ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第15話がベースです。
今回はヘバリーヌにスポットを当ててます。お楽しみください。


第40話「人形」

マグマで満たされた世界、ビョーゲンキングダム。そこには珍しい組み合わせの3人が一緒にいた。

 

「お加減はどうっすか~? 兄貴」

 

「・・・・・・・・・」

 

「足、結構凝ってますね~!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「他にほぐしてほしいところ、ないっすか~?」

 

ネズミのような獣人ーーーーバテテモーダのいつものような媚びへつらうような愛想笑い。

 

それに対し、一緒にいる少年ーーーーダルイゼンの表情は不快そうに顰められていた。

 

バテテモーダがいつものように岩場に寝そべっているダルイゼンを気遣って足を揉んでいるのだが、当の本人は気持ちよさそうにするどころか、鬱陶しそうにしていたのだ。

 

別に普段からそんなに苦労はしていないので、凝っている場所など一つもないのだが・・・・・・。だからこそ、こいつのやっていることはありがた迷惑でしかない。

 

「ねぇ、ダル兄ぃ~♪」

 

「・・・何? っていうか、ダル兄・・・?」

 

そこに金髪の少女ーーーーヘバリーヌが彼の冷たい視線を見つめていた。その表情はイタイノンからの蔑んだ視線を浴びたかのように嬉しそうだ。

 

一方のダルイゼンは、冷めた態度で返しつつも、呼ばれなれない言葉に疑問符をつける。

 

「ダル兄はなんでダル兄なの~?」

 

「・・・お前の言ってることがよくわからないんだけど? っていうか、お前も触るなよ」

 

ダルイゼンは顰めた顔でヘバリーヌに返すと、いつまでも足を揉んでいるバテテモーダの手を振り払う。

 

「あぁ~ん♪ ヘバリーヌちゃんもダル兄に冷たくされた~い♪」

 

「・・・・・・・・・」

 

ヘバリーヌはなぜか羨ましそうにしており、それを聞いたダルイゼンは表情が動いたことがわかりやすいくらいに顔を顰める。そういえば、彼女はこういうやつだったと・・・。

 

・・・俺が関わりたくない一番、面倒な奴に絡まれたな。

 

クルシーナも苦戦したという新入りの変態発言に、ダルイゼンは心の中でため息をつく。

 

「そんなことおっしゃらずに~! 自分は兄貴とお近づきになりたいだけなんすから~!」

 

バテテモーダはダルイゼンの態度に表情を少し引き攣らせつつも、彼に本性がバレないようにあくまでも取り繕う。

 

「はい、ジュース」

 

バテテモーダが紫色のトロピカルジュースのようなものを差し出すも、それでもダルイゼンの表情が変わることはない。やっぱり鬱陶しそうにしているだけ。

 

心の中でため息を吐くと、ダルイゼンはジュースを受け取るわけでもなく、黙っておもむろに立ち上がる。

 

「俺はお前に興味ないし」

 

「えぇぇ!?」

 

ダルイゼンは冷たくそれだけ言い残すと、スタスタと歩いてその場を去ろうとする。

 

「あぁ~ん、ダル兄待ってぇ~!」

 

ヘバリーヌはそんな彼の姿を、甘い猫なで声を発しながら追いかけていく。

 

「あ、兄貴ぃ~・・・冷たいっす~・・・」

 

ダルイゼンに素っ気なくされたバテテモーダは、それでも愛想笑いをする。

 

(ちっ・・・面倒くせぇヤツ・・・!!)

 

二人が姿を消したことを確認すると、バテテモーダは不快な表情でそう思いながら、先ほどのジュースを口にする。

 

「あなたはもうちょっと彼に怒るべきでは?」

 

「ド、ドクルン嬢・・・!?」

 

そんな背後から話しかけてきたのはキングビョーゲンの娘にして、ビョーゲン三人娘の一人、ドクルンだった。バテテモーダは驚いたように返す。

 

自分の顰めたような顔が彼女に見られてしまったか・・・・・・?

 

バテテモーダは心の中で慌て出す。一方、ドクルンはそんな表情を見て、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「部下に対してあんな態度を取る彼など、媚びへつらう必要なんかありません。逆に安眠を妨害して、あのマグマへと蹴落としてやればいいんですよぉ」

 

「そ、そんな滅相もない!! 自分は兄貴を心の底から尊敬しているんで・・・!!」

 

バテテモーダはあくまでも彼を擁護するかのような発言をするが、そんな言葉にドクルンが笑みをはっつけたような顔を彼に近づける。

 

「嘘なんかつかなくていいですよ。だってあなた、彼が立ち去った後、不服そうな顔をしてたじゃないですかぁ」

 

「み、見てたんっすか・・・?」

 

「ええ、バッチリ・・・!」

 

動揺するバテテモーダに対し、面白い反応を見たかのようにドクルンは余計にニヤける。

 

「悔しいならあなたがもっと活躍をして、見返してやればいいんですよぉ。あいつらよりも自分の方が上だって威張れるくらいにねぇ」

 

「・・・そうっすね! 自分もバリバリ地球を蝕んで、あの面倒くさいやつに吠え面をかかせてやるってのも、ありっすよね!!」

 

ドクルンが発破をかけてやると、バテテモーダが悪い顔をしながらそう言う。

 

「フフフ・・・私に対しても、大歓迎ですよぉ・・・」

 

「と、とんでもない!! キングビョーゲン様の娘に、そんなことをするのは恐れ多いっすよ!!」

 

ドクルンがクスクスと笑いながらそう言うと、またも慌て出すバテテモーダ。

 

彼女は何を考えているのかは正直よくわからない。でも、部下になるならダルイゼンよりも彼女の方がマシだと感じるのであった。

 

「フフフフフフ・・・」

 

そんなバテテモーダの本性を知ることができたドクルンは彼に対して、ずっと満面の笑みを貼り付けていたのであった。

 

一方、ダルイゼンと、彼の後をつけてきているヘバリーヌは・・・・・・。

 

「待ってぇ~! ダル兄ぃ~!」

 

「ッ・・・・・・・・・」

 

鬱陶しく着いてくるヘバリーヌに、ダルイゼンは不機嫌そうな顔をする。そして、足を止めてその顔をヘバリーヌに向ける。

 

「・・・なんで着いてくるわけ? 俺はお前にも興味ないんだけど? っていうか、うざい」

 

「えぇ~、そういうこと言っちゃうの~? まあ、ヘバリーヌちゃんはその冷たい言葉も心地いいんだけどぉ~♪」

 

ダルイゼンの冷たい態度に、ヘバリーヌはなぜか顔を赤らめている。その様子に彼は不機嫌そうな顔を余計に顰めたような顔をする。

 

こんな似たような状況、前にもあった気がする・・・・・・。

 

ーーーー・・・なんで、着いてくんのよ?

 

ーーーー・・・お前が気になったから。

 

ーーーーはぁ? 意味わかんないんだけど? アタシはアンタに興味なんかない。

 

ーーーー俺は興味あるけどな。

 

ーーーーバカにしてんだろ・・・?

 

ーーーー・・・そんなつもりないけど。

 

ーーーーじゃあ、話しかけてきたついでに教えてくれる?

 

ーーーー・・・何を?

 

ーーーーアンタも、アタシと同じそういう口なわけ?

 

「・・・・・・・・・」

 

昔、キングビョーゲン様に紹介された直後のクルシーナに、興味津々で絡んでたことを思い出したダルイゼン。あいつとどこかで会ったような気がして、よく見ようと俺が後をつけるとあいつは不機嫌そうな顔でこっちを見てくるのだ。本当に嫌そうな態度で。

 

今のこの状況・・・つまりは、俺がクルシーナと同じような立場へと置かれているのだ。別に俺は生まれたばかりじゃないけど、なぜだかこいつは俺に興味津々らしい。

 

しかも、今のこいつは全く俺から離れる気はないようだ。

 

「はぁ・・・・・・」

 

本当に面倒な奴に絡まれたと言わんばかりのため息を吐くと、ダルイゼンは歩みを進めていく。こうなったら、あっちの気が済むまで相手をしてやらないと離れないと感じ、適当に相手をすることにした。

 

「お前、今日はクルシーナと一緒じゃないの?」

 

そういえば、こいつの教育係であるはずのクルシーナの姿が見えない。とうとう嫌になって逃げて行ったのか・・・?

 

「お姉ちゃん? お姉ちゃんなら寝てるよ~♪ なんか頭が痛くて、眠りたいんだって~♪」

 

「・・・・・・・・・」

 

ダルイゼンはまともな口調で話すヘバリーヌの言葉に、あることを考える。

 

頭が痛い・・・?

 

確かにこいつに絡まれると頭痛がするのは確かだが、そういうことじゃない気がする。もしかしてあいつ、また無理してるのか・・・?

 

「バカでしょ、あいつ・・・」

 

「ん~? なんか言った~?」

 

「・・・別に」

 

クルシーナへの心情を吐露した言葉に、ヘバリーヌが反応するも、ダルイゼンは冷静な言葉でごまかす。

 

「お前は今の立場に満足なの?」

 

「??」

 

「あいつ、バテテモーダみたいに、誰かを押し退けてのし上がろうと思っていないわけ?」

 

ダルイゼンは足をふと止めるとこんなことを聞いて見る。ヘバリーヌは彼の言葉に、目をパチクリとさせる。

 

何を言われたかよくわからないヘバリーヌはそんな表情を数秒浮かべた後、指を唇に当てて妖艶な微笑みを浮かべる。

 

「な~にぃ~、ダル兄ぃ~? 乙女の秘密には興味あるのぉ~?」

 

「・・・別に。娘だったらそういう立場には興味があるのかって思っただけ」

 

ヘバリーヌはいつもよりも間延びした口調で話し、ダルイゼンはそれに冷静に返す。

 

「ヘバリーヌちゃんは、そういうの興味ないも~ん♪ そんなの持ってなくたって、お姉ちゃんにご褒美がもらえるならそれで満足♪ お姉ちゃんやパパのためなら、ヘバリーヌちゃんは喜んで地球を病気に蝕んじゃう♪ 地球を病気で蝕んで~、気持ちよくして~、それでお姉ちゃんたちもいい気分になれるし~、ヘバリーヌちゃんもいい気分♪ そうすれば、ビョーゲンズもいい気分になれるよね~♪」

 

ヘバリーヌはふわふわとした口調でそう話す。彼女はご褒美をもらえるためなら、地球を病気で蝕もうとなんでもするらしい。

 

「・・・・・・そう」

 

ダルイゼンは瞑目させると、彼女に不敵な笑みを浮かべる。

 

「お前にも自分なりの意思はあるんだな。媚びへつらうどこかの鬱陶しい奴よりは、少し興味が湧いたかな?」

 

「本当~?」

 

ヘバリーヌはそれを聞いて、不敵な笑みを浮かべる。

 

「・・・・・・そこは、男の秘密ってことで」

 

ダルイゼンはそれだけ言い残すと、今度こそその場から去っていく。

 

「ダル兄ったら、焦らしちゃうのぉ~? まあ、それでもいいけどぉ♪」

 

何も答えようとせずにその場を去っていくダルイゼンに、ヘバリーヌは頬を手に当てて嬉しそうな顔をする。

 

放置プレイをされているような気分で、気持ちが良かったのだ。

 

「ヘバリーヌゥーー!!」

 

そこへバサバサと音を立てながら黒い塊がヘバリーヌの目の前へと飛んでくる。その姿は小さなコウモリのような妖精の姿。

 

「コウモリちゃん、誰~?」

 

ヘバリーヌは目を丸くしながら、いつものような声でそのコウモリーーーーウツバットに問う。

 

「ウツバットウツ!! クルシーナのパートナーの!!」

 

「ああ~! お姉ちゃんの~♪」

 

ヘバリーヌはウツバットが愛しのクルシーナと共に行動している相棒だと知ると、ようやくこの妖精の正体を察する。でも、お姉ちゃんと一緒にいたようなところってあったっけ~?

 

「私に何か用~?」

 

「これ見てウツ」

 

ウツバットが足で掴んでいた紙を差し出す。ヘバリーヌはその紙を取ってマジマジと見てみると、何やらすこやか市のある場所の広告のチラシだった。

 

「ハーブ専門店、ハーブガーデン~?」

 

「そうウツ」

 

「ん~・・・?」

 

そのチラシの下をよく見てみると、そこには何やら奇妙な生物が・・・・・・。

 

その生物は「ラベンだるまちゃん」と名前が書かれている。二頭身の体をしていて、下半身は緑色で顔は紫色の華やかな感じの顔。頬と額には花のような模様が描かれている。

 

「ぷふぅっ! 何、このブッサイクなキャラクタぁ~♪」

 

「ブサイク言うなウツ!! これはラベンだるまちゃんと言って、このハーブ専門店のマスコットキャラクターなんだウツ!!」

 

思わず吹き出すヘバリーヌに、ウツバットは憤慨する。

 

「これがどうしたの~?」

 

「ウツ~・・・僕はこのラベンだるまちゃんに一目惚れをしたウツ・・・ずんぐりとした体型・・・つぶらな瞳・・・愛らしい唇・・・もう会いたくてたまらないウツ~!!」

 

ウツバットは紫色の体を真っ赤に染めながら語る。ヘバリーヌはチラシのラベンだるまちゃんをもう一回見る。お世辞にも可愛いとは言えないキャラクターだが・・・。

 

「ヘバリーヌちゃんにどうしてほしいの~?」

 

「!!・・・ウツ・・・ウツ・・・」

 

ヘバリーヌに問われたウツバットはドキッとすると、翼の手をモジモジとさせ始める。そして、ギュッと目を瞑った後にヘバリーヌへと向き直る。

 

「ぼ、僕と一緒にこのハーブ店に行って、人形を手に入れてほしいウツ!!!」

 

「? なんで~?」

 

ウツバットの一世一代の頼みであろうお願いに、ヘバリーヌは疑問符を抱く。

 

私がこの店に行く必要があるのだろうか? 店だったら自分で行けばいいんじゃないかと思う。

 

「だって・・・僕は妖精だし、お店の中には入れないウツ」

 

「・・・ああ~、そっかぁ~♪」

 

ヘバリーヌはようやく一緒に行ってほしい理由を察する。

 

妖精の自分が店に入っても、人間には客として扱ってくれないばかりか、珍しい動物だと思われて捕まってしまうかもしれない。誰か人らしい人と一緒に行かないと手に入らないのだ。

 

「クルシーナはお休み中で行けないし・・・ドクルンとイタイノンは相手してくれないし・・・他のビョーゲンズと一緒に行ったらバカにされるのが目に見えてるし・・・ヘバリーヌだったら好意的に見てくれるかなと思って頼んだウツ・・・」

 

実際問題、ビョーゲンズの幹部らは地球を蝕むことが最優先事項であるため地球で遊んでいる暇はないのだ。当然、ウツバットの趣味に付き合う義理はないし、くだらないことの一つでしかない。

 

でも、ヘバリーヌは他の幹部とは違って、異質な存在ではあるから、付き合ってくれると思ったのだ。

 

「う~ん・・・」

 

ヘバリーヌは顎に手を当てながら、どうしようかと迷っていた。

 

このラベンだるまちゃん、正直言って自分が気持ちよくなれる要素なんか一つもない。要素なんか一つもないのだが、なんだか完全に否定できないほどの何かを感じるのだ。

 

なんていうか、意外とあれ、かも・・・。

 

「いいよ~♪ 行こっか~♪」

 

ヘバリーヌは、クルシーナですら見せたことがない笑顔でウツバットにそう答える。

 

「ほ、本当ウツ!?」

 

「うん~♪ ヘバリーヌちゃん、今暇してるし~、それにこのラベンだるまちゃん? 意外と可愛く思えてきたかも♪」

 

「ウツ~! ヘバリーヌはわかってくれると思ってたウツ!!」

 

年頃の少女のような笑みを見せるヘバリーヌと、どうやらウツバットは意気投合した模様。

 

「ハーブ店に行けばいいんだよね~?」

 

「そうウツ。正確に言うなら、そのハーブ店のイベントに参加しなきゃいけないウツ」

 

「イベントかぁ~♪ ンフフ~♪」

 

ヘバリーヌはウツバットを連れて、早速地球へと赴くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘバリーヌはある建物の前に、ウツバットと一緒に姿を現していた。

 

そこは何やらラベンダーや黄色い花が建物の周りに咲き誇っていた。ゲートと思われる看板には「ハーブガーデン イベント開催中」と書かれている。

 

「ここが、ハーブ店かぁ~♪ んん~、何か肌がピリつくなぁ~♪」

 

ヘバリーヌは来て早々、このハーブガーデンの健康な環境の空気に当てられて、肩を抱えて悶え始める。ビョーゲンズの彼女にとっては触れた空気を痛みとして認識し、頭の中で快感へと変えているようだが。

 

「き、気持ちいいのはわかるけど、我慢するウツ!! 変な奴だと思われるウツ!!」

 

「あぁ~、ごめんごめん♪ つい~♪」

 

右肩に止まっているウツバットが注意をすると、ヘバリーヌは可愛くウィンクをしながら舌を出す。

 

今回のヘバリーヌの格好はいつものような格好ではない。いつもの白鳥のバレリーナのようなスタイルだと変人だと思われるので、普通の少女のような格好をして、人間と変わらない外見をしている。

 

白いブラウスの上に、チェック柄のジャンパースカートを着込んでおり、肌の色もいつもの薄い黄色の肌から人間のような肌色に変化している。肩には茶色のショルダーバッグを提げていて、地球のどこにでもいるような可憐な少女の外見だ。

 

ーーーーねえねえ、ノンお姉ちゃ~ん♪

 

ーーーーひぃ!? な、何、なの・・・!?

 

ーーーー服とバッグを貸してほしいの~♪

 

ーーーーあ・・・な、なんだそういうこと、なの・・・。

 

ーーーーそれだったら、好きなだけ持っていけばいいの。

 

服やバッグはイタイノンにおねだり。理由を話してくれたら、自分のお下がりを譲ってくれた。

 

ーーーードクルンお姉ちゃん♪

 

ーーーーどうしたんですか?

 

ーーーーお姉ちゃんたちって人間になれるよね~? ヘバリーヌちゃんもなりたいなぁって♪

 

ーーーーお安い御用ですよぉ。いいものをあげます。

 

人間としての肌色はドクルンに球体の変なものを食べて身につけ、やり方を教えてもらったことでうまく擬態できた。

 

わざわざ私のために提供してくれた、お姉ちゃん二人には感謝しなければ。

 

「じゃあ、早速いこ~♪」

 

ヘバリーヌは右腕を振り上げると、ハーブ店のゲートらしきものに意気揚々と通っていく。

 

「ごめんくださ~い♪」

 

建物の扉を挨拶しながら中へと入っていく。

 

「あれ~?」

 

ヘバリーヌは店の中を見て、思わず目を丸くする。

 

ハーブ店というお店の割には人の気配があまりない。中央にはラベンだるまちゃんのぬいぐるみが置かれていること以外、閑散としていてお客の姿は全くない。

 

かろうじて言うのであれば、マゼンダ色の髪の少女が一人いるだけ。彼女もイベントに参加しにきたのだろうか?

 

「!!?? あ、あいつは・・・!?」

 

ウツバットがマゼンダ色の髪の少女に視線を向けると驚愕する。彼女の右肩に止まっているピンクのウサギのような動物の姿。あいつはもしや・・・!?

 

「??」

 

ヘバリーヌはウツバットが焦り出したことに疑問符を抱くと、彼女を手のひらへと乗せてマゼンダ色の髪の少女から背を向ける。

 

「どうかしたの~?」

 

「なんで、あの泣き虫ウサギがここにいるウツ・・・!?」

 

「泣き虫ウサギって・・・あの女の子の肩に乗ってるウサちゃんのこと~? 」

 

「あれはプリキュアのパートナーのラビリンっていう泣き虫ウサギで、あいつといるってことはあいつはプリキュアってことウツ・・・!!」

 

ヘバリーヌにコショコショと話すウツバット。まさか、あのウサギもラベンだるまちゃんを狙っているのか・・・? あいつが呑気にハーブティーなんか飲むはずがないし、このハーブ店のイベントにいるってことはそれしか考えられない。

 

「へぇ~、あの娘ってプリキュアちゃんなんだぁ~♪」

 

ヘバリーヌはあのマゼンダ色の髪の少女がプリキュアであることを知る。プリキュア自体はこの前も見たことがあるが、変身前の彼女たちがどんな姿なのかは知らなかった。

 

(やっぱり普通の女の子なんだねぇ~♪)

 

自分が病院で出会ったあのプリキュアとは雰囲気が違うというのがよくわかった気がする。人ならざるものを感じたあの女性とは違い、あの娘は人間なのだ。あのウサギのパートナーを得たことでプリキュアになった娘の一人なのだということを。

 

「まあ、気を取り直して~、ラベンだるまちゃんを手に入れよ?」

 

「ウ、ウツ・・・」

 

はとりあえず、プリキュアのことは放っておいてぬいぐるみを手に入れることが先決だと考える。ウツバットも戸惑いつつも、ヘバリーヌの言葉に頷き平静を保とうとする。

 

彼女は店の中に入っていくと、マゼンダ色の髪の少女の側に並んで待つことにする。

 

それにしても、人が本当にいない。普段からこの店は繁盛しているのだろうか?

 

「あの・・・・・・」

 

「ん~?」

 

「このお店にはよく来るんですか?」

 

不意にマゼンダ色の髪の少女がヘバリーヌに話しかけてくる。どうやらプリキュアの彼女は自分がビョーゲンズだということに気づいていない模様。

 

右肩に乗っているピンクのウサギが汗を浮かべて動揺しているのが気になったが、きっと自分の肩に乗っている相棒が誰なのか気づいているのだろうと推測しておく。

 

「ん~」

 

「あ・・・ごめんなさい!! いきなり話しかけられて迷惑でしたよね・・・!?」

 

「ううん、いいよ~。実は私も初めてなんだよね~。この辺りを通りかかったときにあのぬいぐるみが気になっちゃって♪」

 

頭を下げて謝ってくる少女ーーーーのどかに、ヘバリーヌはあまり気にしない様子で話した。

 

「ああ、そうそう! ちょっと可愛いですよね!」

 

「うんうん! 何か惹きつける魅力があるよね~♪」

 

どうやらこの少女もあのブサイクな顔のぬいぐるみが可愛いと思ったらしい。この娘がプリキュアなのがちょっとアレだけど、私と同じことに共感ができる娘がいたと思うと、少し嬉しくなった。

 

・・・嬉しい? ヘバリーヌちゃんが?

 

ヘバリーヌちゃんが嬉しいのは、痛いことをしてもらうか、地球ちゃんを病気で蝕むかして一緒に気持ちいいと感じているときのはず・・・。なのに、この感情は何なのかなぁ?

 

「クゥ~ン・・・」

 

「? どうしたの、ラテ? 大丈夫だよ~」

 

よく見ると彼女の提げているカバンには子犬のような姿があった。どうやらこちらを見て怯えるような表情をしているようだが・・・。

 

彼女はそんな子犬を撫でて安心させようとしている。

 

「そのワンちゃんも、可愛いね♪」

 

「うん。この子はラテって言って、うちで飼ってるの」

 

「なんだか変わったワンちゃんだね。額にハートの飾りなんかしてるし~」

 

「えっ!? あ、あ、うん、そうだね・・・この子のお気に入りなの・・・」

 

ヘバリーヌは少女のバッグの中にいるラテと呼ばれた子犬の話を振る。なぜか額についているハートを指摘したら、少女は急に慌て出したが・・・。

 

彼女はそんな少女の反応よりも気になることがあって、顎を手に当て始める。

 

(このワンちゃん、ヘバリーヌちゃんの正体に気づいているのかなぁ?)

 

その顔を見るからに、私から何かを感じ取っているような感じがするのだ。私が人間ではなく、ビョーゲンズであるということに。まあ、あくまでも推測に過ぎないが・・・。

 

「いらっしゃいませ~!」

 

二人でそんな会話をしているうちに、左の水色の扉からおしゃれそうな男性の店員が現れた。このハーブ店の店長だろうか?

 

「よかった~。私は気にいってるんだけど、この子、あんまり人気なくって・・・。二人だけでも来てくれて、嬉しいわ」

 

「ふふふ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

店長の言葉に、のどかは笑顔を見せ、ヘバリーヌは口元に微笑を浮かべる。

 

「ワンちゃん、ウサギちゃん、コウモリちゃんもよろしくね」

 

「ワン♪」

 

ラテは元気に返事をする。ラビリンとウツバットは正体がバレてはいけないので、ぬいぐるみと動物の振りをしているのみだ。

 

「それじゃあ! 自慢のハーブティーをご馳走するわね!」

 

ヘバリーヌとのどかはテラス席へと案内され、店長より紫色のハーブティーを差し出された。

 

二人は同じ席でティーカップに入ったハーブティーを飲む。

 

「ふわぁ、何か落ち着く・・・」

 

「何だかほっこりして・・・不思議な感じだね~・・・」

 

「でしょう? ラベンダーにはリラックス効果があるの」

 

「へぇ・・・」

 

のどかと店長が話す中、ヘバリーヌは湧き上がってくる感情に違和感を覚えていた。

 

・・・ヘバリーヌちゃん、こんなことで気持ちいいとか、安心すると思うなんて、どこか体がおかしいのかなぁ?

 

表にこそ出さなかったが、心の中で何か痛みを与えられるのとは違う、こそばゆい何かを感じていた。

 

二人でハーブティーを堪能した後、店の中へと戻ると店長はのどかのカードへとスタンプを押してくれた。

 

「ふわぁ~、やった!」

 

「はい、スタンプ。また来てね」

 

「はい!」

 

のどかへスタンプカードを渡すと、店長はもう一枚スタンプカードにスタンプを押す。

 

「はい、あなたも」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・どうかしたの?」

 

「あ・・・ありがとう♪」

 

ぼーっとしていたヘバリーヌは愛想笑いをしながら、スタンプカードを店員から受け取った。

 

帰り道・・・・・・ヘバリーヌはスタンプカードを見つめながらトボトボと歩いていた。

 

「ヘバリーヌ? どうしたウツ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ヘバリーヌ!!」

 

「あ・・・な~に~?」

 

ウツバットの声がまるで聞こえていないほどに考え事をしていた、ヘバリーヌはようやく気づくというものようなトーンで返した。

 

「さっきからぼーっとしてるウツ!!」

 

「あ・・・ごめんね・・・地球の健康的な環境に当てられたかなぁ・・・? 今日はもう帰ろっか♪」

 

ヘバリーヌとウツバットは話しながら、その場から姿を消した。

 

それからというもの、ヘバリーヌはのどかと一緒にイベントへと通い続けた。

 

「ふわぁ~!!」

 

「おぉ~・・・!!」

 

ヘバリーヌとのどかは店一面に植えられているラベンダーを見て興奮する。

 

「これがラベンダーの花よ」

 

「だから、紫色なんだぁ~」

 

(なるほどねぇ・・・顔がラベンダーみたいな色だから、ラベンだるまちゃん、ね)

 

ヘバリーヌとのどかは、あのキャラクターの由来をようやく察するのであった。

 

その後も、ハーブティーを作る作業場を見せてもらったり、お互いにラベンだるまちゃんの魅力を一緒に話したりもした。

 

ある日は、草原でレジャーシートを敷いて一緒にハーブティーを飲んだりした時は・・・・・・。

 

「フフ・・・」

 

ハーブティーを啜りながら、ラビリンとラベンだるまちゃんが一緒に並んでいるのを見て、口元に笑みを浮かべたり・・・・・・。

 

「待て待てぇ~♪」

 

ヘバリーヌがラテとウツバットと一緒に追いかけっこをしたりなんてすることもあり、のどかと店長はその光景を微笑ましく見守っていた。

 

またある日は、店長からラベンだるまちゃんのポストカードを渡されたりもした。

 

「はぅ~♪ やっぱり可愛いね~♪」

 

「ヘバリーヌ! 僕も僕も!!!」

 

「ごめんね~、はい♪」

 

廃病院の自室でヘバリーヌがそれを見ながら腕をルンルンとさせたり、ウツバットにもそのカードを見せてその絵をスリスリとさせたりしていた。

 

そんな毎日のイベントをこなしていくこと数日・・・・・・。

 

「二人ともスタンプが貯まったわね」

 

ヘバリーヌとのどかのカードのスタンプは6個溜まり、店長はカウンターからラベンだるまちゃんのぬいぐるみを取り出した。

 

「はい、ぬいぐるみをプレゼント」

 

「ふわぁ~・・・!!」

 

「あぁん、可愛いぃ~♪」

 

店長からぬいぐるみを受け取ったのどかは目をキラキラとさせ、ヘバリーヌは可愛さに惹かれて、受け取った瞬間にぬいぐるみを抱きしめた。

 

日も暮れてきた夕方・・・・・・ヘバリーヌとウツバットは帰路についていた。

 

「はい、ぬいぐるみ♪」

 

「ありがとうウツ~♪」

 

ぬいぐるみを受け取ったウツバットは嬉しそうに抱きしめ始め、それを見たヘバリーヌも笑顔になる。

 

「!!・・・・・・・・・」

 

ヘバリーヌは今まで感じたことのない感情があることにハッとすると、俯いて胸に手を当て始める。

 

ハーブ店のイベントに毎日通いつめて、ぬいぐるみをもらって、それを受け取ったお姉ちゃんのパートナーが喜ぶ姿を見て、嬉しい・・・・・・?

 

ヘバリーヌちゃんが嬉しいのは、お姉ちゃんにご褒美をもらえたことのはず。たかがこんなぬいぐるみをあげただけで嬉しいと思うなんて、本当にどうしちゃったんだろぉ・・・・・・?

 

「ヘバリーヌ・・・?」

 

「あ・・・何・・・?」

 

「ここまで付き合わせちゃって、ごめんウツ。ヘバリーヌも疲れたんじゃないかウツ? 僕はぬいぐるみをもらえただけで十分ウツ。もう大丈夫ウツ。ありがとウツ」

 

ウツバットはそう言うとクルシーナの部屋へと帰るために、そのまま飛び去っていく。

 

「あ・・・・・・!」

 

ヘバリーヌは飛んでいくウツバットへ手を伸ばす。しかし、そんな彼女の手に気づくことなく、コウモリの妖精は姿を消していく。

 

自分の伸ばしていた手を見つめるヘバリーヌ。その表情はなんだか物悲しそうな表情になっていた。

 

ヘバリーヌちゃんが、悲しい・・・?

 

何これ・・・? 楽しいや嬉しい以外にも、なんだかモヤモヤしたものがあるの・・・?

 

自分がいつもやることで感じることが、他のことで感じることで違和感を感じるヘバリーヌ。さらに感じたことのない感情が溢れてきて、頭の中がドロドロになり、グチャグチャでよく分からなくなっていく。

 

ふとハーブ店を見つめるヘバリーヌ。

 

違和感のある嬉しいや楽しい・・・そして、悲しいという感情・・・このグチャグチャな感情は、あのハーブ店に通いつめていけばわかる・・・?

 

ヘバリーヌは姿を消す前、そんなことを思っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、ヘバリーヌは再度ハーブ店を訪れていた。しかし、ウツバットと一緒ではなく、一人で来ていた。

 

ハーブ店のイベントはまだ開催しているようだが、毎日のように通っていたマゼンダ色の髪の少女の姿はない。

 

ぬいぐるみを一個もらって満足してしまったのだろうか。自分なら、あんな可愛いぬいぐるみいくらでも欲しいって思えるのに・・・。

 

そんなことを考える中、ヘバリーヌはテラス席で店長の入れてくれたハーブティーを啜る。その瞬間、彼女は無表情になる。

 

・・・・・・やはり、何か違和感を感じる。ヘバリーヌちゃんは、こんなことが気持ちいいと、安心すると。いくら飲んでも、違和感は拭えない。

 

と、そこへ店長がやってきたので、愛想笑いをしておく。

 

「店長~、今日も美味しいよ~♪」

 

「ありがとう・・・今日はあの子たち来ないのかしら・・・」

 

「あの子って~?」

 

「ワンちゃんとウサギちゃんを連れた子よ。いつも毎日来てくれてたのに・・・」

 

「そういえば、いないね~・・・」

 

「はぁ・・・あなたは来てくれてありがとう。コウモリちゃんはいないけど・・・」

 

店長はそう言いながら落ち込んだ様子で、店の中へと戻っていった。

 

ヘバリーヌは愛想よく手を振る。店長が見えなくなった後、なんだかまた感情が湧いてくるような感じがする。

 

プリキュアちゃん、今日はいないんだ・・・寂しい・・・・・・。

 

それにウツバットもいない・・・一人だと、全然楽しくない・・・・・・。

 

・・・寂しい? 寂しいって、何・・・?

 

楽しくないって・・・私は、ウツバットがいないと楽しくないってこと? でも、プリキュアちゃんもいなくて楽しくなくって・・・でも、プリキュアちゃんとウツバットがいるときは楽しいって感じて・・・。でも、今は、楽しくなくって、寂しくて、悲しくて・・・・・・。

 

ズキズキズキ・・・・・・。

 

(!!??)

 

自身の胸の中に痛みが走る。まるで病気になったみたいに、苦しい・・・・・・。

 

でも、なんで・・・? ここに来るときにウツバットがいなくて、一人でハーブティーを飲んでも楽しくなくて、そしてプリキュアちゃんがいなくて寂しくて、それが悲しくて・・・・・・。

 

もしかして、この溢れてくる感情が、原因・・・? 病気みたいに痛くて、苦しいの・・・?

 

でも、私はビョーゲンズで・・・病気もへっちゃらで・・・でも、感情が溢れてきて、痛みと苦しさを感じて・・・・・・。

 

・・・・・・ああ、もう。わかんないよぉ!!!!!!

 

ヘバリーヌは頭の中がグチャグチャしてきて、この感情がよくわからずイライラしてきた。

 

「やれやれ・・・」

 

「・・・?」

 

そんな思考を打ち切るかのように、少年の声が聞こえてきた。その方向に振り返ってみると、そこには見たことのある少年の姿が。

 

「ダル兄ぃ・・・?」

 

ヘバリーヌは目をパチクリとさせながら、彼のことを見つめていた。

 

一方、木の上にいる少年ーーーーダルイゼンは地球を蝕むべく、ハーブ店のテラスのテーブルにある茶葉の入ったティーポットに目をつけていた。

 

「・・・今回はここでいいか」

 

ダルイゼンはそう言って飛び降りようとしたが・・・・・・。

 

「ダル兄ぃ~♪」

 

「!?」

 

突然、聞こえてきた猫なで声にびっくりして振り返ると、別の枝の上にヘバリーヌが寄りかかるように立っていた。その姿はいつものおめかしした姿ではなくいつものバレリーナの衣装で、擬態も解除されている。

 

「・・・なんだ、お前か」

 

「ねぇ~、ダル兄ぃ~・・・」

 

「なんだよ。っていうか、お前らしくもない声じゃん」

 

ヘバリーヌは金髪の髪を弄りながら不満そうな顔と声を出している。ダルイゼンは何かあったんだろうと思いつつも、適当に返事をしておく。

 

「あのハーブ店のイベントに参加したんだけどぉ~・・・」

 

「・・・遊んでたのかよ」

 

「違うも~ん!! ヘバリーヌちゃんはそんなつもりなかったも~ん!! クルシーナお姉ちゃんのコウモリちゃんがうるさいからぁ~!!」

 

ダルイゼンが冷たく茶化すと、ヘバリーヌはイライラしたような声を出す。

 

クルシーナのコウモリって・・・ああ、帽子になってるやつか・・・。

 

彼はウツバットに対して、その程度の認識をした後に、仕方なくヘバリーヌの話をちゃんと聞いてやることにした。

 

「で、そのくだらなそうなイベントに参加したから、何なの?」

 

「何だかドロドロするのぉ~! 一緒にハーブティー飲んでふわふわしたり、追いかけっこしてワクワクしたり、でもコウモリちゃんが離れたらジクジクとしてぇ・・・さっきだっていつも来ている娘がいないだけで胸がズキズキして・・・これって、何なのかなぁ・・・」

 

どうやら彼女はイベントに参加してるせいで、調子がおかしくなっているらしい。自分がよくわからない何かが彼女の中に流れていて、それに苛立っているのだろう。

 

・・・何とも面倒くさい。これで人間に感化されても、こっちが困るだけだ。でも、このまま放っておいても、今後の仕事に支障をきたすだけだ。

 

ダルイゼンは仕方なくビョーゲンズらしく、生まれたばかりのキングビョーゲンの娘にちゃんと教えてやることにする。

 

「・・・不快な環境と同じだろ、それは」

 

「え・・・?」

 

「お前がよくわからないことで同じことを感じて、それに違和感を感じて、イライラしてるってことは、それは俺たちにとっては不快な環境と同じってことじゃない? 俺だってこんな地球、生きてるって感じでイライラするし、そういうのを地球ごと蝕んでやりたくなる。つまり、そういうことだろ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ダルイゼンに言われて、ヘバリーヌは改めて自分の胸に手を当ててみる。

 

ヘバリーヌちゃんにとっての楽しいは、お姉ちゃんにご褒美をもらえること・・・。

 

ヘバリーヌちゃんが嬉しいのは、地球を気持ちよくして、人間を気持ちよくして、お姉ちゃんにも気分よくなってもらうこと・・・。

 

ここでダルイゼンの言ったことを思い返す。

 

・・・そうか、ヘバリーヌちゃんには、ハーブ店のあの感情は不快な環境と一緒ってことなんだぁ。だから、胸が痛くなって、ズキズキとなって、イライラするんだ・・・。

 

確かに、地球の健康的な環境と同じで、痛みが体の中にピリピリと来る。

 

じゃあ、そういうのを病気で蝕んじゃえば、ヘバリーヌちゃんも嬉しくなるんだね~。

 

ヘバリーヌは自分の頭の中で結論付けて、すっきりしたような気がする。

 

「ありがと、ダル兄♪ おかげでスッキリしたよ~♪」

 

「・・・別に」

 

満面の笑顔で返すヘバリーヌに、ダルイゼンは素っ気なく返す。その頬は若干赤く染められていたような気がする。

 

「そろそろ行くか・・・」

 

「あ、待ってダル兄ぃ♪」

 

「・・・なんだよ」

 

「ヘバリーヌちゃんも行っていい~?」

 

ダルイゼンは無駄話をしすぎたと、そろそろ地球を蝕みに行こうとするが、そこにヘバリーヌが待ったをかける。今日は自分も一緒にやっていいか聞いているようだ。

 

「・・・好きにすれば?」

 

ダルイゼンはそう言い残すと、木から飛び降りる。

 

「あぁ~ん、ダル兄ったらいけず~♪」

 

ヘバリーヌはその素っ気ない態度に嬉しそうな表情をしながら、同じく木から飛び降りて、テラスの方へと降り立つ。

 

彼女が別のテラス席を見ると、赤い小さな容器と何かの専用のストローがあるのが見えた。少女とヘバリーヌちゃんが来たら一緒にやろうと思っていたのだろうか?

 

「ンフフ♪」

 

もはやそんなことはどうでもいいと、ヘバリーヌは妖艶な微笑みを浮かべる。

 

彼女はバレリーナのようなポーズを2回取りながら、それぞれ手を叩き、バレエのように体をクルクルと回転させる。

 

「進化しちゃってぇ~、ナノビョ~ゲン♪」

 

「ナノォ~♪」

 

ナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、ストローへと取り付く。ストローが徐々に病気へと蝕まれていく。

 

「・・・!!?・・・!!!」

 

ストローの中に宿るエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン・・・!!」

 

上が少し出っ張った容器のような姿に不健康そうな顔、6本のストロー、そして頭には丸い輪っかのようなものを生やした浮遊型のメガビョーゲンが誕生したのであった。

 

自分にとって不快なものは、気持ちよくしないとね~♪

 

ヘバリーヌはそんなことを思いながら、妖艶な微笑みを浮かべた。

 

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