ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
「メガー!!」
美術館で頭に二つに分かれたような管を伸ばし、オブジェのようにも見えるメガビョーゲンが管から赤い水を噴射して、外の木や植物、建物を病気へと蝕ませていく。
「フフ・・・・・・」
ドクルンはそれを見てメガネを上げながら、不敵な笑みを浮かべる。
「そういえば、グアイワルの方はどうなったんでしょうかねぇ」
ドクルンは陶芸品のところへと行ったと思われるグアイワルが気になって、館内の方を振り向く。
「・・・おや?」
ふと、その館内にバンダナをした女性が逃げていくのを見やる。
「あれは、陶芸品を自慢そうに語っていた女ブル」
「ほほう・・・?」
ドクルンは何かおもちゃでも見つけたと言わんばかりに笑みを浮かべると、館内の方へと歩いていく。
一方、その女性ーーーー長良さんはプリキュアたちに逃げるように言われて館内の外へと出ようとしていたが、自分の作品たちが気がかりとなり、足を止めていた。
「私の作品・・・・・・」
長良さんが後ろ髪を引かれるような思いで、背後を振り返る。
と、その時・・・・・・。
「これはこれは、逃げ遅れた人ですかぁ」
「!?」
長良さんが声に気付いて前を向く。白衣を着た少女ーーーードクルンがいつの前にか目の前に立っていたのだ。
「だ、誰? あなたは?」
「名前なんかどうでもいいじゃないですか。それよりも・・・」
ドクルンは長良さんに近づいて彼女の肩を逃がさないと言わんばかりに掴む。
「あなたの陶芸品、本当に美しかったです。あんなにキラキラと輝いて、生きているかのようなものを見るのは生まれて初めてです」
「な、何を言っているの・・・!?」
ドクルンが突然、顔を近づけて話し出したことに動揺を隠せず、逆に恐怖を覚える長良さん。そんな彼女の様子を気にすることなく、言葉を続ける。
「でも今、作品は赤いもので汚されてしまっているでしょうね、お可哀想に・・・。せっかくのあなたの作品が美しくなって、見る影も形もないわけです・・・あの怪物によってね・・・」
「ああ・・・ああ・・・!!」
ドクルンからの甘い言葉に、長良さんは絶望したような表情になる。自分の作品が汚されていたのを見て、さらに動揺しているのだ。
「そんなのは辛いですよね?・・・悲しいですよねぇ?・・・私もあなたが大事に思っていることでそんな顔をするのは辛いんです・・・だから・・・!!」
ドクルンは長良さんの肩から手をくねくねと動かすように彼女の頬の方へと持っていき、掴んで自分の顔へとさらに近づける。
「・・・・・・私が忘れさせてあげますよ」
ドクルンはそう言うと長良さんに口づけを交わす。
「んんぅ!?」
彼女に口づけをされたことに動揺し、突然の出来事に動くことができない長良さん。
そうしているうちに、彼女の体の中に赤く蠢く何かが入っていき、それが中で蝕むように蠢いていく。
「ん・・・んん・・・」
長良さんの瞳のハイライトが消えていき、そのまま彼女は倒れ伏してしまった。
「フフフ・・・」
ドクルンはそれを見下ろしながら、不敵な笑みを浮かべた。
一方、ドクルン以外の他の場所でもメガビョーゲンは暴れていた。
河川敷沿いにある畑で、不健康そうな顔に青い4枚のプロペラのようなものを頭から生やし、青いパネルのような板を顔の両サイドにつけているメガビョーゲンを生み出したイタイノンは・・・。
「メーガー!!」
メガビョーゲンは青いパネルから赤い光を照射して、畑の地面を赤く蝕む。
「メガ、ビョーゲン!!」
さらに回転させるプロペラの真ん中にある針のようなものから黒い電気のようなものを上に打ち上げ、ビニールハウスに雷のような光線を降らせ、爆発音と共に赤く蝕んでいく。
「とりあえずは、ここら辺を蝕んでおくの・・・」
イタイノンはメガビョーゲンの様子を見ながら、三人娘で話し合った通りに実行しようとしていた。あの男性を再起不能にしてやるために・・・・・・。
そして、森の中の小屋近くでメガビョーゲンを発生させたクルシーナは・・・。
「ある程度、大きくしておけばいいんだっけ?」
彼女もまた、三人娘の作戦通りにメガビョーゲンを暴れさせていた。メガビョーゲンは刺々しいハートのような枠の中に不健康そうな顔が中にあり、3本の棘のような太く短い茎のような触手が生え、サソリのような鋏を腕のように二本生やしたような外見だ。
「メガー・・・ビョーゲン・・・」
メガビョーゲンは口から吐き出す赤い光線で、ほとんどの木を病気へと蝕ませた後、小屋にも口から吐き出す病気で蝕んでいく。
「まあ、大体でいいか・・・」
私たちのアジトをうろちょろする男性を病気で蝕んで苦しませるため、メガビョーゲンをもっと成長させていく。
ここでメガビョーゲンを発生させる、クルシーナはそれを受けてこんなことも思いついた。メガビョーゲンを発生させるということは、プリキュアもそれを浄化しようと動き出していくはず。つまりはプリキュアはこのメガビョーゲンと鉢合わせをするのは必然なのだ。
「ついでにプリキュアもあそこでブチのめせるわよねぇ・・・フフフ・・・」
クルシーナはそう考えると楽しみでたまらないと、不敵な笑みを浮かべるのであった。
プリキュアたちに訪れた未曾有の大危機。それは、いつもは2体ぐらいまでしか現れなかったメガビョーゲンが、今回は6体も同時に発生。まさに多勢に無勢となりそうな状態だ。
「くっ・・・・・・!」
フォンテーヌは天井に水色の光線を放つ。
「メガー・・・」
「のわぁっ!!」
光線は着弾すると、白い霧となって煙幕のようになり、メガビョーゲンとグアイワルが撒かれる。その隙にグレースとスパークルが、フォンテーヌへと合流した。
「グレース! フォンテーヌ! ど、どどどど、どうしよう!?」
「手分けしよう! 私たち3人が手分けすれば・・・!」
パニックになるスパークルに、グレースは別れてメガビョーゲンを浄化することを提案する。しかし・・・・・・。
「でも、メガビョーゲンは6体もいるのよ!? 私たちが一体ずつ相手ができたとしても、他の3体は・・・!?」
「!!」
そうだ。メガビョーゲンは6体もいるのだ。プリキュア一人でも、せいぜい一体を抑えるのが精一杯。それでも、残り3体のメガビョーゲンに大暴れさせるのを許してしまうことになる。
「どうしよう!! マジでピンチじゃん!!」
「・・・だったら、まずは場所がわかってるところのメガビョーゲンを倒そう! ここで何も動かないよりはいいと思う」
グレースの提案に二人は少し沈黙をしつつも頷く。ここで何もしないで、メガビョーゲンによる病気の拡大がひどくなるよりは、動いて一体ずつ浄化したほうがいいと考えたのだ。
「・・・そうね。きっと一体は電車から見えたあの川沿いにいるわ。スパークル! そっちをお願い!!」
「うん、わかった!!」
スパークルはすぐに現場へと急行する。
「わかってるもう一体は、黄色い花が咲いている場所にいるペエ!!」
「それは私たちが探しましょう!! グレース!! ラビリン!!」
「わかった!! ここは任せて!!」
グレースは美術館のメガビョーゲンをどうにかすることにし、フォンテーヌは黄色い花を探すために駆け出していく。
グレースは美術館内にいるメガビョーゲンと対峙する。ここからは時間との勝負だ。
「ほう? お前一人か? 戦いの第二幕といったところだな。ここは大方蝕んでしまったことだし、場所を変えようではないか。メガビョーゲン!!」
「メガ・・・」
「追ってこい!! プリキュア!!」
美術館の奥へと消えるグアイワルと赤い棘を引っ込めて彼の後を追うメガビョーゲン。そして、病気で蝕まれた長良さんの作品を見つめつつも、その二人を追跡していくグレース。
(この素敵な美術館を、絶対病気になんてさせない・・・・・・!!)
そう心に決意を秘めながら、美術館を取り戻すべくグレースは駆け出していった。
一方、グアイワルたちとグレースがこの場所から出た、その数分後、様子を見に来たドクルンが姿を現していた。
「ふむ・・・グアイワルたちはここ一体を大方蝕んだようねぇ・・・」
自分のメガビョーゲンは外の自然を蝕もうと大暴れ中だ。暇になったドクルンはグアイワルたちがどうなったか気になって、様子を伺っていたのだ。
病気で赤く蝕まれている陶芸品を見て、ドクルンは笑みを浮かべる。
「やはり私にはキラキラしているものよりは、赤く染めた方が素敵に見えるわねぇ・・・」
「ドクルンの嫌らしい趣味が始まったブル・・・」
「素敵な趣味と呼んでくれるかしら・・・ねぇ、お姉さん?」
「はぁ・・・はぁ・・・うぅ・・・」
ドクルンは右肩に担いでいる長良さんを撫でながら言った。当の彼女は辛そうな表情をしていて、息も切らしている様子。
そんな彼女を病気に蝕んだ張本人は中をキョロキョロとしていると、奥にも廊下があるのを発見。廊下の方を歩いていくと、別のメガビョーゲンの気配をしているのを感じる。
おそらく、グアイワルたちはこの奥に行ったのだろう。しかし、別の違和感も・・・。
「おや? フフ・・・これは面白いですねぇ・・・」
いつもは3人いるはずのプリキュアが、今回は1人しかいない。いや、さっきまでは3人いたようだが、いつもよりメガビョーゲンの気配が多くあることから、別れて対処しに行ったのだろう。それが無駄なやり方だとは思わずに・・・・・・。
ドクルンはそれを察すると、ニヤリと笑みを浮かべながら、グアイワルたちのいる方向へと歩いていく。
廊下の一本道を抜けると、そこは大きな美術品が展示してあるフロア。そこでメガビョーゲンとグレースが交戦していた。
「はぁ!!」
「メガ・・・」
「きゃあ!!」
メガビョーゲンに蹴りを入れるグレース。しかし、頑丈なのかビクともせず、棘に弾かれてしまう。
グレースが落ちようとしている下には、美術館の展示品が・・・!
「!?」
グレースはそれを動いて避けるも、着地や受け身を取ることができず、背中から地面に打ち付けてしまう。倒れて痛みに呻くグレース。
「グレース! どうしたラビ!?」
「私がぶつかったら・・・大切な作品が・・・壊れちゃう・・・・・・!」
いつもより動きに切れがないグレースに、ラビリンが心配の声を上げる。
ーーーー守る価値があるものとは到底、思えないけどねぇ・・・
それをドクルンは長良さんを下ろして壁に寄りかからせた後、メガネを上げながら不敵な笑みで見ていた。
一方、電車から見えた川沿いでは・・・・・・。
「アッハハハハハ!! その調子よ! メガビョーゲン!! グアイワルよりも先に、どんと蝕みまくっちゃいなさい!!」
「メガー・・・・・・」
シンドイーネが、川から生み出したメガビョーゲンが川を蝕んでいくのを見て、橋の上から高笑いを上げていた。
「いたぞ!! シンドイーネとメガビョーゲンだ!!」
ちょうどそこへスパークルが現場に到着した。
「メガ・・・ビョーゲン・・・!!」
メガビョーゲンの横に立って、スパークルが臨戦態勢をとる。
「あら、プリキュア。今日はちょっと遅かったわね」
「メガ・・・・・・」
メガビョーゲンが川から地上へと這い上がっていく。
「お手当てをパパッと終わらせちゃうし!!」
スパークルはそう叫ぶとメガビョーゲンへと立ち向かっていく。
「メーガー!!」
対するメガビョーゲンはスパークルを叩き潰そうと片手を振り下ろす。
「メー! ガー!!」
「うわぁ! うぅ・・・!!」
「メガー!!」
「うぅぅぅ!!!」
スパークルはとっさに避けるも、メガビョーゲンは次々と手を繰り出していく。スパークルはガードをするも、突き飛ばされて尻餅をついてしまう。
「ねえ、こいつなんか強くない!? やたらパンチが重いんだけど!?」
メガビョーゲンがいつもより攻撃が強くなり、受け流せしきれないことに違和感を感じるスパークル。いつもなら、こんな攻撃を受けても余裕で防げたはずなのに、このメガビョーゲンの攻撃はやたら腕にジリジリと痛みを感じるのだ。
「あ、そうか・・・! 美術館からここまで結構距離あったろ!? 到着まで時間がかかった分、メガビョーゲンが育っちゃったんだ!!」
ニャトランがそう推測する。三人娘が召喚した時もそうだったが、時間が遅れた分、メガビョーゲンも強化されていた。今回は距離があったせいで、メガビョーゲンに成長を許してしまったのだ。
「ええぇぇぇ・・・!?」
ニャトランから聞かされて動揺するスパークル。さらに悪いことが・・・。
「メガビョーゲン!!」
「えっ・・・?」
目の前にいるメガビョーゲンではない別の方向からも、メガビョーゲンの声が。
振り返ってみると、プロペラがついたようなメガビョーゲンが川とは別の方角に赤い光を照射しているのを発見。しかも、そのそばにいたのは・・・・・・。
「よし、だいぶ大きくなったし、このぐらいでいいか、なの」
ビョーゲンズのビョーゲン三人娘の一人、イタイノンの姿だった。
「うぇぇ!? もう一体!?」
「イタイノン!!」
メガビョーゲンがさらにもう一体、近くにいることにさらに動揺するスパークル。そんな声に気付いたのか、イタイノンが振り向く。
「ん? お前もいたのか、なの。キュアスパークル」
イタイノンは無表情でこちらを見つめている。
「今日はお前の相手をしてる暇はないの。メガビョーゲン、そろそろ行くの」
「メガビョーゲン!!」
イタイノンはメガビョーゲンの上に乗ると、河川敷とは逆の方向へと飛んでいく。
「あ・・・ま、待って! きゃあぁぁぁ!!」
スパークルはイタイノンたちを追いかけようとしたが、シンドイーネのメガビョーゲンが繰り出したパンチに吹き飛ばされてしまう。
「アッハハハハ!! よそ見をするなんて、間抜けねぇ!」
シンドイーネはそんなスパークルを嘲笑ったのであった。
そして、フォンテーヌが向かおうとしている森の中では・・・・・・。
たんぽぽが病気で蝕まれ、周囲の自然が病気へと侵されていた。
「いいねぇ・・・だいぶ蝕めてきた・・・」
一本の木に寄りかかりながらメガビョーゲンを見ているのは、ダルイゼン。メガビョーゲンは黄色い花から不健康そうな顔を出したような形で、6本のサソリのツメのような足を生やしていた。
「メガー・・・ハー・・・」
いつもより少し大きくなったメガビョーゲンは、口から病気を吐き出しながら周囲の自然を病気へと蝕んでいく。
「いたわ! あそこ!!」
そこへ美術館からここまで走ってきたフォンテーヌが駆けつける。
「黄色い花は、たんぽぽのことだったペエ!」
「病気が随分、広がってるわ!! 早くお手当てしてあげましょう!!」
フォンテーヌはそう思い、メガビョーゲンに立ち向かおうとする。
「メガー・・・!!」
フォンテーヌが来たことに気づいたメガビョーゲンは植物のツルのような腕を伸ばす。フォンテーヌは避けて、腕に乗って駆け上がる。
「メガッハー・・・!!」
そこへメガビョーゲンが赤い病気を吐き出し、フォンテーヌはそれを飛んでかわす。
「へぇー、プリキュアじゃん。今日はもう来ないのかと思ったけど・・・」
ダルイゼンはプリキュアがいることに気づくも、その表情は余裕の笑みだった。
フォンテーヌはメガビョーゲンの背後に着地し、ステッキを構え直す。
「見つけるのに時間がかかったから、その分メガビョーゲンが強くなってるはずペエ!! フォンテーヌ、気をつけるペエ!!」
「ええ!!・・・!?」
ペギタンが注意するようにフォンテーヌに話すも、そこへ目の前のメガビョーゲンではない別の赤い病気が飛んできた。
フォンテーヌはとっさに気づいて、体を翻してかわして、その場所を見つめるとそこには驚くべきものが・・・。
「な、何ペエ!? 今の攻撃、どこから飛んできたペエ!?」
「!! クルシーナ!!」
「ペエ!?」
フォンテーヌが背後に何かがあるのを気づいた。ダルイゼンのメガビョーゲンの背後に飛んでいたのは・・・・・・クルシーナと、その彼女が生み出したと思われるメガビョーゲンだ。
距離は離れているが、目の前にいるメガビョーゲンと同じように少し成長しているようで、しかもあの距離から攻撃を仕掛けてきたらしい。
「・・・・・・ふん」
クルシーナは不敵な笑みを浮かべると、彼女たちから背を向けてメガビョーゲンと共に別の方向へと飛んでいく。
「あ、待ちなさい・・・くっ・・・!!」
フォンテーヌはクルシーナたちを追いかけようとしたが、目の前のメガビョーゲンにツルに邪魔をされてしまう。
(まずは、こいつをなんとかしないと・・・!!)
フォンテーヌはとりあえず、メガビョーゲンをなんとかしようと立ち向かうのであった。
「・・・あいつ、別に俺に気を使わなくていいのに・・・」
ダルイゼンは飛んでいくクルシーナが邪魔にならないように離れたのを察して、こんな言葉を漏らしたのであった。
「あいつは大丈夫そうね・・・・・・」
ダルイゼンの様子を見ていたクルシーナは不機嫌そうな顔でメガビョーゲンと一緒に飛び回っていた。
メガビョーゲンを発生させた後、小屋周りの自然は大方蝕んだが、同じくメガビョーゲンを発生させたダルイゼンの邪魔にならないよう、様子を伺っていたのだ。
ついでに彼のメガビョーゲンに油断しているキュアフォンテーヌを、遠距離から攻撃を仕掛け、来れるものなら来てみろと挑発した笑みを浮かべ、その場所を離れたのだ。
今回のあいつのメガビョーゲンは、今まであいつが出した中でも一番良質なメガビョーゲン。心配する必要はないだろう。
「どうせプリキュアを倒すんだったら、もう少し大きくしたいわよねぇ・・・」
クルシーナは他に蝕む場所がないか、探していた。鬱陶しい例の男を、プリキュアごと葬り去るのであれば、どうせなら一定量まで成長させてから、私たちのアジトの近くへと送りたい。
そう考えながら飛んでいると、ふとダルイゼンが暴れさせている場所とは反対側、森の東側のふもとに昔の日本のような古めかしい家が立ち並んでいるのを見えた。しかも、そこには何かを植えているのか作物が成っている畑があった。
「フフフ・・・・・・」
ーーーー蝕めるものがたくさんあるわね・・・これは一番いい。
「メガビョーゲン、あっちに行くわよ」
「メガー・・・・・・」
クルシーナは不敵な笑みを浮かべると、メガビョーゲンと共にそのふもとへと降りていった。
一方、イタイノンは・・・・・・。
「メガビョーゲン!!」
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」
スパークルとシンドイーネの姿が見えなくなったところにある発電所に、メガビョーゲンに光線を放って暴れさせていた。
「どうせだったら、人の逃げ惑う姿も拝むの・・・キヒヒ」
イタイノンは発電所の作業員たちが逃げ惑う姿を見て、笑い声をあげる。
今回は特別な任務とはいえ、人々の恐怖は味わいたいもの・・・あっさり終わったから少しぐらいはいいだろう。ついでにこの辺も蝕むことができるし、メガビョーゲンも大きくできる。
ふと思い出したように表情を無に戻し、スパークルとシンドイーネがいる方向を見つめる。
「・・・・・・おばさん、調子に乗って失敗してなきゃいいけど」
イタイノンは心配しているのか、馬鹿にしているのか、そのどちらかもわからないような感情でつぶやいていた。
そして、美術館でドクルンが見つめている先には・・・・・・。
「全く見苦しい限りですねぇ・・・・・・」
ドクルンはその様子を見て、つまらなそうに感じていた。
グレースはメガビョーゲンに向けてステッキを構えるも、その背後には美術館の作品が。美術品を壊したくないという気持ちがグレースに攻撃を躊躇させる。
「メガー・・・・・・」
「ああっ!!」
そんな彼女の気持ちをあざ笑うかのように、メガビョーゲンは赤い棘を伸ばして吹き飛ばす。
「どうした? プリキュア。いつもより動きが鈍いようだが?」
思うように動けないグレースを嘲笑うグアイワル。
「グレース! 作品を壊したくない気持ちはわかるラビ! でも、時間が経てば経つほど、メガビョーゲンが強くなっちゃうラビ!!」
立ち上がろうとするグレースに声をかけるラビリン。作品を壊したくないのはラビリンも一緒だが、グレースは作品たちを明らかに庇いきれていない。このままでは作品よりも先にグレースがボロボロになるのも時間の問題だ。
「メーガー!!」
ラビリンがそんなことを考えているうちに、病気を吐き出して作品を蝕もうとする。
「!! ダメっ!! きゃあぁぁぁぁ!!!」
メガビョーゲンの病気から作品を庇うために飛び出し、吹き飛ばされてしまうグレース。
「やれやれ、本当に見苦しい戦いですねぇ・・・・・・」
倒れたグレースの側には、ドクルンが見下ろしていた。
「ドクルン!? なんでここに・・・・・・!?」
ビョーゲンズの幹部がもう一人、現れたことに驚くラビリン。
「何って、同僚の活躍を見に来たんですよぉ・・・私のメガビョーゲンが成長して大きくなっている間にねぇ」
ドクルンはメガネを上げながら、ニヤリとした笑みを浮かべる。
「ああ、ついでに・・・・・・」
ドクルンは自分の背後で寄りかかっている女性ーーーー長良さんに向かって親指でさす。
「気になった女性もいたので、ちょっと細工をね」
「うぅ・・・!? 長良さん!!」
グレースは立ち上がろうとしながらドクルンが指した方向を見ると、ぐったりとしている長良さんの姿があった。その事実に驚きを隠せない。
「長良さんに、何を・・・・・・!?」
「廊下で無防備に突っ立っていたので、私の病気をねぇ。全く・・・作品を構ったりなんかしなければ、あんなことにはならなかったものを・・・・・・」
ドクルンは不敵な笑みを浮かべたまま、後半は長良さんを見やりながら話す。
「ひどい・・・! なんでそんなひどいことができるの・・・!?」
「私がビョーゲンズだからに決まっているでしょう・・・・・・まあ、お手当てをすることしか考えていないあなた方にはわからないでしょうがねぇ、フフ」
泣きそうな表情で訴えるグレースに、ドクルンはクスクスと笑い声を上げる。
目の前の眼鏡のビョーゲンズはグレースの怯えた表情を眺めた後、満足したように背を向ける。
「さてと、怯えたプリキュアの顔も拝めたことですし、私のメガビョーゲンの様子を見に行くとしますかねぇ・・・・・・」
「あ、ダメ・・・・・・!!」
グレースは歩き去ろうとするドクルンにステッキを向けるも、ドクルンの歩く前には大事な作品たちがある。
彼女は自分が病気で蝕まれたことがある経験から知っている。人が病気で蝕まれた際にはその幹部のメガビョーゲンを倒さなければ元には戻らない。ここで彼女を逃してしまったら、長良さんは助からないだろう。
歩みを止めなくてはいけないのだが、作品を傷つけたくないグレースは思うように攻撃できない。
「メーガー!!」
「!! きゃあ!!」
そこへメガビョーゲンが背後から赤い棘を伸ばして背中を狙い撃ち、防御体制を取れていないグレースは背中に直撃を受けて、吹き飛ばされてしまう。
一方のドクルンは臆すことなく、作品の上にピョンピョンと飛び移った後、上のフロアへと到達。ドアノブに手をかけて開ける前に、グアイワルの姿を見やる。
「彼はまあ・・・・・・自信があるなら大丈夫でしょう」
そして、自信が病気に蝕んだ長良さんの姿を見下ろす。
「いいですよぉ、もっと病気に蝕んでください」
ドクルンは笑みを浮かべると、扉を開けて大きな美術品のフロアを後にした。
グレース以外の、他のプリキュアもメガビョーゲンを相手に苦戦を強いられていた。
「メガー・・・・・・!!」
「ぐぅ・・・・・・!!」
シンドイーネのメガビョーゲンは手を振り下ろし、スパークルはそれを両腕で抑えようとしているが、重すぎて辛そうな表情をしている。
「これ一人だと、厳しくない・・・・・・?」
「うーん・・・・・・・・・」
スパークルが押さえつけている間に、ニャトランは考えていた。
そして、ダルイゼンのメガビョーゲンと交戦するフォンテーヌは、お手当てどころか近づくことすらできず、メガビョーゲンが伸ばしてくるツルを蹴り返すので精一杯だ。
「一体、どうしたら・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
ペギタンもこの不味い状況に考えを巡らせていた。
ラビリンもこの状況を打開できる策を考えていた。そして、やっぱりこの方法しかないとグレースに提案をする。
「グレース! これ以上メガビョーゲンが育つ前に、3人で力をあわせるラビ!!」
「どういうこと・・・・・・?」
ペギタンもラビリンと同じような考えをフォンテーヌに話していた。
「別々にお手当てしている二人と合流して、まずは一体ずつ、確実に浄化するペエ!!」
ニャトランも、メガビョーゲンの手から逃れたスパークルに話していた。
「3人がかりでも手に負えなくなる前に!!」
このパートナーの提案に、スパークルとフォンテーヌは・・・・・・。
「そっか、そうだよね!」
「それしかないわね!」
賛成だった。このまま戦っても、メガビョーゲンは浄化できない。いつも私たちは3人でメガビョーゲンを浄化してきたのだ。いつもの3人で力を合わせればうまくいくはずだ。
グレースも賛成だったが、ラビリンがさらに別の提案をする。
「発生時間が遅いメガビョーゲンの方が浄化しやすいラビ。川の方なら早く見つけられるはずラビ」
ラテは、川は明らかなメガビョーゲンの発生場所として直接指定している。だから、見つけやすいメガビョーゲンの方が確実に浄化できるはず、だから先にそちらの方に行くべきだとラビリンは提案した。
しかし、グレースは・・・・・・。
「いや・・・・・・」
「グレース?」
「だって、ここを離れている間に取り返しがつかなくなっちゃたらどうするの? この素敵な作品たちは・・・? 作った人の、長良さんの思いは・・・?」
グレースはここを離れたくなかった。彼女が離れたら、ここの作品は間違いなくメガビョーゲンに蝕まれてしまうだろう。もし、3人で他の場所を浄化できたとして、ここを完全に浄化できるとは限らない。そうしたら、作品たちは二度と戻らないかもしれない。
「でも・・・・・・!」
「私は絶対に守りたい・・・! ここを離れたくない・・・!!」
グレースは実りのエレメントボトルをかざして、ステッキに光の刃を作り出す。
「グレース!! 落ち着くラビ!!」
「メーガー!!」
「ふっ!!」
ラビリンは声をかけるも、グレースは話を聞き入れずに、赤い棘で攻撃をしてくるメガビョーゲンの攻撃を切りつけ、避けていく。
「グレース!! このまま守りきれなければ同じラビ!!」
「はぁっ!!」
ラビリンの制止も聞かず、グレースは斬撃を放ってメガビョーゲンを吹き飛ばす。天井へとぶつかったメガビョーゲンは作品のあるフロアへと落下していく。
「ダメっ!!」
グレースは作品を守ろうと、メガビョーゲンが落ちないように抑える。
メガビョーゲンは重く、一人の力では体が震える・・・・・・。
さらに悪いことが・・・・・・!!
ドクン!!! ドクン!!!
「あっ・・・・・・はぁ、はぁ・・・・・・」
心臓の音がバクバクとし、グレースの息が辛そうに肩を上下し始める。メガビョーゲンを抑えきれない・・・・・・!!
「ハッハハハハハハ!! メガビョーゲンを助けてくれるとは! 感謝するぞ、プリキュア!!」
ドクン!! ドクン!! ドクン!!
「はぁ、はぁ、くっ、うぅ・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
(なんで、こんなときに・・・・・・!)
グレースは苦しさに襲われつつも、ここで力を緩めたら作品たちが・・・!
壊したくないという思いからメガビョーゲンをあくまでも抑えようとする。しかし、体が震えて力が入らない。潰されそうだ・・・・・・!
「メー・・・ガー・・・!!」
「きゃあぁぁ!!」
抑えつけられているメガビョーゲンは、そんな思いも嘲るかのようにグレースへと赤い棘を伸ばし、彼女を投げ飛ばした。
「ああ・・・ぁ・・・!!」
グレースの目の前には守ろうとしている作品が・・・・・・!
私は何も守れないの・・・・・・? 彼女は絶望しながら、目を瞑るしかなかった・・・・・・。
一方、美術作品の部屋を後にしたドクルンは、メガビョーゲンの元へと向かっていた。
「やれやれ、あのプリキュアの甘さ加減には、ほとほとげんなりしますねぇ・・・」
ドクルンはキュアグレースのことを思い出しながら歩いていく。
そういえば、私にもあんな風に気遣ってくれた少女がいたような気がするが・・・それは、誰だったのだろう。
ーーーーまあ、思い出すだけ無駄でしょうねぇ・・・論理的ではない。
そんなことをしているうちに、美術館の裏口から外へと出ると、少し大きくなったメガビョーゲンの姿が。
「メガー!! ビョーゲン!!」
メガビョーゲンは美術館の建物そのものに水を噴射しながら、霧のように降り注がせ赤く染めていた。
「ほうほう・・・だいぶ、大きくなってきましたねぇ・・・」
ドクルンはこれで十分かと思いつつも、他に蝕める場所がないかキョロキョロと探す。邪魔な植物をかき分けて進んでいくと、美術館の入り口へと出る。
「一応、あの辺も蝕んでおきますか・・・」
ドクルンはニヤリと笑みを浮かべながら、メガビョーゲンに指示をするべく行動を移したのであった。
一方、森のふもとの集落を襲わせているクルシーナは・・・・・・。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「うわあぁぁぁぁ!!」
「メー・・・ガー・・・!」
突然現れた怪物に悲鳴を上げながら逃げ出していく住民たち。メガビョーゲンは口から病気を吐き出しながら、藁でできた家や畑の土などを病気に染めていく。
「いいわよ、メガビョーゲン。その調子・・・」
プリキュアがいない分、順調に病気で蝕み、メガビョーゲンが成長していっていることに関して、笑みを浮かべるクルシーナ。
ドクン!!!
「ん?」
何かの気配を感じ、ふと虚空を振り返る。
ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・。
聞こえてくる心臓の音、これが聞こえるのは、建物のある方角だ。
「また、アタシの病気の種が動き出したわね・・・」
クルシーナは、キュアグレースの中の病気の種が成長していっていることに対し、不敵な笑みを浮かべた。