ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
・・・・・・痛い。
・・・・・・何か、誰かの声が聞こえるような気がする。
・・・・・・痛いのはもう嫌だ。
・・・・・・痛い。
・・・・・・なんだか、誰かに体を揺さぶられるような感じがする。
・・・・・・痛いのはもう嫌だ。
・・・・・・痛い。
ザザ・・・ザザ・・・ザザ・・・。
・・・・・・何やら映像があたしの頭の中に映し出される。
ーーーあれ? でも小さい頃のばっかだね? 最近のは?
ーーーああ、休んでた間はあまり撮らなかったから。
ーーーごめん! そうだよね・・・! 本当ごめん!!
・・・・・・何だか、胸がチクチクするような感覚がする。
・・・・・・痛いのはもう嫌だ。
・・・・・・痛い。
ザザ・・・ザザ・・・ザザ・・・。
・・・・・・何やら、また映像があたしの頭の中に映し出される。
ーーーーねえ二人とも! 今からちょっと付き合って!!
・・・・・・あたし、何であんなこと言ったんだっけ?
・・・・・・痛いのはもう嫌だ。
・・・・・・痛い。
ザザ・・・ザザ・・・ザザ・・・。
・・・・・・何やら、また映像があたしの頭の中に映し出される。
ーーーー面白そう!私、やりたい!
ーーーーあ・・・せっかくだけど、私は・・・
ーーーーまあまあ、とにかくやってみてよ!絶対、楽しいから!
・・・・・・何だか、胸の痛みが増した気がする
・・・・・・痛いのはもう嫌だ。
・・・・・・痛い。
ザザ・・・ザザ・・・ザザ・・・。
・・・・・・何やら、また映像があたしの中に映し出される。
ーーーーこっちは頭もお花畑ー!!
ーーーーふわぁ~! あははは!!
・・・・・・何だか、胸がズキズキと痛む。
・・・・・・痛いのはもう嫌だ。
・・・・・・痛い。
ザザ・・・ザザ・・・ザザ・・・。
ーーーーのどか!! のどか、大丈夫!?
ーーーーふぇ・・・・・・。
ーーーーのどかっち? のどかっち、大丈夫!?
・・・・・・胸がガンガンと痛む・・・・・・。
・・・マジヤバに痛い・・・苦しいくらい痛い・・・!
・・・・・・痛いのはもう嫌だ。
・・・・・・痛い。
ザザ・・・ザザ・・・ザザ・・・。
・・・・・・何? あたしにまだ見せたいものがあるの・・・?
・・・・・・いやだよぉ、もういやだ、見たくない・・・・・・!
・・・・・・もうあたしに、誰も構わないで・・・!
・・・・・・もう放っておいてよ・・・・・・!!
・・・・・・痛い・・・・・・苦しい・・・・・・痛い・・・・・・!
「そんな・・・嘘だよね? ねえ、ひなたちゃん! ひなたちゃん!!」
ひなたの肩を強く掴んで前後に強く揺らすグレース。目の前の少女の悲惨な表情は、グレースの加減を忘れさせた、しかし、彼女はアクションどころか、リアクションすらもない。
そんな様子をイタイノンは空中で見つめていた。ひなたの体の中には淀んだ赤い何かが蠢いていて、彼女の体を蝕んでいるようだった。
あのプリキュアーーーーキュアグレースが体を揺さぶっているようだが、ひなたは全く反応を見せず、動く気配も全くない。
「キヒヒ・・・このまま成長して、永遠に壊れていればいいの」
イタイノンはその様子を見ながら、不敵な笑みを浮かべる。そして、彼女を救おうとしているあのプリキュアを叩きのめしやろうと、ホイールに当たって倒れているメガビョーゲンに向き直る。
「メガビョーゲン、何やってるの? そいつを一思いに潰してやるの」
「メガァァァー!!」
イタイノンの声にメガビョーゲンは立ち上がると、黒いオーラを上げながら足を踏み鳴らした後、グレースの方へと飛びかかる。
「グレース!!」
「!?」
ひなたに構っていて、背後にいるメガビョーゲンに気がつかなかったグレースは防御体制も取れないまま、両腕をかばうようにして目をぎゅっと閉じる。
「ふっ!!」
「メガ!?」
フォンテーヌが横から飛び蹴りを繰り出し、メガビョーゲンを吹き飛ばす。そして、ひなたの元へと駆け付ける。
「ひなた!!」
フォンテーヌがひなたに近寄るも、彼女の死んでいる表情を見て絶句する。
「まさか、そんな・・・・・・」
「これはもしや、精神に深刻なダメージを負ってるかもしれないラビ・・・!」
「これでお手当てできたとしても、ひなたは・・・・・・」
ラビリンとペギタンが瞳をウルウルとさせながら言う声が、グレースの耳に入っては抜けていく。
「嘘だよ・・・嘘だよ!!」
ひなたちゃんが壊れたなんて認めたくない・・・・・・だから、グレースはそれを否定するかのように彼女の体を揺さぶっていく。
「ひなたちゃん・・・・・・!ひなたちゃん・・・・・・!」
しかし、いくら揺さぶってもひなたが反応を示すことはない。彼女の表情は一筋たりとも動かず、何も変わることはない。
「キヒヒ・・・・・無駄な努力はやめるの」
イタイノンは彼女たちに近づいて嘲笑を浴びせる。
「そいつはいい痛がりっぷりだったの。私の腕を振りほどこうと惨めにもがいて、足をだらしなく暴れださせたりなんかして、本当に最高の瞬間だったの。もっと見ていたかったのに、残念なの・・・・・」
「!?」
「ッッッッ!!!」
イタイノンの残酷な言葉に、グレースは唖然としたような表情を浮かべ、フォンテーヌは全身が震えるほどの怒りの表情を浮かべていた。
フォンテーヌはステッキを水色に光らせて、イタイノンにめがけて発射する。
「メガー!!」
そこへ態勢を立て直して、イタイノンに庇うように立ったメガビョーゲンが右腕を振り回して、光線を弾く。
「はぁぁぁぁ!!!」
フォンテーヌはすぐさま飛び出して、メガビョーゲンに蹴りを食らわせる。
「メガ!!??」
蹴りの速さがあまりにも速かったため、メガビョーゲンは防ぎきれずに突き飛ばされる。
「・・・・・グレース、ひなたをお願い」
「・・・・・うん」
フォンテーヌは厳かな声でそれだけ言うと、ビョーゲンズの方へと駆け出していく。
「ひなたちゃん・・・・・」
グレースは動かないひなたを抱きしめながら、目から一筋の涙を流した。
「はぁ!!!」
「メガ!!」
一方、フォンテーヌはステッキから水色の光線を照射する。メガビョーゲンは右腕を振り回して光線を弾く。
「ふっ! はぁぁぁぁぁ!!」
「メガァ!?」
その隙にフォンテーヌは近くにある街路樹の幹を蹴って飛び出すと、メガビョーゲンに横から飛び蹴りを食らわせる。直撃したメガビョーゲンは吹き飛ばされる。
バチバチバチバチ!!!
「ふん!」
そこに空中から降りてきたイタイノンが、フォンテーヌに向かって黒い電撃を放つ。
「ぷにシールド!!」
フォンテーヌは肉球型のシールドを展開して、電撃を防ぐ。
「これはどう?なの」
イタイノンは電気を纏いながら体を回転させると二つに分裂した。
「え、イタイノンが・・・・・!?」
「二人に増えたペエ・・・・・!?」
「ふっ・・・・・!!」
「うっ・・・・・!!」
どうしてかも考える間も無く、一体のイタイノンが雷の速さで拳を突き出してきた。フォンテーヌはなんとか直撃は防ぐも、そこへもう一体が光速で近づいて蹴り上げる。
パリンッ!!!
「あっ・・・・・!!」
肉球型のシールドは破壊され、フォンテーヌは上空へと吹き飛ばされる。
「メガ、メガメガメガメガメガメガメガ!! ビョーゲン!!」
そこへメガビョーゲンが体を高速回転させ、ホイールを上空のフォンテーヌへと目掛けて投げつける。
「!?」
フォンテーヌは空中でなんとかホイールをかわすも、そこへ2体のイタイノンがいつの間にか現れ、フォンテーヌの周囲を回った後、姿を消す。
「え・・・・・?」
フォンテーヌが動揺した、次の瞬間・・・・・!!
「がはっ!ぐふぅっ!! きゃあぁぁぁぁ!!!」
2体のイタイノンが上空から雷を纏いながら、フォンテーヌに次々と蹴りを入れる。防御体制を取れなかったフォンテーヌは腹と胸に連続で食らい、最後に腹に蹴りを食らって地面へと落とされた。
「フォンテーヌ! 大丈夫ペエ!?」
「ぐっ、うぅ・・・・・!!」
地面へと叩きつけられたフォンテーヌはなんとか立ち上がろうとする。
そこへ2体のイタイノンが地面へと降り、統合して一体のイタイノンへと戻る。
「ふん、あんなうるさいやつ助けて何の意味があるの? ああいうやつは、すぐに場を引っ掻き回して、一人で勝手に突っ走って他人に迷惑をかけるだけなの。私たちを倒そうとするなんて、お門違いにも程があるの」
「ッッッッ!!!」
イタイノンの冷酷な言葉に、フォンテーヌの心に怒りの火がつき始める。
「ふ、ふざけない、で・・・・・ふざけないでよ!!」
「・・・・・?」
「私の友達をあんな風にしておいて、どうしてあなたたちは笑ったり、そういう表情ができるの!? あなたたちこそ、他人を病気で苦しめようだなんてお門違いだわ!!」
フォンテーヌの言葉に、押され気味になるイタイノン。
「それに私は、ひなたを一度も迷惑だなんて思ったことはないわ!! あの子はむしろ、私にいい経験をさせてくれたの!! 最初はドレスなんてって思ったけど、途中からとてもワクワクしたの!! それに一人で突っ走ったのはあの子が一生懸命だからよ!! あなたに立ち向かったのだって、大切なものを守るためよ!! 人のことを知りもしないあなたに、私の友達をバカにしないでッ!!!!」
「っ・・・・・!!」
続くフォンテーヌの怒りの言葉に、イタイノンは動揺する。彼女の頭の中に一つの映像がフラッシュバックしたのだ。
ーーーー子供が遊ぶような場所で黄色いリボンをつけた少女が、笑顔でこちらに手を差し出してくれた。
ーーーー暗い夜道の中、手を引っ張ってくれた黄色いリボンの少女。
「イタイノン!!」
イタイノンはしばらく動揺した表情をしていたが、ネムレンの声にハッとなると首をブンブンと振り、フォンテーヌを睨む。
「ごちゃごちゃとうるさいの!! 他人のことを考えないのはみんな一緒なの!! メガビョーゲン!!」
「メガー!!」
メガビョーゲンは馬のように足を上げると、そのまま4本足で駆けていきながらフォンテーヌへと突進攻撃を繰り出す。
「ぷにシールド!!」
「くっ・・・・・!!」
フォンテーヌは肉球型のシールドを再度展開すると、メガビョーゲンの突進攻撃を抑える。
「ふん・・・」
そこへイタイノンが横から体に電気を帯電させると、前かがみになってからのけぞらせた後、口から黒い電気のレーザーをフォンテーヌに向かって放つ。
「・・・・・!?」
メガビョーゲンを抑えようとするフォンテーヌに、黒い電気のレーザーが迫っていき・・・・・。
ドォォォォォォン!!!!
土煙が立つほどの爆発を起こした。
一方、ひなたの側にいるグレースは・・・・・。
「ひなたちゃん・・・・・」
グレースは考えていた。思い出したくはないが、クルシーナが私に病気を蝕もうとしたとき、彼女はどういう動作をしていたか。確か、口づけを交わしていたような気がする。
グレースはひなたに向かって、口づけを交わしてみる。プリキュアの私でもそういうことはできるのかな・・・・・?
「んぅ・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
お願いだから戻ってきてほしいと、彼女に願う。
しかし、そんな願いの口づけは彼女には何も影響を与えなかった。彼女の目は一筋たりとも動くことはなく、表情が変わることもない。
「ひなたちゃん・・・・・」
ひなたを見つめていても、彼女の表情は変わることはない。真っ黒な瞳が、闇で包まれているだけだ。
「いやだ・・・こんなのいやだよ・・・!!」
グレースはひなたを再び抱きしめ、そんな彼女の瞳からはボロボロと水のように涙がこぼれ、ひなたの顔へとポタポタと垂れていく。
「ひっく、ぐすっ・・・まだ私、撮影会でドレス、何も選べてないよぉ・・・・・。ちゆちゃんと一緒に写真も撮ってないし、ひなたちゃんにおしゃれをした私の姿も見てもらってない・・・・・。私、ひなたちゃんが迷惑かけたなんて思ってないよ・・・・・ひなたちゃんがいない撮影会なんて嫌だよぉ・・・・・!!」
グレースは聞こえているかどうかわからないひなたへの気持ちを吐露する。
「ひなたちゃん、今日はずっと自分のことそっちのけで・・・・・可愛いアクセサリーとか・・・・・私たちに合うの、見つけてくれたよね・・・・・。私、楽しすぎて、胸がいっぱいになったんだよ・・・・・本当はありがとうって言いたかったの・・・・・私たちのために夢中になっていろんなことをしてくれて、って・・・・・」
そんな彼女への気持ちを吐露していると、そこへやってくる一つの影が。
「ひなた・・・ん・・・くっ・・・」
ボロボロになっている黄色い猫。それはグレースが抱いているひなたのパートナー・・・・・。
「ニャトラン!!」
「一体、どこに行ってたラビ!?」
「いや、悪い・・・ちょっとメガビョーゲンの攻撃が激しくて、まいっちまってなぁ・・・」
ニャトランはメガビョーゲンの電撃が原因なのか、ステッキ越しに浴びてしまい、気絶してしまっていたのだ。今でも、ダメージが残っているのかフラつきながらこちらへやってきたのだ。
ニャトランはひなたに近寄ると彼女の肩へと登ると、ひなたの頬を抱きしめる。
「ひなた・・・俺、お前と出会ったとき、おっちょこちょいなやつだなって思ったけどさ・・・同時に面白いやつだって思って、そういうお前だからプリキュアとして一緒にお手当てしたいって思ったんだぜ・・・? だから、俺の心の肉球にキュンっと来たんだ・・・」
ニャトランはひなたへの気持ちを吐露すると、彼女の頬から顔を離す。
「だから、戻ってきてくれよ、ひなた・・・。俺、本当はお前がいないと何にもできねぇよ・・・。グレースだって、フォンテーヌだって、ラビリンとペギタン、ラテ様だって、お前が戻ってくるのを待ってるんだぜ・・・」
ニャトランの言葉に同調して、グレースも彼女のことをぎゅっと抱きしめる。
「そうだよ・・・私、ひなたちゃんのこと大好きだよ・・・」
グレースが精一杯の気持ちを表現する。
「クゥ~ン・・・」
体調が悪そうなラテがひなたを気遣うように彼女の足元に寄り添う。
しかし、これでもひなたの様子が変わることはない。
「うぅぅ・・・・・・」
グレースを始め、誰もが、そう思った・・・そのとき・・・・・・。
「グレー、ス・・・ニャ・・・ト・・・ラン・・・」
ひなたの口から弱々しい声が漏れ、手の指がわずかにピクリと動き出す。
「ひなたちゃん!?」
「! ひなた!!」
ひなたがわずかに動き出したことに気づく二人。私たちの声が届いたのか・・・?
ひなたの暗い瞳からは涙がこぼれ、右手をゆっくりと伸ばす。その手はガクガクと震えていたが、確かにこちらに伸ばしていた。
口元もわずかだが、微笑んでいるような感じがする・・・・・・。
「いっしょ・・・・・・に・・・・・・」
「!! ああ・・・」
ニャトランはひなたのわずかな言葉を聞くと彼女の腕へと移動して、彼女の指に触れた。
その瞬間、3人を黄色い光が包み始めた・・・・・・。
・・・・・・痛みが続いている。苦しい。
・・・・・・痛いのは嫌だ。
・・・・・・痛みが続いている。苦しい。
ーーーーそんな・・・嘘だよね? ねえ、ひなたちゃん! ひなたちゃん!!
・・・・・・誰が叫んでいる声が聞こえる。
・・・・・・痛いのは嫌だ。
・・・・・・痛みが続いている。苦しい。
ーーーー嘘だよ・・・嘘だよ!!
ーーーーひなたちゃん・・・・・・!ひなたちゃん・・・・・・!
・・・・・・誰が泣き叫んでいる声が聞こえる。
・・・・・・目の前で、グレース、のどかっちが泣いている。
・・・・・・痛いのは嫌だ。
・・・・・・痛みが続いている。苦しい。
ーーーー私は、ひなたを一度も迷惑だなんて思ったことはないわ!!
ーーーー人のことを知りもしないあなたに、私の友達をバカにしないで!!!!
・・・・・・また、別の誰かの声が聞こえる。
・・・・・・フォンテーヌ、ちゆちーが小さな子を相手に怒っている。
・・・・・・痛いのは嫌だ。
・・・・・・痛みが続いている。苦しい。
・・・・・・あたしの唇に、グレースの唇が重なる。
・・・・・・おかしいな。痛い。でも、気のせいじゃない。
・・・・・・もう放っておいて。放っておいてよ。
・・・・・・痛みが続いている。苦しい。
ーーーーまだ私、撮影会でドレス、何も選べてないよぉ・・・・・。ちゆちゃんと一緒に写真も撮ってないし、ひなたちゃんにおしゃれをした私の姿も見てもらってない・・・・・。私、ひなたちゃんが迷惑かけたなんて思ってないよ・・・・・ひなたちゃんがいない撮影会なんて嫌だよぉ・・・・・!!
・・・・・・グレース。あたしが無理やり連れてきたのにそんなことを思っていたなんて。
・・・・・・でも、そのせいでグレースはフラフラになって、あたしは頭をさげることになった。
・・・・・・痛い。胸が痛い。心が痛い。
・・・・・・痛いのは嫌だ。放っておいてよ。
・・・・・・痛みが続いている。苦しい。
ーーーーひなたちゃん、今日はずっと自分のことそっちのけで・・・・・可愛いアクセサリーとか・・・・・私たちに合うの、見つけてくれたよね・・・・・。私、楽しすぎて、胸がいっぱいになったんだよ・・・・・本当はありがとうって言いたかったの・・・・・。
・・・・・・あたしが無理やり連れ出して、グレースが苦しい思いをしてると思ったのに。
・・・・・・グレースに嫌われたと思ってた。口では優しいあんなことを言っていたけど、本当は責めたくないだけで、心の底で怒ってるんじゃないかと思ってた。
・・・・・・あたしが勝手に思ってただけだったんだ。グレースはそんなこと思ってなかったんだ。
・・・・・・グレースは心の底から楽しんでくれていたんだ。
ーーーーひなた・・・
・・・・・・別の声が聞こえてくる。この声は、ニャトラン?
ーーーー俺、お前と出会ったとき、おっちょこちょいなやつだなって思ったけどさ・・・同時に面白いやつだって思って、そういうお前だからプリキュアとして一緒にお手当てしたいって思ったんだぜ・・・? だから、俺の心の肉球にキュンっと来たんだ・・・
・・・・・・ニャトラン・・・・・・。
・・・・・・あたしはダメな子だと思ってた。でも、ダメなところもニャトランは認めてくれたんだ。
ーーーーだから、戻ってきてくれよ、ひなた・・・。俺、本当はお前がいないと何にもできねぇよ・・・。グレースだって、フォンテーヌだって、ラビリンとペギタン、ラテ様だって、お前が戻ってくるのを待ってるんだぜ・・・。
・・・・・・ニャトラン。
ーーーー私、ひなたちゃんのこと大好きだよ・・・。
・・・・・・グレース。
・・・・・・フォンテーヌ。
・・・・・・そうだ。あたしは戻らないと・・・・・・。
・・・・・・可愛いものも、友達も守るって決めたんだから。
・・・・・・動いて! あたしの体、動いてよ!!
「グレー、ス・・・・・・ニャ・・・ト・・・ラン」
・・・・・・手を伸ばして! 約束守らなきゃ!!
「いっしょ・・・・・・に・・・・・・」
・・・・・・一緒に守ろう! みんなで一緒に!!
その瞬間、あたしの周囲は光に包まれていった・・・・・・。
「メガー!!」
「きゃあぁぁぁぁ!!!」
メガビョーゲンの振り回した両腕に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられて転がるフォンテーヌ。イタイノンとメガビョーゲンの二人の攻撃を受け続け、すでに体は傷つきボロボロだ。
「フォンテーヌ!!」
「くぅぅ・・・・・・!!」
立ち上がろうとするフォンテーヌに、メガビョーゲンが近づいてくる。
「もう諦めるの。お前がいくら頑張っても、あいつは元に戻らないの」
イタイノンが倒れているフォンテーヌを嘲笑する。
「私、は、諦めない、んだから・・・・・・!!」
「・・・もういいの。メガビョーゲン、とどめを刺すの」
「メガー! メガメガメガメガメガメガ!! ビョーゲン!!」
立ち上がろうとしているフォンテーヌに、イタイノンはため息をつき、メガビョーゲンに指示。メガビョーゲンは支柱を高速回転させると、右腕のホイールをかなりの速度で投げつけた。
フォンテーヌは迫ってくるホイールに防御動作を取ることができず、目をぎゅっと瞑る。
ドカーーーン!!!!
ホイールは激突し、大きな音を立てる。
「・・・ふん、呆気ないやつだったの・・・!?」
イタイノンはそう言って勝利を確信するが、ホイールを抑えている音が聞こえてきて異変を感じる。
土煙が晴れるとそこには二人の人物が肉球型のシールドを展開して、ホイールが衝突するのを食い止めているではないか。
その相手はキュアグレースと、自身が精神を壊したはずのキュアスパークル・・・。
「ありえないの・・・私が壊したはずなのに・・・!?」
イタイノンはキュアスパークルが再びプリキュアに変身して、フォンテーヌの前に立っていることに驚愕した。
「「はぁぁぁぁ!!」」
二人はぷにシールドを押しのけて、ホイールを後ろへと弾いた。そして、二人はフォンテーヌの方へと振り向く。
「フォンテーヌ、大丈夫!?」
「スパークル!! 元に戻ったのね!!」
フォンテーヌはスパークルが元に戻ったことに、歓喜の表情を見せる。
「グレースとあたしの頼りになる相棒のおかげでね!」
スパークルはピースサインを見せながらニッコリと笑顔を見せる。フォンテーヌは傷ついた体を起こして、ステッキを構える。
イタイノンは悔しそうな表情を見せていた。
「ッッッッ!! 今更、戦えるようになったって同じことなの! メガビョーゲン!!」
「メガー!!」
メガビョーゲンは高く飛び上がると、3人を押しつぶそうと上から落下する。
「「「はぁ!!」」」
3人は分散しながらかわすと、それぞれのイメージカラーの光線を放つ。
「メ、ガ!? メガ!!」
光線は顔に当たって怯むメガビョーゲンだが、すぐに態勢を立て直して馬のように前足を上げると駆けながら突進をしようとしていた。
「っ!!」
「ひゃあ!!」
猛スピードで迫ってきたメガビョーゲンにスパークルはかわし、グレースは戸惑いながらもなんとか避ける。
「メガビョーゲン、こっち!!」
「メガァー!!!」
スパークルはメガビョーゲンを挑発し、自分に追いかけてもらうように仕向ける。メガビョーゲンはスパークルの狙い通り、彼女の跡を追っていく。
ゆめぽーとに隣接する建物の近くへと走っていくと壁際のところでスパークルはメガビョーゲンへと向き直る。メガビョーゲンはスピードを一度も緩めることなく突っ込んでいく。
そして、スパークルとの距離がわずかに迫ったとき、彼女はそのまま飛び上がってメガビョーゲンの体の上に手をついて一回転すると、背後へと飛ぶ。
「メ、メガーーーーーー!!??」
メガビョーゲンは目の前に壁に気づくも、スピードを緩めることができずそのまま建物の壁へと思いっきり激突した。その衝撃で右腕の糸車が壊れてしまう。
「ああ・・・!?」
「糸巻きが壊れちゃったネム!!」
イタイノンとネムレンの二人はメガビョーゲンが攻撃手段を失ったことに動揺していた。
「「キュアスキャン!!」」
フォンテーヌはその隙にステッキの肉球にタッチして、ステッキのペギタンの顔をメガビョーゲンへと向ける。ペギタンの目が光り、メガビョーゲンの中で苦しむエレメントさんを見つける。
「木のエレメントさんペエ!!」
エレメントさんの位置は、メガビョーゲンの不健康そうな顔がついている支柱の真ん中あたりだ。
「糸車なのに、木のエレメントさんなの・・・?」
「きっとあの糸車、木で出来てるのよ」
「ああ、そういうこと!!」
スパークルの疑問にフォンテーヌが答えると、彼女は納得する。
「よ、よいっ、しょっと、えい!!!」
グレースは近くに落としていたホイールを持ち上げると、メガビョーゲンへと放り投げる。
「メガッ!!??」
ホイールはメガビョーゲンの顔面にブロックされ、怪物は目をぐるぐると回す。
「グレース、すごーい! 力持ちだねー!!」
スパークルは巨大なホイールを投げ飛ばしたことに感心していた。
「ついでにこいつもあげる!! 氷のエレメント!!」
フォンテーヌは氷の模様がついたエレメントボトルをステッキにかざす。
「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」
ステッキから氷の力をまとった青い光線が放たれる。4本の足も立たなくなっているメガビョーゲンに、光線は直撃し怪物はあっという間に氷漬けになる。
「今よ!スパークル!!」
「お願い!!」
「さあ、行こうぜ!スパークル!!」
「うん!!」
スパークルは菱形の模様が描かれているエレメントボトルをステッキにかざす。
「エレメントチャージ!!」
そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。
「ヒーリングゲージ上昇!!」
ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。
「プリキュア!ヒーリングフラッシュ!!」
スパークルは叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて黄色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。
その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、メガビョーゲンの中にいた木のエレメントさんを優しく包み込む。
菱形状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんを外へと出す。
「ヒーリングッバイ・・・」
メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。
「「お大事に」」
木のエレメントさんは元の場所に戻っていくと、病気で蝕まれた撮影会の会場やゆめぽーとは元の色を取り戻していく。
そして、スパークルの中を蝕んでいた病気も消えていく。
「ワゥ~ン!」
体調不良だった子犬ーーーラテも額のハートマークが黄色から水色に戻り、元気になった。
「・・・ふん、今日はこのぐらいにしておいてやるの」
イタイノンはスパークルの中に赤く蠢く何かがパチパチと小さな音を立てて、まだ残っているのを確認しておく。
「ねえ、イタイノン」
「何? なの」
「私、もうちょっと会場にいたいネム・・・」
「ふざけるな、なの。もう撮影会はうんざりなの・・・」
「そうだよね・・・ネム・・・」
イタイノンとネムレンはそんな会話をしながら、その場から姿を消したのであった。
「やったね、スパークル!!」
「・・・・・・・・・」
グレースはスパークルに近づいて声をかけるが、その瞬間、スパークルの体がふらっと仰向けに倒れていく。
「!? スパークル!!」
グレースはとっさに走って、彼女の体を受け止める。
「スパークル! 大丈夫かよ!?」
「あ、あはは・・・ちょっと、安心したら力が抜けちゃった・・・」
スパークルはかすれた声で言葉を紡ぐ。イタイノンに痛めつけられ、病気に蝕まれていたスパークルはそんな痛む体を押してまで戦っていた。メガビョーゲンを浄化したことで自分の中の病気が沈静化し、その反動で力が抜けてしまったのだ。
特になんともないことに気づき、グレースが安堵の表情を浮かべる。
「スパークル! 大丈夫なの!?」
フォンテーヌが近づいて彼女を心配する。
「フォンテーヌこそ大丈夫なの? 体、ボロボロじゃん・・・」
スパークルはむしろそうなるまで、ビョーゲンズと戦ったフォンテーヌを心配していた。フォンテーヌも安堵の表情を浮かべる。
そしてその後、ゆめぽーとのエンジェルフォトさつえいかいは再開され、少し休んだのどかたちは撮影会に再び参加し、楽しい時間を過ごしたのであった。
廃病院の寂れた屋上、そこではクルシーナが退屈そうに寝そべっていた。
「はぁ、退屈。なんか面白いことないかしらね・・・」
クルシーナはそう言いながら、足を外へとぶらぶらとさせている。ウツバットをからかうのも飽きて、人間界へわざわざキュアグレースの種の様子を見に行ったが、少し成長している様子を拝見できて嬉しかったことしか頭に残っていない。
私たちの病気で染め上げられた赤黒い空を見上げたとしても、不健康そうなものが徘徊しているだけで面白いものが飛んでいるわけでもないし、荒廃した街に行ったとしても生気は感じないので、楽しいものは何もない。ここには面白いものはないようだ。
・・・適当に眠って、気が向いたら出撃するか。
クルシーナはそう思って横になり、一眠りしようとするが、そこへ屋上への扉の音が聞こえて、そちらを振り向いてみるとゴシックロリータの少女が感情のない顔で入ってくるのを感じた。
「・・・イタイノン?」
「・・・クルシーナ? ここにいたの?」
「アタシがいちゃダメなわけ?」
「・・・別に」
イタイノンはそう言うとクルシーナの横に座り込んで、荒廃した景色を眺め始めた。
クルシーナは当たり前のように横に来たイタイノンに文句を言おうとして言葉を止め、彼女の頭に異変があるのを感じた。
「あんた、その髪飾りどうしたの?」
イタイノンの髪には黒と紫を基調とした蝶の形の髪飾りがされていた。
「・・・秘密なの」
「ちょっとぉ、どこで手に入れたか教えなさいよー。ここにいてもいいからぁ」
「・・・どんなに病気の人間を注ぎ込んだって、教えてあげないの」
イタイノンはそっぽを向く。まだ、誰にも見せたことがないような頬を染めた少女の顔をしながら。
ーーーーこれ、あげる・・・。
ーーーー何これ? なの
ーーーー蝶の髪飾り。イタイノンに合うと思って持ってきたの。
ーーーー・・・しょうがないからもらってあげるの。
本当は人間にまた一時的に戻ったネムレンがくれたものなのだが、イタイノンは心の中で人間の行動の観察として付けておこうと思い、もらってやることにしたものだ。クルシーナにはもちろん、ドクルンやあいつらにも内緒だ。
「ねえねえ、教えろよぉー。そんな可愛い格好しちゃってさあー」
「・・・暑苦しいから離れるの」
クルシーナはイタイノンの後ろから首を回して抱くようにしながら、甘い声を出す。イタイノンは顰めた顔をしつつも、クルシーナを離そうとしない。
クルシーナとはいえ、間接的に褒めてくれた彼女に悪い気はしないと思い、機嫌がいいのではなさないことにした。
そんな時だった・・・・・・。
バサバサバサバサバサバサ・・・・・・!!
「・・・ん?」
「・・・?」
なんだか空が騒がしいと思い、二人はじゃれ合いを止めて赤黒い空を見上げてみると何やら黒い何かが蛇のようにジグザグと大流しながら、こちらに向かってくるのが見えた。
それは何やら非常に不健康そうで、とても不気味だ。まるで群れをなして飛ぶ鳥のように隊列を崩さずに、集まって空を飛び回っていた。
その黒い大流は二人に近づいていき、彼女たちの前でゆっくりとスピードを落としていくと、彼女たちの眼の前で止まる。この大流はよく見ると大量のナノビョーゲンが先頭にある何かの核に集まってできたようなものだ。
「何? この荒廃した街を飛び回る、ストームビョーゲンが何の用?」
クルシーナは女の子の顔から、不機嫌そうな表情へと戻る。また、何か面倒臭いことでも持ってきたのか。
「ナノ~」
ビョーゲンストームと呼ばれた大流は、先頭のナノビョーゲンが蠢いていて見え隠れしているような核のようなものから映像を映し出す。
そこにはこの荒廃した街のどこかであろう場所で、一人のボロボロの白衣を纏った男性が何かから走って逃げていくような光景が見えた。
二人はこの男性の姿は見たことがあるし、誰なのかを知っている・・・・・・。
「・・・クルシーナ、こいつ・・・!」
イタイノンは無表情から一気に不機嫌そうな表情へと変わり、黒いオーラを迸らせる。
「へぇ、あいつ、まだ病気にやられてなかったんだぁ?」
クルシーナは、映像を見ながら獲物を見つけたような不敵な笑みを浮かべるのであった。
ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございます。
私も飽きずにここまで書けたのはプリキュアという作品がそういう魅力を秘めているのではないかというふうに思います。プリキュアという作品の二次創作が書きやすいという点もあるかもしれませんね。
さて、いつもはやらない次回の告知を二つ、あらかじめしておきます。
一つは、次回は原作の第10話と第11話をベースとしていく話になりますが、全部で9話もしくは10話で構成していくことを予定しております。後半は完全オリジナルの話にしていきたいと考えており、そこでビョーゲン三人娘の根源に迫っていく話にしていくことを予定しております。彼女たちは一体、何者なのか? そこで少しこれまでの伏線も回収して、見えていく話にしていきます。これまでの話でもヒントはあるので、これまでの話を読み返しながらご覧いただければと思います。
二つ目は、上記の話が終わった後、ビョーゲンズの新しいオリジナル幹部を一人、そして話を少し経た後もう一人ビョーゲンズを登場させる予定です。詳しいことはまだ言えませんが、三人娘と同じくらいクセのあるキャラクターとなっていますので、登場を楽しみにしていただければと思います。
最後の一つ、本編を投稿する前にビョーゲン三人娘を絡んだ本編とはあまり関係ない番外編を投稿したいと思っております。こちらは今後も投稿していき、基本1話完結の番外編になります。興味がある方は覗いていただければと思っております。
しかし、こちらの仕事がもうすぐで忙しくなりそうな関係上、本編を完成させるのは少し時間が必要になるかと思っております。それでも、この話はみなさまになるべくお届けできるように、早く完成させていきたいと思っております。
今後の話も期待していただければと思います。
もちろん、感想や評価、ご指摘もお待ちしております。
どうぞ、今後ともよろしくお願い致します。