ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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今回は中編になります。
3つに分ける割には、意外と短めです。


第13話「嗚咽」

雨上がりの天気の日・・・。

 

「ん・・・んぅ・・・」

 

目を覚ましたのどかは、少しずつぼやけた視界を鮮明にしていく。

 

「ん・・・あ・・・」

 

そして、焦点のピントがあったとき、視界にまず映ったのはパートナー、そしてちゆ、ひなたの姿であった。

 

「あ、のどか! 気がついたラビ!?」

 

「のどか、大丈夫?」

 

「ねえ、どこも苦しくない!?」

 

のどかが目を覚ましたことに気づくラビリン。心配そうな声を上げるちゆ。ひなたは顔を近づけて、不安そうな顔で呼びかけるひなた。

 

みんな、のどかを心配して駆けつけてくれたのだ。

 

「うん、もう大丈夫・・・」

 

のどかは体を起こすと、額に置かれていたタオルを取りながら笑顔で言う。

 

のどかは自分に何があったのか思い出そうとしたが、そこまでの記憶があまりない。すこ中ジャーナルの増子くんと話して、その後に家に帰ろうとしたところまでは覚えてるけど、そこから今起きるまでに何が起こったのか思い出せない。

 

でも、何かに抱かれていたのは感覚としてある。一体、誰だったのか・・・?

 

「アン!アン!」

 

「わっ!」

 

ラテがのどかの胸に飛び込んでくる。彼女も、倒れたのどかが心配で心配で仕方なかったのだ。

 

「ラテも心配してくれたんだね。ありがとう」

 

ラテを撫でながら笑顔を見せる。友達がいることが彼女にとっても何よりの励み。

 

「よっと、うわぁ!」

 

「大丈夫!?」

 

「ちょっと、フラフラじゃん!?」

 

「ああ、こけそうになったラビ!?」

 

のどかは立ち上がろうとするが、昨日の不調がまだ抜けていないのかよろけそうになった。転倒しそうになったところをちゆとひなたが間一髪支えてくれた。

 

「だ、大丈夫・・・ちょっと疲れちゃったのかなぁ?」

 

「今日は横になってたほうがいいペエ!」

 

「また倒れるかもしれないニャ!!」

 

ペギタンとニャトランも心配している。今日はもう無理しないほうがいいと。

 

「う、うん・・・」

 

のどかはちゆとひなたに支えられてベッドへと座る。

 

と、その時、休んでもいられなくなる状況が起こった。

 

「クチュン!!」

 

のどかに抱かれていたラテがくしゃみをして、ぐったりとし始めたのだ。

 

「ラテ!?」

 

「ビョーゲンズ!?」

 

「こんな時にかよ!!」

 

この兆しはビョーゲンズがメガビョーゲンを召喚させた合図、しかもよりにもよってのどかが万全ではないこんな時に・・・!!

 

聴診器を取り出して、心の声を聞いてみる。

 

(あっちで雨さんが泣いてるラテ・・・)

 

「雨が泣いてる・・・!」

 

「雨・・・?」

 

ひなたはイマイチわからなかったが、どうやら雨で起こる現象そのものが狙われた様子。

 

のどかはエレメントさんが苦しんでいることを悟ると、おもむろにベッドから立ち上がって外へと飛び出そうとするが・・・。

 

「くっ・・・うっ・・・あぁ!?」

 

足元は明らかにふらついており、部屋から出る前に壁へとぶつかってしまう。

 

「のどか!!」

 

ちゆがのどかへと駆け寄るも、のどかは5、6歩しか歩いていないのに息切れを起こしていた。

 

「のどかっち! 無茶はダメだよ!!」

 

ひなたものどかの元へと駆け寄る。エレメントさんも気がかりだが、友達が辛そうにしているのはもっと見たくなかった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・だって、早くしないと、雨さんが・・・」

 

意を決したちゆとひなたはお互いに顔を見やる。のどかがこんな状態なら取るべき行動は一つだけだ。

 

「ここは私たちで行きましょう!!」

 

「うん!! ラビリン、のどかっちをお願い!」

 

「わかったラビ!!」

 

二人はラビリンにのどかを任せて、メガビョーゲンの元へ。

 

「あ・・・ま、待って・・・」

 

のどかはかすれた声を出しながら、メガビョーゲンへと向かう二人に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メガ、ビョーゲン!!」

 

グアイワルの生み出したメガビョーゲンは飛び上がると、赤く小さな病気を撒き散らし、周囲の木を病気へと蝕ませていく。

 

道男はカメラを手に持って、この町を騒がせている怪物に近づき、周囲を見渡す。

 

「花寺さんは?」

 

のどかのことを探しているようだが、そこにいるのは怪物と筋肉質の明らかに人間ではない肌をしている男だけ。

 

「あの怪物と花寺さんは関係なかったのか・・・」

 

そもそも、彼女は自分の記事を追い求める姿勢をほめてくれたのだ。そんな優しい少女が怪物を生み出すなんて最初から考えもしていない。

 

その木の陰からドクルンがじっと見つめていた。

 

「あーあ、随分と頭の悪そうなメガビョーゲンねぇ・・・」

 

「あまりにも特徴ありすぎだブル」

 

ドクルンとブルガルが毒づきながらも、様子を見守る。

 

「いけ!メガビョーゲン!!」

 

グアイワルは周囲を病気で蝕むように指示する。

 

「待ってください!なぜこのようなこと!? 独占取材を!!」

 

道男はそんな怪物に物怖じすることなく、近づいていく。

 

「取材? 仕方あるまい・・・。人間ごときの取材など極めて不本意ではあるが、これもビョーゲンズの目的を知らしめるため・・・」

 

グアイワルは嫌そうにしながら、取材に応えようとする。

 

「お名前は?」

 

「我が名はグアイワ、ル・・・?」

 

答えようとして言葉を詰まらせるグアイワル。それもそのはず、道男が取材しようとしている相手は・・・。

 

「一言で結構です! 今の気持ちを!!」

 

「メ、メガ? ビ、ビョー・・・?」

 

メガビョーゲンであった。噂の怪物はあろうことか、答えようとしており・・・。

 

「答えようとしてるんじゃなーーーーい!!!!!!」

 

無視された怒りも相まって、メガビョーゲンに怒鳴る。

 

その様子を影から見ていたドクルンは・・・。

 

「プッ、フフフ・・・アッハハハハハハハ!!!! グアイワルったら、自分が取材されてると思ってたなんて・・・アッハハハハハ!!!」

 

「傑作だブル・・・クックック!!」

 

グアイワルのあまりにも恥ずかしい所業に腹を抱えて大笑いしていた。

 

「蹴散らせ!!!」

 

「メ、メガ!? メガー!!!」

 

「うわぁぁぁ!!」

 

グアイワルにドヤされて、慌てたように思いっきり上に飛び上がるメガビョーゲン。道男はそれに吹き飛ばされ、カメラとメガネを落としてしまった。

 

吹き飛ばされたカメラはドクルンの足元へと転がる。

 

「ふむ・・・・・・」

 

ドクルンはカメラを拾い上げると、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「これはこれで好都合ねぇ。ちょっといただいていくわ」

 

ドクルンはそのままその場を立ち去った。

 

「メ、メガネが!? メガネはどこです!? メガネ・・・メガネ!」

 

カメラを持って行かれたとも知らない道男は、落としたメガネを探して地面を探っていた。

 

「いた! メガビョーゲンだ!!」

 

「グアイワルもいるペエ!!」

 

そこへちゆとひなた、ペギタンとニャトランが到着。メガビョーゲンの姿を捉えると二人は顔をあわせる。

 

「ひなた!!」

 

「うん!!」

 

「「スタート!!」」

 

「「プリキュア、オペレーション!!」」

 

「エレメントレベル、上昇ペエ!!」

「エレメントレベル、上昇ニャ!!」

 

ペギタンとニャトランがステッキに変わると、ちゆは水の模様が描かれたボトル、ひなたは菱形のボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。そして、肉球にタッチすると、ちゆには水、ひなたには星のような光線が現れ、白衣が現れ、水色、黄色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

「「交わる二つの流れ!」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

 

「ペエ!」

 

ちゆは水のプリキュア、キュアフォンテーヌに変身。

 

「「溶け合う二つの光!」」

 

「キュアスパークル!」

 

「ニャ!」

 

ひなたは光のプリキュア、キュアスパークルに変身した。

 

「「はあぁぁぁぁぁ!!」」

 

二人はメガビョーゲンを止めるべく、プリキュアに変身する。のどかの分まで頑張るために・・・。

 

一方、ドクルンは先ほど持っていったカメラの中身を近くにあった、静かな森林公園のベンチで見ていた。

 

写っていたのは、先ほどのちゆと呼ばれた少女が練習する姿・・・ハードルを跳ぶ生徒・・・砲丸投げをする生徒・・・雨上がりの蜘蛛の巣・・・栗色の少女のハプニング・・・。

 

ポチポチとボタンを押して中身を見てみるが、ドクルンの心に刺さるものは何もなかった。

 

「ふむ・・・あまり面白い写真は撮れてないわねぇ・・・」

 

ドクルンは期待していた分、当てが外れたというつまらなそうな表情でいる。

 

「人間は何でこんなものが撮りたいのか理解できないブル・・・」

 

ブルガルもドクルンの言葉に続くように述べる。

 

ドクルンは粗方見た後、興味を失くしたのかカメラをベンチへと放り出してため息をつく。

 

まあ、プリキュアの弱点を探せという命令はされてないし、別に困ったものでもない。ただ、少しでも弱みを握れるようなものがあればよかったが、大したものも見つからなかった。

 

「・・・まあ、いいでしょう」

 

ドクルンはベンチから立ち上がってカメラへと向き直る。

 

「グアイワルだけに任せるのも可哀想ですし、いつものいきますかねぇ・・・」

 

ドクルンは不敵な笑みを浮かべると、中指と親指を合わせると、パッチンと音を鳴らす。

 

「進化してください、ナノビョーゲン」

 

「ナノデス~♪」

 

ドクルンの生み出したナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、ベンチに置いてあるカメラの中へと入っていく。カメラが徐々に病気へと蝕まれていく。

 

「キラキラキラぁ・・・!?」

 

カメラの中のエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!!」

 

フィルムカメラに手足、不健康な顔が生えたような人型のメガビョーゲンが誕生した。

 

「メガー!!!」

 

メガビョーゲンはレンズから光を照射すると、その照らされた草木は病気へと侵されていく。

 

「メガー!!!」

 

ベンチ、周囲の木や雨粒が病気へと侵される。

 

「人間の手で作られたものの割には、活きのいいメガビョーゲンが誕生したわねぇ」

 

「きっとあのカメラを持っている人間が生き生きしていたからだブル」

 

メガビョーゲンは地面や蜘蛛の巣のある場所にも照射し、病気へと蝕ませる。

 

「いいですよ、メガビョーゲン、その調子でどんどん蝕んでください」

 

「メガビョーゲン!!」

 

本当に生き生きとしているメガビョーゲンだ。あんな脳みそが筋肉のバカが作ったやつよりも余程仕事をしてくれる。人間のような情には全く流されていない、優秀なメガビョーゲンだ。

 

ドクルンは不覚を取ったが、転んでもただでは起きないような感じで笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

辛い・・・苦しい・・・でも、メガビョーゲンを止めにいかないと・・・!!

 

のどかは息を切らせながら、ラテを抱えたまま、二人の元へと向かおうとしていた。放課後の原因不明な体調不良を起こしてから、のどかはまだ回復していない。足取りはいつもの走りよりも重くなっており、表情にかなりの汗を滲ませている。

 

でも、のどかは足を止められないと必死に体に鞭を打つ。

 

「のどか! 無茶はダメラビ!!」

 

ラビリンがメガビョーゲンの元に向かおうとしているのどかを止めようとしている。本来ならまだ安静にしていないといけないのだが、苦しんでいるのを放っておけないとラビリンの制止も聞かずに外へと飛び出したのだ。

 

本当は自分の方が苦しいはずなのに・・・!

 

「はぁ・・・はぁ・・・私が、私が行かないと・・・」

 

のどかは自分に言い聞かせるように呟きながら、駈け出す足を止めない。

 

「のどかぁ!!」

 

ラビリンは叫ぶも、それでものどかは走っていく。しかし、疲れも相まって段々と足がおぼつかなくなっていき・・・。

 

「!? あぁ!!」

 

のどかは自分の足に躓いて、転倒してしまう。

 

「のどか!!」

 

「う・・・うぅ・・・」

 

ラビリンは痛みに呻くのどかに近寄る。

 

さらに・・・・・・!

 

「クチュン!!」

 

「ああ!?」

 

本日2回目のくしゃみ。先ほどよりもぐったりし始めたラテ。

 

「別の場所にも、メガビョーゲンが・・・」

 

ラビリンは聴診器を取り出してラテに当てる。

 

(あっちでカメラさんが泣いてるラテ・・・)

 

「カメラ・・・?」

 

「もしかして、増子くんの・・・?」

 

のどかはそれを聞くと再び立ち上がろうとするが、体はまだふらついていて・・・。

 

「うぁ!」

 

再び地面へと倒れてしまう。

 

「家で大人しくしてないとダメラビ!! 戦えるかもわからないのに!!」

 

ラビリンは、本当は戦わないといけない、そんなことはわかってる。でも、相手よりも自分の体調を気にしないなんて無理をしているにもほどがある。たとえのどかがプリキュアになったとしても、体調不良が尾を引いて危険な目にあうかもしれない。

 

つまりは、今ののどかを戦わせたくなかったのだ・・・。

 

メガビョーゲンがもう一体現れたことはラビリンが、飛んで知らせればいいだけの話だ。

 

「・・・・・・嫌」

 

「のどか!!」

 

「嫌だ!!」

 

しかし、のどかは頑なにそれを認めようとしなかった・・・。

 

「だって・・・だって・・・ラテも、エレメントさんも、雨さんも・・・みんな」

 

のどかは右手を握りこぶしを作りながら、体を震わせる。

 

「みんな・・・みんな・・・苦しんでるのに・・・!!」

 

地面に突っ伏したまま、涙を流すのどか。ラビリンは一人メガビョーゲンに立ち向かったときのことを思い出していた。

 

メガビョーゲンに一人無謀にも立ち向かい、ボロボロにされ、何もできない自分・・・。

 

『だからって放っとけないラビ! 地球が、こんなに苦しんでるのに・・・!!』

 

ラビリンは今ののどかを昔の自分と重ねていた。あの時ものどかがいなかったら、あそこは間違いなくビョーゲンズに侵されていた。のどかがいたから、地球を癒せたのだ。

 

「何もできないなんて・・・そんなの嫌だよぉ・・・!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

ラビリンは体を震わせて嗚咽するのどかのそばに歩み寄る。

 

「のどか・・・」

 

「ひっく・・・ぐすっ・・・」

 

ラビリンはのどかへと頭を下げる。

 

「のどか・・・ごめんなさい、ラビ・・・」

 

「ぐすっ・・・え・・・?」

 

「ラビリンは、のどかが助けたいって気持ちはわかってたラビ・・・でも、今ののどかがメガビョーゲンに立ち向かっても、辛い思いをするだけラビ・・・。ラビリンはのどかがこれ以上辛そうにしているのは見たくなかったラビ・・・」

 

ラビリンが気持ちを吐露する。のどかはここ最近不調が続き、倒れることもあれば、無理していこうとすると表情が辛そうなほどだった。ラビリンは相手のために自分が苦しい思いをするのどかをこれ以上見たくなかった。本当は止めたかったのだ。

 

「ラビリン・・・」

 

のどかはこんなことを思っていた。ラビリンは優しくて、お手当てに一生懸命だと。

 

最初に出会った頃に、のどかにお手当てをさせようと、戦わせようと思わなかったのは、彼女を危険な目に会わせたくなかったからだ。

 

そして今も、ラビリンはのどかのために止めようとしている。それだけパートナーが大事なのだ。

 

のどかはラビリンに微笑みかける。

 

「ありがとう、ラビリン・・・でも、ごめん・・・私は行くよ」

 

「のどか・・・?」

 

のどかは地面に手をつけて、少しずつ立ち上がろうとする。自分の体がガクガクと震えようとも・・・。

 

「例え自分が苦しくても・・・辛くても・・・私は、戦いたい・・・他に苦しんでいる人がいれば、手を差し伸べてあげたい・・・辛い人がいるなら、肩を貸してあげたい・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「私は、みんなの力になりたい・・・だって、見捨てることなんてできないから・・・!」

 

のどかの言葉を聞いて、ラビリンは意を決し、きょろきょろしながら何かを探す。そして、何かを見つけるとそちらへと飛んでいく。

 

「うぅ・・・くぅ・・・!!」

 

のどかはよろつきながらもなんとか立ち上がるも、正直もう立っているのがやっとな感じだ。

 

「のどか! これに乗るラビ!!」

 

そういうラビリンが持ってきたのは、リヤカーだった。近くの倉庫に置いてあるのを持ってきたのだ。

 

少しでものどかの手助けになりたいと思い、あまりない力を振り絞って持ってきたのだ。

 

「・・・うん!」

 

のどかはリヤカーへと乗り込み、ラビリンが懸命に力を入れながらリヤカーを引っ張る。

 

「雨のほうはちゆたちが言ってるラビ! 私たちはカメラの方へ向かうラビ!!」

 

「うん! 行こう!」

 

のどかたちは別の場所で発生したメガビョーゲンを止めるため、林の中へと入っていく。ラビリンは二人を信じているから、任せて別のメガビョーゲンを止めようとしているのだ。

 

「ラテ、すぐに元気にしてあげるからね・・・」

 

ぐったりしているラテを優しく撫でるのどか。

 

ーーーー絶対に治してあげるから・・・!!

 

そんな二人の様子を一本の木の陰から、中折れ帽子を被った少女が背中越しに聞いていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メガー!!!」

 

一方、森林公園では大方、病気でほとんどの部分が蝕まれつつあった。

 

「ここはそろそろいいかしらねぇ・・・」

 

「別の場所に行くブル」

 

ドクルンは場所を移動しようと、メガビョーゲンに指示を出そうとする。

 

「いたー!!!」

 

そこへ少女の声が聞こえてくる。マゼンダ色の髪の少女ーーーーのどかとラビリンだ。

 

「おや、来たみたいねぇ・・・」

 

声がした方へ振り向いて、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ドクルンラビ!!」

 

「ラビリン、行こう!!」

 

のどかの言葉にラビリンは頷く。

 

「スタート!!」

 

「プリキュア、オペレーション!!」

 

「エレメントレベル、上昇ラビ!!」

 

ラビリンがステッキに変わると、のどかは花型のボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。そして、肉球にタッチすると、花びらが舞うと集まって、白衣が現れ、ピンク色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

「「重なる二つの花!」」

 

「キュアグレース!」

 

「ラビ!」

 

花のプリキュア、キュアグレースに変身した。

 

「ほう・・・一人でやるつもりですかぁ?」

 

ドクルンはますます面白そうという顔をする。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「メガ!?」

 

グレースはメガビョーゲンの腹部へと飛び蹴りを喰らわせる。メガビョーゲンは若干、よろけてバランスを崩す。

 

「「キュアスキャン!!」」

 

ラビリンの目が光り、メガビョーゲンの中にいる、苦しんでいる様子のエレメントさんを見つける。

 

「光のエレメントさんラビ!!」

 

そのエレメントさんはどうやら右肩にいる模様。

 

「やあぁぁぁ!!」

 

「メガ、ビョーゲン!?」

 

倒れそうになっているメガビョーゲンの右足を攻撃し、うつ伏せに倒す。

 

(体が軽い・・・これなら行ける・・・一気に浄化を・・・!)

 

グレースは変身前の不調を感じなくなっていた。体は先ほどよりも軽いし、胸も苦しくない・・・だるさも感じない・・・これならメガビョーゲンを浄化できる、と。

 

しかし、それはまだ早計だった・・・。必殺技の準備に入ろうとしたその時・・・!

 

「メガ!!」

 

メガビョーゲンは倒れたまま、レンズの上についている2本のライトを点灯させる。それは周りが明るいのに暗くなるのではないかと思うくらい眩しかった。

 

「きゃあ! な、何!?」

 

「まぶしいラビ!!」

 

突然のまぶしさに怯んでしまったグレース。メガビョーゲンはその隙に立ち上がると、2本のライトを消し、左腕のリールからフィルムを伸ばす。

 

「メガー!!」

 

「あ・・・・・・!」

 

そして、そのフィルムをグレースに向かって投げつける。両目を擦っていて反応が遅れたグレースはフィルムに体を巻き取られてしまう。

 

「ビョーゲン!!」

 

「きゃあぁぁぁぁ!! あう!!」

 

メガビョーゲンはそのままグレースを放り投げ、フィルムを切り離した。その勢いで飛ばされたグレースは木の幹へと背中を打ち付け、地面へと落ちる。

 

「くぅ・・・うぅ・・・!!」

 

「グレース、大丈夫ラビ!?」

 

「と、取れない・・・!!」

 

グレースは立ち上がろうとするが、巻きついたフィルムは全く解けず、ギチギチと音を立てるだけ・・・。

 

更に状況が悪化する事態が・・・・・・。

 

ドクン!!!!

 

「あーーーー」

 

グレースの心臓の鼓動が再び早くなり、膝をついてしまう。プリキュアになってから軽くなったはずの症状がまた再発したのだ。

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン

 

「うぅ・・・あぁ・・・」

 

体に力が入らず、足が動かない。しかも、視界までぼやけてきた。

 

「やっぱり一人でのお手当ては無理がありましたねぇ・・・それに体調が悪そうですがぁ?」

 

「一人ででしゃばって、傷つくのはお前だけだブル」

 

ドクルンの嘲笑と並んで、メガビョーゲンがグレースに迫っていく。

 

「グレース! ここは逃げたほうがいいラビ!!」

 

「でも、そんなことしたらここ一帯が病気に・・・!」

 

「一回体制を立て直すラビ! フォンテーヌとスパークルを呼んで、一緒に浄化したほうがいいラビ!!」

 

グレースを叱咤するラビリン。メガビョーゲンに油断していたとはいえ、フィルムで体を拘束され、さらにはプリキュアになったのに再度悪化した症状、このような状態で戦いを続けてもやられるだけだ。だから、ラビリンは一人でやるよりも、三人でやったほうがいいと判断したのだ。

 

しかし、グレースは・・・・・・。

 

「嫌だ・・・嫌だよ・・・」

 

「グレース!?」

 

「だって、ここを離れている間に取り返しのつかないことになっちゃうかもしれない・・・私は、この公園を守りたい・・・だから、私は、絶対に離れない・・・!!」

 

そこへメガビョーゲンの手が迫り、グレースを掴み上げる。

 

「あ、きゃあぁぁぁ!!」

 

「グレース!!」

 

「何を考えているのか知りませんが、好きにはさせませんよ・・・メガビョーゲン、止めを」

 

「メガビョーゲン!!」

 

ドクルンが冷めた口調でメガビョーゲンに命令すると、メガビョーゲンは両手で掴みグレースを絞め上げる。

 

「うぅ・・・くぅ・・・うあぁ、あぁ・・・!!」

 

「グレース! グレース!!」

 

ドクンドクンドクンドクンドクンドクン!!

 

「はぁ・・・ぁぁ・・・ぁ・・・」

 

苦しみの声を上げるグレース。しかも、心臓の鼓動がさらに早くなって、視界が真っ黒になっていく。それは痛み故か、それとも体調の悪化故か・・・。

 

(守らなきゃ・・・まも、らなきゃ・・・)

 

グレースのそんな思いとは裏腹に、視界は段々と真っ黒になっていく・・・。

 

その様子を公園の木の陰から、中折れ帽子を被った少女ーーーークルシーナが背中越しに伺っていた。

 

「・・・・・・ふん、バッカみたい」

 

グレースの様子を見て顔を顰める。表情は苦しそうで目も虚ろになってきている。クルシーナがまさに好む苦痛の表情のはず。しかし、それがドクルンと、あいつが誕生させたメガビョーゲンのおかげだという事実にむしゃくしゃし、素直に味わえずにいる。

 

あいつ、キュアグレースは私の獲物なのだ。それを、あんなヘラヘラしたようなやつに奪われるのは気に入らない。自分以外の相手から与えられる苦しみの快楽など、私には欲しくない。

 

「あいつ、なんであんなに必死になれるウツ?」

 

「知らない。つーか、そんなこと考えたくないし」

 

ウツバットの疑問をあっさりと一蹴するクルシーナ。今日はいつにも増して不機嫌だ。

 

「ぁぁ・・・ぁ・・・」

 

一方、グレースは表情にすでに力がなく、すでに意識が落ちようとしていた。

 

「「はあぁぁぁぁぁ!!!」」

 

と、そこへ二人の少女の声が聞こえてきたかと思うと、水色のエネルギーと黄色のエネルギーがメガビョーゲンの顔に直撃した。

 

「メガァ・・・!?」

 

メガビョーゲンは思わず両手からグレースを離し、地面へと落ちる。

 

「うぅ・・・あ・・・」

 

絞め上げから解放されたグレースが戻っていく視界で、エネルギーが飛んできた方向を見ると、安堵の表情を見せる。

 

「スパー・・・クル・・・フォンテー・・・ヌ」

 

そこには、キュアフォンテーヌとキュアスパークルの姿があったのであった。

 




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