ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
かすみの行方・・・そして、次なる戦いが始まります・・・!!
プリキュアとビョーゲンズが激闘を繰り広げている中・・・・・・。
「・・・・・・・・・」
クルシーナはダルイゼンやカスミーナと離れ、中島先生を連れて森のどこかを歩いていた。
ふと見つけた切り株の上に、眠っている中島先生をゆっくりと優しく載せる。
「クルシーナ・・・・・・仕事しなくていいウツ?」
「・・・・・・これからするのよ」
ふとウツバットが声をかけると、クルシーナは中島先生を見つめながらそう言った。
「先生・・・・・・私は先生のことが好きよ。医者は嫌いだけど、先生のことは好き・・・・・・」
クルシーナは優しい笑みを浮かべながらそう言うと、懐からメガパーツを取り出す。
「だから、先生をビョーゲンズの世界に連れて行きたい・・・・・・おいでよ。そしたら、先生にも病気の素晴らしさ、わかると思うから♪」
クルシーナはそう言いながら、中島先生にメガパーツを近づけていく。
そんな時だった・・・・・・・・・。
「そこの君!!」
「っ!!」
クルシーナの背後から声が聞こえ、振り向いてみるとそれは町の職員の男性だった。男性の背後を見ていると、町の職員たちがゴミ掃除を行っており、この男性はその一人のようだった。
「眠っている女性に何をする気なんだい・・・・・・?」
「っ・・・・・・・・・」
男性はどうやら咎めようとしているようで、クルシーナは顔を顰めるとメガパーツをゆっくりと懐にしまい込むと、その場から姿を消すと・・・・・・。
「っ!? うわぁっ!!!!」
クルシーナは瞬時に男性の目の前に現れ、片手で突き飛ばして地面に倒した。
「・・・・・・ムカつくのよねぇ、お前らみたいな偽善者。環境のためだとか、地球のためだとか、なんだか知らないけど、意味のわかんないことしちゃってさぁ」
「うっ・・・・・・」
クルシーナは呻く男性を見下ろしながら、不機嫌そうな表情でそう言い放つ。
「あっ、そうだ・・・・・・先生をビョーゲンズにすることよりも、いいこと思いついちゃった♪」
クルシーナは何かを思いついたようにハッとしたような表情をすると、不敵な笑みで男性を見据える。
「先生に病気の喜びを知ってもらうんだ・・・・・・あの美しさをね。だから、目を覚ましてもいいようにこの辺一帯を赤色で染め上げないとねぇ・・・・・・あの紅葉みたいに」
「な、何を、言って・・・・・・・・・?」
クルシーナはそう呟くと、痛みに呻く男性の疑問を尻目に、手のひらから息を吹きかけて黒い塊を作り出す。
「進化しろ、ナノビョーゲン」
「ナーノー」
生み出されたナノビョーゲンが鳴き声を上げると、倒れている職員の男性へと飛んでいく。
「あっ・・・・・・あぁぁ・・・・・・」
職員の男性は悲鳴も上げられずに、ナノビョーゲンに体を取り込まれていく。
その職員の男性を主体として、巨大な怪物がかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてその素体を模倣する様々なものが姿として現れていき・・・。
「ギガァ、ビョーゲン!!」
両肩にポリバケツのようなもの、両手に送風機のようなものが付き、ゼッケンを身につけた職員のような姿をしたギガビョーゲンが誕生した。
「ギーガァァァァ!!!!」
ギガビョーゲンは両肩のポリバケツから上空に目掛けて、赤い球を次々と放って地上へと降り注がせる。すると、着弾して大きな爆発を起こしたところの広範囲の地面がゴミまみれとなって病気へと蝕まれていく。
「ふーん・・・ようやくアタシららしいギガビョーゲンが生まれたわねぇ♪」
クルシーナはそのギガビョーゲンの様子を見て、不敵な笑みを浮かべる。
「ギガァギィ・・・!!!!」
「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
ギガビョーゲンの姿に気づいた町の職員たちが悲鳴を上げて逃げ出していく。
「ギーガァァァ!!!!」
ギガビョーゲンはさらに両肩のポリバケツを前に向けると赤い光弾を大量に放ち、職員たちがゴミ拾いをした場所も次々とゴミまみれにして蝕む。
「ふふふふふふ♪ ゴミを片付けている職員が地球を蝕む怪物になるなんて滑稽ね。その調子♪」
クルシーナは笑いながらも、再び中島先生を見つめる。
「待っててね、先生・・・・・・目を覚ましたら、素敵な世界が広がってるから♪」
クルシーナは中島先生に近づけると、彼女に聞こえるような声でそっと耳元に囁いたのであった。
その数分前・・・・・・・・・。
ドサッ!!!!
「うっ・・・・・・う・・・・・・??」
胸倉を掴まれていたグレースは突然それから解放されて地面に倒れ伏す。呻き声を上げながらも顔を上げてカスミーナを見上げると、その表情は驚愕に目を見開かれていた。
「なっ・・・なん、だと・・・・・・」
カスミーナの視線には、ステッキを持っていない方、グレースの胸倉を掴んでいたはずの片手が急に手を離した光景が映っていた。しかも、それはカスミーナの意図ではなく、手が勝手に動いたのだ。
ガシッ
「な・・・なん、だ・・・・・・これは・・・・・・!!」
さらにステッキを持っていた手は、もう片方の手を掴んで抑えようとしていた。
「のどかに・・・手を出すな・・・・・・!!! 貴様、偽物の分際で・・・!!!!」
カスミーナの目はよく見れば片方が緑色に戻っており、カスミーナに敵うはずのないかすみが人格を半分取り戻して抵抗しようとしていることがわかる。一方の、カスミーナは体を渡すまいと抵抗を払いのけようとし、結果カスミーナの体は震える。
「えっ・・・・・・?」
「何が、どうなってるラビ・・・・・・?」
そんな光景をグレースとラビリンは、カスミーナに何が起こっているかわからず、呆然と見つめるだけだ。
「言っ、ただろ・・・お前に、好き勝手は・・・させないと・・・!!!! 邪魔をするな!! 死に損ないめ!!!!」
かすみはそう言いながら、片方の手を胸に当てようとし、カスミーナはその手を押さえつけて阻止しようとする。
そうこうしているうちに、かすみは苦戦しつつも、ようやく自分の手を胸に当てる。
「お・・・おい・・・何をする気だ・・・!!??」
カスミーナが顔を顰めながら言う言葉には、動揺が感じられた。なぜなら自身の体がピンク色、水色、黄色の三色のオーラに包まれ始めていたからだ。
「な・・・何ラビ・・・・・・!?」
「かすみちゃんの体が、光って・・・・・・?」
グレースとラビリンはかすみの様子を驚きながらも、じっと見つめていた。
「カスミーナ・・・私の悪い人格よ・・・・・・私の中から、出て行け・・・・・・!!!!」
かすみは表情が苦痛に歪みながらも、そう叫ぶと背中から悪魔のような黒い翼を生やし、体の光も強くなっていく。
「ぐっ・・・ぐぁぁぁ・・・うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! こ、この・・・・・・!!!!」
カスミーナは苦痛の叫びを上げ始めるも、憎々しげにかすみが胸に当てた手を引き剥がそうとする。
「うぅぅぅぅぅぅ・・・の、のどか・・・・・・今の、うちに・・・・・・私に攻撃を・・・・・・!!!!」
「っ・・・・・・・・・」
かすみはグレースの方をみるとそう言い、グレースはその様子を見て動揺する。もしかして、かすみは自分に浄化技を使えと言っているのだろうか・・・・・・?
「で、できない・・・・・・できないよ・・・・・・!!!! かすみちゃんに、浄化技を・・・打つなんて・・・・・・!!!!」
グレースは怯えた表情をしながら首を横に振る。もしかしたら、かすみも一緒に浄化してしまうかもしれない。敵になってしまったとはいえ、友達を消滅させるなど、グレースには耐え難いことだった。
「早く、しろ!! 農家の人の農園が、どうなってもいいのか!!??」
「っ!!!!」
「大、丈夫だ・・・私は、並程度では、やられん・・・・・・!!!!」
渋るグレースに、かすみが苦痛に歪ませながらも発破をかけるとグレースはハッとする。友達を失うのは怖い・・・・・・でも、ここで自分がやらなければラビリンが世話になった農家さんの果樹園が病気にされてしまう・・・・・・。
「グレース!!」
「っ?」
「ラビリンはかすみを信じたいラビ!! グレースは、かすみを信じられないラビ・・・?」
ラビリンは躊躇するグレースにそう声をかける。浄化技を撃つのは躊躇いがちだが、友達をこれ以上苦しめたくない・・・だから、ラビリンはかすみを信じて撃つことを決めたのだ。
それを聞いて、グレースは首を振った。
「私は・・・かすみちゃんの友達だもん!! もう誰かが、苦しむのは見たくない・・・!!!! だから、私はかすみちゃんを、助ける・・・!!!!」
グレースはゆっくりと立ち上がると、花のエレメントボトルを取り出す。
『・・・・・・だったらお手当てなんかしなきゃいいじゃない』
『お手当てをやめれば、望みが叶うんじゃない?』
「っ・・・・・・・・・!!」
ラビリンの頭の中に再びクルシーナとダルイゼンの言葉が甦る。ラビリンは少し顔を顰めるも、すぐに首を振ってその言葉を振り払った。
「絶対に・・・・・・負けないラビ!!!!」
ラビリンがそう叫ぶと同時に、グレースは花のエレメントボトルをステッキにセットする。
「エレメントチャージ!!」
そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。
「ヒーリングゲージ上昇!!」
ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。
「プリキュア!ヒーリングフラワー!!」
キュアグレースはそう叫びながら、ステッキを上空へと飛んでいるメガビョーゲンに向けて、ピンク色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、かすみへと飛んでいく。
「離、せ・・・離せ!!!! この偽物ごときが!!!! 離すか・・・絶対に離すものかっ・・・のどかを苦しめたお前だけは絶対に離さないっ!!!! な、なぜだ・・・なぜ私がこいつを、引きはがせない・・・!? なぜだ!!??」
カスミーナは胸に当てている手を懸命に引き剥がそうとするが、かすみの気迫と体の中の力のせいか引き剥がすことができない。
そして・・・・・・・・・光線がかすみの体に直撃した。
「ぐっ・・・ぐぅぅぅぅぅぅ・・・!!!!!」
光線はかすみの体の中へと入っていき、カスミーナが苦しみ始める。
「い、いいのか、お前・・・・・・私の中の偽物も、消えることになるぞ・・・・・・!!!!」
カスミーナはかすみを盾にして、グレースをけん制しようとするが・・・・・・。
「私、決めてるの!! 絶対にかすみちゃんを助けるって!! かすみちゃんが私を信じて撃ってって言ったの!! だから、私は友達の、かすみちゃんを信じる!!!! あなたなんかに、好き勝手はさせないっ!!!!!!」
グレースはカスミーナの脅しのような言葉にも強気に反論し、光線の勢いを強くした。
「ぐっ、うぅぅぅぅぅぅ・・・ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
カスミーナは耐えることができず、かすみの体ははるか遠くへと吹き飛んでいった。
「俺たちは絶対に負けねぇ!!! 底力を見せてやろうぜ!!!!」
「ビョーゲンズの思い通りには、させないペエ!!!!」
一方、ギガビョーゲンの攻撃を防いでいるフォンテーヌとスパークル。ニャトランたちがそう声を上げると、2つのシールドは1つになって強化され、そのままギガビョーゲンの攻撃を押し返していく。
「っ、ギ、ギガァァァァ・・・!?」
遂にはギガビョーゲンの攻撃は打ち消され、ギガビョーゲンは後方へと吹き飛んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・や、やった・・・・・・!!」
「かすみ・・・・・・・・・」
「っ・・・・・・・・・」
グレースはカスミーナに勝ったことに喜びつつも、吹き飛んでいったかすみのことを切なげに見つめていた。
「っ・・・落ち込んでいる場合じゃないラビ!! 早くギガビョーゲンを!!」
「!! うん!!」
ラビリンはまだ終わっていないことにハッとすると、グレースに呼びかけ、フォンテーヌたちの元へと走る。
「遅れてごめん!!」
「グレース!!」
「グッドタイミングだよ!!」
駆けつけてきたグレースが無事だとわかり、フォンテーヌは安堵の声を漏らし、スパークルは親指を突き立ててそう言った。
「ラテ様、行くラビ!!」
「ワフ〜ン!!」
ラビリンの言葉を受けて、ラテは大きく鳴いた。
「「「「ヒーリングっどアロー!!!!」」」」
4人がそう叫ぶとラテがステッキとハープ、エレメントボトルの力を一つにまとめた注射器型のアイテム、ヒーリングっどアローが出現する。
その注射器型のアイテムに、ハートの模様が描かれたエレメントボトルをセットする。
「「「「ヒーリングアニマルパワー!! 全開!!」」」」
ヒーリングアニマルたちのダイヤルが回転し、その注射器型のアイテムが4つに別れるとグレースにはラビリン、フォンテーヌにはペギタン、スパークルにはニャトラン、アースにはラテの部分で止まり、グレースたち4人の服装や髪型などが変化し始める。
そして、4人の背中に翼が生え、いわゆるヒーリングっどスタイルへと変化を遂げる。
「「「「アメイジングお手当て、準備OK!!!!」」」」
4人は手に持っている注射器のレバーを引くと、虹色のエレメントパワーがチャージされる。
「「「「OK!!!!」」」」
そして、パートナーのヒーリングアニマルたちがダイヤルから光となって飛び出し、思念体の状態になって現れ、パートナーに寄り添った。
「「「「プリキュア!ファイナル!! ヒーリングっど♡シャワー!!!!」」」」
プリキュアたちがそう叫ぶと、レバーを押して4色の螺旋状の強力なビームを放った。4色のビームは螺旋状になって混ざり合いながら、ギガビョーゲンへと向かっていき光へと包み込んだ。
ギガビョーゲンの中で4色の光は、それぞれの手になって中に取り込まれていた農家の男性を優しく包み込む。
ギガビョーゲンをハート状に貫きながら、4色の光線は農家の男性を外に出した。
「ヒーリン、グッバイ・・・・・・」
「「「「「「「お大事に」」」」」」」
「ワフ~ン♪」
ギガビョーゲンが消えたと同時に、果樹園近くに広範囲に渡って蝕まれていた木々が元の色を取り戻していく。
「ふっ・・・・・・残された時間をせいぜい楽しむんだね」
プリキュアたちの方を見ながらダルイゼンはそう呟くと、次に虚空を見つめ始めた。
「クルシーナ・・・・・・・・・」
人間の女性を連れ去ったクルシーナのことを気にしつつも、ダルイゼンは撤退していった。
「なんとか止めたラビ・・・・・・でも、まだ終わってないラビ・・・・・・!!」
「? どういうことなの、ラビリン?」
ラビリンは安心していない様子でそう言うと、グレースがそう尋ねる。
「クゥ〜ン・・・クゥ〜ン・・・・・・」
「ラテ、どうしたのですか?」
ラテも何やら言いたげな様子で鳴いており、アースがそう声をかける。
「中島先生が、攫われたラビ・・・・・・」
「「「「っ!?」」」」
ラビリンが言いにくそうな様子で告白すると、グレースたちは驚いた。
「中島先生が・・・・・・?」
「攫われた・・・・・・?」
「どういうことなの・・・・・・!?」
「実はクルシーナもいて、目の前で攫われたラビ・・・・・・ラビリンを庇って・・・・・・ラビリンは止めようとしたけど、全く敵わなかったラビ・・・・・・」
グレースたちにラビリンは落ち込んだ様子でそう話す。
「ラビリンが、もう少し強ければ・・・・・・先生は攫われなかったのにぃ・・・・・・先生には本当に申し訳ないラビ・・・・・・今日のツアーだって連れてこなければよかったラビ・・・・・・本当はラビリンが攫われればよかったのに・・・・・・」
「ラビリン・・・・・・」
ラビリンは瞳をうるうるとさせながら話し、グレースも悲しそうな表情で見つめる。
そんな時だった・・・・・・・・・。
「クチュン!!」
「っ!? ラテ!!」
ラテがくしゃみをして、再び具合が悪くなる。アースが抱き抱えて、取り出した聴診器でラテを診察してみると・・・・・・。
(あっちの方で、職員のお兄さんが泣いてるラテ・・・・・・)
「職員の、お兄さん・・・・・・?」
「っ! きっとゴミ掃除をしてくれてた職員の一人だぜ!!」
スパークルがあまりピンとこない感じで言うと、ニャトランが先ほどゴミ拾いをしてくれていた職員の人だということを思い出す。
「ラビリン、しんらちゃんはどこに行ったの?」
「向こうの方ラビ・・・・・・」
グレースがそう問いかけると、ラビリンはクルシーナが去っていった方向を向く。
「まだ行けば、先生が見つかるかもしれないよ」
「ラビ・・・・・・?」
「ラビリン、ラビリンは何も悪くないよ? だって、ラビリンは先生を助けようとしてくれたんだよね? ラビリンは偉いよ。私はそんな優しいラビリンがパートナーでよかったと思ってる」
「グレース・・・・・・」
グレースは少し希望のあることを話すと、ラビリンに思いの丈を話した。それを聞いたラビリンは瞳をうるうると潤ませた。
「そうだよ。行った場所がわかってるなら、まだ助けられるよね?」
「だったら、早く助けに行こうぜ。俺も先生のことは好きだからよぉ」
「もしかしたら、ギガビョーゲンを呼び出したのはしんらさんかもしれないわ」
「場所さえわかれば、見つかるはずペエ」
「ラビリンのやったことは、無駄にはならないと思います」
「ワン♪」
スパークルとフォンテーヌたちも、ラビリンを励ますようにそう言う。
「みんなぁ・・・・・・」
ラビリンはそんなグレースたちの気遣いに泣きそうになる。
「早く助けに行こう? 先生も待ってるはずだよ」
「グスッ・・・・・・ラビ!!」
ラビリンは涙を振り払って返事をすると、グレースたちはギガビョーゲンの元に向かうべく走り出したのであった。
「ふわぁ〜・・・・・・ギガビョーゲンの仕事が完了するのを待っているとはいえ、退屈ねぇ・・・・・・」
一方、クルシーナはギガビョーゲンが周囲を蝕むのを眺めながらそう呟いていた。ふと中島先生の方を見るも、中島先生はスヤスヤと眠っている。
「・・・・・・・・・」
クルシーナは少し先生の寝顔を見つめた後、再びギガビョーゲンの方を見る。
すると・・・・・・・・・。
「ん?」
何かこちらに飛んでくるのが見えた。それは何やら人のようなもののようだが・・・・・・。
それはクルシーナの頭上を通り過ぎると、クルシーナの後方数メートル通り過ぎたところに落ちていった。
「・・・・・・・・・」
クルシーナは気になって、その場から立ち上がってその落ちたものを見に行くことにした。
ギガビョーゲンや先生から離れて、その落ちたであろう場所へと向かっていくと・・・・・・。
「? カスミーナ?」
そこにはカスミーナが倒れており、その背後の木がへし折れて倒れているのが見えた。
「・・・・・・?」
カスミーナに近づいていくと、その体が赤い靄に包まれており、その表情は苦しそうな顔をしていた。
そして・・・・・・赤い靄はカスミーナの体から飛び出していくと、ものすごい速さで森の中へと消えていく。すると、カスミーナの髪が銀髪から金髪へと戻り、赤だった瞳を緑色になり、漆黒の手袋やスカートは赤色へと戻っていった。
「はぁ・・・・・・戻っちゃったか・・・・・・まあ、いいけど・・・それに新しい何かがこいつの中にあるみたいだけど、こっちが本物かしらね」
クルシーナは自分と対立していた人格のカスミーナに戻ってしまったことを悟り、でも気にしない様子でそう呟くと、指を鳴らして手下の小さなコウモリの妖精たちを呼び出す。
「こいつをアジトまで運んでいけ。お父様から呼び出しもあると思うけど、とりあえずベッドに寝かせておきな」
クルシーナは黒いゲートを出現させてそう指示をすると、小さなコウモリの妖精たちは皆でカスミーナーーーーかすみの体を持ち上げて、そのまま黒いゲートの中へと入っていった。
「さてと、出ていった方はどうなのかしらねぇ・・・まあ、あんまり期待してないけど」
クルシーナはかすみの体から飛び出していった赤い靄の行方を気にしつつも、ギガビョーゲンと先生の元へと戻っていく。
「ギーガァァァァ・・・・・・」
「ギガビョーゲンの方は順調ね」
クルシーナが笑みを浮かべながら、両肩のポリバケツから赤い光線を撒き散らすギガビョーゲンを見据える。
「先生ー!!!!」
「っ・・・・・・」
そこへ聞こえてくるグレースの声を聞いて、クルシーナは顔を顰める。
「しんらちゃん・・・・・・!!」
「ギガビョーゲンを生み出していたのは、やっぱりあなただったのね・・・・・・!」
「来たか・・・プリキュア・・・・・・!」
グレースとフォンテーヌがこちらを見ながら言うと、クルシーナは忌々しそうに呟く。
「アタシは先生に理想の世界を見せたいんだ。邪魔をするなら潰すわよ・・・!!!!」
黒いオーラを発せながらそう言うクルシーナに、緊張した面持ちになるプリキュアたち。
「先生がそんな世界を望むわけがないよ!!!!」
「そうだよ!! しんらっちのことを治そうとしたナカッチ先生が、そんな病気だらけの世界を望むわけないじゃん!!!!」
「先生はあなたを助けようとして、あなたのために尽くしたのよ・・・・・・そんな先生がビョーゲンズに支配された世界なんて望むはずがーーーー」
「黙れ!!!!」
グレースたちは怯まずにそう言い返すも、三人の言ったことが癇に障ったのか怒鳴り声を上げて一蹴する。
「もういいのよ、そんな無意味な議論は・・・! アタシはビョーゲンズ、お前らはプリキュア、争う理由はそれで十分なのよ。それに・・・わかってくれないなら、理解してもらうだけなんだから・・・!!!!」
クルシーナはそう言うと再びメガパーツを取り出して、中島先生に近づく。
「っ、やめて!!!!」
何をしようとするかわかったグレースはとっさに飛び出してクルシーナを阻止しようとするが、クルシーナは片手で指を鳴らして、手下の小さなコウモリの妖精たちをけしかける。
「っ、きゃあ!! うっ・・・!!」
グレースはまとわりつくコウモリの妖精たちのせいで、先に進むことができず、クルシーナに近づくことができない。
「「「グレース!!」」」
「・・・・・・やれ、ギガビョーゲン」
心配して叫ぶフォンテーヌたちは同じように阻止しようと飛び出すが、クルシーナはギガビョーゲンに指示を出す。
「ギーガァァァァ!!!!」
「「「っ・・・・・・!!」」」
ギガビョーゲンは両手の送風機から赤い竜巻ごと光線を放つ。フォンテーヌたちはそれを散開して避ける。すると、プリキュアが踏んでいた地面がゴミまみれになって赤く蝕まれる。
「ふん・・・・・・・・・」
クルシーナは鼻を鳴らしてそれを見ると、再び中島先生を見つめる。
「先生・・・・・・一緒にアタシたちの世界に行こ・・・・・・」
クルシーナは優しいような、歪んだような笑みを浮かばせながら眠っている先生にメガパーツを近づける。
「はぁっ!!」
「っ!! ちっ・・・・・・!」
しかし、クルシーナの持っていたメガパーツは、小さなコウモリの妖精を振り払ったグレースがステッキから放った光線に弾かれ、光線が放たれた方向を見たクルシーナは顔を顰めながら舌打ちする。
「先生をビョーゲンズになんかさせないラビ!!!!」
「しんらちゃん・・・・・・私は止めるよ。先生を、地球のみんなを守るために!!!!」
「ふん、言ってろ・・・・・・テアティーヌの犬ごときが・・・・・・!」
グレースとラビリンが睨みながらそう言うと、クルシーナも睨み返しながらそう言い、片手に禍々しいピンク色のエネルギーを溜め始める。
睨み合う二人・・・・・・そして・・・・・・。
「ふんっ!!」
「実りのエレメント!! はぁっ!!」
クルシーナの放った禍々しいピンク色の光弾と、グレースの実りのエレメントボトルをセットして放ったピンク色の光弾がぶつかり合う。
先生を受け入れさせようとするもの、先生を助けようとするもの、因縁の対決が始まろうとしていた。
一方、かすみの体から出ていった赤い靄は・・・・・・・・・。
ズル・・・ズル・・・ズル・・・・・・。
赤い靄は地面を引きずりながらも森の中を進んでいく。辺りはギガビョーゲンの襲撃によって、病気に蝕まれており、健康的なものは一つもなかった。
赤い靄は心なしか黒いオーラに包まれており、周囲が凍りつくほどの私怨のようなものに包まれていた。
すると、赤い靄は何かを見つけたかのようにその動きを止める。目の前には奇跡的に蝕まれていない一本の木が立っているのがあった。
シュッ・・・・・・・・・!!!!
赤い靄は物凄いスピードで一本の木へと飛び付くと、その中に入り込む憑依する。すると、その木は赤い靄に包まれていく。
オノレッ・・・ニセモノ!! キュアグレース!!!! ユルサン・・・ゼッタイニユルサンゾッ・・・!!!!!!
一本の木から聞こえてくる怨嗟、恨みの言葉。その力によってなのか、一本の木が巨大な怪物へと徐々に姿を変えていく。
そんな包んでいる赤い靄からは、カスミーナの憎悪の表情が浮かび上がっていたのであった。