ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

13 / 144
原作、第7話がベースです。
ちょっとやりたいこともあって長くなってしまったので、また分けます。
まずは前編です!


第12話「危篤」

 

・・・痛いのか? 辛いのか?

 

・・・自由に走り回りたいか?

 

・・・いい憎しみだ。まるで地球を憎んでいるとも思える。

 

・・・人間も憎んでいるとは、よほど復讐がしたいように見えるな。

 

・・・我が全て楽にしてやろう。自由に行動できるように力を与えてやる。

 

・・・その代わり、我のために働き、我のために尽くすのだ。

 

・・・地球を我らの住む世界のような、快適な環境にするために。

 

・・・我の大切な娘としてな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カプセルベッドの蓋が開き、赤いモヤモヤが部屋の中へとこぼれ出す。

 

その中にいたビョーゲンズの一人ーーーーイタイノンはベッドの上で目を覚ましていた。

 

なんだか、懐かしい夢を見た気がする・・・。いつ見たかは、もう覚えてないけど。

 

「・・・・・・・・・」

 

私、何をしていたっけ? 正直、昨日までの記憶が曖昧だ。

 

いつものように出撃して、騒がしい小娘が一人で歯向かってきて、いつものようにプリキュアにメガビョーゲンを浄化されて、悔しさを滲ませて帰ってきたところまでは覚えている。

 

でも、そこから先の記憶がまったくない。何かに取り憑かれていたような気がする・・・。

 

思い出そうとすると、どうしてもあの、黄色の騒がしいプリキュアの姿が目に浮かぶ。

 

ーーーー 一人なんて・・・寂しい・・・じゃん。

 

私に絞め殺されそうにながらも、発した言葉。それだけがフラッシュバックしてくる。

 

ーーーー 一人、は・・・楽しくない、じゃん。

 

・・・うるさい・・・うるさい・・・ウルサイ・・・!!

 

イタイノンは首を振りながら、あの生意気でムカつく言葉を忘れようとする。

 

ーーーー仲間が一緒にいるから・・・あたしは戦えるの!

 

「うるさいのッ!!!!!」

 

イタイノンは思わず、声を荒らげる。

 

一人が寂しいはずがない・・・一緒にいて楽しいわけがない・・・一緒にやってうまく行くわけがない・・・!!

 

あの黄色いプリキュアの、騒がしい女の言葉を、一人でいることを好むイタイノンは生理的に受け付けなかった。

 

「イタイノーーン!!!」

 

「あっ・・・ネムレン・・・?」

 

イタイノンの胸にネムレンが飛び込んでくる。彼女を受け止めたイタイノンは放心しながらも、彼女の頭を撫でる。

 

「よかった・・・いつもの優しいイタイノンネム!」

 

ネムレンは安堵して彼女の胸にスリスリする。プリキュアから逃げ帰った後、イタイノンの様子は明らかにおかしかった。まるで、何かに取り憑かれたかのように・・・。

 

相棒が自分を襲うまでに変貌するなんて信じられなかった。でも、今は大人しく静かなイタイノンだ。触ることができて安心する。

 

「ふん・・・別に優しくないの」

 

イタイノンは雪のような白い頬を赤く染めつつ、そっぽを向いて否定しながらも、ネムレンの撫でる手は止まらない。

 

「キュアスパークル・・・」

 

プリキュアは正直、邪魔者という認識で興味がなかったイタイノン。でも、あの黄色のプリキュアだけは妙に記憶が鮮明だった。

 

イタイノンはあの顔を思い出すと、表情を怒りへと歪ませる。

 

「キュアスパークル・・・許さない・・・! 必ず、潰してやるの・・・!!」

 

キュアスパークルを怨敵だと認識したイタイノンは、次に会った時にはひねりつぶしてやろうと歪んだ言葉を吐く。

 

「・・・まあ、今日は、もうひと眠りするの」

 

イタイノンは穏やかな表情へと戻るとネムレンを撫でつつ、カプセルベッドに横になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一度、言ってみなさいよ」

 

マグマで満たされたビョーゲンキングダム。そこでは、何やらダルイゼン、シンドイーネ、グアイワルの3人が言い争いをしている模様。

 

「失敗続きでよく恥ずかしくないものだ、と言ったんだが?」

 

「そういうグアイワルだって、地球を蝕めてるわけじゃないくせに」

 

「失敗はお互い様よ」

 

どうやらグアイワルが言い出しっぺのようだが、珍しくダルイゼンも突っかかっていた。

 

3人が言い争っているのは、ここ最近の地球を蝕む活動の成果のこと。数えているわけではないが、幹部たちは出撃してメガビョーゲンを発生させても、プリキュアに浄化されてしまうため、失敗する子おtがほとんどだ。

 

それに至ってはどの幹部も同じこと、のはずなのだが・・・。

 

「一緒にしてもらっては困る。俺とお前たちとでは全く違う」

 

「違う? どこが?」

 

シンドイーネが問い詰めると、グアイワルは急に頭に指を差し始める。

 

「ここの出来が違うのだよ」

 

頭を刺しているということは、頭の出来が違うことを言っているんだろうと思うが・・・。

 

「へぇー、どう違うんだ?」

 

グアイワルは笑みを見せると、どこからか大きな岩を出すと頭で砕いた。

 

「ふっ・・・」

 

「え・・・なにこれ?」

 

「ただの石頭・・・」

 

グアイワルはなぜか得意気に背を向けて去ろうとするも、シンドイーネとダルイゼンは全く理解不能だった。

 

確かに頭で岩を割った・・・だから何だ、と・・・?

 

「そこで俺が見事、地球を病気にするのを、指を抱えて見ていることだ。ふっはっはっはっは!!」

 

笑いながら地球へと向かおうとするグアイワル。頭の出来が違うとは言ったが・・・。

 

「『指をくわえて』、だし・・・」

 

「名前、グアイワルから『アタマデワル』に変えたら?」

 

岩を割っただけの上に、言葉の使い方も間違えている・・・。そんな、グアイワルに二人は呆れるしかなかった。

 

「ふわぁー、何よ、騒々しい」

 

岩場に寝そべっていたクルシーナがあくびをしながら、両腕を上に伸ばして背伸びをする。

 

「まあ、いつものことですけどねぇ・・・」

 

ドクルンも別の岩場に腰掛けながら、本を読んでいる。

 

「また、どうせしょうもないことでも言い合ってたんでしょ?」

 

クルシーナのだるそうな言葉に、シンドイーネがムッとする。

 

「しょうもないって何よ! 大体、あいつが勝手に絡んできて!!」

 

「・・・俺も別に付き合ってるわけじゃないけど」

 

ーーーー同じ幹部で、お互い様のくせに言われるとなんか腹が立つ。

 

グアイワルの物言いに、ダルイゼンも少しは不快感を感じていたのだ。

 

「ほっときゃいいわよ、あんな筋肉バカ。どうせすぐに負け帰って膝をつく羽目になるんだから」

 

クルシーナもグアイワルがいない前では言いたい放題である。

 

「・・・あれ? イタイノンは?」

 

ダルイゼンが二人に問う。いつも二人と一緒にいるはずの彼女がどこにもいない。最近は、地球を蝕むことにも誠意を見せるようになってきて、意気揚々としていたようだが、どこに行ったのか?

 

「寝てますよ。昨日、大暴れしてクルシーナに止められましたからね」

 

「そうね。自分の相棒を襲うぐらいに壊れちゃってたからね。アタシらにも迷惑だから黙らせたけど」

 

「・・・ふーん」

 

ドクルンとクルシーナがそれぞれ話すも、ダルイゼンは興味があるのか、ないのかわからないような返事を返す。

 

「まあ、あいつのことは置いておいて、あんたらさ、成果のこと考えたら少し趣向を考えたほうがいいんじゃない?」

 

「・・・何よ、それ?」

 

クルシーナは起き上がって、二人に近寄る。

 

「お父様はね、人間の苦しみも好物なの。病気はすべての生き物に対してかかるもの、でも人間を病気に侵さなくたって苦しめる方法なんていくらでもあるでしょ? そうしてお父様も喜ばせておけば、それでも成果の一つにはなる。あんたらだって好き勝手できるでしょ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

不敵な笑みで説明するクルシーナに、二人は押し黙る。

 

「さてと・・・」

 

ドクルンは岩場から立ち上がると3人とは別の方向へと歩いていく。

 

「どこ行くの?」

 

「・・・ちょっと人間観察を、ね」

 

「あっそ・・・」

 

ドクルンは振り向いてそう言うと地球へと向かうも、クルシーナは多少呆れた言葉を返す。

 

「・・・・・・?」

 

クルシーナは別の方向を向くと、蠢く何かが見えている模様。

 

「へぇー、まだちゃんと蝕んでるのね」

 

彼女は不敵な笑みを浮かべると、瞬間移動をしてその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて・・・・・・」

 

すこやか中学校へと降り立ったドクルンは屋上から放課後の生徒たちの喧騒を見ていた。

 

校庭を見てみれば、花に水をあげているもの、部活動で運動に励んでいるもの、遊具で遊んでいるもの・・・。

 

「ふむふむ、実に健康的な人間が多いわねぇ・・・感心感心」

 

「俺は不快だブル・・・こんなところ」

 

ドクルンは顔をニマニマさせているが、スタッドチョーカーになっているブルガルは嫌悪感を隠さなかった。

 

「まあまあ、そんなこと言わずに・・・おや?」

 

ドクルンはメガネを上げながら校庭の門を見てみると、カメラを首から下げたメガネの男が学校から出ようとするマゼンダ色の髪の少女を隠れながら見ているのが見えた。

 

「ドクルン、どうかしたのかブル?」

 

「いやぁ? 女の尻を追いかけまわしている無粋な少年がいるのが見えてねぇ・・・」

 

不審に思ったブルガルが言うと、間延びした口調を崩さずつつも、不思議そうに見ている。

 

「そんな変態男には見えないブル」

 

「まあ、気になるとしたら、あのカメラに何か特別なものを写してるかもしれないわねぇ・・・」

 

ドクルンは笑みを浮かべながらそういう。あのマゼンダ色の髪の少女、確かプリキュアだったはず。しかも、あのメガネの男はあの少女をつけまわしていることから、何か秘密を写しているかもしれない。

 

まあ、それも完全に信用しているわけではないが・・・。

 

「おや・・・?」

 

「今度はどうしたブル?」

 

ドクルンが再び校庭の方を見ると、何やら陸上部が慌ただしくなっていくのが見えた。

 

「え、ちゆ!? それって県大会の記録より高いよ!?」

 

ちゆと呼ばれた少女が、部員と思われる少女に驚かれている。それに伴い、周囲がざわざわとし始めた。

 

彼女の言う通り、棒のバーを高くすると、メガネの男はそっちへと走り出した。

 

「あのちゆという女のもとに走り出したわねぇ」

 

「どういうことだブル?」

 

メガネの男の行動を理解できないブルガル。ドクルンは察しはついているが、おそらく写真に収める価値のあるものを撮っているのだろう。

 

しかし、あのマゼンダ色の髪の少女、いかにも普通そうに見える女に何の価値があるというのか?

 

「おや? あれはクルシーナの・・・」

 

マゼンダ色の髪の少女をもう一度しっかりと見てみると、何やら彼女の体の中に赤く蠢いているのが見える。

 

それがクルシーナの蒔いた種だとわかると、ドクルンは再び笑みを深くした。

 

「ほうほうほう・・・これは面白いことになってるわねぇ!!」

 

クルシーナはあの娘を苦しめようとしている。そのために体内に病気を入れ、彼女を病気に侵そうとしているのだ。

 

今の彼女の状態は、いわゆる風船が膨れたりしぼんだりしているような状態。何かの拍子で破裂すれば、あの娘はほぼほぼ病気に永遠に侵されることになる。

 

その相手が、そう・・・・・・プリキュアなのだ。あの小娘はプリキュアの一人、遅いにしろ決定打を与えている。あの種はそう簡単に消せるものではないのだ。

 

「ドクルン・・・あのメガネの男が動きそうブル」

 

「おっと・・・思わず興奮してしまったわねぇ・・・」

 

メガネの男はキョロキョロと辺りを見渡している。プリキュアの少女を見失ったらしい。

 

「まあ、あの男はマークしておいて、あの娘の様子でも見ましょうか」

 

「気が変わりやすいやつだブル・・・」

 

ドクルンは校庭で部活動をしている、ちゆという少女を観察しているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、花寺のどかは、ある少年に追われていた。

 

新聞部の唯一の部員で、『すこ中ジャーナル』を自称する同級生の増子道男だ。

 

彼はこの前からのどかを付け回し、彼女のとあるスクープを狙っているとのこと。

 

もしかして、プリキュアのこと? 変身して戦っているのがバレたのか?

 

と、思いきや、彼はのどかがメガビョーゲンを呼び寄せているというのだ。

 

一見、根拠のない情報に思えるが、メガビョーゲンは偶然にものどかがこの町に来てから現れ、高い確率で彼女が側にいる。

 

スクープを明らかにしたい、その道男からのどかは昨日からつけ狙われているのである。

 

メガビョーゲンを出しているというのは紛れもない言いがかりだが、プリキュアだということは秘密であるため、道男に真実を言えずにいる。

 

ちゆもひなたも、のどかから道男を遠ざけようとあらゆる手段を講じたが、道男は諦めようとせずにのどかの後をつけまわしている。これではキリがない。

 

放課後、雨が降りそうな曇り空。こんな日であっても、道男はゴミ箱に隠れながらのどかをつけている。

 

「よーし!」

 

のどかは自分から道男を巻こうと走り始める。草木の入った道へと入っていく。

 

道男も彼女を見失わないように駆け出していく。

 

追いつ追われつの攻防戦・・・・・・と、その時だった。

 

ドクン!!

 

「うっ・・・!」

 

突然、胸のあたりが抑えつけられるような圧迫感に襲われ、のどかの走りが鈍り始める。

 

ドクン、ドクン!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

息も切れ始め、額に汗が滲んでいき、走り方もフラフラした感じのぎこちない走りとなっていた。

 

「あ、あぁぁ!?」

 

おぼつかない足で、出っ張った地面に足を滑らせて転倒してしまうのどか。それでも抱いているラテが下敷きにならないように、背中から倒れた。

 

「ああ!!」

 

のどかの突然の事態に、道男は驚きの声を上げると、転倒したのどかに駆け寄る。

 

「イタタ・・・」

 

「怪我はありませんか!?」

 

背中から受け身を取ったことで、怪我まではしなかったものの痛みに呻くのどか。そこへ心配そうな顔をする道男がのどかへと手を伸ばす。

 

その表情は、やってしまった・・・とでも言いたげな顔だ。

 

「あ、うん、大丈夫」

 

道男は岩の上にハンカチを置き、そこにのどかを座らせる。そんな彼から出てきた言葉は、謝罪の言葉だった。

 

道男は自分のジャーナリズム精神のせいでのどかを転倒させてしまったことを気にしていた。相手を怪我させてしまうのは自分の信念に反すると。

 

自分でもわかっていた。相手をしつこく取材しようとして、生徒からは鬱陶しがられていることを。

 

のどかには一つ、疑問があった。

 

「増子くんは、どうして煙たがられてても、すこ中ジャーナルをやってるの?」

 

道男は少しの沈黙の後、口を開いた。

 

「・・・雨上がりの蜘蛛の巣って見たことありますか?」

 

「えっ?」

 

道男は小学生の頃にその雨上がりの蜘蛛の巣がとても綺麗だったことを話した。

 

雨の雫が太陽の光に照らされて、それで蜘蛛の巣が光って見える、風に揺られてキラキラと輝く・・・。

 

そのことを小学校の頃の新聞に載せたところ、先生たちはとても褒めてくれた、とても嬉しかった。その頃だった、自分が他人に喜ばれるような、そんな記事を書きたいと。

 

でも、取材のやりすぎで、みんなからは疎まれ、新聞部も一人になってしまった・・・。

 

しかし、のどかは道男の想いを否定しなかった。

 

「夢中になれることは素敵だと思う」

 

「え?」

 

「初めて記事を書いた時の気持ちって、きっとその雨上がりの蜘蛛の巣のようにキラキラとしていたんだね」

 

のどかは初めて、道男に笑顔を見せた・・・。

 

・・・・・・その直後だった。

 

ドクン!!

 

「うっ・・・!!」

 

のどかはまた胸を押さえ始める。心臓の鼓動がまた早くなっていた。

 

「? どうかしたんですか?」

 

のどかの異変を感じて、道男は彼女に問う。しかし、のどかは道男を心配させまいと笑顔を作り。

 

「ううん、なんでもないよ。増子くんの言う、雨上がりの蜘蛛の巣、見てみたいなぁ」

 

この日、道男は彼女を追うことは、もうしなかった。

 

「・・・・・・ふん」

 

近くの一本の木の陰で、誰かが二人の様子を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰路・・・・・・・・・。

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・くっ・・・うっ・・・!!」

 

耐えきれないほどの苦痛がのどかを襲い、足元はふらついていた。心臓の鼓動も先ほどと比べて早く鳴っている。

 

のどかは歩みを止め、肩で息をしながら、呼吸を楽にしようとする。

 

額は汗で滲んでおり、のどかの表情は苦痛に歪んでいた。顔色も少し悪くなっている。

 

まただ・・・また、体がおかしなことになっている・・・。心臓の鼓動が急に速くなり、だるさと苦しさが襲ってくる、この現象。

 

どうしたのかな・・・? 私、手術を受けて健康になったはずなのに・・・。

 

もしかして、体が手術前に戻っちゃったのかな・・・?

 

もはや、自分があの時に起きた異変すら忘れてしまいそうだった・・・。

 

「クゥ~ン」

 

ラテはのどかの様子が明らかにおかしいことに気づき、心配そうな声を上げる。

 

「だ、大丈夫、だよ・・・ラテ、早く、帰ろう?」

 

ラテを心配させないように笑顔を見せる。しかし、どう見ても作り笑顔で、体は全く大丈夫ではなかった・・・。

 

楽になるばかりか、徐々に苦しくなっていく・・・。家へと帰ろうと足を動かしても、のどかの体調は悪化していくばかりだった。

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

なんでもない帰り道のはずなのに、距離が遠く感じる・・・。足がうまく動かない・・・。

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「クゥ~ン」

 

ラテの心配する声が遠くに感じる・・・。どこから聞こえているのかもわからない・・・。

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

体が鉛を背負わされているかのように重い・・・。体がふらつく・・・。

 

ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン!!

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

心臓の音がサイレンを鳴らすかのようにさらに速くなるのを感じる・・・。まるで、空気の薄い場所にいるかのように、呼吸がうまくできない・・・。

 

ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン!!

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

視界が暗くなっていく・・・。もう自分が歩いているかもわからない・・・。

 

でも、帰らなきゃ・・・大好きな、お母さんやお父さんが、待ってる・・・。

 

ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン!!

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・あ・・・」

 

のどかは極度の苦しさに、おぼつかない足を躓かせ、倒れ込んでしまう。

 

「う・・・あ・・・」

 

体に力が入らない・・・私、死んじゃうの、かな・・・?

 

地面が冷たい・・・寒い・・・。

 

「ワン!ワン!」

 

ラテが自分に吠えているようだが、のどかにはもう聞き取る力は残っていない。ラテを撫でようと腕を動かそうとするも、体は全く動かない・・・。

 

その間も、心臓の鼓動は全く静まる気配がない・・・。

 

「あ・・・あ・・・」

 

周囲の人は誰もおらず、のどかの体調の悪さに気づく人が誰もいない。さらには雨も降り出し始めた。

 

助けて・・・ちゆちゃん・・・ひなたちゃん・・・。

 

お母さん・・・お父さん・・・。

 

ラビリン・・・・・・。

 

声がうまく出せず、心の中で助けを求めたその時だった。

 

倒れた彼女の視界に現れる黒いブーツ。力を振り絞って顔を上げると、マジシャンのような服装をした女が立っていた。

 

どこかで見たことのあるような姿だが、視界がぼやけていて焦点がうまく合わない。

 

「・・・・・・・・・」

 

静かにのどかを見つめている少女ーーーークルシーナはのどかに近寄ると彼女をお姫様だっこするように抱えた。

 

「ワン!ワン!ワン!ワン!」

 

ラテがクルシーナに向かって吠える。まるで、のどかに触るなと言わんばかりに・・・。

 

「・・・別に何もしないわよ。こいつに死んでもらっちゃ困るだけだし・・・」

 

クルシーナはラテに顰めっ面で返すと飛び上がり、のどかの家があるであろう方向へ進んで行く。

 

虚ろな瞳ののどかの顔を見ながら、クルシーナは妖艶な笑みを浮かべる。

 

「・・・バッカみたい。自分の身の心配もできないなんて。よくそんなんで地球をお手当てなんてできるもんね」

 

クルシーナはのどかに毒付くも、意識が混濁している彼女は聞こえていないのか反応を示さない。

 

「クルシーナ、なんでこいつを助けるウツ? プリキュアを一人やっつけるチャンスウツ」

 

「ふん、別に助けてるわけじゃないわよ。こいつにはもっと苦しんでもらわないと。死んだら苦しみから解放されちゃうでしょ?」

 

クルシーナは別に助けているわけではない。せっかくの可愛い女の子が、私に快楽を与えてくれる小娘が、単に死なれても困るだけなのだ。

 

水族館で病気に侵してから、苦しむ顔が本当に可愛いと感じる子・・・それはもう本当に一生飼ってやりたいくらい・・・。そんな逸材が、簡単に壊れてもらっては困るのだ。

 

「でも、死にそうな顔も本当に可愛い・・・虚ろで、儚くて、ここで落としたら壊れてしまいそう・・・めちゃくちゃにしてやりたい・・・」

 

のどかの今にも消えてしまいそうな顔に、甘美な気持ちを感じる。クルシーナの頭には、ある映像がフラッシュバックしていたのだ。

 

ーーーーこの子に似た車椅子に座った女の子が、私に向かって笑顔を見せている。

 

クルシーナは彼女の額にキスをする。あの水族館と同じように・・・。

 

すると、のどかがわずかに反応を見せ、弱々しく顔を上げる。視界はすでに真っ暗になる寸前だが、朧げに少女の顔が見えていた。

 

のどかは一筋の涙を瞳からこぼしながら、口を開いた。

 

「ーーーーちゃん・・・」

 

「!!??」

 

彼女を見て朦朧とした意識で弱々しく、つぶやいた言葉に、クルシーナは目を見開いた。

 

こいつ、なんで、その名前を・・・????

 

「クルシーナ、どうしたウツ?」

 

クルシーナの異変を感じたウツバットが声をかける。彼女はハッとすると、動揺からすぐにいつもの表情に戻る。

 

「・・・なんでもない」

 

そんなことをしているうちに、一軒のそれなりに大きな家が見えてきた。

 

「あの家かしらね」

 

のどかの家であろう場所に降りていくと、ベランダから入って窓に歩み寄り、窓を足でノックする。

 

バンバン!!

 

「誰、ラビ?」

 

ラビリンが窓を開けると、そこには絶対に会いたくない少女の姿が視界に写っていた。

 

「ク、クルシーナ!? 何をしに来たラビ!?」

 

ラビリンは突然、敵が家にやってきたことに驚くも、クルシーナは無言で部屋へと入るとのどかをベッドの上へと下ろす。

 

「あ、のどか!?」

 

ラビリンは弱っているのどかに歩み寄る。クルシーナは特に意に返すことなく、のどかの体に手のひらを置くと、胸へとスライドさせていく。

 

すると、のどかの表情から苦痛が消えていき、彼女は安らかな寝息を立てる。

 

それを見やった後、クルシーナは彼女に背を向けて家から出て行こうとする。

 

「待つラビ!!」

 

ラビリンに引き止められ、首を後ろに向けるクルシーナ。こいつの表情が怒りを滲ませているのは、火を見るよりも明らかだった。

 

「のどかに何をしたラビ!?」

 

「・・・別に、何もしてないわよ」

 

ラビリンはクルシーナの言うことが信じられなかった。まして、地球を病気で蝕もうとするビョーゲンズの言葉なんて・・!

 

「嘘ラビ!! じゃあ、何でのどかは体調が悪そうだったラビ!?」

 

「・・・どうでもいいでしょ」

 

「答えるラビ!! もし、のどかに何かあったらーーーー」

 

「ごちゃごちゃうるさいんだよ!!」

 

今度はクルシーナが声を荒らげる。苛立っているときに見せている攻撃的な口調だ。

 

クルシーナはラビリンをしばらく睨みつけると、顔を前に向き直る。

 

「ヒーリングアニマルなら、ヒーリングアニマルらしく、自分たちの小さな頭で考えたら?」

 

「卑怯なことをしてないだけ、ありがたいと思えウツ!!」

 

それだけ言い残すと、クルシーナは瞬間移動をして去っていった。

 

「ラビリン!!」

 

そこへちょうど、ちゆとひなたがのどかの部屋へと入ってきた。のどかと一緒にいるはずのラテも一緒だ。

 

「ちゆ! ひなた! どうしてここに?」

 

「ラテ様が知らせてくれたニャ!!」

 

「のどかっちがビョーゲンズに連れて行かれたって!」

 

ラテは、家へ帰ろうとしていたちゆとひなたの元へと急ぎ、のどかの危機を知らせてくれたのだ。念のため、ラビリンを呼ぶために、のどかの家へとやってきたのだ。

 

「のどかならベッドで眠っているラビ。クルシーナが抱えてたときには体調が悪そうだったラビ」

 

「クルシーナが来たペエ!?」

 

「もしかして、そいつに何かされたんじゃ・・・?」

 

ちゆとペギタンが不安そうな顔をする。十中八九クルシーナの仕業だろうが、でもそれでわざわざ家にのどかを届けに来た理由は何だったのだろう。そこが理解できなかった・・・。

 

「ラビリンも、よくわからないラビ・・・」

 

ラビリンもクルシーナの行動を全く理解できないのであった・・・。

 

とにかくのどかは無事な様子。今は静かな寝息を立てて眠っている。

 

ラビリンはそんな彼女の額の汗を、優しくタオルで拭ってあげるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が上がり、自然が雨粒の恵みを授かった時・・・。

 

「全く、ドクルンは夢中になりすぎだブル・・・」

 

「いやぁ、うっかり人間観察に勤しみすぎたわねぇ・・・」

 

「絶対、意図的にやってたブル・・・」

 

ドクルンは自然の草木の中を歩いていた。

 

雨に濡れた自然・・・キラキラとしていて、何か生きてるって感じがする・・・。

 

「自然っていうのは不快だブル」

 

「まあ、この輝いている感じが、いい病気の元になりそうだけどねぇ」

 

ドクルンは面白がっていて、笑みを崩さない。こんな自然を病気で蝕むとどうなるのか、笑いが止まらない。

 

「さてさて・・・種の匂いはここにきているみたいだけど?」

 

種の匂い、すなわちのどかの気配を追ってここまで来ていたドクルン。周りを見渡すが、人の気配は全くない。

 

「おや・・・?」

 

ふと、草木の奥の方を見てみると、見たことがある少年が。

 

そう、学校でマーキングしていたメガネの少年だ。カメラはまだ持っている。

 

どうやら、木の上の何かを見ている様子。

 

「あいつ、何してるブル?」

 

「さあね・・・でも、一人でいるのは好都合ねぇ」

 

ドクルンは何か悪巧みを思いついたかのように、ニヤリと笑みを浮かべ、近づいて行こうとしたが・・・。

 

「?」

 

反対方向から別の気配が近づいてくるのが見えて、思わず木陰に隠れる。

 

「雨上がりの自然・・・ふん、実に活き活きして気に入らない・・・とりあえず!」

 

そこに見えたのは、意気揚々と地球を蝕むために出撃していたグアイワルだった。

 

「やれやれ・・・脳みそも筋肉みたいなやつが現れたわね・・・」

 

ドクルンは笑みを浮かべずに、面倒臭いと言わんばかりの表情をしている。

 

グアイワルは両腕の筋肉を鳴らすと、握りこぶしを作る。

 

「進化しろ! ナノビョーゲン!!」

 

「ナノー!!」

 

筋肉を見せつけるかのように胸を反らすと、ナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、葉っぱに乗っている雨粒へと取り憑く。雨粒が病気へと蝕まれていく。

 

「レー・・・レイン・・・」

 

雨粒の中にいる妖精、エレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!」

 

傘を模倣したようなメガビョーゲンが誕生したのだった。

 

「全く・・・面倒なことを・・・」

 

道男を病気で侵してカメラを奪おうと考えていたドクルンは、せっかくの計画が狂ったと言わんばかりに舌打ちをする。

 

「まあ、でも、それを利用して、いや、活かしてやるのが私だけどねぇ・・・」

 

ドクルンは不満そうな表情から、すぐにニヤリとした笑みを浮かべる。その右手から寒気がするほどの冷気のようなものを漏らしていたのであった・・・。

 




感想・評価・ご指摘、お願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。