ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
やりすぎ感もありつつも、投稿します。

だいぶストックも増えたので、今週から毎週月、金で投稿してみようと思ってます。
お楽しみに!


第17話「凍結」

春の陸上大会が行われる競技場、そこでは今日のために練習をしてきた陸上部の生徒たちがその成果を発揮していた。

 

すこやか中学校のライバル、すこやか西中学校の面々は砲丸投げを披露するもの、そしてハードル走を披露するものもいる。すこやか中学校も負けずにその成果を披露していた。

 

会場の席で他の陸上部のみんなもその競技も見守っている。

 

そんな中にいる、のどかたちはすこやか中学校の陸上部で、友達のちゆを応援するために座っていた。彼女を応援するための横断幕の準備も万端である。

 

「そろそろ、ちゆの出番ラビ!」

 

「おい!ペギタン!!」

 

「無理ペエ!心配で見てられないペエ・・・!!」

 

そののどかの側にはラビリン、ニャトラン、ペギタン、そしてラテの4人のヒーリングアニマルも来ている。そろそろ陸上部の走り高跳びの競技、ちゆの出番がくる時間だ。

 

ペギタンはニャトランに呼びかけるも、ペギタンは顔を伏せたままビクビクとしていて、会場の方を見ていなかった・・・。

 

ざわざわざわ・・・。

 

しかし、ここで会場のテントの方が慌ただしくなっているのが見えた。大会の主催者らしき人に、すこやか中学校の顧問らしき人が話し込んでいた。

 

会場には走り高跳びの準備はできているのだが、ちゆが出てくる気配がない・・・。

 

「? ちゆちー、出てこないよ・・・?」

 

「どうしちゃったんだろう・・・?」

 

のどかとひなたが心配するよそに、その声を聞いたペギタンはラテの上から会場を覗く。

 

「ちゆ・・・?」

 

ペギタンは彼女のことを心配していた。もしかして、やはりイップスとやらで出場することを棄権してしまったのか・・・?

 

でも、昨日の二人からはそんな感じのことはなかったはず・・・もしかして、会場に向かう途中に何かあったのではないか・・・?

 

「なんか、会場の様子がおかしいラビ・・・」

 

「ちゆが出てこないのと、何か関係してんのか・・・?」

 

「クゥ~ン」

 

ラビリンとニャトランは会場の異変に気付きつつも、ちゆのことを心配していた。ラテも不安を隠せない様子だ。

 

会場でそんなことが起こっている一方、屋根の上からそれを見下ろしている一つの影が・・・。

 

「全く・・・人間ってよくわかんないわね・・・こんなものやって何の意味があるんだか・・・」

 

「僕は理解できないウツ」

 

クルシーナは腕を組みながら、競技している人間の行動に難解を示していた。

 

そろそろ会場をめちゃくちゃにしてやろうと、準備を始めようとするが、そこに風を切ったような音が聞こえてくる。そこを見ていると見知った同僚の姿があった。

 

「ダルイゼン?」

 

「・・・クルシーナ?」

 

ダルイゼンが腕と足を組みながら座り込み、会場とは別の場所を見ていた。

 

「何であんたがここに?」

 

「生気がするものの気配をたどってきたら、ここにきた・・・」

 

生気がするもの・・・? 確かにここにはあるが、なんで会場とはそれた場所なのか?

 

クルシーナはダルイゼンが見ている方向を見下ろしてみると、そこにはクーラーボックスとドラム缶があった。

 

しっかり見てみるとクーラーボックスから何やら妙な不快感を感じた。

 

「・・・なーんか、生きてるって感じ?」

 

「ああ・・・」

 

ああ、そういうこと・・・。クルシーナはダルイゼンの言う気配を察すると、不敵な笑みを浮かべる。

 

「ねえ、ダルイゼン」

 

「・・・何?」

 

「あんた、あれやってくんない? アタシはあっちをやるから」

 

クルシーナはかじりかけのリンゴを取り出すと、その側に植えてある植物の近くへと放る。

 

「? まあ、別にいいけど・・・」

 

ダルイゼンは疑問符を抱くも、特に否定はしなかった。彼は自分の髪をなびかせる。

 

「進化しろ、ナノビョーゲン」

 

「ナノー・・・」

 

ダルイゼンの生み出したナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、クーラーボックスの中へと入っていく。クーラーボックスが徐々に病気へと蝕まれていく。

 

「ヒエ!?・・・ヒエー!?」

 

クーラーボックスの中のエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!!」

 

クーラーボックスを象った姿に先に氷のついた両腕、両足、不健康な顔が生えたような人型のメガビョーゲンが誕生した。

 

「フフフ・・・」

 

クルシーナも笑みを漏らした後、右手の握りこぶしを開き、手のひらに息を吹きかける。

 

「進化しろ、ナノビョーゲン」

 

「ナーノー」

 

生み出されたナノビョーゲンは鳴き声を上げながら、クーラーボックスの側の植物に取り憑く。植物が徐々に病気に蝕まれていく。

 

「ああ・・・ああ・・・!!」

 

植物の中のエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!!」

 

不健康な顔のついた木に3本の葉っぱが生えた枝に木の実が付いていて、根っこのような太い4本足の生えたメガビョーゲンが生み出された。

 

「・・・なんか、前も作ったメガビョーゲンじゃないかウツ?」

 

「メガビョーゲンに同じ奴がいるわけないでしょ」

 

確かに、最初に作ったメガビョーゲンに似ているかもしれないが、性能は全く違う。そう豪語して疑わないクルシーナであった。

 

一方、会場の方では・・・・・・。

 

「クチュン!! クチュン!!」

 

「ラテ!?」

 

「ビョーゲンズラビ!!」

 

「きゃあぁぁぁぁ!!」

 

のどかたちの方ではラテの体調が悪化し、ビョーゲンズが現れたということを察知すると同時に、会場の人々が逃げ出していく。

 

なんと、ビョーゲンズが現れたのはこの会場らしい・・・。

 

「メガー・・・」

 

ダルイゼンのメガビョーゲンは姿を現したと同時に競技のトラックに病気を吐き出し、氷漬けにしていく。

 

「メガー!!」

 

ドン!ドンドンドン!!

 

クルシーナのメガビョーゲンはジャンプをして、会場へと着地した同時に枝についている木の実を落として爆発させた後、さらに体を回転させて付いている別の黄色い木の実を無差別にばらまいて病気へと侵していく。

 

「ひなたちゃん! 行こう!!」

 

「待ってよ!! ちゆちーは!?」

 

のどかは二人でメガビョーゲンを止めに動こうとしているのに対し、ひなたはちゆのことを心配していた。浄化なら3人でやったほうがいいと思っていたが、

 

「ちゆちゃんのことも心配だよ・・・でも、このままだとこの会場がメガビョーゲンに・・・!」

 

「わかってるけど・・・! ああ、もう! ちゆちーがいないこんなときに・・・!!」

 

のどかはちゆのことも心配している。しかし、メガビョーゲンを放っておけば取り返しのつかないことになりかねない。それはひなたも理解しているのだが、頭の中で考えが板挟みになっていた。

 

「とにかく、変身ラビ!!」

 

「ペギタン!! お前はちゆを探すニャ!! ちゆがいなきゃ、お前はお手当てできないだろ! ここは俺たちに任せるニャ!!」

 

ラビリンは迷っているなら変身したほうがいいと二人に催促。ニャトランはペギタンにちゆを探すように発破をかける。

 

「わかったペエ・・・すぐに駆けつけるペエ!!」

 

ペギタンは会場から飛び出すとちゆを探すために行動を開始した。

 

「ひなたちゃん、いくよ!!」

 

のどかの言葉に、ひなたも頷くと人気のない場所に移動する。

 

「「スタート!!」」

 

「「プリキュア、オペレーション!!」」

 

「エレメントレベル、上昇ラビ!!」

「エレメントレベル、上昇ニャ!!」

 

ラビリンとニャトランがステッキに変わると、のどかは花の模様が描かれたボトル、ひなたは菱形のボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。そして、肉球にタッチすると、のどかにはハート、ひなたには星のような光線が現れ、白衣が現れ、ピンク色、黄色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

「「重なる二つの花!」」

 

「キュアグレース!」

 

「ラビ!」

 

のどかは花のプリキュア、キュアグレースに変身。

 

「「溶け合う二つの光!」」

 

「キュアスパークル!」

 

「ニャ!」

 

ひなたは光のプリキュア、キュアスパークルに変身した。

 

「「はあぁぁぁぁぁ!!」」

 

「メガァ・・・?」

 

二人はクーラーボックス型のメガビョーゲンに蹴りを入れる。突然の蹴りにメガビョーゲンは体がよろける。

 

「「キュアスキャン!!」」

 

ラビリンの目が光り、メガビョーゲンの中にいる、苦しんでいる様子のエレメントさんを見つける。

 

「氷のエレメントさんラビ!!」

 

「場所は右肩!!」

 

「メガァ・・・!」

 

メガビョーゲンは体勢を直すと病気を吐き出して、地面を氷漬けにして蝕む。

 

「固まってちゃダメニャ!! 散れ!!」

 

「うん!!」

 

グレースとスパークルは二手に分かれる。その間にメガビョーゲンは病気をプリキュアに向かって当たるように吐き出し続け、トラックを氷漬けにしていく。

 

「メガ!!」

 

氷になっている手をスパークルに叩きつけようとするも、スパークルはそれを転がって探す。

 

別の場所からグレースが飛び出して、拳をぶつけようとするが・・・。

 

「メガー!!」

 

「! うわぁ!?」

 

メガビョーゲンは右足を叩きつけると自分を覆うように氷の壁を作っていく。当たりそうになったグレースは肉球型のシールドで受け身を取り、地面へと着地する。

 

「ビョーゲン・・・チン・・・」

 

メガビョーゲンは見る見るうちに自身を氷で覆っていく。

 

「なにこれ? 壁・・・?」

 

「でも、全部氷で覆ったら、あっちから攻撃はできないはず・・・」

 

グレースがそうやって気を抜いた、その瞬間・・・!

 

「わあぁ!?」

 

メガビョーゲンは右手で氷の壁に穴を開け、そこから赤い水を発射した。

 

「そんなわけないじゃない。バッカじゃないの?」

 

「やれ、メガビョーゲン」

 

クルシーナが甘い考えを嘲笑し、ダルイゼンがメガビョーゲンに指示を出す。わざわざメガビョーゲンがそんな自分にも不利になるような状況を作るわけがないのだ。

 

開けた穴から水を噴射して、プリキュアを攻撃するメガビョーゲン。グレースもスパークルも避けるのはそんなに難しいことではないのだが・・・。

 

「これじゃあ、メガビョーゲンに近づけないよ・・・!」

 

スパークルは連続で噴射される水を回避することに精一杯で、メガビョーゲンに近づけず困っていた。

 

そんな中、グレースは噴射される水を避けながら走り、会場の壁をキックして飛び上がり、クーラーボックス型のメガビョーゲンの真上に到達した。

 

ところが、そこへ木型のメガビョーゲンがグレースの前を横切り・・・。

 

「え? きゃあぁ!!」

 

メガビョーゲンの振り回した木の枝に直撃してしまい、地面へと落ちる。

 

「アタシだっていんのよ。メガビョーゲンを召喚してないと思ったぁ?」

 

クルシーナは吹き飛ばされたグレースをあざ笑う。

 

「グレース! うわぁ!!」

 

グレースに気を取られたスパークルもよそ見をして、噴射した水に当たってしまい、地面へと落ちる。

 

さらに木型のメガビョーゲンは地面に着地すると、リンゴのような形の実を落とし、地面に溶け込んだその部分は沼のようになり、病気へと蝕まれていく。さらに自身の体を回転させ、黄色い梨のような形をした木の実を無差別にばらまく。

 

ドン!ドドンドンドン!!!

 

落ちた木の実は爆発を起こし、その部分は病気へと蝕まれていく。

 

煙が晴れた後、クルシーナの視界に見えたのはまだ立ち上がろうとしているグレースとスパークルの姿だった。

 

「お前らのお仲間、呼んできた方がいいんじゃない? まあ、今頃あいつに捕まってるだろうけど」

 

クルシーナが二人にとって衝撃の発言をする。

 

お仲間・・・もしかして、ちゆちゃんのこと? しかも、捕まってるって・・・?

 

「ちゆちゃんに何をしたの・・・!?」

 

「さあね? あいつの考えてることなんかアタシにはわかんないわよ。あいつの手にでもかかってるんじゃない?」

 

クルシーナの嘲笑うような発言に、二人の心に沸々と怒りが湧いた。

 

「ひどいよ・・・!! ちゆちゃんはこの日のために頑張ってきたのに・・・!!」

 

「うぅ、そうだよ!! ちゆちーは何も悪いことしてないじゃん!! あんなに一生懸命にやってたのに・・・!!」

 

グレースとスパークルはここ最近、ちゆが頑張って走り高跳びを飛び越えようとしていることを知っていた。

 

ビョーゲンズはそれをも踏みにじろうとしている。それだけは許せなかった・・・!!

 

「ふん、努力や頑張りなんか何の意味もないんだよ。メガビョーゲン!!」

 

クルシーナはグレースとスパークルの言葉を一蹴すると、自分のメガビョーゲンに指示を出す。

 

「メガー!!」

 

木型のメガビョーゲンは二人を駆逐すべく、飛び上がって襲いかかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・んん・・・」

 

どこかの仄暗い一室、ちゆは目を覚ました。視界がぼやけていたが、徐々にピントが合っていく。

 

「ここ、は・・・?」

 

ちゆは立ち上がって辺りを見渡すと、どうやら直方体の何かに閉じ込められているようだった。

 

壁に近づいて叩いてみるも、壁が壊れる気配もない。しかも、触れた手が何やら冷たく感じた。

 

「これって、氷・・・?」

 

そういえば、今気づいたが、体が少し寒いような感じがし、吐く息が白かったように感じる。

 

「おやおや、お目覚めですかぁ?」

 

そこへやってきたのは、メガネをかけ白衣を身にまとい、常に薄笑いを浮かべているビョーゲンズの幹部。

 

「ドクルン・・・!!」

 

「いかがですかぁ? あなたをいつまでも歓迎するための氷の牢獄は・・・?」

 

ドクルンに警戒するちゆに対し、ドクルンは笑みを浮かべながら自慢でもするかのように話す。

 

「わ、私をどうする気なの・・・!?」

 

ドクルンを睨むちゆだが、その表情は少し強ばっていた。額には緊張から汗が滲んでおり、強がっているのが見受けられる。

 

「何もするつもりはありません。あなたにはそこにいてもらうだけでいいんですから・・・」

 

「嫌よ!! 私をここから出して・・・!!」

 

ちゆは壁を叩きながら拒絶の意思を見せるも、ドクルンは顔色を変えることはない。

 

「お断りします。そんなことをしても、私に得などないですから」

 

「なんですって・・・!?」

 

憤るちゆに対し、ドクルンは薄笑いを浮かべる。彼女は右手を前に突き出すと優しく掴むように握る。

 

ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・。

 

「うぅ!? はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

突然、彼女の心臓がバクバクし始め、ちゆの息が切れ始める。

 

「無駄な抵抗はしないでください。苦しくなるのが早くなるだけですよ。それにあなたの体調はもう私の掌にあるようなものです」

 

そんな彼女をよそに平然と長方形の氷の壁をすり抜けて、彼女の右肩に手を置いて、耳元に口を近づけると、こう囁いた・・・。

 

「あなたは私のもの、私が存分に可愛がってあげます・・・」

 

「!!??」

 

ちゆは言い知れない恐怖を感じると、拒絶しようと右手を突き出すも、その手はあっさりと片手で抑えられてしまう。

 

「怖がる必要なんてありませんよぉ。だってあなたは何もしなくていいんですからぁ」

 

ドクルンはちゆが力を抜いたことを確認すると、何もすることなく片手を離す。ちゆは後ろへよろよろと後ずさり、まるで力をなくしたかのように膝をつき、体を震わせる。

 

ドクルンはクスクスと笑うと、さらにちゆへと近づく。

 

「い、嫌っ・・・!! 来ないでっ・・・!!」

 

ちゆはドクルンがこちらに近づいてくるのに気付き、拒絶の声を上げる。しかし、ドクルンはそれに臆することなく、近づいていく。

 

ちゆは体を震わせながら、彼女から体を引きずって後ずさろうとするが、ドクルンは右手を広げて前に出すと掴むように握る。

 

ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・!

 

「!? はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

突然、動悸がして胸を締め付けられる。呼吸が少し早くなり、息が苦しくなる。

 

「怖がる必要はありませんよ・・・私が外敵から守ってあげますから・・・」

 

ドクルンは動きが鈍ったちゆに近づくと、背後から右腕を掴んで後ろに回す。

 

「さ、さわらな、い、で・・・!」

 

ちゆは振りほどこうとするが、まるで力が入っておらずドクルンの手を払いのけることができない。ドクルンは特に気にした様子もなく、右手でちゆの顔を自分の方へと向けると顔を近づけ、再度口づけを交わす。

 

「んん!! んぅ、んんぅ!!」

 

ちゆは苦しそうに眉を動かすと、振りほどこうと無駄なあがきをするも、手は後ろ手に押さえつけられているために動かすしても力を入れることができない。ならばと、押さえつけられてない片方の手でドクルンの頬を叩いて払いのけようとするも、彼女にとってはペチペチと叩かれている程度にしか感じておらず、逆に片手で押さえつけられて後ろへと回されて、腕一本で一纏めにして押さえつけられてしまう。

 

「んん・・・んんぅ・・・」

 

首を振ってもドクルンの口づけから逃れることはできず、苦痛から涙も出てくる。

 

ーーーー私は、プリキュアになれなければ、こんなにも無力だ・・・・・・。

 

ドクルンは満足したのか、ちゆの顔から口を離す。

 

「・・・ペギ・・・・・・タン・・・・・・」

 

苦しさのあまりパートナーの名前を口にするちゆ。まるで、助けてとでも言いたげな感じで・・・。

 

それを聞いたドクルンに、映像がフラッシュバックする。

 

ーーーーベッドの横で胸を押さえて苦しむ少女、紐のようなものを引っ張ると女性たちが少女へと駆け付ける。

 

ドクルンはしばらく沈黙した後、ちゆを腕を押さえつける手を離すと、おもむろにちゆを角側へと吹き飛ばした。

 

「きゃあ!! うぅ・・・」

 

ちゆは壁に体を打ち付けた痛みで呻くも、ドクルンが今まで見せたことないような冷たい表情でちゆのことを見下ろしていた。

 

「まだ、そんなことを言うのですね・・・私が守ると言っているのに・・・」

 

ダァン!!!!!

 

ドクルンは右足をちゆの前で叩きつけると、氷の壁が音を立てながら出現し、彼女の周りを覆っていく。

 

「二度と私以外の名前を言えないようにしてあげますよ・・・!!」

 

ドクルンはそう言って、自分が擬態するために持っていたバックに入れた水筒を出すと、その中の水を氷ごとぶちまける。その中にある氷を見て、酷薄な笑みを浮かべる。

 

ドクルンは右手の中指と親指を合わせると、パッチンと音を鳴らす。

 

「進化してください、ナノビョーゲン」

 

「ナノデス~♪」

 

ナノビョーゲンは鳴き声を上げながら、床にぶちまけた氷へと取り憑く。氷が徐々に病気へと蝕まれていく。

 

「ヒエ・・・ヒエ!?」

 

氷の中にいるエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「「メガビョーゲン!!」」

 

全身が氷で形成された悪魔のような二対のメガビョーゲンが誕生した。

 

「ああ・・・ああ・・・!!」

 

ちゆは誕生したメガビョーゲンに体を震わす。

 

「メガビョーゲン、その娘を囲っている氷の壁を守護してください」

 

「「メガー!!」」

 

二対のメガビョーゲンはちゆを囲っている氷の壁を少しすり抜けると、何かをつかむように氷の壁ごしにお互いの手を握って自身の体を固定させる。

 

すると、氷の壁は壊せないようになったばかりか、氷の壁から寒気がするオーラが出始めた。

 

ちゆは何とかしてここから出ようと壁を伝って調べるも、そもそもペギタンがいなければプリキュアに変身できない彼女では氷の壁を壊すことは不可能だ。でも、諦めたくない彼女はどうにかして脱出をしようとする。

 

そんな、ちゆにある異変が起こる・・・。

 

(あれ? 何だか、寒くなって・・・)

 

ちゆの体が震え、急に空間が寒くなり始める。それより前にドクルンが迫ってきたときには寒さを感じてはいたが、それはまだ耐えられるような寒さであったが、問題はなかった。しかし、氷の壁で狭い空間に閉じ込められ、さらにメガビョーゲンが氷の壁に取り憑いてからは急に空間の温度が下がりだしたのだ。

 

ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・。

 

「う・・・ はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

しかも、こんなときに心臓がバクバクと警鐘を鳴らし始め、ちゆの息が再度切れていく。寒いというのに額に汗がにじみ始め、冷たさと相まって全身から力が抜けていく・・・。

 

ちゆは壁に手をついて自身の体を支えていたが、その力も失われ、とうとう膝をついて座り込んでしまった。

 

震える自身の体を抱きしめ、少しでも自分を守ろうとする。しかし、それだけでは心臓の警鐘は治まらなかった・・・。

 

ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

(寒い・・・苦しい・・・体が震えて力が・・・)

 

やはりパートナーがいなければ、自分は無力なのか・・・。運動は好きで、自分の体は少し丈夫だと思っていた。でも、病気の前ではそれも通用しない・・・。

 

目がチカチカとしてきた・・・。

 

「フフフ・・・・・・」

 

ドクルンは寒さと病気で震える彼女を見つめながら、酷薄な笑みを浮かべる。

 

(ペギ・・・・・・タン・・・・・・)

 

ちゆは薄れていく意識の中で助けを求めるかのように、心の中でパートナーの名前を呼ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゆー!!! ちゆー!!! どこペエ!!??」

 

一方、ペギタンは会場から飛び出して、パートナーを探していた。一度旅館沢泉に戻ったが、どこにもちゆの姿はなかった。

 

そのあとも、すこやか中学校、すこやか市の商店街周辺、のどかの母が働く運送会社の周辺も探したが、ちゆの姿はどこにも見当たらなかった。

 

「ペエ・・・ちゆ、どこに行ったんだペエ・・・」

 

もしかして、どこかで事故にあったのかもしれない・・・。でも、そんなことが起きているのであれば、一番わかりやすいはずだ。そんな状況は起きていなかった。

 

もしや、誰かに誘拐されたとか・・・。ちゆもプリキュア以前に、年頃の可憐な女の子なのだ。一人で歩いているところを変な輩に捕まったとか・・・?

 

そんな悪い予感が過ぎりつつも、ペギタンはちゆのことを探し続ける。

 

すると、道端に気になるものが落ちているのを見かけた。上空からそこへと降りて、拾い上げてみるとそれはどこかで見たことがあるものだった。

 

「こ、これは・・・! ちゆが身につけてたシュシュペエ!!」

 

ちゆがいつも髪に止めている水色のシュシュ、トレーニングウェアでランニングに出るときも、いつも髪に身につけていた。

 

これが、ここにあるということは・・・ちゆは本当に、誰かに攫われたとしか言いようがなく・・・。

 

「た、大変ペエ・・・!! 早く助けないと・・・!!」

 

ペギタンは顔を青ざめさせる。ちゆが本当に攫われたのであれば、攫った人たちに酷い目にあわされているのかもしれない・・・。早くちゆを見つけないと彼女の身が危険だ。

 

「でも、一体どこにいるペエ? どこに行ったのか、見当もつかないペエ・・・」

 

しかし、手がかりがないのに探すのはどうやっても不可能だ。いろんな思い当たる場所を散々探し回ったのにここまで見つからないとなると、どこをどうやって探せばいいのかわからない。

 

ーーーー最初から、ちゆと一緒にいてあげれば、こんなことには・・・・・・。

 

涙を流すペギタン。やはり見習いの自分では何もできないのか・・・。

 

探すのを諦めかけた、そのとき・・・・・・。

 

ーーーー・・・・・・タン・・・・・・。

 

「!! ちゆ!?」

 

どこからかちゆの声が聞こえてきた。彼女の姿はどこにも見えない・・・でも、確かに彼女の声が聞こえたのだ。

 

ーーーーペギ・・・・・・タン・・・・・・。

 

また、聞こえてきた。今度ははっきりと・・・!!

 

その声が聞こえた先は・・・・・・そうだ、まだ探していない、あそこ・・・!!

 

「ちゆー!!! 今、助けに行くペエ!!!!」

 

ペギタンはすぐに上空へと飛び上がると、ちゆを助けるべく速度を上げていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

寒さで体が震える・・・冷凍庫のように冷たくなった空間の中では息がうまくできない・・・。

 

意識が、段々と薄れていく・・・・・・。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

こんなときでも、のどかとひなたは無事か、ペギタンは今頃私を探しているのか、と友達のことを気にしてしまう。

 

寒さで頭がぼーっとしていく・・・そんな思考能力も失われていく・・・。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

プリキュアになって、のどかやひなたとも友人になった。私がしっかりしているからというけれど、それはみんながいるから、その力を発揮できるんだと感じた。

 

体が冷えて力が入らない・・・もはや、壁を叩いて脱出する力も残っていない・・・。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

走り高跳び、なんで失敗したんだっけ・・・? 私、なんであんなに一生懸命に飛ぼうとしてんだっけ・・・? なんで自分があんなに努力をしたのかも思い出せない・・・。

 

体が冷たい・・・足や手の感覚がなくなっていくように感じる・・・。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

あれ? 私のパートナーの名前、誰だっけ? そもそも友達って誰のこと・・・?

 

わたし、なんでこんなところにいるんだっけ・・・?

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

なんだか、もうかんがえること、も、おもいだす、こと、も、できなくなって、る、きが、する・・・。

 

わた、し、は、この、まま・・・ここ、で・・・。

 

こわい・・・ひとりって、こん、な、に、こわかった、んだ・・・。わたし、ゆうき、なん、て、あったの、かな・・・?

 

ごめん、なさい、やく、そく、まもれ、なく、て・・・。

 

ふふふ・・・わたし、だれ、に、あやまってるん、だろう・・・ばか、みたい・・・。

 

「ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ・・・」

 

・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

ーーーーちゆー!!!!!!!

 

だれかのこえがきこえてくる・・・わたしをよぶこえがきこえてくる・・・。

 

だれ・・・? このこえはだれ・・・? わたしをよぶのは、だれ・・・?

 

「ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ・・・」

 

・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

ちゆは朦朧としていく意識の中で、誰かを呼ぶ声を朧げに耳にしていた・・・・・・。

 




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