ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです!


第30話「資格」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「のどか、頑張るラビ・・・!!」

 

二体のメガビョーゲンに追われるのどかとラビリン。メガビョーゲンの放ったイバラビームにまとめて拘束され、変身することができなくなってしまった状態だ。

 

「メガー!!」

 

「メガー・・・」

 

プロペラのメガビョーゲンは雷を放ってきて、ハートの枠のようなものにトゲの触手を出しているメガビョーゲンは赤い短めのレーザーを放っている。

 

数十分もしつこく追いかけ回され、のどかの息はもう絶え絶えだ。顔はすでに汗だくで、足もふらついていて気を抜けばもつれて転びそうだ。

 

「はぁ、はぁ、ゲホゲホッ、もう、ダメ・・・苦しいぃ・・・!」

 

のどかの肺はすでに悲鳴をあげていた。元々体力のないので走ることはあまり得意ではなく、息が続かなくなった彼女は近くの木に寄りかかって息を整えていた。

 

「のどか! 早く逃げないとラビ・・・!!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、む、無理だよ・・・これ以上、走れない・・・! はぁ、はぁ、はぁ」

 

のどかの呼吸がなかなか整わない。最初に単独で追われていた分も含めて疲労が蓄積して心臓がバクバクとしており、さらに休むこともできなかったために足がふらついている。これ以上走ったら心臓が破裂するのではないかと思うぐらいだ。

 

「メガー!!」

 

「メガー・・・」

 

メガビョーゲンたちは疲弊しているのどかに配慮するわけもなく、容赦なく黒い雷と赤い短めのレーザーをそれぞれ放ってくる。

 

「林の中に逃げるラビ!!」

 

「はぁ・・・う、うん・・・」

 

呼吸をまだ整えているのどかはラビリンに言われて、林の中へと飛び込み、メガビョーゲンの攻撃を間一髪で回避する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

植物の中にうまく倒れこんで身を隠し、呼吸を整えるのどか。植物が開けている上を覗いてみると、メガビョーゲンが二人を見つけるべく周囲を飛んでいる。

 

ここで隠れているのもいいが、見つかるのも時間の問題だろう。それに縛られているので、のどかは今立ち上がれないだろう。

 

「うぅぅぅん!! うぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!! ラビ!!」

 

ラビリンが一緒に縛られているイバラビームの拘束から抜け出し、のどかの体を引きずって林の奥へと行こうとする。

 

「うんしょ・・・! うんしょ・・・!」

 

「ラ、ラビリン・・・!」

 

「に、逃げないと・・・見つかっちゃうラビ・・・!!」

 

のどかの体を必死に引きずるラビリンだが、それはまるで牛歩の歩みだ。少しずつしか進んでいない。それでもメガビョーゲンに見つからないように上を気をつけながら引っ張っていく。

 

「メガー・・・」

 

ドン! ドン! ドン! ドン!

 

「ひゃあぁ!」

 

「こっちにレーザーを撃ってきたラビ!?」

 

どうやらメガビョーゲンは無差別にレーザーを撃って、二人を燻りだそうとしている模様。

 

この場は危険だ。早く離れないと・・・!

 

「んんんんん!! んぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

「ラビリン! このままだと三人とも・・・! ラビリンだけでも・・・!!」

 

「ダメラビ・・・! せっかく見つかったのに、のどかとラテ様と一緒じゃないと意味ないラビ!! 」

 

のどかはラビリンだけでも逃げるように言うも、ラビリンは離れようとせずに懸命に引っ張る。

 

ようやく見つけた私のパートナーだ。のどかやラテ様をこんなところに置き去りにして、絶対に離れるわけにはいかない。小さいけれど、私の精一杯の力で救うんだ。

 

ドォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

「うわあぁっ!!!」

 

のどかの横スレスレをメガビョーゲンの黒い雷が通り過ぎる。あと少しでもずれていたら当たっていたかもしれない。

 

「うぅぅ・・・ちゆちゃんやひなたちゃんはどうしてるのかなぁ・・・」

 

のどかはこんな状況でも二人の身を案じている。メガビョーゲンに酷い目に合わされてどこかを彷徨っているんではないか、もしかしたら謎の不調で倒れているのではないか?

 

そう思うとのどかの心の中には不安しかなかった。

 

「もうちょっと・・・あと少しラビ・・・!」

 

そうやって引っ張っているうちに、ラビリンは逃げるのに夢中になって後ろに切り立った崖があるのに気づかなかった。

 

「! ラビリン、後ろ!!」

 

「!? ラビ!?」

 

のどかが崖に気づいてラビリンに知らせると背後を振り向くと驚き、その引っ張りを止める。

 

「あ、危なかったラビ・・・!」

 

ラビリンは冷や汗を拭う。もしのどかが声をかけてくれなかったら、危うくパートナーを落とすところだった。

 

「メガー!!」

 

ドォォォォォォォォォォォォン!!

 

「「えっ・・・?」」

 

しかし、のどかの後ろをメガビョーゲンの黒い雷が通り過ぎ、その衝撃なのかの横になっていたのどかの方の崖が崩れ・・・。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「のどかぁぁぁぁぁ!!!」

 

のどかは切り立った崖から落ちていってしまう。ラビリンは大慌てで崖の下へと飛んでいく。

 

「うぅぅぅ・・・ぐぅぅぅぅぅぅ・・・!!」

 

「ラ、ラビリン・・・!!」

 

ラビリンはのどかが衝突するよりも前に下から彼女を持ち上げようとするが、引っ張るのに力を使いすぎたせいか辛そうな表情を見せている。

 

「ダ・・・ダメ、ラビ・・・」

 

「ラビリーン!!」

 

顔は必死の形相だったが、それとは裏腹にのどかの体はどんどん下へと下がっていき、ついには落下速度と変わらないのに戻っていく。のどかは叫び声をあげるしかなかった。

 

「ふぎゅ!?」

 

「あっ・・・うっ・・・あぁ・・・!!」

 

ついには地面に衝突してラビリンはのどかの体に潰され、彼女の体は地面で弾みながら、坂道を転がり落ちていく。

 

平らな地面でようやく止まった際には、のどかの体は少しボロボロになっていた。

 

「うぅぅぅ・・・」

 

のどかは致命的な大怪我はしなかったものの、体に傷ができていて、その痛みに呻いていた。

 

「きゅう~・・・」

 

ラビリンは潰されたショックで目を回していた。

 

そんなとき、誰かが駆けつけてくる音が聞こえてきた。

 

「あ、いたよ! のどかっち!!」

 

「ラビリンもいるニャ!」

 

「酷い傷・・・早く治療しないと・・・!」

 

のどかの友人で、プリキュア仲間のちゆとひなただった。二人は怪我をしたのどかを見つけるとすぐに駆け寄った。

 

そして、ペギタンは離れたところで目を回しているラビリンに近づく。

 

「ラビリン、しっかりするペエ!!」

 

「うーん・・・あ、ペギタン・・・」

 

ペギタンが声をかけると、ラビリンが目を覚ます。彼女は大きな怪我はない模様。

 

「うーん! な、何このイバラ、切れないんだけど・・・!?」

 

「か、固い・・・!」

 

「俺に貸してみるニャ!! ふにゅぅぅぅぅ!!」

 

ちゆとひなたがのどかを縛っているイバラを引きちぎろうとしているが、なかなかちぎれず、ニャトランも一緒にイバラを噛みちぎろうとしている。

 

「み、みんなここから早く離れるラビ!!」

 

「どうしたペエ?」

 

「そうは言っても、これがなかなか・・・!!」

 

「早くしないと、ここに・・・!」

 

慌て出したラビリン、そしてのどかの拘束を解こうとしているプリキュアの二人とニャトラン。

 

「メガー・・・」

 

そこへメガビョーゲンの声と共に、赤い短めのレーザーが飛んできた。

 

「「「!?」」」

 

3人は完全に上へと視線を移していなかったため、メガビョーゲンの攻撃に気づかなかった。思わず目を閉じる3人だが、3人のヒーリングアニマルが3人をそれぞれ押し飛ばす。

 

「「「あっ・・・!」」」

 

ドン! ドン! ドン! ドン!

 

3人がいた地面にレーザーが着弾し、3人が見てみると黒く焼け焦げたような跡、そして上を見上げれば二体のメガビョーゲンが迫っていた。

 

「メガビョーゲン!!」

 

「うぇぇ! しかも二体!?」

 

3人が見ているメガビョーゲンはそれなりに大きくなっていて、しかもハート型の枠のメガビョーゲンは、先ほど3人で協力したダルイゼンが生み出したメガビョーゲンよりも同じくらい、それ以上の大きさだ。

 

今の私たちでは、こんな狭い場所でプリキュアに変身しても太刀打ちできるかどうか・・・。

 

「おーい!お前ら!!」

 

背後から聞こえる声に振り返ると、医療カバンを持った設楽がこちらに駆け寄ってきていた。

 

「設楽先生!!」

 

「ちっ・・・ここがバレちまったか・・・!」

 

設楽は宙を飛んでいるメガビョーゲンを見上げると舌打ちをする。

 

「お嬢ちゃんたち! 俺についてこい! 一旦、中に戻るぞ!!」

 

「で、でも・・・」

 

「いいから来い!!」

 

設楽がアジトの方へと走り出して戸惑うのどかたちだが、彼の言葉を信じてついていくことにした。

 

しかし、のどかの拘束はまだ解けていない。

 

「のどかっち、ごめん・・・!」

 

「ひ、ひなたちゃん・・・!」

 

ひなたは一言謝っておいた後、のどかを肩に担いで走り出した。その際にのどかが顔を少し赤らめていたが・・・。

 

「メガー・・・」

 

「メガー!!」

 

のどかたちが走っていくのを皮切りにメガビョーゲンは赤い短めのレーザーと、黒い雷を放ってきた。

 

背後で爆発音が聞こえつつも、3人は振り返ることなくアジトの入り口へと走っていく。

 

のどかたちがアジトの入り口へと入っていくと、それを待っていたかのように入り口に直撃すると木っ端微塵に破壊され、中へ入ることができなくなった。

 

「ああ・・・! 入り口壊されちゃったよ!?」

 

「そ、そんな・・・!!」

 

ちゆとひなたはそれを見てショックを受けるが、設楽は気にせずに走り出している。

 

「心配すんな。ここにはまだ見つかってねぇ別の入り口がある。そこから出りゃいいのさ」

 

設楽はそう言うとアジトの奥にある取っ手のついてる床を見つけると、そこを開けると人一人分が入れる穴があった。

 

「ほら、お前らから先に入れ」

 

「わかりました・・・」

 

「う、うん・・・」

 

設楽に言われ、ちゆとひなたは一人ずつ入っていく。のどかはひなたに担がれながら一緒に入る。

 

「ここって・・・?」

 

「下水道ペエ・・・?」

 

「ああ、そうさ。あの怪物から逃れる際にここを利用したりしてるのさ」

 

設楽は扉を閉めると梯子から降りる。その下ではのどかの拘束をひなたとニャトランが解こうとしていた。

 

「うーん・・・! なんでこんな、ちぎれないし・・・!!」

 

「噛み切ろうとしても、噛み切れねぇよ・・・!!」

 

「ひなたちゃん、ニャトラン、無理しないでいいよ・・・」

 

ひなたとニャトランがなかなか拘束が外せないことに唸っている。のどかは二人が怪我をしないか不安そうに見ていたが、それを見ていた設楽は近づいてくる。

 

「おい、お前ら、俺に貸してみろ」

 

「え、あ、うん・・・」

 

ひなたがそう言われてその場からどくと、設楽は医療カバンからメスを取り出すとのどかを縛っているイバラに突き立てる。

 

ガツッ・・・ガツッ・・・。

 

突き立てては上げ、突き立てては上げを何度か繰り返していくとイバラに裂け目がついていき、設楽はそこからイバラの裂け目に両手を入れる。

 

「おら、よっ!!」

 

両手に力を入れるとイバラはプチプチと千切れていき、ようやく引き裂くことができた。そして、いまだに縛っているイバラを少しずつ解いていく。

 

「ほらよ。解けたぜ」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「ついでにその怪我も治してやる」

 

設楽はイバラを捨てると、今度は医療カバンから薬と包帯を出すと額と右腕についている切り傷、膝の擦り傷を消毒して包帯を巻いてやる。

 

「すごい、先生! あっという間に直したね!」

 

「大したことはしてねぇよ」

 

設楽は医療バッグに包帯と薬をしまうと、のどかに向き直る。

 

「お嬢ちゃん、歩けるか?」

 

「は、はい・・・」

 

「よし、じゃあ行くぞ。別の入り口はこの下水の奥にあるのさ」

 

設楽はのどかの手を取って立たせると、下水の奥へと進み始める。ちゆとひなたたちもそのあとを追っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、ここにいたんだ。あいつら」

 

「・・・あのヤブ医者、逃げ足だけは早いの」

 

「全く、逃げても無駄だというのに・・・」

 

一方、崩れたアジトの入り口付近にはクルシーナ、ドクルン、イタイノンの三人娘が着いていた。

 

クルシーナはアジトの入り口に近寄ると、崩れた落盤の隙間には妖精が通れるぐらいの穴があるのを見つける。

 

「この落盤は起きたばっかみたい。まだ、あいつらは遠くまで行ってないはずね」

 

クルシーナはそう言うと右指をパチンとならす。すると、小さなコウモリの妖精が複数匹現れる。

 

「この隙間から入り込んであいつらを追跡しろ。出ようとしている入り口を抑えるだけでもいい」

 

彼女がそう命令すると、小さなコウモリの妖精の群れは落盤の隙間からアジトの中へと入っていく。

 

「あいつらはこの先にいるの?」

 

「ええ、そうみたい。でも、どこぞの誰かのメガビョーゲンが派手に破壊したせいでアタシらは入れなくなったけど・・・」

 

「か、怪物のコントロールは難しいの・・・!! 蝕めるものもないし・・・」

 

「まあ、私もわかりますよぉ。所詮は本能のままに動く私らの分身ですからぁ」

 

「お前はニヤけてんじゃねぇっつーの」

 

クルシーナがジト目で見ると、イタイノンは少し頬を赤らめて言い訳をする。そして、いつも通りの口調のドクルン。

 

ため息を吐いていると小さなコウモリの妖精の一匹が二人の元に戻ってきた。

 

「あら、早いじゃない」

 

その妖精はクルシーナの耳元に何かを伝えている模様。

 

「・・・下水道?」

 

もしかして、このアジトにはそこへ向かう入り口があって、奴らはそこから逃げ出したのか。

 

クルシーナはそう考えるとドクルンに向き直る。

 

「ねえ、ドクルン。ヤブ医者のアジトと下水道の入り口は補足できてるの?」

 

「ええ、もちろんですよ。この街一帯はストームビョーゲンに確認済みです」

 

「まだ、敢えて壊していない入り口が一つあったわよね?」

 

「はい」

 

クルシーナがそう聞くと、ドクルンが肯定する。

 

あとは壊していない入り口を先回りして抑えてしまえば、あいつらは袋の鼠だ。確実に病気に蝕むことができる。プリキュアは必殺技で疲弊しているはずだし、充分に育ったメガビョーゲンの前では大した脅威にはならないはず。

 

「あのヤブ医者め、年貢の納め時よ・・・フフフ」

 

クルシーナはどんな手を使って苦しめてやろうか? そう考えながらメガビョーゲンに命令を下すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のどかたち3人とヒーリングアニマルたちは、設楽に連れられて下水道を歩いていた。

 

下水道の中は、壁や地面こそは普通の色をしているものの、流れている水は赤く染まっているようだった。

 

「ここも、病気で蝕まれてるし・・・」

 

「本当にこの街は、生気も何も感じないわね・・・」

 

ひなたとちゆは下水道の水を見ながら言う。元々下水道という場所自体、そんなに水がきれいだとは思ったことはないが、ビョーゲンズに蝕まれているとなれば、感情は複雑な気持ちだった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・!!」

 

「あ、のどか・・・!!」

 

「のどかっち・・・」

 

のどかが息を切らして膝をつき始めたのを見て、ちゆとひなたが駆け寄る。

 

そういえば、もう何分歩いているだろうか? いまだ出口は見えてこない。歩きっぱなしでろくに休憩しておらず、のどかの体力はもう限界だ。

 

設楽も足を止めて、3人の様子を見ると医療バッグを地面に置き始める。

 

「ちょっと休憩してくか」

 

「はぁ、だ、大丈夫です・・・私はまだ・・・」

 

「いや、休憩も大事だぜ。無理するとまた倒れるぞ」

 

設楽はそう言うと医療バッグからペットボトルの水を取り出してのどかに差し出す。この水は病気で蝕まれていない、全く健康的な水だ。

 

「この水は・・・?」

 

「俺がよく送ってもらってた水だ。こいつだけは汚されてなくてよかったぜ。飲んでも大丈夫だから、飲みな」

 

ちゆの疑問に設楽が答える。のどかはそう聞いて安全な水だと安堵し、ありがたく設楽の手からペットボトルを受け取った。

 

ゴク、ゴク、ゴク

 

「ぷはぁ~! 生き返った~!」

 

「そうかい。そいつはよかったな」

 

のどかが顔をキラキラとさせる姿に、設楽は少し心の中で安心しつつ自分もそこに座ると、のどかが右手で抱いている子犬が気になった。

 

「おい、お嬢ちゃんのその子犬」

 

「え・・・ラテのことですか?」

 

「ああ。随分と具合が悪そうだなって思ってな。俺が見てやるよ。まあ、獣医じゃねぇけどな」

 

設楽はそう言いながら、のどかの隣に来てラテを見ようとするが、それを止めに入ったものがいた。

 

「それは無理ラビ!!」

 

声をあげたのはラビリンだった。

 

「いくら先生でも・・・この子は治せないペエ・・・」

 

「気持ちは、わかるけどよ・・・」

 

「あぁ? どういうことだ?」

 

設楽がペギタンとニャトランの沈んだような言葉を聞いて、顔をしかめる。

 

「なんて言えば、いいんだろ・・・? その子は特別な体質っていうか・・・なんていうか・・・」

 

「特別?」

 

ひなたは頭の中の整理出来ずに言葉を発し、設楽は訳が分からないというような顔をする。

 

「その子は、設楽先生も見たと思いますけど、あの怪物を浄化しないと治らないんです!」

 

「私たちは、その怪物を浄化して、ラテを救うためにこの街に来たんです・・・!」

 

「怪物を倒さないと治らないだぁ? そんなことがあるわけねぇだろ」

 

うまく説明できてないひなたに代わって、ちゆとのどかが説明するも、設楽は信じられないと言ったように言葉を返す。

 

特別な体質? 怪物を倒さないと治らない? そんな超越したような話がどこにあるというのか。

 

人間や動物を治せるのは俺たち医者の役目だ。中には治せなかった病気もあるかもしれないが、そんな医者らしくもない方法で治すなど馬鹿げている。自殺行為だ。

 

「本当なんです・・・! 私たちはプリキュアで、ラテを救いたいんです! 信じてください・・・!!」

 

のどかが必死に声を張り、瞳を潤ませながら訴えかける。設楽はその表情にある記憶が蘇った。

 

『あの子たちは、絶対に私が救います! 信じてください!!』

 

紫のコスプレのような女性が訴えかけた言葉、医者としての使命を疎かにできない自分はその言葉を信じた。

 

でも、結局、街はに奪われ、あいつもどこかに消えてしまった・・・・・・。

 

あいつも結局は、誰も救えてねぇじゃねぇか・・・!!

 

「ふん!」

 

設楽は鼻を鳴らしてそっぽを向くと、ポケットから木でできたパイプを取り出して口に咥える。

 

「俺にはそいつを救えねぇってことかよ・・・! あいつらと同じように・・・」

 

設楽は不貞腐れたかのように声を漏らす。それはまるで何かを失敗してやけになっているような感じだ。

 

「あいつらって、誰のことなんですか?」

 

疑問に思ったちゆがそう聞くと、設楽は口に咥えていたパイプをポケットにしまって息を吐き、しばらくの沈黙の後、口を開いた。

 

「・・・俺の患者だよ」

 

設楽が言った言葉に、3人は息を飲む。

 

「お嬢ちゃんたち、この街に来るときに病院が見えなかったか? もうボロボロになっちまってるあの病院だよ。あそこはな、俺が医者をやってた病院なんだ」

 

「設楽先生の・・・」

 

「病院・・・?」

 

のどかとちゆが愕然としたような表情になっていく中、設楽は話を続ける。

 

「そこはちゃんと施設も揃ってて、医者が必要なものたくさんあってな、人を救える優秀な医者もいっぱいいたぜ。俺はその中で患者を救いたいって一心で、ある難病の子の担当を任されたのさ」

 

設楽はまたパイプをポケットに口に咥える。

 

「そいつは、まあ本当は名前を教えちゃいけねぇが、来栖、毒島、板井、あと他にも2人の患者を任された。そこには俺の娘も入院してた。俺はあいつらのために、病気を抱えても生きるための心得、あいつらの心のケア、そして一刻も治そうと方法を探す、その全てを全力でやったさ」

 

設楽はパイプを口から離して、息を吐くと少し辛そうな表情を見せた。

 

「・・・だが、俺はあいつらの本当に抱いている気持ちに気付けなかったのさ。医者としての知識さえあれば、あいつらを治せると思ってた。だけど、それは違った。そんなこともわからずに、俺は勘違いをしてあいつらを無意識に傷つけただけだった。結局は、あいつらを救えなかったってわけさ」

 

そんな設楽の話すことを、3人は黙って聞いていた。

 

「・・・そんなこともわかんねぇから、この街はあんな風になっちまったわけだ」

 

「ど、どういうこと・・・?」

 

設楽の吐露した言葉がわからず、ひなたが思わず聞き返す。

 

「・・・いつものように病院に出勤したら、医者や看護師が一人もいなくなってた。病院じゅうに赤い靄みたいなやつが湧いてきていて、悪魔のツノとサソリの尻尾を生やした奴らが、黒い大流みたいな怪物共を引き連れて、この街一帯を赤く染めていきやがった。ビルも家も、何もかも。俺は呆然とそこを見ているしかなかった。そんなとき現れたのが紫のコスプレをした女だったな」

 

「コスプレをした女・・・?」

 

「もしかして、プリキュアのことニャ・・・?」

 

「そのプリなんとかかは知らんが、そいつが来たのさ。俺はあいつらに攻撃されそうになったが、コスプレをした女は俺一人でも守ろうとしてた」

 

ーーーー早く逃げてください・・・! あなただけでも・・・!

 

「俺は医者としての使命から逃げたくなくて、その場から離れようとはしなかった。少しでも患者をあいつらから救いたかったから。でも所詮はただの医者、あいつらと戦える力があるわけでもねぇ。あいつの足手まといになるだけだったさ」

 

ーーーー俺に患者を見捨てて逃げろってのか! 冗談じゃねぇ!!

 

ーーーー気持ちはわかります・・・! でも、今のあなたにできることは何もありません。手遅れにならないうちに離れる方が先決です・・・!

 

ーーーーふざけんな!! お前みたいなコスプレ女に何ができるってんだ!? 俺の娘もいるんだぞ!?

 

ーーーー街を救うことができます・・・!

 

ーーーー私はプリキュアです。地球をお手当てするためにいる伝説の戦士です。ここの街も、患者も、この街の人も私が救って見せます! あの子たちも私が救います! だから、私を信じてください・・・!!

 

「・・・俺はそいつを信じて、怪物やあいつらに見つかんねぇように下水道の中に隠れた。ほとぼりが冷めるまで。そして、そろそろ落ち着いただろうというときに外に出たら・・・・・・街は、このざまさ」

 

設楽は再びパイプを口に咥えた。

 

「そいつもあいつらにやられちまったのか、俺のところに二度と現れることはなかった。信じて任せた俺はバカだった。患者を救うはずの医者がのこのこと現実から逃げて、その結果取り返しのつかないことをしちまった。そんな俺に、医者を名乗る資格なんかねぇのさ」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

3人は設楽の話を黙って聞いていた。その表情は悲しそうな顔をしていた。

 

ちゆやひなた、ヒーリングアニマルたちはどういう言葉をかけていいかわからない・・・。設楽先生は一生懸命患者を救おうとしていた。しかし、それがほんの少しの間違いで、病院を、街を全てビョーゲンズに奪われてしまった。

 

自分たちがもし先生の立場だったら・・・そうなってしまったと思ったら、耐えられそうになかった。

 

「設楽先生は・・・」

 

そんな中、言葉を振り絞ろうとしたのはのどかだった。

 

「設楽先生は、立派な医者だと思います・・・!!」

 

「あぁ!? 俺の今の話を聞いてたか!? どうしてそういう考えになる!?」

 

のどかのその言葉に、設楽は不快感をあらわにする。

 

「だって、設楽先生は、その子たちのために力を尽くそうとしていたんでしょう? そのプリキュアに任せたとしても、決して治すのを諦めたわけじゃないんでしょう? 難しいことはよくわからないけど、先生はビョーゲンズに街を襲われたときも患者を救いたいという気持ちはあったんです! その思いは本物なんだよ!!」

 

「何も知らねぇガキが知ったような口聞いてんじゃねぇ!! この街がこうなったのも、俺が患者を救えなかった結果なんだよ!! そんなろくでなしが、立派な医者なわけがねぇんだよ!!」

 

「それは違います・・・!」

 

設楽の荒げた言葉に反論したのはちゆだった。

 

「この街がこうなっているのは、先生が尽くせなかった結果じゃありません・・・!」

 

「お前さんまで・・・!」

 

「私は、プリキュアとしてお手当てをできるようになって、初めて3人であの怪物に立ち向かってボロボロにされたとき、もうダメなんだと思っていました。でも、のどかが私たちを奮い立たせてくれて、諦めずに立ち向かって、その結果、森や花畑を救うことができたんです! だから、この街だって諦めないって気持ちがあれば、救えるはずなんです!!」

 

「っ!!」

 

ちゆのその言葉に、設楽は動揺したように悔しそうに歯を食いしばっている。

 

「あたしも守りたいって気持ちは、ありましたよ・・・」

 

「お前さんも・・・」

 

「あたしも、お手当てを失敗しちゃったなって思ったときは諦めてた。でも、たくさんのエレメントさんたちも救いたいって、あたしたちと同じ気持ちなんだなって。あたしたちって3人で戦ってるんじゃなくて、救いたいと思ってるみんなと一緒に戦ってるんだなって。だから、あたしたちは諦めずに戦うことができたんだよ! あたしは自分が立派にお手当てできてるだなんて思ったことないけど、それでも地球を救いたいって思いは本当なんだよ!! だから、先生! 自分が大層じゃないとか、ろくでなしだとか、思わないでよ・・・!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

瞳を潤ませるひなたの言葉を黙って聞いている設楽。

 

「私たちも、例えこうなったとしても諦めないラビ!!」

 

「僕たちは、お手当てをすることに全力を尽くすペエ!!」

 

「俺だって、できることはなんでもやるニャ!!」

 

ヒーリングアニマルたち3人も決意の眼差しをしていた。

 

「先生! 困っているなら私たちも協力します! 私たちができることならなんでもやります! 一緒に戦いましょう!! 街がこうなったら終わりだなんて思ってたら・・・・・・きっと誰も救えないから・・・!!」

 

「っ!!!!!!」

 

設楽はのどかの言葉に驚いたような表情をする。自分にここまで言ってくれたやつが、今までいてくれただろうか。俺もこんなことを言ってくれるやつがいたら、まだ立派だったのだろうか。

 

設楽はふぅとため息をついた。

 

「・・・俺にとっては、お前さんたちの方が立派だよ」

 

(そういう思いがあるなら、この街を救えるのかもしれねぇな・・・)

 

設楽は頭を照れ臭そうに掻きながら言った。少しは気持ちが楽になった気がする。

 

ちょっとはこのお嬢ちゃんたちに、頼ってみてもいいかもしれない。そう思った。

 

「よし、そろそろ行くか・・・」

 

設楽は医療バッグを持つと出口に向かうべく歩き出した。のどかたち3人とヒーリングアニマルたちはお互いに頷いた後、設楽の後をついていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「病気で苦しめて~、愉快愉快♪ 楽しいわ♪」

 

「ウツウツ♪」

 

「苦痛の先は~、クラクラ♪ 虚ろだ♪」

 

「ウツウツ♪」

 

「楽しいことはやらなきゃさ♪ 病気蝕み、フフフ、フフフ♪ 辛いことも忘れてグッバイ♪ お前は私のもの♪」

 

そう言って自分が推測した場所で待ち伏せながら、陽気に歌を歌っているクルシーナの姿があった。ウツバットも歌のノリに合わせて相槌を打っている。

 

「何を変な歌を歌ってるの・・・?」

 

イタイノンがその歌に不快感を示す。

 

「別にいいじゃない。退屈なんだから」

 

今度は歌にいちゃもんをつけられたことにクルシーナが不満を漏らす。

 

「これならゲーム音を聞いてたほうがよっぽど気がまぎれるの」

 

「ハッ、言ってろ。あんたには一生、その良さがわかんねぇんだからさ」

 

イタイノンの嫌味に、クルシーナも興味がないように吐き捨てる。

 

「まあまあ、喧嘩もいいですが、使命にも忠実でないと」

 

ドクルンの牽制する言葉に、クルシーナとイタイノンは沈黙して視線を元に戻す。

 

「あーあ、早くあいつら、来ないかなぁ・・・」

 

そう言いながらも、街路樹の木の上で昼寝を決め込もうとしているクルシーナ。

 

「・・・もうすぐ現れるはずですよ。出口はこの辺にしかないはずですから」

 

ドクルンは知恵の輪をやりながら、クルシーナに向かって言葉を返していた。

 

「私たち、なんだかのんびりしすぎなの・・・」

 

そう不安を漏らしつつも、廃ビルの壁に寄りかかって携帯ゲームをしているイタイノン。

 

その三人娘の中央には、観客席のような段差のある階段に、丸い円のようなステージがあった。

 

そして、その三人娘のそばに隠れるように、それぞれのメガビョーゲンが待ち構えているのであった。

 

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