ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きになります。


第18話「凍傷」

競技場でのプリキュアとメガビョーゲンとの戦いは鮮烈を極めていた。

 

「メガー・・・」

 

クーラーボックス型のメガビョーゲンは壁に穴を開けて水を連続で噴射する。スパークルはそれを避けつつも、この打開策を見出せずにいた。

 

「もー! あいつに近づけないよー!!」

 

スパークルは避けつづける消耗戦に、若干苛立ちを感じていた。

 

「メガー!!」

 

一方、木の幹を揺らして、黄色のリンゴを振りまく木型のメガビョーゲン。

 

ドン!! ドドンドン!! ドンドドン!!

 

グレースは降り注ぐ爆弾を走りながらかわしていき、メガビョーゲンの前へと迫る。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「メガビョーゲン!!」

 

「きゃあぁぁぁぁ!!」

 

グレースは飛び上がって攻撃をしようとするも、メガビョーゲンの振り回す木の幹に当たって吹き飛ばされる。

 

「メガー・・・!」

 

「うわあぁぁぁ!!!」

 

スパークルも、噴射された赤い水を受けて吹っ飛ばされてしまう。

 

「うぅ・・・!!」

 

「完全に狙い撃ちにされてるラビ・・・!」

 

先ほどから木型のメガビョーゲンには飛び上がったところをことごとく狙われている。こちらの動きを完全に捉えていて、今の状況では立ち向かったところで直撃必須である。

 

「くっ・・・!!」

 

「このままじゃ、ちゆを助けにいけねえよ・・・!!」

 

スパークルの表情にも疲れが見えはじめ、

 

「いい加減諦めたら? いつもは3人でどうにかできてんのに、2人でそんなじゃ無理だろ」

 

「そうそう、バカの一つ覚えみたいに向かったって何も変わんないっての」

 

ダルイゼンやクルシーナの言葉とは裏腹に、グレースは再び立ち上がろうとしていた。

 

「一体、どうしたら・・・?」

 

グレースは苦い顔をする。先ほどみたいに行ったところで、また木の幹で吹き飛ばされるだけ。でも、どうしても立ち向かう以外の選択肢が見当たらない。

 

「グレース!! こうなったら二人で・・・!!」

 

「何か考えがあるの・・・?」

 

「別にないけど・・・」

 

グレースは思わずこけそうになるが、スパークルは何か確信を得たかのように笑みを浮かべた。

 

「でも、いちいち考えてもしょうがないっしょ? だったら、あたしたちはあたしたちができるようなことをするだけだよ」

 

「スパークル・・・」

 

グレースはスパークルの言葉に、固くなっていた表情が緩んでいく。そうだ、私たちはどんなことがあっても地球をお手当てをするんだ。大した考えはなくても、その気持ちさえあれば・・・!!

 

グレースとスパークルは一斉にメガビョーゲンへと走り出した。

 

「また同じことする気? 無駄だってわかんないのかよ」

 

クルシーナをよそに、スパークルはステッキから肉球型のシールドを展開、そこへグレースが飛び上がってシールドを踏み台にすると、木型のメガビョーゲンへと飛んでいく。

 

「メガー!!」

 

「ぷにシールド!!」

 

グレースもステッキから肉球型のシールドを展開し、メガビョーゲンが振るう木の幹を防ぐも、やはり吹っ飛ばされる。

 

「ほら、やっぱり、バカのひとーーーー!?」

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

 

クルシーナがバカにする前に、木型のメガビョーゲンに向かって、スパークルが走ってくる。

 

「メガー・・・」

 

そこへクーラーボックスのメガビョーゲンが氷の壁に次々と穴を開けて、赤い水を噴射するも、走っているスパークルには当たらず、一直線に木型のメガビョーゲンへ。

 

「はぁ!!」

 

スパークルは木型のメガビョーゲンの目の前を飛び越える。そこへもう一体のメガビョーゲンから噴射された赤い水が木型のメガビョーゲンへと迫り・・・。

 

「メガァ!!??」

 

直撃を受けた木型のメガビョーゲンは壁へと吹っ飛ばされる。

 

「あ・・・・・・」

 

「ああー!!??」

 

「メガビョーゲンの攻撃が当たったウツ!?」

 

これにはダルイゼンも絶句し、クルシーナも驚きを隠せない。まさか、他のメガビョーゲンの攻撃を利用されるとは思ってもみなかった・・・。

 

「ちょっと!! 何やってんだよ、メガビョーゲン!!!」

 

「メ、メガ・・・!?」

 

もちろん、邪魔されたような形になったクルシーナは怒り心頭だ。クーラーボックスのメガビョーゲンも、主人でもない彼女の怒りに押されて尻すぼみをしている。

 

木型のメガビョーゲンに吹っ飛ばされたグレースは攻撃が緩和されたおかげもあって、うまく着地し、ステッキを上にかざして再度肉球型のシールドを展開する。

 

「スパークル!!」

 

スパークルはそのままの速度で走ると、肉球型のシールドを踏み台にして飛び上がり、クーラーボックスのメガビョーゲンの真上へと到達した。

 

このメガビョーゲンは氷の壁を作っているので、赤い水を上にめがけて噴射することができない。絶好のチャンスだ・・・!!

 

「メガー・・・」

 

メガビョーゲンは悪あがきにスパークルにめがけて口から病気を吐き出す。スパークルは翻して交わすと、ステッキに黄色のエネルギーをチャージする。

 

「はあぁぁぁぁ!!!」

 

黄色のエネルギーが放たれると、メガビョーゲンの顔へと直撃する。

 

「メガー・・・ビョーゲン・・・」

 

怯んだメガビョーゲンは思わず、体がよろけて倒れそうになった。

 

一方、木型のメガビョーゲンは飛び上がってグレースの上へと飛び出し、その場で体を回転させて黄色いリンゴをばらまく。

 

ドンドンドン!!! ドンドドンドンドン!!!

 

落ちたリンゴは爆発を起こして、グレースも思わず顔を腕で覆う。

 

「こっちもなんとかしないとラビ!」

 

「うん! 実りのエレメント!!」

 

グレースはステッキに実りのエレメントボトルをかざすと、ステッキの先をピンク色のオーラの剣へと変える。

 

「メーガー!!」

 

メガビョーゲンは着地した瞬間に、再び青いリンゴを振り落とす。

 

「ふっ・・・はぁ!!」

 

グレースはそのリンゴの一つに剣を振るって、メガビョーゲンの方へと弾き返す。

 

「メガ・・・!?」

 

「はあぁぁぁぁ!!!」

 

グレースはそのまま怯んだメガビョーゲンにめがけてステッキを横薙ぎに払い、斬撃を放つ。

 

「メッガァ・・・! メガァ!!??」

 

メガビョーゲンは木の幹で覆って斬撃を防ごうとするも、押し負けて3本の木の幹が切断されて、その勢いのまま突き飛ばされた。

 

「ウツ!? 木の幹が切れたウツ!?」

 

「~~~~~~~~~~っ!!!」

 

クルシーナはその光景に唸りながら苛立ちを隠さない。

 

グレースは花の模様が描かれたエレメントボトルを、スパークルは菱形の模様が描かれたエレメントボトルをそれぞれステッキにかざす。

 

「「エレメントチャージ!!」」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「「ヒーリングゲージ上昇!!」」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングフラワー!!」

「プリキュア!ヒーリングフラッシュ!!」

 

グレースとスパークルはそれぞれ叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、ピンク色、黄色の光線をそれぞれ放つ。光線は螺旋状になっていた後、それぞれのメガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、メガビョーゲンの中にいた木のエレメントさん、氷のエレメントさんを優しく包み込む。

 

ハート状に、菱形状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんをそれぞれ外へと出す。

 

「「ヒーリングッバイ・・・」」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「「「お大事に」」」」

 

氷のエレメントさん、木のエレメントさんがそれぞれ元の場所に戻ると、病気で蝕まれた場所は元に戻っていく。

 

トラックで氷付けになっていたところは、メガビョーゲンが消えたことで徐々に氷解してなくなっていく。

 

「ああ~もう~ムカつくッ!!!!」

 

「ふん・・・」

 

クルシーナは珍しく地団駄を踏んで悔しがり、ダルイゼンは何処吹く風だ。

 

直後、冷静になったクルシーナが会場の外を見上げる。

 

「・・・それにしても、あいつはうまくいってんのかね?」

 

「うまくいってるって、何が?」

 

「お前には教えてあげない」

 

「・・・別に興味ないからいいけど」

 

「なんだよ、その言い方!! もう~!!」

 

クルシーナとダルイゼンは少し空気が悪くなったような感じになりながら、二人ともその場から姿を消した。

 

奇しくも、メガビョーゲンを浄化した二人。しかし、怪物を浄化して戻るはずのラテの体調はまだ戻っていない。

 

「ラテ、大丈夫?」

 

「クゥ~ン、クゥ~ン」

 

「え、何何? どうしたの?」

 

しかも、ラテは何かを訴えるように弱々しく鳴いている。

 

「グレース、診察してみるラビ!」

 

「うん!」

 

グレースは聴診器を取り出して、ラテに近づける。

 

(山の方で、氷さんが泣いてるラテ・・・)

 

「山・・・? 山の中・・・?」

 

「そこで氷が泣いてるって、一体どういうことだ・・・?」

 

ラテの心の声に疑問を抱く4人。この季節に森の中に氷があるというのは考えにくい。でも、それで氷が泣いてるというのはどういうことなのか?

 

「クゥ~ン」

 

「どうしたの、ラテ?」

 

聴診器を近づけてみると・・・。

 

(氷さんの中でちゆが大変ラテ・・・)

 

「「!!??」」

 

ラテが心の声で告げた衝撃の言葉。なんと、ちゆはその氷さんの中で大変な目にあっている・・・。ということは、ビョーゲンズに拐われたとしか言いようがなかった・・・。

 

「ちゆちゃんが・・・そんな・・・!!」

 

のどかは呆然としたような表情をする。ちゆちゃんが・・・私の友達が、ビョーゲンズに酷い目にあわされている・・・。

 

この陸上大会に現れないのはおかしいと思ったが、まさかビョーゲンズに拐われているとは思ってもみなかった。

 

ーーーーこんなことになるんだったら、私がちゆちゃんの側にいれば、こんなことには・・・。

 

「グレース!!」

 

スパークルがグレースの両手を握る。

 

「とにかく行こうよ!! メガビョーゲンがいるってことだよね!?」

 

「・・・うん」

 

「氷さんってことは、メガビョーゲンをたどれば、ちゆちーだっているってことでしょ?」

 

スパークルの言葉に、グレースの不安は少し消える。そうか、メガビョーゲンのところにいるのであれば、それを見つければちゆちゃんにもたどり着けるはず・・・。

 

「うん、そうだね・・・ごめんね、ラテ、氷さんはどこにいるの?」

 

ラテに再び聴診器をあてて、心の声を聞く。

 

(氷さんは、あっちの方で泣いているラテ・・・)

 

あっち、方向はすこやか運送の方、確かそこに森に向かう道があったはず。その近くにいるかもしれない。

 

頷いた4人はラテを抱えながら、メガビョーゲンの元へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

体が氷のように冷たい、寒くて体が震える、体がうまく動かない・・・空気が冷たすぎて肺に痛みを感じ、呼吸がうまくできない・・・・・・。

 

ちゆは氷の空間、もとい氷の牢獄の中で苦しんでいた。もはや手を動かす力もなく、膝をついて角に寄りかかっていて立ち上がる力も残っていない。白い息を吐きながらも、肺の痛さに息をあまり吸えていない。

 

「「メガー・・・」」

 

そんな彼女を嘲笑うかのように二対のメガビョーゲンはちゆのいる空間の温度を低くしていく。現在、温度はすでに氷点下を超えるほど。普通であれば凍死してもおかしくない温度だ。

 

「フフフ・・・」

 

ドクルンは酷薄な笑みを浮かべると、ちゆに向かって右手を突き出し優しく掴むような動作をする。

 

「ぁ・・・ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・げほげほっ・・・ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・」

 

ちゆの中で赤い何かが蠢き、かすれたような声が聞こえた後、まるで彼女から笛が鳴ったかのような呼吸音が聞こえてくる。気のせいか、胸を弱々しく抑える彼女の顔から点のような汗が滲み、苦しそうな表情に変わったような感じがする。

 

「メガビョーゲン、そのまま彼女の病気をどんどん重くしてください」

 

「「メガー・・・」」

 

ドクルンはその症状がどうなのか知っている。そんな意識が朦朧としているちゆを見て酷薄な笑みを浮かべ、メガビョーゲンに指示。このまま氷の空間にさらして病気に侵して力尽きさせれば、私の前で永遠に輝くだろう。そう想像して疑わなかった。

 

「フフフ・・・もうすぐあなたは永遠に私のもの・・・」

 

このまま病気で手の施しようがないくらいにしてしまえば、記憶すらも消えて私の人形と化す。そうなってしまえば、他の奴らのことなど考えずに、私のことだけを見てくれるだろう。

 

・・・ゆー!!・・・ゆー!!

 

「? 誰かここにきたようね・・・」

 

「・・・この声は」

 

ーーーーもしかして、あいつか?

 

スタッドチョーカーのブルガルはなんとなく察していた。この女を助けにくる輩で、こんな少年声の持ち主はあいつしかいない。

 

ちゆー!! どこペエー!?

 

「ペエ? ペエといえば・・・なるほど、あいつね・・・」

 

「ふん、間違いないブル」

 

この語尾をつけるやつといえば、もはやヒーリングアニマルのあいつしかいない。

 

「ちゆー!!!」

 

声が近くなってきた、もうすぐ側だろう。

 

まあ、ヒーリングアニマル一人きたところで何かができるわけではないので、わざと妨害するようなことはしないでおくことにした。

 

しばらくすると黒い影が見えてきて、小さな青いペンギンの姿をした妖精があらわれた。

 

「!? ドクルン!!」

 

「おや? きたんですかぁ? しかも、たった一人で?」

 

ニヤリとした顔で言うドクルンに、ペンギンの妖精ーーーーペギタンは警戒する。

 

「ちなみにあなたのパートナーはあそこにいますけどねぇ」

 

「あ、いた!! ちゆ!!」

 

「ひゅう・・・ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・」

 

ドクルンに言われて、奥を見るとペギタンはちゆを視界に捉える。しかし、彼女はぐったりとしていて弱々しく、すでに意識は朦朧としていた。

 

「ちゆー!!」

 

ペギタンは一目散にちゆへと近づこうとするが、氷の壁に取り憑いていて、擬態していたメガビョーゲンが姿を表す。

 

「!? メ、メガビョーゲンペエ!?」

 

「「メガー・・・!!」」

 

二対のメガビョーゲンはお互いの両手を組むと、腕を伸ばしてペギタンに向かって振り下ろす。

 

「うわ! うわぁ!!」

 

ペギタンは間一髪で交わすも、手を離したメガビョーゲンは手のひらでペギタンを叩きつけようとしてくる。

 

「ちゆがメガビョーゲンに囚われてるペエ!?」

 

ペギタンの言う通り、氷の空間は二対のメガビョーゲンによって守られており、その中にちゆが冷凍庫のような場所で凍えている。このままでは凍死するのも時間の問題だ。

 

「ええ、そうですよぉ。すなわち、メガビョーゲンの牢獄ってところですかねぇ。まあ、あそこでは極寒の空間と変わりませんがねぇ」

 

「ちゆをどうするつもりペエ!?」

 

ドクルンに抗議するペギタン。彼女はニヤけ顏を崩さない。

 

「決まってるじゃないですかぁ。その娘を私のコレクション第一号に加えるためですよぉ。死にそうな人間を氷漬けにするほど美しいものはありませんからねぇ・・・」

 

「お前のパートナーももうすぐ楽になれるブル」

 

「死にゆく人間の顔・・・徐々に弱まっていく動き・・・私は強がりな人間がそういう儚さに変わっていくのが大好きなんです・・・その娘は優しさに加えて凛々しさも持っている、そういう人間はうってつけのコレクションなんですよぉ・・・他人のことなど気にせずに夢中になれるくらいにねぇ・・・フフフ・・・」

 

ドクルンが何やらつらつらと話しているが、ペギタンには何一つ理解できない。それどころかこの幹部の思考回路がおかしく感じる。

 

考えて恐怖を抱く前に、ちゆのことを考えようと思考を振り払い、ちゆの方へと向き直る。

 

「ちゆ!! ちゆ!! しっかりするペエ!!」

 

「ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・ぅぅ・・・ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・」

 

ペギタンがちゆに呼びかけるも、彼女は意識が朦朧としているせいかペギタンの声に反応しない。時折苦しそうに呻き声を漏らしている。

 

ペギタンはちゆを助けようと壁に体当たりをしようとするが、二対のメガビョーゲンが片手の爪を振り回す。

 

「「メガー・・・」」

 

「うわあぁぁぁ!!」

 

攻撃が当たってしまい、床へと転がるペギタン。しかし、ペギタンは立ち上がって、メガビョーゲンへと向かっていく。

 

「「メガー・・・」」

 

「ああぁぁぁぁ!!!」

 

しかし、体当たりはまるで意味をなしておらず、逆にパンチでぶっ飛ばされる。

 

ドクルンはそれを無表情で見つめている。

 

「ふん、一人じゃ何にもできないくせに、足掻いてるブル。本当に見苦しい光景だブル」

 

「まあ、それがお手当てするものたちの使命というやつらしいからねぇ・・・たとえ、無駄な努力だとわかっていても足掻こうとする・・・自分の身の心配もせずに相手ばかりを気にする・・・とてもお手当てをする輩の行動ではないわねぇ・・・」

 

ーーーー自分が死んだら、元も子もないのに・・・。

 

ドクルンはペギタンの行動を酷評する。お手当てする人間は理解できない。特に看護師とかは、複数人構おうとする傾向があるが、それが自分の身を滅ぼしていることに気づいていない。相手をかまって、結局自分が怪我をしたり、病気になったりする・・・全くもって理解不能だ。

 

「「メガー・・・」」

 

「ああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ペギタンはメガビョーゲンに殴り飛ばされ、床へと転がる。先ほどから立ち向かっては吹き飛ばされ、立ち向かっては吹き飛ばされを繰り返している、すでに彼の体はボロボロだ。

 

「そんなに逝き急がなくても、彼女はもうすぐ私のものになりますよ。あなたが何かをする必要はありません」

 

「つーか、お前一人で何ができるんだ?ブル」

 

ドクルンが傷ついたペギタンを見下ろす。それも氷のように冷たい無表情で。

 

「ぅぅ・・・ぅぅ・・・ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・」

 

ちゆの呼吸が段々と弱くなってきている。このままでは本当に彼女はドクルンの病気に完全に侵されて、体調が元に戻らなくなってしまうだろう。

 

「助けな、きゃ・・・助けないとペエ・・・!!」

 

ペギタンはそう言いながら、立ち上がるもメガビョーゲンはお互いの手を組んで振り下ろす。

 

「ぐぅ!! うぅ・・・」

 

ペギタンは床に叩きつけられ、再び倒れ伏す。

 

「あなたが頑張っても、彼女は余計に苦しむだけでしょうに・・・このままに楽にしてあげたほうが一番いいですよ・・・もうすぐ、何も苦しまずに済むんですから・・・」

 

ドクルンは酷薄な笑みを浮かべながら言う。

 

「それは違うペエ!!」

 

ペギタンはそう叫びながらも、体を震わせながら再び立ち上がろうとしている。

 

「ちゆだって、生きたいと思っているはずペエ!! イップスで飛べなくなっても、ちゆは頑張ってたペエ!! 病気に冒されても、負けないように頑張っているはずペエ!!」

 

ちゆはぐったりして力が抜けているように見えても、本当は病気と戦っているはず。ラテ様だって頑張っていたんだ。ちゆだってそのぐらいの力はあるはずだ。

 

そんなペギタンの言葉に、ドクルンの頭の中に映像がフラッシュバックする。

 

ーーーーぐったりした私、彼女に似た藍色の髪の少女が担いで走っている。

 

ーーーーベッドの上で寝かされる私、遠ざかっていく藍色の髪の少女。手を伸ばす私。

 

「・・・・・・ドクルン?」

 

ドクルンは体を震わせると、周囲に氷塊を出現させてペギタンへと投下する。

 

「ああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ペギタンは直撃こそ受けなかったものの、吹き飛ばされて地面へと転がる。

 

「全くもって論理的じゃないんですよ、論理的じゃ・・・そんなことで私たちに勝てるとでもお思いですか・・・?」

 

ドクルンはそう言いながらペギタンにコツコツと歩み寄る。

 

「負けない気持ちがあれば・・・勝てる、ペエ・・・!」

 

「叶わなければ消えるんですよ、そんなもの・・・」

 

ドクルンはあくまでもペギタンの言葉を切り捨てる。気持ちだけで病気に勝とうなど、論理的じゃない。所詮は強がりと一緒だ。

 

「消えたりなんか、しないペエ・・・!!」

 

「強がりはもういいです・・・うるさいのでもう消えてもらえますか?」

 

論理的ではないとドクルンは冷たい表情で見下ろしながら、右人差し指から白いオーラを溜め始める。

 

「うぅ・・・!!」

 

「さようなら・・・」

 

ドクルンはそう言いながら白いビームを照射した。

 

ドォーン!!!!!

 

白くて冷たい霧のような煙が晴れた後、照射した場所に残っていたのは・・・・・・ただの氷だった・・・。

 

「!! 消えた・・・」

 

「どこ行ったブル!?」

 

周囲を見渡すドクルン。すると、そこへ明るい声が聞こえてきた。

 

「こっちだよ!!」

 

声が聞こえた方向を向いてみると、そこにはペギタンを抱えたキュアスパークルの姿が。

 

「はあぁぁぁぁ!!!」

 

別方向からも女性の声が、そちらを向くとハート型の光線が迫っていた。

 

ドクルンは左足を叩きつけて、氷の壁を作るとハート型の光線を防ぐ。しかし、受け止めた瞬間、エネルギーと氷の壁は爆発を起こし、ドクルンは思わず腕で顔を覆う。

 

「っ・・・」

 

風を切ったような音がドクルンの横から聞こえ、過ぎ去った方向へ向くとキュアグレースの姿もあった。

 

「ペギタン、大丈夫?」

 

「ペエ・・・二人とも来てくれたペエ・・・」

 

「当たり前だよ! あたしたち、友達じゃん!!」

 

グレースとスパークルが来てくれたことに、安堵の声を漏らすペギタン。

 

「でも、早くちゆを助けないと・・・!!」

 

ペギタンが視線を向ける先を見ると、ちゆが氷の空間にとらわれている。その中にいる彼女はすでにぐったりしていた。

 

「やっときましたか・・・」

 

ドクルンは二人の姿を視認すると、白衣にポケットを入れていつもの表情を見せ始める。

 

「でも、できるんですかぁ? 彼女のお手当て」

 

グレースとスパークルがちゆの方をみると・・・。

 

「ぅぅ・・・ぅぁ・・・ひゅぅ・・・ぅぅ・・・」

 

ちゆはもはや弱々しく、今にも呼吸が止まりそうな勢いだ。肩や髪が若干凍りついているように感じる。

 

「ちゆちゃん!!」

 

「ちゆちー!!」

 

「ペギタン、ここで休んでて!!」

 

グレースとスパークルはちゆの方へと駆けつけようとするが、二対のメガビョーゲンが手を組んで二人へと振り下ろす。

 

「!!」

 

二人は飛び退いてかわすも、メガビョーゲンは手を離すと手のひらを広げてそれぞれ左右に動かして、叩きつけようとする。

 

グレースは飛び退いた後に、飛び上がると飛び蹴りのモーションをしてメガビョーゲンへと突っ込む。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「メガ・・・!?」」

 

真ん中の握っているもう一つの手へと当たり、よろけるメガビョーゲン。

 

「はぁっ!!」

 

「「メガー!?」」

 

交わしたスパークルがさらに黄色のエネルギーを放ち、追撃をかける。

 

「「キュアスキャン!!」」

 

キュアグレースのステッキであるラビリンの目が光る。これはメガビョーゲンの中にいるエレメントさんを見つけるためのもの。なのだが・・・。

 

「え・・・なんで? エレメントさんが見つからない・・・!?」

 

「どういうことラビ・・・!?」

 

戸惑うグレース。メガビョーゲンであれば、普通はエレメントさんを見つけ出せるはずなのだが、なぜか二対になっているメガビョーゲンのどちらにも存在しなかった。

 

「うぇぇ!? 嘘でしょ!?」

 

「これじゃあ、メガビョーゲンが浄化できないニャ・・・!」

 

どうして・・・? そう考えているうちに、メガビョーゲンはお互いの手を合わせると赤いオーラを集め始め、球状のオーラを放った。

 

「「メガー!」」

 

「「ああぁぁぁぁ!!!」」

 

爆発したオーラに吹き飛ばされる二人。立ち上がろうとするグレースに、メガビョーゲンはお互いの手のひらをそれぞれ二人へと叩きつける。

 

「きゃあぁ!!」

 

「うわあぁぁ!!」

 

吹き飛ばされて地面へと転がる二人。

 

「グレース! スパークル! どうしよう、僕はどうすれば・・・!」

 

ペギタンは慌てながらちゆを見る。

 

「ぅ・・・ひゅぅ・・・ぅ・・・ぁ・・・」

 

彼女の呼吸が弱々しく、呻き声が多くなっていく・・・。病気に蝕まれ続けたせいか、体力も落ちていて、もうあと数分で呼吸が止まるだろう。すでに凍死寸前でもある。

 

「ふむ、どうやら今回のメガビョーゲンは特殊なようですね・・・プリキュアが戸惑っています」

 

ドクルンはその様子を見て、顎を当てる。よく見通してみれば、エレメントさんがいる様子がない。

 

「早く助けないと・・・!」

 

グレースとスパークルは再び立ち上がる。

 

「なぜ助けようとするのですか? 楽にしてあげればいいじゃないですか。別に助けを求めているわけでもないのに・・・」

 

「大体、その女がこんなことになったのも、そこの泣き虫ペンギンがほったからしにしたからだろ。そいつをそうなるまで助けに来ないなんて、薄情な奴だブル」

 

ドクルンは冷めた言葉で二人への疑問を提示し、ブルガルはペギタンを非難する。

 

「!! 僕が、一緒にいなかったから・・・!」

 

ペギタンはスタッドチョーカーになっている同僚に指摘されて、落ち込んだ様子を見せる。

 

「友達だからだよ・・・!!」

 

「はい・・・?」

 

「ちゆちゃんは私の大事な友達なの! 私が無茶をしてときだってアドバイスをくれるし、私のことを気にかけてプリキュアとして一緒に戦ってくれたの!! 今度は私がちゆちゃんを助ける番なの!!」

 

「ちゆちーは最初、怖いと思ってた。でも、あたしのことを考えて言ってるってわかってから、優しいなって思うようになったんだよ。そんな友達を放っておけるわけないじゃん・・・!!」

 

「それにペギタンは、ちゆのことを本気で心配していたラビ!! だから、薄情な奴だなんて、ラビリンは思わないラビ!!」

 

「本当はペギタンは強い奴なんだよ!! だから、あんなにボロボロになってまで自分のパートナーを助けようとしたニャ! そんな思いをお前らがバカにしていいもんじゃない!! 俺らの友達をバカにするな!!」

 

グレースとスパークルはドクルン、ラビリンとニャトランはブルガルにそう反論すると、メガビョーゲンへと向かっていく。

 

「グレース・・・スパークル・・・ラビリン・・・ニャトラン・・・」

 

ペギタンは4人の言葉に瞳をうるうるとさせると、意を決して自分ができることを考えるとちゆの方を向く。

 

「ちゆー!! 病気に負けるなペエ!! 二人が頑張ってくれているペエ!! 僕も一緒に居るペエ!!」

 

ペギタンはちゆに大声で呼びかける。自分はパートナーがいなければ、非力なヒーリングアニマルだ。怪物相手に何もできはしない・・・。でも、彼女に声援を送って、自分の中の病気と戦う勇気を少しでも与えられれば・・・。そう思い、声援を送り続ける。

 

「やれやれ、それが残酷だと言っているのですよ・・・本当に論理的じゃない・・・」

 

「ふん、パートナーを得たからって随分と偉そうなことを言うようになったブル・・・」

 

人間はよくわからない。病気を治そうとして苦しめるくらいなら、いっその事楽にしてあげれば苦しまずに済むものを、わざわざ治して生かそうとする。その理由が大切だからだとか・・・医者の使命だとか・・・ドクルンは論理的ではないと一つも理解できなかった。

 

「はぁっ!」

 

「やあっ!」

 

二人はメガビョーゲンが振るう手を蹴りや拳で弾き飛ばし、飛び上がって同時に蹴りのモーションへと入る。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「「メガ!?」」

 

お互いの顔へとそれぞれの蹴りが直撃し、よろけて怯むメガビョーゲン。そのとき、握っている両手から赤黒いオーラが漂っていて、何やら顔みたいなものがチラチラと出てきそうになっているのが見えた。

 

「!? あれって、もしかして・・・!?」

 

グレースは何かに気づくと、ステッキを構えて肉球をタッチする。

 

「ラビリン!」

 

「ラビ!」

 

「「キュアスキャン!!」」

 

キュアグレースのステッキであるラビリンの目が光る。再度調べてみると、握っている両手から漂う赤黒いオーラからサーチが集中していく。

 

「見つけたラビ! 氷のエレメントさんラビ!」

 

氷のエレメントさんが苦しんでいるのを発見した。

 

「え? どういうこと? エレメントさん、いたの?」

 

スパークルは見つからなかったはずのエレメントさんが見つかったことに疑念を抱いていた。

 

「そうか!エレメントさんはいなかったんじゃない! あいつの中に隠れてたんだ!!」

 

「あ・・・そ、そういうこと!!」

 

スパークルは理解しているのかは不明だが、とにかくエレメントさんを発見した。これで浄化をすることができる。

 

しかし、赤黒いオーラは握っている両手の中に引っ込もうとしていた。

 

「ああ! また隠れちゃうラビ!! グレース!!」

 

メガビョーゲンを引きずり出さなければ、そう思ったグレースは実りのエレメントボトルをステッキへとかざす。

 

「実りのエレメント!!」

 

ステッキにピンク色のオーラを纏った剣を出現させると、一目散に飛び出していく。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

メガビョーゲンに接近し、握っている両手を剣で切り伏せる。すると、二対のメガビョーゲンからピク色のオーラが点滅する。

 

「「メ、メガー!!??」」

 

「!? うわぁ!?」

 

二対のメガビョーゲンが握っている両手から赤黒いオーラが飛び出し、グレースは間一髪で避ける。

 

「メガー・・・」

 

二対のメガビョーゲンが氷と化して動かなくなったのと引き換えに、飛び出してきたのは不健康そうな顔をしている4本の棘が生え、悪魔の赤いツノとサソリの尻尾を生やした比較的小柄なメガビョーゲンだった。

 

無理やり引きずり出されたせいなのか、目を回して空中を漂っている。

 

「え、何、あのちっちゃいの!?」

 

「あれがどうやら本体みたいだぜ!」

 

スパークルは驚いたように言うも、ニャトランは確信を得ているのかあまり驚かない。

 

「ほう・・・そういうことですか・・・最近のメガビョーゲンは進化していますねぇ・・・」

 

「何を感心しているんだブル」

 

ドクルンはニヤけたような表情で言うも、ブルガルが呆れていた。

 

「スパークル、今だよ!!」

 

「あ、うん!!」

 

スパークルは我に帰ると、菱形の菱形の模様が描かれたエレメントボトルをそれぞれステッキにかざす。

 

「エレメントチャージ!!」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「ヒーリングゲージ上昇!!」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングフラッシュ!!」

 

スパークルはそれぞれ叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて黄色の光線放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、メガビョーゲンの中にいた氷のエレメントさんを優しく包み込む。

 

菱形状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんをそれぞれ外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「お大事に」」

 

氷のエレメントさんは元の場所に戻っていくと、氷と化した二対のメガビョーゲンの体は光となって消滅。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

ちゆの凍りついていた髪と肩は元に戻り、苦しそうな表情から安らかな表情へと変わる。赤くうごめく何かは沈静化し、寝息も穏やかなものとなった。

 

氷の空間は消滅し、壁に横たわるちゆだけが残された。

 

「ちゆちゃん!!」

 

「ちゆちー!!」

 

ちゆへと駆け寄るグレースとスパークル。そんな様子をドクルンは何とも言えない表情で見つめていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・ドクルン、帰るブル」

 

「・・・ふん、まあいいでしょう」

 

ドクルンにしては珍しく不機嫌そうな声を漏らすと、そのまま彼女たちに背を向けるが、ふとちゆの方を振り向く。

 

「フフフ・・・」

 

ちゆの中の蠢く何かがちゃんとあることを確認すると、不敵な笑みを浮かべながらその場から消えた。

 




あまり長くなってしまったので、今回はここで切ります。
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