ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第13話がベースです。
今回はでこぼこコンビであろう二人が出撃です!


第36話「教育」

 

マグマに満たされたビョーゲンキングダム。そこでは、ビョーゲンズの幹部たちがキングビョーゲンに収集されていた。

 

ダルイゼン、シンドイーネ、グアイワル、バテテモーダらは跪いており、クルシーナ、ドクルン、イタイノン、ヘバリーヌらキングビョーゲンの娘たちは静かに佇んでいる。

 

それぞれの立場の違いがよくわかるような光景だった。

 

「初仕事は楽しんだようだな? バテテモーダ、ヘバリーヌ」

 

「いやいやいやいや!! 楽しんだだけで、先輩たちやお嬢たちに比べれば、まだもう~!!」

 

「むぅ・・・・・・」

 

ヘラヘラとした態度でキングビョーゲンと話すバテテモーダに、シンドイーネは不満の声を漏らす。

 

「楽しかったよぉ~、パパ~♪ ンフフ~♪ プリキュアちゃんたち、激しかったなぁ~♪ これからも楽しみ~♪」

 

ヘバリーヌは両手を頬に当てながら満面の笑みを浮かべている。

 

「二人の初舞台はどうだ? クルシーナ」

 

キングビョーゲンは、今度はクルシーナに二人の状況を聞いてくる。

 

「上出来なんじゃない? あとは調子にさえ乗らなければ、全然一人で出撃していいレベルだと思うけどね」

 

「ハハハ・・・そうか・・・」

 

クルシーナは面倒臭そうに答える。正直、自分のことでも精一杯なので、この二人ばかりにかまけている暇はないのだが・・・。

 

「良いな? お前たち。今後、より活発な働きを期待しているぞ」

 

「「「はっ!」」」

「了解で~す!」

「はーい」

「わかりました」

「・・・わかったの」

「はーい!」

 

キングビョーゲンが姿を消した後、幹部8人は場所を移動させて会話をし始める。

 

「ちょっと!! キングビョーゲン様の前だからっていい格好やめてくれますぅ~!?」

 

開口一番に発したのは、先ほどからバテテモーダの態度に不満を抱いていたシンドイーネだった。そうやって愛しのキングビョーゲン様の前で借りてきた猫のように振舞うのは気に入らなかったのだ。

 

「滅相もない!! このバテテモーダ、そりゃあもぉ~、謙虚な気持ちでやらせておりますんで~!!」

 

「それよ!! その態度が余計むかつくのよ!! あんたも、って、あのふわふわしたやつどこ行ったのよ?」

 

バテテモーダの単純に媚びるような態度が気に入らないシンドイーネ。ヘバリーヌにも突っかかろうとしたが、彼女の姿が見えない。

 

「はぁ・・・ヘバリーヌならあそこよ・・・」

 

クルシーナがため息を吐きながらいる方向へと指を指す。

 

「待ってよぉ~♪ ノン姉ちゃーん♪ その冷たい視線をもっとヘバリーヌちゃんに~♪」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!! こっち来るな、なの!!!」

 

ヘバリーヌは手を前へと広げながら、イタイノンを追いかけまわしていた。イタイノンにしては珍しくお化けでも見たかのような表情で彼女から走って逃げ回っている。

 

「・・・何やってんの? あれ」

 

「アタシに聞くなっての」

 

ダルイゼンがクルシーナに問うと、彼女は辟易したように答える。

 

「『ノン姉ちゃんの蔑むような視線をもっと晒され続けた~い』、ですって」

 

「真面目に答えんな。知りたくもないんだし」

 

「・・・っていうか、いろいろとヤバいんじゃない? それ」

 

クルシーナが律儀に答えるドクルンにツッコミを入れ、ダルイゼンはだるそうに答えた。

 

「って、アンタ! 私が真面目に怒ってるのに・・・!?」

 

すっかり蚊帳の外に置かれているシンドイーネが怒ろうとするが、ちょうど真正面から怯えた形相のイタイノンが走ってきたかと思ったら、彼女の背後へと盾にするかのように隠れる。

 

「って、ちょっと!! なんで私の後ろに!?」

 

「あいつ気持ち悪いの・・・! 絡んできたかと思ったら、私の肌に触ってきて・・・!」

 

背中越しでガクガクと震わせるイタイノンに、シンドイーネが困ったような声を出す。

 

「だってぇ~、怒らせたらもっと冷たい視線になるかな~と思ったんだも~ん♪」

 

一方のヘバリーヌは両手をワシワシとさせながら、イタイノンへと躙り寄る。

 

「こ、こっちへ来るな!! なの!!」

 

イタイノンはヘバリーヌに対して声を荒げる。しかし、ヘバリーヌを止めるための抑止力になるわけでもなく・・・。

 

「あ~ん♪ 怒った声がピリピリと来るぅ~♪ もっと叱ってほし~い♪」

 

むしろ怒鳴った声に快感を覚え始めたヘバリーヌは肩を抱えて悶えた後、再度彼女へと躙り寄る。

 

「ひぃ・・・!?」

 

イタイノンが体を震わせる。そのイタイノンとヘバリーヌの間に挟まれるシンドイーネ。

 

・・・あれ? イタイノンがこいつに追いかけられていて、このヘバリーヌとかいう娘が追いかけていて、イタイノンが後ろにいる・・・・・・前にはワシワシと手を伸ばしてくるヘバリーヌ、つまりはワシワシが来るのは、イタイノンの前にいる私なわけで・・・!!??

 

「え、え、ちょっ、ちょっと待って・・・待ちなさいよ・・・!! なんで私の方に寄ってくるの!? アンタの狙いはイタイノンでしょ!? こっちに来ないでよ!! っていうか、アンタも離れなさいよっ!!!!」

 

「嫌なの!! お前が代わりに受ければいいの!!!」

 

「ふざけんじゃないわよ!!!! なんで私があいつなんかに!!??」

 

シンドイーネが喚きながら、ヘバリーヌが近づく原因になっているイタイノンを振り払おうとするが、彼女はがっちりとついて離さないどころか、自分に受けろと言い出す。

 

「ねえ、なんであいつあんな性格になっちゃってるわけ? 人間だった頃はあんなこと言うやつじゃなかったよね?」

 

「・・・おそらく、私たちが3人で病気で苦しみを与え続けた結果、通り越してあんな感じになってしまったかと」

 

「・・・病気なんて普通苦しいもんでしょ? それを気持ちいいだなんておかしな奴だね。あいつの体、どこか壊れてるんじゃない?」

 

クルシーナが別に知りたくもないけど、気になったことをドクルンに問う。ドクルンはメガネを上へと上げて、真面目なトーンで話す。

 

ダルイゼンはまるで他人事のような感じだったが、それに呆れたように答えていた。

 

「大体なんでお前は私に触ってくるの・・・!?」

 

「だってぇ~、大好きな人の体は触っていたいじゃ~ん♪ お姉ちゃんにも気持ちよくなって欲しいんだも~ん♪」

 

イタイノンは震えながら問うと、ヘバリーヌから返ってきたのはふざけたとしか言いようがない答え。

 

「フフフ・・・そうですねぇ、私もわかりますよぉ」

 

「「わかるなぁーーーーーーー!!!!」」

 

ドクルンがふざけたように同調してやると、シンドイーネとイタイノンは二人揃って怒鳴り返す。その笑みは悪意を持ったかのようにニヤリとしていた。

 

「・・・はぁ、くだらない。巻き込まれないようにあっちに行ってよ・・・」

 

ダルイゼンは関わると確実に面倒なことが起きると感じ、立ち去っていく。

 

「よ、よーし!! バテテモーダ!! あそこでイチャついている女は放っておいて!! 俺と一緒に来い! 新人のお前に先輩の仕事ってやつを見せてやる!!」

 

「あ、あざ~す! 助かります!!」

 

グアイワルも巻き込まれたくないと言わんばかりに、バテテモーダを連れ出してこの場を去ってしまう。

 

「アタシはもう疲れてんのよ・・・イタイノン、そいつの相手、あとよろしく」

 

「新人を正しい方向に導いてやるのも、私たち先輩の役目ですからねぇ。頑張ってください」

 

クルシーナは欠伸をしながらその場を立ち去り、ドクルンもイタイノンに今はどう考えても必要のないアドバイスをしたあとに、手を振りながら立ち去っていく。

 

「あ・・・おい・・・!!」

 

「ちょっとアンタら!! こいつをどうにかしなさいよっ!!!!」

 

幹部が次々と去ってしまい、怒鳴り声を上げる二人。

 

「じゃあ、早速温もりを~♪」

 

「え、ちょっ、やめ、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

近づいてくるヘバリーヌにあんなことやこんなことをされ、シンドイーネの絶叫がビョーゲンキングダムに響き渡ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチバチバチバチ・・・!!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「あ、あ、あ、電流がちょうどよく、芯に痺れと痛みが効いて、いい~♪」

 

「うるさい、黙れなの!!!! はぁ・・・はぁ・・・」

 

地球へと逃げ込んだものの、しつこく追い回してくるヘバリーヌをなんとか電撃で沈め、息を切らしているイタイノン。黒焦げでプルプル痙攣させていても、まだ懲りずに気持ち悪い発言をする彼女に怒鳴り声を上げる。

 

「イタイノン、ちょっとやりすぎじゃないかネム・・・?」

 

「はぁ・・・どうせ死には、しないんだから、大丈夫なの・・・はぁ・・・」

 

カチューシャのネムレンに、イタイノンが息を整えながら答える。

 

あの後、口では言えないような奮戦が続き、シンドイーネはいつの間にか逃げ出し、それでもなお組みついてくるため、電撃を食らわせて黒焦げにしたのだ。

 

・・・逃げるんじゃなくて、あのおばさんの後ろにいるんじゃなくて、最初からそうすればよかったとイタイノンは今更ながら後悔するのであった。

 

しかも、その教育係を二人に押し付けられてしまった。今日はなんともついていない日だ。

 

「それで、ノンお姉ちゃん♪」

 

「ひぃ!? な、何、なの・・・?」

 

電撃を食らったことなど、まるで感じないかのようにスクッと立ち上がったヘバリーヌに驚くイタイノン。自分に変なことをしようとした娘は、無垢な微笑みを浮かべていた。

 

「今日は何をするの?」

 

ヘバリーヌが純粋に地球でどんなことをするのか聞いてきたのだ。キングビョーゲンの収集に応じる前に、あとはイタイノンに教えてもらうようにクルシーナにあらかじめ言われていたのだ。

 

場所はすでに来ている健康的な地球、ビョーゲンズにとっては不快な環境だ。逃げ回っているうちにここへと来てしまっていた模様。

 

・・・ちょうどいいの。こうなったらこいつを手堅く利用して、地球を病気に蝕んでやるの。そして、私だけの場所を手に入れる。

 

イタイノンはゴシックロリータの服のほこりを払った後、ヘバリーヌへと向き直る。

 

「・・・今日はお前に、人間を病気に蝕む方法を教えてやるの」

 

イタイノンはそう言いながら、指をヘバリーヌへと突きつける。彼女はそれを聞くと目をキラキラと輝かせ始めた。

 

「わ~い!! それって、人間を気持ちよ~くすることだよね~? やるやる!! 私、やるぅ~♪」

 

「わ、わかったから、くっついて来るな、なの・・・!」

 

ヘバリーヌは両腕をブンブンと振り回しながら、イタイノンに顔を近づけていくも、彼女はそんな新人の顔を押し退ける。

 

・・・私は、今日一日を無事で過ごせるのだろうか。

 

イタイノンは、心の奥底でそんな心配をしていたのであった。

 

二人は絶妙な距離を保ちながら、すこやか市の街のはずれの人通りの少ないところを歩いていく。

 

「メガビョーゲンは、自然を蝕めば蝕むほど大きくなるの。それはわかる・・・?」

 

「それは知ってるよ~♪ でも、人間を蝕むってどういうこと~?」

 

「私たちパパの娘は、人間を蝕むことができるの。人間を蝕んでもメガビョーゲンは大きくなるし、特に生き生きとしている不快な連中は、蝕めば蝕むほどメガビョーゲンは大きくなる。そうすれば病気のかけらとなって、パパや私の快楽として提供させることができるの。例えば・・・」

 

イタイノンは歩きながら話していると、ちょうど公園へと差し掛かり、そこで過ごす人々に指をさす。

 

「砂場などで元気に遊んでいる子供・・・子供を笑顔で見ている女・・・体操をしている男女の二人・・・ああいった奴らは生きてるって感じがしてイライラするの」

 

「ん~、な~んかピリピリするね~♪ 私の肌にぃ~、こそばゆい感じがぁ~♪」

 

「・・・・・・・・・」

 

イタイノンが指をさす人間たちを見て、ヘバリーヌは不快に思うどころか恍惚な表情を浮かべている。

 

ゴシックロリータはそれをジト目で、呆れたような表情をする。なんだか寒気がするような気がするが、気のせいだと思い込む。

 

・・・こいつの気持ち悪い発言は気にしない、気にしないの。

 

自分にそう言い聞かせながら、ゆっくりと指を下ろすと公園の中へ入っていく。

 

「あ~ん、待ってぇ~!」

 

ヘバリーヌは猫なで声を出しながら、イタイノンの後をついていく。

 

バチッ・・・!!

 

ドサッ!!

 

「?」

 

すると何やら電気のような音が聞こえてきて、イタイノンが振り返る。

 

「あぁ、あぁ、あぁん♪ お姉ちゃん、いきなり電気プレイだなんて、素敵・・・♪」

 

「わ、私はやってないの・・・!」

 

ヘバリーヌが足を押さえながら頬を赤らめている。気持ち悪いとは思ったが、とはいえ彼女が急に体を悶えさせたことに疑問を抱くイタイノン。しかし、電気のような音がしても、特に変化が起こったような感じがしない。

 

それでも、メガビョーゲンの気配がする・・・・・・。

 

ヘバリーヌが歩いていたところを見てみると、彼女が踏んでいたのは砂場の銀の淵。

 

もしかして・・・・・・!

 

淵をよく目を凝らして見てみると、米粒ぐらいの小さな赤い靄がかかっているのがわかる。要するにこの金属はわずかに病気に蝕まれていたのだ。

 

「・・・いつの間に」

 

イタイノンはボソッとつぶやくと周りを見渡すも、メガビョーゲンらしき姿は存在しない。私の攻撃のように早いメガビョーゲンなのだろうか?

 

本当ならここでそのメガビョーゲンに享受するために利用したいところだが、目に見えないものを見ても仕方がない。他の幹部が病気で蝕むためにやっていることだし、今日はそいつに任せることにする。

 

私は私の力でこいつの教育を進めよう。

 

「ほら、寝てないで立つの!!」

 

イタイノンは右手に電撃をまとって、倒れるヘバリーヌのお尻部分を触る。電撃を流された彼女はびっくりしたように飛び上がった。

 

「きゃうん!! 痛ぁい!! お姉ちゃん、何するのぉ? 気持ちよくなっちゃうよ~♪」

 

「・・・・・・ふん」

 

ヘバリーヌはお尻をさすりながらも顔は嬉しそうだ。イタイノンは鼻を鳴らすと公園の中へとさらに入っていく。

 

・・・こいつのバカな発言は気にしない、気にしない・・・!

 

彼女は自分にそう言い聞かせた。

 

二人は公園の中をうろうろしながら、病気で蝕む方法を話しながら、不快な生気を探している。

 

「まあ、地道に蝕んでもいいけど、ああいう奴らを蝕めば、メガビョーゲンの成長は促進されるはず、なの」

 

「まあまあわかったけどぉ~、どうやって蝕むの~?」

 

ヘバリーヌは人間をどうやって蝕めばいいのかイマイチわからなかった。メガビョーゲンで病気を蝕めるのは地形や自然、建物といったもの。人間を痛めつけることはできるが、病気で苦しめることはできないはず。

 

じゃあ、どうやって人間を蝕むことが可能なのか?

 

イタイノンはこの健康的な空間では、人間を蝕んでも意味がないということがわかっている。

 

自然を蝕み、人間を蝕み、苦しんでいる姿を見て快楽を得る。私たち、キングビョーゲンの娘にとって、この一石二鳥ならぬ、一石三鳥とも言えるような行いをこいつにもわかってほしいのだ。

 

「私が実際にやってやるから、お前はよく見て良さを見つけるの・・・」

 

「はーい!」

 

イタイノンはそう言って、公園のベンチのそばに止めている自転車に目をつける。

 

両腕の袖を払うかのような動作をし、右手を構えるように突き出す。

 

「進化するの、ナノビョーゲン」

 

「ナノナノ~」

 

生み出されたナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、自転車へと取り憑く。自転車が徐々に病気へ蝕まれていく。

 

「フゥ、フ、フ、フゥ~!?」

 

自転車の中に宿っているエレメントさんが病気に蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガ、ビョ~ゲン!!」

 

両手、両足に自転車の車輪のようなものを付け、ハンドルのようなツノ、かごのようなものに不健康そうな顔のついた人型のメガビョーゲンが誕生した。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

公園に突然怪物が出現したことに、一時を過ごしていた人々は悲鳴を上げて逃げ始める。

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンは足の車輪を動かして、地面につけると猛スピードで走行し始める。すると、メガビョーゲンの走った跡が病気へと蝕まれていく。

 

「きゃあぁぁ!!」

 

逃げ遅れている人々がメガビョーゲンに危うくひかれそうになる。さらに両腕の車輪についている銃口から空気砲のように病気の球を発射して襲い始める。

 

悲鳴を上げて逃げていく人々。そして、走りと球で公園の木や砂場、地面、大気を次々と病気へ蝕んでいくメガビョーゲン。

 

「キヒヒ・・・やっぱり逃げ惑う人間を見るのは楽しいの」

 

それらを見やりながら、イタイノンは不敵な笑みを浮かべる。

 

「ん~、楽しさは伝わるけど~、あんまり気持ちよくないよね~♪」

 

ヘバリーヌは明るい声で微笑みつつも、なんだか面白くなさそうな様子だ。

 

ここまでは私でもできるような普通のこと。地球ちゃんは気持ちいいかもしれないけど、ヘバリーヌちゃんは何が楽しいのかよくわからない。

 

「あ・・・!」

 

そんな中、一人の逃げ遅れた少女がメガビョーゲンの蝕んだ地面のぬかるみに滑って転んでしまい、倒れてしまう。

 

「うぅぅ・・・」

 

転んで呻いている少女。そんな彼女をイタイノンとヘバリーヌは見やる。

 

「あの娘、なんで逃げてなかったのかなぁ~?」

 

「・・・手本を見せるにはちょうどいいの。よーく見てるの」

 

イタイノンはヘバリーヌにそう言い聞かせると、転んだ少女へとゆっくり近づく。

 

「うぅぅ・・・ひっ!?」

 

少女は起き上がろうとしているが、そんな彼女の目の前にイタイノンが無表情で立つ。

 

「お、お姉ちゃん・・・誰・・・?」

 

「その怪我、随分と痛そうなの。キヒヒ」

 

少女がイタイノンを怯えるように見つめると、逆に彼女は不敵な微笑みを浮かべて笑い始める。

 

「でも、そんな痛みよりも、もっと辛いことを教えてあげるの」

 

イタイノンは少女の頬に両手を添えてそう呟くと、彼女に口づけをする。

 

「んん? んぅ・・・んぅぅ・・・」

 

少女は一瞬わけわからないというような顔をすると、苦しそうに顔を顰め始める。イタイノンはそんなことを気にすることもなく、少女の口の中に何かを注ぎ込むように動かす。

 

「んぅ・・・ん・・・」

 

少女の体の中に赤く蠢く何かが入っていくと、彼女の瞳が虚ろになり、全身から力が抜けてピクリとも動かなくなってしまう。

 

「キヒヒ。うまくいったの・・・」

 

イタイノンは動かなくなった少女の体をそのまま肩に抱きかかえ、不敵な笑みを浮かべた。

 

「うわぁ~! この娘、すごく良さそう~! ヘバリーヌちゃんも気持ちよくしてほしい~!!」

 

「・・・お前は病気に蝕む側だから、人間たちをその口づけで気持ちよくさせてあげればいいの」

 

明らかに苦しそうにしている少女を見ながら、両腕をフリフリとしながら猫なで声を出すヘバリーヌに、イタイノンは呆れつつも、戻ってきたメガビョーゲンの頭がついている自転車の籠を模したようなところの中に少女を横たわらせる。

 

・・・人間が気持ちよい顔になるのはヘバリーヌちゃんにとってもいいこと。でも、ヘバリーヌちゃん、あの娘の顔を見て何だか気分がいい気がする。

 

ヘバリーヌは、少し良さはわかってきたかもしれないと感じた。自分の中に、気持ち良さとは違う何かが溢れてくるような感覚がある。

 

「うぅ・・・うぅぅ・・・」

 

「いい感じなの。その調子でどんどん蝕んでいくの」

 

イタイノンは苦しむ少女の中の赤い病気が少しずつ広がっていくのを見て、不敵な笑みを浮かべる。

 

「ここは大方蝕んだの。場所を移動するの」

 

ふと気がつけば、周囲はすでに赤一色で蝕まれており、地面に至ってはすでに荒地のような感じと化していた。

 

イタイノンは景色をきょろきょろと見渡して、病気の範囲を広げられる場所を探していた。

 

「お姉ちゃ~ん!! あっちなんかはどぉ~?」

 

イタイノンと同じ高さにまで浮いたヘバリーヌが指をさす。その視線の先にはハート型の灯台が見えていた。

 

「・・・まあ、あっちに行けば何かあるかもしれないの。メガビョーゲン、あっち」

 

イタイノンは特に何もなさそうに感じていたが、行かないよりはマシかと思い、メガビョーゲンに指示を出して向かわせる。

 

「メガ、ビョーゲン・・・」

 

メガビョーゲンは両足の車輪を収納すると、普通にハート型の灯台に向かって歩いて向かい始めた。ノッシノッシと重い音が地面へと響き渡る。

 

「あ~ん♪ ノンお姉ちゃん、待って~!!」

 

ヘバリーヌは甘い声を出すと、飛び上がってメガビョーゲンの籠の縁のに腰掛ける。

 

「大体これで理解したか? なの」

 

同じく籠の縁に腰掛けるイタイノンがヘバリーヌに声を掛ける。

 

「うん、大体ね♪ 地球も気持ちよくして~、人間たちも気持ちよくして~、ぜーんぶを気持ちよくすればいいんだよね♪」

 

「・・・まあ、そういうことなの」

 

甘い声でイマイチ理解できないことをしゃべるヘバリーヌに、イタイノンは思わず沈黙する。

 

まあ、でもそういうことにしておけば、こいつも少しは意欲が湧いてくるかもしれないので、肯定をしておいた。

 

「わかったわかったよぉ~♪ これなら私でもできそ♪ ありがと、ノンお姉ちゃん♪」

 

「あっそう、なの」

 

満面の笑みを浮かべてくるヘバリーヌに、イタイノンは頬を赤く染めて冷淡に返す。

 

ふとイタイノンはヘバリーヌの下を見ると彼女の足がモジモジするように動かしているのが見えた。

 

「んぅ♪ んぅ♪ んぅ♪」

 

「・・・お前、さっきから何を足を動かしてるの?」

 

ヘバリーヌの顔は微笑みを浮かべつつも、その表情は赤く染まって、汗が出始めている。何だか鬱陶しく感じたイタイノンは思わず聞き返した。

 

「あぁ♪ あぁ♪ この籠の縁がぁ、お尻に食い込んで、ジンジンするぅ~♪」

 

・・・どうやらお尻に、彼女が座っている籠の縁が固いのが当たっているらしく、ヘバリーヌは痛がっているようだが、顔は恍惚な表情を浮かべていた。

 

「・・・・・・はぁ」

 

「メ、ガ・・・」

 

・・・私は、こいつとはあんまり好きになれない気がする。まあ、そもそも人自体、苦手だけど。

 

イタイノンは聞くんじゃなかったと、彼女から目を逸らしながら大きなため息をつく。二人と共にゆっくりと移動しているメガビョーゲンですらも呆れたような声を漏らすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、ひなたがプリキュアとしてお手当てをすることに迷いが生じ始めている頃、のどかたちプリキュア3人とヒーリングアニマルたちは、ラテが不調を感じとったことで、彼女の声に従い、メガビョーゲンを追っていた。

 

しかし、どこを見渡してもメガビョーゲンはおらず、街の様子も怪物が出てきたとは思えないような平和な光景だった。

 

ラテが度々気配を察知して、その通りに移動をしてみるが、メガビョーゲンの姿はどこにもない。

 

しかし、何か異変が起きているのは確かだ。ラテがメガビョーゲンを察知したときも急にヒーリングアニマルたちの前髪が立ち、街を歩けばおばあちゃんたちが静電気のおかげでドアノブを回せず、家に入れなくて困っていた。

 

のどかのお母さん、やすこが働いているすこやか運送では、荷物を運び出すためのレールが動かないということが起きていた。

 

そして、店が並ぶ街中では・・・・・・。

 

「まいったなぁ・・・機械がいかれちまった・・・」

 

「お宅もかよ!? うちもだよ!!」

 

店の人たちも何らかの異変で困った様子を見せていた。のどかたちも周囲を見渡してみるが、やはりメガビョーゲンの姿は見当たらない。

 

「メガビョーゲン、やっぱり見当たらないニャ・・・」

 

「一体、どうなってるラビ・・・?」

 

のどかやひなたが周囲を見渡す中、ちゆは外に出ていた店の人たちに尋ねるべく近づく。

 

「すみません! 機械が壊れる前、静電気が起りませんでしたか?」

 

「そうなんだよ! 急に一瞬すごいのが来てさぁ! まいったね、こりゃ・・・」

 

店の人たちも、どうやら静電気のせいで機械が故障して困っている模様。

 

「やっぱり・・・・・・ありがとうございました」

 

ちゆは教えてくれたお礼を述べると、二人の元へと戻る。

 

「ちゆちゃん、どうしたの?」

 

「さっきからあっちこっち起こってる静電気問題、きっとメガビョーゲンの影響よ」

 

「ニャンだとぉ!?」

 

ちゆはメガビョーゲンの仕業だと結論づけると、ニャトランは驚く。

 

「そういえば、全部ラテの教えてくれたところでバチバチって・・・!」

 

のどかがそう言うと、ラビリンとペギタンは何か確信を持ったかのように飛び上がると、両手を押さえつけ始める。

 

「ニャ、ニャ、ニャにするんだ! やめろぉ!!」

 

前髪で額を隠そうとするニャトランを押さえつけて、ラビリンが彼の額部分を凝視すると、彼女は何かを見つけたように額部分を睨む。

 

ニャトランの前髪のすぐ前にある額部分に、小さな赤い靄がかかっていたのだ。

 

「証拠発見!!」

 

「ちゆの言う通りペエ!!」

 

確かにこれはメガビョーゲンにしか出せないものだ。これはビョーゲンズの仕業であると物語っている。

 

証拠は見つけた。見つけたのだが、だからと言って犯人である肝心のメガビョーゲンはどこにもいない。

 

「このままじゃ、もっと被害は広がっていくわ・・・」

 

「おのれぇ!! 早く見つけて浄化しないとぉ!!」

 

ニャトランは恥をかかされたことを憤っていた。実は彼の額には魚のマークがあり、本人はこれを見られるのが恥ずかしい。

 

のどかが犯人のメガビョーゲンの場所を聞こうとした、そんな時だった・・・・・・!

 

「クチュン!!・・・クゥ~ン」

 

「「!!??」」

 

「ラビ!?」

 

「ペエ!?」

 

「ニャ!?」

 

体調が悪そうなラテが再度くしゃみをした。これはもしかして・・・?

 

「また、どこかでメガビョーゲンが現れたの・・・?」

 

「まだ、肝心のメガビョーゲンも見つかってないのに・・・!!」

 

この騒動の原因となっているメガビョーゲンが見つかっていないのに、さらに別の場所でメガビョーゲンが発生した。ということは、別のビョーゲンズが現れてメガビョーゲンを生み出したということだ。

 

聴診器でラテを診察しようとする、のどかだが・・・・・・。

 

「・・・聞いても意味なくない?」

 

「えっ?」

 

それを遮ったのはひなたの言葉だった。驚いたのどかが彼女を見ると、ひなたは明らかに不安そうな表情を浮かべていた。

 

「言っても見えないし、どうせまた逃げられるし・・・そのメガビョーゲンだって、きっと同じようなタイプだったら、余計に無理だよね?」

 

「おい! ひなた!! 何を探す前から諦めてんだよ!?」

 

「探したじゃん!! あっちこっち行っての今じゃん!!」

 

「そ、そうだけど・・・」

 

ひなたはもはやお手当てをすること自体、諦めかけていたのだ。見えないメガビョーゲンなんか、どうせ見つかるわけがない、浄化なんかできるわけがないと・・・。

 

最近のひなたは、プリキュアとしてお手当てをすることに意味がないと感じるようになっていた。その不安の原因は、前回、新しいビョーゲンズであるバテテモーダとヘバリーヌが現れたことだった。

 

この前の強くなったメガビョーゲンを頑張ってお手当てをしたのに・・・その結果として敵が増え、メガビョーゲンも強力になってお手当てをすることも大変になってしまった。

 

自分はいつまでこのお手当てを続ければいいのか? もしかして、永遠に終わらないのではないか? 自分たちが力尽きるまでお手当ては続くんじゃないか? ひなたは、終わりの見えないこのお手当てに不安を抱えるようになってしまったのだ。

 

「こうなってる間に、またメガビョーゲンが強くなってるわけでしょ? もっと見つからなくなっちゃうに決まってるじゃん!」

 

「ひなたちゃん・・・・・・」

 

メガビョーゲンが強くなっていることも、この前の大量発生のお手当てで感じたことの一つだ。あれは辛かった。正直、死ぬかと思ったほどだ。今更メガビョーゲンと対峙したところで、辛さだけが残るに決まっている・・・。

 

ひなたの心にはプリキュアのお手当てとしての、一層の不安しか残っていなかったのだ。

 

「気持ちはわかるけど・・・私たちは設楽先生の思いをーーーー」

 

「わかってる!! わかってるの!! でも・・・設楽先生を救えなかったから、その娘も救えなくて、いつの間にかビョーゲンズになってて・・・。あの娘も結構強かったよね・・・?」

 

「っ・・・・・・」

 

ひなたの言葉を聞いて、ちゆはかける言葉が出てこない。

 

「あたし、あの娘と戦わなきゃ、お手当てをしなきゃって思うと、怖いの・・・。こんなに辛いことばかりで、何も成果が出てなくて・・・どうせ無理なんだよ、こんなことをしてたって・・・!」

 

ビョーゲンズのクルシーナから聞かされた言葉・・・・・・。

 

ーーーービョーゲンズが増えたのは、お前らの過失。

 

ーーーーちゃんとお手当てもできていなくて、成果がゼロなのと一緒。

 

ーーーー諦めないということを続ければいい、どうせ無駄だと思い知る。

 

これらの言葉を聞いたひなたは、もはやネガティブになっていた。クルシーナの言葉を真に受けてしまっていたのだ。

 

「そんなこと・・・!!」

 

「キヒヒ・・・」

 

「「「!!??」」」

 

彼女の、敵の言葉を聞き入れてはダメだとのどかは言おうとしたが、そこに聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。3人は聞こえてきた方向に振り返るとそこには対峙すべき敵が現れていた。

 

「そうそう・・・人生は諦めが肝心なの。辛いことをやったり受けたりしたところで、無駄なことは無駄になるだけなの」

 

「イタイノン!!」

 

不敵な笑みでそう話すのはイタイノン。

 

「はーい、プリキュアちゃんたち~♪ また来ちゃったよぉ~♪」

 

「ヘバリーヌもいるペエ!!」

 

ヘバリーヌは笑顔を見せながらプリキュア3人に手を振った後、指先を唇に押し当てながら微笑む。

 

プリキュアたちは動揺と警戒を隠さない。まさか、メガビョーゲンも見つけられていないこのタイミングでこの二人が現れるなんて・・・!!

 

「っ・・・!?」

 

ひなたは二人の姿を見て、怯えたような表情を見せていた。

 

「・・・ヘバリーヌ」

 

「はーい♪ よっと!!」

 

イタイノンに目線を向けられたヘバリーヌは元気よく返事をすると、その場から姿を消し、上空へと現れると右足を振り上げて黒い竜巻を下へと放つ。

 

「!!??」

 

その黒い竜巻はひなたの上へと落ちた。彼女は竜巻の中に飲み込まれ、外からでは姿が見えなくなる。

 

「「ひなた!!」」

 

「ひなたちゃん!!」

 

「キヒヒ・・・」

 

のどかとちゆ、ニャトランが叫ぶも、ひなたの声は聞こえておらず、そこへイタイノンが笑いながら黒い竜巻の中へに入っていく。

 

「ぐっ・・・うぅ・・・!!」

 

黒い竜巻の中に飲み込まれてしまったひなたは、表情をしかめていた。風が激しく吹き荒れていて、まるで台風の中にいるようで倒れそうになる。

 

「キヒヒ・・・」

 

と、そこへイタイノンが不敵な笑みを浮かべながら、ひなたの前に姿を現わす。

 

「ひっ・・・!?」

 

ひなたはその姿を見て、完全に怯えきったような顔をしていた。次々と溢れていく難題が増え、ビョーゲンズの脅威に晒されることに臆病になってしまったのだ。

 

しかし、ここは竜巻の中、後ずさっても逃げ場はない。

 

「さ、触んないで、んぅ!?」

 

そんな彼女にイタイノンは頬を手に取ると黙らせるかのように口づけを交わす。

 

「んんん!! んんぅ!! ん、んぐぅ!!」

 

ひなたは口づけから逃れようと顔を振るも、イタイノンは手を頭の後ろに回して押さえつけ、首を振ることができないようにする。

 

「んぅぅ!! んぐぅ!!・・・んん・・・ん・・・」

 

ひなたは無駄だとわかっていてももがいていたが、突然、操り人形の糸が切れたようにぐったりとさせる。

 

「ぷはぁ・・・ふん・・・」

 

イタイノンはひなたから口を離すと、彼女の中に赤く蠢く何かが入っているのを確認し不敵な笑みを浮かべる。

 

一方、竜巻の外では・・・・・・。

 

「うわぁ!?」

 

「ペエーーーー!!??」

 

「うわあぁぁああ!!??」

 

ヒーリングアニマルたちが竜巻の風で飛ばされそうになっていた。

 

「ラ、ラビリン! だ、大丈夫!?」

 

「ペギタンも、平気・・・?」

 

「た、助かったラビ・・・!」

 

「僕も、大丈夫ペエ・・・」

 

のどかもちゆも寸前のところでキャッチをし、ヒーリングアニマルたちを助ける。

 

「うっ・・・なんてすごい風・・・!!」

 

「これじゃあ、近づけないわ・・・!!」

 

「ひなたがあん中にいるのにニャ・・・!!」

 

ひなたを助けなければと思う2人だが、黒い竜巻に近づくことができず、風の凄まじさに片手で顔を覆っていた。

 

黒い竜巻はしばらく吹き荒れていたが、やがて竜巻の勢いがなくなり、旋風となって消える。

 

それはまるで、イタイノンの準備が整ったと言いたげなように・・・。

 

「うぅぅ・・・ぐぅぅぅ・・・!!」

 

そこには無表情で立っているイタイノンと、彼女に抱きかかえられ胸を押さえながら苦痛の表情を浮かべるひなたの姿があった。

 

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