ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
一人になったちゆは・・・・・・脱走したかすみは・・・・・・。


第137話「逃亡」

 

「・・・・・・・・・」

 

時は少し遡る。ペギタンたちがまだちゆのことで悩んでいる中、ちゆは海辺の塀の上に立って。海を眺めていた。

 

「・・・ハイジャンで世界にいきたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!! でも、旅館も好きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

ちゆは海に向かって思い切りそう叫ぶと、その場にしゃがみこむ。

 

「・・・・・・ふぅ、私・・・どうしたら・・・・・・」

 

ちゆが表情に暗さを落としていると・・・・・・。

 

「何を騒いでいるのかと思ったら・・・・・・」

 

「っ!?」

 

ちゆの背後から声が聞こえ、びっくりしたちゆが振り向くとそこにはドクルンの姿があった。

 

「りょう!! なんでここに!?」

 

「ふふふっ♪」

 

ドクルンは口元に笑みを浮かべると、海辺の塀の上に飛び乗ってちゆと同じ場所に立つ。

 

「なんでだと思う?」

 

「・・・・・・私に、何かするため?」

 

「あらぁ〜、よくわかってるじゃない。ビョーゲンズの私を」

 

ちゆの言葉にドクルンは笑みを浮かべながらそう答えると、ちゆへと近づいていく。ちゆは警戒しながらゆっくりと後ずさっていく。

 

「こ、来ないで・・・・・・!!」

 

「逃げることないでしょ? 私たち、友達じゃない?」

 

「何かをするってわかってて、近づかせるわけないでしょ!!」

 

「はぁ・・・・・・全く・・・・・・」

 

ちゆは主張するも、その声は少し震えていた。それを聞いたドクルンはため息をつくと、その場から姿を消す。

 

「?・・・あっ!?」

 

ちゆは一瞬呆然としていると、横から現れたドクルンに片手で突き飛ばされ、海辺の塀の上から砂浜へと落下する。

 

「今、あなたが何を考えているか当ててあげましょうか?」

 

「うっ・・・・・・?」

 

「いろいろ考えていることはあるんでしょうけど、一番は旅館もハイジャンもやりたい、でもどっちも選べない、どうすればいい? でしょ」

 

「っ!! ど、どうして、それを!?」

 

ドクルンは砂浜に倒れ伏すちゆに近づきながらそう言うと、ちゆは動揺する。

 

「当然よ、私はちゆのことが大好きだもの。っていうか、あれだけ盛大に大きな声を出してれば、嫌でもわかるわよ」

 

「っ・・・・・・!!」

 

ドクルンが近づいていることを知ったちゆは再び距離を取り、ステッキを取り出すが・・・・・・。

 

「っ、ペギタン・・・・・・」

 

パートナーのペギタンを家に残して一人で行ってしまったことで、今はプリキュアに変身できない。ちゆは焦り始める。

 

「あら、パートナーがいないの。だったら、もう私に反抗しようなんてことはできないわよねぇ?」

 

ドクルンはその様子を察して不敵な笑みを浮かべると、一瞬のうちにちゆの目の前に現れる。

 

「っ!! うっ!!」

 

ちゆはドクルンに胸倉を掴まれて砂浜へと押し倒されてしまう。

 

「何も考えなくていいの。ちゆのことは私がわかってるから♪」

 

「っ!? や、やめ、て・・・・・・うっ・・・・・・」

 

ドクルンがもう片方の手で禍々しいオーラを纏った、尖った赤い氷のようなものを出すと、ちゆはかすれた声で訴える。ドクルンはその声をかき消すかのように胸倉を掴んでる手を押し込む。

 

「大丈夫よ、痛くないから。他のことなんか、考えずに済むわ」

 

「や、や、め・・・・・・あっ、が・・・・・・!」

 

ドクルンは子供をあやすかのようにそう言うと、再度訴えるちゆの声を無視して赤い氷を彼女の体に突き刺す。その瞬間、ちゆの体を赤い禍々しいオーラが包み込み、彼女の口から苦しみの声が上がった。

 

「ぁ・・・ぁぁ・・・・・・」

 

ちゆは体から力が抜けて砂浜に手が力無くボトリと落ち、そんな彼女の体を黒い靄が包んでいく。

 

「ふふふっ♪ これでいいわ、お父さん。ちゆも私のもの・・・♪」

 

ドクルンは胸倉から手を離し、倒れたまま意識が朦朧としているちゆを見つめながら笑みを浮かべた。

 

「上手くいったブル」

 

「ええ。あとは病気の苦しみを出てきた靄に染み着かせて、搾取するだけ」

 

そこへ頼まれていたブルガルが来てそう言うと、ドクルンは笑みを浮かべながら再びちゆを見つめる。

 

「う、うっ・・・・・・くっ・・・・・・」

 

体の中を黒い靄に侵食されたちゆは苦しんでおり、そんな彼女にドクルンは近づいて持ち上げ、肩に担ぐ。

 

「さてと・・・・・・どうしようかしら。ん? あれは・・・・・・」

 

ドクルンはどこかへ行こうと辺りを見渡していると、海の近くの岩場に誰かが立っているのが見えた。しかも、どこかで見たことのある人物だったため、ドクルンはそこへ行くことにした。

 

そんなドクルンが向かおうとしているその場所では・・・・・・。

 

「〜〜〜〜っ、なんて鬱陶しい風なのぉ!? しっかもキラキラしちゃって!! イライラするわっ!!」

 

海を眺めていたシンドイーネが、吹いている潮風とキラキラとしている海にイライラしていた。

 

「また、ここでも誰かが騒いでますねぇ」

 

「っ、ドクルン・・・・・・!!」

 

背後から聞こえる声に振り向き、ドクルンだとわかると顔を顰める。

 

「キラキラしてますねぇ。こういうのを見てるとすごい汚したくなります・・・・・・」

 

「あんたねぇ・・・・・・っていうか、そいつ・・・!!」

 

ドクルンが海を眺めながらニヤニヤ見つめていると、呆れたシンドイーネが肩に担いでいるちゆを見て指を差す。

 

「ん? あぁ・・・この娘ですか。キュアフォンテーヌですよ」

 

「どうしたのよ、それ!?」

 

「どうしたのって・・・一人でいたからそこを狙って病気を打ち込んでやっただけです」

 

「あら、そう・・・・・・」

 

問い詰めるシンドイーネに、ドクルンがそう説明するとちゆを岩の上に下ろす。

 

「それよりも、今ならチャンスじゃないですか? ギガビョーゲンを生み出せば、プリキュアたちはどうにもならないでしょう」

 

「・・・まあ、そうね・・・そんなことわかってるわよ!!」

 

ドクルンがそう諭すと、シンドイーネはあたかもわかっているような反応をすると辺りを見渡す。すると、砂浜を歩くサーファーの姿が目に入った。

 

「ふふっ・・・・・・みぃつけた♪」

 

シンドイーネは標的を見つけると、早速岩場から飛び降りてサーファーの元へ向かっていく。

 

「ふふふっ♪ シンドイーネは本当に、わかりやすい人・・・・・・」

 

ドクルンはシンドイーネの後ろ姿を見つめながらそう呟くと、岩場に寝かせているちゆを見やる。

 

「うっ・・・うぅ・・・・・・」

 

「ふふふっ♪」

 

ちゆは額に汗を滲ませながら苦しんでおり、その様子を見ながらドクルンは優しく撫でてあげる。

 

「今日も大量だったなぁ〜!」

 

「??」

 

そこへ嬉しそうな大きな声が聞こえ、振り向いてみるとカゴと釣り竿を持った男性がいるのが見えた。

 

「・・・・・・・・・!!」

 

ドクルンはその様子を見て顔を顰めると、何かを思いついたかのようにハッとすると不敵な笑みを浮かべる。

 

「私もやっておくか・・・・・・」

 

ドクルンはその場で指をパチンと鳴らし、黒い塊を出現させる。

 

「進化してください、ナノビョーゲン」

 

「ナノデス〜」

 

生み出されたナノビョーゲンは鳴き声を上げながら、釣り人の男性へと飛んでいく。

 

「っ!!??」

 

釣り人の男性は呆然とした表情のまま、ナノビョーゲンに取り込まれていく。

 

その男性を主体として、巨大な怪物がかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてその素体を模倣する様々なものが姿として現れていき・・・。

 

「ギガビョォ〜〜ゲン!!」

 

リールのようなものに釣り竿が3本付いたものを被り、ベストを身に付け、腰にカゴのようなものを3つ付けた釣り人のような格好のギガビョーゲンが誕生した。

 

「ギィィィィィィ〜、ガァ〜〜!!!!」

 

ギガビョーゲンは周囲に赤い球体を複数出現させると、そこから禍々しい光線を海に放ち、赤く蝕んでいく。

 

「やっぱり海は赤いほうが素敵ねぇ・・・・・・」

 

ドクルンがそう言いながら不敵な笑みを浮かべていると・・・・・・。

 

「ちゆぅぅぅぅぅ〜っ!!」

 

「ん?」

 

そこへちゆを叫ぶ声が聞こえ、その方向を向くとペギタンがやってきていた。

 

「・・・・・・鬱陶しい奴が現れたわね」

 

ドクルンはその声を聞いて、視界に映るペギタンを睨みつけていた。

 

「ちゆぅぅぅぅ!! おかしいペエ・・・・・・いつもならきっとこの近くにいるはずペエ。ちゆぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

ペギタンはちゆを探していたが、ちゆが近くにいないことをおかしいと思い、呼ぶように叫ぶ。

 

「うるさいですよ、全く・・・・・・」

 

「っ!! ドクルン!!」

 

「ちゆちゆって、騒がないでください。イライラします・・・・・・!!」

 

そこにドクルンが淡々と背後から現れ、ペギタンは警戒する。

 

「ちゆ? ちゆをどこにやったペエ!?」

 

「私が預かっていますよ。もちろん、あなたに渡す気はないですけどね」

 

ちゆを知っているかのような物言いにペギタンは問い詰めるも、ドクルンはそう言い放った。

 

「ちゆを返すペエ!! うわぁっ!!」

 

「ちゆのことはいいじゃないですか。私とお話ししましょうよ♪ まあ、見せるぐらいならいいですけどね」

 

ドクルンは詰め寄ろうとするペギタンを片手で掴み上げてそう言うと、一緒にちゆの元へと連れて行った。

 

「っ、ちゆぅぅ!!!!」

 

「うっ・・・うぅぅ・・・・・・」

 

「ちゆ、どうしたペエ!? しっかりするペエ!!」

 

ちゆは苦痛に歪ませながら苦しんでおり、ペギタンが呼びかけるも反応を示そうとしない。

 

「無駄ですよ。ちゆにはメガパーツと同じようなものを埋め込みましたからね。まあ、テラパーツも入っていますが」

 

「ど、どうしてそんなことをするペエ!!」

 

「決まっているじゃないですか。全てはお父さんのため・・・・・・そして、私のためです」

 

そう訴えるペギタンに、ドクルンは笑みを浮かべながらそう話す。

 

「ちゆとお前は、友達じゃなかったペエ!?」

 

「友達ですよ。だからこそ、いつまでも一緒にいたいんじゃないですか」

 

「何で病気にする必要があるペエ!!」

 

「だから、言ったでしょ。これはお父さんのためでもあるって」

 

ペギタンはちゆの友人であるはずの彼女に何度も問い詰めるも、ドクルンは笑みを浮かべながら平然と受け答えをする。

 

「ギィィィィィイィ〜、ガァ〜!!」

 

そう話している間にも、ギガビョーゲンは赤い球体から光線を放って徐々に周囲を蝕んでいく。

 

「あぁぁぁ・・・・・・・・・」

 

その様子をペギタンは拘束されたドクルンの手から見ることしかできない。抜け出したところでちゆはこのような状態ではプリキュアに変身ができない。自分だけではどうにもならない状況だ。

 

「うぅぅぅ・・・ぐぅぅぅぅ・・・!!!! うぁぁぁ!!!!」

 

「大人しくしておいてもらえますか? 逃げたところで、あなたのような見習いにはどうにもならないでしょう」

 

ペギタンはのどかたちに助けを求めようと考え、手から抜け出そうとするが、ドクルンは強く握って痛めつけ、淡々とした言葉で返す。

 

「うっ・・・・・・ラビリン・・・・・・みんな・・・・・・」

 

苦痛に顔を歪めながら、ペギタンはのどかたちが来てくれることを願うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲンズが海岸で暴れ始めた頃・・・・・・。

 

「ここは・・・・・・・・・」

 

かすみは今まで行ったところのない場所へと出ていて、辺りを呆然と見つめていた。

 

ここはどこかの森のようだが、のどかたちが住んでいるすこやか市ではない。辺りは黒く侵食されているようなところもあるが、地球とは違う何かがそこにあった。

 

かすみはゆっくりと辺りを見渡しながら歩いていく。すると、何やら明るく神秘的な場所へとたどり着いた。

 

「あぁ・・・・・・・・・」

 

かすみは足を止め、その美しい光景に見とれていた。

 

「あなたは・・・・・・!」

 

「っ!!」

 

そんな彼女に声をかけるものがいた。かすみは驚いてその声に振り向くとそこには高貴な姿をした白い犬のような人物がいた。

 

「ヒーリング、アニマル・・・・・・?」

 

かすみはその人物の姿を見て、呆然とした様子でそう呟いた。

 

「あなた・・・ラビリンと、ラビリンたちが選んだ人間といた子ね」

 

「っ・・・どうしてそれを!?」

 

「私はあの子たちのことをここから見守っていたわ。そこにあなたもいましたね。ラビリンたちのことも守って、よくしてくれていたわね。どこに行ってしまったのか心配だったけど、まさかここに現れるとは思わなかったわ」

 

白い犬のヒーリングアニマルがそう呟くと、かすみは表情に暗い影を落とした。

 

「私は・・・・・・ラビリンたちを、のどかたちを裏切ったんだ・・・・・・。のどかを助けたい、みんなに迷惑をかけたくない・・・・・・そんな気持ちで私は、ビョーゲンズへと入って、影なりに守ろうとしてた・・・・・・。でも、結果的にラビリンたちにも、のどかたちにもひどい目に合わせてしまった・・・・・・私はもう、合わせる顔がないし、会う資格なんかない・・・・・・!」

 

かすみは声を震わせながらそう呟く。ビョーゲンズとして完成したくない、その想いからビョーゲンズから逃げ出したはいいものの、きっとのどかは自分を許してはくれないだろう。

 

どこへ行けばいいのかわからない。どこへ行っても自分を受け入れてくれるところはないだろう。どうせだったら、あいつらに見つからないところで静かに消えていくべきか。でも、そんな場所はきっとない。

 

のどかのためにある覚悟は決めたが、もう自分はビョーゲンズに体を弄られてしまった・・・・・・もう、どうしたらいいか・・・・・・わからない・・・・・・。

 

白い犬のヒーリングアニマルはそれを心配そうに見つめていた。

 

その後、かすみと白い犬のヒーリングアニマルはその場に隣り合うように座り込んだ。

 

「どうしていなくなっていたのか、聞かせてくれるかしら?」

 

「ああ・・・・・・」

 

白い犬のヒーリングアニマルに尋ねられたかすみはその経緯を話し始めた。

 

「そうですか・・・友達を助けるために・・・・・・」

 

「そうだ・・・・・・最初はのどかたちと平和に過ごせればいいと思っていた。でも、あいつらがみんなを貶めて、のどかを・・・・・・私は必死に助けようとしたけど、無駄だった・・・・・・。私はあいつに助けを求めるしかないと思って、その代償としてビョーゲンズに入ったんだ・・・・・・」

 

かすみは体育座りの格好で、顔に埋めながら話す。

 

「でも、のどかはまた元気がなくなっている。私が完成したら、のどかは消えてしまう。結局、何も変わっていないんだ・・・!! きっとこのまま逃げて、のどかの元に逃げても、私はみんなを傷つけ、迷惑をかけるだけ・・・・・・人間にも、ビョーゲンズにもなれない・・・・・・!! もう私は、このまま消えてしまいたいっ・・・・・・」

 

体を震わせて涙を流すかすみ。すると・・・・・・。

 

「あなたは、それでいいのですか?」

 

「えっ・・・・・・・・・」

 

「あなたからは確かに、ビョーゲンズの気配がします。でも、それとは別にあなたからは何か人間の心のようなものを感じます。あなたは生まれてから、そんな想いを信じて、自分を信じて、あの子たちを守ってきたのでしょう? それはどんな形でも決して悪いものではありません。きっとあの子たちは、そんなあなたをわかってくれているはずですよ」

 

「でも、傷つけたことには変わりはない・・・!! これが悪くないって本当に言えるのか・・・!? のどかたちがわかってるって、本当に言えるのか・・・!!??」

 

白い犬のヒーリングアニマルにそう話された、かすみは首を振りながら悲痛な想いを叫ぶ。

 

「あなたは、どうしたいのですか?」

 

「っ・・・・・・」

 

「自分はそれを悪いと思っている、そののどかという子はわかってくれないと思っている、きっと会っても無駄だと思っている、でもそれ以前に、あなたはその子たちに何をしたいのですか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「あなたはもう少し、自分のために生きるべきです。その子のためではなく、ラビリンたちのためではなく、自分が本当にやりたいことのために。あなたが本当にやりたいことは何ですか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

影を落としているかすみに、白い犬のヒーリングアニマルはそう尋ねる。かすみは少し考えた後・・・・・・口を開いた。

 

「私、は・・・・・・」

 

かすみは言葉を詰まらせて口を閉じるも、再び口を開く。

 

「私は、のどかを、プリキュアのみんなを守りたい・・・!!!! のどかに嫌われても、みんなに嫌われてたっていい!! ビョーゲンズに着いても、側に寄り添って避けられても構わない!! 私はどんな形であっても、みんなを守りたいんだ!!!!」

 

思いの丈を叫んだかすみを見て、白い犬のヒーリングアニマルは微笑んだ。

 

「よく、言えましたね・・・・・・」

 

白い犬のヒーリングアニマルはそう言うとかすみへと近づいていき、かすみの頬に顔を寄せてきた。

 

「あ・・・・・・」

 

「誇りなさい。あなたはビョーゲンズという種族を超えたのですよ。きっとあなたが生まれたのは、その子たちと一緒に生きたいという想いがあったのでしょう」

 

「結局、一緒にはいられなかったけどな・・・・・・」

 

「これから一緒にいればいいのです。相手の痛みや苦しみがわかる、その子を助けたいという気持ちを持っている、そんな優しいあなたをあの子たちが嫌うはずはないと思いますよ」

 

白い犬のヒーリングアニマルは優しい声でそう言うと、かすみはそのわだかまりが消えたかのように優しく微笑んだ。

 

「・・・・・・ありがとう。おかげで、少し向き合う勇気ができたよ」

 

「よかった。何があっても、私ーーーーテアティーヌはあなたの味方ですよ?」

 

「私も、あなたに会えてよかったと思ってる・・・・・・」

 

かすみはそう言うと、白い犬のヒーリングアニマルーーーーテアティーヌから離れると腕を伸ばして、黒いゲートのようなものを出現させる。

 

「私は行くよ。やることがあるから・・・・・・!!」

 

「私はあなたのことも応援してます。あなたならきっとできるはずです・・・・・・」

 

「本当にありがとう・・・私はかすみ、風車かすみだ・・・・・・」

 

かすみは笑みを浮かべながらそう言うとテアティーヌに別れを告げ、黒いゲートの中に入って行った。

 

「・・・・・・あの子の未来に、幸せが訪れますように」

 

テアティーヌは空を見上げながら、かすみに対する願いを呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!!!!」

 

「ギィィィィィィ・・・・・・ガァァァァッ!!!!」

 

一方、海の上ではサーフボードに乗ったギガビョーゲンが暴れまわっていた。

 

「ギィィィ〜、ガァ〜!!!!」

 

砂浜の上では釣り人のようなギガビョーゲンが、赤い球体を出現させて光線を放っている。

 

「っ・・・・・・いた!!」

 

「ギガビョーゲンが、2体もいるよ!?」

 

そこへのどかたちが駆けつけ、のどかとひなたは変身アイテムを手に構える。

 

「ちょっと待ってください!! ちゆが見当たりません」

 

「っ、あれ? そう言えば・・・・・・」

 

「走りに行ったちゆちーなら、いつもここにいるはずだよねぇ・・・?」

 

アスミがそれに待ったを掛けてちゆのことを話すと、のどかとひなたは辺りを見渡し始める。

 

「み、みんなぁぁぁぁ〜!!」

 

「「「っ!!」」」

 

そこへペギタンの叫びが聞こえたかと思うと、そちらに振り向くと・・・・・・。

 

「ちゆちゃん!! ペギタン!!」

 

「ドクルンラビ!!」

 

そこにはちゆに膝枕をし、片手でペギタンを掴んで拘束しているドクルンの姿があった。

 

「遅かったですね・・・・・・おかげであなたたちの仲間はこの通りですよ」

 

「うぅっ・・・・・・」

 

ドクルンは岩場の上に座りながら、こちらを不敵な笑みを浮かべながら見ている。ちゆは膝枕をされながらも、表情は苦しそうだった。

 

「ちゆちー、なんであんなに苦しそうなの!?」

 

「ちゆに何をしたのですか!?」

 

「ちょっと私の病気をね。おかげでこんなに可愛くなっちゃって、素敵になりました♪」

 

ひなたとアスミはちゆの様子に驚きながらも、ドクルンに問い詰めると彼女は笑みを浮かべながら答えた。

 

「なんでちゆちゃんにこんなことするの!? ちゆちゃんの友達なんでしょ!!」

 

「友達だからこうして一緒にいたいんじゃないですか。こうやって、ずーっと私と一緒にいてくれれば、それでいいんですよ・・・・・・」

 

のどかがちゆの友人であるはずの彼女にそう聞くと、ドクルンは表情を崩すことなく答えた。

 

「私たちのことはどうでもいいでしょう。いいんですか? あの2体を止めなくても?」

 

「ギガァァァァァァ!!!!」

 

「ギィィィィ〜、ガァァァァ〜!!!!」

 

ドクルンが顔を向ける視線の先には、2体のギガビョーゲンが海岸で暴れまわっている。

 

「っ、とにかく行こう!!」

 

「ラビ!!」

 

ちゆのことは心配だが、ギガビョーゲンたちを放っておけない・・・・・・のどかの言葉を合図にアスミも変身アイテムを構えた。

 

「「「スタート!」」」

 

「「「プリキュア、オペレーション!!」」」

 

「エレメントレベル、上昇ラビ!!」

「エレメントレベル、上昇ニャ!!」

「エレメントレベル、上昇ラテ!!」

 

「「「キュアタッチ!!」」」

 

ラビリン、ニャトランがステッキの中に入ると、のどかとひなたはそれぞれ花のエレメントボトル、光のエレメントボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。

 

アスミは風のエレメントボトルをラテの首輪にはめ込む。すると、オレンジ色になっているラテの額のハートマークが神々しく光る。

 

のどかとひなたは、肉球にタッチすると、花、星をイメージとしたエネルギーが放出され、白衣のような形を形成され、それを身にまといピンク、黄色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

そして、髪型もそれぞれをイメージをしたようなものへと変わり、のどかはピンク、ひなたは黄色へと変化する。

 

ラテとアスミは手を取り合うと、白い翼が舞い、ラテが舞ったかと思うとハートの中から白い白衣のようなものが飛び出す。

 

その白衣を身に纏い、ラテが降りてきたかと思うとハープが飛び出し、さらにアスミは紫色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

衣装にチェンジした後、ハープを手に取り、その音色を奏でる。

 

キュン!

 

「「重なる二つの花!」」

 

「キュアグレース!」

 

「ラビ!」

 

のどかは花のプリキュア、キュアグレースに変身。

 

キュン!

 

「「溶け合う二つの光!」」

 

「キュアスパークル!」

 

「ニャ!」

 

ひなたは光のプリキュア、キュアスパークルに変身した。

 

「「時を経て繋がる、二つの風!」」

 

「キュアアース!!」

 

「ワン!」

 

アスミは風のプリキュア、キュアアースへと変身した。

 

みんなはそれぞれ変身を終えると飛び上がり、ギガビョーゲンの前に立ちはだかる。

 

「みんな・・・・・・頑張ってペエ・・・・・・」

 

ペギタンはそんな三人を心配そうに見つめている。

 

「うっ・・・・・・うぅぅ・・・・・・」

 

「ふふふっ、私の可愛いちゆ。大丈夫、もう少ししたら楽にしてあげるわ・・・・・・」

 

苦しむちゆに、ドクルンは優しそうな笑みを浮かべながら彼女の頭を優しく撫でた。

 

「りょ・・・りょ、う・・・・・・」

 

「ん・・・・・・?」

 

「なん、で・・・ビョーゲンズ・・・なんかに・・・・・・?」

 

すると、目を覚ましていなかったちゆが目を開いており、こちらを切なそうに見上げ、苦しげな声でそう呟いた。

 

「ちゆ!! 目を覚ましたペエ!? うっ・・・・・・!!」

 

ペギタンはちゆのその様子に声を上げるも、ドクルンに黙らさせられるように握り締められる。

 

「・・・・・・ちゆってひどいわよね、本当に」

 

「・・・・・・??」

 

「ちゆ、なんで病院に会いに来てくれなかったの? 私は何ヶ月も待ってたのに・・・!!」

 

「待って、た・・・・・・? っ!!」

 

ドクルンはまるで子供のような声を出してそう言うと、ちゆは少し考えた後、ハッとした。

 

「もしかして・・・私が、見舞いに来れなかったから・・・・・・?」

 

「来れなかったぁ? 来なかったの間違いでしょ!! そうやってまた嘘つくんだぁ・・・・・・?」

 

ちゆがそう答えると、ドクルンは怒るように声を少し荒げる。

 

「違う・・・違う、わ・・・!! 言ったじゃない・・・・・・私は、用事があって、離れるって・・・・・・」

 

「じゃあ、なんで!! 私のことを放っておいて、私以外の子と仲良くしてるのよ!? 忘れてたんでしょ!! 私のことなんか!! どうせちゆにとって、私のことなんかどうでもよかったのよっ!!!!」

 

ちゆが苦しみながら反論しようとすると、ドクルンは激昂してちゆの言葉を否定する。ドクルンははぁはぁと息を荒くして、落ち着くと再びちゆを見据える。

 

「私がどんな気持ちで病院にいたかわかる? あなたに会えなくて、ずっと寂しくて・・・・・・ずっと一人だった・・・・・・病院でもちゆ以外にお友達はできたけど、みんな治ったり、助からなかったりして私の前からいなくなっていくの・・・・・・一人にされる気持ち、あなたにわかる?」

 

「っ・・・・・・・・・」

 

「ペエ・・・・・・・・・」

 

ドクルンが子供のような声でそう話すと、ちゆとペギタンは辛そうな表情をする。

 

「医者のせいだ、医者のせいだ、こんな思いをしているのは医者のせいだと、毎日思っていた時・・・・・・あの人が声をかけてくれたの・・・・・・」

 

ドクルンはその時のことを回想する。

 

『・・・・・・苦しいのか? 痛いのか?』

 

苦しくはないけど、寂しいの・・・・・・。

 

『いい憎しみだ。まるで地球を憎んでいるとも思える・・・寂しいと思うのであれば、心などいっその事なくせばよいのだ』

 

心を、なくす・・・・・・・・・? そうだ、こんなに悲しいなら、何も感じなければいい・・・・・・。

 

『我が全て楽にしてやろう。自由に行動できるように力を与えてやる。その代わり、我のために働き、我のために尽くすのだ。地球を我らの住む世界のような、快適な環境にするために。我の大切な娘としてな』

 

誰? そんなことしてくれるっていう、あなたの名前は・・・・・・??

 

『我はキングビョーゲン。今からお前を娘とする、ビョーゲンズの支配者である』

 

そんなりょうの憎しみに呼応するように、声をかけたのはキングビョーゲン・・・後に自身の父親となる存在であった。

 

病室の中、何か物音がし、病院の窓から何かがすり抜けるように入ってくる。その紫がかったような赤黒い靄はりょうが横になっているベッドの下へと素早く移動する。そして・・・・・・!!

 

ズオォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

『っ・・・・・・・・・』

 

ベッドの下から赤黒い靄がりょうを包み込むように襲いかかる。りょうは一瞬切なそうな表情をしたまま、その意識は闇へと落ちていったのであった。

 

そして、自身が再び気がついた時には、あの声が響いていた。

 

『地球上にいるビョーゲンズたちよ・・・我はキングビョーゲン。時は満ちた・・・この星をビョーゲンズのものにするため、今こそ忌々しきヒーリングアニマルを滅する! さあ、我の元に集うがいい!!!』

 

その声が聞こえると同時に、目の前に光が見えていた。りょうはそれに導かれるように手を伸ばしていった。

 

そして、ベッドに眠っているりょうの瞳が大きく見開かれた。周囲から赤い靄を見ている人でもわかるように赤く光らせながら。その姿はすでに人の肌ではなく、悪魔のようなツノとサソリのような尻尾が生えていた。

 

やがて赤黒い靄はりょうごと浮かび上がると、その勢いのまま病室の窓の外へと飛び出していく。

 

病院からは他の場所からも3つの赤い靄がその近くへと飛び出していったが、その一人であるりょうは病院の近くの地面へと赤黒い靄に包まれたまま、着地したしゃがみ込む姿勢のまま静止する。

 

そしてゆっくりと立ち上がると、赤い靄が静かに薄れていき、その姿を晒した。

 

薄い黄緑色の肌に、白衣を着てメガネをかけた研究員のような格好、頭には悪魔のツノのようなもの、お尻にはサソリの尻尾のようなものが生えていた。

 

こうしてビョーゲンズの一人、ドクルンが誕生したのであった。

 

「こうして、私はビョーゲンズになったの・・・・・・忘れてたけど、私の幸せを奪った医者たちに復讐するためにね・・・・・・!」

 

「っ・・・・・・!!」

 

(そんな・・・・・・じゃあ、りょうは、私の、せいで・・・・・・私が、側にいなかったから・・・?)

 

不敵な笑みを浮かべながら答えるドクルン。対してちゆはショックを受けていた。りょうは自分が離れたせいで、心の平衡を乱して、そこをビョーゲンズにつけ込まれてしまったのか・・・・・・?

 

「私はもう決めたのよ。お父さんを復活させて、地球をビョーゲンズのものにし、ちゆを私のものにするとねぇ・・・・・・!!」

 

「!? うっ、ぁぁぁぁ・・・・・・!!」

 

ドクルンは真面目な表情でそう言うと、ちゆの胸に手を当てて赤いオーラを光らせ始める。すると、ちゆの口から苦しみの声が上がり、ちゆが先ほどよりも苦しみ始めた。

 

「だから、もっと苦しんでよ・・・ちゆ。お父さんの復活には、あなたのデータも必要なのよ」

 

「あっ・・・うぁぁぁぁ・・・・・・!!!!」

 

「ちゆぅぅ!! やめるペエ!!!! こんなことして、何になるペエ!?」

 

ちゆを苦しめようとするドクルンに、ペギタンはそう訴えかける。

 

「かはっ・・・!?」

 

「あなたは黙っていなさい・・・!! どうせ何もできないんですから・・・!!!」

 

ドクルンはペギタンの持っている手を強く握りながらそう言った。

 

「うっ・・・うぁぁぁ・・・・・・くっ、うぅぅぅぅ・・・・・・!!!!」

 

そんな彼女の膝の上では、ちゆがドクルンの片手を掴みながら首を振り、苦しみの声を上げているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃、すこやか市にある森では・・・・・・黒いゲートが現れ、そこからかすみが登場していた。

 

「よし、ここはすこやか市だな・・・・・・」

 

かすみはここがのどかたちの住んでいる場所だと理解すると、辺りを警戒しながら進もうとするが・・・・・・。

 

「っ!? うわぁっ!!!!」

 

そこへ小さなコウモリの妖精たちが飛んできて、かすみに纏わりつく。

 

「この、コウモリは・・・・・・?」

 

かすみはハッとして、この妖精たちがどこかで見たことのあるものたちだと理解する。

 

「もういいよ、戻れ」

 

「っ!!」

 

そこへ聞こえてくる聞き覚えのある声、妖精たちはかすみから離れていく。かすみはその声を認識できないわけではなかった。

 

ガサガサガサッ

 

草むらが音を立てるとそこから現れたのはクルシーナだった。

 

「クルシーナ・・・・・・」

 

「手間をかけさせんな・・・・・・かすみ」

 

かすみはクルシーナを睨むと、不機嫌そうな表情でそう言うクルシーナ。かすみには不思議と警戒心はなかった。

 

脱走したかすみと、それを追っていたクルシーナ。二人が森の中で睨み合うのであった・・・・・・。

 

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