ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
ビョーゲンズもお洒落をする、のか?
ビョーゲンキングダムーーーーそこでは、シンドイーネが何やら鏡を見ながら何かをしている模様・・・。
どうやら鏡の前で自身の悪魔のツノに、ドクロの形をしたアクセサリーの、それぞれ色の違うものをつけておめかしをしているようだ。
「うーん、どっちの色がキングビョーゲン様のお好みかしら?」
年頃の女の子みたいにお洒落をして見比べていると、そこに嫌味な声が聞こえてくる。
「へっ、好みもなにもあるか」
「は・・・?」
「キングビョーゲンと言っても、今はボヤッとした塊だ」
「はぁ・・・!?」
背後から声をかけたのはグアイワルだ。今日も上司に心酔ばかりしている彼女に小馬鹿にしたような言葉を吐いてくる。
「いいんですぅ~!! ちゃんとあたしが体を取り戻すんだから!!」
「へっ、せいぜい頑張るがいい」
噛み付こうとするシンドイーネに、最後まで小馬鹿にしたような言葉を返してその場を去っていく。
「~~!! 何よぉ~!!」
グアイワルの言葉に気分を害したシンドイーネは、鏡に向き直りながら不機嫌そうな顔をする。
「・・・おばさんが、何、似合わないことしてるの?」
茶化されてただでさえ不機嫌なのに、さらに呆れたような声が聞こえてきたかと思うと、再び振り返ってみればそこにはこちらをジト目で見るイタイノンの姿だった。
「私だっておしゃれぐらいしますぅ~!! っていうか、おばさん言うな! あんただって小娘じゃないの!!」
余計にイライラするシンドイーネは、イタイノンに怒りをぶつける。
「似合わないことをするおばさんと違って、私はピチピチの小娘だからいいの」
イタイノンは特に怒ったような様子はなく、無表情ながらもどこか彼女を笑ったような様子だった。
「~~~~ッ!! 何よ、その哀れむような目は!!」
「ちなみに、どっちも似合ってないの」
彼女の嫌味を受け流され、ますますイライラとするシンドイーネだが、アクセサリーの指摘を受けて、再度鏡に向き直る。
「・・・あんたの言う通りなのが、ムカつくんですけどぉ・・・!」
頬を膨れさせながら、ドクロのアクセサリーをクルクルと回すシンドイーネ。
「大体、パパのご機嫌をとりたいんだったら、地球でも蝕みに行ってくればいいの。そうすれば、パパだって喜ぶの」
イタイノンは少し生意気っぽく返すと、その場を立ち去っていく。
確かにその通り、その通りなのだが・・・・・・。
「わかってるわよ!! そんなこと!!」
シンドイーネは涼しい顔をして去っていくイタイノンにムキになったように大声を張り上げたのであった。
「・・・うるさいおばさんなの」
イタイノンはうんざりしたようにその場を後にしていくのであった。
イタイノンは久々に人間の恐怖を味わおうと、勇気を出してすこやか市の隣町にある商業施設、ゆめぽーとへとやってきた。
以前、ドクルンから変な玉を食べさせられ、擬態能力を身につけた彼女は人肌の人間の姿で地球を出歩いている。もちろん、悪魔のツノやサソリの尻尾は生えていない。お菓子だと騙して無理やり食わされたのは正直あれだったが、まあこれはこれで使えると気にしないでおいた。
さて、当のゆめぽーとだが、前回来たときよりもいつにも増して人が多かった。
「・・・なんで今日はこんな人が多いの・・・?」
ビクビクしながら、商業施設の中を歩いていると気づいたのは、比較的若い小娘が多いというところ。
しかし、その客たちは服を見に来たわけでも、アクセサリーを見に来たわけでもなければ、スイーツを食べに来たわけでもない。なんでこんなに人が多いかは理解できそうになかった。
遂には、人ごみに入ったわけでもないのに、酔いそうになり壁に手をつく。
「はぁ・・・人が多くて虫酸が走りそうなの・・・」
「イタイノン、大丈夫ネム?」
顔色を悪くするイタイノンに、カチューシャのネムレンが心配する。
「心配はいらないの・・・これでも慣れたつもりなの・・・うぅ」
首を振りながら言うも、明らかに慣れたような感じではない。しかも、口を抑えて吐きそうになっている。
「早く!早く!」
「急がなきゃ!!」
ふと、年頃の子供の声が聞こえ、視線をそちらに向けてみるとどうやら駆け出してどこかに向かっているようだった。しかも、それはイタイノンの外見同様、比較的多い若い小娘・・・。
あの小娘の後をつけていけば、いつもより人が多い理由がわかるかもしれない。
「とりあえず、行ってみるの・・・」
「虚勢は張らなくてもいいと思うネム」
「うるさいの・・・いいから行くの・・・!」
ネムレンは遠回しに行くのを断念するという言葉の表れだったのだが、イタイノンはそれを一蹴するとよろよろと体を動かしながら、小娘の後を追う。
しばらく、出撃していなかったから快楽に飢えているのだろうか? ネムレンは心配でしょうがなかった。
小娘二人の後を追っていくと、そこにはなんとも可愛らしいゲートのようなものがあった。
「エンジェルフォト・・・さつえいかい・・・?」
すでに疲弊しているイタイノンがげんなりとした表情で入口の看板を見つめる。
つい最近できたというこのブースは、どうやら服やアクセサリーといったいろんなおしゃれなものを借りて写真撮影をするブースらしい。イタイノンの外見と同様の、若い小娘には人気となっているスポットなんだとか。
客がいつもより増えているのは、若い小娘がこんなに増えているのは、このブースが原因らしい。
「早く!!」
「ぴぃっ・・・!?」
妙に明るい声が聞こえ、思わず近くの柱へと隠れるイタイノン。声がした方を覗いてみると、そこには見覚えのある3人の姿が。
マゼンダ色の髪の少女の肩にピンク色のウサギがいて、藍色の髪の少女の肩には青色のペンギンがいる。あれは見間違えるわけがない、ヒーリングアニマル共であいつらはプリキュアの3人だ。
隠れているつもりだろうが、イタイノンから見れば丸見えである。
しかも、自分にとっては憎らしい栗色の髪の少女ーーーーキュアスパークルの姿もある。さっきの明るい声は彼女だったらしい。
「面白そう!私、やりたい!」
「あ・・・せっかくだけど、私は・・・」
マゼンダ色の髪の少女はやる気十分だが、藍色の髪の少女は参加を渋っている模様。そこをキュアスパークルが背後から二人の肩に手を置く。
「まあまあ、とにかくやってみてよ!絶対、楽しいから!」
「え・・・ちょっと・・・!?」
キュアスパークルに肩を押されてブースへと入っていく3人。
その様子を後ろで見つめていた、イタイノンの表情は無表情ながらも顰めているようだった。
「あいつらまでここにいるなんて・・・最悪なの・・・」
イタイノンはやはりげんなりとした表情をしていた。
今日は久しぶりに蝕もうと思っていたのに、まさかあいつらがここにいるなんて・・・ここでメガビョーゲンを出したとしても、快楽は味わえないだろう。どうにかできないものか・・・。
「大体、撮影会なんか何が楽しいの・・・?」
先ほどのキュアスパークルへの否定かどうかはわからないが、エンジェルフォトさつえいかいの存在を否定する。私には写真を撮られるなど、耐えられそうにない。ただでさえ、鏡も嫌いだというのに・・・。
「・・・・・・・・・」
「? ネムレン・・・?」
「・・・ニャトラン、あんなに・・・しそうな顔・・・」
ネムレンが黒いオーラを感じ、先ほどから黙っていることが気になってイタイノンが声をかけるも、カチューシャはブツブツと何かをつぶやいている。
「おい、ネムレン!」
「あ! な、何ネム?」
「どうかしたの・・・?」
イタイノンが声を少し荒げると、ネムレンが反応を返す。先ほどまで私に余計な心配ばかりしていたのに、何かあったのだろうか・・・?
「な、なんでもないネム・・・」
「・・・あっそう、なの」
明らかになんでもないような態度だったが、とりあえずいつもの調子で返しておくイタイノン。
そんなことよりも、この厄介な撮影会ブースをどうするかだ・・・。
「むぅ・・・ここは、人が多そうなの・・・」
入ってあいつらを偵察したいが、ここは狭い場所であるが故に人ごみも多いだろう。入った瞬間に揉まれて倒れかねない。そんなものは耐えられない。
一体、どうしたものか・・・。
ふと、カチューシャになっているネムレンのことを思い出すと、意外と知能のあるイタイノンはいいことを思いつく。
「ネムレン・・・」
「何、ネム?」
「お前、偵察に行ってくるの」
イタイノンが思いついたのはネムレンに探らせること、これなら確かにあいつらにはバレそうに済みそうだが・・・。
「え? でも、イタイノンがいないことには・・・」
「それはなんとかするの、とりあえず行ってくるの・・・!!」
「わ、わかったネム・・・」
イタイノンがいないことにはメガビョーゲンが出せないということを言いたかったが、言葉の意図を察しているイタイノンは荒げた声で返すと、押し切られたかのように肯定する。
イタイノンが人間嫌いで人見知りなのがわかっているネムレンは、カチューシャから小柄なヒツジへと戻ると、さらに自分の体を光らせる。
「うぅ・・・眩しいの・・・」
すると、ネムレンの姿が変わって大きくなっていき、3人のプリキュアと同じような年頃の少女へと変わっていく。光が晴れていくと茶髪の三つ編みツインテールの、メガネをかけた少女へと変わっていく。
眩しさに目をつぶっていたイタイノンは、光が晴れた後に相棒の姿を見ると思わず放心する。
「・・・・・・・・・」
「こ、これでどう・・・?」
「・・・・・・・・・」
「イタイノン・・・?」
人間の姿になったネムレンが、頬を少し赤くしながらイタイノンに声をかけるも、しかし彼女は何かを見入っていて、話そうとしない。
「は、恥ずかしい・・・!」
ネムレンはさらに顔を赤らめると頬に両手を当てて首を振りはじめる。
「ネムレン・・・」
「な、何・・・?」
「・・・・・・何でツノが出たままなの?」
「え・・・?」
恥ずかしがっていたネムレンが、イタイノンに指摘されるとネムレンは頭を触ると、自分の手に硬い感触が伝わってくるのがわかる。
そう、ネムレンのヒツジのツノだけは隠れていなかったのだ。
それに気づいた瞬間、リンゴのように顔を真っ赤にさせて、イタイノンに背を向け始める。
「み、見ないで~~・・・!!」
「帽子でも被ればいいの・・・そうすればツノは隠れるの」
「ふぇ・・・あ、そうか・・・!」
少しは頭を使えと言わんばかりにイタイノンが呆れたように言うとどこからか飛び出したのか麦わら帽子をかぶせる。ネムレンはどうして気づかなかったと言いたげな反応をし、その反応にイタイノンはますます呆れるばかりだ。
体に隠せないものは、他で隠せばいいとなぜ気がつかないのか・・・? ヒーリングアニマルはどこも無能ばかりだとイタイノンは思った。
「それはいいから、さっさと行ってくるの・・・!」
「わ、わかってるよ~~・・・!!」
イタイノンはそっぽを向きながら言うと、ネムレンは頬を膨らませながらエンジェルフォトさつえいかいの会場へと向かっていく。
「イタイノンも、人使いが荒いなぁ・・・」
ネムレンは文句を言いながらもエントランスから入ると、そこにはドレスゾーンや、アクセサリーのゾーンがあり、順番があるということでアクセサリーのゾーンから入ることにした。
「おしゃれなものがいっぱいあるなー」
ビーズメーカーでつくるアクセサリーやネイルシールのコーナーや、頭に身につけるものなどがいっぱいある。
「そういえば・・・・・・」
おしゃれなもの、ネムレンはその言葉からイタイノンの格好を思い出す。そういえば、イタイノンは見た目は年頃の女の子なのに、外見を気にしたことがない。
いつも紫色の髪のポニーテールで、ゴシックロリータの服だ。全く味気なく、女の子らしさが全くない・・・。
「そうだ・・・イタイノンのために似合うものを見つけてあげよう!」
ネムレンはイタイノンの偵察をそっちのけで、彼女に似合うものを探すことにした。
まず、ビーズメーカーは・・・・・・作るのは面倒臭そうだし、壊れそうだからやめておく。ネイルコーナーは・・・・・・特にそこまでのおしゃれをしなくてもいいかなと思うからやめておく。
結果、一番わかりやすいアクセサリーを見つけることにした。壊れにくいし、面倒なこともない・・・お気に入りを見つけてあげれば彼女も喜んでくれるはずだ。
では早速、ヘアーアクセサリーのコーナーへ。アクセサリーはリボンやらシュシュやら、ヘアバンドといったものまでいろいろとある。
気になったものをピックアップして鏡の前へと持ってきて、自分でつけてみようと思う。
麦わら帽子を外して、ヒツジのツノは見えてしまうが、この際は仕方がない。
まずは、水玉模様のリボン。鮮やかな水色で頭にもつけやすいが・・・。
「うーん・・・・・・地味かなぁ・・・」
リボンを外して別のものにする。次は、赤い花のような髪飾り。見た感じは、かわいいと思うが・・・。
「・・・イタイノンの趣味には合わないかな」
髪飾りはすぐに外して、次へ。ハート型のヘアクリップ。小さくてコンパクトだが・・・。
「・・・うーん」
いまいちだと思い、ヘアクリップも外す。
この他にもいろんなヘアーアクセサリーをつけてみるも、あまりいいものは見つからない。
「なかなか喜びそうなものがないなぁ・・・」
あまりイタイノンが気に入りそうなものを決めかねていると、その近くでは藍色の髪の少女が別の鏡の前でリボンを決めかねているのを見かける。
「!! プリキュア・・・」
正体がばれないように声を抑え、様子を伺う。
そこへ栗色の少女がヘアバンドを頭に乗せると、その少女はキラキラと輝かせていた。どうやら気に入った様子だ。
「私だって、似合うやつ見つけるもん・・・!」
とはいえ、あまり心にときめくものは見つからず、ヘアーアクセサリーを諦めて他の場所に行こうと思った時、黒いものが目に映った。
それは、黒と紫を基調とした蝶の形をした髪飾り。他のヘアーアクセサリーの中でも一際オーラを放っていた。
ネムレンはそれをゆっくりと手に取ると鏡の前へと戻り、髪へとつけてみる。すると、それをつけた自分とイタイノンの姿を重ねる。
・・・・・・・・・!!
「これだぁ・・・うん、これだよね・・・!!」
ネムレンは年頃の女の子のような笑顔を見せながら確信する。そうだ、これこれ、これは絶対に似合うはず・・・イタイノンもきっと喜ぶ・・・よし、持って行ってあげよう。
ーーーーああ、そうだ。私もお気に入りを探そうっと・・・。
ネムレンはそう言って再度アクセサリーブースで自分の合うものを探ろうとする。
「こっちは頭もお花畑ー!!」
「ふわぁ~! あははは!!」
と、そこへマゼンダ色の髪の少女が頭まるごとのお花畑のような髪飾りをしながら、栗色の少女が走ってきて・・・気づかなかった3人は・・・。
「! わぁ!?」
「ふわぁ!?」
体と体がぶつかってしまった。倒れることはなかったものの、マゼンダ色の髪の少女はぶつかったことに気づいて、栗色の少女と一緒に頭を下げ始める。
「「ごめんなさい!!」」
「あ、いえ・・・大丈夫です」
ネムレンはそう言ってアクセサリーが置いてある場所に行こうとするも、さっきの二人が気になっている。
(あの二人も、プリキュアだったよね・・・)
そう思いながらも、アクセサリーがたくさん置いてある場所に着き、そこからアクセサリーを選ぼうとする。
「えっと・・・私が合うのは・・・ん?」
床下から何か声が聞こえてくるのを感じ、クロスをめくって下を覗いてみると、そこには・・・。
(!! ニャトラン!!)
ニャトランたち3人のヒーリングアニマルが、アクセサリーをつけながらそこにいた。どうやら、人間たちに見つからないようにしているみたいだが・・・。
「アッハッハッハ!! エンジェルニャトラン参上!!」
「苦しゅうないラビ~」
「騒ぐと見つかるペエ・・・」
ニャトランは天使の輪っかをつけて天使を気取っている様子。ピンクのウサギーーーーラビリンはいろいろなアクセサリーをつけながらはしゃいでいた。
「・・・・・・・・・」
ネムレンはその姿を見ると無言のまま、クロスを元の位置に戻し、自分に合うアクセサリーを選び始める。
しかし、彼女の内では別の感情も蠢いていた・・・・・・。
(・・・ニャトラン、あいつらと嬉しそうにはしゃいじゃって・・・私のことなんかどうでもよかったんだ・・・)
ネムレンはめぼしい髪飾りをいくつか拝借し、鏡の前に戻ろうとしているときにこんな言葉を漏らした。
「・・・・・・嘘つき」
私がいなくなったときも、探してくれなかったくせに・・・!!
・・・ニャトランをあっち側に追いやった人間なんか、やっぱり自分勝手だ。他人のものをすぐに奪おうとして、返そうともしない。救う価値なんかないんだよ。
そう恨み言をふつふつと心の中に溜め込みつつも、ネムレンは髪飾りを選んでいく。
いろいろつけてみて選んでみた結果、最終的に選んだのは・・・・・・。
「うん・・・こっちの方が私に似合ってるなぁ・・・」
「おい」
ネムレンは頬を染めながら、嬉しそうな表情で鏡の中の自分を見つめる。
「このモコモコの丸こくって、私と同じヒツジの顔のあるアクセサリー・・・素敵だなぁ」
「ネムレン」
最終的に選んだのは、自分と同じモコモコの毛皮のように小さな髪飾り、可愛いヒツジの顔が描かれているものだ。
「これで、イタイノンにもこれを気に入ってもらえればーーーー」
バチッ!
「ひぃっ!?」
ネムレンは突然、肩を置かれて痺れるような感じがした。いや、実際に電気が走ってきて、体の芯まで痺れた気がする。
手を置かれた方をみてみると、そこにはイタイノンが顰めっ面でこっちを見ていた。
「・・・お前、何してるの?」
「イ、イタイノン!? な、なんでここに・・・?」
来ないはずの相棒が突然現れたことにネムレンは驚きを隠せない。
「・・・お前がいつまでたっても来ないから、私がわざわざ来てやったの。会場の外がだんだんと人で多くなって来たし・・・」
「そ、そうなんだ・・・」
ネムレンは冷や汗を垂らしながら答える。
「・・・プリキュアの偵察はどうしたの?」
「も、もちろんやってるよ! 人に溶け込むのに必要だから、こういうことしてたんだよ・・・!」
ネムレンは慌てて持っていたアクセサリーを隠しながら言う。
イタイノンは無言で周囲を見渡すと、心に落ち着きのないネムレンを再び睨む。
「・・・プリキュア、いないけど・・・?」
「え? ああ、うん、そうだね! 今はいないね! どこかに行っちゃった、の、かなぁ・・・?」
ネムレンは両手を慌ただしく振りながら答える。いい加減ごまかしが効かなくなって、慌て始めている。冷や汗もダラダラと垂れている。
イタイノンは右手に電気を纏わせると、彼女の右肩に手を置いた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??」
ネムレンの肩から電気が入っていき、痛いような感覚に襲われて体を震わせる。髪が逆立って、上に上がる。
イタイノンはそれを見やると、彼女と目をそらすようにそっぽを向く。
「言い訳はいいの・・・! とにかく、こんなところはとっととーーーー」
ゴシックロリータの少女はそう言いながら歩こうとしたが、ブースの外には人混みがいっぱいだ。若い娘たちが話し込んだり、満足そうにしたりしている・・・。
それを見たイタイノンは、体をプルプルと震わせ・・・・・・。
「え、ちょっ!?」
「・・・お、お前が盾になって、私を誘導するの・・・!」
「ちょっ、押さないでよ~~~・・・!!」
人と顔をあわせるのが苦手なイタイノンは、ネムレンの背中へ周り、彼女を押しながらアクセサリーゾーンのブースを出る。
ブースの外は人で溢れていた。しかも、イタイノンが見たときよりも多くなっている気がする。
そんないてもへばりそうな場所に出た後、プリキュアの3人を探そうとするイタイノン。もちろん、ネムレンを前へと押しながら、きょろきょろと見渡す。
「イタイノン、歩きにくいんだけど~・・・」
「我慢するの。減るものじゃあるまいし、なの」
ネムレンが可愛らしい声で不満を漏らし、イタイノンが黙って歩けと言わんばかりに制する。
そんな、やりとりを続けていると・・・・・・。
「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
「!!??」
突然黄色い声が響き、イタイノンがビクンと体を震わせる。声がした方を見てみると、どうやらそこはドレスブース、何やら女性たちが揉みに揉まれている模様。
「あれは何なの・・・」
「ドレスを奪い合ってるみたいだけど・・・」
そう、ネムレンの言う通り、この少女たちは撮影会のためにドレスの争奪戦を行っている。自分がとにかく可愛いものを着て、写真が撮りたい・・・そういう少女たちが安売りバーゲンの集まりなのだ。
そんな少女たちの戯れを見て、イタイノンは嫌悪感をあらわにする。
「そこまでして可愛いものにこだわる理由がわからないの・・・服なんかどれも着れば同じなの」
「そりゃ、イタイノンはおしゃれに疎いからそういうことが言えるんだけど・・・」
「・・・どういう意味なの?」
バチバチ!!
「あ、いや! 別にイタイノンの今の格好が似合ってないとか、そういうこと言いたいんじゃなくて!」
余計なことを言って、背中からピリピリと痛みを感じるのを危惧して言動がしどろもどろになるネムレン。
「の、のどかっち! 大丈夫!?」
「ふぇぇ・・・」
「・・・とりあえず、一旦外に出ましょう」
そんなことをしているうちに、マゼンダ色の髪の少女が目を回して、藍色の髪の少女と栗色の髪の少女に支えながらドレスコーナーを出る姿が見えた。
あれは、プリキュア・・・? もしかして、一人が人混みに酔って体調を崩したのか・・・?
イタイノンは通り過ぎていくのを見て、ニヤリと笑みを浮かべる。
今がチャンスなの・・・ここ一帯を蝕んでやるの・・・。
「ほら、早くドレスブース入って・・・奥に入るの・・・!」
「わ、わかったから、叩かないで~~・・・!!」
イタイノンは後ろからポンポンとネムレンの背中を叩いて進むようにしようとし、ドレスブースへと入っていく。
奥へ入っていく途中でドレスの争奪戦を展開する少女たちを、イタイノンは見つめる。
そんなに奪い合う価値のあるドレスなのか・・・人間というのは全く理解できない。どのドレスを見やっても、人間の趣味が悪いとしか言いようがない。
「あっちに、何か部屋があるよ」
ネムレンに指摘されて前を向くと、確かに何か小さな部屋がある。スタッフルームだろうか?
「あ、イタイノン・・・」
特に入っても意味はないんだろうが、何やら不快なものを感じ、後ろに隠れていたイタイノンが入り口のカーテンを部屋を覗く。何かないかと部屋をきょろきょろと見渡すと、木製の糸車が放置されているのが見えた。
この撮影会のドレスを作るためのものだろうか? にしては、古すぎて全く使われていないような感じがする。
「・・・・・・・・・」
イタイノンは糸車に近づくと、足元についている木製のペダルを踏んでみる。カタカタカタカタと音を立てながら、ホイールが回り始める。
ある程度動きを見た後、足を離してホイールの回転を止める。
・・・・・・使われてなくて、逆に生きてるって感じ?
イタイノンは顎を当てて不敵な笑みを浮かべる。
今はブースが開催されている・・・少女たちがいっぱい・・・プリキュアもあの様子だとしばらくはいない・・・。
ここで怪物を暴れさせれば、少女たちの恐怖を味わえるはず。ついでにここも私のものにできる・・・。
「随分、使われていない糸車だね」
他の場所を見ていたネムレンの言葉をよそに、イタイノンは糸車に再び向き直る。
「キヒヒ・・・今から私が使ってあげるの」
イタイノンは不敵な笑みを浮かべて、自身の右指を鳴らして擬態を解除する。
そして、両腕の袖をまるで埃を払うかのような動作をして、右手を開きながら突き出すように構える。
「進化するの、ナノビョーゲン」
「ナノナノ~」
ナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、糸車へと取り憑く。糸車が徐々に病気へと蝕まれていく。
「ああ・・・ああ・・・!!」
糸車の中にいる妖精、エレメントさんが病気へと蝕まれていく。
そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。
「メガビョーゲン!」
糸巻きの左腕とホイールの右腕を持ち、茶色の机のような体、そこから骨組みのような4本足の生えた、まるで馬のような形のメガビョーゲンが誕生した。
「メガー!!」
メガビョーゲンはスタッフルームの入り口を破壊して飛び出すと、ドレスブースへと馬のように駆け出していき、両腕を横に振り回す。病気がばらまかれ、ドレスに赤い靄がかかっていく。
「うわあぁぁぁぁ!!」
「きゃあぁぁぁぁ!!」
怪物の存在に気づいた少女たちが逃げ出し始め、現場は悲鳴で溢れていく。
「メガー!!」
メガビョーゲンは両腕を振り回し続けて、病気をばらまいていき、触れられていないものはもちろん、少女たちが掴み合いをしていたドレスにも病気を蝕んでいく。
数分も経たないうちにドレスブースをほぼ赤一色に染めると、ブースの外へとジャンプして飛び出し、衝撃波を起こす。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「メガビョーゲン!!」
外で怪物から逃げ切れていない少女たちが悲鳴を上げて逃げていく。メガビョーゲンは不健康そうな顔から病気を吐き出し、立っている木や他の会場のテントも蝕んでいく。
「キヒヒ・・・いいのいいの、久しぶりの快感なの」
イタイノンは逃げ惑う人たちを見ながら、クスクスと笑う。しばらくは出撃できていなかったが、いざ出たとなると怪物を呼び出し、恐怖に怯える姿を味わうこの快感。
これは何度味わっても、飽きない・・・満足など当分できそうもない感じだ。
「あーあ・・・イタイノンに似合いそうだったのに・・・」
ネムレンは複雑そうな気持ちで赤くなっていく会場を見ていた。おしゃれに疎いイタイノンのために可愛いものをもっと見つけたかったのに・・・。
その漏らした声を聞き逃さなかったイタイノンはネムレンを睨む。
「・・・何か不満でもあるの?」
「い、いや! ないよ!! ない!」
ジト目のイタイノンに、慌てたように両手を前で振りながら否定する。
「・・・ふん。メガビョーゲン、もっともっと蝕むの」
イタイノンは鼻を鳴らしながらそっぽを向くと、メガビョーゲンに周囲をもっと病気にするように指示をする。
「メガー!!」
メガビョーゲンは両腕を振り回して病気をばら撒き、ゆめぽーとの壁、アクセサリーやネイルゾーンにあるものまで病気へと蝕んでいく。
(ああ・・・・・・)
ネムレンは、イタイノンに悟られないように、ひっそりと病気に染まっていく会場を口惜しそうに見るしかないのであった。
ひなたとニャトランは、のどかたちの元へと飛び出したラテを追って、ゆめぽーと近くのドッグランへと来ていた。
いきなりのどかたちの元から走り出したラテ。そのラテが走った先は多くの犬と飼い主たちが楽しんでいるドッグラン。彼女も他の犬たちと同様、遊びたかったらしい。
みんなを心配させてしまうので、少しだけ遊んで帰ろうと思った、その時だった・・・。
「クチュン!! クチュン!!」
「「!?」」
突然ラテの具合が悪くなった。これはビョーゲンズが現れ、メガビョーゲンが現れた兆しだ。
「「えらいこっちゃ~!!」」
ひなたとニャトランはラテを連れて、急いで人目のつかない林の中へと移動する。
「ひなた、ラテ様を診察だ!」
「うん!」
ひなたは聴診器をラテに向ける。
(あっちの方で綺麗な色の石が泣いてるラテ・・・くるくると回る機械が泣いてるラテ・・・)
「くるくると回る機械って何だ?」
「綺麗な石?って、まさか・・・!」
エンジェルフォトさつえいかいの会場には宝石のイヤリングが置いてあり、もしや、そこが襲われていると思った2人は走ってゆめぽーとへと向かうのであった。