ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
このお話の最後にちょっと気になるシーンも入れているので、最後までご覧ください。
「メガ!!」
プリキュアたちがバテテモーダのメガビョーゲンと交戦している中、クルシーナのメガビョーゲンは舞台の裏の方にある場所で、口から赤い粘り気を含んだ液体を吐き出し、出店や建物を着実に病気に蝕んでいた。
自分たちが散々回った出店も躊躇なく、メガビョーゲンの病気によって赤く染まっていく。
「いいわよ、そのままどんどん蝕みな」
クルシーナは被害を被らない建物の上でメガビョーゲンに指示をすると、桶からすこやかまんじゅうを一つ取り出すとビニールを剥がして一口摘む。
「ん~! やっぱりいいわね~♥」
どんどん凄惨な景色になっていく中、お菓子を食べて年頃の少女のような笑顔を見せるクルシーナ。
「クルシーナ! 僕にも! 僕にも!!」
「はいはい、わかったわよ」
クルシーナはまんじゅうを一つ出してビニールをはがすと、帽子のウツバットの口に放り込む。
「ん~! 美味しいウツ~!!」
帽子の顔が赤く染まり、顔も笑顔に歪む。
「フフフ・・・」
クルシーナは病気で赤く染まっていく出店の商店街を眺めながら笑みを浮かべる。
ドーーーン!!
きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!
遠くの山から何かを叩きつけたような音と、プリキュアと思われる悲鳴が聞こえてくる。
「あっちも派手にやってるみたいね」
音がした方向を向きながら、クルシーナは笑みを浮かべる。プリキュアはおそらくバテテモーダが生み出したメガビョーゲンに苦戦しているだろう。あいつが生み出したメガビョーゲンもある意味、強力なメガビョーゲンだ。
「あっ、そうだ。この隙にこのすこやかまんじゅうを洗いざらい、いただいちゃおうかしらね」
「それ、いいウツね。かなり美味しいし」
クルシーナは建物の上から飛び降りると、すこやかまんじゅうがある出店を探す。
アタシのあのメガビョーゲンも蝕む速度は速いが、狙っているのは主に街路樹や出店の背後にある建物で、まだそんなに出店を蝕んではいない。せっかく美味しいんだし、人間は全員逃げ出したので、今なら簡単にまんじゅうが手に入るはず。
あいつらのお土産にしては十分なものになるはずだ。あいつらにも美味しさをわかってもらいたい。
「お、あったあった・・・」
すこやかまんじゅうと書かれた出店を見つけると、その店のテーブルに並んでいるまんじゅうを一つ一つ取って桶の中に入れていく。
「フフフ、大量大量・・・」
クルシーナは桶に溜まっていくまんじゅうを見て、年頃の少女のような笑みを浮かべる。
「メガビョーゲン・・・!」
ちょうどメガビョーゲンが出店を襲い始めたようだ。出店の看板に目掛けて口から粘り気のある液体を吐き出し、病気で赤く染めていく。
クルシーナはそれに巻き込まれないように、飛び上がって建物の上に避難する。
「その調子だ、メガビョーゲン。大分ここも蝕めてきたわね」
周囲を見渡してみれば、すでに建物、街路樹や木、地面も含めて病気が広がっている。もはや赤一色と言えるものであり、メガビョーゲンの侵攻も片なく完了するだろう。
病気が広がったことで、メガビョーゲンも少しばかり成長したような気もする。
「あーあ、あの娘と一緒に・・・ここら辺を回りたかったな・・・」
クルシーナは病気で赤く染め上がった商店街のフェス会場を眺めながら言う。
・・・車椅子に乗って笑顔を見せるマゼンダ色の髪の少女。その娘とは一緒に病院の花も世話をしたし、一緒に深夜の病院を抜け出したりもした。
一緒に病院を出て、一緒に遊び、この街で一緒にいろんなものを食べる。そんなことをしてみたかった・・・。
もし、あの娘と一緒に病院を出られたら・・・そういうことが、できたのか・・・?
「!?」
突然、変な記憶や感じてもいないことが頭に流れ、ぼーっとしていたクルシーナはハッとした表情になると首を振る。
「?・・・クルシーナ? 大丈夫ウツ?」
「・・・何、考えてんだよ・・・アタシ・・・バカなの・・・?」
落ち着け、落ち着くんだ、アタシ。アタシはビョーゲンズのクルシーナ。生まれた以前の記憶などないはずだ。
あの娘と一緒に祭りに行きたい・・・? この街で一緒に食べたい・・・? 何を思ってもいないことを考えているんだ、アタシは・・・?
・・・でも、さっきの記憶は、一体、何だ・・・? あれは、アタシの記憶か・・・? 何だか違和感を感じる気がする・・・。
もしあれがアタシの記憶だったら、アタシはあいつとどこかで・・・?
クルシーナの頭には顰めるほどではないが、ジンジンと頭痛がしていた。
「いたよ! メガビョーゲン!!」
聞こえた声に我に帰り、その方向を振り向くとプリキュア3人がこちらに駆けつけてきていた。
「もう、こんなに広がってるよ・・・!」
「早く、お手当てしてあげないと・・・!」
プリキュア3人はそう言いながらメガビョーゲンの前に立ちはだかろうとする。
「あら、随分と早かったわね。ってことは、バテテモーダのはやられちゃったのかしら? 新しい技を手に入れて、少しはマシになったってこと?」
冷静になったクルシーナは余裕そうな笑みを浮かべながら言う。相も変わらない挑発的な態度。
「アンタが言わなくても十分お手当てやれるし!!」
スパークルがそれに対して、強気な言葉で返す。
「あっそ。メガビョーゲン、やっちまいな」
「メガ!!」
メガビョーゲンはクルシーナに指示されると、両手の顔のついた玉ねぎがついた触手をプリキュア3人へと伸ばす。
「「「ふっ!! はぁ!!」」」
プリキュア3人は伸びてくる触手を飛び上がってかわすと、3人同時にそれぞれの色の光線を放つ。しかし、玉ねぎのような顔がついている触手に弾き返される。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
次にグレースがパンチを放つ。しかし、メガビョーゲンはひらりとかわすと逆に根っこのような触手を両手に巻きつける。
「あ・・・!?」
「メーガー!!」
「きゃあぁぁ!!!」
グレースはそのまま放り投げられ、出店の後ろへと吹き飛ばされる。
「グレース!!」
「はぁぁぁぁ!!!」
今度はスパークルが飛び上がって、メガビョーゲンに向かって蹴りを繰り出す。このパンチも触手についた顔のついた玉ねぎに防がれる。
「うぇぇ!?」
「メガ!!」
「あぁぁぁぁ!!」
動揺したその隙を狙ってメガビョーゲンが体ごと回転させてもう片方の玉ねぎを食らわせる。それに当たったスパークルは吹き飛ばされて、街路樹へと激突して木の下へと落ちる。
「スパークル!!」
「メガビョーゲン・・・!!」
仲間を構っている暇もなく、メガビョーゲンは口から赤い粘り気のある赤い液体をフォンテーヌへと吹き付ける。
「ぷにシールド!!」
フォンテーヌはヒーリングステッキから肉球型のシールドを展開して、赤い液体を防ぐ。これを凌いで反撃のチャンスを伺おうとする。
「くっ・・・!!」
しかし、赤い液体は粘り気を含んでいるためか重さがあり、フォンテーヌはいつも防いでいる病気よりも押されそうになる。
「・・・! な、何・・・!?」
ふと不意に足元に違和感を感じたかと思うと、急に閉じて体が持ち上がる。
実はメガビョーゲンは赤い液体での攻撃で目をそらさせている隙に、足元に触手を伸ばしてフォンテーヌの足を一纏めにして拘束したのだ。
「メガァ!!」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!」
メガビョーゲンはフォンテーヌを持ち上げたかと思うと、正面へと放り投げた。受身が取れずに、地面へと数回叩きつけられて、高く飛び上がったかと思うと地面へと落ちる。
「うぅぅ・・・やっぱり、強い・・・!」
三人娘の生み出すメガビョーゲンは大きくならなくても、それなりに脅威だと感じざるを得ないグレース。
「っていうか、動きが俊敏すぎるんだけど・・・!!」
3人で放った光線や飛び蹴り、自身が出したパンチを放っても、全て体を翻してかわされるか、跳ね返されてしまうことにぼやくスパークル。
「メガァ!!」
メガビョーゲンは触手についている玉ねぎのような顔の口から、輪切りにされた玉ねぎのようなものを発射していく。
ドン!ドン!ドン!ドン!
輪切りの玉ねぎは着弾して、爆発を起こし土煙を巻き上げる。
「いいわよ、メガビョーゲン。そのまま叩き潰して、ここら辺一帯を全部病気で蝕んじまいな。あむ・・・ん~、何度食べてもいいわね~♪」
クルシーナは高みの見物をしながら冷酷な命令を下しては、すこやかまんじゅうを摘んで少女のような顔をしていた。
「クルシーナばかり食べててずるいウツ~!!」
「うるさいわね・・・あげるわよ、ほら!」
クルシーナは帽子になった相棒が喚くのにイライラしながら、まんじゅうを包むビニールを剥がして彼女の口に放り込む。
ドン!ドン!ドン!ドン!
「くっ・・・これじゃ、近づけない・・・!」
メガビョーゲンが輪切りの玉ねぎを連射するため、プリキュアたちはぷにシールドを展開して防ぐのが精一杯。怪物に近づけずにいた。
ドン!ドン!ドン!ドン!
「ああ!? 病気が広がって・・・!?」
ぷにシールドで跳ね返った輪切りの玉ねぎがまだ無事だった場所へと着弾して、病気へと蝕まれていく。自分たちのシールドに当たったものは爆発せず跳ね返り、他の場所に当たって逆に被害が広がってしまっていた。
しかし、ここでぷにシールドを解除すれば、まともに食らってしまうため、どうすることもできない・・・。
さらに輪切りの玉ねぎがプリキュアの側を通り過ぎて、向かおうとしていたのはすこやかまんじゅうを販売していた出店。
「!・・・ダメー!!!!」
グレースがシールドを解除して、その出店の前へと飛び出す。
「あぁぁぁぁぁ!!!」
輪切りの玉ねぎが直撃し、グレースは吹き飛ばされて地面に転がる。
「自分からぶつかろうとするなんて、バカなやつね」
クルシーナはそんなグレースを建物の上からあざ笑う。肉球のシールドを展開し続けていれば、無事だったのに、庇うために飛び出すなんて冷静になれてないし、頭の悪い行動だ。
「ぐ、うぅぅ・・・!!」
「メー、ガー!!!」
「!? あぁぁぁ!!!!」
グレースは傷つきながらも立ち上がろうとするが、そこにメガビョーゲンが片方の輪切りの玉ねぎの連射を止めて、その玉ねぎを鉄球のように振り回して放る。
グレースはとっさに気づいて玉ねぎを受け止めるも、抑えきれずに後ろへと吹き飛ばされる。
「がぁ!? ぐ、ぅぅぅぅ・・・きゃあぁ!!!!」
建物の壁へに背中から叩きつけられ、その痛みに息を吐くグレース。そのまま体を押し潰そうとしており、グレースは苦痛に顰めながら玉ねぎを押さえつけるも、体力的な問題で力が及ばずに建物へとめり込まされた。
「メー!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ガー!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
メガビョーゲンはもう片方の玉ねぎの連射を止めて鉄球のように振るい、スパークルをシールドごと吹き飛ばし、さらにフォンテーヌも巻き込んで一緒に吹き飛ばした。
「うぅぅ・・・!!」
「くぅぅ・・・!!」
「く、うぅぅ、うぅぅぅ・・・!!!」
地面へと倒れるスパークルとフォンテーヌ、建物へとめり込まされて呻くグレース。二人の方は体を起こして立ち上がろうとし、グレースは壁へとめり込んだ上半身をジタバタしながら出そうとしていた。
「やっぱり弱いわね、あいつら・・・」
クルシーナはプリキュアがボロボロにされるその様子を嘲るような笑みで見つめていた。
昔の方がよかった。今は弱すぎて実に退屈でしかない。これならアタシが生まれた頃に、現れたあいつを相手にしていた方がよっぽどマシだったかもしれない。本当に話にならない奴らだ。
「メガビョーゲン、今のうちにここ一帯を全部蝕んじまいな」
クルシーナは出店から取った生カステラを齧りながら、もう終わらせてやろうとメガビョーゲンに指示を出す。
「メガァ!!」
メガビョーゲンは葉っぱのようなものの隙間から赤い粘り気のある液体を噴射して、残りの出店も病気へと蝕む。もちろん、グレースが庇って守ろうとしていたすこやかまんじゅうの出店もだ。
「ああ!?」
「そんな・・・!?」
出店一帯が病気へと蝕まれたことにスパークルとフォンテーヌは絶望の表情を浮かべる。
「お前らのお得意の頑張りは無駄だったわね、アッハハハ!!」
プリキュアが結局は病気になる前に守り切れていないことを嘲笑うクルシーナ。
結局、頑張ったって何の意味もないのだ。あいつらのお手当てだって頑張ったところで、アタシのメガビョーゲンよりも強くなるわけでもない。まあ、わかっていたことだけど・・・。
こいつらなんか、自分が手を下すまでもなかったということだ。
「さーてと、メガビョーゲン! こんな奴らは放っておいて、今度はあっち行こうか」
「メガ!ビョーゲン!」
クルシーナは山がある方へと指をさすと、メガビョーゲンは指示に従ってそちらの方へと向かっていく。プリキュアを見向きもしないかのように彼女たちはその場を後にしていく。
「スパークル! 大丈夫か!?」
「うぅぅ、止めなきゃ・・・!!」
「でも、あのメガビョーゲン、やっぱり強いペエ!!」
「何か、打開策を・・・」
スパークルとフォンテーヌはボロボロになりながらも、なんとか立ち上がったが、あのメガビョーゲンはバテテモーダが生み出したものと比べてやはり強い。あいつが別の場所を病気で蝕む前に、なんとか大人しくさせる方法を考えないと・・・。
「うぅぅぅぅ・・・うぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
一方、グレースはめり込んだ壁から抜け出すことができずに、足をジタバタとさせていた。
「「グレース!!」」
二人はそんな彼女に気づくと近づいていき、グレースの足を掴む。
「「せーの・・・ふっ!!」」
そのまま足を引っ張って、めり込んでいたグレースを建物の壁から引っ張り出す。
「グレース!大丈夫!?」
「う、うん・・・なんとか・・・あ・・・!」
グレースは無事だったが、彼女は自分がめり込んだ建物を見る。その部分の壁は壊れて、建物の中が見えてしまっていた。
「建物・・・壊しちゃった・・・」
すこやか市の住民の大切なお店であろう建物を、メガビョーゲンの攻撃を食らったとはいえ壊してしまったことを気にして、顔を俯かせるグレース。
建物を守り切れなかったとその表情は落ち込んでいた。
フォンテーヌとスパークルはお互いに目を見合わせると口元に笑みを浮かべる。
「グレース」
「・・・?」
「グレースは頑張ってるじゃん。お手当てだって、自分のことだって。いくら頑張ってても、こんなことはあるし! あたしは頑張っても、お姉やお兄にはまだまだだけど・・・」
「スパークル・・・」
スパークルが最後は自分を自虐しつつも、グレースを励ます。
「私だって、頑張ってても失敗することだってあるわ。気に病む必要なんてない、それでも気にしてるなら、後で建物の人に謝りに行きましょう」
「フォンテーヌ・・・」
フォンテーヌも自分なりの言葉で、グレースを励ました。
「そうだよね・・・今度は、失敗しないようにすればいいんだもんね・・・」
「うん!!」
「ええ!!」
二人のおかげで元気を取り戻したグレース。三人はメガビョーゲンを止めるべく、クルシーナたちが向かった方向へと走っていく。
一方、そのクルシーナたちは・・・・・・。
「メガー!!」
メガビョーゲンは口から赤い粘り気のある液体を吐き出しながら、山の木々を蝕んでいた。
「ここもそろそろ終わりかね・・・?」
「そろそろ別の場所へと範囲を広げるウツ?」
クルシーナは病気で蝕まれた周囲を見渡しながら、余裕の表情を見せている。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「メガ・・・!?」
そこへプリキュアの3人が一斉にメガビョーゲンの背後から飛び蹴りを放った。気付かずに直撃を受けたメガビョーゲンは吹き飛ばされて、うつ伏せに倒される。
3人はヒーリングステッキを構えながら、メガビョーゲンの前に立ちはだかった。
「何? 性懲りも無く、また来たわけ?」
クルシーナはプリキュアの方を見ながら、呆れたような言い草をする。
「何度だって来るし!!」
「みんなが大事に作り上げたお祭りを、蝕ませたりなんかしない!!」
スパークルとグレースがそう言うも、クルシーナは不機嫌そうな顔をする。
「ふん、こんな街の何が大切なんだか・・・」
そもそもこの街は、協力するだの、お互いに助け合うだの、健康的なものが多いだの、アタシにとっては不快なものだらけだ。そんな街を見ていると本当に病気で苦しめたくなる。
「メガビョーゲン、返り討ちにしてやれ」
「メーガー!!」
メガビョーゲンはクルシーナの指示にすくっと立ち上がると、両腕の玉ねぎをプリキュア3人に向かって叩きつける。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
3人は飛び上がってかわすと、グレースはそのままメガビョーゲンに飛び蹴りを放とうとする。
「メー・・・ガー!!」
メガビョーゲンはまたひらりとかわすと、両腕の玉ねぎを当てようと体を回転させようとする。
「はぁぁぁ!!」
「ふっ!!!」
しかし、そこへスパークルとフォンテーヌが玉ねぎを上空から踏みつけるように蹴りを入れ、玉ねぎを押さえつける。
「メ・・・ガ!?」
メガビョーゲンは両腕を動かせなくなったことに戸惑う様子を見せ、回転攻撃が不発に終わる。その隙にグレースは地面へと着地して、すぐさまメガビョーゲンに向かって飛び出す。
「はぁぁ!!」
そして、そのまま根っこの一本を掴んで、ターザンのようにメガビョーゲンの周囲で一回転するとそのまま顔面に向かって蹴りを繰り出す。
「メガ!? ビョーゲン・・・!?」
蹴りを受けたメガビョーゲンは吹き飛んで再び倒れる。
「何よ、さっきよりもキレがいいじゃない・・・」
クルシーナはさっきと比べてプリキュアたちの動きがよくなっていることに不快感をあらわにする。
キュン!
「「キュアスキャン!!」」
グレースは肉球にタッチして、ヒーリングステッキのラビリンの顔をメガビョーゲンに向ける。
ラビリンの目が光り、メガビョーゲンの中にいるエレメントさんを見つける。
「実りのエレメントさんラビ!!」
エレメントさんは、メガビョーゲンの不健康そうな顔の額の上、つまりは葉っぱの根元部分にいる模様。
「メーガー!! メガー!!」
メガビョーゲンは立ち上がると口から赤い粘り気のある液体を吐き出す。グレースとフォンテーヌが肉球型のシールドを展開して、液体を防ぐ。
「病気が水っぽい・・・ってことは、あれ、いけるかな?」
何か妙案を思いついたスパークルは、二人の背後から飛び上がる。
「雷のエレメント!!」
ヒーリングステッキに雷のエレメントボトルをはめ込む。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ステッキの先から電気をまとった黄色い光線を、メガビョーゲンが吐き出す赤い液体に目掛けて放つ。
赤い液体に光線が当たり、その電気はその赤い液体をつたりながら昇っていくと、メガビョーゲンに直撃した。
「メガガガガガガガ!!?? メ・・・ガ・・・」
感電したメガビョーゲンは黒焦げになって、その場でぐったりと沈黙したのであった。
「あ・・・!?」
「焼きタマネギになっちゃったウツ!?」
クルシーナはメガビョーゲンが変わり果てた姿になったことに目を見開いた。
「よーし! やりー!!」
スパークルは狙い通りにエレメント技が決まったことにガッツポーズをする。
「行くわよ!! 二人とも!!」
「「うん!!」」
3人はそれを合図に体が発光し、ミラクルヒーリングボトルをステッキにセットする。
「「「トリプルハートチャージ!!」」」
「「届け!」」
「「癒しの!」」
「「パワー!」」
グレース、フォンテーヌ、スパークルの順で肉球にタッチしていき、ステッキを上に掲げる。すると、花畑が広がっていき、背後には自然豊かな森が広がっていく。
さらにプリキュア3人の背後に、紫色のコスプレ姿をした女神の姿が映し出されていく。
「「「プリキュア! ヒーリング・オアシス!!」」」
3人は一斉にメガビョーゲンへとステッキを構え、ピンク・青・黄色の3色の光線が螺旋状になって放たれる。螺旋状の光線は混ざり合いながら一直線にメガビョーゲンに直撃する。
螺旋状になった光線はそれぞれの色の手へと変化して、3本の手が実りのエレメントさんを優しく包み込んでいく。
3色に光るハート状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんをメガビョーゲンから外へと出す。
「ヒーリングッバイ・・・」
メガビョーゲンたちは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。
「「「「「「お大事に」」」」」」
実りのエレメントさんは玉ねぎへと戻ると、病気に蝕まれた箇所は元に戻っていく。そして、壊された建物も元通りになっていった。
「あーあ・・・種の繁栄はまだまだ先みたいね・・・あーむ・・・」
クルシーナはすっかり元通りになった街を不機嫌な表情で見つめながら、桶の中に入れていたすこやかまんじゅうを一つ取り出すと摘む。
「ん~、美味しい~♥ 最高ぉー!!!!」
クルシーナは左手を頬に当てながら右腕を振り、女の子のような赤らめた笑顔を見せるとそのまま姿を消したのであった。
ドン!!!!!!
「ほい!」
クルシーナは撤退後、廃病院の外のテラスのテーブルに大きなお皿を叩きつける。
「ん?」
「なにこれ? なの」
「何か、可愛い形してるね~♪」
テラス席でそれぞれ好きなことをしていたドクルン、イタイノン、ヘバリーヌの3人は突然、テーブルの中央に何かを叩きつけられて驚く。
大きなお皿に乗っているのは、山のように綺麗に積み上がったまんじゅうであった。
「あの街の名物のすこやかまんじゅうよ」
「まんじゅう~?」
「なぜそのようなものを・・・?」
ドクルンはクルシーナがなぜ地球のまんじゅうを持ち帰ってきたのかが気になってしょうがなかった。
「あの街でお祭りをやっててさ、試しに買ってみたら美味しかったからたくさん持ってきちゃった♪」
「・・・お前、人間のお祭りで何やってるの・・・?」
「地球を蝕みに行ったんじゃないの~?」
「っ、いいじゃないの・・・お祭りに参加したって! アタシだって目ぼしいものぐらいあるっての! ちゃんと仕事はしてきたし・・・」
イタイノンに呆れられて、彼女に抱きついているヘバリーヌにも煽られたクルシーナがムキになって怒り出す。大方、祭りを楽しんだ後にそれはそれ、これはこれと言わんばかりにメガビョーゲンを発生させて地球を蝕もうとしてきた。
そんなことよりも、こいつらには言いたい文句があった。
「大体、アンタらだってアタシの安眠を妨害したくせに、何言ってんのよ!! 今だって、二人仲良くイチャついちゃってさ!!」
「なっ、イチャついてなんかいないの・・・! こいつが勝手にくっついてくるだけなの・・・!!」
「あぁぁぁん♪」
ビョーゲンキングダムで昼寝をしようとして腹を踏みつけられたことを根に持っていたクルシーナがそう言うと、イタイノンは自身にくっついていたヘバリーヌを突き飛ばし、ムキになって否定し始める。
「ノンお姉ちゃん・・・素っ気ないプレイも素敵・・・♪」
背中からテラス椅子ごと倒されたヘバリーヌがピクピクとしながら快感を得ていた。
「まあ、それは置いておくとして・・・」
「置いとくな!!」
「置いとくな、なの!!」
ドクルンがいたちごっこでどうせ終わらないであろう喧嘩を打ち切った後、皿に乗っているまんじゅうを手で掴んでじっくりと眺める。
「この顔はどういう原理なんでしょうね?」
彼女はどうやらまんじゅうに描かれている顔が気になるようだった。イタイノンやヘバリーヌも気を取り直すとまんじゅうを一つ掴んで眺めてみる。
「・・・なんだかムカつく顔なの」
「顔が動かないからつまんないなぁ~」
イタイノンはまんじゅうが笑顔になっているのを見て、顔を顰める。ヘバリーヌも面白くなさそうな顔を浮かべている。
「・・・まあ、確かに顔はどうかと思うけど、味は結構いけると思うから、騙されたと思って食べてみろよ」
クルシーナもまんじゅうが笑顔を浮かべているのはなんとなく腹が立つが、食べたらそんなことは気にならないほどだった。
他の3人はお互いに顔を見合わせると、すこやかまんじゅうを一口摘んでみる。
「・・・おいしいの・・・!」
イタイノンはパァァァァと顔を明るくすると、摘んだまんじゅうを口に全部入れるとさらにお皿からまんじゅうを掴んで食べ始める。その頬は年頃の少女のように赤く染められていた。
「・・・ふむ、なかなか美味ですね。何でできているのか気になりますが」
ドクルンもまんじゅうを気に入ったようで、顔を赤らめながら手に持っているまんじゅうを口へと運ぶ。
「んん~♪ おいしいぃ~♪ 最高だね♪」
ヘバリーヌも顔に満面の笑顔を貼り付けていて、顔も頬が赤くなっていた。
「でしょ? 人間の作るものの割には結構いける味なのよ」
クルシーナもお皿からまんじゅうを取って口へと運んでいく。彼女はそのまま自分もテラス椅子に座って一緒に食べようとしたが・・・・・・。
「っ・・・・・・・・・」
椅子に座る前に急に体を止め、数十秒間その場で静止した後、椅子に座るのをやめて廃病院へと体を向ける。
「ごめん、アタシ、廃病院の部屋に戻ってるわね。それ全部食べちゃっていいよ」
「・・・クルシーナ?」
クルシーナはそれだけ言うと、ドクルンのつぶやきに反応することもなく、そのまま廃病院へと戻っていく。
「ノンお姉ちゃんのそのまんじゅうおいしそ~♪」
「まだいっぱいあるんだから、そっちを食べればいいの・・・!」
「・・・・・・・・・」
イタイノンとヘバリーヌがじゃれ合ってる中、ドクルンだけはクルシーナの背中を見つめていた。
シャアァァァァァァァァァァァァ・・・・・・
クルシーナは廃病院の洗面台へと来ていた。水道から水を出すとそれを自分の頭へと浴びていた。
帽子からコウモリの姿に戻っているウツバットはそんな相棒の姿を、洗面台の背後のどこからか露出しているコードの上に止まりながら、心配そうに見つめている。
出撃した際もそうだったが、クルシーナは急に変なことをつぶやき始めて、明らかに意識が別世界にいるかのようにぼーっとしていた。今まではそんなことは一度もなかったのに、一体どうしたというのだろうか?
シャアァァァァァァ・・・キュッ、キュッ、キュッ・・・
「・・・・・・・・・」
水道の水を止めたクルシーナは、濡れた自分の髪や顔を一部がひび割れた鏡を見ながら、表情を顰める。
ズキッ・・・
「う・・・っ・・・・・・」
クルシーナは自分の頭を片手で抑えながら、顔を苦痛に歪める。まるでトンカチで軽く叩かれているようなそんな痛みが走る。
そんな数秒の頭痛と共に耳鳴りのようなものがして、クルシーナの頭にある映像がフラッシュバックする。
ーーーーどこかの病院で、花に水をあげる自分。
ーーーーそんな自分を見つめているのは、車椅子に座っているあいつに似た少女。
「ッッッッ・・・!!」
パリンッ・・・!!!!
クルシーナはビョーゲンズである自身に起こらないはずの、原因不明の頭痛にイライラして目の前にある鏡を拳で叩き割る。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
クルシーナは息を切らしながら、先ほどの自分の頭の中に流れた映像について考える。
あれは、一体なんだ・・・? アタシと関係があるものなのか・・・?
でも、花壇に水をあげる姿は、確かにアタシだった。それにキュアグレースの変身前にそっくりのあの女も・・・。
もしかして、本当に・・・あいつとアタシは、どこかで会って・・・?
「ここにいたんですか・・・」
「!?・・・なんだ、アンタか」
背後から真面目なトーンの声が聞こえてきたかと思うと振り返るクルシーナ。そこには無表情でこちらを見つめてくるドクルンの姿があった。
「あいつらと一緒に食べてたんじゃないの?」
「あなたを差し置いて食べれるわけがないでしょ。これでも私はあなたを心配はしてるんですよ?」
クルシーナはドクルンの言葉を聞いて、口元が笑うように歪む。
「フフフ・・・アタシを心配だって? ふざけてんの? どうせ面白がってんでしょ? アタシのこういう反応を見てさ」
気遣われるのが嫌いなクルシーナはドクルンが差し出すタオルをひったくるように取ると、自身の濡れた髪を拭きながら洗面所を後にしようとする。
ドクルンはクルシーナの嘲るような言葉に、表情を一つ変えることはない。
「・・・私も!!!!」
大きな声をあげるドクルンに、クルシーナは足を止めて思わず振り向く。
「私も、イタイノンも、今のあなたみたいに頭痛が起きることがあるんですよ。今まではそんなことはなかったんですけどね」
「・・・それがどうかしたの?」
クルシーナは不機嫌そうな表情でドクルンを見る。
「しかも、頭痛が起こるようになったのは、あいつらが私たちの世界に来た後、じゃないですか?」
「だから・・・! それがどうかしたの? 何を心配してるわけ?」
クルシーナはイライラとさせながら、ドクルンに返す。
「私は、あなたがどこかへと行ってしまいそうな気がするんですよ・・・」
ドクルンが寂しそうな声を漏らしながら言う。クルシーナはきょとんとしたような表情で見つめるも、すぐにふんと鼻を鳴らして、彼女は顔を前へと向く。
「バカなんじゃないの? 何を心配してんだか・・・アタシはどこにも行きやしないよ」
「・・・・・・・・・」
「頭痛なんか寝てれば治るっての。それにアタシは、そんなことでどうなろうともビョーゲンズのクルシーナだ。アタシの中に流れてくる映像が、アタシにとって関係があろうがなかろうが、それが本当であろうが嘘であろうが、どうでもいいことだ。・・・ウツバット、行くわよ」
クルシーナはドクルンの心配する言葉を吐き捨てると、今度こそ洗面台を後にしていく。
「・・・あなたは、もう自覚しているんですね」
ドクルンはそんなことを呟きながら、彼女の背中を寂しそうに見つめていた。
一方、カプセルベッドの部屋へと来たクルシーナはタオルを適当な場所へと放ると、カプセルベッドの一つのスイッチを入れる。
「まあ、とはいえ、少し眠ったほうがいいか・・・・・・」
クルシーナは自虐的な笑みを浮かべると、開いたカプセルベッドの中で横になる。
「クルシーナ、少し休むウツ?」
「ええ、だからお前は好きにしてな」
心配するウツバットにそう返すと、クルシーナはスイッチを入れてカプセルベッドを閉じる。ベッドの中に病気のような赤い靄が噴出し、彼女の体を包み始める。
クルシーナは病気の赤い靄の中で、体を横にして目を瞑る。
そんな彼女の頭には、私たちの街でキュアグレースが自分に怯えている姿が思い浮かぶ。
「フフフ・・・」
・・・今日はいい眠りになりそうだ。
クルシーナは口元を笑みに歪ませながら、意識を闇へと落としていくのであった。