ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
次回はサブタイトルが変わります。


第25話「襲来③」

メガビョーゲンに吹き飛ばされ、作品に当たりそうになるグレース。

 

私は、何も守れないの・・・?

 

グレースが諦めかけた、その時・・・・・・!

 

「ぷにシールド!!」

 

当たる寸前でぷにシールドが現れ、グレースの体を弾く。下へと落ちていく彼女をスパークルが受け止めた。

 

「グレース! 大丈夫!?」

 

「スパー、クル・・・うぅ・・・!!」

 

グレースは締め付けられる胸を抑えつつも、メガビョーゲンの方へと飛び出していった影を見ると・・・!

 

「グレース!!」

 

メガビョーゲンを蹴りで牽制するフォンテーヌの姿が・・・。

 

「また調子が悪くなってるの!?」

 

「うん・・・なんだか胸が苦しくなって・・・!」

 

「グレースは休んでて! スパークル! メガビョーゲンを建物の外に出すわよ!!」

 

「うん!!」

 

調子の悪いグレースを気にかけ、フォンテーヌとスパークルは一緒にメガビョーゲンを共に倒そうとする。

 

「待て!! 今日のターゲットはここだ!! 貴様らの好きにはさせるか!!」

 

グアイワルは絶好に蝕める場所を邪魔されてたまるかと声を上げる。

 

「何、言ってんの!!」

 

「スパークル! 一緒にやるぞ!!」

 

ニャトランの声にスパークルは頷くと、フォンテーヌの元へ。

 

「ここはあんたたちのものじゃないし!!」

 

グアイワルに反論すると、スパークルはフォンテーヌの隣へ。

 

「メーガー・・・」

 

「フォンテーヌ!!」

 

「ええ!!」

 

「「はぁぁぁぁぁ!!!」」

 

フォンテーヌとスパークルはステッキを構えると、同時に青色と黄色の光線を放つ。爆発を起こし、メガビョーゲンは外へと吹き飛ばされる。

 

「メー・・・・・・!!」

 

メガビョーゲンは頭と尻尾を引っ込めると、棘の玉と化す。

 

「ガー!!」

 

メガビョーゲンを追って出てきたフォンテーヌとスパークルに向かって回転させながら、襲い掛かってきた。二人はそれを苦労することなく交わす。

 

「氷のエレメント!!」

 

フォンテーヌは氷のエレメントボトルをステッキにかざす。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

メガビョーゲンに向かって氷をまとった青い光線を放つ。すると、回転したメガビョーゲンが下から氷ついていき、動かなくなり地面へと落下した。

 

「ああ! メガビョーゲン!!」

 

氷漬けになったメガビョーゲンにグアイワルも動揺を隠せない。

 

「フォンテーヌ! やっちゃって!!」

 

フォンテーヌは頷くと、水の模様が描かれたエレメントボトルをステッキにかざす。

 

「エレメントチャージ!!」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「ヒーリングゲージ上昇!!」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングストリーム!!」

 

キュアフォンテーヌはそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、水色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、光のエレメントさんを優しく包み込む。

 

水型状にメガビョーゲンを貫きながら、光線は光のエレメントさんを外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「お大事に」」

 

光のエレメントさんは、作品の中へと戻り、このメガビョーゲンが蝕んだ場所だけが元に戻る。

 

「ちっ、せっかく上手く育ちそうだったものを!!」

 

グアイワルは悔しそうに吐き捨てながら、姿を消した。

 

メガビョーゲンはひとまず一体、浄化したが、明らかな違和感があった。

 

「あれ? この外と建物も蝕まれてるよね? なんで戻ってないの?」

 

「おかしいわね・・・メガビョーゲンは浄化したはずなのに・・・」

 

スパークルとフォンテーヌが疑問を隠せないでいると、女性の声が聞こえた。

 

「やれやれ・・・やはりあの筋肉頭脳には無理でしたか・・・」

 

「「!!」」

 

二人はどこか聞いたことがある声だと思い、振り向くとそこには・・・。

 

「ドクルン!!」

 

「もう一体、メガビョーゲンがいたのね・・・!!」

 

もう一体のメガビョーゲンと、その上に乗るドクルンの姿があった。

 

「気づくのが遅すぎです。私のメガビョーゲンはとっくにここでの役目を終えましたよ」

 

ドクルンは二人を見下ろしながら言う。

 

「うわぁ、でかくなってるよ!?」

 

「ここ一帯が蝕まれたせいニャ! 自然もここには多いからな・・・!」

 

「くっ・・・!!」

 

スパークルは大きくなっているメガビョーゲンに動揺し、フォンテーヌは歯ぎしりをする。

 

「さてと、別の場所に行くとしますか。あなた方に構っている暇などないのでねぇ」

 

「メーガー・・・」

 

ドクルンはそう言うとメガビョーゲンは森の方へと向かって飛んで行こうとする。

 

「! 待ちなさい!!」

 

フォンテーヌはそう言って走りながらステッキを構えようとするが、振り向いたドクルンが不敵な笑みを浮かべると左の指をパチンと鳴らす。

 

ドクン!!!

 

「!? ゲホゲホゲホゲホ!! はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

その瞬間、フォンテーヌの中の赤いものが蠢くと、彼女は膝をついて咳き込み始めた。その後に息を切らし始めるが、気のせいか吸い込む音がいつもよりおかしい気がする。

 

「フォンテーヌ!大丈夫!?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

スパークルが駆け寄って背中をさするも、フォンテーヌは明らかに苦しそうに呼吸をしている。

 

「ドク、ルン、を・・・追わない、と・・・」

 

「・・・うん!」

 

スパークルは苦痛の表情で汗を滲ませているフォンテーヌの言葉に追いかけるのが気が引けたが、ここで彼女を逃せば取り返しのつかないことになるかもしれない。彼女の真意に気づいて頷くと、追いかけ始める。

 

「こらぁー、待てぇー!!!!」

 

スパークルは大声を上げながら必死で追いかけるも、鬱陶しく感じたメガビョーゲンがスパークルの方を振り向く。

 

「メーガー・・・!!!」

 

不健康そうな顔から病気を吐き出す。スパークルはそれを飛び上がってかわし、メガビョーゲンと同じ高さへと到達する。

 

「ふっ・・・・・・」

 

ドクルンは笑みを崩さずに、左右から白い穴を出現させるとそこから氷の柱を射出した。

 

「うわあぁぁぁぁ!!!」

 

スパークルは伸びてきた氷の柱に吹き飛ばされるも、体勢を立て直して地面に上手く着地するとステッキを構える。

 

「はぁ!!」

 

ステッキから黄色い光線を放つスパークル。

 

ドクルンは余裕を崩すことなく、白い空間へと氷の柱を引っ込めると数十個もの氷の塊を出現させ、黄色い光線を弾く。

 

そして、そのまま両手を振り下ろすと数十個の氷塊は二人にめがけて飛んできた。

 

「ええぇぇぇ!!??」

 

「ぷにシールド!!」

 

慌てるスパークルをよそに、ステッキから肉球型のシールドを生成し、降り注ぐ氷塊へと構える。

 

ドンドン!! ドドンドンドン!!! ドンドンドン!!!

 

「くっ・・・・・・!!」

 

着弾した氷は白い霧を発生させていき、スパークルの周りが白く包まれていく。

 

「うぅ・・・これじゃあ、何も見えないし!!」

 

やがて氷塊の着弾する音がなくなると、白い霧が晴れていく。スパークルがぷにシールドを解除するが、霧がなくなったその上空にドクルンとメガビョーゲンの姿はなかった。

 

「嘘・・・どこ行ったの・・・!?」

 

スパークルはキョロキョロと空を見渡すが、ドクルンたちの姿はどこにも見えなくなってしまった。

 

「はぁ・・・ひゅぅ・・・ひゅぅ・・・」

 

「!? フォンテーヌ!!」

 

フォンテーヌの呼吸がまるで、肺から空気が抜けたかのようなものに変わる。スパークルは彼女の体調が悪化したことに気づくと、彼女に駆け寄るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとまず美術館の中へと戻った2人。スパークルはフォンテーヌが持っていたカバンから白い容器を取り出して、彼女に渡す。

 

「ほら、フォンテーヌ」

 

「ひゅう・・・ひゅぅ・・・ありが・・・とう・・・」

 

フォンテーヌは白い容器を受け取るとカバーを開けて、強く息を吸い込む。すると彼女の呼吸音は正常に戻り、苦痛の表情も少しは和らいだ。

 

「はぁ・・・ふぅ・・・助かったわ・・・」

 

スパークルはフォンテーヌの調子が戻ったことに、とりあえずは安堵の表情を浮かべる。

 

そしてスパークルは、聴診器をしてビョーゲンズに襲われた陶芸品に当てる。

 

「エレメントさん、大丈夫?」

 

『みなさんのおかげで私たちは助かりました! どうもありがとう!』

 

光のエレメントさんはお礼を言うと、他にも多くの光のエレメントさんがお礼を言うために現れた。

 

エレメントさんってこんなにいたんだ・・・!! スパークルとフォンテーヌにとっては不思議な感覚で、微笑ましくなる。

 

「長良さん!! 長良さん!! しっかりしてください!!」

 

グレースは壁に横たわっていた長良さんの肩を揺らしていた。しかし、彼女はメガビョーゲンが浄化されたのにも関わらず、ぐったりとしたままで意識を失っている。

 

そこへ一体の光のエレメントさんが近づく。

 

『これは・・・別のビョーゲンズによって蝕まれています・・・! そのメガビョーゲンを浄化しなければ、元の体調には・・・』

 

「! そんな・・・!」

 

それを聞いたグレースは顔を俯かせる。さらに俯かせたのはスパークルもだった。

 

「グレース、ごめんね・・・あたしたち、ドクルンは取り逃がしちゃったんだ・・・」

 

スパークルの謝罪の言葉に、グレースは瞳を潤ませた表情を見せるも、すぐに首を振る。

 

「ううん、スパークルのせいじゃないよ・・・。もっと私がここを守り切れていたら・・・」

 

俯くグレースに、フォンテーヌが肩に優しく手を置く。

 

「グレース、あなたは立派にここを守ってたじゃない。そう落ち込むことはないわ・・・」

 

「そうだよ! あいつらはまだ遠くに行ったわけじゃないし! 浄化できないってことじゃないよね!」

 

フォンテーヌとスパークルが励ましてくれる。グレースはその二人の心に暖かさを感じる。

 

「よーし! あと5体!! 浄化・・・できるのかなぁ・・・?」

 

スパークルは一瞬戸惑った。時間が遅れたせいで強くなってしまったメガビョーゲンを思い出し、本当に太刀打ちできるのか心配になってきたのだ。

 

「なんだよー! 俺たちで一体浄化したじゃん! できるって!!」

 

「できるのかじゃないわ。やるしかないでしょ!」

 

「一緒にやればできるはずペエ!!」

 

フォンテーヌたちは地球をお手当てしてあげようと奮起だ。しかし、グレースはまだ落ち込んだままだった。

 

『力になるかはわかりませんが、これを』

 

光のエレメントさんが体を光らせると、スパークルの持つ光のエレメントボトルに力が溜まっていく。

 

「力を分けてくれたのか?」

 

「えっ、いいの?」

 

『まだ苦しんでる他のエレメントさんたちも、助けてあげてください。よろしくお願いします!』

 

光のエレメントさんは少しでもプリキュアたちの力になってあげようと自分たちの力を分けてくれたのだ。

 

「わかった!!」

 

スパークルは光のエレメントさんに感謝した。

 

そして、今だに落ち込んでいるグレースへと歩み寄って手を伸ばす。

 

「行こうよ! グレース!!」

 

「・・・・・・うん」

 

グレースは表情は暗くしつつも、スパークルの手を取った。

 

美術館を後にしたプリキュアの3人は、次のメガビョーゲンの元へと走っていた。

 

「グレース、体調は大丈夫?」

 

「・・・うん、もう大丈夫」

 

「先に川の方をお手当てしましょう!!」

 

プリキュア3人が川の方にいるメガビョーゲンへと浄化に向かう中、ラテを抱えながら走るグレースはまだ俯いた表情をしていた。

 

そして、自分のパートナーに口を開く。

 

「ごめんなさい、ラビリン。やっぱりラビリンの言うとおりだった・・・」

 

「ラビ?」

 

「あのままだったら・・・私一人だったら、きっと守りきれなかった・・・もっと大変なことになってた・・・でも、私のせいで長良さんは・・・」

 

「グレース・・・」

 

「ちゃんと周りを見て考えなきゃって朝、ちゆちゃんも言ってくれてたのに・・・」

 

グレースがあのとき一人で戦っていたときのことを思い出していたのだ。自分がわがままを言ってラビリンの忠告を無視した結果、余計に苦戦して美術館の作品を壊すかもしれなかった。無我夢中になって朝、友人が言ったことも忘れてしまっていた。

 

結局は、フォンテーヌやスパークルに助けられている・・・本当に不甲斐なかった。

 

「本当に助けようと思うなら、目の前のことじゃダメなんだよね・・・・・・」

 

「・・・グレースは一生懸命だったラビ。そういうこともあるラビ」

 

ラビリンはグレースのことを責めなかった。大切なものを汚されようとしていて、立ち向かう勇気は必要だ。自分だってそういう行動をとることもあるんだから・・・。

 

「ラビリン・・・また、私が間違えそうになったら・・・そのときは、またちゃんと言ってね」

 

「もちろんラビ!」

 

グレースは安堵の微笑みを見せ、二人は絆を更に高めた。

 

そして、意を決したような表情となり、残る場所もお手当てをしようと決意を高めていく。フォンテーヌとスパークルに追いつくように足の動きを速さを早めていく。

 

「反省会は終わったか?」

 

「さあ、切り替えてお手当てに集中しましょう! そうすれば、長良さんだって助けられるはずよ!」

 

「「うん!!」」

 

プリキュア3人は木へと登って、街へと飛び出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、美術館を離れたドクルンたちは、プリキュアたちが向かう方向とは逆の森の方へと向かっていた。

 

「やれやれ・・・プリキュアたちの甘さ加減には、砂糖を口から吐きそうですねぇ・・・」

 

「相手を気遣うあまり隙が多すぎるんだブル」

 

ドクルンは先ほどのプリキュア、特にグレースの甘さには辟易としていた。あんなに必死になって、美術館の作品を守る理由がよく分からない。価値のないものを守ろうだなんて、論理的じゃない。自分には一生わかる気はしないだろう。

 

そろそろ異空間を開けて、アジトへとメガビョーゲンと一緒に向かおうと考えていると、途中でクルシーナたちと鉢合わせた。

 

「あら、ドクルン」

 

「クルシーナですか」

 

クルシーナは先ほど集落を襲っていたが、そちらは大方蝕んだようで、他に蝕めるものを探しているようだ。

 

「もうちょっと大きくできそうだから、蝕める場所を探しているんだけど・・・」

 

「それだったら、さっきの美術館はどうですか? 先ほど、グアイワルが失敗したみたいです。彼が蝕んだところも元に戻っているはずですよ」

 

「ふーん・・・」

 

クルシーナはそれを聞くと、無言ですぐに向かおうとする。

 

「クルシーナ」

 

「・・・何よ?」

 

ドクルンの呼ぶ声に、進みを止めるクルシーナ。その表情は早く蝕みに行きたいと言わんばかりの不機嫌そうな顔だった。

 

「・・・私たちの目的、わかってますよね? 私たちの存在意義も」

 

ドクルンは珍しく静かで、落ち着いた声だった。クルシーナは彼女のそんな態度に少し驚いた顔を見せるも、すぐに不機嫌そうな顔に戻る。

 

「・・・ふん、決まってるだろ。地球も人間も病気で永遠に苦しめる。そのためにはあの男は邪魔だ。アタシはあいつを許さない、アタシたちを貶めたあの男を・・・! アタシがお父様に使われる立場であっても、その価値に似合ってなかったと言われたとしても、この中にある憎しみだけは変わらない・・・!!!」

 

クルシーナはそれだけ吐き捨てるように言うと、美術館の方角へと飛んで行った。

 

「フフ・・・あなたはいいですね・・・寂しそうではなくて・・・私は、こんなに寂しいのになぁ・・・」

 

ドクルンは飛び去っていくクルシーナを哀愁漂う表情で見つめながら、進むべき方向を向く。

 

「もう少し・・・蝕んでいきましょうか・・・メガビョーゲン」

 

「メー・・・ガー・・・」

 

彼女は自分が寂しくないようにもう少し病気で蝕んでいこうと、森とは60度方向転換した方角へと飛んでいったのであった。

 

一方、発電所を襲っていたイタイノンは、川沿いを挟んだ反対側の町を襲っていた。

 

「メガー!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

町の人たちが怪物を恐れて逃げ出していく。

 

「キヒヒ・・・愉快愉快・・・」

 

人間たちの恐怖の悲鳴を味わいながら、イタイノンがクスクスと笑う。

 

「イタイノン・・・目的を忘れてないネム?」

 

見かねたネムレンが声をかけ、イタイノンが笑みから不快な表情をする。

 

「わかってるの・・・あいつをギタギタにしてやる前の前哨戦をしているだけなの」

 

ゴシックロリータは不機嫌そうに返す。正直、アジト周りをうろつく男を叩きのめすのもそうだが、それよりもいっぱい人間がいるところを襲った方が楽しい気がする。

 

「本当に大丈夫ネム? イタイノンがキングビョーゲン様のものになるって聞いたときは受け入れたけど、私は耐えられるのか心配で心配でたまらなかったネム・・・」

 

パートナーの心配する声に、イタイノンは体を震わせ始める。

 

「大丈夫だって言ってるの! お前はいちいちうるさいの! 変な心配なんかしなくていいの!!」

 

「でも・・・・・・」

 

「もう黙ってろ、なの!!」

 

イタイノンは声を荒げ、ネムレンはビクリとしつつも、これ以上彼女のストレスを与えないように黙っているしかなかった。

 

イタイノンは大声で言いつつも、昔のことを思い出していた。

 

ーーーー今日からお前たちは我のものだ・・・。我のために尽くし、我々のために快適な環境を作るのだ・・・。

 

自分の父親たるキングビョーゲンに、クルシーナやドクルンが適当に返事をする中、イタイノンだけは一人無言だった。

 

ーーーーイタイノン・・・どうした・・・?

 

ーーーー・・・別に、なんでもないの。

 

ーーーー我にとってお前は必要なのだ。活発的になってもらわなければ困る。まあ、まだその時ではないがな・・・・・・。

 

ーーーー・・・わかってる、なの。

 

イタイノンはビョーゲンズの一員となった後、複雑なものを感じるかのように佇んでいたのだ。動かなかった自分の体が動けるようになる感覚、誰にも痛めつけられることもない場所、そして他人を痛めつけることができる能力、様々なことが溢れてきて動揺していた。

 

「メガー!!」

 

「・・・ここもだいぶ蝕んできたの」

 

イタイノンがメガビョーゲンの鳴き声に気づいて、周りを見渡すと生えている木や家などの建物、地面がかなり赤く染まってきたのが見えた。

 

こんなものでいいかと思ったとき、ふと河川敷の方向を振り返る。

 

「・・・おばさん、調子に乗ってるんじゃないか? なの」

 

イタイノンはどうせなら失敗した姿を嘲笑ってやろうと考え、河川敷の方へと戻ることにした。

 

「メガビョーゲン、ここはもういいの。あっちへ行くの」

 

「メガー!!」

 

イタイノンはメガビョーゲンの上へと乗っかると、河川敷に向かうべく飛んだ。

 

まあ、私は、私がやりたいことをやるだけなの。そうやって地球も人間も蝕むことができれば、それでパパにとっても万々歳なの。

 

イタイノンは心の中で結論づけると、シンドイーネのメガビョーゲンの姿が見えてきた。川もさっき見たよりも病気を広げており、メガビョーゲンも少し大きくなっているような気がする。

 

川のそばの地面には、3人の色のあるコスプレ姿の少女もいる。

 

「なんだプリキュアもいたの・・・しかも、3人揃ってるし・・・」

 

イタイノンが嫌そうな表情を浮かべていると、プリキュア3人が川の中にいるメガビョーゲンへと飛び上がり、その怪物に川へと叩き落とされる姿を見た。

 

シンドイーネは勝ち誇っているようだが、メガビョーゲンの背後から3人は飛び出してきた。

 

背後から飛び出してきた3人に気づいたメガビョーゲンはなぎ払おうとしたが、3人の蹴りに跳ね返され、川の中へと倒れる。

 

「やっぱり、川では頭の悪いメガビョーゲンしか生み出せなかったの。あそこじゃなくて正解だったの」

 

もうことの結末がわかりきっていたイタイノンだが、スパークルの姿を見た彼女は不敵な笑みを浮かべる。

 

「まあ、少しはあいつで遊んでやるの」

 

イタイノンはそう言うと右の指をパチンと鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メガビョーゲンを背後から不意をついて、川の中へと倒した3人。

 

「グレース! 決めちゃって!!」

 

スパークルが叫んだ、その時・・・・・・!!

 

ドクン!!!

 

「!? うっ・・・!」

 

スパークルが突然、胸を押さえ始める。まるで、胸の中をえぐられているようなそんな痛みが走った。

 

彼女の中の赤く蠢く何かが、暴れ出していたのだ。

 

バチバチッ・・・!!!

 

「ぁ・・・・・・」

 

赤く蠢く何かが電気を発生させると、スパークルの体から力が抜け、彼女は何の抵抗も見せることなく、川へと真っ逆さまに落ちていく。

 

「スパークル!?」

 

二人はスパークルの異変に気付いて、叫びを上げる。フォンテーヌはとっさに川へと落ちていく彼女へと飛び出し、受け止めて川沿いの地面へと着地する。

 

「グレース! 心配なのはわかるけど、メガビョーゲンを!!」

 

「・・・うん!!」

 

グレースは突然、倒れたスパークルを気になりつつも、とりあえずは目の前のメガビョーゲンの浄化へと動く。

 

グレースは花のエレメントボトルをステッキにかざす。

 

「エレメントチャージ!!」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「ヒーリングゲージ上昇!!」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングフラワー!!」

 

キュアグレースはそう叫びながら、ステッキを上空へと飛んでいるメガビョーゲンに向けて、ピンク色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、水のエレメントさんを優しく包み込む。

 

花状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんを外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「お大事に」」

 

水のエレメントさんは川へと戻り、このメガビョーゲンによって蝕まれた場所は元に戻る。

 

「嘘でしょ!? あんなにいい感じだったのに!! もう悔しい~!!!」

 

シンドイーネは足をバタバタとさせながら悔しがりつつ、川沿いでフォンテーヌに担がれているスパークルを見やる。彼女はスパークルが落ちたのをちゃんと見ていて、私でない誰かがやったと感じていたのだ。

 

そして、プロペラのような音が聞こえ、空を見上げるとイタイノンとメガビョーゲンの姿が見えた。

 

「・・・あいつ、自分の身の心配もできないのに、余計なことしちゃって」

 

シンドイーネは顰めつつ、その場から姿を消したのであった。

 

一方、スパークルを坂のところで寄りかからせたフォンテーヌ、走って彼女たちの元へ駆けてきたグレースは。

 

「うぅ・・・!!」

 

「スパークル! 大丈夫!?」

 

「あ・・・なんか、胸が苦しくなったと思ったら、体の力が抜けちゃって・・・」

 

目がチカチカとしながらも声を紡ぐスパークル。気を抜いたら意識を失いかねない状態だ。でも、そんな自分よりも心配しなくてはいけないものがいる。

 

「そんな、ことよりもラテとエレメントさんは・・・?」

 

「ううん、ラテは全然よくなってないよ・・・」

 

「メガビョーゲンを2体浄化したのに、まだ回復しないラビ」

 

グレースに抱かれるラテはまだぐったりとしたままだ。それだけメガビョーゲンが暴れて、大きくなっているということだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

フォンテーヌは自分よりも他人の心配をするスパークルを心配しつつも、聴診器で水のエレメントさんの様子を聞く。

 

『助けていただいてありがとうございます。みなさん、まだ苦しんでいる仲間のことも、どうか宜しくお願いします』

 

すると、フォンテーヌが持っている水のエレメントボトルに力が注がれた。

 

「・・・大切なあなたたちからの力、確かに受け取りました」

 

「絶対絶対、助けるから!!」

 

フォンテーヌは神妙な気持ちで感謝の言葉を交わし、グレースは助け出すと決意する。

 

そこへスパークルがよろよろと立ち上がって、こちらへと来る。

 

「スパークル! 休んでなくて大丈夫!?」

 

「だって、みんなが苦しんでるのに・・・休んでなんかられないよ・・・!」

 

スパークルは痛みに顰めたような表情をしながらも、顔は覚悟をすでに決めていた。

 

「・・・わかったわ。でも、辛くなったらちゃんと休んで」

 

「・・・うん」

 

フォンテーヌは彼女の気持ちも汲み取って、スパークルと共に向かうことにした。

 

「残りのメガビョーゲンの元へーーーー!?」

 

そんなとき、3人の耳に羽音のようなものが聞こえてきた。

 

「・・・え、何の音?」

 

「これって、プロペラの音・・・?」

 

3人は周囲を見渡してみる。すると、ニャトランが何かを見つけたようで叫んだ。

 

「! いたぞ!! あそこだ!!」

 

ニャトランが叫んだ方向に振り向くと、プロペラのついたメガビョーゲンとイタイノンの姿が。どうやら森の方へと飛んで行こうとしている模様。

 

「さっきよりも、大きくなってない・・・?」

 

スパークルは一人で向かっていたあの時よりも、メガビョーゲンが大きくなっているのを感じた。3人が他のメガビョーゲンを相手にしているうちに、他の場所を襲ったのだろう。

 

「メガビョーゲン!!」

 

フォンテーヌが叫ぶと同時に、3人はメガビョーゲンを追うべく走っていく。

 

そんな3人に気づいたイタイノンは、顔を顰めると右手から黒い雷撃を放つ。

 

「うわぁっ!?」

 

3人は後ろに飛び退いて雷撃を交わすも、メガビョーゲンとの距離は少しずつ離れていく。

 

「早く追わないと見失っちゃうわ!!」

 

フォンテーヌは怯むことなくメガビョーゲンを追いかけていく。グレースとスパークルはその後を着いていこうと走っていく。

 

しかし、そんな中でも、スパークルは苦しさを感じているのか、胸を押さえていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、美術館の中にいるクルシーナは、グアイワルが蝕んだものを同じように蝕んでいた。

 

「メガー・・・!」

 

メガビョーゲンは口から病気を吐き出して、作品を再び赤く染めていく。そして、今は大きな美術品のあるエリアを襲っていた。

 

「よし、ここも大分蝕んだわね」

 

「いつにないほどに順調ウツ」

 

ウツバットの言う通り、今回は蝕むのがいつもよりも順調だ。プリキュアと遭遇していないこともあるだろうが、一番はこのメガビョーゲンがかなり優秀だということだろう。

 

「ん? また、メガビョーゲンの反応が消えたわね」

 

クルシーナは森とは反対側であろう場所を向く。誰かがしくじったのかだろうが、おおよそシンドイーネだろう。森の方向にはまだ複数のメガビョーゲンの反応がある。

 

「ってことは、あっちもまだ蝕むことができるってことよね?」

 

クルシーナはシンドイーネが蝕んだ場所が元に戻っていることを察し、不敵な笑みを浮かべた。

 

「メガビョーゲン、次はあっちだ」

 

「メガー・・・ビョーゲン・・・!」

 

クルシーナはその場所も蝕むべく、メガビョーゲンに病気の進行を急がせるのであった。

 

そして、ドクルンは・・・・・・。

 

「メーガー・・・!」

 

メガビョーゲンに東の森のあたりを襲わせていた。頭の管から赤い水を噴射して霧のように降り注がせる。森を構成する木の多くが病気へと蝕まれている。

 

「ふむ・・・まあ、このぐらいでいいわ。私たちは一足お先にお暇しましょうか」

 

「メーガービョーゲン」

 

ドクルンはメガビョーゲンの上に乗ると、上空高く飛んでいく。白いホールみたいなものが出現し、ドクルンとメガビョーゲンはその中へと消えていく。

 

姿を現した場所は、全てが赤く染まった荒廃した街、三人娘のアジトがある街だ。その上空には球体のような塊を作っているナノビョーゲンたちが徘徊している。

 

ドクルンはそのままメガビョーゲンをアジトである廃病院の近くへと誘導すると、その上から飛び降りる。

 

「メガビョーゲン、男を探してください。生気があるからわかるはずです。見つけたら病気に蝕むか、捕らえてください。多少痛めつけても構いません。ただし、ここには近づけないこと、わかりましたね?」

 

「メーガー!」

 

メガビョーゲンは低い唸り声を上げると、街の方へと飛んでいく。

 

ドクルンはメガビョーゲンの姿を見届けると、廃病院の中へと入っていく。

 

(きっとあの男は、私たちのアジトの地下にいる娘を取り戻そうとしているんでしょうが、私の目の黒いうちはそうはいきませんよ)

 

「フフ・・・まあ、もう手遅れかもしれませんけどねぇ・・・」

 

ドクルンは男が始末される未来を頭に描きながら、不敵な笑みを浮かべる。

 

その廃病院の地下の実験室の中では・・・・・・。

 

「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・」

 

ベッドに寝かされている金髪の少女が痙攣しながら、弱々しく唸り声を上げていく。体の中には赤い何かが蠢いている。

 

「・・・ぅ・・・ぁぁ・・・!」

 

苦痛の表情を浮かべていた顔が、唐突に赤く頬を染めていき、恍惚とした表情へと変わっていく。

 

「・・・ぁ・・・ぁぁ・・・♪」

 

かすれたような声で、甘い声を上げる少女。

 

そんな彼女の体には、肌が少しずつ変わっていき、頭にツノのようなもの、下半身にサソリの尻尾のようなものが生え始めているのであった。

 

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