ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作にないオリジナル話になります。
閑休話題のような感じなので、今回は短めです!


第15話「閑話」

 

花寺のどかは病院時代、車椅子がないと移動することができなかった。

 

今日も外の庭が見たいと看護師の女性にお願いして、車椅子に乗ってお庭へとやってきていた。

 

「今日もいい天気ね」

 

「・・・うん」

 

「きっと治るわよ、あなたの体」

 

「・・・そうかなぁ・・・?」

 

自分の体は、本当に動けるようになるのだろうか? のどかは不安を抱えていて、元気に返事が出来る気がしなかった。

 

「・・・?」

 

お庭の花壇に植えられている花のところに近づいていくと、一人の少女がジョウロを使って花に水をあげているのを見つけた。

 

しかもその少女は、自分と同じ患者服を着ていた。どうやら私と同じ、この病院の患者のようだった。

 

「あ、のどかちゃん・・・!」

 

のどかは車椅子の車輪を自分で動かして彼女に近づく。

 

少女は背後に気配を感じたかのように、後ろへと振り向く。

 

見つめ合うのどかと、ジョウロを持った少女。

 

「えっと・・・」

 

「・・・花を見にきたの?」

 

正直、両親以外の人とあまり話したことがない彼女は、どうやって話していいのかわからなかった。のどかよりも先に少女が口を開く。

 

「え・・・?」

 

「・・・花を見にきたの?」

 

少女は首を傾けながら再度質問をし、のどかは顔を俯かせながら頷いた。

 

少女はその反応に笑みを浮かべると、のどかに近づいていき、彼女の手を取る。

 

「おいで」

 

「あ、ま、待って・・・」

 

のどかは片方の手で車輪を動かしながら、彼女と一緒に花壇の真ん中へと歩く。

 

植えられているのは、赤とピンク色のチューリップ・・・。二つの色の花が、交互に並べられていて、まるで赤とピンクのカーテンを作り出しているよう。

 

そして、もう一つの花壇には黄色のマリーゴールドが植えられていた。

 

「・・・きれい」

 

「ねえ? 生きてるって感じでしょ」

 

「え・・・?」

 

少女は近くの水道からジョウロに水を入れて、花壇の花へとジョウロから水を注ぐ。

 

「チューリップとマリーゴールドの花言葉って知ってる?」

 

「・・・ううん」

 

のどかは首を横に振る。

 

「まずチューリップは思いやり、マリーゴールドは健康、よ。この花たちはね、元々お医者さんたちが植えてくれたの。この病院が思いやりを持って、みんなを健康にしてくれたらいいっていう願いを込めてね」

 

「・・・・・・・・・」

 

のどかが無言で顔を俯かせる。

 

「どうしたの?」

 

少女はのどかが喋らなくなったのを見かねて問いかける。

 

「・・・私、動けるようになるのかなって」

 

「治るかどうかが心配なの?」

 

「うん。私、昔はお父さんやお母さんと一緒に外を出歩いたんだ。でも、自分が急に体が重くなって、自由に体が動かせなくなって、この病院に何ヶ月もいるから、もう治らないのかなって・・・」

 

のどかは瞳を潤ませながら話す。昔はあんなに動ける体だったはずなのに、どうして私は病院のベッドにいるんだろう。しかも、何日も。もしかしたら、もう一生、この病院から出られないのかもしれない・・・。のどかはそのぐらい不安だった。

 

少女はそんな彼女の両手を手に取る。

 

「でも、あなたはいきたいって思ってるんでしょ?」

 

「え・・・?」

 

のどかが顔を上げると、少女は微笑んでいた。

 

「みんなともっとあそびたいんだよね? 自由に外へと出たいんだよね?」

 

「・・・うん」

 

「だったら、治るってことをあきらめちゃダメ。治るってことを信じれば、きっとあなたの病気は治るよ。この一面の元気な花みたいにね」

 

少女はのどかを励まそうとしているが、彼女の不安はまだ晴れなかった。

 

「そうかな・・・?」

 

「うん。それでも不安なら、怖いんだったらーーーー」

 

「あ・・・」

 

少女はのどかを抱きしめる。

 

「ーーーー私といっしょになおそう?」

 

少女はのどかから体を離して、彼女の顔を見つめる。

 

「わたしのゆうきをあげる、わたしのきぼうをあげる。だから、この病院でいっしょにささえあって、いっしょにたたかおう。なおることを信じようよ。だって、あなたはひとりなんかじゃないんだから」

 

のどかは少女の言葉に不安な心を洗われたような気がした。体が動かなくなり、いつしか死んでしまうかもしれない恐怖で不安だった。でも、彼女は希望を信じていて、私に歩み寄ろうとしている。一緒に戦おうとしてくれている。

 

不安はまだ消えたわけじゃない。でも、のどかの心から不安は和らいでいた。

 

「・・・うん、ありがとう。ふふ」

 

のどかはこの日、病院からやってきて初めて、満面の笑顔を見せた。

 

少女は彼女の太陽のような笑顔に、少し頬を赤らませた。

 

「やっと笑ってくれたね。ステキな笑顔」

 

少女ものどかの笑顔に自然と笑みになっていった。この子って、こんな笑顔を見せられるんだ。

 

「あなた、名前なんていうの?」

 

「私、のどか、花寺のどか」

 

「私はねーーーー」

 

ーーーーちゃん!!! どこに行ったのー!!??

 

少女はのどかに名前を名乗ろうとしたが、女性の叫ぶ声が聞こえてきた。どうやら、この少女を探しているらしい。

 

「あ・・・そうだ。私、こっそりとびょうしつを抜け出して来たんだった・・・」

 

「ええ!?」

 

のどかは驚く。花に水をあげているから外出許可をもらっているのかと思っていた。まさか、勝手に外へと抜け出してきていたとは・・・・・・。

 

「もう戻らなきゃ。また一緒に話そう、この花のところにいるからね。ばいばい」

 

「あ・・・」

 

少女はそう言って病棟の方へと走って戻っていく。のどかは名前を聞けなかったなと思いながらも、この花壇に来ればまた彼女に会える・・・そう思った。

 

そして、彼女の言った希望を信じて、自分の体を治そうと心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「のどか! のどかぁ!!!」

 

ラビリンは意識を失っているのどかに必死に呼びかける。彼女のそんな表情はまるで悪夢を見ているようだった。

 

「のどか!! 目を覚ますラビ!!」

 

「う・・・うーん・・・」

 

のどかは瞑っている目をピクピクとさせると、瞼を少しずつ開く。その視界には心配そうな顔をするパートナーの姿があった。

 

「気がついたラビ!?」

 

目がチカチカすると視界がクリアになっていく。ピントがようやくあったとき、自分は寝かされていたということに気づいた。

 

「・・・うん、大丈夫」

 

「よかったラビ・・・」

 

ラビリンが抱きついてくると、のどかも彼女を抱き返す。

 

「あ・・・・・・」

 

のどかは体を起こすと、濡れたタオルが落ちてきた。どうやらラビリンが意識を失っていた私を看病してくれていたらしい。

 

「のどか、もう苦しくないラビ?」

 

ラビリンに言われ、のどかは自分の胸に手を当てる。

 

苦しさは、もう感じない。動悸もする様子はない。まるで、痛みや苦しみがまるごと取り除かれたかのような感覚。

 

あの時、クルシーナに中の心臓を掴まれたのか、どうかはわからないけど、死ぬかもしれない苦しさと痛みが襲った。のどかはその凄まじさのあまり意識を失ってしまったが、あの夢を見ているときはなんだか楽になったような気がしたのだ。

 

一体、クルシーナは私に何をしたのだろうか・・・?

 

「のどか、どうしたラビ?」

 

「あ、ううん、なんでもないよ。もう苦しくない、大丈夫だよ」

 

多少の不安は残りつつも、ラビリンに笑みを見せるのどか。まずは、パートナーと仲間の無事を確認しないと・・・。

 

「あ、ちゆちゃんとひなたちゃんは!?」

 

「あそこで眠ってるラビ・・・」

 

ラビリンが指した方向を見ると、ちゆとひなたがボロボロになって木に横たわっているのが見えた。その側にはペギタンとニャトランが付き添っていた。

 

ニャトランがタオルを濡らしてひなたの額に置こうとしたとき、ひなたの顔が顰め始める。

 

「うぅ・・・うーん・・・」

 

「! ひなたぁ!!」

 

「ん・・・あれ? あたし、何してたんだっけ?」

 

ひなたの目が開き、ピントが合ってくるとニャトランの姿がはっきりと映った。

 

「ひなた! よかった!! もう心配させないでくれよ!!」

 

「うぇぇ! ニャ、ニャトラン!? ど、どうして・・・あ・・・」

 

ニャトランに抱きつかれ、状況が飲み込めないひなただったが、真っ黒な地面が視界に映り、ようやく倒れる前の記憶が蘇る。

 

ーーーークルシーナのイバラビームに吹き飛ばされ、背後から現れた彼女に蹴り飛ばされ、二人で放った渾身の浄化技も吸収され、返された・・・・・・。

 

そうか、あたしたち・・・負けちゃったんだ・・・・・・。

 

ひなたは顔を俯かせる。二人で戦ったけど勝てなかった・・・圧倒的な力でねじ伏せられた・・・。

 

「ひなたちゃん!!」

 

そんな落ち込む彼女の元にのどかが駆け寄る。

 

「大丈夫!? 痛くない!?」

 

「あ、のどかっち・・・く、苦しいよ・・・」

 

「あ、ごめんね・・・」

 

のどかがひなたに抱きつくも、ひなたの言葉に体を離す。

 

「あたしは大丈夫・・・でも・・・」

 

ひなたはそう言って、いまだに眠っているちゆの方を見る。

 

「ちゆがまだ目を覚まさないんだニャ・・・」

 

珍しく落ち込んだような口調で言うニャトラン。その横でペギタンは濡れタオルをちゆの額へと置いていた。

 

「ちゆ・・・・・・」

 

ペギタンが心配そうに彼女を見つめている。

 

「ちゆちー、クルシーナと戦ってたとき、あいつに口を塞がれてた。そのときに何かされたんだと思う・・・・・・」

 

ひなたが不安そうな顔で言う。ちゆはそのせいなのか、少し苦しそうな表情をしているようにも見えていて、汗も少し滲ませている。

 

ひなたは再び顔を俯かせる。クルシーナの言ったあの言葉が胸に刺さっていたのだ。

 

ーーーーお前らのお手当てなんか口先だけなんだよ。

 

プリキュアに対する実力の見下し、そしてビョーゲンズと戦うことへの否定・・・実力が伴わず、全てを潰され、ぐうの音も出なかった・・・。

 

「・・・ねえ、のどかっち」

 

「どうしたの?」

 

「あたしたちのお手当てって口先だけなのかな・・・?」

 

ひなたは泣きそうな声で話している。のどかは黙って聞こうとしていた。

 

「プリキュアになって、嬉しいと思って・・・一緒に地球をお手当てして・・・エレメントさんが元気になって、よかったって思ってた・・・」

 

ひなたは俯いた顔を上げて、潤ませた瞳をのどかに向ける。

 

「でも、あいつに何にも通用しなくて・・・! 必死にお手当てしようとしても、あんなふうに受け流されて・・・! 強力なはずの力だって、あいつに全て潰されて・・・! あたしたち、のどかっちが傷つけられたのに、何もできなかった・・・!!」

 

「ひなたちゃん・・・」

 

ひなたは必死に声を絞り出していた。のどかっちやちゆちーと一緒にお手当てができるようになって、辛いことはあったけど、今ではよかったと思っていた。

 

しかし、のどかがクルシーナに手を出されたとき、たった一人のビョーゲンズに完膚なきまでに叩きのめされ、メガビョーゲンを浄化した必殺技すらも通用しなかった。

 

これからもあんな強力なあいつの相手をしなくてはいけないのか・・・。ひなたの心はすでにボロボロだったのだ。

 

「あたしたち、プリキュアをやめるべきなのかなって・・・あんなのがもう一度相手になったら、勝てる気がしない・・・怖い・・・地球をお手当てできる気がしないよ・・・」

 

ひなたは自身の身体を抱えて震えている。

 

それは紛れもない恐怖・・・。暖かいはずの春は、寒かった・・・。

 

のどかは身体を震わせているひなたの肩を抱く。

 

「ひなたちゃん・・・私も本当は、怖いよ・・・」

 

「え・・・?」

 

「クルシーナに病気に侵されたとき、私は死ぬんだって思った・・・意識がなくなっていく中で力が抜けていくのが怖いって思った・・・でも、あのときはラビリンが一緒にいるって、そばにいるってわかったから、頑張れたんだよ。ひなたちゃん、私たちは一人で戦ってるんじゃないよ。みんながいるから、一緒にお手当てできる友達がいるから、私はプリキュアをやれるんだよ」

 

のどかはひなたのことを抱きしめる。

 

「一緒なら大丈夫だよ。お手当ても地球を癒すことも。私たちは病気に立ち向かう怖さもわかってる。それでも怖いなら、私が手を引いてあげる。私たちが治すことを諦めたら、そこで終わりだから」

 

「のどかっち・・・・・・」

 

ひなたはのどかの言葉が心に刺さった。こんなに勇気があって、温かい友達は今までいただろうか・・・?

 

「のどかの、言うとおりよ・・・」

 

「!! ちゆ!!」

 

「ちゆちゃん!!」

 

聞こえた方向へ向くと、ちゆが目を覚まして体を起こそうとしていた。

 

「ちゆちー! 大丈夫!?」

 

「まだ身体がふらつくけれど、大丈夫よ・・・」

 

ちゆはまだ逆らおうとする体を動かしながら立ち上がり、ひなたの近くに寄る。

 

「私だって、戦うのは怖くないわけじゃないわ・・・でも、戦わなきゃ、私たちの大切なものが、地球が、みんな病気に侵されちゃう・・・。守りたいものを守れないもの・・・そんなのは嫌。私は友達のためだったら、何度だって立ち上がるわ!」

 

ちゆはひなたへと向き直る。

 

「ひなた、一緒に戦いましょう。もし、怖いのなら、私の勇気も分けてあげる」

 

ひなたはのどかとちゆを見つめる。自分には友達がいる、共にプリキュアとして戦う友達がいる、心が折れかけたとき、支えてくれる友達がいる。

 

「のどかっち、ちゆちー、ありがとう・・・優しいね・・・」

 

ひなたは吹っ切れたのか、すくっと立ち上がって頬を叩く。

 

「よーし! これからもビョーキンズから地球を守るぞー!!」

 

ひなたが気合を入れるも、このときニャトランがずっこけそうになった。

 

「ひなたちゃん・・・」

 

「『ビョーゲンズ』よ・・・」

 

「ああ!また間違えたー!!」

 

そのあとは、道男にカメラを届けて感謝をされたり、のどかがメガビョーゲンを呼び寄せてはいないという疑いが晴れたり、3人は仲良しであることを言われたりと、いつもの平和な光景が戻ってくるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲンキングダムーーーーそこでは、クルシーナ、ドクルン、イタイノンのビョーゲン三人娘が、自分たちの父親、キングビョーゲンに呼び出しを受けていた。

 

「・・・経過は順調のようだな」

 

「もちろんよ、お父様。しかも、苦しみを与えている相手はプリキュアだしね」

 

クルシーナは黒いバラを取り出しながら、キングビョーゲンに嬉々して報告する。

 

「こちらもある作戦を施行中ですよ、お父さん。ちょっとこっちの二人に協力してもらって、実行しようかと思っています」

 

ドクルンは飄々とした軽い口調で話す。

 

「パパ、キュアスパークルは必ず潰すの。そのためにあいつがどんな弱みを持っているか見ておきたいの・・・」

 

引きこもり体質の、イタイノンは珍しくキュアスパークル打倒のために恨みのオーラを滾らせていた。

 

「・・・お前たちへ密かにプリキュアの打倒を任せてはいるものの、地球を蝕むことも忘れないようにせぬとな」

 

「・・・わかってるわよ、そんなこと。あいつら、たまにわけわかんない力を発揮するから・・・」

 

「まあ、元は非力なただの小娘。プリキュアへの変身能力を奪ってしまえば、赤子の手を捻るのも同然でしょう」

 

「奇跡なんか二度も起こらないの。1人でいるところを襲えば、倒すのは簡単なの」

 

三人娘がそれぞれの言葉を紡ぐ。プリキュア3人とて所詮はただの人間の小娘たちの集まりなのだ。プリキュア1人1人は強くないし、更に変身させなければ容易いはず・・・。それはクルシーナがキュアグレースを侵したので実証済みだ。

 

たまによくわからない力を発揮することもあるが、あんなものはまぐれに過ぎない。奇跡は二度も起こらないはずだから、次に会ったときは3人を潰すのは簡単なはずだ。

 

「引き続き、お前たちのさらなる活発な活動、期待しているぞ・・・・・・」

 

「はいはい」

「はい」

「なの」

 

キングビョーゲンは三人娘に任を任せ、彼女らが返事をするとスッと消えていった。それから帰路に着こうとする三人娘。

 

「全く課題が山積みですね・・・お父さんのお守りに、地球を蝕むこと、私たちのアジトにいる娘たちの管理、そして、プリキュア・・・大変すぎて胃に穴が開きそうですよ・・・」

 

「その割には楽しそうな顔をしているの・・・」

 

「本当に悪趣味ね、あんた・・・」

 

ドクルンは愚痴をこぼしてるかと思いきや、ニヤリとしたような顔で言っている。クルシーナとイタイノンは呆れたような口調で言っている。

 

「私はそんなつもりはないんですがねぇ・・・」

 

「ニヤけた顔で言うなっつーの」

 

「言動と表情が一致してないウツ」

 

クルシーナが嫌そうに返す。付き合ってられない・・・。

 

「それにしても、今回のプリキュアは弱いわね。アタシが準備運動程度の力を出しても、呆気なく折れちゃうんだからさ。これだったら、あいつと戦ってたほうが幾分退屈が紛れてたわね」

 

「おや? プリキュアと戦ったのですか?」

 

ドクルンは意外そうな顔をしながら言う。

 

「イタイノンはボコボコにされてたネム」

 

「あれは単に舐めプしてただけなの。本気の私ならもっと強いの」

 

余計なことを言うカチューシャのネムレンに、イタイノンは顔をしかめながら言う。

 

「まあ、確かに今回は大したことはなさそうですが、でも油断は禁物ですよ? あのプリキュアみたいに、奇跡とやら起こしてくるかもしれませんからねぇ」

 

「その奇跡っていうのがよくわからないの。あいつらも同類の人間のくせに・・・」

 

ドクルンは過小評価しつつも警戒する。あれでも、メガビョーゲンを一体浄化できるぐらいの力はあるからだ。

 

「でも、クルシーナがプリキュアの一人を病気にしたのはいい成果ですねぇ。このまま残りの二人も病気にしてしまえば、地球を蝕むなど赤子の手を捻るのも同然です」

 

「ふん、ヒーリングアニマルのあいつらなんか、人間さえいなければ何もできないブル」

 

ドクルンがメガネを上げながら、クルシーナの戦果を評価。ブルガルはプリキュアについている3人のヒーリングアニマルを見下している。

 

「あんたが素直に褒めるなんて、ビョーゲンキングダムに雪が降りそうなんだけど」

 

「雪は降らないウツよ」

 

「それ、答えなくてもいい返しネム・・・」

 

ドクルンの言葉に気持ち悪さを感じるクルシーナ。褒められるのは悪い気はしないが、こいつに褒められるのは何か違和感がある・・・。

 

ウツバットも天然は天然で、ネムレンも呆れたようなツッコミを入れている。

 

「キュアスパークル・・・私が必ず激痛を味あわせてやるの・・・」

 

イタイノンが歪んだ決意を行う。それはまるで、彼女に執着をしているかのような・・・。

 

「まあ、何にせよ、よ・・・」

 

クルシーナは立ち止まって、二人へと振り向く。

 

「アタシらの目的は変わらない。地球を病気で蝕んで私たちのものにし、生き物たち、人間たちに苦しみを与える・・・ただそれだけよ。邪魔なプリキュアもいずれ潰してやるんだから、お父様のために」

 

彼女は不敵な笑みを浮かべると再び歩み始める。

 

「ふふふ・・・お父さんのために」

 

「キヒヒ・・・パパのために」

 

ドクルンとイタイノンも、クルシーナの言葉に不敵な笑みを浮かべ、歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲン三人娘が根城とする廃病院。その一室では、クルシーナが黒いバラを赤く染まった土を入れた植木鉢へと埋めていた。

 

「フフフ・・・・・・」

 

病気で赤く染まった湖の水を汲み上げたジョウロを手に取ると、埋めたところへと水をあげていく。

 

すると、地面の中からニョキニョキと黒い芽が不気味に生えてきた。

 

「・・・いい感じに成長しそうね」

 

不敵な笑みを浮かべながら、他の場所も見やる。

 

そこには植木鉢に植えられた植物や花々、しかし、その多くの花弁が、葉っぱが赤色に、黒色に染まっていた。

 

そう。ここは、クルシーナが管理する植物園だ。ほとんどが彼女の病気で染め上げられた植物や花たちばかりで、すべてはクルシーナのお世話によって不気味な成長を遂げていた。

 

そんな健康とはお世辞にも言えない植物たちに、クルシーナはジョウロの水をあげていく。自分の素敵な花壇を、赤く、美しく、染め上げていくために・・・。

 

そんな、クルシーナにはある一つの記憶が蘇っていた。

 

ーーーー花壇に囲まれたジョウロを持った私、そこに現れるのはマゼンダ色の髪をした少女。

 

「フフフ・・・早く大きくならないかしら・・・」

 

クルシーナはまるで年頃の少女のような笑みを浮かべながら、甲斐甲斐しく植物や花々を世話をする。

 

「あっ・・・!」

 

ある植物の方を見ると驚きの声を上げ、近づいていく。大きな花壇に植えられている一本の小さな木、そこにはドクロのような顔をした林檎のようなものが成っていた。

 

「こっちは大きくなってる・・・!」

 

クルシーナは子供のように嬉しそうな声を上げると、ハサミを取り出して芯から下を切り取って収穫する。

 

「フフフ・・・」

 

林檎のようなもののドクロのような模様を見つめる彼女。

 

「あの子に食べさせてあげたいなぁ・・・」

 

クルシーナは林檎を一口かじった後の、その少女が苦しむ姿を想像する。喉元を抑えてもがき苦しみ、足をばたつかせながら弱っていく姿、そして今にも消え入りそうな虚ろな表情・・・。

 

その瞬間、クルシーナの感情は昇天した・・・。

 

「ああ、最高・・・!!」

 

恍惚な表情を浮かべる彼女。そんなことができれば、私の快楽は満たされるし、お父様ももっと喜んでくれる。想像するだけで最高だった。

 

しばらくして、ハッとしたように表情を元に戻すとリンゴのようなものをもう二つほど収穫して、かごの中に入れる。

 

さらにもう一つのリンゴを手で枝を折らないように取ると、口に近づけてかじる。咀嚼するとシャクシャクとしっかりとできたリンゴの音がする。

 

「ん・・・おいしい・・・」

 

右手に手を当てて、頬を赤く染める。味は普通のリンゴと変わらないが、病気によって育ったリンゴは甘い蜜っていう感じ。

 

「他の作物の木も大きくなってきたし・・・」

 

クルシーナが見やる場所には、リンゴ以外にも多くの作物の木が成っている。しかし、その木の多くは幹が赤くなっていて、健康的とはとても言えない状態だ。葉っぱも黒く染まっている。

 

クルシーナはリンゴをかじりながら、取ったリンゴをどうしようかと考えたところ、いいことを思いついた。

 

「あの娘にも持って行ってやろうかしら・・・」

 

そう言うとリンゴを一個掴み上げ、右人差し指を棘のような鋭利なものに変えると、リンゴを8つに切り分ける。それをお皿に乗せると部屋の扉を開ける。

 

「フフフ・・・」

 

クルシーナは背後を振り向くと、不敵な笑みを浮かべ扉を閉める。

 

その時、黒いバラを埋めた地面から生えた芽が、異常な速さで数メートルまで成長を遂げ、蕾を作り出す。

 

その蕾には黒い何かが蠢き、何らかの形を作り出していくのであった・・・・・・。

 




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