ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第10話、第11話がベースとなります。


第23話「襲来①」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・!!!!」

 

森の中で一人の男性が何かに追われるように走っていく。

 

その森の上からは黒い大流のようなものが蛇のように隊列を作りながら、男性を追いかけていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・!!!!」

 

男性は自分の後から迫ってくる黒い大流が迫ってくるのを確認しながら、息を切らせながら走っていく。

 

しかし、黒い大流は纏わりつくようについているナノビョーゲンが赤い目を光らせると、男性の走りよりもスピードを上げて、呆気なく男性を追い抜く。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・!!!」

 

男性は黒い大流が森の上から入り、こちらに向かってくるのを視認すると、間一髪のところで大流を避け、地面で受け身を取って転がると、再び走り出す。

 

黒い大流は小回りよくUターンをすると、男性の後ろへと迫っていく。

 

男性は追いつかれまいと走り出すも、黒い大流は男性よりも早く距離はすぐに詰められていく。森の広いところへと出ると、そこにある石でできた小屋の前に立ち、扉を開けて待ち構えるように立つ。

 

そこへ黒い大流が猛スピードで迫っていき、男性はそれを確認すると大流が近づいてくるギリギリの距離で横へと避ける。小屋の中へと大流が突っ込んでいき、石の小屋が大流と共に吹き飛ぶ。石の小屋はバラバラとなり、大流の核は生き埋めになった。

 

「そう簡単に私を病気に蝕めると思うなよ!」

 

男性は石の小屋によって大流が動けないのを確認すると、再び赤くなっている森の中へと走り出して姿を消していく。

 

ドォォォォォォォォン!!!!!!

 

しばらくすると大流は小屋の残骸を吹き飛ばし、森の上へと出て上空へと上がる。大流は空中でサークルを作りながら、消えた男性の行方を探すように纏わりつくナノビョーゲンが目を赤く光らせる。

 

黒い大流は男性を探すべく、蛇のような隊列を作りながら街の方へと飛んでいったのであった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲンキングダムーーーーそこではここ最近、キングビョーゲンの姿を全く見ていない幹部たちの姿がいた。ダルイゼン、シンドイーネ、グアイワル、そしてクルシーナ、ドクルン、イタイノンのビョーゲン三人娘だ。

 

「はぁ・・・最近、キングビョーゲン様にお会いできなくて寂しい・・・」

 

岩場に座って暗い空を見上げるシンドイーネは愛しのボスの姿を見れなくて、つまらなそうな表情でため息をついていた。

 

「ハッ・・・ちっとも成果を出さないお前の顔なんか見たくないんじゃないか?」

 

そんなシンドイーネの思いを近くにいた、グアイワルが横柄な態度で小馬鹿にする。

 

「はぁ!? アンタに言われる筋合いないんですけどぉ! 自分だってろくな結果出してないくせに!」

 

できていないのはお互い様だと言わんばかりにシンドイーネも顰めた顔で言う。

 

「俺は寂しくないから、構わんのだ!!」

 

「地球を蝕めたかどうかの話ですぅ~! 話そらすのやめてもらえますぅ~?」

 

明らかに動揺したグアイワルに、今度はシンドイーネの方が嫌味っぽく返す。

 

「俺が小さい男みたいな言い方はやめろ!! 大器晩成型なだけだ!!」

 

グアイワルはムキになってシンドイーネに怒り出す。

 

「あーあ、また始まったよ。ホント懲りないわね・・・」

 

岩場で寝そべっていたクルシーナが呆れたような声を出す。

 

「毎回毎回、くだらない喧嘩を聞かされるこっちの身にもなってほしいの・・・」

 

イタイノンはゲームを行っている手を思わず停止させて、二人の喧嘩に辟易していた。

 

「あの二人の喧嘩は今に始まったことではありませんが、こっちの邪魔になるようなことはしないでもらいたいですねぇ・・・」

 

ドクルンは知恵の輪を動かしながら、いつもの口調で二人の喧嘩について言葉を返す。

 

「うるさっ・・・巻き込まれないうちに仕事へ行くか・・・」

 

クルシーナと同じように岩場に寝そべっていたダルイゼンは不快感を覚えると、言い合いに巻き込まれるのを避けるかのように立ち上がって人間界に向かうべくその場を離れた。

 

「付き合ってらんないわ、ホントに・・・」

 

クルシーナもそう言って立ち上がり、その場を後にしていく。

 

「おばさんと筋肉バカはいつまでも言い合ってればいいの」

 

イタイノンもうんざりしてゲームをしまい、クルシーナと同じ方向へと歩いていく。

 

「私も論理的ではない喧嘩など、見苦しいだけなので」

 

ドクルンも立ち上がって、知恵の輪をしながら同じ方向へと歩き去っていく。

 

一方、二人蚊帳の外へと置かれたシンドイーネとグアイワルは・・・。

 

「だったら見せてやろうじゃないか!! 俺の器の片鱗を!! キングビョーゲンが俺に惚れても知らんぞ!! 」

 

「やってみなさいよ! 私は私の方がお役に立てるってことを証明してやるんだから!!」

 

どっちがキングビョーゲンを満足させられるかで、睨み合うシンドイーネとグアイワル。

 

「・・・・・・ホントくだらない」

 

クルシーナは二人の聞こえた言葉に、ぼそりと声を漏らすのであった。

 

そんな彼女は人間界に向かうべく歩いており、彼女のそばにはドクルンとイタイノンの姿もあった。

 

「何? アンタらも行くわけ?」

 

「別にいいじゃないですかぁ。何人いたって困るものでもないでしょう」

 

「・・・何か問題でもあるの?」

 

「別にないけど・・・今日のビョーゲンズは妙にやる気があるわね。普段からそういう威勢を見せればいいのに・・・」

 

クルシーナは二人が着いてくることに対しては特に気にしなかったが、ビョーゲンズの普段の行動に呆れたような様子を見せていた。

 

「連続して失敗するのを気にしているのではないですかねぇ」

 

「・・・私も疲れているときは地球になんか行きたくないの」

 

「そういうことしてるから、お父様だって呆れて出てこないんじゃないの?」

 

二人の勝手な意見に、クルシーナの呆れた様子は変わらない。こいつら、本当に地球を自分たちのものにする気があるのだろうか?

 

ふと、クルシーナが思い出したかのように足を止める。

 

「ああ、そうそう、ドクルン。アタシたちがいるアジトの近くに、アタシたちがのものにしたあの町、襲撃したときのこと覚えてる?」

 

「もちろんです。忘れるわけがないじゃないですかぁ」

 

「一人だけ病気から逃れて取り逃がしたやつがいたじゃない? そいつ、あの町をまだのさばってるみたいよ」

 

「!・・・あの男が、ですか」

 

ドクルンは驚いたような表情を見せた後、口調が落ち着いたものとなり、表情も無感情なものとなる。

 

「ええ。だから、アタシがストームビョーゲンにその男を引っ捕えるか、病気に蝕むように言ってんだけど、森の中で見失ったみたい」

 

「・・・その男の目的は? ただ逃げ回ってるだけってことでもないですよね?」

 

「さあね・・・でも、アタシたちのアジトに入ろうとしてる感じだし。地下の隔離室にいるあの娘を狙っているんじゃないの?」

 

クルシーナが適当な憶測をつけると、ドクルンが足を止める。

 

「・・・あの狸じじいめ、それで私たちに勝てると思っているのか・・・」

 

「? どうしたの、ドクルン?」

 

「何か、調子でも悪いの?」

 

ブツブツと喋るドクルンに、クルシーナとイタイノンが振り返る。

 

「いえ、ただの独り言です。ところで、二人とも・・・」

 

「「?」」

 

「ちょっと私に、協力をしてもらえませんかねぇ・・・?」

 

いつものような調子に戻ったドクルンのニヤけ顏に、クルシーナとイタイノンは首をかしげるばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクルンは姿を現した場所は、どこかの美術館であった。しっかりと人間に擬態し、悪魔のツノやサソリの尻尾は隠れた状態のままである。

 

いつものように、生気の溢れるものの気配を辿ってきたのではあるが、こんな人の手で作られたものがあるところに生きているものがあるとは思えない。

 

「ふむ・・・・・・」

 

今は多くの絵が展示してあるフロアに来ているようだが、どれもこれも価値のある絵とは到底思えなかった。所詮、人間の描く絵など当人の自己満足に過ぎないのに。

 

「ここはあまりの意味のあるものがあるとは思えないわねぇ・・・」

 

「人間ってセンスがない奴らだブル・・・」

 

ドクルンもブルガルも、二人揃って美術品をつまらなそうに見ている。ドクルンに至っては哀れむような笑みを浮かべているため、そのように見ているかどうかは不明だが・・・。

 

その後も絵を見るが、特にドクルンに刺さるものはなく、絵が飾ってあるフロアを後にする。

 

窓が多く連なっている廊下を歩いていくと、ふとドクルンは足を止めて外を見る。何やら外にも生気の溢れるものの気配を微量に感じたのだが、見えているのはただ木が植えてあるのが見えるだけだ。

 

「ドクルン、どうしたブル?」

 

「いえ、何でもないわ。気のせいよ」

 

ドクルンはそう返すと、廊下を歩いていく。次に着いたフロアはどうやら陶芸品が展示してあるフロアのようだった。

 

「ほう・・・これは・・・!」

 

ドクルンの視界に映るのは色とりどりの陶芸品の数々。まるでサファイアのような花瓶とエメラルドのようなグラス、そして雪のようなオブジェ・・・どれもキラキラと輝いている。

 

人の手で作られたものなのにまるで、生き生きとしている感じだ。

 

「ふむ、どれも輝いてるわねぇ。まるで生きてるみたい」

 

「眩しすぎて逆に不快だブル」

 

美術品に興味がないドクルンが思わず見入ってしまうほどの輝き。しかし、ブルガルはその価値がわからず、声で不快感をあらわにするだけであった。

 

「それは私が初めて実用品じゃないものを作った思い出の作品なの」

 

「そうなんですか?」

 

作品の一つをどうしてやろうかと眺めていると声が聞こえてきたので、振り返ってみるとバンダナをつけている女性が、マゼンダ色の髪の少女たち3人に何やら説明をしていた。

 

どうやら彼女がこの陶芸品たちを作った人らしいが・・・・・・それよりも・・・・・・。

 

「おや? あの娘たちもいたのね」

 

「本当にどこにでも現れるやつブル」

 

よくよく見てみると、あの3人はプリキュアではないか。どうしてここにいるのかは不明だが、学校の制服を来ているあたり、学校の何かで来ているのだろう。

 

ここでメガビョーゲンを発生させても意味がないと考えつつも、彼女たちの様子を見やる。

 

「私がこの道に進もうと決めたのは、こういう美しいガラスを見て、自分も作りたいと思ったからなの。ちょうどあなたたちぐらいの頃ね」

 

マゼンダ色の髪の少女と藍色の髪の少女、二人が微笑ましく思う。

 

「それで、仕事にして何年か経って、もっと可能性を広げたくなってフランスに留学した時、私も自分の感じたものをガラスで表現したいってたまらなくなってね。試行錯誤を繰り返して、ようやく完成させた作品なのよ」

 

「ふわぁ~」

 

「技術と情熱の結晶なんですね!」

 

「午後の体験学習も、ぜひ参加して行ってね!」

 

「「「はい!」」」

 

女性とプリキュア3人で、女性の素晴らしい話を聞いているのをドクルンは眺めていて、彼女は女性の表情に注目していた。

 

「ほう・・・芸術を話すときの彼女は生きているような感じがするわねぇ」

 

「俺もそう思うブル」

 

ドクルンは不敵な笑みを浮かべながら、あの女性を病気に侵すとどうなるんだろうとワクワクしていた。

 

まあ、とりあえずそれは、デザート代わりというわけではないが、取っておくとして・・・・・・ドクルンは先ほど感じた生気の気配を考えていた。

 

「ふむ・・・・・・」

 

「どうしたブル?」

 

「いえ。さっきどこかで生気の溢れるものがある気配を感じたのよねぇ」

 

「この陶芸品たちじゃないのかブル?」

 

ドクルンは首を振る。

 

「違うわね。それは外から感じたから、少なくともここのものではないわ。まあ、ここも生気には溢れてはいるけどね」

 

ドクルンはそう言うと陶芸品の展示室を後にして、再度窓が連なった廊下を歩き出す。

 

そこで誰かとすれ違い、その相手は足を止めてこっちを振り返ってきた。

 

「ん? ドクルンか」

 

声をかけられたドクルンも立ち止まって振り返ってみると、見知った同僚の姿であった。

 

「おや? グアイワルではないですか。こんなところで何を?」

 

「当然、ここら辺を蝕みに来たのだ。あのやかましい女よりも先にメガビョーゲンを発生させて、あいつに俺の方ができるということを証明して、ほえ面をかかせてやるのさ」

 

グアイワルは横柄な態度で語る。

 

「お前ーーーーは、何だその姿は・・・?」

 

「これですか? 人間になっているんですよぉ。人間の施設に入って、生気の溢れるものを探すためには隠密行動も重要でしょう?」

 

グアイワルの怪訝な表情に、ドクルンはメガネを上に上げながらニヤリとする。

 

「・・・ふん、まあいい。そうだから、せいぜい俺の邪魔をしないようにな」

 

「そんなことするわけがないでしょぉ。ああ、そうだ。あなたの好きなキラキラと輝いているものがあっちにありましたよぉ」

 

グアイワルはそう言って牽制の言葉を言うも、ドクルンは小馬鹿にしたような甘えた声で答え、彼に情報を伝えるべく指をさす。

 

「ほう・・・それは都合がいいな」

 

グアイワルは不敵な笑みを浮かべると、そちらへと歩いていく。

 

しかし、ふと足を止めてドクルンの方を振り向く筋肉体質の幹部。その目は何やら彼女の方を気にしているような素振りだったが・・・・・・。

 

「・・・・・・?」

 

「・・・・・・ふん!」

 

グアイワルは鼻を鳴らすとそのまま陶芸の展示品の方へと歩き去っていく。

 

「フフ・・・・・・」

 

ドクルンはそれに笑みを浮かべると、彼とは逆方向に歩いていく。

 

「ドクルン、あいつにやらせちゃってよかったブル? 先を越されるブルよ」

 

「光りものは彼の十八番でしょうから譲ってあげるわよ。私は生気の気配を知りたいの」

 

ドクルンは心配するブルガルにそう返す。例の気配を感じた場所に立ち止まると、窓の方をよく見る。

 

微量な生気の気配はするが、姿は全く見えていない。でも、確かに窓の外にその気配をわずかに感じるのだ。

 

「ふむ・・・・・・」

 

ドクルンは窓の外を見つめていると、ふと立ち入り禁止の張り紙が貼ってあるガラスの扉があるのが目に映り、そこから窓の外へと出ていく。

 

芝生を窓に沿って歩いていくと陶芸品の展示品があった方向へと歩いていくと、その生気の気配が大きくなっていく。

 

そして、植物が生えている向こうへと足を踏み入れると、そこには芝生に水を撒いているスプリンクラーがあるのが見えた。

 

「なるほど・・・生気の気配はこれだったのね」

 

「このスプリンクラーが、生気の気配ブル?」

 

「ええ。微量に感じたのはこれだったわ」

 

きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!

 

うわああぁぁぁぁぁ!!!

 

ドクルンが気配のモヤモヤが消え去ると同時に、何やら騒がしい声が建物の方から聞こえてきた。

 

「何だブル?」

 

「ふむ・・・どうやら向こうも始めたみたいですし、好都合ですねぇ」

 

ドクルンは今がチャンスと言わんばかりに、スプリンクラーに不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクルンが美術館にいる一方で、イタイノンは河川敷のところへと姿を現していた。

 

イタイノンも健康的な不快さを辿ってここにやってきたのだが、場所がわかりやすい大きな川だったのだ。

 

「・・・川なんか面白くもなんともないの」

 

それは川そのものを言っているのか、病気で蝕んでもあまり大したことはないので、それが面白くないと言っているのかはわからないが、イタイノンは川を興味なさそうに見ていた。

 

「でも、不快を感じたのはこの川からネム?」

 

「そうだけど、こんな大きな川じゃ頭の悪そうなメガビョーゲンが生まれそうなの」

 

イタイノンは河川敷の川を見つめながら不満を漏らす。大きな川じゃあまりにもありふれていて、いかにもなメガビョーゲンしか発生しない気がする。そんなプライドの低いことをするなんて、まっぴらごめんである。

 

そう思いながら、別の病気で蝕むことができるものを探していると・・・・・・。

 

「またアンタなの?」

 

背後から嫌そうな声が聞こえる。誰なのかがわかっているイタイノンは顔を顰めながら振り返ると、同じく不満そうな顔をするシンドイーネの姿があった。

 

「別にお前と場所を被せる気はないの」

 

「ふん、別にいいわよ。こっちに合わせてくれなくても」

 

イタイノンはシンドイーネに言葉を返すと、他に病気で蝕むことができるものをきょろきょろと探す。

 

「あんた、キングビョーゲン様の娘だかなんだか知らないけど、可愛がられてるからって甘えてんじゃないの? どういう風のふきまわしか知らないけど、全然侵略活動に興味もなかったのに急に盛んにやりだして、それでいて仲間に横柄な態度をとってるわ、出撃になっても自分の役割を果たさないやら、少しは私やあの方の活動に貢献しようとは思わないわけ?」

 

シンドイーネがそう問い詰めると、イタイノンは顰めたような表情で全部を聞いていた。その心中はどういったことを考えているのか、誰も理解できないだろう。

 

「・・・・・・別にお前にどう思われようと関係ないの。私は私、お前はお前、人それぞれなの。それに私もパパにはどういう扱われ方をしているのか自覚しているから、お前なんかに心配される筋合いなんかないの」

 

「・・・あら、ごめんなさい。そう聞こえちゃったかしら?」

 

シンドイーネは杞憂だったと言わんばかりに手を振る。

 

「・・・ふん、グアイワルとの勝負は邪魔する気はないから安心するの」

 

イタイノンはそれだけ言うとシンドイーネから離れて、他に蝕むものがないかどうかを探していく。

 

「・・・ふん」

 

シンドイーネは鼻を鳴らして彼女から背けつつも、再び彼女の後ろ姿を見つめる。

 

ーーーーお前たちに合わせたいものたちがいる。

 

ーーーーそこの3人はこれから私のために尽くしてくれる可愛い娘たちだ。

 

ーーーー彼女たちと一緒に、我々の種の繁栄を広げるのだ。

 

シンドイーネは、ダルイゼン、グアイワルと共に愛しのキングビョーゲンがあの3人を紹介したことを思い出していた。そのときのイタイノンの第一印象は、少し生意気そうな小娘。でも、どこか儚い感じを醸し出していた。

 

しかも、その娘たちはキングビョーゲンの娘と聞かされて、心の中で少し対抗心を持っていたのだ。

 

「・・・何よ、虚勢なんか張っちゃってさ」

 

どんどん小さくなっていく彼女に顰めた表情を見せている。本当はキングビョーゲン様にとって、あいつはどういう立ち位置なのかをなんとなく察していて、彼女なりにあいつのことを心配していたのだが、あんな態度を取られてはこっちもムカついてくる。こっちもつい怒ったような態度になってしまうのだ。

 

シンドイーネは彼女の背後を複雑そうに見つめていた。

 

一方、イタイノンは河川敷の橋から離れて、川に沿って歩いている。しかし、川以外に特に広がっているものは特にない。

 

「・・・川以外、何もなくてつまらないの」

 

「うーん・・・もういっそのこと川を蝕む?」

 

「それはあいつの仕事なの。私は別のものにするの」

 

ネムレンの言葉を蹴って、イタイノンは歩きつつ周りを見渡す。

 

とはいえ川以外、本当に何もない。まるで川が自分を蝕んでみろとでも言いたげな感じがしている。

 

「!!」

 

次の河川敷が見えるくらいのところへやってくると、何やら不快なものを感じた。自分のサソリの尻尾がピクンと反応したから、間違いない。

 

イタイノンは川とは反対の方向へと降りていく。すると、そこには大きな畑があるのが見えた。

 

「何かの畑ネム?」

 

「クルシーナが好きそうなところだけど、何か不快なものを感じるの」

 

畑の近くまで来ると、そこにはビニールでできた大きなハウスがあるのが見えた。不快なものを感じたのはそこからだ。

 

イタイノンはビニールハウスへと近づいて、飛び上がると屋根の上にパネルのようなものがあった。そこから不快な生気が濃くなった。どうやら正体はこれだったらしい。太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。

 

「これって、ソーラーパネルネム?」

 

「何それ? なの」

 

「太陽の光を当てて、電気を作り出すものネム。電気の供給の発電とかにも使われるネム」

 

ネムレンの話を聞いて、そのソーラーパネルとやらを黙って視線を戻すイタイノン。

 

「あいつを始末するにはぴったりの逸材なの、キヒヒ」

 

イタイノンは、アジト周辺でのたまわっている男を消すにはいいもの、と不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、クルシーナはとある森の中へと現れていた。特にめぼしいものがあるわけでもない普通の森林だ。

 

もちろん、ドクルンやイタイノン同様、地球の不快な生気を辿って瞬間移動をしてきたわけだが、森の中は植物だらけで生気の溢れる環境だらけだ。

 

「・・・こんなところ、不快なものだらけのオンパレードじゃない」

 

クルシーナは周囲を見渡しながら不快感をあらわにする。こんな普通の森に一際不快なものを辿ってみようとすると、林の中に何かあるのを感じ、そちらの方へと歩いてみる。

 

広い場所へと出ると、そこには芝生に一面に黄色が広がるほどの、たんぽぽの花が咲き誇っていた。

 

「・・・へぇ、こんなところにも花が咲いてるんだ」

 

「随分と綺麗な場所だウツ」

 

「ふん、アタシが育ててる花の方がよっぽど綺麗よ」

 

森林の中で育っているから、本当に生きてるって感じ。

 

そんな風に感じていると、風を切ったような音が聞こえ、そちらの方向を見てみると木の上にダルイゼンがいるのを見かけた。

 

「・・・ダルイゼン?」

 

「何、お前もいたの?」

 

ダルイゼンはクルシーナがいることに気づくと、彼女の隣へと飛び降りる。

 

「そうよ。不快な生気を辿ったら、ここに来たってわけ」

 

「ふーん」

 

クルシーナの話を、特に興味がなさそうに返すダルイゼン。正直、ダルイゼンもそれを辿ってきたわけで、それが原因でクルシーナと被ったわけだが、まあいいとすら感じる。

 

「・・・お前さ」

 

「何よ?」

 

「最近、無理をしてるって感じがするけど・・・」

 

「は?」

 

ダルイゼンが唐突に思ったことを口にすると、クルシーナが不機嫌そうな顔をさらに顰める。

 

「俺の思い違いだったら、別にいいんだけど・・・」

 

「何それ? 意味わかんないんだけど?」

 

不機嫌そうな口調で返すクルシーナ。なんでこいつに心配をかけられないといけないのか、全くもっ訳がわからなかった。

 

「アタシは正常よ。バカにすんなっての。アタシはお父様の娘なんだから」

 

クルシーナはそれだけ言うと林の中へと戻っていく。

 

「別にそういう意味で言ったんじゃないんだけど・・・」

 

ダルイゼンは歩いていくクルシーナの背中を、顔は無表情だが、何か思うところがあるように見つめていた。

 

ーーーーなあ、お前ってさあ。

 

ーーーー・・・何よ?

 

ーーーー病気で染まった花や植物が好きなの?

 

ーーーーそうよ。悪い?

 

ーーーー・・・別に。それにしても、綺麗に育ってるじゃん。

 

ーーーー思ってもいないお世辞なんかいらないっての。

 

ーーーー俺は割と本気なんだけどな。

 

ーーーー!!・・・ふん!

 

あいつと初めて話したのは正直覚えてないが、三人娘がキングビョーゲン様に紹介されて、そのすぐ後だった気がする。他人に構われるのが大嫌いな可憐な少女だった。

 

何で話しかけたのかは皆目見当もつかないが、どこかで会ったことがあるような感じがした。としか、言いようがなかったから。

 

キングビョーゲン様からある程度は聞かされてはいるが、あいつはあのお方に使われる幹部の一人らしい。特に興味がないからあまり考えたことはないが、大層な名前をつけられた上に、その立場であるあいつはどう感じているのだろうか。

 

ダルイゼンはふとクルシーナが立っていた部分の地面を見ると、何かが落ちているのが見え、それを拾い上げる。それはあいつがいつも身につけている、黒いチューリップの髪飾りであった。

 

「・・・やっぱあいつ、無理してるじゃん」

 

ダルイゼンはクルシーナが消えた林の奥を見ながら、ぼそりと呟いた。

 

一方、クルシーナは森林の中をうろうろとしていた。

 

「ここは不快なものだらけねぇ。頭の悪いメガビョーゲンしか生まれそうな気配がしないんだけど」

 

「どこ見渡したって、木ばっかりウツ」

 

不快な生気を辿っても、そもそもここら辺一帯が不快なものだらけなのだ。その中で一際不快なものを見つけるなど、面倒なこと極まりない。

 

不快感に当てられて萎える前に、クルシーナは上空へと飛び上がって森から抜け出す。他に何かないか見渡してみると、森の東の方に何か小屋みたいなものがあるのが見えた。

 

「・・・何、あれ?」

 

「行って見ればわかるウツ。へぶっ!?」

 

いちいちうるさいウツバットを拳で黙らせた後に、クルシーナは小屋の元へと飛んでいく。

 

小屋の前に立ってみると、それはレンガでできたような古風な小屋。近くにはテーブルと椅子があって、綺麗な池があった。

 

「ここに、一際不快なものがありそうね」

 

「ほくももふちゅふちゅとはんじるウツ・・・」

 

クルシーナが周囲を見渡すと、そこは生きてるって感じがするものばかり。ここならいいメガビョーゲンが生み出せそうだ。アジトの周辺をうろちょろしているあの男も苦しめることができるはず。

 

どれを蝕もうかと思ってきょろきょろとすると、そこにクルシーナが思う一際不快なものを見つけた。それはこの裏の裏にあった。

 

「・・・へぇ、こんなところにもこんなのが育つんだぁ?」

 

クルシーナが見ているのは、植えられていたバラの花の数々。茎にもトゲが生えていて、触ると痛そうだ。

 

この小屋には誰も住んでいないようだが、こんな森林の中で、小屋の中で育っているなんて、本当に生きてるって感じだ。

 

生きてるって感じがし過ぎていて・・・・・・なんだか、頑張って育てた感がある。本当に不快だ、実に不愉快な感じがする。

 

「アタシがもっと綺麗に染めてあげる、フフフ・・・・・・」

 

クルシーナは不敵な笑みを浮かべた。

 

こうして、それぞれ不快な生気を見つけたビョーゲン三人娘。仲が悪いかどうかは微妙なところもある三人の仕事が始まる。

 

ドクルンは、右指をパチンと鳴らす。

 

イタイノンは、両腕の袖を払うかのような動作をし、右手を構えるように突き出す。

 

クルシーナは、手のひらに息を吹きかける。

 

それぞれが異なる動作をし、黒い塊のようなものを出す。

 

「進化してください、ナノビョーゲン」

「進化するの、ナノビョーゲン」

「進化しろ、ナノビョーゲン」

 

「ナノデス~」

「ナノナノ~」

「ナ~ノ~」

 

それぞれのナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、美術館の庭園スプリンクラー、ビニールハウスのソーラーパネル、小屋の裏のバラに取り憑く。取り憑かれたものが徐々に病気へと蝕まれていく。

 

「わ、わ、わ、わぁぁ!ぁぁ!」

「キラキラキラぁ~~!?」

「ああ・・・ああ・・・!!」

 

それぞれのものに取り憑いているエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!!」

 

3体ものメガビョーゲンが誕生したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美術館にメガビョーゲンが現れたことをラテの体調不良から知ったのどかたちは、館内でビョーゲンズのグアイワルと彼の作り出したメガビョーゲンが暴れているのを発見。すぐさまプリキュアに変身し、すぐさまメガビョーゲンへと応戦を開始した。

 

メガビョーゲンの口から吐き出す病気を避けると、フォンテーヌは顔に蹴りを入れていき、スパークルはステッキから出す光の線で縛り付けて攻撃を浴びせた。

 

現場に呆然と立ち尽くしていた長良さんをなんとか離れさせ、グレースも現場に復帰。キュアスキャンをして、メガビョーゲンの中にいる光のエレメントさんの場所も特定。

 

こうして、メガビョーゲンはもう浄化間近・・・・・・と、思われていたが・・・。

 

「クチュン!! クチュン!!」

 

隠れていたラテが辛そうに2回くしゃみをしたのだ。

 

「ラテ、大丈夫!?」

 

「待ってて、サクッとお手当て終わらせちゃうから!!」

 

グレースとスパークルが気遣うように声をかけるも、さらに・・・・・・!!

 

「クチュン!! クチュン!! クチュン!!・・・クゥ~ン・・・クゥ~ン・・・」

 

辛そうにさらに3回くしゃみをしたラテは、何かを訴えるように弱々しく鳴き声を上げる。

 

「メーガー!!」

 

そんな中、メガビョーゲンは拘束を振りほどいて、病気を吐きつけて攻撃を繰り出す。

 

「「ぷにシールド!!」」

 

ラビリンとニャトランがすぐさま肉球型のシールドを展開すると、メガビョーゲンの攻撃を防ぐ。

 

「クゥ~ン・・・・・・」

 

弱々しく何かを訴えるように鳴くラテ。それが一番気になっていたのは、後方で構えていたフォンテーヌだった。

 

「ラテ・・・?」

 

「もしかして、またどこかでメガビョーゲンが・・・!!」

 

「・・・そうかもしれないわね」

 

「診察するペエ!」

 

「ええ!」

 

フォンテーヌは頷くと聴診器をラテを当てて診察してみる。

 

(水が噴き出す機械が泣いてるラテ・・・遠くのあっちで、大きな川が泣いてるラテ・・・家の青い板が泣いてるラテ・・・あっちの遠くで、黄色いお花さんが泣いてるラテ・・・お家の裏の赤いバラさんが泣いてるラテ・・・)

 

「!? なんてこと・・・!! グレース! スパークル! また別の場所でもメガビョーゲンが発生したわ!しかも、5体!!」

 

「「ふええっ!?」」

 

「うえぇ!?」

 

「ニャ!?」

 

なんということだ。美術館のメガビョーゲンを対処している最中、別の場所でもメガビョーゲンが発生したというのだ。ここまではいつものことだが、今回はなんと5体、つまりは・・・。

 

「つまり、メガビョーゲンが同時に6体現れたってことペエ!!」

 

「嘘・・・そんなに・・・!?」

 

一気にメガビョーゲンが出現したことに驚きを隠せないプリキュアたち。

 

ふと考えたのは、メガビョーゲンはプリキュア一人につき、せいぜい一体を抑えるのが精一杯。どうやっても、メガビョーゲンを止めるのは容易ではないだろう。

 

「ほう・・・シンドイーネはともかく、ダルイゼン、しかもクルシーナやイタイノンまで動いていたか・・・運が悪かったな、プリキュア!」

 

これはチャンスだと言わんばかりに笑みを浮かべるグアイワル。

 

これまでのビョーゲンズとの戦いよりも最大のピンチが、プリキュアたちを襲おうとしていたのであった・・・・・・。

 

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