ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
今回はイタイノンがメインスポットとなります。
ちなみに最後はかすみの状況も少し入れていますが、今回の話とは関係ないです。
「イタっち?」
「・・・・・・・・・」
ビョーゲンキングダムーーーーそこでシンドイーネが誰かの名前を呼んでいるようだが、誰もそれに反応するものはいない。
岩の柱の下にはグアイワルが筋トレ道具を作っており、その周囲にはイタイノンが大きな岩の上に座りながらゲームをしている。
「ちょっと、イタっち・・・!!!!」
「・・・・・・・・・」
「・・・イタっち!!!!」
「っ? もしかして、私なの・・・・・・?」
シンドイーネはどうやらイタイノンを呼んでいたようで、彼女が声を大きく上げてやっと反応を返した。
「・・・それ、取ってくれる?」
「・・・・・・・・・」
シンドイーネはそう言って目先にある孫の手のようなものに指をさすと、イタイノンはを黙ってシンドイーネをじっと見つめる。
「・・・・・・自分で取れなの。私はお前の召し使いじゃないの」
「何よ~・・・ケチ~・・・!!」
イタイノンはすぐに視線をゲーム機に戻すと冷たく言い放ち、シンドイーネは顔を膨らませながら不満を口にする。
「じゃあ、ワルっち・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
シンドイーネは変わった呼び方でグアイワルを呼ぶも、彼も自作の筋トレ道具を作るのに夢中で気づかない。
「ワルっち・・・!!!!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・ワルっちってば!!!!」
「っ!? 俺か!?」
シンドイーネが大きく声をあげると、グアイワルは自分が呼ばれているだろうことにようやく気づいた。
「イタっちがそれ取ってくれないから、代わりに取ってくれる?」
シンドイーネは先ほどと同じものを指差すと、グアイワルは少し唸った後にそれを手に取って、シンドイーネに渡した。
「って、そうではない!! 何故俺をワルっちと呼ぶ!?」
「お前、どうしたの? とうとう相手の名前を覚えられないほどバカになったの?」
危うく釣られそうになったグアイワルがそう言い、イタイノンが面倒臭そうに聞いてくる。
「そうじゃないわよ!! 今日はキングビョーゲン様にお会いできなくて、テンションが上がらないのよ・・・・・・だから、あんたたちの名前なんて呼ぶのも面倒臭い」
「・・・・・・そんなに長々と喋っといて、何が面倒臭いの?」
「そうよ。こっちからしてみれば、アンタの方が面倒臭いわよ」
「むぅ・・・・・・」
シンドイーネの話を聞いていたダルイゼンとクルシーナがそう言うと、シンドイーネは顔を顰めて唸る。
「ふんっ。キングビョーゲン様と呼ぶ方が長いわ」
「私はパパと呼んでいるから面倒臭くないの」
「キングビョーゲン様はいいんですぅ~!! あんたなんかもう『グ』で良いわよ!! この『グ』!!」
「なんだと!? ならばお前は『キングビョーゲン様に1ミリも相手にされてなイーネ』だ!!」
「はあぁ!?」
グアイワルが言い返すと、シンドイーネは近くにあった岩に足をかけてグアイワルを見下ろした。
「わたしは!! 『カッコイーネ』だし!! 『アコガレルーネ』だし!! 『スタイルも性格も最高、モテモテで困っちゃう~ネ』だし!! 『いつかキングビョーゲン様とラブラブ~ネ』ですぅ~♡」
「・・・・・・・・・」
「はぁ・・・・・・もう付き合ってらんないの・・・・・・」
「行こ行こ、『メンドクサイーネ』から離れましょ」
明らかに自分の世界に入っているシンドイーネに、グアイワルは呆れてその場を離れ、イタイノンとクルシーナは絡むのも面倒になってその場を離れる。
「もう名前ですらないし・・・・・・」
一人残ったダルイゼンは小さくそう呟いていた。
「全く、シンドイーネは相変わらずね」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・イタイノン?」
クルシーナが歩きながらそう話すも、イタイノンは何か考え事をしているかのように黙っている。
「・・・そう言えば、変な名前で呼んでくるやつがいたの」
「ん? あぁ~、あの黄色いヤツ? 前、アタシのことをしんらっちって呼んでたけどね」
クルシーナは、キュアスパークルでもあるひなたがイタイノンを人間時代の名前を文字って『らむっち』という変わった名前で呼んでくること、自分のことも同じように『しんらっち』と呼んでいたことを思い出していた。自分が人間だった頃もそう呼んでいたが・・・・・・。
実はひなたの他にも自分を変わった名前で呼ぶ人は、もう一人いた。イタイノンが思い出していたのはその娘だった。
「違うの。昔、キュアスパークルと一緒にいた女なの」
「いや、誰よ? 女って言われてもわかんないっての」
イタイノンはそう言うも、全く見覚えのないクルシーナはそう答える。
「どうせお前に言ったってわかんないの。だって、私とキュアスパークルの知り合いなの」
「あっそ。別にわかりたくもないけど」
そう言いながら離れていくイタイノンに、クルシーナは不機嫌そうな表情で見つめているのであった。
ある日、のどかたちのすこやか中学校では・・・・・・。
キーンコーンカーンコーン♪
「次の小テストは3日後です。Understand?」
「「「「「えぇ~!!??」」」」」
「あはは・・・See you」
のどかたちのクラスでは英語の授業で行った小テストを返され、さらには3日後だと聞かされた生徒たちは嫌そうな声を出し、先生は苦笑いをしながら教室を後にした。
授業が終わった後・・・・・・。
「・・・・・・前よりちょっとだけ上がったっ」
のどかは返ってきた小テストの結果を見てそう呟く。結果は84点だ。
「よーし!! 次はもっと・・・!」
次の小テストも頑張ろうとやる気を見せていたのどかがふとちゆの席の方を見る。
「・・・・・・・・・」
ちゆの机の上には100点満点のテスト用紙が置かれていた。
「ふわぁ~!! ちゆちゃんすごい!! 部活も大変でしょ? もしかして、徹夜・・・?」
「ふふっ、まさか、授業を真面目に聞いていれば、徹夜なんてしなくても・・・・・・」
余裕のあるちゆがのどかにそう話していると・・・・・・。
「・・・・・・不公平だぁっ」
「ん?」
ちゆの前から声が聞こえ、見てみるとひなたがどんよりしたようなオーラを漂わせながら、まるでゾンビのようにぬっと這い出るように顔を出した。
「・・・・・・夜中まで勉強してもダメだった、可哀想な子もいるんですよぉ~?」
ひなたが死んだ目のような顔をしながらそう言う。そんな彼女の目元にはクマが出来ていた。その表情にのどかとちゆは少し引いていた。
「あぁ・・・・・・」
「ひなたちゃんは何点だったの・・・・・・?」
苦笑いしながらのどかが恐る恐る聞くと、ひなたはちゆの机の上に自身のテスト用紙を静かに置く。結果は32点、のどかやちゆよりも明らかに低かった。
「あぁ・・・ま、まぁ、次こそ頑張ればいいのよ!!」
「そ、そうだよ! それに勉強が全てじゃないよ! ひなたちゃんは歌も上手いし、洋服のセンスもいいし!!」
ちゆやのどかはひなたを励ますが、彼女はクマができたような顔で虚空を見つめていた。まるで生気がないとでも言いたげな表情だった。
そんなひなたは昔のことを思い出していた。
『明日のテスト全然勉強してないよ〜!! どうしよぉ〜!!!!』
『そんなのお前が前もって勉強してないのが悪いの。私はとっくに準備はできてるの』
『らむっち〜、なんとかしてよぉ〜!!!!』
『この前、教えたって全然できてなかったの。どうせお前には無理なの。諦めるの』
『えぇ〜、そんなぁ〜!!!!』
「っ・・・・・・」
小学校の頃、小テストのための勉強をしていないひなたがらむに泣きつくも、冷たく突っぱねられたことだった。しかも、過去の言葉の一つ一つが今のひなたの心にグサリと突き刺さる。
「うぅ〜、嫌なこと思い出しちゃった〜・・・・・・」
「嫌なことって・・・・・・?」
「昔、全く勉強できなくてらむっちに泣きついたのに、テストが赤点だったこと・・・・・・その次のテストも泣きついたけど、らむっちに見捨てられたことだよぉ・・・・・・」
「「あぁ・・・・・・」」
ひなたは顔を伏せて泣きそうな声でそう言うと、のどかとちゆは少し引いたような表情をしていた。
「あの時はお姉に怒られて、お小遣い減らされたっけなぁ・・・・・・」
「えっと・・・ひなた・・・・・・?」
「ひなたちゃん・・・・・・?」
「っ、あぁ〜!!!!」
「「・・・!?」」
「これから友達と会う約束してるんだったぁ〜♪」
遠い目をしていたひなたにちゆやのどかが声をかけると、ひなたは急に大声を出し、二人は驚いて固まってしまう。
「小学校の時に引っ越しちゃった親友でぇ・・・らむっちと一緒に遊んだこともあるんだぁ〜、あっはは♪ め〜っちゃ楽しみ〜っ♪ じゃあ、シ〜ユ〜♪」
ひなたは机の上の小テストを取り上げると、えらく上機嫌になって教室を出て行ってしまった。
「・・・・・・立ち直り、早いね」
「慰める必要・・・・・・無かったわね・・・・・・」
残ったのどかとちゆは、帰っていったひなたを呆然と見つめていたのであった。
一方、その頃・・・・・・すこやか市の公園にあるベンチには・・・・・・。
「はぁ・・・・・・相変わらず、時間守んないし・・・・・・」
一人の少女が腰かけてスマホを見た後に、ため息をついていた。
「エリザベス〜〜っ!!!!」
私服姿のひなたが少女のことをエリザベスと呼びながら駆け寄ってくる。
「久しぶり〜!! あっ、それ可愛い〜♪ っていうか、最近どお〜? 元気にしてた〜? お腹空いてない? はいこれ!!」
「・・・・・・久しぶり」
「えへへ・・・・・・久しぶりっ♪」
ひなたは妙に明るく、怒涛の勢いで話しかけた後、持ってきたパンケーキを渡すと少女は少し戸惑う。
それから二人はベンチに腰掛けるなり話を始めたのだが・・・・・・。
「あ〜ぁ・・・毎日毎日小テスト・・・中学生も楽じゃないよね〜? やる気はあるんだよ? でもやりたいこともありすぎてさぁ〜・・・1つのことに集中できるのは5分が限界だよ・・・・・・」
「・・・・・・ふ〜ん」
ひなたが一方的に話しているだけで、少女は相槌を打つばかり。若干反応も冷たく感じる。
「あっ、ごめん。せっかく会えたのに愚痴っちゃった。で、引越し先どう? 友達できた? 私が最近仲良くしてるのは・・・・・・じゃん♪」
ひなたはそう言いながらスマホに保存されていた写真を見せる。
「こっちがのどかっちで、こっちがちゆちー♪ えへへっ♪ 友達の写真とかあったら、エリザベスも見せてっ♪」
「・・・・・・あのさぁっ!!」
「・・・・・・えっ?」
「・・・・・・エリザベスってやめない? もう小学生じゃないし、えりこって名前あるし・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
自慢げに話していたひなたの話を打ち切って、エリザベスーーーーえりこはスカートの裾を握りしめながらひなたに言う。
「・・・・・・それにさぁ、ラモーナ・・・らむはどうしたの?」
「っ・・・らむっち、は・・・・・・」
えりこがこの場にいないらむの話をし出すと、ひなたは目を見開いた後に、辛そうに顔を俯かせる。
「らむ・・・まだひなたのところにいるはずだよね・・・?」
「・・・・・・病院に入院してるんだ・・・・・・ずっと、長い間」
「すこやか市の病院・・・・・・?」
「ううん、別の町の、病院だよ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
ひなたが言葉を詰まらせながらも話す。らむがビョーゲンズのイタイノンになったと言えるわけがなかった。なので、病院に入院している程で彼女に話すしかなかった。
「・・・・・・ねぇ、なんで教えてくれなかったの?」
「っ・・・・・・」
「ひなたもらむも、友達でしょ? なんで・・・・・・?」
「・・・・・・エリザベスを・・・悲しませたくなかったから・・・かな・・・・・・」
「っ・・・・・・!」
ひなたのその言葉を聞いたえりこは少し顔を顰めた。
「・・・そろそろ用事を済ませてくるわ。じゃあ・・・元気でね・・・・・・」
「う、うん・・・・・・」
えりこはベンチから立ち上がってそう言って去っていく。
「またね〜・・・・・・」
ひなたはそう言いながら手を振って見送る。
「なんだあいつ? ノリ悪ぃなぁ〜・・・・・・」
少し離れたところでニャトランがひょっこりと顔を出してそう言う。
「・・・・・・エリザベス」
去っていくえりこの背を見ながら、かつて呼んでいたあだ名を呟いたひなたの表情はどこか寂しげだった。
「・・・ふん、相変わらず愛想のないやつなの」
その様子を離れたところで、パンケーキを摘みながらイタイノンがたまたま見つめていた。
「あれも・・・イタイノンの人間時代のお友達ネム?」
「・・・・・・昔の話なの」
ネムレンがそう尋ねると、イタイノンは瞑目しながら淡々と話し始めた。
『これお前にやるの』
『えっ・・・これって?』
『見ればわかるの。私が持ってる髪飾りなの。同じの持ってるからお前にやるの』
『い、いいの・・・・・・?』
『っ、いいから黙って受け取ってろなの・・・!!』
『・・・・・・ありがとう、ラモーナ』
『っ・・・べ、別に大したことじゃないの!!』
えりこが引っ越す前、二つの緑色の四角い形とハート型の形がついた髪飾りをプレゼントしたのだ。その時に自分は「ラモーナ」という変わった名前で呼ばれていた。
「あいつ・・・あの髪飾りを今も付けてたの。そんなの捨てればいいのに、なの」
「イタイノンのことをまだ友達だと思ってるネムよ」
「・・・・・・私に友達なんかいらないの」
イタイノンはネムレンの言葉に素っ気なく返すと、そのまま背を向けてその場を後にしていった。
「・・・・・・・・・」
翌日、学校でひなたはのどかたちに昨日の出来事を話し、学校の机に突っ伏していた。
「そっかぁ・・・・・・久しぶりにあったお友達がそんな感じだったんだ」
うつ伏せのひなたにのどかがそう話すと、ひなたが急に顔をあげた。
「・・・・・・私、勉強する」
「えっ・・・・・・?」
「また唐突に・・・・・・」
「時の流れは残酷だから・・・・・・もし・・・・・・もし、あたしたちが別々の高校に進学したら・・・・・・」
ひなたがそう言うとのどかとちゆは少し驚いたような顔をすると、ひなたは自身の未来を想像し始めた。
『ハロ〜、ちゆちゃ〜ん!』
『あら、のど〜か。高校生らしく英語で挨拶なんて、トレビアンね』
『そういうちゆちゃんはフランス語?』
『『オ〜ッホホホホホ!!』』
高校生のような格好にメガネをかけた2人はそう言いながら笑っていた。
『おっはよ〜!』
そこへ抜けた様子のひなたが現れると、華やかな空気が一変した。
『・・・・・・誰?』
『ほら、中学の頃仲良しだったけど・・・聞いたことのない高校に進学した・・・ひ、ひな、ひ、ひな・・・・・・名前なんだっけ?』
『あー、そんな人もいたねぇ・・・・・・』
『すっかり忘れてたわ・・・・・・さっ、行きましょ?』
『そんなぁ〜・・・・・・待ってぇ、待ってよぉ〜〜・・・・・・』
ひなたを置いて去っていくのどかとちゆに、ひなたは涙ながらに呼び止めようとするが、二人は無視してそのままスタスタと去っていってしまった。
・・・という、未来をひなたは想像した。
「・・・きっとあたしたち、友達でいられなくなっちゃうよぉ〜!!!!」
「・・・無いっ!」
「そうだよ・・・そんな未来あり得ないよ!! 一生友達って約束したでしょ?」
ひなたが頭を抱えるとちゆは顔をしかめながら断言し、のどかもその未来を否定した。
「でも、エリザベス・・・じゃなかった。えりこには5年会わないだけで、すっかり他人になっちゃったし・・・・・・らむっちもあたしの前からいなくなっちゃったし、今は悪いやつになってるし・・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」
不安げな様子のひなたを見て、のどかとちゆは顔を見合わせる。えりこはひなたにそっけなくなっていたし、らむに至ってはビョーゲンズのイタイノンになってしまっている。
友達がいなくなってしまう・・・・・・ひなたには不安しかなかった。
すると、ひなたは勢いよく机を叩いて立ち上がった。
「だから決めた!! あたし・・・のどかっちたちと一緒の高校に行く!! そのためなら勉強頑張れる!! あたし、今度こそ本気出す!!!!」
目に炎を灯しながらやる気を見せるひなたはその日から勉強をすることにした。
そして・・・・・・放課後のひなたの部屋・・・・・・。
「必勝ぉ〜〜〜っ!!!!」
頭に「必勝」と書かれた鉢巻を巻いて、ひなたはそう叫びながら勉強し始め、ニャトランはそれを見守っていた。
ところが、数分後・・・・・・。
「えへ、えへへへ・・・・・・」
ひなたはベッドに寝転がりながら、漫画を読んでいた。その時間は明らかに勉強時間よりも長かった・・・・・・。
ーーーーおい!漫画なんか読んでるんじゃないの!!
「ひぃっ!? ダメだぁ〜!!!!」
「っ!?」
らむの怒鳴られる声が聞こえてきそうな気がしたひなたは小さく悲鳴を上げて飛び起きながら叫び出し、それにニャトランがびっくりするほどだった。
「必勝ぉぉぉぉぉ!!!!」
ひなたは再び机に向かいながら勉強を始めた。
ところが、またその数分後・・・・・・。
「・・・・・・星5のカード、全然出ないなぁ」
ひなたは机に座ったまま、だらけきった様子でスマホのゲームで遊んでいた。
ーーーー勉強はどうしたの・・・・・・?
「っ!!?? 集中集中!!!!」
らむの光の灯ってない目をした顔が目の前に浮かんだ気がしたひなたは驚くと、今度は自身の周りにあるスマホや漫画、雑誌などを段ボールに詰め込んでいく。
「・・・・・・これでよしっと!!」
しっかりとガムテープで開けられないように閉じ、勉強を始める・・・・・・。
「はぁ〜、ちょっとだけ寝よ〜っと♪」
・・・・・・なのかと思いきや、ひなたはベッドに横になって寝ようとしていた。
「ダメだこりゃ・・・・・・」
その様子を見てニャトランは呆れるばかりであった。
ーーーいい加減にしろなのっ!!!!
「うわぁぁぁぁっ!!! ごめんなさ〜い!!!!」
らむの激怒したような声が聞こえてきた気がしたひなたは飛び起きて、慌てて机と戻って行くのであった。
一方、そんなひなたの部屋の窓から覗くものが・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
羊の妖精姿になっていたネムレンはその様子を少し引いたような顔で見ていた。
そして、屋根の上へと飛んでいき、そこにいたイタイノンの元に戻る。
「・・・・・・どうだったの?」
「勉強ちっともできてないネム・・・・・・」
「・・・・・・はぁ」
ネムレンの報告を聞いたイタイノンはため息をつき始める。本当に小さい頃から何をやっても続かないことは全然変わってない。
イタイノンは夜空を見つめながら、昔のことを思い出していた。
『・・・・・・おい』
『っ!? な、何・・・?』
『勉強はどうしたの・・・・・・?』
『えっと、これは、その・・・休憩で・・・・・・』
『さっきも休憩してたの。ちっとも勉強が捗ってないの。漫画ばっかり読んでんじゃないの!!』
『あっ・・・・・・!?』
『この問題ができるまでお預けなの』
『えぇ〜、そんなぁ〜・・・・・・』
小学生の頃、人間時代のイタイノンはひなたに勉強を教えていた。ところが、ひなたの姉のところにジュースを取りに行った後、目を離したひなたは漫画を読んでいたのだ。問題には一つも手をつけずに・・・・・・。
少し苛立ったので、ひなたから漫画を取り上げて、勉強するように促したのだが・・・・・・。
『ここはこう解いて・・・・・・ん?』
『すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・』
『・・・・・・・・・』
バシッ!!!!
『いったぁ! うぇっ? 何・・・!?』
『寝るななの!! 私が解き方を教えてるのに・・・!!!!』
解き方を教えている最中も、ひなたはテーブルに突っ伏して眠っており、顔を顰めながら彼女を叩き起こしたこともある。
『ぐ〜・・・・・・』
『っ・・・・・・いい加減にしろなのっ!!!!』
『ひぃっ!?ごめんなさ〜い!!!!』
しまいにはいびきをかいて寝ていたため、何度も勉強に手をつけないことを繰り返すひなたに堪忍袋の緒が切れて怒鳴り、ひなたは悲鳴を上げていたのであった。
「・・・・・・・・・」
今、思い返せば、ひなたとの勉強はロクな思い出がなかったと遠い目をする。こんなのではあいつが過去に受けていた習い事も続かないわけで・・・・・・。
あの時から、勉強を教えるのも諦めた・・・・・・気がする・・・・・・。
「・・・・・・はぁ」
「イタイノンも苦労していたネムね・・・・・・」
イタイノンは再度ため息をつくと、ネムレンは同情するかのように言う。
「あいつの勉強を教えることなんか、苦労しかないの。達成感がまるでなしで、くたびれただけなの・・・・・・」
イタイノンはそう呟いていた。
その後もネムレンは様子を見ていたが、ひなたは勉強をしようとして、だらけるばかりの繰り返しなのであった。
翌日、のどかたちのクラスは体育の授業でグラウンドにおり、自分たちの番が来るまで待機していた。
「・・・・・・・・・」
そんな中、ひなたは昨日よりも落ち込んだ様子で膝を抱えており、のどかたちはそれを心配な様子で見ていた。
「・・・・・・大丈夫?」
「うぅぅ・・・・・・」
のどかが声をかけるも、ひなたは膝に顔を埋めたまま辛そうに唸っている。結局、勉強しようとしたが長続きはせず、しかも徹夜になったために元気もない様子だった。
「やる気はある・・・でもやり方がわからないって感じ?」
「・・・うん・・・・・・それかも・・・・・・」
ちゆの問いに、ひなたはそう答えた。
「ちなみに・・・どんな参考書を使ってるの?」
そんなちゆの問いは、のどかたちの体育の授業が終わった後の休み時間でわかった。
のどかとちゆはひなたの持つ参考書を見てみると・・・・・・。
「記憶力が良くなるお料理レシピ・・・・・・?」
「試験で緊張しない呼吸法・・・・・・」
「運を磨いて三択問題に勝つ・・・・・・」
「鉛筆転がしの極意・・・・・・」
机の上に広げられた参考書を見て呆然とするのどかたち。どれも勉強では役に立ちそうにないものだが・・・・・・。
「ふわぁ〜、これ面白そ〜♪」
「でしょ〜?」
「・・・・・・・・・」
のどかが鉛筆転がしの極意の本に興味を持ち、ひなたが相槌を打つとちゆはそれを呆れたように見つめる。
「どれも役に立たないわよ・・・この参考書・・・・・・」
「うぇっ、そうなの・・・!?」
ちゆは言いにくそうに呟くと、ひなたは驚く。
「・・・・・・こうなれば、もうみんなでひなたに教えるしかないわね」
「じゃあ、今日は学校が終わったらひなたちゃん家で勉強会だね」
「そうね。それで行きましょう」
「ありがとう、みんなぁ〜っ!!!!」
ちゆがそう提案すると、のどかもそれに賛同し、ひなたは感激の声を発した。
こうして、放課後、みんなでひなたの家で勉強を教えることになったのであった。
一方、その頃・・・・・・廃病院のアジトでは・・・・・・。
「かすみ」
「っ?なんだ・・・・・・?」
「お父さんがあなたを呼んでいます」
「私をか・・・・・・?」
ドクルンがかすみの部屋の扉を開いてそう告げると、かすみは少し困惑したような反応を見せていた。
「えぇ、行きますよ」
「・・・・・・わかった」
ドクルンが来るように手招きをすると、かすみは部屋の外へと出ようとする。
「!? うっ・・・くっ・・・・・・!」
その時、かすみの瞳が緑色から赤色に点滅が始まり、かすみは片膝をつくと胸を抑えて苦しみ始めた。
「?どうしたんですか?」
「うっ・・・・・・そろそろ・・・あいつが・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
ドクルンが振り向いて聞くと、かすみはなんとか言葉を紡いで答えるとドクルンは無表情でかすみを見据える。
「ドクルン・・・・・・」
「なんですか?」
「例のものは・・・・・・出来たのか?」
「・・・・・・・・・」
かすみはそう尋ねるとドクルンは黙って少し見つめた後、かすみに近づく。
「・・・・・・手を出してください」
ドクルンは淡々とそう言うと、かすみは胸を抑えていない方の手を差し出す。ドクルンはそこにあるものを渡す。
それはピンク、水色、紫色の禍々しい色に輝くかけらのようなものだった。
「私たち三人の力を練りこんで作ったテラパーツです。これであなたの中のカスミーナの動きを抑制できるでしょう。例え表に人格が現れたとしても・・・・・・」
「すまない・・・・・・ドクルン、この借りは・・・・・・」
「結構です。私には本当に何のメリットもないですから。早くそれを自分の中に入れてください。もう起きる頃なんでしょう?」
かすみのお礼の言葉を突っぱねると、早くそれを入れるように催促するドクルン。
「よし・・・・・・これで・・・・・・っ・・・!!」
かすみは動かなくなりそうな体をなんとか動かして、自分の胸の中にそのテラパーツを埋め込む。
「・・・・・・さぁ、行きますよ。モタモタしてるとお父さんもうるさいですから」
「あぁ・・・わかってる・・・・・・」
ドクルンはそれを見届けると先へと歩いていき、かすみも胸を抑えながら立ち上がってドクルンのあとをついていく。
そんなかすみの瞳は緑色から赤へと変わりつつあった。これはカスミーナが目を覚まして、再び人格を取り戻そうとしている予兆だ。
(カスミーナ・・・・・・お前に好き勝手はさせないぞ・・・・・・!!!!)
それでもかすみの表情からは戦うという意思は無くなっていないのであった。これも全てはのどかを守るために・・・・・・。