・・!!!!」

 

「お姉ちゃん、頑張れ・・・!!」

 

「ちゆ、跳べるぞ・・・絶対に跳べる!!」

 

ツバサの後は、ちゆの番であり、これを跳ぶことができれば優勝だ。それがわかるとのどかたちはハラハラした様子で見守る。

 

「ちゆぅ・・・しっかりペエェ・・・・・・」

 

ペギタンも声援を送っていたが、なぜか後ろ向きで目を手で隠していた。

 

「ペギタン・・・見ないのですか・・・!?」

 

「心配で見てられないペエェ・・・・・・!」

 

「パートナーがそんなに大切だってこと、わかるわ・・・・・・!」

 

アスミが見ると、ペギタンは後ろを向いたまま地面に顔を伏せており、中島先生は本当にちゆが大事なんだということを知った。

 

そんな中・・・・・・。

 

「・・・すこやか中、沢泉ちゆさん」

 

「はいっ!!」

 

そして遂に、ちゆの番がやってきた。ちゆは一旦呼吸を整えると勢いよく駆け出す。そして・・・・・・。

 

バッ・・・・・・ドサッ!!

 

ちゆは棒を跳び越え、それを見ていた審判は成功を示す白旗をあげた。

 

ワァァァァァァァァァァ!!!!

 

それを見ていた会場は盛り上がって、大歓声が上がった。

 

「やったぁ~、ちゆちゃ~ん!!!!」

 

「優勝だよぉ~っ!!!!」

 

「素晴らしいジャンプでした♪」

 

「ワウワウワーン♪」

 

「よく頑張ったわね! ちゆちゃん!!」

 

のどかたちはその大健闘に、みんなが喜ぶ。

 

「はっ!? ち、ちゆは!? ちゆは!?」

 

ペギタンは終わった後に顔を上げ、自分のパートナーの結果を気にし始めた。

 

「優勝です♪」

 

「あなたのパートナーはやったのよ、ペギタン♪」

 

「はぁっ♪ やったペエェェェ~!!!!」

 

アスミや中島先生が笑みを浮かべながらそう言うと、ペギタンは飛び上がりながら大喜び。それをラビリンとニャトランが阻止した。

 

「お姉ちゃん跳んだよ~!! 優勝だよぉ~!!!!」

 

「跳んだねぇ・・・優勝だねぇ・・・・・・!!!」

 

「りょうお姉ちゃんにも、見せてあげたかったなぁ・・・・・・!」

 

とうじもそれを見て喜んでおり、りゅうじは嬉し泣きをしながら喜んでいた。そんな中、とうじは姉の友人であるりょうのことを思い出していた。

 

「・・・跳んだんだ、私」

 

日本記録を超える高さを跳ぶことに成功したちゆだが、いまだに実感できておらずにマットの上で空を呆然と見つめていた。

 

「・・・沢泉さん」

 

「・・・!」

 

そこへツバサが歩み寄ってきて、ちゆは体を起こした。

 

「・・・やられちゃったわね、おめでとう」

 

「・・・っ、ありがとう!」

 

ツバサから称えられて手を差し伸べられ、ちゆは笑顔で彼女の手を取った。

 

「ふわぁ~♪」

 

「おぉ~! ライバル同士の友情みたいな?」

 

「ああいうの、良いわね♪」

 

そのツバサとちゆの様子をのどかたちはみていて、そう話していた。

 

「次は・・・世界で戦いましょ?」

 

「・・・えっ?」

 

ちゆはツバサのその言葉に困惑するが、ツバサは手を離してその場から離れていく。ちゆはしばらくその場に立ち尽くしていた。

 

「っ、ちゆ~!!」

 

「わっ! ふふふっ」

 

そこへ同じ部員のりょうこが嬉しさのあまりちゆに抱きつき、ちゆ自身も笑みを浮かべた。

 

「「「「かんぱ~い!!!!」」」」

 

のどかたちはちゆの優勝を祝ってひなたの家の近くのワゴンカフェで、グミジュースで乾杯をしていた。

 

「優勝おめでとう!」

 

「感動しました♪」

 

「だよねだよね~♪」

 

「ありがとう!!」

 

のどかたちはちゆの優勝を称え、ちゆは彼女たちに笑顔を見せる。

 

「すこ中で優勝したのハイジャンプだけでしょ? すご~い♪」

 

「いえ、そんな・・・!」

 

「今日はお祝いに、私の奢り♪」

 

「やったぁ~! ありがと~! お姉~っ♪」

 

「ありがとうございます!!」

 

ひなたの姉・めいが奢ってくれると言うと、ひなたは喜び、ちゆはお礼を言った。

 

「中島先生もどうぞ♪」

 

「いいんですか? 私は学校の先生じゃないのに・・・」

 

「いいんですよ。ひなたたちの知り合いですから、そのぐらいは気にしません♪」

 

「そうですか・・・じゃあ、遠慮なく・・・・・・」

 

「ナカッチ先生! お姉のジュースおいしいんだよ~! アイデアはあたしだけど♪」

 

「・・・確かに、おいしいわ」

 

中島先生にも奢ると言うと、先生は戸惑うが、めいがそう言うと先生はジュースを飲み始めた。

 

(りょうにも、私のハイジャンプ・・・見せたかったなぁ・・・・・・)

 

ちゆはふと親友の顔を思い出しながら、顔を少し俯かせる。

 

そんな中、近くの茂みでは・・・・・・。

 

「ち~ゆぅ~! 頑張ったぺェェェェ・・・・・・」

 

「いい加減泣き止めよ・・・・・・」

 

「競技場からず~っとラビ・・・・・・」

 

ペギタンが自分のジュースを持ちながら嬉し泣きしており、ニャトランとラビリンは呆れていた。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

 

「ワンワン♪」

 

そんな彼をラテが慰めようと擦り擦りするも、ペギタンは泣き止むどころか余計に泣き出すのであった。

 

「ちゆちーさぁ、ハイジャンプの選手とか目指さないの?」

 

「あぁ♪ 世界の陸上大会に出るとか?」

 

「世界・・・・・・」

 

ひなたやのどかにそう言われたちゆは去り際のツバサの言葉を思い出していた。

 

『次は・・・世界で戦いましょ』

 

ツバサが今度は世界で戦おうと宣戦布告。しかし、ちゆは首を振る。

 

「考えたことないわ」

 

「うぇ? 目指せばいいのに~・・・・・・」

 

「どうして目指さないのですか?」

 

「・・・・・・私よりも凄い人、いっぱいいるもの」

 

ちゆは振り払うかのようにそう言うと、ジュースを啜る。

 

「・・・・・・・・・」

 

中島先生はちゆの言動がどこかぎこちないことを気にしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・・・・・・。

 

「おはよう、ちゆちゃん」

 

「おっは〜♪」

 

「おはよう」

 

朝、のどかたちはいつものように投稿し、門を通る手前でちゆと出会って挨拶を交わした。

 

「おはようございます!!」

 

「うわあっ!?」

 

そんなちゆの背後を何者かが挨拶し、驚いたちゆが振り返るとクラスメイトの益子道男の姿であった。

 

「うわっ・・・出た、新聞部」

 

「すこ中ジャーナル・・・編集長兼敏腕ジャーナリストの益子道男ですっ!!」

 

ひなたが新聞部の登場に、嫌そうな顔をする。

 

「ちゆちゃんに、何か用?」

 

「取材ですよ!独占取材!!」

 

「取材? 私に?」

 

のどかがそう問いかけると、益子はちゆに取材に来たと言い、ちゆは目を丸くする。

 

「オフコース!! 昨日の対抗陸上大会で、我が校唯一の優勝者、沢泉ちゆさん!! その特集号を組むことになりましたっ!! タイトルはズバリ!!『すこやか中のハイジャンプリンセス! 大空を飛ぶ華麗なるその姿は鳥か!? はたまた蝶か!? ちゆ沢泉!! すこやかに舞う!!』!!」

 

「ふわぁ・・・長いタイトルだね・・・・・・」

 

「そして・・・ダサっ・・・」

 

「っ!? 失敬ですねっ!!」

 

益子がそう主張すると、のどかは少し驚いていて、ひなたは冷ややかな表情をしていた。ひなたのその反応に益子が反論をしようとすると・・・・・・。

 

「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ〜♪」」」」

 

「うぇっ!?」

 

大勢の女性たちがちゆの元に集まり、益子は突き飛ばされる。

 

「沢泉先輩!! 昨日のジャンプ見てました!! 素敵ですぅ〜!!」

 

「次の大会も頑張ってください!!」

 

「負けないでくださいね!!」

 

「あ・・・ありがとう・・・・・・」

 

女性たちはちゆを褒め称え、応援の言葉を残すと校舎へと走り去っていった。

 

そしてその日の放課後・・・陸上部が部活を行なっているグラウンドの周りには、すこやか中の生徒だけではなく、多くの他校の生徒が集まっていた。

 

「すごい見学の数だね〜」

 

「ちゆちー人気、すご〜い!!」

 

のどかとひなたはちゆの見学に来たその人数の多さに驚いていた。

 

そして、当の本人はベンチの上で・・・・・・。

 

「すると・・・旅館のお手伝いをしながら、家ではどのようにハイジャンプを?」

 

「基本、家では跳んでないけど・・・・・・」

 

益子の新聞部の取材を苦笑しながら受けていた。

 

「沢泉さん」

 

「??」

 

「明日の放課後、『週刊陸上TOP』がインタビューをしたいんですって」

 

「えっ? 私にですか?」

 

そこへ陸上部の顧問の先生から他の新聞への取材があることを聞き、ちゆは驚く。

 

「ふわぁ〜♪」

 

のどかは驚きつつも、喜びの声をあげていた。

 

「すご〜い!!」

 

「未来を担う期待の陸上界のホープっていうことで、西中の高美ツバサとのダブルインタビューになるそうよ」

 

先生からそう言って雑誌を差し出されるが、ちゆは何やら浮かない様子。

 

「・・・・・・陸上界の未来を担うなんて」

 

ちゆは雑誌の記事を見ながら、不安そうな表情を浮かべていたのであった。

 

そして、翌日の放課後・・・・・・陸上競技場でのインタビューが始まった。

 

「それじゃあ、柔軟している写真を撮りながらインタビューしますね」

 

「「はい!!」」

 

「高美さんがハイジャンプを始めたきっかけは?」

 

ちゆは西中の高美ツバサとインタビューに臨み、2人の様子をカメラマンが撮りつつ記者がインタビューを始めていく。

 

「・・・小さい時、地面を蹴って飛び上がったら、どんどん高く跳べる様な気持ちになったのが始まりです。私に翼は無いけど・・・空へ高く跳びたいって思ってます」

 

ツバサは陸上競技に、ハイジャンプに掛ける思いを話す。

 

「なるほど・・・沢泉さんは?」

 

「私は・・・小さい時に、空を泳ぎたいって思ったのがきっかけです」

 

「へぇ~、跳びたいじゃなくて泳ぎたいだったの?」

 

「えぇ、そうなの」

 

ちゆも同じように思いを話し、ツバサがそれに反応した。

 

「面白いわ。あなたは空を泳ぎたい、私は跳びたい・・・案外似てるのかもね、私達」

 

「ふふっ・・・友達になれそうで嬉しい」

 

「・・・ライバル、でしょ?」

 

「? え・・・えぇ・・・」

 

ライバル・・・・・・ちゆは友達だと思っていたが、ツバサからはそう言われ、少し困惑した表情を見せる。

 

「そういえば・・・高美さんは来週から海外に行くんでしたね?」

 

「えっ・・・?」

 

「はい。親の仕事の都合で・・・国内での大会は先日が最後で絶対に優勝したかったんですけど、沢泉さんに負けちゃいました・・・でも、これをバネに頑張りますっ」

 

「期待していますよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

ツバサが海外へと行く。ちゆは記者が触れて、それに答えたツバサをじっと見つめていた。

 

しばらくして、無事にインタビューを終えたちゆとツバサはロッカールームで帰り支度をしていた。

 

「楽しかったわ、沢泉さん」

 

「私も」

 

「世界の大会であなたと会えるのを・・・楽しみにしてるっ」

 

「・・・・・・・・・」

 

ちゆはそのツバサの言葉に答えられなかった。なぜなら・・・自分は・・・・・・。

 

「・・・・・・高美さん」

 

「うん?」

 

「ごめんなさい。私は世界とか考えてないの・・・・・・」

 

「・・・・・・えっ?」

 

ちゆは自身のそんな思いを告げると、ツバサはショックを受けたような表情を見せた。

 

「ハイジャンは好きだし、高校でも続けようと思ってる・・・でもその先は・・・」

 

ちゆのそんな言葉を聞いたツバサの反応は・・・・・・。

 

「・・・・・・はぁ、ガッカリ」

 

「えっ・・・?」

 

失望の声だった。ツバサは先ほどまでとは違い、顔をちゆから背けていて、少し苛立っているようにも見えた。

 

「あなたのハイジャンへの思いって、そんなもんだったんだ・・・・・・」

 

「・・・どういうこと?」

 

「大会で優勝したら『はいそこまで』って事?・・・あんな凄いジャンプして、嬉しかったらそこから先は別に良い?」

 

「っ、別に良いなんて思ってないわ!!」

 

ガシャン!!!!

 

「っ・・・・・・!!」

 

ちゆが言葉を返そうとしたが、ツバサはそれを遮るかのようにロッカーの扉を閉めた。

 

「あなたに負けて悔しかった・・・・・・悔しくて悔しくて眠れなかった・・・・・・でも、自分よりも高く跳ぶ人がいたっ。だから、私はもっと高く跳べる様に練習しようって!! 私は世界を目指して真剣にやってるのに、あなたはっ!! 一瞬でもライバルと思ったなんて・・・・・・っ」

 

「高美さん!! っ!?」

 

ツバサは自分のその思いを吐露して去っていこうとする。ちゆはそれを止めようとしたが、頭の中にある人物がフラッシュバックした。

 

『あなたのそういう煮え切らないところが大嫌いなのよ!!』

 

以前、とうじをギガビョーゲンにしたドクルンこと、りょうだった。ギガビョーゲンと戦っている際に怒りを露わにしたりょう、その姿がツバサと重なった。

 

「・・・私、大会の後、必死に練習して・・・あなたの記録より高く跳んだわよ」

 

「っ!?」

 

「さようなら・・・せいぜいお遊びのハイジャンで頑張るといいわ」

 

「っ、高美さん!!」

 

肩越しにこちらを振り向いてそう告げたツバサは、ちゆを睨むように見た後、そのままロッカールームを去っていってしまった。

 

『強がるんだったら、バカにだってできるのよ』

 

ここでもりょうの言葉がフラッシュバックしたが、それと並んでちゆの頭の中にはある言葉も残っていた。

 

「・・・私のハイジャンが・・・・・・お遊び?」

 

自分のハイジャンはお遊び・・・・・・ツバサにそう言われた、ちゆは顔を俯かせたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜、お姉ちゃんのために何かできないのかなぁ〜・・・?」

 

「すぅすぅ・・・なんとかしたいですぅ・・・・・・」

 

その頃、ヘバリーヌとフーミンは人間に擬態して街の中を歩きながら、考え事をしていた。それはクルシーナとイタイノン、最近この二人は何やら元気のない様子だ。彼女たちのためになんとかしてあげたいと考えている。

 

ヘバリーヌは頭に両手の指を突き立てながら首を振り、フーミンはウトウトしながら考える。

 

「・・・あっ、そうだぁ! すこやかまんじゅうを買ってあげるのはどうかな〜?」

 

「んぅ・・・あれは美味しいですぅ・・・・・・」

 

ヘバリーヌは元気な声で提案すると、フーミンは美味しいと言いつつも、なんだか浮かない様子だ。

 

「でも、それで元気になるなら・・・とっくに元気になってるですぅ・・・?」

 

「う〜ん・・・そうかぁ〜・・・・・・」

 

フーミンはその提案を却下すると、ヘバリーヌは困ったように考え始める。

 

「あっ・・・ヘバリーヌちゃんたちもせっかく進化したんだし、この力を使って一気に地球を気持ちよくしちゃうっていうのはどぉ〜??」

 

「・・・それいつもやってることれすぅ」

 

「むぅ〜・・・・・・」

 

ヘバリーヌは再び提案するが、フーミンはそっけなく否定し、ヘバリーヌは頬を膨らませ始める。

 

「フーちゃんも考えてよ〜!! さっきから寝てばっかじゃ〜ん!!」

 

「すぅ・・・すぅ・・・・・・考えてるれすぅ・・・・・・!」

 

ヘバリーヌはプリプリ怒ると、フーミンはうとうとしながらも反論する。

 

「ん〜・・・・・・・・・」

 

「すぅ・・・・・・・・・」

 

二人はそのまま立ち止まったまま、足を止めて考え込み始めてしまった。でも、アイデアはあまり出なさそうな様子だ。

 

「・・・・・・っ!!」

 

「ん? 何々〜フーちゃん。何か思いついたぁ〜??」

 

フーミンがハッとするように寝ぼけ目を見開くと、ヘバリーヌが反応して詰め寄る。

 

「だったら・・・プリキュアの関係者を狙えばいいですぅ・・・・・・」

 

「ん〜? なんで〜??」

 

フーミンが口元に笑みを浮かべながらそう言うと、ヘバリーヌは首を傾げる。はっきり言うと、さっきのヘバリーヌの提案とそんなに変わっていないが・・・・・・。

 

「プリキュアは活き活きしててイライラするですぅ・・・なら、その関係者も活き活きしているはずですぅ・・・・・・その人をギガビョーゲンに変えて蝕めば一気にいけるはずですぅ・・・プリキュアの心に攻撃することもできるですぅ・・・・・・」

 

「おぉ〜!! フーちゃん、さすが!! アッタマいい〜♪」

 

フーミンが説明すると、ヘバリーヌはフーミンを褒め称える。正直、どこがさすがなのかは皆目見当もつかないのだが・・・・・・。

 

「で、その関係者はどこにいるのかなぁ〜?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・フーちゃん?」

 

ヘバリーヌが再び問いかけるが、フーミンからの返事はない。変に思ったヘバリーヌがフーミンに声をかける。すると・・・・・・。

 

コクン。

 

「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・・・・」

 

フーミンは唐突に首を前に倒す。ヘバリーヌが近づくと、フーミンは寝息を立てていた。

 

「フーちゃん、寝ないでよぉ〜!!」

 

「眠いですぅ・・・・・・」

 

「フーちゃん!! フーちゃーーん!!!!」

 

ヘバリーヌはフーミンの肩をぐわんぐわん揺らすも、フーミンは眠いと言って起きる気配がない。

 

「もぉ〜・・・フーちゃんったら〜・・・ヘバリーヌちゃんを焦らしてるのぉ? なんだかもどかしくて、気持ちいいなぁ〜・・・・・・!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

ヘバリーヌは頬を膨らませたかと思ったら、妙に声を明るくして悶え始める。しかし、フーミンはリアクションをせずに眠ったままだ。

 

ポーズで固まったままのヘバリーヌはそれを崩すと、フーミンを見つめる。

 

「・・・・・・つまんない」

 

ヘバリーヌは立ったまま眠っているフーミンを見つめながら言った。

 

「いいもーん!! ヘバリーヌちゃんはいつも通り地球を気持ちよ〜くするんだもん!! ヘバリーヌちゃんたちが頑張って活動すれば、お姉ちゃんだって喜ぶんだからぁ〜!!」

 

「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・・・・」

 

ヘバリーヌはムキになったり、頬に手を当てて恍惚とした表情を浮かばせながら、眠るフーミンを引きずって再び二人で歩き出すのであった。

 

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