ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第16話がベースです。
今回はドクルンに着目なんですが、少し気になる描写も入れているので、合わせてご覧ください。


第43話「友達」

 

マグマに満たされた世界、ビョーゲンキングダム。そこにはビョーゲンズの幹部たちが珍しく全員集合していたが・・・。

 

「蝕むぜ地球♪ 嗜むぜ卓球♪ キングにサンキュー♪ 和尚なら一休♪ 蝕むために、この星に生まれーーーー」

 

何やらバテテモーダが先輩幹部たちの目の前で、歌と言えるのかわからないようなものを歌っているようで・・・・・・。

 

「・・・ごめん、あれ、何?」

 

「いや、私に聞かれても・・・」

 

「アタシらに聞かないでくれる・・・?」

 

何をやっているか本当によくわからないダルイゼンが振り向いて問うも、シンドイーネは困ったような感じで、クルシーナはイラッとしているのか不機嫌そうな口調で答える。

 

「あれはラップというものですね。ああやって、喋り口調かつ捲し立てて歌いながら、自分の存在を主張するものであるかと・・・」

 

ドクルンが何かの本を見ながら、ラップだということを幹部たちに説明する。

 

「いや、そういうことじゃなくて・・・」

 

「なぜ、ヤツがそれをやってるのかということだ・・・」

 

イタイノンとグアイワルは見当違いの答えが返ってきたことに対して、辟易したような様子で返す。

 

「そんなの私が知るわけがないでしょうに・・・最近、地球にちょくちょく行ってるみたいですから、人間界の変な真似事でも覚えてきたんじゃないですか・・・?」

 

ドクルンがうんざりしたかのような顰めた顔を見せながら二人に返す。事実、本を読むのに集中できておらず、彼女も珍しくイライラしている模様。

 

「はぁ・・・・・・」

 

他の幹部たちの話を諸々聞いたダルイゼン。しかしドクルンの話に特に興味はなく、やかましさしか感じないダルイゼンはため息をつくしかなかった。

 

「それで・・・?」

 

「ん?」

 

「お前はそいつで何やってんの?」

 

ダルイゼンはクルシーナの足元にいるヘバリーヌを見ながら言う。

 

「ああ、ブーツを綺麗に舐めさせてんの。『お姉ちゃんにお仕置きされたい』って言うから」

 

「・・・それ、何か意味あるの?」

 

「アタシがご主人様だっていうのをわからせるためよ。これもプレイだけど」

 

クルシーナは当然のように話すが、ダルイゼンには何一つ理解できない。

 

「・・・それってここでやること?」

 

「こいつが、我慢できない我慢できないってやかましいからやってんの。まあ、目の前にもやかましいヤツが約一名いるけどね」

 

シンドイーネが呆れたように問うと、クルシーナは不機嫌そうな顔をで言ったかと思うと、目の前のラップとやらを歌っている獣人に不機嫌そうな顔を一層顰める。

 

「マイネームイズバテテモーダ♪ レペゼンビョーゲンキングダム♪ プチョヘンザ♪」

 

・・・・・・・・・。

 

バテテモーダは何かをしてもらおうと幹部たちの方を向いているが、幹部たちは拍手をするわけでもなければ、立ち上がることもない。訳が分からず、沈黙しているだけだ。

 

「プチョヘンザ♪」

 

「ッッッ・・・!!」

 

ゲシッ!!!

 

「あぁん♪」

 

クルシーナはイラっとすると、立ち上がってヘバリーヌを蹴飛ばした後、右手からピンク色のオーラを込めて弾にして放った。

 

ドカァン!!!!

 

「どわぁぁぁぁ!!??」

 

ピンク色のオーラはバテテモーダの乗る岩場に着弾しただけだが、バテテモーダはびっくりして岩場の下に隠れる。

 

「やかましいんだよ!!! ヘタクソなもん歌いやがって!! 耳障りだ!!」

 

クルシーナはいつも以上にイラっとした口調で怒鳴る。

 

「ノリ悪いっすね~、先輩方~。人生は一度きりのフェスっすよ~!!」

 

バテテモーダはそういうも、他の幹部たちは・・・・・・。

 

「フェスなら他所でやって、他所で!」

 

「金を払って見る価値もないの」

 

「しっしっ・・・」

 

「つーか、そんなもんにハマる暇があるんだったら、地球を一つでも蝕みに行ってこいよ」

 

全く理解できない幹部たちは冷たくあしらい、クルシーナに至っては仕事をしてこいと言う始末。

 

「ちぇ~・・・」

 

他のみんなと純粋に楽しもうとしたであろうバテテモーダはなんとなくいじけていた。

 

ダンッ!!!!

 

「おい、なんだその態度は・・・?」

 

「うぇぇ!?」

 

ビョーゲンキングダムを揺らすような音が響き、バテテモーダがその音がした方を向くとクルシーナが黒いオーラを出しながら睨みつけるような赤い目を光らせていた。

 

「お前、今不満そうな顔したよな・・・?」

 

「い、いや!! とんでもない!! 自分は先輩方と健全な態度で接したいだけでーーーー」

 

バテテモーダは言い訳をするように弁明するが・・・・・・。

 

「もういいッ!!!! さっさと行ってこいッッッ!!!!!!!」

 

「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

クルシーナに怒鳴られたバテテモーダは逃げるかのように地球へと向かっていった。

 

「・・・・・・・・・」

 

「はぁ~・・・ふんっ!」

 

ものすごい剣幕で怒鳴ったことに幹部たちが呆気にとられているのも気にせず、クルシーナは再び座り込んで息を吐いた後に鼻を鳴らす。

 

「ほら、変態。続きをやれ」

 

「は~い、お姉ちゃ~ん♪」

 

クルシーナはブーツを履いている足をフリフリとさせると、ヘバリーヌは返事をして四つん這いになり始める。

 

「そんなことさせて楽しいのか・・・?」

 

「・・・まあ、優越感には浸れるんじゃない? 女王様気分で相手を見下ろせるから♪」

 

グアイワルが呆れたように見ていると、クルシーナは口元に笑みを浮かべながらウィンクをしながら返した。

 

クルシーナはヘバリーヌの姿を見ていたが、やがて不快な顔をすると・・・・・・。

 

パシン!! パシンッ!!

 

「あぁん♪ うぅん♪」

 

ドゴッ!!!

 

「へぶっ!!!」

 

ブーツの先でヘバリーヌの頬をビンタしたかと思うと、頭を踏みつけて地面に叩きつける。

 

「ほら、そこは舐めただろ! もっと上の部分を舐めろよ!」

 

「は、はい・・・♪ お姉ちゃぁ~ん♪」

 

クルシーナの怒鳴るような言葉に、ヘバリーヌは顔を赤らめながら四つん這いでブーツに顔を近づける。

 

「・・・みっともないわね。それでもこいつ、ビョーゲンズの幹部なわけ?」

 

「喜んでるんだから別にいいんじゃない? なの」

 

シンドイーネが呆れたように言うと、イタイノンは他人事のように言う。

 

「はぁ・・・・・・」

 

ドクルンは見ていられないと言わんばかりにため息をつくと、読んでいる本を閉じて立ち上がり、スタスタと歩いていく。

 

「どこ行くの?」

 

「・・・静かに本を読めるところを探してきます」

 

ドクルンは不快感を隠さずに言うと、そのままその場を歩き去っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・ビョーゲンキングダムも騒がしくなったわね・・・」

 

ぶつぶつとぼやきながら地球へと降り立ったドクルンはとある建物の前に来ていた。看板には「喫茶 純」と書かれている。

 

ドクルンがプライベートで地球に降り立ったときにたまたま見つけた喫茶店である。彼女がなぜか心を落ち着ける場所であり、ここであればゆっくりと本を読むことができる。そういう場所だ。

 

ガチャ

 

あらかじめ人間に擬態したドクルンは緑色のドアを開ける。

 

「! あら、いらっしゃい」

 

「どうも、マスター」

 

ポニーテール姿の店員、おそらくマスターであろう人がドクルンを出迎えてくれた。

 

「また、喧嘩してきたの?」

 

「別にそうではありませんよ。いつものブレンドをお願いします」

 

「了解」

 

ドクルンは冷静な口調でオーダーすると、扉へ入ってすぐ右側の角にある席へと座る。

 

テーブルに本を置いて開くと、左肘を付きながら静かに読み始める。内容は友達を作る100の方法が書かれている本で、そこにはクラス浮かない方法とか、変な人だと思われなくなる方法、自分や相手をもっと知ったほうがいいといったいろんなことが書かれていた。

 

ドクルンにとっては心底どうでもいいことだったのだが、人間の文化を勉強しておくために敢えてこの本もその一つとして選んだだけだ。

 

コーヒーを入れる音、紙をペラペラとめくる音のみが響き、割と静かな空間が維持される。

 

「はい、ブレンドコーヒー」

 

「どうも」

 

ドクルンはソーサラーに置かれたティーカップを持つと、中に入れられたコーヒーを啜る。

 

・・・苦い。美味しいかどうかはわからないが、これがまた良し。コーヒーと誰もいない店の中、これらこそが静かに過ごせる憩いの場所というやつだろう。

 

ドクルンは再び本を手に取ると、静かに本を読み始める。そこからペラペラと紙をめくる音のみが聞こえ、彼女は邪魔されずに完全に一人の時間を満喫していた。

 

しかし、そこへその静かな空間を邪魔するかのように客が入ってきた。

 

「ふわぁ~、綺麗なお店~!」

 

ドクルンは聞こえてきた声に顔をしかめると、背後を振り向く。そこには見覚えのある3人の姿が・・・。

 

「・・・また、あの3人ですか」

 

不快感を隠さずにボソッと呟くと、言いたいことを言おうとする口を黙らせるかのようにコーヒーに手を伸ばして啜る。

 

ドクルンが不快感を示すのはそれもそのはず、店に入ってきたのはマゼンダショートヘア、栗色ツインテール、そして彼女が目をつけている藍色ロングヘアの3人の少女たち。彼女たちは自分たちビョーゲンズの侵略を邪魔する忌々しいプリキュアの3人だからだ。

 

3人は店に入ると、すぐ左の真ん中の4人掛けの席に座り始めた。

 

こんなところに来そうにもない3人が一体何の目的があってこの喫茶店に来るのか。特にコーヒーを飲むような年齢の娘たちでもないし、だからといってくつろぎに来たわけでもなさそうだ。

 

まあ、プリキュアがどうなろうと関係ないですが、騒がしくなりそうで遺憾だ。

 

心の中でため息をつくと、ドクルンは本へと視線を戻してペラペラとめくり始めた。

 

「いらっしゃい。うちには珍しいタイプのお客さんね。ご注文は?」

 

店員が3人組に声をかけているようで、彼女も珍しそうにしている。お客なのだから、対応するのは当然のことだが、あの3人がどのような会話をするのかをとりあえず聞いておくとしましょうか。

 

ドクルンは視線は本に向けたまま、彼女たちの会話を聞くことにする。

 

「キャラメルソイラテお願いしま~す!!」

 

「ごめん、そういうのないんだ」

 

「うぇぇ!? じゃあ、この『レスカ』っていう謎の飲み物を・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

・・・メニューは普通見るでしょうに。当たり前のようにキャラメルソイラテを頼んでるし。

 

私のような常連であれば、普通にコーヒーを頼むが、この娘たちは、あまり喫茶店に来たことがないのだろうか? こういう昔っぽい喫茶店はコーヒーが基本的にあるもの、ソイラテなんてものが置いてあるわけがない。

 

ここでいうレスカとは、レモンスカッシュのこと。昔の人が使っていた言葉で、レモンスカッシュのことをレスカと呼んでいたのだ。

 

そんなことも知らないとは、まだまだ子供ですね・・・・・・。

 

ドクルンは心の中でさらにため息をつくと、コーヒーに手を伸ばす。

 

「お仕事中にすみません。ちょっと伺いたいことがあるんです」

 

「ん?」

 

「ひでおさんとふみさんという方をご存知ありませんか? 50年前にこの店に来てた人たちで、えっと・・・そのときは3人組で」

 

この声は、キュアフォンテーヌの声。店員に何か人のことを聞いているようだが、どうやら昔この店に通っていた人らしい。

 

また、自分が関係のない変なことに首を突っ込んでいるのか。本当に自分のことは疎かにして、他人が困っていればおせっかいをやこうとする。私はそういう人が大嫌いだ。

 

「50年前か・・・それって先代のマスターの時代だし・・・」

 

店員が困ったように声を漏らす。それはそうだ。彼女はどう見ても外見が若く、そんな50年前に生まれているような人間とはとても思えない。そんな時代のことを知っているわけがないのだ。

 

「でも、その二人ならーーーー」

 

ガチャ。

 

「ひでおさん、ふみさん、まいど!」

 

「「「!!」」」

 

しかし、店員がその名前が挙がった人たちは知っているような声を漏らすと、店の扉が開く。ドクルンが視線をちらっと背後へと向けると、入ってきたのは初老の男性と女性の二人。この人たちがひでおとふみなのか。

 

プリキュアたちは何やら事情みたいなことを話し始めると・・・・・・。

 

「彼があの樹の下で私たちを?」

 

「はい!」

 

「てつやに頼まれてきたんだね?」

 

「え? え、えっと・・・」

 

「そ、そこは、まあいろいろと複雑な事情があって・・・へへへ」

 

・・・やっぱりおせっかいをしているらしい、この3人は。反応を見ればわかるが、そのてつやという人間に頼まれたわけでもないだろう。

 

相手の事情も分かっていないのに勝手に入り込んで、勝手に解決をしようとして他人にどれほどの迷惑をかけているのか分かっていないのだろう。

 

「あの・・・・・・大樹まで行ってもらえませんか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

マゼンダショートヘアの少女に説得されると、初老の男性ーーーーひでおと初老の女性ーーーーふみは困ったような表情を浮かべる。

 

よく注視して見てみるとこの二人の薬指には指輪がはめられているのが見えた。ドクルンは自分にはどうでもいいことだが、この二人には何か混みいった事情があると察する。

 

「いろいろあってね・・・今になって思えば、ちっぽけなことが原因だった・・・でも、あの頃の私たちにとっては本当に、本当に深刻な問題だったんだ・・・悪いけど、大樹には行けないよ・・・」

 

「!?」

 

「何で!? 大昔のことじゃん!!」

 

「生きるってことは変わっていくことなの・・・今さら顔を合わせても、私たち・・・きっと話すことなんて・・・何もないわ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

ドクルンはその様子を見つめた後、ため息をつくと残りのコーヒーを全て飲み干し、本をパタンと閉じると席から立ち上がって人間界の小銭をテーブルに置く。

 

「マスター、お金こちらに置いておきます」

 

「あ、まいど!」

 

ドクルンはマスターに一言声をかけると、店を後にする。

 

「ふぅ・・・全くおせっかいな連中共ですね。彼女たちには、それが他人を苦しめるということがわからないんでしょう」

 

「人間というのはわからん生き物だブル」

 

ドクルンは冷静な言葉で、先ほどのプリキュアの3人に侮蔑の言葉を漏らす。

 

あの会話を集約してドクルンなりに解釈をすると、3人がその木の下で会ったというそのてつやという人、先ほどいたひでおとふみの二人は、50年前は友達だったのだ。小耳に挟んだことがあるが、このすこやか市には永遠の大樹と呼ばれる木があるらしい。3人はあの場所で友情を誓い合った友人だったのだ。

 

しかし、ここにてつやがいないとなると、その人と二人は些細なことで喧嘩をして、仲違いをしてしまった。どういう喧嘩かは知る由もないが、薬指に指輪をはめていたことも関係はしているとなると、おそらく恋愛絡みなのだろう。

 

そして、絶縁状態のまま、そのまま一度も会わないまま、50年という時が過ぎて現在に至る。こういったところだろう。

 

まあ、そんな話はどうでもいい。ドクルンには少し気になることがあった。

 

すこやか市の丘に立っているという永遠の大樹、あの3人は50年前にその下で永遠の友情を誓ったらしい。あそこで友情を誓ったものは、永遠に友達でいられるらしいが・・・。

 

「ふっ、喧嘩しているじゃない。それで結局誓ったものたちは会わずにもいる。所詮、噂は噂ね」

 

ドクルンはそんな根拠のかけらもない木を嘲笑う。

 

何が永遠の大樹だ。バカバカしい。森や林と離れているだけの木など、生きる環境が異なっているだけのこと。特別なことなんて一つもない。永遠の誓いなど、破れば終わる約束と同じなのだ。

 

私にも、気になる少女がいたようだが、その少女とは永遠に会えていないままだ。まあ、そんなことはどうでもいい。忘れてしまえ。

 

しかし、単純な興味から少しその木の様子を見てみたいとドクルンはその大樹へと足を運んでいく。

 

街にある建物の風景が減っていき、少しずつ林や森といった自然が見えてくる。山の中へと入っていき、その茂った森を抜けていくと草原が広がる丘が見えてくる。

 

そこに立っていたのは一本の木、のようだが・・・。

 

「これが永遠の大樹? 見る影もないじゃない」

 

それは真ん中から上が折れてなくなった木だった。そもそも木自体も枯れ木とかしていて、生きているという感じがまるでしない。しかも、宿っているあいつを見てみれば、すでに力も弱々しくなっていて、ここでナノビョーゲンを飛ばしてしまえば、数分も経たないうちに命が終わりそうな感じだ。

 

クルシーナであれば喜んでその命を永遠に苦しめに行くだろうが、私には生憎そんな趣味はない。命が終わっていくのを死神のように見届けてやって、あとは忘れていくだけだ。

 

「まあでも、この辺は本読むのには絶好の場所ね。空気が少し澄んでいるのが不愉快だけど」

 

ドクルンはそう言って永遠の大樹の裏側へと歩くと、その地面に座り込んで寄りかかり、本を開くと喫茶店で読めなかった続きを読み始めた。

 

背中越しに枯れ木同然のこの木がトクントクンと音が響くのが伝わってくる。どうやらこんな姿になっても、必死に生きようとしているらしい。そんなこと、ただただ苦しいだけなのに。

 

この木は風の便りでは、近いうちに業者が伐採に来るらしい。しかし、それはいつになるのかは知らない。

 

「早く伐採して終わらせてやればいいのに。人間は残酷だと思いませんか? あなたも変に生かされて・・・」

 

背後の木に呼びかけるかのようにドクルンは言葉を口にする。別に返事が返ってくるわけでもない。しばらく木を見つめた後、彼女は本へと視線を戻す。

 

そこからは何かが起こるわけでもなく、そよ風で草木が揺れる音、紙がペラペラとめくれる音のみが響く。しばらくするとドクルンの口からあくびが漏れ始め、眠気が襲ってくる。

 

そういえば、私たち3人に起こっている謎の頭痛。顔を顰めるほどではないが、ジンジンとするような痛みが起こることもある。そのあとに流れてくる、私のものだと思われる映像。そこに写っている少女は一体誰なのだろうと思う。でも、顔はどことなくキュアフォンテーヌの変身前に似ている気がした。

 

おかしい・・・私は生まれた時からビョーゲンズだったはず。でも、どこかで違和感があって、それを消し去ることができない。そんなこと起こるなんて、全然論理的じゃない。

 

あれは、もしかして・・・だとしたら、私はあの少女とどこかで・・・?

 

ーーーーそんなことでどうなろうともビョーゲンズのクルシーナだ。

 

ーーーーアタシの中に流れてくる映像が、アタシにとって関係があろうがなかろうが、どうでもいいことだ。

 

クルシーナはそう言ってはいたが、あいつも結局はどこかで気になってはいるに決まっている。廃病院の洗面台にいたときも、強がっているような感じはした。

 

私も、そういう風に割り切るべきなのか・・・?

 

そう思っているうちに、ドクルンの首はこくりこくりとし始め、そのまま意識が闇へと落ちていった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザザ・・・ザザザ・・・。

 

「ねえ、ーーーー、今日どこかに遊びに行かない?」

 

「遊びに、ですか?」

 

「ええ、ちょっと買いたいものもあるの。付き合ってよ」

 

「・・・いいですよ、あなたと一緒なら」

 

ザザザ・・・ザザザ・・・。

 

「はい、これ」

 

「これは?」

 

「ミサンガよ。これが買いたかったの」

 

「お揃いで私たちの友達の証、ずっと友達でいたいから」

 

「・・・ありがとうございます。純粋に、嬉しいですよ、ーーーー」

 

「その呼び方、やめない? 友達なんだから、普通でいいわよ」

 

「・・・わかった。嬉しいわ、ーー。これでいい?」

 

ザザザ・・・ザザザ・・・。

 

「この木の下で友情を誓うと、永遠に友達でいられるって噂よ」

 

「それって、本当なの?」

 

「まあ、ただの伝説っていうか噂だけどね。叶わないこともあるみたいだけど・・・」

 

「・・・はっきりしないわね」

 

「でも、私たちの友情も誓っておく?」

 

「えっ?」

 

「だから・・・! 私たちの永遠の友情も誓っておくかって言ってるの」

 

「! ええ! 誓いましょう! かなうかわからないけれど・・・」

 

「でも、せっかく来たんだから、やらないよりはマシでしょ?」

 

ザザザ・・・ザザザ・・・。

 

「ーーー、大丈夫? 倒れそうになったって聞いたわ」

 

「ええ。でも、ちょっとフラついただけ。寝てれば治るわ」

 

「そう。よかった。りんご剥いてあげる」

 

「ありがとう」

 

ザザザ・・・ザザザ・・・。

 

「見舞いに来たわよ」

 

「ーーーー、ありがとう。来てくれて嬉しい」

 

「・・・私、あなたに言わないといけないことがあって」

 

「?」

 

「私、しばらくの間、すこやか市を離れてーーーー」

 

「そんな・・・せっかく心を許せる友達ができたと思ったのに・・・」

 

「何言ってるのよ? 私たちは離れていても友達でしょ?」

 

「・・・そう。そうか。そうだね。いつまでも友達」

 

「また、会いに来てくれる?」

 

「ええ。場所が離れても、私はあなたに会いに行くわ。約束よ」

 

「うん。約束・・・」

 

「じゃあ、もう面会時間終わりだから、またね」

 

待って・・・行かないで・・・お願いだから、行かないで・・・・・・!!!!

 

私を置いて行かないで・・・一人に、しないでよぉ・・・!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?? はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

ドクルンは目をハッと見開くと、まるで酸素不足になったかのように息を切らす。バクバクとしないはずの心臓がバクバクと警鐘を鳴らす。

 

額に手をやると汗をびっしょりとかいているのがわかる。服の中まで汗が滲んでいて、気持ち悪い。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」

 

整っていた呼吸をようやく落ち着かせ、右袖で汗を拭ってから周囲を見てみると、すでに辺りは暗くなり始めていた。

 

「あ・・・うっかり、眠ってしまったようですね・・・」

 

自分らしくもないその有様にため息をつくと、ドクルンは先ほどの見せられた映像を思い出す。

 

今のは夢・・・? それとも、頭痛の度に流れてくる映像・・・?

 

でも、映像にしてはやけにリアルだ。しかも、キュアフォンテーヌそっくりの少女が現れて、私がその娘と学校に行ったり、遊んだりして戯れている。

 

・・・少し落ち着こう。私はビョーゲンズのドクルン。ビョーゲンズとして生まれて、地球を病気で蝕むことの使命しかないはず。

 

でも、なんだか違和感がある。何度もあのような映像を見せられて、どうでもいいと思っていても、そう思わざるを得ない。

 

もしかして、私はあの娘とどこかで・・・?

 

ズキッ・・・。

 

「っ・・・!」

 

考えようとすると頭痛が起こる。今度は無意識であっても、顰めるぐらいの分かりやすい頭痛だ。

 

「ドクルン、大丈夫かブル?」

 

「・・・ブルガル」

 

「随分とうなされていたブル。何か悪いものでも見たのかブル?」

 

スタッドチョーカーのブルガルが、様子のおかしいドクルンを心配して声をかける。

 

「・・・まさか、私がそんなものを見るわけがないでしょう。ちょっとここの健康的な環境に当てられていただけです」

 

「・・・お前、無理してないかブル?」

 

「ご心配ありがとうございます。でも、私は大丈夫ですよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

ドクルンは逃げるかのようにそう言って優しい笑顔をブルガルに見せる。相棒は本当に心の底から心配していたのだが、彼女の心を逆撫でしたくないので、これ以上何も言わなかった。

 

彼女はそろそろビョーゲンキングダムへと帰ろうと重い腰を上げるようとする。

 

「? 誰かいるわね?」

 

自分と反対側の、この木の前に生きている人間の気配がする。立つのをやめて見つからないようにそっと覗き込むように見ると、そこには初老の男性が立っているのが見えた。

 

もしや、あの人が喫茶店でプリキュア3人が話していたてつやという男なのでは・・・?

 

てつやは何やら寂しそうな表情を浮かべているようにも見える。こんなただの枯れ木に一体、何の思入れがあるというのだろうか?

 

「っ・・・・・・」

 

そう考えながらしばらく見ているとドクルンはおもむろに顔を顰める。自分にとって目障りな3人組がここへやってきたからだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「お嬢ちゃん・・・?」

 

その中の一人、マゼンダショートヘアの少女がてつやに息を切らしながらも駆け寄る。

 

「二人は『喫茶 純』に居ます! 2時頃にいつも来てるんです! だから・・・!!」

 

「おい、藪から棒に何を・・・?」

 

「だから、会いに行ってください!! そうすれば・・・そうすれば、きっと・・・!!」

 

「・・・40年振りにこの街に帰ってきた。じきにまた街を出る・・・ここにはもう戻らん・・・! だから・・・! もういいんだ! もう、終わったことだ・・・!!」

 

・・・やっぱり、あいつらのおせっかいか。本当にお人好しすぎて、吐き気がするわ。

 

ドクルンは3人の甘さ加減に、不快感をあらわにする。

 

そんなてつやは迷惑そうにしながらも、なんだか寂しそうな声にも聞こえた。

 

「だったら!! どうして毎日ここに来てるんですか!? 約束を信じてるからでしょう!! 永遠の友情を信じてるからでしょう!!」

 

ズキッ・・・!!

 

「っ・・・・・・!?」

 

マゼンダショートヘアの叫ぶ声に、ドクルンは再び頭痛が起こり、目を片方閉じるように顔をしかめる。

 

耳鳴りがして、周囲の音が無になったかと思うと、頭の中に映像が流れ込む。

 

ーーーーだから・・・! 私たちの永遠の友情も誓っておくかって言ってるの

 

ーーーー! ええ! 誓いましょう! かなうかわからないけれど・・・

 

ーーーーでも、せっかく来たんだから、やらないよりはマシでしょ?

 

つい眠ってしまったときに見ていた映像。キュアフォンテーヌそっくりの少女と丘の上に、一緒に立っている私自身・・・・・・。

 

「! はぁ・・・はぁ・・・」

 

頭痛が落ち着くとドクルンは息を切らしていて、額からポツポツと玉のような汗が浮かんでいた。

 

また、あの映像を・・・!?

 

ドクルンは自分の中の違和感が拭えずに、呆然としていた。

 

やっぱり、ここの環境は良くない・・・? 健康的な地球に長く居すぎたかもしれない・・・。

 

ドクルンはそう思いながらも、自分の不調も忘れて再度様子を覗き込む。どうやらてつやという男は木の前からいなくなったようだ。

 

「怖くなったの・・・いつか、私たちも、友達でいられなくなっちゃう日が来るんじゃないかって・・・」

 

マゼンダショートヘアの少女は不安そうな顔をしている。そこに栗毛ツインテールの少女が歩み寄る。

 

「誓お!」

 

「え?」

 

「ふふふ・・・」

 

そこに藍色ロングヘアの少女も歩み寄り、円になるように立ち、2人は手を重ね合う。マゼンダショートヘアの少女は表情を晴れやかにすると一緒に手を重ねる。

 

「私、花寺のどかは、大樹に誓います」

 

「沢泉ちゆは誓います」

 

「平光ひなたは誓います」

 

「「「永遠に友達でいることを!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?? う・・・あ・・・!!」

 

様子を見ていたドクルンが先ほどよりも比べものにならないほどの激しい頭痛が襲い、両手で頭を押さえる。その表情は苦痛で歪んでいた。

 

先ほどよりも激しい耳鳴りがして、周囲の音が無になったかと思うと、頭の中に再び映像が流れ込む。

 

ーーーー遊びに、ですか?

 

ーーーーええ、ちょっと買いたいものもあるの。付き合ってよ

 

ーーーー・・・いいですよ、あなたと一緒なら

 

ーーーーお揃いで私たちの友達の証、ずっと友達でいたいから

 

ーーーー・・・ありがとうございます。純粋に、嬉しいですよ、ーーさん。

 

ーーーーその呼び方、やめない? 友達なんだから、普通でいいわよ

 

ーーーー・・・わかった。嬉しいわ、ーー。これでいい?

 

ーーーーだから・・・! 私たちの永遠の友情も誓っておくかって言ってるの

 

ーーーー! ええ! 誓いましょう! かなうかわからないけれど・・・

 

ーーーーでも、せっかく来たんだから、やらないよりはマシでしょ?

 

ーーーーそうね。

 

ーーーー私、沢泉ちゆは誓います。

 

ーーーー・・・毒島りょうは誓います。

 

ーーーー永遠に友達であると!!

 

藍色のロングヘアの少女と、いっしょ、に、いて、友情を、ちか、い・・・?

 

「ドクルン!?」

 

ブルガルは相棒の尋常ではない状態に声を上げる。

 

そして、その異変は同じ場所にいる彼女にも起こっていた。

 

「!? うっ・・・くっ・・・!!」

 

「ちゆちゃん!?」

 

「ちゆちー!?」

 

ちゆに起こった異変に、のどかとひなたは動揺の声を上げる。ちゆは手で頭を押さえながら、表情は苦痛に顰められていた。どうやら耐え難い頭痛を起こしているようだった。

 

「りょ、う・・・? あ・・・あ・・・」

 

ちゆは自分の記憶が流れてくるのを感じ、思わず誰かの名前をつぶやく。そうした瞬間、頭痛が激しくなり、両手で頭を押さえ始めた。

 

「あ・・・あ・・・あ・・・」

 

自分の頭の中に甦ってくる記憶・・・そして、自分の中に湧き上がってくる。

 

そして、それが終わった時、ギリギリで頭痛を耐えていたちゆは、そのまま前のめりに倒れていく。

 

「ちゆちゃん!!」

 

「ちゆちー!!」

 

のどかとひなたはお互いに地面へ倒れそうになるちゆを受け止める。

 

「大丈夫!? ちゆちゃん!!」

 

「しっかりして!!」

 

「うぅ・・・だ、だいじょうぶ・・・ちょっと頭が痛くなっただけ・・・部活の疲れが、出たのかな・・・?」

 

ちゆはそう言いながら、取り繕うように笑顔を見せる。しかし、そんな彼女の額にはポツポツと玉のような汗が浮かんでいた。

 

「全然大丈夫じゃないし!!」

 

「ちゆちゃん、今日はもう帰ろう?」

 

「ええ、そうするわ・・・」

 

そう言って、ちゆは2人に支えられながら、3人で一緒に丘の下へと降りていく。

 

ちゆは一緒に歩いていく中で、彼女は心の中で激しく動揺していた。

 

・・・どうして・・・!? なんで、私、忘れてたの・・・!?

 

りょう・・・!! あなたのことを・・・友達のはずのあなたを・・・どうして・・・!?

 

「ちゆちー、どうかしたの?」

 

「!? い、いえ、なんでもないわ・・・」

 

表情が顔に出ていたのか、ひなたが心配そうに声を掛けるも、ちゆは笑顔でとっさにごまかした。

 

しかし、心の中の動揺はまだ治まりそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

すこやか市にある大樹の木の裏から廃病院へと逃げ帰ってきたドクルン。頭痛は落ち着いてはいるが、手は頭に添えられていて、しかも息を切らしていてそれを整えていた。

 

「ドクルン、大丈夫かブル!?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

激しく心配するブルガルに、ドクルンは何も返答を返さず、息を整えることに集中している。

 

そこへコツコツと歩み寄る人物が・・・・・・。

 

「あら、ドクルン。帰ってたの?」

 

「はぁ・・・クル、シーナ・・・」

 

聞こえてきた声に気力を振り絞って振り向くと、クルシーナがいつもの不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。

 

彼女は何かを察したようにため息を吐く。

 

「その様子だと、アタシらと同じで頭痛が起きてる。そして、映像が流れてきてる、違う?」

 

「そう、ですが・・・それが何、か?」

 

頭痛が落ち着いてきたドクルンが彼女に言葉を返す。

 

「アンタ、それを考えようとしてるんじゃないでしょうね・・・?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・ハッ、やっぱりね」

 

クルシーナの質問にドクルンが肯定するかのように沈黙すると、彼女はそれを鼻で笑う。

 

「そうやって考えようとするから痛みが増すんだよ。忘れちゃえばいいじゃない、いつものアンタみたいに」

 

「・・・別に考えてなど、いませんよ・・・」

 

「嘘ばっかり。いつからアンタと一緒にいると思ってんの? イタイノンもそうだけど、アンタらのことなんか全部お見通しなんだよ」

 

「割り切ろうとしても、忘れようとしても、流れてくるんですよ・・・!! ふとしたことをきっかけに・・・!!」

 

「ふん、何を気にしてんだか・・・」

 

クルシーナはドクルンの言葉を一蹴すると、ドクルンの背後に近寄る。

 

「そんなに頭が痛くて辛いなら、その元を消し去ってしまえばいい。アンタのその頭痛はなんで起きるの? なんで映像が流れてくるの? なんで起こったの? 少し冷静になって考えれば、わかるでしょ」

 

クルシーナはドクルンの耳元に囁くように言うと、その場から離れていく。

 

「・・・クルシーナは・・・辛くないんですか・・・?」

 

目の前を歩き去っていこうとするクルシーナに、胸の内を明かすかのように声を掛けるドクルン。クルシーナは足を止めると振り向く。

 

「・・・前も言ったでしょ、アタシにはそんなものどうでもいいことだって。映像が流れてこようとも、アタシが今の地球が大嫌いだっていうのは、変わんないんだよ。眠っている中でそう割り切ったら、少し楽になった」

 

クルシーナは最後に微笑を浮かべると、そのまま部屋へと戻るために歩き去っていった。

 

「・・・頭痛の元か」

 

頭痛が和らいだドクルンは少し考えてみる。

 

私はキングビョーゲンの娘として生を受けた。お父さんの命令にも従って、病気を蝕むことが喜びとして教えられてきた。

 

人間はすぐに病気になっていくか弱い生き物だということも教えられた。発熱、フラフラ、頭痛、胸が苦しくなる・・・そんな感じの異変が起きて弱って死んでいく生き物だということも。

 

・・・頭痛?

 

じゃあ、この頭痛は、私が弱くなっている証拠なのか? ビョーゲンズとして生まれて、病気にすることを喜びとしてきたはずなのに・・・?

 

・・・不愉快だ。人間と同じような異変が起こるなんて、不愉快極まりない。こんな、頭の痛み、私には必要ない。こんな辛いの、私にはいらない。

 

この頭痛の元を消し去るためには・・・?

 

まあ、とりあえず今日は休もうか・・・。

 

ドクルンは意を決したような顔をすると共に、休息を取るために自分の部屋へと歩き出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の日の夜・・・・・・。

 

すこやか市にあるすこやか駅。その駅の掲示板に貼られている1枚のポスター、それは命が尽きるであろう永遠の大樹を讃えるために開催される祭り、『永遠の大樹 ありがとうフェス』というポスターだ。

 

そこへ獣人の姿をしたビョーゲンズ、バテテモーダが近づいていた。

 

「フェスっすか・・・フッ・・・」

 

そのポスターを見たバテテモーダは不気味な笑みを浮かべていた。

 

トントントン!

 

「あぁ?」

 

グイッ・・・。

 

不意に誰かに肩を叩かれ、振り向くと指を頬へと押し付けられる。誰がやったのか、顔をよく見てみると・・・。

 

「フフフ・・・こんばんは、バテテモーダ」

 

口元に笑みを貼り付けているキングビョーゲンの娘、ドクルンだった。

 

「ド、ドクルン嬢!? ングッ」

 

「静かにしましょうか? 遅いんですから、誰かが来たら怪しまれますよ」

 

大声を出しそうになったバテテモーダを、押し付けた指で口を塞いで黙らせる。獣人がうんうんと頷くと手を離す。

 

「そ、それで、どうしたんっすか? こんなところで・・・」

 

「フフフ・・・気になっているのでしょう? そのフェスが」

 

「それは・・・そうっすけど・・・」

 

ドクルンが笑顔を貼り付けながら言うと、バテテモーダが言いにくそうに言う。

 

「では、飛び入りしてやろうではありませんか、そのフェスに。あなたのだーい好きなラップもそこでできるかもしれませんよ」

 

ドクルンは不敵な笑みを浮かべる。

 

「ドクルン嬢と一緒にっすか!? それは感激っす!? ムグッ」

 

「ちょっとボリュームを抑えましょうか?」

 

「ご、ごめんっす・・・」

 

「わかればいいんですよ。その声はフェスまでとっておいてください」

 

ドクルンは貼り付けた笑顔で言う。

 

「そこで・・・」

 

「?」

 

「あなたには明日、やってもらいたい頼みがあります」

 

ドクルンは不敵な笑みを浮かべながら、その内容をバテテモーダに耳元に話すのであった。

 

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