ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第14話がベースです。
二人のビョーゲンズにも軽くスポットが当たっている話でもあります。


第38話「春祭」

 

ビョーゲンズにとって快適な世界、ビョーゲンキングダム。そこではクルシーナが特に何かをするわけでもなく、一人で寝そべっていた。

 

「はぁ・・・退屈ね・・・」

 

彼女は言葉通り、心底退屈そうにしていた。イタイノンとヘバリーヌはくだらないことでじゃれ合いをしているし、ドクルンは実験があると言って地下室に行っちゃうし、ダルイゼンとシンドイーネはどうせ相手にしてくれないし、本当につまらないのだ。

 

「なんか面白いことないかね・・・」

 

「しりとりでもするかウツ?」

 

「・・・バッカじゃないの?」

 

ーーーーくだらないんだよ。そんな余計に退屈になる遊び誰がやるかっつーの。別に誰かに構ってほしいとかそういうんじゃねぇし、そもそも構われるのは大嫌いだ。

 

帽子になっている相棒に心の中で悪態をつくとあくびをし始める。

 

こういうときは、何も考えないで寝ちゃうに限るか・・・・・・。

 

そう思って横になろうとするが・・・・・・。

 

「えぇぇぇぇっ!!??」

 

「ッ・・・・・・」

 

耳に聞こえてきた騒がしい声に顔をしかめると、すくっと体を起こして不機嫌な表情のままでその声の主を見やる。どうやら、さっきの驚いたような声は、自分を注目若手だとのたまっているバテテモーダのようだった。

 

「でも、これ、グアイワル先輩の大事なおやつじゃないっすか!?」

 

「ああ、実はその通り。俺がずーっと取っておいた大切な菓子だ。だが、特別に、ものすごーく特別に! お前にやろう!!」

 

どうやら筋肉バカのグアイワルが、勝手に弟子扱いをしているバテテモーダに菓子を与えようとしているらしい。そのお菓子は何やらおはぎみたいな形をしている。

 

ーーーーっていうか、あんな腐りかけの菓子を誰が欲しがんだよ・・・。

 

クルシーナは内心呆れながらもそう思った。

 

「じゃあ、遠慮なく~!」

 

バテテモーダは本当に遠慮なく菓子を摘み上げると口へとほうばる。

 

「う、うま~い!! 最高っす!!」

 

バテテモーダは親指でガッツポーズをしながら、いつものようなテンションでご機嫌な様子だ。見ているクルシーナがムカついてくるくらい。

 

グアイワルのほうをよく見ると、口元によだれが垂れているのが見えた。

 

「・・・よだれ垂らすぐらいならあげんなよ」

 

クルシーナはますます呆れながらそう言う。

 

「いいか、バテテモーダ!! お前には期待しているぞ!! 」

 

グアイワルは尊大な態度でバテテモーダに告げる。

 

「もぉ~!! 任せちゃってくださいよ~!! グアイワル先輩のためなら、このバテテモーダ、例え日の中、水の中、洗剤の中っすから~!!」

 

バテテモーダは媚へつらいながら、グアイワルの肩を揉み始める。

 

ああいう媚びへつらって、お世辞ばかりを言う奴はあまり気に入らない。っていうか、クルシーナはそういう奴が大嫌いなのだ。

 

ここまで見れば、本当に上司と部下のような関係だが・・・・・・。

 

「ケッ、なんちってな・・・」

 

バテテモーダが後ろを向いて何かをブツブツ呟いている。クルシーナは一瞬、彼の様子に違和感を覚えていたが、何かを察したかのように笑みを浮かべ始める。

 

「へぇ・・・・・・」

 

何をブツブツ言っているかはわからないが、多分、あいつはそういう性格らしい。どこぞの媚びへつらうだけの安い部下とは違う。あいつにはきっと何かがあるのだ。

 

「ん? どうした?」

 

急に部下が黙ったことに疑問を覚えたグアイワルが振り向く。

 

「いやぁ~! 感激の涙を拭いただけっす! じゃあ、グアイワル先輩のために、早速地球蝕んでくるっす~!!」

 

「おお、そうか!! なら、行ってくるがいい!!」

 

「了解っす!!」

 

バテテモーダはとっさにごまかして宣言すると、グアイワルは歓喜の声をあげる。バテテモーダは元気に出撃していった。

 

クルシーナはその様子を不機嫌そうに見つめていた。

 

「あいつもバカね・・・部下の本性も見抜けないなんてね」

 

グアイワルはバテテモーダの本当の性格に気づいていないのか、もしくは知っていてあんなことを言っているのか・・・まあ、どちらにしても察していない第三者には哀れな光景にしか見えていない。

 

まあ、グアイワルはそもそも部下思いとかそういう奴じゃないし、逆に利用しようと考えているかもしれない。そのために部下には優しくして、自分の出世のための道具にしようとしているのだろうなと思う。

 

なんていろいろ考えているけど、別にどうでもいいし・・・・・・。

 

ようやく静かになったクルシーナは再度寝そべって、昼寝を決め込もうとする。しかし、そこへ風を切るような音が二回ほど聞こえてくる。

 

「いぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

「待ってよ~♪ ノンお姉ちゃ~ん♪」

 

ゲシッ!!

 

「グハッ!?」

 

悲鳴と甘い声が聞こてきたかと思うと、お腹が圧迫されて変な声が出る。クルシーナは再度起き上がって、声の主を見やるとまた追いかけっこをしているイタイノンとヘバリーヌだった。

 

あいつら、アタシのお腹を踏んでいきやがったのか・・・?

 

眠りを邪魔されたことに苛立ちを覚えたクルシーナは顔を顰めるとすくっと立ち上がり、手を開いて構えると白いホールのようなものを出現させるとそこから白と黒のイバラビームを放った。

 

ビィィィィィィィィィィィィィィ!!

 

「あぁぁぁぁぁぁぁん♪」

 

イバラビームはヘバリーヌへと直撃し、彼女は思いっきり吹き飛ばされる。地面へと落ちたヘバリーヌはビクンビクンと体を痙攣させているが、その表情は恍惚としていた。

 

イタイノンはそのまま逃げ出していったようだが・・・・・・。

 

「・・・・・・ふん」

 

憂さ晴らしにもなっていないクルシーナはその様子を近くで見ることもなく、その場から立ち去っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~・・・全く落ち着いて昼寝もできやしないわ・・・」

 

「新人が増えてから、ビョーゲンキングダムが騒がしくなったウツね」

 

地球に降り立ったクルシーナはブツブツと文句を言いながら、適当に昼寝をする場所を探していた。

 

「イタイノンも適当に痛めつけて、引き剥がせばいいだろうに・・・」

 

「ヘバリーヌ相手には逆効果ウツよ。喜ぶだけウツ」

 

「・・・・・・ふん」

 

あいつもあいつでされるがままになるんじゃなくて、適当に叩きのめせばいいのだ。どうせ死にやしないんだから。まあ、アタシたち自体、もはや死んでるのと変わらないけど。

 

パンパン・・・! パンパパン・・・!!

 

「ん?」

 

何やら弾けるような音が聞こえてきた。視線を向けてみると、何やらすこやか市の街の上で何かが打ち上がっているようだった。

 

「何かやってるウツ?」

 

「さあね・・・」

 

「退屈なら行ってみたらどうウツ?」

 

「余計なお世話だっつーの・・・別にいいけど」

 

ウツバットの言葉通り、何かやっているかもしれないと踏んだクルシーナは、元々暇だったので珍しく相棒の言葉に同意して街へと降りてやることにした。

 

すると、そこは街の温泉街の近くにある場所で、様々な出店があって多くの人で賑わっていた。

 

中央にあるステージの看板らしきものには『すこやかフェス』と書かれていた。

 

「へぇ・・・こんな面白そうなもんがやってるんだ」

 

「人もいっぱいだけど、食べ物もいっぱいウツね」

 

「いいじゃない。この辺一帯を病気で蝕み放題ね」

 

クルシーナはバレないように人間にしっかり擬態した後、不快な生気を探しながら出店を見て回っていく。この辺は人も多く、病気で蝕むのには絶好のスポットだ。あとはメガビョーゲンを発生させれば・・・・・・。

 

と、クルシーナはとある一つの出店に足を止める。そこは生カステラと書かれたお店で、白い紙の中にお菓子みたいなものが入っていた。

 

「・・・ふーん、いいじゃない」

 

「・・・クルシーナ?」

 

クルシーナは瞳をキラキラと輝かせるとその出店へと近づいていく。今まで蝕むものを探しに行っていたはずなのに、突然店の方に向かっていった彼女に疑問の声を上げるウツバット。

 

「ここ一帯を蝕むんじゃないのかウツ?」

 

ドガッ!!

 

「ブヘッ!?」

 

「・・・何をしようとアタシの勝手だろ」

 

クルシーナはウツバットを拳で黙らせると、迷わず出店へと向かっていくのであった。

 

ビョーゲンズの彼女は生カステラを密かに手に入れていた人間界のお金で一つ購入し、白い紙の包み紙を剥がすと口へとかじる。

 

「んん~♥ 人間の作ったものにしてはよくできてるじゃない♪」

 

「僕も! 僕も欲しいウツ!!」

 

クルシーナが頬を赤らめながら満足そうな笑みを浮かべていると、ウツバットが彼女の頭の上でそのカステラを要求していると彼女は不機嫌そうな顔を浮かべる。

 

「アンタは病気に蝕むものを探してるんでしょ?」

 

「僕はお菓子を食べに来たんだウツ!!」

 

・・・調子のいいヤツ・・・。と、クルシーナは不機嫌そうな表情でそう思う。

 

「適当なそこの人間の血でも吸ってればいいでしょ。コウモリなんだから」

 

「コウモリはコウモリでも血を吸うコウモリじゃないウツ! 植物や果物を食べるコウモリウツ!」

 

「あっそ、だったらお菓子は食べないわよね?」

 

「あ、あれ!? なんか言い方、間違えたような・・・!?」

 

ウツバットが動揺している隙に、クルシーナは生カステラを全て口の中へと放り込む。

 

「んん~!! いいわね!!」

 

「あーん! 僕も食べたいウツ~!!」

 

年頃の少女のような嬉しそうな笑顔を見せるビョーゲンズの幹部に対し、その頭の上で焦ったような駄々をこねる相棒。

 

ふと他も見渡してみると、他の出店とは少し訳が違う黄色のワゴンがあった。あれもどうやら出店のようだが、何を売っているのか?

 

その黄色いワゴンを覗いてみると、看板からしてジューサーのワゴンのようだが、今はパンケーキを売っているらしい。

 

「パンケーキね・・・悪くないかも」

 

クルシーナはよくわからないが、パンケーキの何かに惹かれた様子。

 

「ウツウツ!! 僕も何か食べたいウツ!!」

 

「うるさいねぇ・・・わかったから、喚くな・・・!」

 

帽子になっている相棒がやかましいので、彼女は仕方なく二人分のパンケーキを買ってやることにする。

 

カウンターの近くに来るとコンコンとノックをするように叩き、店員を呼び出す。

 

「いらっしゃい! あら? 見かけない子ね。引っ越してきたのかしら?」

 

カウンターから栗色の髪の女性が出迎えてくれた。比較するものがなくてあれだけど、シンドイーネと同じくらい、もしくはあいつらプリキュアの3人よりは結構な美人の人だ。

 

しかし、クルシーナはその女性に違和感を感じ、女性をじっと見る。

 

ーーーーこの女性、どこかで見たことあるような・・・。

 

「えっと・・・・・・」

 

そういえば、その髪型といい、その色といい、その顔といい、プリキュアのあいつに似ているような・・・・・・。

 

「あの・・・・・・」

 

「あっ・・・そ、そうね・・・来たばかりでわからないところがあるかも・・・」

 

女性が困ったような声を出したため、クルシーナはとっさにごまかす。本当のところはもう何度か探索しているのだが、それは気にしないことにした。

 

パンケーキサンドを二人分注文し、ワゴンの近くに設置されているテラス席で食べることにした。

 

「ほら」

 

「ありがとう、クルシーナ! ウツ~、おいしそうウツ~」

 

ウツバットは帽子からコウモリの姿へと戻ると、クルシーナに差し出されたパンケーキを受け取って、彼女が座っているすぐ横に降りる。

 

クルシーナはパンケーキサンドをバーガーを食べるかのように一口食べる。

 

「うん~、あま♥」

 

同じように頬を赤らめる彼女。中身を見てみると黄土色のクリームのようなものが入っていた。これは、カボチャだろうか?

 

「おいしいウツ~!」

 

「・・・本当に調子のいいヤツ」

 

パンケーキをチマチマつまんでいる相棒に、クルシーナはやや顰めた顔をする。さっきまで病気で蝕むのかを考えていたくせに。

 

調子に乗っている相棒にそう思いつつも、パンケーキを摘んでいく。

 

その後、パンケーキを食べ切った後、黄色いワゴン車を後にすると再び出店を見て回っていく。食べ物ばかりかと言わんばかりだが、その中に一つだけクルシーナにとっては気になる出店があった。

 

それはきゅうりやトマト、ナス、タマネギなど、獲れたての野菜が多く売り出されている出店であった。

 

「・・・ふーん、生き生きとしちゃって。生きてるって感じ・・・」

 

クルシーナは色とりどりの野菜たちから不快な生気を感じ、不機嫌そうな顔をしかめる。

 

「クルシーナが部屋で育ててる野菜とどっちがいいウツね?」

 

「そんなのアタシのに決まってんじゃん。愛情と病気を注いで作ってるんだからさ」

 

廃病院の部屋でクルシーナが栽培している作物には、この出店でも売られているトマトやナス、ニンジンなどがある。特にニンジンは他の作物と比較してすぐに成長するので、失敗しにくく収穫しやすいんだとか。

 

「買ってみたらどうウツ?」

 

「・・・一応、人間の作ったものの腕前を確かめようかしら」

 

そう言って出店に近づくとトマトやミニトマト、ナス、ニンジン、タマネギ、とうもろこし、きゅうり、キャベツなどといったほぼほぼ全部の野菜をある程度購入した。

 

店員にビニール袋に入れられた、人間たちが作った色とりどりの野菜。クルシーナはその中の一つ、赤いトマトを一つ取り出すとそのままかぶりつく。

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナはお菓子を食べた時と違い、不機嫌そうな表情のままだ。トマトは生き生きとしているせいか、口の中でシャキシャキとした音が頭の中に聞こえ、その味も甘い。甘いのだが・・・・・・。

 

「・・・やっぱりアタシが作ったものの方がおいしいわ」

 

人間の野菜をお気に召さない彼女は、部屋でトマトも栽培している。そっちの方がトマトはしっかりと身が引き締まっていて、糖度も高い。この野菜もしっかりはしている・・・しっかりはしているのだが、何か物足りない感じだ。

 

「僕も食べたいウツ」

 

「ん・・・」

 

帽子になったウツバットの口に、クルシーナは先ほどのかじったトマトを放り込む。

 

「・・・別に普通に甘くて美味しいウツよ」

 

「お前の意見なんか求めてない」

 

ウツバットの感想をバッサリと切り捨てるクルシーナ。お前は余計なことを言いすぎなんだよ。作物も育てているアタシの目利きに間違いなんてありえないし、そもそも生き生きしている野菜なんか受け入れられない。

 

ビニール袋に入った野菜を、使役している手下の小さなコウモリの妖精たちに持たせておくことにする。よくわからないけど、なんとなくそばに置いておきたくない。

 

その後も、いろんな出店を回っていき、気になったお菓子を片っ端から買っていき、桶の中へと入れていく。

 

そんな中、また気になるものを発見し、足を止める。黄色のクロスに並べられている色とりどりのお菓子。クルシーナはよくわからないが、何かに惹かれるように近づいていく。

 

「・・・ふーん」

 

「いらっしゃい、お嬢ちゃん! すこやかまんじゅう、どうだい!?」

 

鉢巻をした壮年の店員にすこやかまんじゅうと呼ばれたお菓子をよく見てみると、そのすべてに笑っている顔のようなものが焼印されていて、その額に「す」と描かれている。

 

それをマジマジと見るクルシーナは、病院で出会った車椅子に乗った笑顔が可愛いマゼンダ色の髪の少女の顔を思い出す。

 

ーーーー・・・なんか、あいつに雰囲気が似ているわね。

 

「お嬢ちゃん?」

 

「あっ・・・」

 

壮年の男性の声に我に返った彼女は、このすこやかまんじゅうとやらを聞いてみる。

 

「これって、何でできてんの?」

 

「おお、興味があるのかい? このすこやか市の名物である、すこやかまんじゅうはなぁ、6種類の野菜を使っててねぇ。イチゴにカボチャに、コマツナに、どれも美味しくて体にいいんだ!」

 

「ふーん・・・」

 

体にいいのは正直どうでもいいが、このまんじゅうが野菜でできてるということを知ったクルシーナは俄然に興味が湧いた。っていうか、余計に惹かれた・・・食べてみたいと。

 

「僕も食べたいウツ~!!」

 

「? また変な声が聞こえたな・・・?」

 

帽子のウツバットが思わず呟いた言葉に、店員がキョロキョロとし始める。

 

「気のせいでしょ。それよりも、そのすこやかまんじゅうとやらを頂戴。全種類4個ずつね」

 

クルシーナはそれを冷静に返し、すこやかまんじゅうを購入しようと札を取り出す。

 

「まいど!!」

 

店員は一回り大きな桶にすこやかまんじゅうを入れて、彼女に手渡してくれた。早速、桶に入れられたすこやかまんじゅうを二つ出して、包んであるビニールを剥がすと一つをウツバットに渡し、一つは自分に。

 

そして、二人はまんじゅうをほぼ同時に食べてみる。

 

「!! ん~!! 美味しい~!! 最高ね♥」

 

「ほっぺたが落ちそうウツ~!!」

 

二人はお互いに頬を赤らめながら満面の笑みを見せるという同じリアクションをとる。アンコがしつこくない甘さで、野菜が野菜として感じずにその美味しさを引き立てている。

 

桶に入っているまんじゅう、もっと食べたい・・・!!

 

そう思ったクルシーナはどこか落ち着けるところに座って食べようと移動をし始め、どこか座れるところがないかを探していると、ちょうどよく座れる場所があった。

 

「あったあった・・・!!」

 

そこは足湯があるエリア。温泉は正直あれだが、ここならば落ち着いて食べれると近づいていくが・・・・・・。

 

「・・・げっ。あいつらは・・・・・・!」

 

クルシーナは嫌なものでも見てしまったような反応をする。そこには足湯に浸かっているどこかで見たことのある3人の少女と、小さな動物ーーーーヒーリングアニマルが4匹いた。要するにあいつらはビョーゲンズにとっても脅威になりつつあるプリキュアたちだ。

 

「もっと食べたいラビ!! もっともっともっともっともっと~!!!」

 

「・・・しつこいペエ」

 

ベンチに隠れるように座っているピンクのうさぎが、何やら駄々をこねており、隣の青いペンギンが困っている様子。

 

「相変わらず、あいつはわがままなやつだウツ」

 

「・・・バッカみたい」

 

クルシーナとウツバットは呆れた様子で見やると、3人にバレないようにその場を通り過ぎようとする。その距離は、足湯の側で柵の側であるために、3人とは目と鼻の先だ。

 

「そういえば、今日ね、病院で先生にすっごく元気だって言われたの」

 

マゼンダ色の髪の少女ーーーーのどかが話す言葉に思わず足を止めるクルシーナ。その距離は彼女のすぐ背後だ。

 

「え!? 本当!? のどかっちやったじゃん!!」

 

「へへへ、もう前から元気だったんだけど、お墨付きをもらった感じで、嬉しくって・・・」

 

「よかったわね。のどか」

 

のどかはなんだか嬉しそうだ。ひなたもちゆも喜んでいる。

 

それに比べてその話を立ったまま聞いていた、クルシーナの表情はなんだか暗そうな感じで、俯いている。

 

ーーーーこの街で、お前さんを絶対に治してやるぜ。

 

ーーーー大丈夫だ。体はきっと良くなっていくさ。

 

かつて設楽が自分に言った言葉を思い出す。彼を信じていたが、病気はよくならなかった・・・・・・。

 

医者なんて嘘つきだ。患者に嘘をついて、偽りの安堵を与えようとする。本当はもう治らないってわかっているくせに、きっと治ると嘘をつこうとする。一生、好きにはなれない。

 

「私、この街に引っ越してきて、すっごいパワーアップしてる気がする!」

 

「っ・・・・・・!」

 

のどかの言葉に、クルシーナは物を持っていない方の拳を震わせる。

 

このすこやか市に来て元気になっている・・・? パワーアップしている・・・?

 

そんなことあるはずがない。こんな他の街と変わった様子も、何の変哲もない街が元気を与えてくれるわけがない。そういう根拠のない力を信じるなど、私は大嫌いだ。

 

そういうのを聞いていると、本当にこの街を蝕んで、苦しめてやりたくなる・・・・・・!

 

「クルシーナ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

心配するウツバットの声をよそに、クルシーナはそのままプリキュア3人の横を通り過ぎていく。

 

その後は特にめぼしいお店はなく、連なる出店が途切れた商店街の外へと出るクルシーナ。

 

「ん? 何やら騒がしいウツね?」

 

「・・・どんだけ騒ごうとアタシには関係のないことよ」

 

何やら先ほどの商店街がざわつくような何かが起こった模様だが、クルシーナは全く興味を示さない。人間が困っていようとどうでもいい。むしろ苦しんでもらったほうがアタシにとっては好都合だ。

 

お遊びは終わり。そう思いながら商店街の外に出て、改めて病気で蝕めるものを探そうとしていると・・・・・・。

 

「だ~れがグアイワルの子分になるかっつーの」

 

バテテモーダが自分が歩いていた方向とは、逆の方向から愚痴をこぼしながら歩いているのが見えた。

 

あいつは普段、私たちに対しては猫をかぶっていて、今はその化けの皮を露わにしているようだ。

 

クルシーナは面白そうなものを見つけたかのような笑みを浮かべると、バテテモーダへと近づいていく。

 

「へぇ・・・それがアンタの本性ってわけ?」

 

「なっ・・・ど、どこだ!? って、アンタ誰っすか・・・!?」

 

不意に声をかけられたバテテモーダは慌てたように周囲を見渡す。まさか、誰かに聞かれているのを見られたのか・・・?

 

ようやく声の主を視線に捉えるも、人間に擬態したクルシーナを認識できていないバテテモーダは疑問の声を上げる。

 

クルシーナは右指を鳴らして、人間の擬態を解除する。薄ピンク色の肌となり、悪魔のツノ、サソリの尻尾を生やして元の幹部の姿へと戻る。

 

「ク、クルシーナ嬢!?」

 

「何、慌ててんの? アタシぐらいになれば人間にも化けれんのよ」

 

バテテモーダは自分の先輩で、キングビョーゲンの娘であるクルシーナだと認識すると余計に焦燥感に駆られる。

 

「それよりもさっきの言葉だけど・・・?」

 

「えぇぇ!? な、何の事やら・・・?」

 

「別に誤魔化さなくてもいいじゃない。アタシはアンタみたいな狡賢いやつ嫌いじゃないからさ」

 

話を戻されたことにバテテモーダは本性をごまかし始めるも、クルシーナはむしろ彼の姿勢を肯定する。

 

クルシーナは桶からすこやかまんじゅうを一つ取り出すと、バテテモーダへと放る。ネズミのような獣人はうまくそれをキャッチする。

 

「それあげる」

 

「何っすか、これ?」

 

「すこやかまんじゅう、だって。この街の名物らしいわよ」

 

クルシーナがそう言うと、バテテモーダは包み紙を剥がしてまんじゅうを食べる。

 

「・・・美味しいっすね」

 

「美味しいでしょ? 美味しくできてるからこそ、この街はムカつくのよ」

 

バテテモーダが素直な感想を述べると、クルシーナは顔を顰めながら答える。こんな健康で美味しいものを作れるからこそ、不快感を感じるのだ。

 

「・・・アタシはキングビョーゲンの娘であり、お父様に似合う器の一人だ。そして、アンタやダルイゼンたちはキングビョーゲンの忠実な駒。器は器らしく、駒は駒らしく、与えられた使命を全うすればいい。お父様の快楽を満たせる奴がビョーゲンズにふさわしいのさ」

 

「自分にはよくわかんないっすね・・・」

 

「でも、お前にはちゃんと意思も考えもあるでしょ?」

 

「・・・ふむ、そうっすね。自分が大活躍をして、グアイワルを逆に子分にするのも、ありってことっすよね・・・!」

 

不敵な笑みを浮かべるクルシーナに、バテテモーダはニヤリと笑みを浮かべながら言う。

 

「ええ。別にアタシを押し退けて、出世したっていいのよ・・・?」

 

「そ、そんな! お嬢にそんなことをするなんて! キングビョーゲン様に申し訳が立たないっすよ・・・!!」

 

「あら、そう? 生まれたばかりのアンタにはまだ早いかしらねぇ」

 

バテテモーダが慌てふためくと、クルシーナはその反応に面白いものを見たかのような顔をする。

 

「確かに自分は生まれたばかりっすけど・・・!! ただ、これだけは言えるっす・・・」

 

「ん? 何?」

 

「お嬢たちのそういうところや姿勢は、グアイワルとか他の奴らとは違って好きっすよ」

 

バテテモーダは生まれてはじめて、本音とも言える言葉でクルシーナを褒めた。それはもう媚びたようなあの態度ではない。本気で思った言葉だ。

 

クルシーナは一瞬きょとんとした様子だったが、すぐに年頃の少女らしい笑顔を見せた。

 

「フフフ、お世辞でもありがと♥ じゃあ、お互い頑張りましょう」

 

クルシーナは右指を鳴らすと、小さなコウモリの妖精たちがビニール袋を持って現れる。その中には先ほど彼女が買った野菜がたくさん入っている。

 

その中から黄褐色の皮に包まれている野菜、玉ねぎを数個取り出すと床へと放る。

 

「地球がアタシたちのものになる祈願、そしてこれからの種の繁栄も願って・・・!」

 

「よし!! じゃあ、自分も早速!!」

 

ある意味、持ちつ持たれつの関係の二人。お互いにすこやか市を、地球を自分色に染め上げようと目論む。

 

バテテモーダが素体を探しているうちに、クルシーナは手のひらに息を吹きかけ、黒い小さな塊のようなものを出現させる。

 

「進化しろ、ナノビョーゲン」

 

「ナーノー」

 

生み出されたナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、彼女が地面に転がした数個の玉ねぎに取り付く。店員である農家の人間によって作られたであろう、新鮮な野菜の玉ねぎが病気へと蝕まれていく。

 

「・・・!?・・・!!」

 

玉ねぎに宿るエレメントさんが病気へと染まっていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガ! ビョーゲン!」

 

玉ねぎを模したような顔の頭に長い葉っぱが4本、細い触手のようなものを2本、下には複数の根っこのような触手と足を生やしたメガビョーゲンが誕生した。

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンは手始めに、頭の葉っぱに隠れている隙間の部分から赤い液体のようなものを噴射する。粘液を含む液体が建物や街路樹などにかかり、赤い靄へと蝕まれていく。

 

「フフフ・・・・・・」

 

このままさっきの出店も蝕んでやろうと、クルシーナは不敵な笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、のどかたちはすこやかまんじゅうを焼けずに困っていたお店の人たちを、他の商店の人たちと協力して、無事に出店はすこやかまんじゅうを売り出すことに成功した。

 

すこやか市は誰かが困っていたら、お互いに助け合う街で、そういう街だからこそ自分は健康でいられるんだということをのどかは感じたのであった。

 

そんな時だった・・・・・・。

 

「クチュン!! クチュン!!」

 

「あ・・・!!」

 

ラテが突然、くしゃみを二回してぐったりし始めたのだ。

 

「まさか・・・!」

 

ビョーゲンズが現れた・・・? そうのどかたちが察した時・・・・・・!

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

街の人たちの悲鳴が響き、視線を向けると両手に扇風機、両足に車輪を持ったメガビョーゲンがすこやかフェスの会場を襲っていた。

 

「ビョーゲンズだわ!!」

 

「メガ~!!」

 

メガビョーゲンは扇風機から赤い病気を放って、建物を病気へと蝕んでいく。

 

「みなさん!! 避難してください!!」

 

「こっちです!!」

 

お店の人たちが避難を誘導し、街の人たちはその方向へと逃げていく。

 

一方、のどかたちは会場から隠れたところへと移動し、そこでなぜか別行動を取っていたラビリンたちと合流した。

 

「のどか~!!」

 

「みんな~! どこに行ってたの?」

 

「・・・っ!?」

 

すこやかまんじゅうが欲しくて、我慢できずに行動していたなんて言えない・・・。こっそり手に入れようとしていたラビリンたちは思わずギクリとなった。

 

「い、今はそんなことより変身ラビ!!」

 

「うん!」

 

「「「スタート!」」」

 

「「「プリキュア、オペレーション!!」」」

 

「エレメントレベル、上昇ラビ!!」

「エレメントレベル、上昇ペエ!!」

「エレメントレベル、上昇ニャ!!」

 

「「「キュアタッチ!!」」」

 

ラビリン、ペギタン、ニャトランがステッキの中に入ると、のどか、ちゆ、ひなたはそれぞれ花のエレメントボトル、水のエレメントボトル、光のエレメントボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。

 

そして、肉球にタッチすると、花、水、星をイメージとしたエネルギーが放出され、白衣のような形を形成され、それを身にまといピンク、水色、黄色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

そして、髪型もそれぞれをイメージをしたようなものへと変わり、のどかはピンク、ちゆは水色、ひなたは黄色へと変化する。

 

キュン!

 

「「重なる二つの花!」」

 

「キュアグレース!」

 

「ラビ!」

 

のどかは花のプリキュア、キュアグレースに変身。

 

キュン!

 

「「交わる二つの流れ!」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

 

「ペエ!」

 

ちゆは水のプリキュア、キュアフォンテーヌに変身。

 

キュン!

 

「「溶け合う二つの光!」」

 

「キュアスパークル!」

 

「ニャ!」

 

ひなたは光のプリキュア、キュアスパークルに変身した。

 

「「「地球をお手当て!!」」」

 

「「「ヒーリングっど♥プリキュア!!」」」

 

3人は変身を終えて、メガビョーゲンの前に立ちはだかろうとする。

 

「ち~っす! プリキュア!! ご機嫌いかがっすか~??」

 

すこやかフェスの会場にはバテテモーダがへらへらとしたような態度で挨拶をする。

 

「ふんっ、アンタが来たから超最悪っ」

 

「おぉ、怖っ!」

 

スパークルがそっけない態度を取ると、バテテモーダはわざとらしく身を窄めてみせる。

 

「最悪ってことないでしょ? せっかくのフェスなのに」

 

「クルシーナもいたの!?」

 

そんなフェスの会場の裏からはクルシーナが悪そうな笑みを浮かべて姿を現した。

 

「ふっ、健康的な環境あるところ、ビョーゲンズありってね!」

 

クルシーナは相変わらず、挑発的な態度でプリキュアを煽る。右手にはフェスの出店で購入した大量のお菓子を抱えながら・・・。

 

「そういえば、メガビョーゲンがもう一体いないラビ!!」

 

「メガビョーゲンはどこなの!?」

 

そういえば、ラテは二回くしゃみをしたから、もう一体メガビョーゲンがいるはず。でも、クルシーナがいるのにもう一体メガビョーゲンがいない。もしかして・・・!

 

「さあね。知ってても、素直に教えると思ってんの? お前らの知らないところでどんどん蝕んでるんじゃない?」

 

「!! まずはそのメガビョーゲンを何とかしないと・・・!」

 

グレースはクルシーナの言葉に動揺した表情をする。

 

プリキュアたちもラビリンたちヒーリングアニマルからは知らされてはいるが、彼女はキングビョーゲンの娘だ。その娘たちは今までの経験からしてラテが察してから到着しても、その数分ですでに広範囲を病気で蝕んでいる。しかもダルイゼンやシンドイーネ、グアイワルが放ったメガビョーゲンも一回り強いため、そのメガビョーゲンから浄化しないと危険だと判断したのだ。

 

グレースは、クルシーナが生み出したメガビョーゲンの元へと行こうとするが・・・・・・。

 

「まあまあ、いいじゃないっすか~!! お嬢よりも自分たちと遊びましょ~!! 行っちゃって~、メガビョーゲン!!」

 

しかし、そんな3人の前にはバテテモーダと彼のメガビョーゲンが立ちふさがる。

 

「メガビョー、ゲン!!」

 

メガビョーゲンは車輪を走らせると、腕の扇風機を振り下ろす。プリキュアたち3人はそれを片なく飛びのいてかわす。

 

しかし、その行動はメガビョーゲンが狙っていたものであった。

 

「「「!?」」」

 

メガビョーゲンは飛び上がったプリキュアたちに両腕の扇風機を向けて、強烈な風を放った。

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

空中にいたプリキュアたちは強風を受けて、そのまま背後にあった山へと吹き飛ばされてしまった。

 

「メメメメメメ、メガァ!!」

 

メガビョーゲンは吹き飛ばしたプリキュアたちを追うべく、車輪を走らせた。

 

「おぉ! すっげぇ~!!」

 

「結構、飛んだわねぇ」

 

バテテモーダとクルシーナが驚いてしまうぐらいに強力なメガビョーゲンだった。

 

「さてと、アタシは今のうちにここ一体を病気で蝕んでおくか。あと頼んだわよ」

 

「了解っす~!!」

 

クルシーナはバテテモーダにこの場を任せて、自分が生み出したメガビョーゲンの元へと向かっていく。

 

「フフフ・・・」

 

そんな彼女の表情には酷薄な笑みが浮かんでいたのであった。

 

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