ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第19話がベースです。
今回から長編になります。最後までお付き合いください。


第49話「暗躍」

 

「ハ・・・ハ・・・ハァ~ックション!!!!!」

 

マグマに満たされた世界、ビョーゲンキングダム。そこで何やら品のない声が聞こえてきた。バテテモーダが思いっきり盛大なくしゃみをしたのだ。

 

・・・・・・・・・。

 

あんだけ盛大なくしゃみをしたのにもかかわらず、珍しく全員が集まっている幹部たちは思い思いのことをしていて、全く反応を示さない。

 

ダルイゼンは岩場に寝そべり、シンドイーネは鏡の前でおめかしをしていて、グアイワルは筋トレをしている。

 

ドクルンは眠っているイタイノンに膝枕をしてあげていて、クルシーナはその向かいで岩場に寝そべっており、ヘバリーヌはその間で何やら奇妙なポーズをとりまくっていた。

 

「やだな~、もう誰っすかぁ~? 俺の噂してるのは~? パイセン達かお嬢たちっすかぁ~?」

 

バテテモーダは先輩幹部たちの方を振り向きながら、ヘラヘラとした口調で言う。

 

「・・・してないけど?」

 

「プリキュアたちじゃないのぉ? あんたがヘバリーヌと一緒に負けてきたばっかりの」

 

ダルイゼンは淡々としたように返し、シンドイーネは皮肉めいた言葉で返す。

 

「あなたの噂の中身を教えて欲しいですねぇ」

 

「そんな風みたいなことわかるわけないでしょ。バカなの?」

 

ドクルンは煽るような言葉で返事をし、クルシーナは不機嫌そうな声で嫌味ったらしく返す。

 

「はぁ! ほぉ! やぁっ! モーダちゃんはたまに変なこと言うよね~♪」

 

ヘバリーヌは明るい声ながらも若干嘲るような感じで言いながら、奇妙なポーズを取り続ける。

 

「さてと・・・」

 

クルシーナはすくっと立ち上がるとその場から歩き去ろうとする。

 

「どこに行くんだ・・・?」

 

筋トレをしていたグアイワルが、クルシーナの背中に声をかける。

 

「地球を蝕みに行くに決まってんでしょ。アンタもバカになったの?」

 

「お、俺は・・・分かってたことだ!」

 

「・・・ふん」

 

クルシーナは背後を振り向きながらニヒルな笑みを浮かべながら言うと、グアイワルは言葉に詰まりながらも彼女に返す。

 

「好きに行ってくればいいんじゃない?」

 

「いってらっしゃーい・・・」

 

面倒臭そうに返すシンドイーネとダルイゼンに、クルシーナは顔をしかめる。

 

「・・・新人ですらやる気出してんのに、アンタらと来たらだらけてばっかね」

 

クルシーナは皮肉交じりにそう呟くと、今度こそ歩き去ろうとするが、数歩進んで何かを思い出したかのように立ち止まる。

 

「あ、そうだ。ドクルン、イタイノン、ヘバリーヌ」

 

「ん?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「な~に~?」

 

クルシーナは3人についてこいと言わんばかりに手招きをすると、再度歩みを進めていく。

 

ドクルンとヘバリーヌは目を見合わせると、ドクルンは膝枕をしているイタイノンの頬をペチペチと叩く。

 

「んぅ・・・・・・」

 

「イタイノン、起きてください。仕事に行きますよ」

 

「んんぅ・・・」

 

イタイノンは寝ぼけ眼でありながらも起き上がると、目をこすりながらクルシーナの後をついていくドクルンの後ろを歩いていく。

 

ヘバリーヌはルンルンと歩きながら、一緒についていくのであった。

 

「?」

 

バテテモーダはその様子を疑問符をつけながら見ていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間たちが寝静まっているであろう静かな夜、すこやか市の町全体を見下ろせる、すこやか山の丘の上でビョーゲン三人娘とヘバリーヌが立っていた。

 

「気持ち悪い風ね・・・本当に不愉快だわ」

 

クルシーナは町を見下ろしながらニヒルな笑みを浮かべる。このそよ風は人間たちにとっては心地いいものだが、彼女たちビョーゲンズにとっては不快そのものだ。体の中がピリピリとする。

 

「あぁん♪ 風が体の芯に心地良くて気持ちいいなぁ~♪」

 

そんな中でもヘバリーヌは頬を赤らめながら、クネクネと体を動かしている。

 

「それで、この前の検証の収穫はあったんですか?」

 

ドクルンがクルシーナの背後に向けて問いかける。

 

「ええ、もちろん。やっぱりプリキュアどもに引っ付いているあのヒーリングアニマルの子犬、あれがガンになってたわね。ちゃんとバテテモーダとヘバリーヌがメガビョーゲンを生み出したところは通信で見ていたから、間違いないわ」

 

「やはり、そうですか・・・」

 

「・・・なんとも忌々しい話なの」

 

クルシーナは柵に寄りかかりながら言うと、ドクルンは無表情でつぶやき、イタイノンは顔を顰めながら言う。クルシーナはニヤッと笑みを浮かべながら次の言葉を吐いた。

 

「アタシ、今だったら地球を広範囲に蝕むことができるんじゃないかって思ってんのよ」

 

「? どういうことですか?」

 

疑問符を浮かべるドクルンに、クルシーナは人指し指を一本立てる。

 

「アンタたちが撤退した後、アタシだけあいつらの様子を見に行ったの。そのときにあの子犬、妙に具合が悪そうだったのよね。メガビョーゲンを作ってないのに」

 

「それがどうかしたのですか?」

 

「それはねーーーー」

 

ブスブスッ・・・・・・。

 

「ウツ!?」

 

クルシーナの説明であまり理解できていないドクルン。だんまりを決め込んでいるウツバットに顔を顰めると、指3本を使って帽子を数回つつく。

 

「お前から説明しろよ」

 

「わ、わかったウツ・・・・・・」

 

ウツバットは痛みに顰めながらも、あの子犬の性質を話し始める。

 

「あの子犬はラテという名前のヒーリングアニマルで、ヒーリングガーデンにいるテアティーヌという女王の娘なんだウツ」

 

「ふむ・・・つまりあの子犬はヒーリングガーデンのお姫様ってことですか」

 

「そうウツ。テアティーヌの一族は地球の病気を察することができるから、ビョーゲンズの病気をいち早く察知して浄化していったんだウツ」

 

「聞いてると、なんだかムカついてくる話なの」

 

「そのラテも、そう言った不調を感知する能力があるウツ。でも、僕たちが見た様子では、ラテはクルシーナやダルイゼンたちがメガビョーゲンを生み出しまくったせいで大分疲れているようだったウツ」

 

「・・・・・・・・・」

 

ウツバットの話を聞いている三人娘。ドクルンは質問をしながら聞き、イタイノンは話が気に入らずに顔を顰め、クルシーナはそれをただ黙って聞いていた。

 

「そのワンちゃんがお疲れってことは、プリキュアちゃんたちがメガビョーゲンに気づかないってこともあるってことぉ~?」

 

「アンタにしては察しがいいじゃない」

 

ヘバリーヌが珍しくまともなことを言うと、クルシーナは彼女に不敵な笑みを浮かべる。

 

「まあ、要するにだ。あいつの体調が悪いってことはアタシらの活動を察知できない可能性があるわけ。だから、そこを狙ってこの街一帯をアタシらで蝕んでやろうってことよ」

 

「ダルイゼンたちは協力させないの?」

 

イタイノンがクルシーナに意見を述べる。どうせ蝕むんだったら、あいつらも呼び寄せてやった方がいいんじゃないかと思う。その方が効率良くあっという間に蝕むことができるのではと考えた。

 

しかし、クルシーナはそれに対して首を振る。

 

「・・・いいわよ、あんなグータラ共は。呼び寄せるだけ時間の無駄よ」

 

クルシーナはどうせあいつらもやりたがらないだろうし、ましてアタシらと一緒に仕事をやりたがるわけがない。だから、正直どうでもいい。

 

「当てが外れた場合は、どうしますか?」

 

ドクルンがメガネを上げながら問う。それが一致しなかった場合は、結局この前の調査は無駄ということになる。はっきりと見たわけでもないから、なんとも言えないが・・・。

 

「・・・その時はその時よ。いつも通り、アタシたちで地球を蝕んでやるだけだし」

 

クルシーナは確信を持っていた。なんせ自分の帽子になっている相棒は、元々ヒーリングアニマルだ。こいつの言っていることが本当であれば、あのヒーリングガーデンの王女の情報は必ず一致するはずだ。

 

「さてと、じゃあ作戦について話しましょうか。まず、ドクルン、イタイノン、アタシの3人がこの更けた夜にメガビョーゲンを生み出す。ただしあくまでもそれはあいつらが気づいた時の陽動としての行動ってこと。あとはいつも通りメガビョーゲンに地球を蝕んでもらってーーーー」

 

クルシーナは作戦の内容を話していく。三人娘はあくまでもあいつらを釣るためのエサ。彼女がそのように作戦を話すのにはある理由があった。

 

「そして、トリはヘバリーヌ、アンタよ」

 

「えぇ? ヘバリーヌちゃん?」

 

クルシーナが指をさしたのはヘバリーヌだった。ヘバリーヌは珍しく戸惑ったような反応を見せる。

 

「そう。アンタに花を持たせようと思ってんの。アタシたちが陽動している間に、本命のアンタは人気のないところでこっそりとメガビョーゲンを生み出して、この街一帯を一気に病気で蝕んでやるってわけ。あの子犬の調子が悪い時に生み出してやれば、あいつらに呆気なく浄化されるってこともなくなるでしょ?」

 

「おぉ~!! いいねぇ♪ やるやるぅ~♪ ヘバリーヌちゃん、やるよぉ~♪♪♪」

 

クルシーナに作戦の要として起用されたことに、ヘバリーヌは瞳をキラキラとさせながら両腕をブンブンと回す。

 

「フフフ、威勢がいい子は嫌いじゃないわ。じゃあ、三人とも頼んだわよ」

 

「了解です」

 

「ラジャー♪」

 

ドクルンとヘバリーヌは場所を移動すべく、その場から姿を消す。

 

「・・・・・・・・・」

 

しかし、なぜかイタイノンだけは動こうとする様子がなく、どこかぼうっとしている様子だった。

 

「どうしたのよ? イタイノン」

 

「あっ、ごめんなの・・・」

 

クルシーナが呼び掛けるとイタイノンは反応を返すも、明らかに様子がおかしかった。さっきの話だってちゃんと集中して聞いてたか怪しいし、ビョーゲンキングダムにいたときもなぜかドクルンに膝枕をしてもらっていた。

 

「アンタ、最近ボケっとしすぎなんじゃないの?」

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナが不機嫌そうな口調で言うと、イタイノンは俯いたまま体をプルプルと震わせる。

 

そして、クルシーナに駆け寄ると彼女の前から抱きしめる。

 

「ちょっ、何よ?」

 

「・・・頭が痛いの」

 

「?」

 

「最近、頭がシクシクするの・・・眠ってても変な夢ばかり見るの、あのプリキュアどもと一緒にいると頭がおかしくなりそうなの、体がフラフラするの・・・。私が私でなくなりそうで、怖いの・・・」

 

イタイノンは体を震わせながら心情を吐露する。彼女はクルシーナにああは言われても、結局は変な映像に苦しめられていたのだ。

 

クルシーナはイタイノンを抱き返す。

 

「・・・前も言ったでしょ。アタシたちはアタシたちだって。偽物だとしても、今はビョーゲンズであることが全てなのよ」

 

「でも、考えようとしなくても、流れてしまうの・・・私の、頭の中に、痛いものが・・・!」

 

クルシーナがそう諭しても、イタイノンの苦しげな訴えは変わらない。

 

「だったらいつものように発散すればいいのよ。地球や人間たちを恐怖と苦痛に落としたりしてさ、アンタやアタシの得意分野じゃない」

 

「・・・・・・・・・」

 

「そんな夢や映像ごときに惑わされてるわけ? ヤブ医者が何かしたわけでもあるまいし。大体、今のアタシらの存在意義はアンタでも理解してるでしょ? もしかして、忘れた?」

 

「!!」

 

クルシーナが微笑を浮かべながら、イタイノンはハッと目を見開く。

 

そうだ、私はなぜ人間を憎み、ビョーゲンズとしての根源があるのか? 本当にそういうまやかしに感化されて、自分がどういう存在なのか忘れるところだった。

 

イタイノンは少し頭痛が引いたと思うと、ゆっくりとクルシーナから体を離す。

 

「い、一応、礼は言っておくの・・・」

 

「・・・別にアタシは何もしてないけど?」

 

イタイノンがそっぽを向きながら言うと、クルシーナは淡々と返す。抱きついて恥ずかしかったのか、彼女の頬が赤らめているのが見える。

 

「ありがとう・・・」

 

「ん? なんか言った?」

 

「な、なんでもないの! 行ってくるの・・・」

 

イタイノンはボソッと言葉を言うと場所を移動すべく、その場から姿を消す。

 

自分以外の三人が移動したことを確認すると、クルシーナは再びすこやか市の街を眺め始める。

 

「さてと、アタシはどうしようかねぇ?」

 

彼女がどのような素体からメガビョーゲンを生み出してやろうと考え始めた、その時だった・・・・・・。

 

バサッ!!

 

「ブッ!! ッ! な、何よ!!??」

 

突然、クルシーナの顔に何かがかかり、彼女はそれを乱暴に取り払う。少し離れた位置でそれを見てみると、それは一本の柱の上にかかっていた、黄色と緑の布ようなものだった。

 

布のようなものは風が吹いてくると、それによってパタパタと音を立てながらたなびかせる。風が止まると柱にかかるように元に戻る。

 

「何、これ?」

 

「よくわからないけど・・・風の強さに関わっているっていうのは明白ウツね」

 

クルシーナが疑問を抱いていると、布のようなものは風が吹くとまた音を立ててたなびく。

 

これは吹き流しといい、人間たちが風の風力や向きなどを調べたりするために高所からぶら下げているもの。

 

吹き流しは風が吹くと再びたなびかせ始め、さらに先ほどとは別の方向に向かってたなびいているのが見える。風が止むとまたぶら下がるように下へと垂れた。

 

それをしばらく見ていたクルシーナは不敵な笑みを浮かべる。

 

「これはこれで、生きてるって感じね。人間の作ったものだろうけど、いいものができそう」

 

クルシーナは手のひらを広げるとそこに息を吹きかけ、黒い塊のようなものを出現させる。

 

「進化しろ、ナノビョーゲン」

 

「ナ~ノ~」

 

生み出されたナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、その吹き流しに取り憑いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、先に移動していったビョーゲンズの二人。その一人であるドクルンは、すこやか市の緑がいっぱいの公園へと姿を現していた。

 

「静まり返った公園はいいわぁ。ここでは誰の目も気にすることなくここ一帯を蝕むことができるからねぇ」

 

ドクルンは夜の公園の暗鬱さを感じながら言う。人間たちは平和なこの世界で寝静まっている。今ならここで怪物を発生させても大丈夫なくらい、誰もいない状態だ。

 

これから私たちに地球を蝕まれることも知らずに・・・・・・。

 

「さてと、素体はどうしようかしら?」

 

ドクルンは辺りを見渡しながらメガビョーゲンの素体となるものを探す。

 

周りを探索していくと、花がいっぱいの庭園や広い草原、林の中には柵があって様々な植物が育っており、その中の階段を上がっていく。

 

「空気がよく澄んでいるわねぇ。色は素敵だけど、私たちの体には不快だ」

 

ドクルンはそう言いつつも、口元の笑みを崩さない。夜の公園と言えども、美しいものであっても、快適な環境であればビョーゲンズにとっては不愉快そのものでしかないのだ。

 

「ドクルン」

 

「何? ブルガル」

 

「体調は大丈夫なのかブル?」

 

ドクルンは不意に話しかけてきたスタッドチョーカーになっているブルガルのその言葉に、足を止める。

 

「・・・別に。何もないわ」

 

一拍置いた後、ドクルンが口を開く。特段頭痛なんか起きてないし、体がフラフラしていることもない。全くもって問題がないし、活動にも支障がない。

 

なのに、相棒は何を心配しているのだろうか?

 

「そうか、ブル・・・」

 

「? どうかしたの?」

 

「・・・なんでもない、ブル・・・」

 

ドクルンはそれを聞くと、再び歩き始めた。

 

「どうせ忘れるわよ。私がこうやって、ビョーゲンズとして活動をしていれば・・・」

 

「? 何か言ったブル?」

 

「・・・何でもないわ」

 

ドクルンがボソリと呟いたが、ブルガルに問われると冷静にごまかした。

 

階段を昇って頂上らしきところまで到達していくと、そこには何やら建物のようなものがあり、そのそばには発泡スチロールのような箱が積み上がっているのが見えた。

 

「・・・・・・ふむ」

 

ドクルンは何かを思うと、その箱に近づいていき、蓋を開けて中身を見る。そこには白い煙を放出する塊のようなものがたくさん入っていた。

 

「・・・へぇ~、まさかこんな場所でこれを見られるとはねぇ。でも、ここで何のために使われるのかしらぁ? まあ、いいわ」

 

ドクルンは指をパチンと鳴らし、黒い塊のようなものを出現させる。

 

「進化してください、ナノビョーゲン」

 

「ナノデス~」

 

生み出されたナノビョーゲンは、その箱の中身へと飛び込んでいく。

 

一方、誰もいないすこやか市の中学校、その校舎の屋上にイタイノンの姿があった。

 

「今、ここには誰もいない・・・本当に居心地がいいの」

 

彼女はニヒルな笑みを浮かべながら、夜の校庭を見つめる。私の部屋と同じで暗く、神秘的な世界・・・しかも、その世界に私一人だけがいるかのような世界。

 

イタイノンにとっては至福の時だ。なんせ今ならこの世界を独り占めにできるから。

 

「ネム・・・・・・」

 

「? どうしたの? ネムレン」

 

そんな静かな世界で、何やらため息をつくカチューシャのネムレンに、イタイノンは声をかける。

 

「私は心配ネム・・・」

 

「・・・何が?なの」

 

「イタイノンが、おかしくならないか心配ネム・・・!」

 

ネムレンが吐露した悩みに、イタイノンは顔を顰める。

 

「・・・それは私の頭が変だとでも言いたいの?」

 

バチバチバチ・・・!!

 

「え!? いや、そうじゃなくて! こんな地球にいて、イタイノンの頭痛がひどくならないか心配だっただけネム!!」

 

イタイノンが体を帯電させ始めたことに、ネムレンが慌てながら弁解する。私は心配なだけなのに・・・・・・。

 

それを聞くとイタイノンは電気の放出を止め、一拍沈黙した後、決意を秘めたような顔になる。

 

「冗談なの」

 

「え?」

 

「・・・お前の気遣いはよくわかってるの。でも、私はビョーゲンズなの。人間とは違うの。私は狩られる側じゃなくて、狩る側にまわっているの。何も心配する必要はないの」

 

「でも・・・・・・」

 

「もし、そんなことがあれば、まとめて私の憎しみで食いつぶしてやるの」

 

イタイノンは拳をグッと握りしめながらネムレンにそう言うと、彼女はそろそろメガビョーゲンを作り出す素体を探そうと辺りを見渡し始める。

 

「イタイノンは・・・強くなったんだネム・・・」

 

「? なんか言った?なの」

 

「なんでもないネム」

 

ネムレンがホッとするような声を出すと、イタイノンが反応する。

 

「ここは本当に、本当にいい場所なの」

 

イタイノンは素体を探しながら、そう呟く。誰もいない世界、一人になったかのような世界、本当に素敵な世界だ。

 

「でも、もっといい場所になるはず、なの」

 

イタイノンは笑みを浮かべながら言うと、屋上の出口の上にパラボラアンテナがあるのが見える。

 

彼女は不敵な笑みを浮かべると、両腕の袖を払うかのような動作をして黒い塊のようなものを出現させ、右手を構えるように突き出す。

 

「進化するの、ナノビョーゲン」

 

「ナノナノ~」

 

生み出されたナノビョーゲンは、パラボラアンテナへと取り憑いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲンズによる卑劣な作戦が行われている一方、のどかの家では彼女たちが眠りにつこうとしていた。

 

この日は珍しくのどか、ラビリン、ラテの3人が同じベッドで一緒に眠りについていたが、ラテは寝付くことができずに不安そうな顔を浮かべていた。

 

火のエレメントさんと音のエレメントさんをお手当てをした後、体調不良で倒れてしまった自分。ひなたの両親が経営する動物病院に診てもらったところ、疲労がたまっていただけだという。

 

それにしても、自分はのどかたちにお手当てを任せっきりにして守られているだけ。自分は体調が悪くなり、いつもそこで眠っているだけだ。

 

のどかもちゆもひなたも、のどかのパパもママも、みんな自分に優しい。でも、それに比べて自分はなんだ、そんな彼女たちに何もできていない。

 

自分は本当に家の中のお姫様。そんな自分に何もできていないことが不甲斐なくて、本当に仕方なかった。

 

「クゥ~ン・・・・・・」

 

ラテはため息をつくような声を漏らす。

 

「ラテ?」

 

そんな声に反応したのどかが声をかける。

 

「大丈夫? 眠れない?」

 

「う~ん・・・・・・」

 

一緒に目を覚ましたラビリンも反応し、彼女がスタンドの明かりをつけるとのどかも起き上がる。

 

「ラテ様、大丈夫ラビ?」

 

「ウゥ~ン・・・・・・」

 

「どこが辛い? 教えてくれるかな?」

 

不安そうな表情をするラテに、何かを言いたいのであろうことを察したのどかが聴診器をつけてラテに当てる。

 

(元気になれないのが悲しいラテ・・・)

 

ラテは心の声を漏らす。どうやら自分が倒れてしまったことを気にしているようだった。

 

「うん。ラテも早くみんなとお外行きたいよね」

 

「元気になったらたくさん一緒に遊ぶラビ」

 

のどかとラビリンは優しい表情で声をかける。

 

(みんな・・・みんなラテに優しいラテ・・・でも、ラテは何もしてないラテ・・・みんなプリキュアになって頑張ってるラテ・・・ラテはいつも助けてもらってるだけラテ・・・)

 

ラテはどうやらみんなに迷惑をかけたのを申し訳ないと思っているようだった。みんなはメガビョーゲンと戦っているのに、自分は倒れてぐったりしているだけ。そんな彼女たちに恩返しの一つも、何もしてやれていないのだ。

 

「そっか・・・そんなこと思ってたんだね・・・でもね、ラテ」

 

ラテの心の不安を聞いたのどかはなおも優しい表情を浮かべ、彼女を優しく抱きかかえる。

 

「私たちこそ、ラテのおかげで助かってるんだよ」

 

「ラテ様が地球の苦しみを体で感じてくれているから、ラビリンたちがお手当てできるラビ」

 

ラテだって十分助けてくれている。そういう風にのどかとラビリンは思いを伝える。

 

「だからね、ラテが疲れるのは当たり前なの。何もしてないなんて、そんなこと全然ないんだよ」

 

(でも・・・・・・)

 

のどかの優しい言葉でも、ラテの表情は晴れない。

 

「何も心配することないラビ」

 

「今はゆっくり甘えてくれればいいからね」

 

彼女たちはそれでもラテを気遣うような優しい言葉をかけてくれる。ラテはそんな言葉を聞きながら、疲れからかゆっくりと意識を落としていくのであった。

 

「寝ちゃったね・・・・・・」

 

「よっぽど疲れていたんだラビ」

 

のどかは安心したような表情を浮かべるとラテをゆっくりとベッドの中へと戻し、彼女に掛け布団をかけてあげる。

 

「のどかは優しいラビね。いつも誰かを気遣ってるラビ」

 

「うん。だって私も、病院にいた頃はみんなに助けられてたから。共に戦う友達もいたし。みんなの助けになりたいから」

 

のどかは部屋に飾られている写真を見つめる。

 

「しんらちゃん・・・」

 

そこには飾られていない誰かの名前をつぶやく。

 

「のどか?」

 

「あ、ううん・・・なんでもない。早く寝よ?」

 

不安そうな表情を浮かべたのどかにラビリンが声をかけると、彼女は優しい笑みを浮かべる。

 

のどかとラビリンはスタンドの明かりを消すと、ラテに寄り添うように眠りについたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつら、本当にこないわね・・・・・・」

 

すこやか山の中。クルシーナは腕を組みながら、近くの木に寄りかかりながら見える山の麓の方を見ていた。

 

プリキュアについているあの子犬が、本当に体調が悪そうであれば、あいつらは自分たちの行動を察知できないと踏み、今が好機だとメガビョーゲンを生み出した。さらにこの時間帯は、人間共は家に篭って寝静まっている時間だ。自分たちが活動しているだなんて、毛ほども思わないだろう。

 

三人娘とヘバリーヌにも協力してもらい、自分たちが揃い踏みすれば、地球なんかあっという間に蝕めるはず。まずはその第一の場所として、あいつらが住んでいるこの街を襲ってやることにしたのだ。

 

もう暴れさせて数時間は経つと思うが、まさか本当に来ないとは・・・・・・。

 

「メガァ!! メガァ!! メガァ!!!!」

 

その近くでは、黄色の線のようなスカートに青いマフラーをしたようなメガビョーゲンが、両腕の赤い布のようなものを地面に叩きつけ、口から赤い光線を吐き出しながら山一帯を病気で蝕もうとしていた。まずはその前哨戦として、すこやか山の山頂を蝕んでいた。

 

プリキュアという障害がまるでなく、順調に病気で蝕んでいくメガビョーゲン。クルシーナはその様子に不敵な笑みを浮かべる。

 

「・・・まあ、どっちでもいいけど」

 

あの目障りな3人とお供のヒーリングアニマルがどんな時間に来ようが来なかろうが、自分のやることは変わらない。クルシーナは気にしないことにした。

 

「メガビョーゲン!!!」

 

メガビョーゲンは口から赤い光線を吐き出し、周りの木を病気へと蝕んでいく。

 

「フフフ、いいわよメガビョーゲン。その調子」

 

クルシーナが徐々に山が赤く染まっていくのを見て、不敵な笑みを浮かべる。先ほどよりも少しは大きくなってきた気がする。

 

「ち~っす!! クルシーナお嬢!」

 

「あぁ?」

 

そこにこの静かな夜には似合わない声が聞こえてきたかと思い、振り向くとそれはバテテモーダだった。

 

「バテテモーダ? 何しに来たわけ?」

 

「いやぁ~!! お嬢たちの活躍をこの目に焼き付けようと思っただけっすよ~!!」

 

「あっそ」

 

バテテモーダはヘラヘラしながら、クルシーナへと近づく。彼女は特に興味を示すことなく、メガビョーゲンの方を見やる。

 

「順調っすか?」

 

「ええ、今までが嘘みたいにねぇ」

 

クルシーナは両手を頭の後ろに組みながら言う。今回はプリキュアにほとんどというか、全く邪魔をされることなく、地球を蝕むことがスムーズにいっている。気持ち悪いくらいにだ。

 

「他のお嬢たちもどっかで蝕んでるんっすよね?」

 

「もちろん。アタシから離れた場所でね」

 

「さすがお嬢たちっすね~! 特にクルシーナ嬢、ドクルン嬢、イタイノン嬢の3人は地球のあらゆるな街を自分たちのモノにしたことがあるって聞くっすけど、それを成し遂げただけあるっすね~!」

 

「おだてたって何も出ないわよ」

 

クルシーナはバテテモーダの讃えるような言葉に、特に反応することなく適当に返す。

 

「それにしても、お嬢はあのピンクのプリキュアに執着してるんっすか~?」

 

「・・・は?」

 

バテテモーダが調子付いて言ったその言葉に、クルシーナは不敵な笑みから表情を消す。こいつが言ったのはおそらくキュアグレースのことだろう。

 

「なんか~、あのときにお嬢はあいつに近づいていったっすよね~? なんか気があるんじゃないかってーーーー」

 

「ッッ!!」

 

クルシーナは振り向かずに右手を向けると、暗いピンク色の光弾を放つ。

 

ドカァン!!

 

「ひぃっ!!?」

 

光弾は自分の顔を掠め、後ろにあった木へと当たる。木はバキバキバキと音を立てながら、根元から地面へと倒れた。バテテモーダはその光景に冷や汗を垂らす。

 

「・・・それ以上言ったら潰すぞコラ」

 

クルシーナが今までにないほどの冷たい声を放つ。まるで触れてはいけないことがあるかのように、その表情は怒りの表情を浮かべていた。

 

「ご、ごめんっす! 自分、触れられたくないって知らなくて・・・」

 

「わかったら今後、調子付いた発言は慎めよ。お前なんかいつでも消せるんだからな」

 

バテテモーダは慌てたように謝ると、クルシーナは攻撃的な口調でそう言うと彼から離れていく。

 

「お、お嬢? どこ行くんっすか?」

 

「メガビョーゲンの様子を見に行くに決まってんだろ」

 

クルシーナはいつの間にか移動をしているメガビョーゲンの様子を見に行こうと歩いていく。こんな奴に構っているとイライラするだけだ。

 

「メガァ!! メガァ!!! メガビョーゲン!!!!」

 

メガビョーゲンは山中へと降りてきていて、口から病気を吐き出しながら、布のような両腕を振り回してあらゆる場所を叩きつけ、暴れまわっている。山を順調に蝕んでいっており、この調子ならここ一帯を蝕むのも時間の問題だろう。

 

「特に問題はなさそうね。あいつらも来ないみたいだし」

 

クルシーナは不敵な笑みを浮かべる。プリキュアの姿はどこにもないし、それどころか人っ子一人見当たらない。しかも今回のメガビョーゲンは、素体がいいからか効率良く蝕んでいる。

 

これならここ一帯を、それどころかこの憎たらしい街を、自分たちのものにすることができるかもしれない。

 

「おぉ~! 結構大きくなったんじゃないっすか~? 本当に順調っすね~!!」

 

バテテモーダがキラキラとさせながら感嘆の声を上げる。

 

「ふわぁ~、そうね」

 

クルシーナはあくびをしながら言う。

 

「それにしても、プリキュアちゃんたち遅いっすね~。いつもだったらスッと来るのに」

 

「呑気に寝てんじゃないの? お手当てのことなんか考えないくらいにさ」

 

クルシーナは適当に答えるとメガビョーゲンの様子が伺えるような適当な木の上へと飛び乗り、枝の奥で木に寄りかかるように寝そべる。

 

「お嬢?」

 

「アタシちょっと一眠りするから、アンタはメガビョーゲンの様子を見てて」

 

「それってもしかして、自分へのお願いっすか?」

 

「そうよ、お願いお願い」

 

クルシーナは見届けるのが面倒臭くて適当に押し付けようとしているだけなのだが、彼女たちのことを好意的に見れるバテテモーダは目をキラキラとさせる。

 

「了解っす~!! このバテテモーダ、快く惹きつけるっす~!!・・・自分はお嬢たちに並びたいっすから」

 

「? 最後なんか言った?」

 

「いえいえ! なんでもないっす!! 行ってきまーす!!」

 

バテテモーダはごまかすとメガビョーゲンの方へと走っていく。クルシーナは彼の後ろ姿を見つめていた。

 

「・・・嬉しい誤算もあるものね」

 

正直、雑用を押し付けたという認識しかないのだが、それでも嬉々してやろうとするバテテモーダにクルシーナは微笑を浮かべるのであった。

 

一方、緑が豊かな公園にいるドクルンは・・・・・・。

 

「あの3人、本当に来ないんですね・・・」

 

手に本を持ちながら、誰もいない虚空を見つめている。クルシーナの言う通り、あの子犬のヒーリングアニマルは本当に体調が悪くて、プリキュアたちは気づいていないということだろう。

 

「メガァ・・・!!!」

 

野太いメガビョーゲンの声が聞こえてきたかと思うと、赤い光線が木へと放たれ氷漬けになっていく。さらに氷漬けになったところから赤い煙が放出され、大気までもが赤く蝕まれていく。

 

「フフフ・・・」

 

ドクルンはメガビョーゲンが順調に蝕んでいっていることに不敵な笑みを浮かべた。

 

そして、すこやか市の中学校にいるイタイノンは・・・・・・。

 

「キヒヒ・・・いいのいいの、順調なの・・・!!」

 

サディスティックな笑みを浮かべながらイタイノンが見下ろしているのは、校庭やテニスコート、緑色のネットなどが赤い靄で蝕まれていく光景だ。

 

いつもならこの街に住むプリキュアたちが邪魔をしに来るはずなのだが、今回はなぜだか来る気配が全くない。それどころか本当に人っ子一人いないわけだが、これはこれでいい。人間たちの悲鳴や恐怖を味わえないのは残念だが、ここ一帯がやがて自分のものになると思うと笑いが止まらなくなる。

 

「メガビョー!!!」

 

メガビョーゲンの声が聞こえてきたかと思うと、ポポポという音が聞こえてきたかと思えば、隣の校舎に電気のようなバチバチとした音が聞こえて赤く蝕まれていく。

 

「あいつら、本当に来ない気なの・・・?」

 

イタイノンは無表情で虚空を見つめる。やっぱり人間の悲鳴を味わえないのはなんとなく物足りない気がするが・・・。

 

「・・・まあ、別にいいの」

 

イタイノンはそっぽを向きながら言うとメガビョーゲンの方を見つめる。それよりも地球の侵略活動をすることが優先事項だ。明るくなる前に少しでも多く蝕んでおかなければ。

 

「キヒヒ・・・」

 

メガビョーゲンが順調に蝕んでいっていることに対し、イタイノンは不敵な笑みを浮かべた。

 

一方、ヘバリーヌはすこやか市の街の外れへとやってきていた。

 

「なんか地味な建物だねぇ♪」

 

古めかしく汚れたような大きな建物を見下ろしながら言う。ヘバリーヌは屋根の上へと飛び降りると、建物を正面から見る。

 

「こんなところに不快なものがあるのかなぁ~? でも、ピリピリとするんだよねぇ♪」

 

ヘバリーヌはあまり人気のない場所で、不快な気配を辿りながらここへとやってきた。それがこの何十年も使われているような建物の前へと来たのだが、ここに生き生きしたものがあるとはとても思えない。

 

でも、体がピリピリとするのだ。それも、痛くて気持ちいいくらいに。

 

ヘバリーヌは建物の中へと入っていこうとするが、扉には鍵がかかっていた。南京錠で止められているだけの扉の鍵。しかし、こんなものはキングビョーゲンの娘の彼女にとってはなんてこともなかった。

 

「ほっ!」

 

ヘバリーヌは南京錠を足の蹴りで呆気なく破壊し、扉を開けると中へと入っていく。中はコンベアみたいなものがあれば、作業場のようなところもあるという場所だった。

 

「んん~♪ 肌がピリピリするぅ~、気持ちいいなぁ~♪」

 

ここの空気がヘバリーヌにとっては肌に痛みを感じるらしく、彼女は余計に気持ち良さを覚えて体を悶えさせる。

 

ふとそんな快感を得ていると、空気がピリピリとしている原因のあるものを見つけた。それはこの建物の角に置かれていて、空気を放出するような音を発しながら動いている。

 

「う~ん♪ これかなぁ~、ヘバリーヌちゃんを気持ちよ~くしてくれるものは♪」

 

ヘバリーヌは頬を赤らめながらも、その機械に近づいていく。しかし、近づいていくことに痛みを感じるぐらいにピリピリとしてきて、ヘバリーヌにとっては気持ちよさが増していく。

 

「あぁん♪ 気持ちいい~、最高だねぇ~♪♪♪」

 

そうやって悶えていたヘバリーヌだが、ふと何かを思いついた。

 

「こんなに気持ちよくなれるってことは~、病気にしちゃえばもっともーっと気持ちいいよね~♪」

 

ヘバリーヌは妖艶な笑みを浮かべながら、その機械を素体にメガビョーゲンを作り出すことを決めた。

 

街の人たちが眠りについている間、活動を続けているキングビョーゲンの娘たち。このことがプリキュアたちを未曾有の危機に追い込むとは、まだ気づいていない彼女たちは思ってもいないだろう・・・・・・。

 

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