ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。今回でオリストは最後になります!
そして、私が遂に出したかったあのキャラクターが登場します!


第33話「決意」

 

設楽を病気へと蝕み、飲み込んでいったストームビョーゲンは上空へと舞い上がって、プリキュアの上空へ戻るように飛んでいき、ビョーゲンズの幹部たちの上でサークルを描くように回り始める。

 

その様子を何が起こったかわからない、フォンテーヌとスパークルは呆然と見つめていた。

 

「あーあ、メガビョーゲンを浄化して油断しているところを蝕んでやろうと思ったのに、余計な邪魔が入っちゃった。でも、あの目障りなヤブ医者は潰すつもりだったし、まあ好都合ね」

 

クスクスと笑っているのはストームビョーゲンをけしかけた張本人であるクルシーナだった。

 

「はぁ、やっとモヤモヤが消えました。あのタヌキじじいをようやく消すことができて、万々歳です」

 

ドクルンはそう言いながら微笑を浮かべている。

 

「いい気味なの。そんな奴らと一緒にいるから、不幸が訪れたの。因果応報なの」

 

イタイノンは不敵な笑みを浮かべながら、クスクスと笑っていた。

 

「ふん、他人を助けるために、自分が病気に蝕まれちゃうなんて訳がないわよねぇ? フフフ・・・!!」

 

「ああ・・・先生・・・先生・・・」

 

目の前で先生を奪われたショックで、グレースは三人娘の言葉など聞こえておらず、地面にへたり込んで手を付き、呆然と何かをつぶやいていた。その表情には絶望が深く刻まれていた。

 

長い病院生活で目の前で人を失ったという実感が湧かないグレース。彼女の心は、三人娘の残酷な言葉に、すでにへし折れてしまっていた。

 

そんな中、呆然としていたフォンテーヌは三人娘の方を見る。

 

聞こえてくる三人娘の嘲笑・・・設楽先生への侮辱・・・そして、一人病気に蝕まれ、消えたというのに喜んでいるという狂った光景・・・。

 

それを感じたフォンテーヌは心の中に火が付いて、燃え上がっていくのを感じる。表情は三人娘を呆然とした表情から睨みつけるように怒りの形相となり、拳が震えるように握り締め、自然と足が動くように向かっていく。

 

「フォンテーヌ・・・?」

 

ペギタンがフォンテーヌの様子が変わったことに気づいて呟くも、彼女は歩みを進めていく。

 

そんなフォンテーヌの目の前に水のエレメントさんが何かを訴えるように飛ぶも、フォンテーヌには声が聞こえておらず、周りが見えていない。

 

そんな怯えたように呆然と見るスパークルの目の前に光のエレメントさんが飛ぶ。スパークルに何かを話そうとしている様子。

 

それに気づいたスパークルはハッとして、聴診器をエレメントさんへと向ける。

 

『あの三人は危険です! ここから早く逃げてください!!』

 

「え・・・どういうこと・・・?」

 

『何だかわかりませんが・・・あの三人からは邪悪で禍々しい力を感じます・・・! 今、立ち向かったとしても、それは私たちでさえも・・・!』

 

そこへ花のエレメントさんがスパークルの前に出てくる。

 

『それにあの黒い大流、私は聞いたことがあります・・・。あれは、古のプリキュアとテアティーヌ様でさえも苦しめたと言われている病気の集合体で・・・!』

 

「!! フォンテーヌ!!」

 

スパークルはエレメントさんの話を耳に挟むと、最後まで聞かずに向かおうとしているフォンテーヌの手を掴む。

 

「・・・スパークル、離して」

 

「ダメだよ!! なんだかわかんないけど、あたしたちあれに勝てない気がするの・・・立ち向かったってボロボロにされるだけだよ!!」

 

スパークルがそう呼びかけるも、フォンテーヌは俯いたままだった。

 

「離して」

 

「嫌だよ!」

 

「離して」

 

「嫌だ!!」

 

「離してよ」

 

「ダメ!!」

 

スパークルはフォンテーヌを説得しようとするが、怒りに駆られている彼女には言葉が届いていない。このまま離せばきっと後悔する。だから、スパークルは離さなかった・・・。

 

スパークルのこの行動に、怒りを抑えきれなくなったフォンテーヌはここで感情のダムが決壊したかのように掴まれている右手を暴れさせる。

 

「離して!! スパークル!! あいつらは!! あいつらだけは!!!!」

 

「落ち着いてよ!! フォンテーヌ!! フォンテーヌがそんな感情であいつらと戦ったら、お手当てをするプリキュアとして終わりな気がするんだよ・・・!」

 

「だからって見過ごせって言うの!!?? あいつらのひどいことを!! 目の前で大切な先生を消し去った上に、平然とあんな感じで笑っているのよ!!?? 私はそんなの耐えきれない!! あいつらに何か一撃与えてやらないと気が済まない!!!!」

 

「それをやらせたらあたし、フォンテーヌを同じプリキュアとして見れない気がするの!! そうやって怒って何かをやらせちゃったら、あたしたちは戻れなくなるような気がするの・・・!! お願いだから・・・周りを見てよ・・・。エレメントさんも、グレースも、ラテも、きっと苦しんでる周りの自然も・・・あたしのことも・・・ちゃんと見てよ・・・」

 

「私は・・・・・・!?」

 

フォンテーヌはそれでもなお食い下がろうとしていたが、自身の背中からすすり泣くような声がして、ついていた火が消化されていくような気がする。

 

フォンテーヌがゆっくりと振り返ると、泣いていたのはスパークルだった。その表情は瞳からポロポロと涙をこぼし、悲しそうな表情をしていた。

 

もうやめて、と訴えるような表情・・・ここは抑えてほしい、と懇願している表情・・・。

 

それを見たフォンテーヌは悲しく辛そうな表情になると、スパークルを抱き締めた。

 

「・・・ごめんなさい。私、どうかしてた」

 

「フォンテーヌ・・・」

 

「ありがとう・・・私、あのまま行ったら、お手当てをするということを忘れて自分の手を汚すところだった・・・先生の思いを無駄にしちゃいけないわよね」

 

スパークルは、フォンテーヌが落ち着きを取り戻してくれたことに安堵したような表情を見せる。

 

・・・と、その時だった。

 

ドスッ!!!!!!

 

「うっ・・・!?」

 

突然、フォンテーヌが目を見開いて空気を漏らす。体を震わせながら背後を振り返ると、そこにはいつの間にかドクルンが立っていた。

 

彼女の手は青いプリキュアの体の中に入り込んでいた。

 

「・・・何を臭い三文芝居をしているんですか?」

 

「ド、ドクルン・・・!!」

 

フォンテーヌが痛みに汗を滲ませたところを見て、無表情だった顔を笑みに歪ませる。

 

ドクルンは突っ込んでいる手を弄り始める。

 

「がっ、あぁ・・・!」

 

体の中を掻き回されているような激痛に、フォンテーヌが苦痛の声を漏らす。

 

「フォンテーヌ!!」

 

「や、やめて!!」

 

スパークルは悲痛な声を上げながらステッキをドクルンに向かって向ける。

 

シュタッ。バチッ!!

 

「あっ・・・!」

 

そこへイタイノンがスパークルの背後へと降りてきて、両手を彼女の肩に乗せて電気を流す。その瞬間、体に力が入らなくなり、地面へとへたり込んでしまう。

 

「イ、イタイノン・・・」

 

「ふん・・・」

 

「うわあぁ!!」

 

イタイノンは不敵な笑みを浮かべると、スパークルの襟に手をかけると彼女を背後へと引っ張って突き飛ばした。

 

「うぅ・・・!」

 

「お前の中にいる、私の種、ちゃんと育っているの」

 

地面へと倒されたスパークル。そこへイタイノンが近寄り、躊躇なく手のひらを押し当てる。

 

「私の種、採取させてもらうの」

 

「あぁ・・・ぐぅ・・・!」

 

手を押し当てられ、体の中に何かが駆け巡るかのような痛みにスパークルは呻く。体がまるで硬直したかのように動かなくなる。

 

「見つけましたよ」

 

「ぐぅ・・・か、は・・・!?・・・!!・・・!?」

 

ドクルンは弄っていたフォンテーヌの体の中で何かを見つけたようで不敵な笑みを浮かべるとそれを掴む。その瞬間、フォンテーヌの目は見開かれ、目尻に涙が浮かぶ。

 

彼女が掴んだものは肺の気管支の部分だった。フォンテーヌの口から空気が吐き出され、彼女はまるで気道を何かで塞がれたかのように呼吸ができておらず、口をパクパクとさせていた。

 

「!? ああ・・・フォンテーヌ!! スパークル!!」

 

呆然とした表情になっていたグレースが、二人がビョーゲンズに手をかけられていることに気づいてハッとし、駆けつけようとする。

 

このままでは、二人も死んでしまう・・・私の前からいなくなってしまう・・・! 半ば失うのを怯えるかのように二人を助けようとする。

 

そんな彼女の目の前にクルシーナが飛び降りてくる。

 

「二人のことは気にすることないじゃない。アタシと遊びましょう?」

 

「ク、クルシーナ・・・」

 

グレースは不敵な笑みを浮かべたクルシーナを見て、何かに怯えたように後ずさる。その笑みには狂気を感じる・・・・・・。

 

「どうしたの? 怖がることないじゃない」

 

「こ、来ないで・・・!」

 

クルシーナはそう言って焦らすようにゆっくりと数歩近づいていくと、グレースは拒絶の言葉を震える声で漏らしながら後ろへと下がっていく。

 

「逃げないでよ。アタシとお前の仲でしょ? いつも一緒だったじゃない」

 

「嫌・・・嫌ぁ・・・!」

 

「グレース!! しっかりするラビ!!」

 

クルシーナが手を広げながら言葉をかけてくるも、グレースは首を振りながら後ろへと後ずさっていく。

 

ラビリンはそんなグレースに発破をかけようとする。一体、どうしたというのか? 先生が目の前で黒い大流に飲み込まれてしまい、彼女の様子が明らかにおかしい。何かトラウマが甦ってしまったのだろうか。

 

クルシーナは手のひらを広げると白と黒のイバラビームを放って、グレースの左手に括り付ける。そして、彼女を引っ張って引き寄せる。

 

「ああ・・・!!」

 

「フフフ・・・あなたの怯えた顔も可愛い・・・」

 

「い、嫌だ・・・嫌っ・・・やめて・・・離して・・・!!」

 

クルシーナはグレースを抱き寄せて、彼女の首に手を回して逃げられないようにすると、グレースの頬を優しく撫でながら、首筋に触れる。グレースは首を振りながら、足をジタバタとさせるもクルシーナにはビクともしない。

 

クルシーナはグレースが完全に戦意喪失していることを確認し、彼女の髪を優しく撫でてあげる。

 

「連れないこと言わないでよ。アタシと一緒に逝きましょう」

 

「ああ・・・ああ・・・」

 

そう言うクルシーナの周りには、設楽先生を病気に蝕んで、飲み込んだ黒い大流と似たような、黒いタワーのようなものが地面から複数生やしていた。小さな妖精のような何かが蠢くように動いている姿を見て、グレースは恐怖で体を震わせる。

 

「どうしたの? 寒いのかしら? アタシが抱きしめて温めてあげる。怖くないように・・・」

 

「ぁぁ・・・ひぃ・・・ひぃぃ・・・!」

 

そう言ってグレースを抱きしめるクルシーナ。しかし、治まるどころか彼女の体の震えは大きくなっていき、ついには恐怖心が限界を迎えて過呼吸を起こしてしまっていた。

 

「ふむ・・・」

 

ドクルンはフォンテーヌの体から手を引き抜く。フォンテーヌは倒れそうになりながらも、なんとか踏ん張って止まる。

 

「うぅぅ・・・ゲホッ!ケホッ!カハッ!・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

首を絞めていた手から解放されるかのように止まっていた呼吸が再開され、急に酸素を取り込んだ勢いで咳き込む。霞んでいた視界が元に戻り、ドクルンの姿が見えるようになる。

 

「おや、耐えましたねぇ。まあ、いいでしょう」

 

そう言うドクルンの右手には黒い氷のようなものがあった。あれが私の中にあったの・・・?

 

フォンテーヌはそう思うと心の奥底から寒気がしてならなかった。

 

「こっちも欲しいものは手に入ったの」

 

イタイノンは右手に赤いクリスタルのようなものが握られていた。クリスタルは黒い電気をバチバチとさせていて、禍々しいオーラを放っていた。

 

「うぅぅ・・・!」

 

「スパークル!!」

 

フォンテーヌは側に倒れて呻いているスパークルに、イタイノンと入れ替わりになるかのように駆け寄る。

 

「スパークル! 大丈夫!?」

 

「う、うん、なんとか・・・でも、体が金縛りみたいになって、すごい痛かったよ・・・」

 

フォンテーヌがスパークルの体を起こすと、彼女はゆっくりと立ち上がる。イタイノンに何かされたようだが、どうやら何ともない様子。

 

「ねえ、グレースは・・・?」

 

「!?」

 

スパークルに問われたフォンテーヌはグレースの方を見ると、彼女はクルシーナに口づけをされていた。

 

「んんん!! んん! んんんぅ!!」

 

グレースは逃れようと足をジタバタとさせ、手はクルシーナの顔をペチペチと叩いていたが、彼女は全く意に介することなく、口づけを続けている。グレースの目には涙が浮かんでいた。

 

「グレース!!」

 

「早く助けないと・・・!!」

 

フォンテーヌとスパークルはすぐにステッキから光線をクルシーナに目掛けて放つ。しかし、クルシーナは目線で光線を視認すると片足を地面に叩きつけて、白と黒のイバラを生やす。二つの光線は呆気なく防がれてしまった。

 

「ぷはぁ・・・」

 

クルシーナはグレースから口を離すと、その場から姿を消して、ドクルンとイタイノンのそばに姿を表す。

 

「グレース!!」

 

「ああ・・・ああ・・・」

 

フォンテーヌは倒れそうになるグレースを抱きとめ、スパークルがそこに駆け寄る。

 

「グレース! 大丈夫!?」

 

「ああ・・・フォン、テーヌ・・・スパー、クル・・・」

 

すでにハイライトの消えた虚ろな瞳をしていたグレースは駆けつけたフォンテーヌとスパークルの姿を見ると、抱き留めてくれたフォンテーヌに思いっきり抱きつく。

 

「うぅ・・・怖かった・・・怖かったよぉ・・・!!」

 

「グレース、本当にどうしたのよ? いつものあなたらしくないわ・・・」

 

「ダ、ダメ、なの・・・体が震えて・・・」

 

フォンテーヌは明らかにグレースの様子がおかしいことに気づくも、彼女の頭をそっと撫でてあげる。

 

先ほどから尋常ではないほどに怯えている。どう考えても、いつもの彼女じゃない。

 

「グ、グレース・・・フォンテーヌ・・・」

 

「ま、周りが、囲まれて・・・!?」

 

「「!?」」

 

そんな二人に聞こえるのは動揺するスパークルとニャトランの声。不穏に思い、周りを見るといつの間にか黒い大流が自分たちの周囲を取り囲むように回っていた。それはまるで竜巻の中心にいるかのよう。

 

さらに地面からは黒いタワーのようなものが複数、禍々しく動きながら生えている。

 

「な、何、これ・・・!?」

 

「ああ・・・ああ・・・」

 

フォンテーヌは目を見開きながら周囲を見渡していく。黒い大流に囲まれていて、どこにも隙間がなく、逃げる場所がない。

 

グレースは黒い禍々しいものが蠢いているのを見て、体を震わせる。表情はすでに恐怖へと染まっていた。

 

「フフ・・・もうどこにも逃げられはしませんよ。あなた方を野放しにしているといろいろと都合が悪いので」

 

「目障りなやつがいなくなれば、私の居場所も簡単に確保できるの」

 

「というわけだから、三人まとめて苦しみの底に落としてあげる。死にたいと思うほどの苦痛を味あわせてねぇ」

 

三人娘はそれぞれそう言うと、一斉に手を上げて振り下ろした。

 

すると、黒い大流は徐々にプリキュアたちの逃げ場を無くすかのように範囲を狭めていき、黒いタワーは徐々ににじり寄ってきた。

 

「くっ・・・!」

 

フォンテーヌは悔しそうに歯をくいしばると、ステッキから光線を放つ。黒い大流には直撃するが、虫を落とすかのように小さな妖精が散らばっても、再度新たな小さな妖精が集まるだけで何の意味もなかった。

 

光線を何度も打っても状況は全く変わらない。ここから逃れられる手段が、ない・・・。

 

「アッハハハハ!! 無駄よ無駄! 大人しく病気に蝕まれるんだね」

 

クルシーナはフォンテーヌの無駄なあがきを嘲笑する。

 

黒い大流たちに追い詰められ、逃げ場を無くしてしまうプリキュアたち。

 

「ふ、二人とも・・・!!」

 

「っ・・・何か、方法はないの・・・?」

 

「ああ・・・ダ、メ・・・誰か、助け・・・」

 

スパークルとグレースの表情は絶望に染まっていた。特にグレースは地面にへたり込んで自身の身体を抱きしめてガクガクと震わせていた。

 

フォンテーヌはこんな状況でも考えを巡らせるも、何一つこの場を打開する策が思いつかない。

 

このまま、三人とも餌食になってしまうのか・・・?

 

と、そのとき、三人の近くに光る何かが近寄る。

 

「これは・・・?」

 

「エレメントさん・・・?」

 

エレメントさんたちはそれぞれのプリキュアの前に立つようにして構えていた。三人に何かを話すように動いた後、自らの体を発光させていく。

 

パァァァァァァァァァァ!!

 

「っ・・・な、何だ・・・!?」

 

三人娘たちは眩しさのあまり顔を手で覆う。この場であいつらが奇跡を起こせるはずもない。一体、プリキュアたちに何が起こっているのか・・・?

 

パァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

玉のように自分たちの体を光らせていくエレメントさんたち。すると、3本の光の柱が上がり、天へと登っていく。

 

光の柱が消えていき、三人娘がようやく覆っていた手を退けてみると、広場に立っていたはずのプリキュアの姿は消えていた。飛び回らせたストームビョーゲンや、配置していたタワービョーゲンの姿もなかった。

 

「ちっ・・・逃げられたか・・・」

 

クルシーナは不機嫌そうな表情でそう呟いた。

 

「ふぅ・・・まあ、いいでしょう。私とイタイノンは欲しいものは手に入りましたからねぇ」

 

「キヒヒ・・・」

 

「・・・ふん」

 

それぞれ黒い氷、赤黒いクリスタルを手にしているのを見たクルシーナは不敵な笑みを浮かべ、鼻を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「のどか!! のどか!!」

 

ラビリンがのどかの体を揺さぶる。その隣には彼女を心配そうに見つめるエレメントさんの姿もあった。

 

「うぅぅ・・・うん・・・」

 

のどかは呻き声を漏らしながら、目を開く。

 

「ここは・・・?」

 

「元の場所ラビ! ラビリンたち、帰ってきたんだラビ!」

 

「!!・・・ああ・・・あぁ・・・」

 

ラビリンからそう聞かされるのどか。すると、のどかはあの時と同じ怯えた表情を見せ始めた。自分の体を抱きしめて横になり、プルプルと震え出す。

 

のどかの頭の中に流れる記憶・・・それは、自分の眼の前で黒い大流に飲み込まれた設楽先生。そして、自身に迫ってくるクルシーナ。

 

のどかは記憶がフラッシュバックすると、自身の体を抱きしめてガクガクと震え出す。

 

「うぅぅ・・・あぁ・・・」

 

「のどか、どうしたラビ!?」

 

「・・・怖い・・・怖いよぉ・・・!」

 

のどかの瞳からは涙が溢れていた。

 

彼女はあの時、生まれて初めて感じたことのない感情を抱いていた。

 

それは・・・・・・恐怖・・・・・・死の恐怖・・・・・・。

 

設楽先生が飲み込まれた際、人はあんなに簡単に消されてしまうのだ、人間はか弱い小さな生き物なのだということを思い知らされた。それは自分たちはプリキュアであっても同じように感じてしまう。

 

そして、クルシーナはまるで自分が見た夢の中の少女のように、自身に迫ってきたのだ。感じた寒気・・・・・・殺されてしまうという恐怖・・・・・・。

 

ーーーー俺はその方が居心地いいからさ。

 

ーーーー自分さえよければそれでいいの・・・!?

 

ーーーーいいけど・・・?

 

ダルイゼンのときに感じ取った感覚、それは人の悪意・・・病院生活が長かったのどかにとっては初めて感じたドロドロとしたような感覚だった。しかし、今回のこれはその比較にもならない。

 

のどかはプリキュアとして戦うことが、怖くなってしまったのだ・・・・・・。

 

「あ、ちゆちゃんとひなたちゃんは!?」

 

のどかはハッとして体を起越して、周囲を見渡すと自分と同じように倒れているちゆとひなたの姿があった。

 

「!! ちゆちゃん!! ひなたちゃん!!」

 

のどかは立ち上がって、まずちゆに駆け寄ると彼女の体を揺さぶる。そして、すぐそばに倒れているひなたの体を揺さぶる。

 

「んん・・・あ、のどかっち・・・?」

 

最初にひなたが目を覚ます。ひなたが目を覚ますと、そこにはすでに涙に濡れているのどかの顔があった。

 

「のどかっち、泣いてるの・・・? わぁ!?」

 

のどかはたまらずひなたの体を抱きしめる。

 

「うぅぅ・・・よかった・・・よかったぁ・・・」

 

「どうしたの? のどかっち・・・あたし、別になんともないよ?」

 

変なのどかっちだなぁ・・・・・・ひなたはそう思いながらのどかの体を抱きしめ返す。

 

「えっと・・・ここは・・・?」

 

「元の場所ニャ! 俺たち帰ってこれたんだ!!」

 

ひなたの問いに、ニャトランが声をかける。

 

「あ・・・私たち、戻ってこれたのね・・・」

 

「ちゆー!!」

 

「あ、ペギタン・・・心配かけたわね・・・」

 

次にちゆが目を覚まし、二人の姿を見て安心し、抱きついてくるペギタンを優しく抱擁する。

 

「ちゆちゃん・・・! よかったよぉ・・・」

 

のどかはちゆも無事であることを確認すると、ポロポロと涙をこぼしていく。

 

「のどかっち、苦しい・・・」

 

「あ、あ、あぁ・・・ごめんね・・・!」

 

のどかは怯えたような声をあげて、慌てて彼女から体を離す。彼女はふと自分の手を見ると、プルプルと震えているのがわかった。

 

「・・・・・・?」

 

「なんか言ってる・・・?」

 

すると、ちゆの近くにエレメントさんが何かを呼びかけるように動いている。プリキュアの3人は聴診器をしてエレメントさんたちに向ける。

 

『みなさん、無事でよかったです! あのままあそこにいたら、三人ともあの三人娘にやられるところでした』

 

「エレメントさんたちは、何ともないんですか・・・?」

 

ちゆはエレメントさんたちの容体を心配する。エレメントさんたちはきっと私たちをあの場から逃がすために力を使ってくれたと思う。そのことで体調が悪くなっていないか心配だった。

 

『はい! 私たちはなんともありません。でも・・・そこのピンクの髪のお嬢さんは・・・・・・』

 

花のエレメントさんは、ピンクの髪のお嬢さんーーーー要するにのどかの精神状態を気にしていた。聴診器をして聞いてはいるものの、その表情はなんだか辛そうなものだった。

 

ちゆとひなたも、のどかのことを心配そうに見つめる。それを見たのどかは顔を俯かせる。

 

「のどか・・・あ・・・!?」

 

ちゆが何か言葉をかけようとしたが、その前にのどかはちゆに抱きついた。そして、彼女がガクガクと体を震わせているのがわかる。

 

「ちゆちゃん、ひなたちゃん、ラビリン・・・私、怖いの・・・」

 

のどかが声を震わせながら感情を吐露し始める。

 

「先生が私たちの目の前であんなことにあって、初めて心の底から怖いって感じたの・・・。そしたら、私、思っちゃったの。このままビョーゲンズと戦い続けたら、ちゆちゃん、ひなたちゃん、ラビリンやラテ、みんなみんな消えて、私も消されちゃうんじゃないかって・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「私、プリキュアとしてお手当てするのが怖い・・・! それで大切なものが消されちゃうのが怖い・・・! 本当は、そんなこと考えちゃいけないのに、無理だよ・・・私、もう戦っていく自信がない・・・みんなを守れなかったらって思うと、体が震えて・・・・・・もう無理だよ・・・!!」

 

のどかはそう言いながら、嗚咽を漏らしながらすすり泣き始める。体の震えはまだ続いていた。

 

ちゆたちはお互いに悲しそうな顔を見合わせる。彼女にどんな言葉をかけていいかわからない。

 

「のどか!!!」

 

そんな中、声を張り上げたのはラビリンだった。のどかは泣くのをやめるとラビリンの方を向く。彼女の顔は可愛い外見だが、今は怒りの表情を見せていた。

 

「ラビリンもあまり大きなことは言えないけど・・・これだけは言えるラビ! ラビリンはそんな悲しいことには絶対にさせないラビ!!」

 

「ラビリン・・・・・・」

 

「私だって、大きなメガビョーゲンを前にしたとき、地球はもう終わりなんだって思ったラビ! でも、お手当てを諦めたらそこで終わりだって、私たちはまだやれるって、そう思えたからみんなと一緒にお手当てができたラビ!! その諦めないっていう気持ちを教えてくれたのはのどかじゃなかったラビ!?」

 

「!!」

 

ラビリンの言葉に、のどかはハッとする。確かにあのメガビョーゲンに一度やられた時、奮い立たせてくれたのは私だった。

 

「のどか・・・本当は、私も怖いわ・・・あの三人に先生が襲われたときだって本当は憎いっていう気持ちがあったけど、同時に逃げたいっていう気持ちがあった・・・ドクルンに襲われたときだって殺されると思って体が震えたりしたわ」

 

「! ちゆちゃん・・・」

 

のどかがちゆを見ると、彼女はあのときのことを思い出していたのか、右肩がわずかに震えているのが見えた。

 

「あたしも・・・あんな黒いのに囲まれて、怖かった・・・・」

 

ひなたも右腕が震えており、左手でそれを抑え込むかのように掴んでいた。

 

「怖いっていう気持ちはみんな一緒よ。でも、お手当てをしたいっていう気持ちも、守りたいっていう気持ちもみんな一緒。みんながいるから私はプリキュアとしてお手当てができるの。だから、のどか、怖いなら私たちと一緒にその気持ちを分け合いましょう。一緒にいれば、なんだって乗り越えられるはずよ。それに・・・・・・」

 

「ちゆちゃん・・・・・・」

 

「先生の思いも無駄にしちゃダメだと思うわ・・・」

 

ちゆはのどかに優しげな微笑みを見せる。

 

「のどかっち・・・あたしはあまりいい言葉、見つかんないけど、のどかっちを一人残していなくなったりなんかしないよ! 先生は・・・悲しかったけど・・・でも、そこで立ち止まってたら先生の気持ちは救われないと思うんだ・・・!!」

 

「ひなたちゃん・・・」

 

ひなたはのどかの首に手を回しながら、気遣うような言葉をかける。

 

「ラビリンたちは、もう二度とあんなことにはさせないラビ!!」

 

「僕たちも、お手当てを頑張って、悲しいことを起こさないようにするしかないペエ!」

 

「俺たちも、がんばんねぇとな!!」

 

ヒーリングアニマルたちも、決意の言葉を口にする。

 

すると、のどかは再度嗚咽を漏らし始める。

 

「ごめんね、みんな・・・私、全然ダメだよね・・・みんなはそう思っているのに、私がこんなんじゃ前にも進まないよね・・・」

 

「のどか・・・」

 

「のどかっち・・・」

 

「でも、お願い・・・しばらく、こうさせて・・・」

 

のどかはちゆに抱きついたまま、すすり泣きを漏らし始める。よっぽどこれまでの戦いで溜まっていたのだろう。体の震えが大きくなる。

 

「うぅぅ・・・ひっく・・・うぅぅぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

のどかは大声をあげて泣き始めた。先生を救えなかったという思い・・・彼が私たちを尽くしてくれたこと・・・そして、先生が見せてくれた優しい笑顔・・・。それら全てが頭の中に流れ込んでくる。

 

「うぅぅ・・・ぐす・・・」

 

「のどかっちが、泣いてるから、あたしも、悲しく、なって、うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 

そんな彼女を見て、ちゆとひなたももらい泣きをする。ちゆは体を震わせて表情に力を入れていたが、目からは涙が溢れていた。

 

ひなたはのどかと同じように、先生のことを思い出して大きな声で泣いていた。

 

「・・・ラビリンも、なんだか苦しくて・・・悲しいラビ・・・」

 

「僕も・・・胸が痛いペエ・・・」

 

「ちくしょー!! なんでだよ!! あの先生、あんなにいいやつだったのに!!!」

 

ヒーリングアニマルたちも悲しみに包まれていた。エレメントさんたちは悲しそうな表情を見せながら、彼女たちの様子を見守っていた。

 

プリキュアたちはしばらくの間、設楽のことを思いながら、泣き崩れていた・・・。

 

ようやく落ち着いた頃、プリキュアたちは救い出したエレメントさんたちに向き直っていた。

 

『みなさん、どうかこれからも地球をよろしくお願いします!』

 

「うん、まかせて!!」

 

「私たちが、絶対にあの街も取り戻します!!」

 

「先生の思いも、私たちが受け継ぐから!!」

 

エレメントさんたちはプリキュア3人の言葉に安心したような笑顔を見せると、元の場所へと戻っていった。

 

こうして、プリキュアたちは先生の思いを持ちながら、これからも地球をお手当てし、ビョーゲンズから守ることを誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、荒廃した街、その廃病院の屋上では、ビョーゲン三人娘が珍しく3人集まって、街の景色を眺めていた。

 

空を見上げれば、病気のような一面の赤黒い空、そして黒い大流ーーーーストームビョーゲンが飛び回っている、なんとも不気味な空だ。

 

「なんでアンタたちまでいるわけ?」

 

「別にいいじゃないですか、たまには」

 

「私もたまには景色を見たくなったの」

 

クルシーナは他の二人に不満そうに漏らすも、ドクルンとイタイノンは意にも介さず好きなことをしている。

 

「ここはアタシの憩いの場所なんだけど・・・」

 

「この廃病院は私たちのものですよねぇ? 固いことを言うものではないでしょ」

 

「ケチケチすんな、なの」

 

なおも食い下がろうとするクルシーナに、二人は相変わらずの言動。彼女はもう諦めて景色を眺めることにした。

 

すると、イタイノンが思い出したかのようにポケットを弄る。

 

「そういえば、ダルイゼンのメガビョーゲンからこんなものが出てきたの」

 

イタイノンが取り出したのは、紫色の不気味な種。ダルイゼンのメガビョーゲンが吐き出したものだ。

 

「・・・それって」

 

「私たちのメガビョーゲンも出したものと同じ系統でしょうね」

 

クルシーナとドクルンはその種をじっくりと見る。それは自分たちのメガビョーゲンから吐き出しているものと同じであることがよく分かる。

 

「まあ、私には不要なもの、なの」

 

イタイノンは半ば押し付けるような形でクルシーナに差し出すと、彼女はそれを手に取る。

 

そのままマジマジといろんなところを眺めていたが、やがて何か悪巧みを思い出したように不敵な笑みを浮かべる。

 

「ちょっと面白いことしてみようか・・・」

 

クルシーナはその種に赤いオーラを注ぎ込む。すると、種から赤い4本足が生えてくるとクルシーナの手から飛び降りて、まるでクモのようにカサカサと動いていく。

 

すると白いワープホールみたいなものが現れると、種はその中に飛び込んで姿を消した。

 

「あの種は、どこに行ったんですかねぇ・・・?」

 

「さあね、適当なやつに入り込んでいくでしょ」

 

ドクルンがそう聞くも、クルシーナはそのまま昼寝を決め込もうとする。

 

しかし、そんな彼女の頭に何かが落ちてきた。

 

「あ、痛っ・・・もう、何?」

 

痛みに顔をしかめながら、空を見上げてみると上空にはダルイゼンの姿が。

 

「ダルイゼン?」

 

「・・・ふん」

 

ダルイゼンは彼女をしばらく見つめた後、背後を振り向いてそのまま姿を消した。

 

「あ、ちょっと! もう、なんなのよ、あいつ・・・!!」

 

言葉を待たずにその場を去ってしまったダルイゼンに不満を漏らすクルシーナ。

 

「クルシーナ、これが落ちてたみたいですよ」

 

「あ?」

 

何かを拾って声をかけてきたドクルンの方を向くと、その手には見覚えのあるものが。

 

「これって、アタシの髪飾り・・・」

 

クルシーナはドクルンから黒いチューリップの髪飾りを受け取る。どうやらあいつ、ダルイゼンは彼女の落とした髪飾りを届けるためにわざわざ現れてきたらしい。

 

「・・・ふん!」

 

クルシーナはあいつから髪飾りを渡されたときのことを思い出したのか、頬を恥ずかしそうに赤らめると鼻を鳴らしながら、髪にチューリップの髪飾りをつける。

 

「似合ってますよ」

 

「お世辞はいらないっての」

 

「道理で違和感があると思ったの」

 

「あんた、それはアタシに魅力がないって言いたいわけ?」

 

ドクルンとイタイノンのさりげない言葉に、不機嫌そうな表情になるクルシーナ。

 

「まあ、アタシたちは、病気で魅了すればそれでいいわよねぇ・・・」

 

クルシーナが笑みを浮かべて言った言葉に、ドクルンとイタイノンは目を見合わせる。

 

「病気で苦しめて~、愉快愉快♪ 楽しいわ♪」

 

さらに彼女は足を屋上から投げ出してプラプラとさせながら、急に歌を歌い始めた。

 

「苦痛の先は~、クラクラ♪ 虚ろだ♪」

 

「だから、何なの・・・その変な歌は・・・」

 

イタイノンは呆れたようにクルシーナを見つめる。

 

「まあ、いいじゃないですかぁ。私もたまには乗ってみたくなってきたところですし」

 

ドクルンはメガネを上げながら、歌に乗る気満々であった。

 

「病気で自由いっぱい♪ めちゃくちゃだらけだ♪」

 

一緒になって歌い出したドクルン。イタイノンは歌を歌う二人に辟易としつつも、仲間はずれにされるのは嫌だと言わんばかりに仕方なく乗ることにした。

 

「病気広がれ~♪ どんどん蝕め♪」

 

「病気で苦しめて~、愉快愉快♪ 楽しいわ♪」

 

「苦痛の先は~♪」

 

「クラクラ♪ 虚ろだ♪」

 

「「「楽しいことはやらなきゃさ♪ 病気蝕み、フフフ、フフフ♪ 辛いことも忘れてグッバイ♪ お前は私のもの♪」」」

 

三人娘はクスクスと笑いながら、珍しく3人仲良く見つめ合っているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃病院の地下室、一人の少女が眠る実験室・・・。

 

ブォン・・・ブォン・・・ブォン・・・。

 

体の中は赤い病気が蠢いていて、すでに彼女の体全体に広がっている。

 

少女の目はまるで死んでいるかのように閉じられている。肌の色は完全に人ではない色に変わっており、頭にツノのようなもの、下半身にサソリのような尻尾を生やしている。

 

そのまま赤い病気に包まれていたが・・・・・・。

 

眠っているはずの金髪の少女は、突然目を見開き、赤い光を宿していく。

 

その瞬間、彼女の中に眠る不思議な何かが膨れ上がり始め・・・・・・。

 

ドォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!

 

・・・大きな爆発を起こしたのであった。

 

「?・・・何? なんで揺れてんの?」

 

「今の音は、下から聞こえましたね・・・?」

 

「なんかすごい音がしたの」

 

その爆発音は屋上にいる三人娘の耳にも聞こえていた。この街が、この廃病院が揺れるほどの爆発が起こったのに、何とも冷静である。

 

「今のは地下から聞こえたウツ!」

 

「俺の耳もそう言ってるブル」

 

「何があったネム・・・?」

 

その音は幹部の相棒たちの耳にも聞こえていて、何事かというような感じだった。

 

地下室といえば、私たちが捕らえたあいつが眠っているはず、私たちがメガビョーゲンから手に入れた病気を与え続けていた・・・・・・。

 

「!・・・まさか・・・」

 

ドクルンは何かを察したように目を見開くと、急に立ち上がって走り出した。

 

「ちょっと!どこ行くの!?」

 

急に立ち上がって走り出したドクルンに、クルシーナが叫ぶ。残された二人は顔を見合わせると、立ち上がって彼女の後を追うべく走り出した。

 

ドクルンは中へと戻っていくと、地下室の階段へと向かう。すると、階段の踊り場のところに実験室の扉と思われるものが吹き飛んでおり、ひしゃげていた。

 

扉が吹き飛ばされて開かれた部屋、その中に入ると中にあったものが吹き飛んでめちゃくちゃになっており、少女を閉じ込めた部屋は防壁ガラスが全て割れていて、その中にあるものも散乱してめちゃくちゃになっている。

 

しかも、その少女の姿はなくなっている。

 

「何なのこれ・・・めちゃくちゃじゃない・・・」

 

「本当に何が起こったの・・・?」

 

後から追いついたクルシーナとイタイノンも部屋の惨状には、口調は冷静ながらも驚きを隠せない。少女に病気を与えていたとはいえ、いくら何でもこんなにめちゃくちゃになることがあり得るのだろうか?

 

何かが引火して爆発したのか? それとも、ドクルンが実験をかけていて、それが暴発したのか?

 

「ンフフ~♪」

 

「「「!!」」」

 

そんな考えを巡らせている中、背後からクスクスと笑うような声が聞こえてくる。

 

「お姉ちゃん♪」

 

さらに聞こえる猫なで声。三人娘たちは背後を振り返ると、そこに立っていたのは・・・。

 

「おやおや、やっとお目覚めですかぁ・・・」

 

ドクルンはその姿を視認すると、自身の実験がうまくいったと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべるのであった。

 

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