ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
納得がいかない人がいるかもしれませんが、これがとあるキャラクターの結末です。


第32話「喪失」

 

「エ・・・エレメント、さんたちが・・・」

 

「し、死んで、る・・・?」

 

「う、そ、でしょ・・・? 」

 

クルシーナの衝撃的な一言を聞かされた、プリキュアの3人は呆然とメガビョーゲンを見ていた。

 

エレメントさんが、死んでいる・・・?

 

だから、あんなに透けていて、もう意識が消失していて、今にも消えてなくなりそうになっているのか? 3人は信じられなかった。

 

「そうよ。だから、お前らがいくらアタシらに立ち向かったって無駄な努力ってこと」

 

「私たちのメガビョーゲンが蝕んだ場所はもう私たちのものってことですねぇ」

 

「私たちを手こずらせた報いが来たの。いい気味なの」

 

三人娘はそれぞれ勝手な言葉を吐き、プリキュアの心理を煽る。お手当てをしても、死の大地はそのままであるということを教えてあげるために。

 

「そん、な・・・私、たち、は、守れな、かったの・・・?」

 

「嫌、だ・・・そんな、の、嫌だよ・・・!」

 

彼女たちに現実を突きつけられたフォンテーヌとスパークルは力が抜けそうになっていた。メガビョーゲンを見つめるその表情は絶望に染まりかけていた。

 

「ま、だ・・・まだ、だよ・・・私、たちが、なんとか・・・すれ、ば・・・」

 

一方、グレースはまだ諦めていなかった。メガビョーゲンの赤いマフラーのようなものを外そうと両腕に力を込め、首を振りながらもがいていた。

 

その様子は三人娘にとっては、どう見ても現実を受け入れていないようにしか見えない。

 

ギュゥゥゥゥゥ!!

 

「ぐぅぅ・・・が・・・あ・・・!」

 

暴れるグレースを鬱陶しく感じたのか、赤いマフラーを強く絞めて首を圧迫する。グレースは苦しさから声を上げ、表情を苦痛に歪ませる。

 

「見てわかんないわけ? あいつらがあんな状態になってるのに、まだそんなことが言えるなんて、本当に頭ん中沸いてるんじゃないの?」

 

クルシーナがやれやれと呆れたような素振りをしながら、嘲笑の言葉を吐く。

 

ギュゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「あぁ・・・は、ぁ・・・!」

 

「か、は、ぁぁ・・・ぁ・・・!」

 

フォンテーヌとスパークルも締め上げられて、苦しみの声を上げる。

 

「本当は病気で苦しんでる方がいいんだけど、まあ、これはこれでいいわね」

 

クルシーナはクスクスと笑い出すと、グレースへと近づいていく。そのグレースは足を捩らせながら、首にかかった赤いマフラーを外そうともがいている。

 

「そういえば、私が植え付けた氷はどうなっているんでしょうかねぇ?」

 

「私もすっかり忘れていたの。でも、結構育っているはずなの」

 

ドクルンとイタイノンも何かを思い出したようにそう言いながら、フォンテーヌとスパークルへと近づいていく。

 

「フォンテーヌ!!」

 

「く、うぅ・・・んぁ・・・ぁ・・・」

 

「大丈夫です。すぐに楽にしてあげますから」

 

ドクルンは頬を赤くして苦しむフォンテーヌの体を抱きとめるとそのまま右手を彼女の体に突っ込もうとする。

 

「スパークル!!」

 

「ぐっ、ぅぅ・・・あっ・・・!」

 

「痛みなんか一瞬ですぐに終わるの」

 

イタイノンは苦しむスパークルの上に馬乗りになって、両手を体にかけようとしていた。彼女の額に汗が滲む。

 

「ぐぅぅ・・・わた、し、は・・・ま、だ・・・あぁ・・・!」

 

「もう終わりなんだよ、見苦しいやつめ。いっその事、苦痛しか考えられないようにしてやるよ」

 

クルシーナは、マフラーを外そうと足掻いているグレースの胸のあたりに蹴るように足を置く。彼女の頬はすでに赤くなっていた。

 

そして、右手に赤いオーラを纏わせると彼女の心臓あたりに触れようと手を伸ばしていく。

 

「ぐぅぅ・・・ぁぁ・・・ぁぁ・・・」

 

「グレース!!」

 

「フフフ・・・」

 

苦しむグレースに、クルシーナが伸ばしてくる手が迫る。このまま、グレースも彼女の手にかかる・・・。

 

・・・・・・そんな時だった。

 

「やめろぉ!!!!」

 

突然この場に聞こえた男の声に、三人娘は動きを止めた声へと振り返る。

 

その声はプリキュアと怪物の戦いを見守っていた設楽だった。

 

「来栖!! 相手を苦しめたところでお前の病気は完治しないぞ!!」

 

「あぁ?」

 

「毒島!! 寂しいなら俺がそばにいてやる!!」

 

「・・・なんですか?」

 

「板井!! 他人を傷つけてもお前の気は晴れはしねぇ!!」

 

「・・・・・・」

 

設楽は三人娘の名前を叫んでいるようだが、その言葉に彼女たちはそれぞれ不快感をあらわにする。

 

「お前ら!! 調子が悪いんだったら、俺が診察してやる!! だから、そいつらをこれ以上傷つけるのはやめろ!!」

 

設楽は三人娘に向かって叫ぶ。

 

顔色こそよくないが、彼女たちは俺の大事な患者だ。昔は諦めたこともあったが、コスプレをして怪物と戦っているお嬢ちゃんたちの声を聞いて諦めないことをやめた俺なら彼女たちを救えるかもしれない。

 

しかし、設楽の言葉は三人娘の怒りや憎しみを煽っただけだった。

 

「!? ぐあぁ!!」

 

クルシーナはその場から姿を消すと、設楽の目の前に現れ、彼を右手で突き飛ばした。そして、倒れた彼に近づいて背中を思いっ切り踏みつける。

 

「設楽、先生・・・!!」

 

設楽が攻撃されてしまい、グレースが叫ぶ。

 

「患者も一人治せねぇやつが何をほざいてんだよ、ヤブ医者ごときが。知ったようなことを言って、アタシらを気遣おうとしてるつもりなわけ? バカにすんのもいい加減にしろ」

 

クルシーナが憎しみにも近い怒りの言葉を吐く。その表情は不機嫌を通り越して冷たく見下げたようなものであった。

 

「設楽先生、この街がこうなったのはあなたと、その他大勢のヤブ医者共が原因でしょう。すでに過ぎたことを今さら掘り返して偽善者ぶろうだなんて、論理的でないにも程があるんですよ」

 

ドクルンはいつも以上に冷たい表情で吐き捨てる。

 

「お前がそんなことを言ったところで、のこのこと生きてるお前が気にいらないの・・・! お前みたいなやつがいる限り、地球なんか永遠に病気になっていたほうがいいの・・・!!」

 

イタイノンは黒いオーラを漂わせながら、怒りの形相で設楽の言葉を吐き捨てた。

 

「お、俺は・・・お前ら、を・・・!」

 

「まだなんか言うわけ? お前が何か言って、アタシらが心変わりするとでも思ってんの?」

 

声を振り絞ろうとする設楽が何かを言う前に、クルシーナが切り捨てる。どうせ、アタシらをどうのこうの言うつもりなのだろう。先に言っておいた方が現実を突きつけられるだろう。

 

「大体、来栖って誰?」

 

クルシーナの質問を聞いて設楽は驚愕する。こいつ、まさか・・・?

 

「お、お前の・・・お前の名前、だろうが・・・!」

 

「はぁ? アタシはビョーゲンズのクルシーナだ。そんな名前で呼ばれた覚えなんか一度もねぇよ」

 

そんなクルシーナはドクルンとイタイノンの方を振り向く。

 

「お前らもそんなダサい名前で呼ばれてたんだっけ? 毒島とか、板井とか」

 

「さあ、覚えがありませんねぇ? 私はビョーゲンズのドクルンのはずですが?」

 

「イタイノンはそんな名前、呼ばれたことも、聞かれたこともないの。こいつのおかしな妄想じゃないのか? なの」

 

ドクルンもイタイノンも首をかしげながら言葉を返す。

 

「まあいいわ。こいつが何にもわかってない自惚れ屋だってことがわかったしーーーー」

 

「な、なんで・・・」

 

「ん?」

 

クルシーナの言葉を遮るかのように、設楽が苦しげに言葉を絞り出す。

 

「な、なんで・・・お前ら、は・・・こんな、ことを・・・?」

 

設楽が出した言葉は、なぜ自分たちの街をこんな風にめちゃくちゃにしたのかという問いであった。

 

クルシーナはそれを聞くとふんとバカにしたように鳴らした。

 

「決まってるじゃない。アタシらはその方が居心地いいからよ。むかつくヤブ医者共を苦しめて、大嫌いな街を苦しめて、みんなみんな苦しめて、地球の快適な環境を苦しめてしまえば、アタシらにとっては楽園そのものなのよ」

 

「うぅぅ・・・!?」

 

苦しむグレースはクルシーナの言葉を聞いてハッとする。その言葉は同じくビョーゲンズの一人であるダルイゼンも言っていた言葉。

 

ーーーー俺はその方が居心地いいからさ。

 

グレースはその言葉を聞いて、怯えに近いような呆然とした表情で見つめていた。

 

「もう気が済んだ? じゃあ、病気で苦しんでもらおうかな」

 

「ぐぁ・・・!!」

 

クルシーナは設楽の体を蹴って仰向けに倒す。

 

「!? や、やめて・・・!!」

 

「前も言ったろ? やめろと言われてやめるやつがいるかってんだよ」

 

グレースは叫ぶも、クルシーナは振り向いて冷酷に吐き捨てると設楽に向き直る。

 

「アタシ、女だったら口でやりたいけど、男には口つけたくないのよね。だから、こうして蝕んであげる」

 

右手に赤いオーラを込めると、それを設楽の左胸に押し当てた。その部分は人間で言うところの心臓の部分があるところだ。

 

「うっ・・・ぐぁぁ・・・!!」

 

設楽は体に何かを注ぎ込まれて、苦しみの声を上げていく。それは何か熱いものを体の中へと当てられているような感覚だ。

 

「ダメ・・・お願、い・・・やめ、て・・・やめて、よ・・・!!」

 

ギュゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「がぁ・・・ぁっ・・・!!」」

 

「グレース!!」

 

グレースはクルシーナの行動を止めようと赤いマフラーに両手に力を込め、首を振りながら足をジタバタとさせるも、その行動を煩わしく感じたメガビョーゲンがさらに首を強く絞め、呼吸ができないぐらいに圧迫していく。

 

「大人しくメガビョーゲンと遊んでろよ。どうせ何もできやしないんだからさ」

 

クルシーナはジタバタするグレースに嘲笑の言葉を浴びせる。

 

「早く・・助け、ない、と・・・」

 

ギュゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「ぐっ・・・うぅぅ・・・!!」

 

「先生、が・・・死んじゃ・・・」

 

ギュゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「ぐうぅ・・・ぅんぅ・・・ぐぅぅ・・・!!」

 

「フォンテーヌ!!」

 

「スパークル!!」

 

それを見ていたフォンテーヌやスパークルも助けなければと思うのだが、こちらも赤いマフラーに首を圧迫されていき、呻き声を上げる。顔にはすでに脂汗が滲み出ていた。

 

「大丈夫ですよ。もうすぐ何もかも終わりますから」

 

「お前らが気にする必要なんか一つもないの」

 

ドクルンとイタイノンはそう言いながらも、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「フフフ・・・」

 

「ぐっ・・・んぐうぅぅ・・・!!」

 

クルシーナは触れていた胸から右手を離すと、設楽は意識を失わずとも左胸を抑えながら苦しみの声をあげていた。

 

「あ、あぁ・・・せ、先生・・・!」

 

グレースは設楽が病気に蝕まれ始めたのを見て、絶望に似た表情を浮かべる。

 

「これであとは、あいつらだけね」

 

クルシーナはそう言いながら、メガビョーゲンに赤いマフラーで首を絞め上げられているプリキュアたちを見る。

 

「さて、どうするかな?」

 

「が、は・・・あぁ・・・!!」

 

クルシーナは、酸欠なのか頬を赤くしているグレースへと再度近づく。

 

「とりあえず、一回気絶させて、廃病院の地下部屋へとご案内するのはどうですか? そして、一人一人もらうとか」

 

「く・・・あ・・・!」

 

フォンテーヌから体を離したドクルンが、クルシーナに振り向いて言う。

 

「まあ、このまま暴れられても鬱陶しいだけだから、そっちのほうがいいの」

 

「ぐ、ぅぅぅ・・・!!」

 

イタイノンも足を暴れさせるスパークルを見ながら言った。

 

「まあ、それじゃあ、倒しておいてからアタシたちのお部屋にご案内するっていうことでいこうか」

 

クルシーナはそう同意すると、メガビョーゲンの方に顔を向ける。

 

「メガビョーゲン、そいつらにトドメを刺しとけ。殺すなよ」

 

「メガビョーゲン!!」

 

ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 

「がっ・・・ぁぁ・・・!?」

 

「ぐっ・・・が、ぁ・・・!!」

 

「あ・・・ぁ・・・!」

 

メガビョーゲンはこれまで以上の強さで赤いマフラーに力を込め、プリキュアたちの首を圧迫する。さらに3人を空中へと持ち上げて、獲物にトドメを刺すべくさらに強い力をいれる。

 

首を圧迫されて気道を塞がれ、本当に息ができなくなった。3人の表情はさらに苦痛に歪む。

 

「ぐぅ・・・うぅぅぅ・・・!!」

 

グレースは赤いマフラーに手をかけながら、足をジタバタとさせる。しかし、マフラーのようなものは頑丈な上に絞める力の方が上回り、外すことができない。

 

「あぁ・・・ぁぁ・・・!!」

 

「ぐぅ・・・ぅぅ・・・!!」

 

フォンテーヌやスパークルも足を動かしているが、宙でから振るだけで何の意味もなしていない。

 

もがく彼女たちの視界が少しずつ歪んでいく・・・。

 

「・・・しぶとい奴らね。早く楽になっちゃいなよ。メガビョーゲン、焦らさないで一気に絞め上げろ」

 

「メガー!!」

 

クルシーナは少し顔をしかめながらそう言った。3人が苦しんでいる表情を眺めるのもいいが、こちらは早く終わらせてこいつらを好きにしたい。

 

メガビョーゲンに冷酷に命令し、怪物も限界以上にマフラーを絞っていく。

 

「あぁ・・・ぁぁ・・・」

 

そんな中、グレースに限界が訪れた。掴んでいた両腕から力が抜けるとパタリと下へと落ちた。

 

「グレース! 負けちゃダメラビ!!」

 

ラビリンが呼びかけるも、グレースの表情からは力が抜けていて開かれている瞳も虚ろになっている。それでもメガビョーゲンは3人が完全に気を失うまで力を入れ続ける。

 

(もう・・・ダ、メ・・・体に、力が・・・入らない・・・)

 

視界が狭くなっていき、意識が遠のいていく・・・。口が開いていても、息を吸うことができない。

 

「ああ! グレースが大変ニャ!!」

 

(うぅ・・・このまま、じゃ・・・3人、とも・・・死んじゃ、う・・・)

 

「でも・・・この状態じゃ、どうしようもないペエ・・・」

 

(私、たちは・・・何、も・・・守れない、の・・・?)

 

スパークルとフォンテーヌは、グレースの方を見ながらも絶望的な表情を浮かべていた。メガビョーゲンにここで光線を当てたところで通用していなかったのはわかっている。じゃあ、どうすればいいのか?

 

どう考えても、この状況を覆す方法が浮かんでこない。そうしているうちに、フォンテーヌとスパークルの視界にも霞がかかっていく。

 

「ぐっ・・・んぐぅ・・・!!」

 

設楽は膝をつきながら体が病気に蝕まれていくのを感じ、苦痛に呻いている。

 

(所詮、非力な人間の俺には、一人も救えねぇってことかよ・・・!!)

 

そんな中でもプリキュアたちが危機に陥っているのを見て、顔を俯かせて悔しそうな表情を浮かべる。

 

自分にあんな言葉を言ってくれたお嬢ちゃんたちは、今はあの怪物によってやられようとしている。状況はもはや絶望的だった。

 

何が、気持ちさえあれば自分でも救えるかもしれないだ。あんなことを言われて、心が変わったとしても、結局はコスプレの娘たちに助けられているだけ。自分が情けねぇ。あの時の、過去の俺がここにいたら殴りたいとすら思う。

 

そんな記憶の中、浮かんでくるのは、自分をかつて助けてくれた紫のコスプレの女だった。あいつは、この街を、病院の患者を必死に救おうとしていた。結果的にあいつは俺のことを助けてくれたのだ。

 

街がこんな状態になっちまって、今は姿を消してしまったが、あのときの俺は心の奥底では誰かに助けて欲しいと思っていたのかもしれない。絶望的な状況、医者だけど祈っても大丈夫だろうか・・・?

 

(なあ、俺をあのとき助けてくれたお嬢さんよ・・・! まだここにいるんだろ・・・? あいつらがピンチなんだ・・・出てきて助けてやってくれよ・・・!!)

 

設楽は心の中で、もう今はいないあの女性の名前を呼び続ける。

 

(なあ、頼むよ・・・俺もようやく、人を救うのを諦めたくねぇっていうのが芽生えてきたところなんだ・・・!! 別に俺のことはどうなったって構わねぇ・・・!! 助けてくれるんだったら、この俺の命なんかくれてやる・・・!! だから・・・だからよぉ・・・!!)

 

設楽は地面を掴む手を強くしていく・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつらを、助けてやってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

設楽が断腸の思いで、叫び声を上げた・・・その時だった・・・!!

 

キラン。ブォォォォォォォォォォォン!!!!

 

どこか遠く山奥から光る何かが飛び出していき、ものすごい速さでどこかへと向かっていく。

 

「終わったわね。・・・ん?」

 

クルシーナはもうすぐでプリキュアたちは完全に倒される、そう確信していると、何かが遠くからとてつもない力が飛んでくるのを感じた。

 

「何か、来ますよ・・・」

 

「この気配は・・・?」

 

ドクルンも何かを感じ取って、クルシーナと同じ方向を向き始める。

 

三人娘が全員同じ方向を向いたその直後、光る何かが飛び出してきて、プリキュアの首を絞めているマフラーを切断する。

 

「メ、ガ・・・?」

 

メガビョーゲンは突然のことにバランスを崩して驚く。そして、光る何かは下から上、右から左、左から右へとまるで殴りつけるかのようにメガビョーゲンに体当たりを仕掛ける。

 

「メガ・・・メッガ・・・メガ・・・ビョーゲン・・・!?」

 

メガビョーゲンは避けることができず、最後に胸の部分に体当たりを食らうと後ろへと倒される。

 

「なんだと・・・!?」

 

「「!!??」」

 

三人娘も突然の出来事に驚きの表情を隠せない。

 

「ゲホゲホゲホゲホゲホッ!! はぁ・・・はぁ・・・な、何・・・?」

 

「何が起こってるラビ・・・?」

 

メガビョーゲンの首絞めから解放されたグレースは地面に手をつき、喉を抑えながら激しく咳き込む。息を整えながら、突然現れた光を驚いたように見る。

 

「かはっ・・・はぁ・・・あ、あの光は・・・?」

 

「わからないペエ・・・僕も見たことがないペエ・・・」

 

フォンテーヌも喉を抑えながら、息を吸い込みつつ光の玉を見る。

 

「んんぅ・・・あたしたちを、助けて、くれてる・・・?」

 

「そう見たいニャ・・・」

 

スパークルも息を整えつつ、そのように声を上げる。

 

ピカァ!! ブォォォォォォォォォォン!!

 

光の玉はプリキュア3人に近づいていくと、そこから3つの光に分かれてプリキュア3人の中へと入っていく。

 

その瞬間、プリキュアたちの体が光始め、何かとてつもない力が流れ込んでくるのを感じてくる。

 

「何か力が、湧いてくる・・・」

 

「私たちに、守って、って気持ちが伝わってくるわ・・・」

 

「何か、暖かいな・・・」

 

プリキュアたちは力と共に、暖かい何かが流れ込んでくるようにも感じる。

 

他人を思いやる気持ち・・・みんなを助けて欲しいという気持ち・・・そして、何よりも相手と寄り添うための気持ち・・・そんないろいろな何かが溢れてきて、暖かくなってくる・・・。

 

プリキュア3人のそんな様子を設楽は驚いたように見ていた。

 

(俺の祈りが・・・届いたのか・・・?)

 

彼女たちを助けて欲しいという気持ち・・・そんな真摯に願っていた心が、あいつに届いたのだろうか・・・?

 

「・・・へぇ、私たちが消してもまだ逆らうつもりなんだ、あいつ」

 

クルシーナはプリキュアに注がれたあの力の正体を知ると、不機嫌そうな顔をより一層不快にする。

 

「メガビョーゲン!!」

 

メガビョーゲンは立ち上がって、プリキュア3人の前に立ちはだかる。

 

「フォンテーヌ! スパークル! いくよ!!」

 

グレースの言葉に、二人は頷くとメガビョーゲンに向き直る。

 

「メガビョーゲン、やれ」

 

「メーガー!!」

 

クルシーナが冷静に命令すると、メガビョーゲンは胸の装甲に赤黒い何かを溜めると極太の白と黒いイバラビームを放った。

 

プリキュアの3人はそれを飛んでかわす。

 

「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

3人は同時に飛び蹴りを放ち、胸のあたりに直撃する。

 

「メ、ガッ・・・!?」

 

蹴りが効かなかったはずのメガビョーゲンの体にプリキュアの光る何かが足先から入り始める。それはメガビョーゲンの中にいるすでに透けて消えかかっているエレメントさんに注がれ、エレメントさんは透明さがなくなっていき、元の色を取り戻していく。

 

エレメントさんは、仮死状態から意識を無くす一歩手前まで体調が戻ったのだ。

 

「エレメントさんが!!」

 

「生気が戻ったラビ!!」

 

グレースとラビリンが、中にいるエレメントさんが少し回復したのを見て喜びの声をあげる。

 

「よかったー!!」

 

「本当によかったニャ!!」

 

スパークルとニャトランも瞳を潤ませつつも、回復したことを喜んでいた。

 

「まずは一安心ペエ!!」

 

「早く、このメガビョーゲンを浄化してあげましょう!」

 

フォンテーヌとペギタンにも安堵の声が漏れる。

 

プリキュアたちに希望の光が見えてきた。これならメガビョーゲンだって浄化ができるかもしれない。

 

「メーガー!!!」

 

メガビョーゲンは体を高速回転させてプリキュアを吹き飛ばそうとするが、3人はその前に体を蹴って地面へと着地する。

 

メガビョーゲンは回転を止めた瞬間に、再び3つのパーツに分裂して襲いかかろうとする。

 

プリキュアたちはお互いに頷くと、それぞれのパーツを相手をしようとする。

 

両腕からプロペラへと戻ったパーツは、腕のように変形させるとスパークルに向かって3本の爪から黒い雷撃を集束させて放つ。

 

「ぷにシールド!!」

 

スパークルは肉球型のシールドを展開すると、黒い雷撃を防ぐ。さらにプロペラは両腕へと戻ると同時にロケットパンチのようにスパークルへと飛び出した。

 

「ふっ・・・!!」

 

スパークルはシールドを押されて後ろへと下がっていくも、体が光ったかと思うと肉球型のシールドを逆に押していく。

 

「はぁ!!!」

 

さらにそこから黄色い菱形のエネルギーを集めるとゼロ距離で放つ。両腕を巻き込んだエネルギーは空中へと飛んでいき・・・・・・。

 

ドォォォォォォン!!!

 

爆発したかと思うと、両腕はプロペラへと戻り、爆発の煙の中から退避する。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

スパークルはパーツの後ずさった隙をついて飛び上がり、パンチを食らわせる。直撃を受けたパーツは黄色い光となって消滅した。

 

一方、下半身のパーツはピョンピョンと飛び上がってフォンテーヌを翻弄しようとしていた。フォンテーヌは動きを冷静に見ながら、攻撃する場所を見極めていく。

 

「絶対に攻撃するチャンスがあるはずペエ」

 

「ええ!」

 

ペギタンと共に気を緩めないように、下半身のパーツの動きを見極める。下半身のパーツはフォンテーヌに攻撃を仕掛けようとピョンピョンと飛び回る。

 

しばらくのにらみ合いの末、下半身のパーツはフォンテーヌの上へと飛び上がって、振り向きざまに爪を振り上げようとする。

 

「そこよ!! 氷のエレメント!!」

 

フォンテーヌは動き回る下半身のパーツの動きを見極めていた。ヒーリングステッキに氷のエレメントボトルをセットする。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

フォンテーヌの体が光ったかと思うと、ステッキからは極太の冷気をまとった光線が放たれた。光線は飛び上がった下半身のパーツに直撃し、氷漬けになると地面へと落下した。

 

「やったペエ!!」

 

ペギタンが喜びの声をあげるも、下半身は氷漬けになりながらも氷から脱出しようとガクガクと震わせている。

 

「氷の中から出ようとしているわ!」

 

「今のうちに攻撃するペエ!!」

 

「ふっ! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

フォンテーヌは下半身のパーツの真上へと飛び上がると、体を一回転させると踵を落とす。

 

氷漬けのまま踵落としを受けた下半身のパーツは青い光に包まれたかと思うと粒子となって消滅した。

 

「ま、まさか・・・? なの・・・」

 

「・・・浄化されるのも時間の問題ですね」

 

イタイノンはメガビョーゲンが圧倒されているのを見て愕然とした表情で見ており、ドクルンはメガネを上げながら感情のこもらない冷静な声を漏らしていた。

 

しかし、二人とは別にクルシーナはその様子を無表情で見つめていた。

 

「ふん・・・・・・」

 

唐突に不敵な笑みを浮かべるとその戦いを見届けることなく背を向けて、歩いていく。

 

「クルシーナ?」

 

「どこへ行くの・・・?」

 

ドクルンはその様子を見て疑問の声を上げ、イタイノンもどこかへ行こうとする姿が気になって見やる。クルシーナは特に質問に答えることなく、手を握る動作だけを二人に見せる。

 

ドクルンはそれを見ると何かを察したように不敵な笑みを浮かべ、イタイノンも何かを感じているのか無表情で後ろ姿を見つめていた。

 

クルシーナはプリキュアたちから見えない近いところに隠れると指笛の動作をし始める。

 

一方、ハート形の枠のメガビョーゲンを相手にしているキュアグレースは・・・。

 

「はぁ!!」

 

ヒーリングステッキからピンク色の光線を放つ。

 

「メガ!!」

 

メガビョーゲンは体を回転させて光線を弾くとともに、白と黒のイバラビームを無差別に放ち始めた。ビームは植物が成長するかのような軌道を描きながら放たれていく。

 

「ぷにシールド!!」

 

グレースは肉球型のシールドを張って弾幕に備える。

 

ドォン!! ドォン!! ドォォォォォォォン!!

 

白と黒のイバラビームは着弾して爆発を起こし、地面を揺らしていく。

 

「くっ・・・!!」

 

「やっぱり大きい分、タチが悪いラビ!!」

 

グレースが顔を顰め、ラビリンがエレメントさんが戻っても強いことに変わりはないことにぼやく。

 

融合する前の3体のメガビョーゲンのうち、一番大きかったのはこの個体だ。すでに広範囲を蝕んでいるであろう巨大な体をしていて、ダルイゼンが発生させていたメガビョーゲンと変わりのない大きさだ。

 

そこへパーツを倒してグレースへと合流したフォンテーヌとスパークルがぷにシールドを踏んで飛び上がる。

 

「ふっ!!」

 

「はぁっ!!」

 

フォンテーヌがメガビョーゲンの顔面に向かって蹴りを繰り出して回転を止め、そこへスパークルがドロップキックを放ってメガビョーゲンを吹き飛ばす。

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンは空中で態勢を立て直すと、トゲのような触手についているハサミから白と黒の薔薇ビーム、バラのような花から赤く短いレーザーを放った。

 

2人は肉球型のシールドを貼ると、ビームやレーザーの直撃に備えて防いでいく。

 

「実りのエレメント!!」

 

グレースはその間にヒーリングステッキに実りのエレメントボトルをセットする。グレースの体が光ったかと思うと、ステッキの先からピンク色の極太の光の刃が作り出される。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「メガァー!!??」

 

グレースは二人の前へと飛び出して、ピンク色の光の斬撃を振るう。斬撃はハサミと薔薇の花がついているトゲの触手を切断し、メガビョーゲンの胴体に直撃して再び落下していく。

 

「2人とも、今だよ!!」

 

グレースの言葉に、フォンテーヌとスパークルは頷き返す。お互いに体を光らせながら。

 

3人は花と水と光の装飾がついたエレメントボトルをステッキにセットする。

 

「「「トリプルハートチャージ!!」」」

 

「「届け!」」

 

「「癒しの!」」

 

「「パワー!」」

 

グレース、フォンテーヌ、スパークルの順で肉球にタッチしていき、ステッキを上に掲げる。すると、花畑が広がっていき、背後には自然豊かな森が広がっていく。

 

さらにプリキュア3人の背後に、設楽が話していたとされる紫色のコスプレ姿をした女神の姿が映し出されていく。

 

「「「プリキュア! ヒーリング・オアシス!!」」」

 

3人は一斉にメガビョーゲンへとステッキを構え、ピンク・青・黄色の3色の光線が螺旋状になって放たれる。螺旋状の光線は混ざり合いながら一直線にメガビョーゲンに直撃する。

 

螺旋状になった光線はそれぞれの色の手へと変化して、3本の手が花のエレメントさん、水のエレメントさん、光のエレメントさんを優しく包み込んでいく。

 

3色に光るハート状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんをメガビョーゲンから外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「「「「「お大事に」」」」」」

 

こうして三人娘の生み出したメガビョーゲンは浄化され、エレメントさんたちは解放されたのであった。

 

「やった、な・・・お嬢、ちゃんたち・・・」

 

設楽はプリキュアたちが怪物を倒せたことに安堵しながら、限界を迎えて倒れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救い出したエレメントさんたち3人は、ここには元に戻る場所がないため、プリキュアたちの目の前で漂っていた。

 

プリキュアに変身している3人はそれぞれ聴診器をしながら、エレメントさんの声を聞く。

 

「エレメントさん、調子はどうですか?」

 

『ちょっと少し体に負担は残りますが・・・でも、大丈夫です!』

 

『みなさんのおかげで助かりました!』

 

エレメントさんたちからとりあえずは無事であることを聞かされると、プリキュアの3人は安堵した。

 

「でも、まだラテ様が・・・!」

 

ラビリンは体調の戻っていないラテのことを心配する。表情は辛そうにしていて、まだ呼吸も少し荒くなっている。

 

『でしたら! 先ほどのエレメントボトルを差し上げてください!』

 

光のエレメントさんに言われて、グレースは先ほどのエレメントボトルをラテの首輪にはめる。

 

「ワフ~ン♪」

 

ラテは先ほどから重症だったのが嘘だったかのように元気になった。

 

「「「ラテ様~!!」」」

 

「よかった・・・よかったペエ・・・!!」

 

「はぁ、今回はどうなるかと思ったニャ・・・」

 

ヒーリングアニマルたちはラテが元気になったのを見て安心する。

 

「すごい・・・! あんなに辛そうだったのに、一気に治るなんて・・・!!」

 

「ミラクルなヒーリングボトルだね!!」

 

ちゆが驚き、ひなたが喜ぶ中、ラビリンはまだ名前のないエレメントボトルに何かをひらめいた。

 

「そうラビ! これをミラクルヒーリングボトルと名付けるラビ!!」

 

「ワン♪」

 

「えへへ。ラテも賛成だって」

 

ラビリンの名付けた言葉に、ラテもどうやら気に入った様子。

 

『今回は本当にダメかと思いました。あと少し遅れてたらどうなっていたことか・・・』

 

「ううん。私たちも設楽先生のおかげで助かっ、て・・・!?」

 

花のエレメントさんの言葉に、グレースはそう言いながら設楽の方を見るが、すぐに驚愕の表情を浮かべた。なんと彼女の視線の先には設楽がうつ伏せになって倒れていたからだ。

 

「せ、先生!!」

 

グレースはすぐに設楽の元へと駆け付ける。体を起こすと彼は苦痛に表情を歪めていた。

 

「ぐ、うぅ・・・!」

 

「先生、大丈夫ですか!?」

 

「お、お嬢ちゃん・・・俺の中にも、まだ医者の心があるって知れて・・・よかったぜ・・・」

 

そう言う設楽は額に汗をかなり滲ませていてどう見ても辛そうな感じだった。

 

『こ、これは・・・! 彼の中に病気が広がっています。しかもこれは、かなり強力な・・・!』

 

「え、嘘でしょ・・・? だって、メガビョーゲンは浄化したのに・・・!?」

 

「ど、どういうことなの!?」

 

フォンテーヌとスパークルたちが駆け寄るも、エレメントさんの一人が設楽の中に見える赤く蠢く何かを見る。先ほどメガビョーゲンは浄化したはずだが、設楽の中で蝕まれている病気は消えていなかったのだ。

 

「気にすんな・・・! 俺はお前らの、役に立てて、よかったと思ってんだ・・・」

 

「でも・・・!!」

 

「いいんだよ、俺は・・・!! 医者の、勘ってやつだ・・・もう無理だってことも、わかってる・・・!!ぐ、うぅぅ・・・!!」

 

設楽は胸に痛みが走ったことで呻く。

 

「先生!! しっかりしてください!!」

 

「こんなの嫌だよ・・・! 先生が治らないなんて・・・!」

 

フォンテーヌとスパークルが悲痛な声を上げるも、設楽の体調は悪化するばかりだ。

 

「ぅぅ・・・お手当てをするやつが、いちいち動揺してんじゃねぇ・・・!! お前らは、地球を救える、プリキュアって、やつ、なんだろ・・・? 俺ができなかったことを、お前らができるかもしれねぇんだ・・・だから、地球を・・・この街を・・・そして、あいつらを・・・救ってやってくれ・・・! 俺の娘のことも・・・頼む・・・!」

 

設楽がまるで遺言のように言葉を並べる。もう自分が本当に助からない・・・そう悟っているかのような言葉・・・。

 

「ダメ・・・」

 

それに否定の言葉を漏らしたのはグレースだった。

 

「ダメだよ・・・!! 私たちは、地球をお手当てするためにいるけど、それよりも前に人を救えなかったら、それは・・・!!」

 

グレースはビョーゲンズに侵されているなら、それを浄化すれば治るはず・・・。そう思っているのだ。

 

「は・・・どうせ、人なんか、いつか死ぬもんさ・・・何十年、医者をやってたって、中には、救えねぇ命だって、存在すんだよ・・・」

 

「でも・・・先生はまだ、救えるはずでしょ・・・!?」

 

「そうです! アタシたちがあいつらの誰かを倒せば、きっと・・・!!」

 

設楽の言葉に納得がいかないフォンテーヌとスパークルは食い下がろうとする。

 

「!・・・俺にばっかり・・・構ってんじゃねぇ・・・!! わかんねぇが・・・人が助かっても、地球が、病気になれば、終わりなんだろ・・・!? お前らはお前らで、やれることをやってくれ・・・!! 俺を言い訳にして、立ち止まろうとするな・・・!!」

 

設楽は全くふざけていない、真剣な眼差しをプリキュアたちへと向ける。

 

「この街みたいな、悲劇を犯さないで、やってくれ・・・頼む・・・!!」

 

「い、嫌だ、やめてください・・・そんな言葉、聞きたくない・・・!!」

 

設楽がそう発破をかけるも、グレースは頭を抱えたまま蹲ってしまう。このまま苦しむ設楽先生を放っておくことなんかできない、でも彼は前に進めと言っている。その感情の板挟みになって、彼女の中に葛藤が生まれてしまったのだ。彼女の瞳からはポロポロと涙がこぼれている。

 

「あたしも、先生を残して、離れたくなんかない・・・!!」

 

スパークルも目の前に助けられるはずの彼を置いていくことができず、震える声で涙を流す。

 

「っ・・・・・・!!」

 

フォンテーヌは言葉こそ出さないものの、泣かないように堪えようとしていて、それでも辛そうな悲しそうな表情を見せながら涙をこぼしそうになっていた。

 

「お嬢ちゃんたちは、やっぱりお嬢ちゃんたちだな・・・まだ、ガキなのにさ・・・。でも、そういう純粋な心が、病気になる人やあいつらを救ってやれるんだろうな・・・」

 

設楽は悲しそうな表情でそう呟いた。目の前の少女たちが俺のために悲しんでくれている。俺はそれだけでもう十分だった。

 

「!! 危ねぇ!!」

 

設楽はふと横を見て、グレースに何かが迫っているのが見え、彼女を両手で押して突き飛ばす。その瞬間、迫ってきた黒い大流が設楽を飲み込んだ。

 

「え・・・?」

 

グレースはそれを見た瞬間、目を見開いて愕然とする。一瞬、何が起こったのかわからなかった。

 

世界がスローモーションとなっていくのを感じる。

 

・・・・・・設楽先生が、私を庇い、黒い大流に飲み込まれた。

 

グレースは黒い大流を呆然と見やり、飲み込まれた設楽の姿を見る。先生が黒い大流の中で赤い病気に覆われていく。

 

ふと設楽がプリキュア3人の方を見て、優しい微笑みを浮かべたなんだか悲しそうな表情で、声は聞こえないが、何かを口パクで伝えていた。

 

ーーーーあとは・・・頼んだ・・・。

 

グレースがそれを認識した瞬間、世界の速度が元に戻り、黒い大流は通り過ぎていった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お嬢ちゃんたち・・・ありがとよ・・・。

 

こんなしがないヤブ医者の俺にあんなことを言ってくれてよ・・・俺は、正直嬉しかった・・・。

 

茶髪の嬢ちゃんと藍色の嬢ちゃんを治して、久しぶりに医者の仕事をしたと思った・・・お前らが何ともなく助けることができて、本当に良かった・・・。

 

スーパードクターって言葉も、本当は嬉しかったんだぜ?

 

最初は逃げた自分なんか、今さら医者面だなんてと思った。俺みたいな最低な医者なんか、医者だなんて思うつもりはねぇって。

 

でも、お前らのあの言葉で、俺は救われてたんだ。医者として、人を助けられるなら、もう何もいらねぇ・・・何も思い残すことはねぇって・・・。

 

娘を助け出せなかったのは心残りだが、お嬢ちゃんたちならなんとかしてくれるって、俺は信じるぜ・・・。

 

短い間だったけど、本当にありがとう・・・。

 

後のことは、頼んだ・・・。

 

お前たちの住む町にも、この街みたいな悲劇を起こさないことを、俺は祈ってるぜ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せんせぇーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

グレースの悲痛な叫び声が、広場へと響いた・・・・・・。

 

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