ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
一夜が明けた、天気の良いすこやか市。その自然が豊かなすこやか山に一人の男性がハイキングへとやってきていた。
「ふぅ~、この季節のすこやか山は最高だなぁ~♪」
気分良く山へと登っていく男性。自然も豊かだし、気温もポカポカで絶好の登山日和。
しかし、途中で何やら赤い靄がかかっているのを見て、ふと足を止める。山の地面に赤い靄がこちらに向かって広がっているのが見える。
男性が山の頂上を見上げてみると・・・・・・。
「ひっ!?」
思わず悲鳴をあげる男性。彼が見たものは、山の麓の途中から頂上までもに赤い靄がかかっている光景。そして、山の頂上にいたのは・・・・・・。
「メガァ、ビョーゲン!!!!」
昨夜から山の中を暴れまわっていた怪物ーーーーメガビョーゲンの姿だった。
一方、すこやか市の街では、二人の女子中学生が制服姿で中学校へと向かっていた。
「休日なのに部活があるの・・・?」
「そんなこと言わないの。大会に向けて練習しないとね」
今日は休日、中学校はお休みの日だが、彼女たちは部活に所属していて、近々大会もある。一人はせっかくの休みなのに学校に来ることを不満に思っているようだが、もう一人の少女は先輩のようで彼女を叱咤しようとしていた。
「えっ・・・?」
もう直ぐ中学校にたどり着く、そんな少女は道路の赤いものを見つけると疑問の声をあげるとふと足を止める。よく見ると歩いていた時は何ともなかったのに、中学校の近くのこの辺は空の色がおかしい・・・・・・。
中学校へと走っていくと、そこにはとても部活ができるとは思えない光景が広がっていた。
「な、何・・・これ・・・?」
戸惑いの声をあげる少女たち。彼女たちが見たものは、校庭全体が赤い靄に染められており、校舎の方を見れば壁も同じように汚されている。
ドシン!! ドシン!! ドシン!!
「「!?」」
地面を揺らすような足音が聞こえてくる。彼女たちが校舎の方を見てみると、巨大な影が・・・・・・。
「ひぃっ!?」
校舎の脇から姿を現したのは、モニターのような顔にパラボラアンテナのようなものが付き、体がアンテナと同じような色の骨組みで構成されたメガビョーゲンの姿だった。
「メガァ!!!!」
「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
メガビョーゲンの叫び声と共に、少女たちは悲鳴をあげて逃げ出していく。
「キヒヒヒ・・・」
イタイノンは学校の屋上からそれを見ると、ようやく聞くことができたと加虐的な笑みを浮かべた。
二体のメガビョーゲンが暴れている頃、緑が豊かな公園では・・・・・・。
「フフフ・・・いいわよ、本当に順調ね」
ドクルンは一面が氷と霧のような白い煙の世界と化している公園を見下ろしながら、不敵な笑みを浮かべる。
「メガァ・・・!!!!」
鋭利なフォルムをした巨大な氷の怪物のようなメガビョーゲンは、口から赤い病気を吐き出して公園を氷漬けにしながら蝕む。さらにはその氷漬けになったところから白い煙が放出されて、大気までもが蝕まれていく。
ドクルンは誰もいない虚空を見つめる。
「プリキュアたち、本当に来ないんですねぇ」
プリキュアたちが全く来ないことに対し、不敵な笑みを浮かべるのであった。
プルルル・・・プルルル・・・。
その頃、『旅館 沢泉』に一本の電話が鳴った。若女将の沢泉まおが受話器を取ると、それはとても恐ろしい凶報だった。
「まあ! すこやか山にあの怪物が・・・!? はい、わかりました」
まおは驚きを隠さない。すこやか市で度々現れる怪物がすこやか山に現れたという、すこやか市の街の観光協会からの電話だった。
「!?」
偶然そこを通りかかったちゆは足を止めて、驚いたような表情を浮かべていた。
あの怪物って、まさか・・・・・・!?
「みなさん、お客様の安全確認を」
「「はい!!」」
まおは従業員に指示を出して、共に旅館に泊まっている客への安全確認へと向かっていく。
それを尻目にちゆは肩に乗っているペギタンに頷くと、のどかの家に向かうべく駆け出していく。
一方、自らの家である『平光アニマルクリニック』から外出していたひなたはなんとなく散歩へと繰り出していた。
「ねえ、噂で聞いた・・・・・・?」
「うんうん、学校に怪物が現れたんだって・・・」
二人の、自分たちと同じ年頃の少女たちが、不安そうな顔を浮かべながら話し込んでいた。
「しかも、公園がなんか謎の霧で覆われているらしいじゃん? 携帯で見た?」
「見た見た! なんか不気味だよね~・・・」
「怖いなぁ~・・・・・・」
怪物・・・? 謎の霧・・・? 携帯で見た・・・?
驚いたような顔をしていたひなたは自分のスマホを取り出すと、何かを調べ始める。もしかしたら、若い子たちが何かを載せているかもしれない。
SNSを開き、『すこやか市 怪物』と検索すると、そこに載っていた二枚の写真にはとんでもないものが写っていた。
「!? 嘘・・・!?」
「ニャ!?」
ひなたは絶句したような表情になり、肩を乗り出してスマホを覗いたニャトランも驚いたような顔をする。
1枚目に写っていたのは、中学校でどこか見たことのある不健康そうな怪物ーーーー要するにメガビョーゲンが暴れている写真、そして2枚目には白い煙が立ち込めていて何も見えていない写真の中に、うっすらとメガビョーゲンらしき顔が写っているのが見えた。
これはヤバいかもしれない・・・早くのどかっちたちに知らせないと・・・!!
ひなたはのどかの家に大急ぎで駆け出していく。
のどかの家へと集まったプリキュア3人。まずはちゆが自分の旅館で知らされた情報を彼女に話した。
「すこやか山にメガビョーゲンが!?」
「っ!!」
ちゆからの情報を聞き、のどかは驚いていたが、ラテはそれ以上にショックを受けていた。自分がメガビョーゲンの出現を感知できていなかったからだ。
「それだけじゃなくて・・・これ見て!!」
ひなたはスマホを取り出して、その画面に映し出している写真を二人に見せる。それは見間違えるはずもない、明らかなメガビョーゲンの姿だった。
「私たちの中学校と、公園にも・・・!?」
「まさか・・・!!」
プリキュアたちはまさかと思い、ちゆが報告したものを含めて出現したメガビョーゲンを数えてみる。
「すこやか山に・・・公園に・・・ひなたたちの中学校・・・えっと、つまりはよぉ・・・!?」
「メガビョーゲンが同時に3体現れたってことペエ!!」
「ラビ!!??」
なんということだ。以前のガラス美術館があった町ほどではないが、このすこやか市にメガビョーゲンが3体現れたということだ。しかも、のどかのこの家から遠いところにあるすこやか山、さらには緑がいっぱいの公園、そして自分たちが通う中学校、と分散したかのように出現している。
さらに問題なのは、そのメガビョーゲンたちがいつから出現したのかわからないということ。大きく成長していれば、またあの時のように歯が立たずに苦戦するかもしれない。
「ラテ様の体調が悪いと感知できないんだな・・・盲点だったぜ・・・」
ニャトランの悔しさを感じるその言葉に、のどかはハッとしてラテの様子を見る。ラテは自分の体調不良のせいで、メガビョーゲンを、地球の苦しみを感知できなかったことにショックを受け、呆然としていた。
歩み寄るのどかにラテは自分を悔いるかのように、目をギュッとつむっていた。自分のせいでメガビョーゲンの出現を、ビョーゲンズの活動を許すなんて、悔やむことばかりだ。自分が体調さえ悪くなっていなければ・・・。
そんなラテにのどかは優しく彼女の頭を撫でる。
「大丈夫。ラテのせいじゃないよ」
のどかはこんな自分にも優しくしてくれる。それなのに自分は何もできずにお手当ても任せっきりで、ラテは心が晴れる気がしなかった。
「今は、急いでお手当てに向かうしかないラビ」
「うん! 何体に増えようと私たちはお手当てを続けるだけだよ」
ラビリンの言葉にのどかは頷く。
「でも、どのメガビョーゲンから向かう・・・?」
「そうだね・・・なんせ3体もいるし」
「ここからだと学校の方が近いはず。そこから確実に浄化をしていきましょう!」
「いつ出現したかもわからない分、メガビョーゲンが大きくなっているかもしれないラビ! ここは気を引き締めていくラビ!!」
まずは自分たちの通う中学校で暴れているメガビョーゲンをどうにかすることにしたプリキュアたち。皆がそう思う中、一つ問題が・・・・・・。
「ラテ様はどうするペエ?」
「今回、一緒に行くのは危険だわ」
「だよね・・・」
ちゆはラテをここに置いておくことを提案する。ラテはいまだに体調不良で、まともに動けるような状態でもない。メガビョーゲンが3体も現れたという状況の中、彼女を戦いの場にいさせるのは危険だと判断した。
しかし、ラテはベッドから起き上がるとのどかの服をクイクイと引っ張る。
「あ・・・」
のどかがそれに気づいてラテを見ると、彼女の顔は決意を秘めたような表情をしていた。聴診器で聞かなくてもわかる。これは、私も連れて行って欲しいと言っているに違いない。
でも・・・と、連れていくことをためらうのどかだったが、ラテは彼女の顔を見つめたまま、その表情を一つ変えない。まるで、もう覚悟は決まっているかのよう。
「・・・わかった。一緒に行こう」
ラテの意思を察したのどかは彼女を連れていくことにした。引き下がる様子のない彼女の決意を汲み取ったのだ。立場は違えども、彼女もラビリンと同じヒーリングアニマル、プリキュアたちがお手当てをしようとしているのに、自分だけこんなところで寝ているわけにもいかないのだろう。
のどかたちはまずこの近くにある、自分たちが通う中学校へと向かうことにした。
「キヒヒヒヒヒヒ・・・もうすぐここ一帯を蝕み終わるの。この調子でどんどん病気を拡大していくの・・・!」
すこやか中学校では、メガビョーゲンが暴れまわっており、その様子を見たイタイノンが笑い声をあげる。
すでに学校全体のほとんどが病気へと蝕まれており、校庭に至ってはそのほとんどが赤い靄に包まれている状態だ。校舎も同じように大半が赤い靄へと蝕まれており、ほとんど見る影もない状態だ。
あとはこの学校の旧校舎を蝕んでしまえば、ここ一帯の蝕む箇所はなくなる。つまりは、病気で蝕むことが完了するのだ。本命ではないとはいえ、順調な様子だ。
「メガビョーゲン、残りも蝕んでやるの」
「メガー!!」
校舎の屋上にいるイタイノンの指示を受けたメガビョーゲンは最後に残った校舎を蝕むべく、ノッシノッシと移動していく。
そんな光景をのどかたちは走って向かいながら、メガビョーゲンが移動していくのを見ていた。
「いたわよ! メガビョーゲン!!」
「うえぇ!? もうあんなに蝕まれてるよ!?」
のどかたちから見れば、メガビョーゲンは以前のダルイゼンのメガビョーゲンほどではないが大きく成長しており、学校一帯もほとんどが赤に染められていた。
「急いで浄化しないと!! ラビリン!!」
「ラビ!!」
のどかたちはメガビョーゲンを食い止めるべく、プリキュアへと変身する。
「「「スタート!」」」
「「「プリキュア、オペレーション!!」」」
「エレメントレベル、上昇ラビ!!」
「エレメントレベル、上昇ペエ!!」
「エレメントレベル、上昇ニャ!!」
「「「キュアタッチ!!」」」
ラビリン、ペギタン、ニャトランがステッキの中に入ると、のどか、ちゆ、ひなたはそれぞれ花のエレメントボトル、水のエレメントボトル、光のエレメントボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。
そして、肉球にタッチすると、花、水、星をイメージとしたエネルギーが放出され、白衣のような形を形成され、それを身にまといピンク、水色、黄色を基調とした衣装へと変わっていく。
そして、髪型もそれぞれをイメージをしたようなものへと変わり、のどかはピンク、ちゆは水色、ひなたは黄色へと変化する。
キュン!
「「重なる二つの花!」」
「キュアグレース!」
「ラビ!」
のどかは花のプリキュア、キュアグレースに変身。
キュン!
「「交わる二つの流れ!」」
「キュアフォンテーヌ!」
「ペエ!」
ちゆは水のプリキュア、キュアフォンテーヌに変身。
キュン!
「「溶け合う二つの光!」」
「キュアスパークル!」
「ニャ!」
ひなたは光のプリキュア、キュアスパークルに変身した。
「「「地球をお手当て!!」」」
「「「ヒーリングっど♥プリキュア!!」」」
3人は変身を終えて、すぐにメガビョーゲンへと駆け出す。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
3人は同時に飛び上がると、メガビョーゲンの背後に向かってキックを繰り出す。
「メガー!?」
気づけなかったメガビョーゲンはそのまま肩にキックを食らい、前へと倒される。
「プリキュア、随分と遅かったの。お前らがちんたら眠っている間にこんなに蝕んだの」
イタイノンはプリキュア3人を見下ろしながら、不敵な笑みを浮かべる。
「もうこれ以上はさせないし!!」
「あなたたちの思い通りになんかさせないわ!!」
スパークルとフォンテーヌは反論をするも、イタイノンは笑みを崩さないままだ。
とりあえず、あいつらはクルシーナの作戦通りに、自分たちの陽動にはまっている。あいつらの、特にあのマゼンダ色の髪の少女の家から、ここまでは近いはず。だから、最初に浄化に来るだろうと踏んでいたのだ。
あいつらが来ようが来まいが、ここ一帯を完全に蝕んでしまえばそれで終わりなので変わらないが、こうも作戦に引っ掛かるとは・・・。
もう、私たちの思い通りになっている・・・。そういうことだ。
「ふん。メガビョーゲン、あいつらを叩き潰すの」
「メガー!!」
メガビョーゲンは起き上がると振り向きざまに口から赤い光線を放つ。プリキュアたちは同時に飛んでその光線を交わす。
「「「はぁぁぁ!!」」」
3人はそれぞれの色の光線をメガビョーゲンに向かって放つ。
「メガビョー!!!!」
メガビョーゲンは頭部、両腕についているアンテナから同時に赤黒い光線を放つ。プリキュアたちが放っている光線は呆気なく押されていき・・・・・・。
「「「きゃあぁぁ!!」」」
赤黒い光線は3人に直撃し、地面へと落とされる。
「やっぱり浄化が遅れた分、成長して強くなってる・・・!」
フォンテーヌはメガビョーゲンの力が強いこということを感じせざるを得ない。
「どうにかして動きを止めないと・・・!」
グレースはどうにかして方法を考えようとする。大きくなっているメガビョーゲンはお手当てに苦戦するほどにタチが悪い。どうにかして大人しくさせないと浄化することもできない。
「あれってアンテナだよね・・・? もしかしたら!! 雷のエレメント!!」
スパークルが何かを思いつき、ステッキに雷のエレメントボトルをはめ込む。アンテナは電気で動いているはずだから、そこに強烈な電気を浴びせてしまえば、メガビョーゲンはショートして動きを止めるはずだ。
しかし、そんな見え透いた行動を怪物を生み出した本人が見逃すはずもなかった。
「そうはさせない、の!!」
「!? あぁぁぁ!!」
イタイノンはスパークルの側に現れると、体に帯電させて右手を突き出すように構え、そこから雷撃を放つ。不意を突かれたスパークルは電撃を浴びて、吹き飛ばされてしまう。
「「スパークル!!」」
「メーガビョー!!」
ポポポポポポ・・・・・・。
「!?」
スパークルに気を取られた隙をついて、メガビョーゲンが右手のアンテナから電波のようなものをグレースに向かって放つ。
「うっ・・・!!」
グレースは避ける動作の間もなく、メガビョーゲンの音波をステッキで身を守るように構え、音波は彼女へと当たる。
「・・・あれ?」
グレースは疑問を抱く。音波は確かに自分に当たった。でも、体はなんともない。特に痛みを感じるわけでもないし、体が痛いというわけでもない。
なんでもない攻撃だったのか・・・?
しかし、その音波の恐ろしさを知るのはここからだった。グレースは構えた防御を解こうとしたが・・・・・・。
「あ、あれ? か、体が、動か、ない・・・?」
防御の構えを取ったまま、解こうとしても解くことができず、それどころか体がまるで固まってしまったかのように動かなくなってしまったのだ。
「さっきの音波を浴びたせいペエ・・・!!」
「大変!! 早くなんとかしないと・・・!!」
フォンテーヌは飛び出して行こうとするも、その前にメガビョーゲンがある行動を起こす。
「メガビョー!!!! メガ!!」
メガビョーゲンが何やら頭部のアンテナから何かを吸収し始めた。そして、腕についている片方のアンテナをグレースへと向ける。すると・・・・・・。
「え? あ、あれ? ちょ、ちょっと!?」
突然グレースの構えた防御が解かれて、彼女はフォンテーヌの方へと向き直る。
「グレース?」
動かないはずのグレースの体が突然動いたことに違和感を覚えるフォンテーヌ。そして、それを考える余地もなく・・・・・・。
「う、うわぁ!? ちょちょちょ、ちょっとぉぉぉぉ!?」
グレースはフォンテーヌの方へと駆け出していくと、なんと彼女に向かってパンチを繰り出してきたのだ。
「グレース、どうしたの!? なんで私を攻撃するの!?」
「グレース!! どうしたラビ!?」
「わ、わからな~い!! 体が勝手に~!!!」
フォンテーヌはグレースが繰り出してくる拳を避けながらも驚きを隠さない。しかし、グレースが叫ぶ通り、これはグレース自身の意思ではない。グレースはステゴロをやりたくてフォンテーヌに襲いかかっているわけではないのだ。
「もしかして、さっきの電波を浴びたせいペエ・・・!?」
「メガビョーゲンに操られてるの・・・!?」
先ほどグレースが浴びせられた電波、そしてメガビョーゲンが頭部に吸収していた電波、それを考えれば他人を操ることができるのも頷けるだろう。それがわかればメガビョーゲンをどうにかしないといけないが・・・・・・。
「!? あっ!?」
フォンテーヌは拳を避けているうちに、メガビョーゲンに蝕まれて傷んでいた赤い靄に足を取られて尻餅をついてしまう。
グレースはそれを見計らったかのようにジャンプして飛び上がる。これも彼女の意思ではない。
「フォンテーヌ、避けて!!!」
「!!」
フォンテーヌはなんとか立ち上がると飛んで、グレースの蹴りを避ける。
「メガー!!!」
そこへグレースを操っていて不動のメガビョーゲンが、フォンテーヌの方に顔を向けると口から光線を放つ。
「くっ!!」
「ぷにシールド!!」
ステッキから肉球型のシールドを展開し、赤い光線を防ぐ。
「フォンテーヌ!!」
「!? きゃあぁ!!!」
「ご、ごめん!! フォンテーヌ!!」
さらにその隙をついてグレースがフォンテーヌの横へと飛び降りると、彼女に向かって蹴りを繰り出した。もちろん、これは彼女の意思ではないため、グレースは謝罪の言葉を放つも、頭を下げることはできなかった。
それどころか、グレースはさらなる追撃をフォンテーヌに向かって加えさせられようとしていた。
一方、スパークルはイタイノンと交戦中だった。
「ふっ!!」
「くぅ、うぅ・・・!!」
光速で動きながら繰り出してくるイタイノンの拳をなんとかステッキで防いでいるものの、スパークルの表情は苦しそうだ。
「どうしたの? この前みたいなキレのいい動きはどこにいったの?」
「くっ・・・!」
イタイノンが不敵な笑みを浮かべながら、拳をこちらへと押しのけようとしてくる。
「きゃあぁ!!」
聞こえてくるフォンテーヌの悲鳴。思わずそちらを振り向くとフォンテーヌが転がされていて、そこにグレースがステッキを構えながら迫っていた。
「グレース!? なんで!? なんで、グレースがフォンテーヌを・・・!?」
スパークルは信じられないという表情で二人を見る。グレースが何の理由もなく、フォンテーヌを襲うわけがない。
「あのメガビョーゲンの仕業か・・・!?」
ニャトランは状況を見ただけで、あのアンテナ型のメガビョーゲンが何かグレースにしたのだろうと予測する。
「ふん!」
「うっ・・・!!」
「よそ見をしてる場合なの・・・?」
その不意を突くかのようにイタイノンが拳を繰り出す。スパークルはなんとか押し返すも、その後もイタイノンは拳と足を連続で繰り出していき、それを防ぎ交わすのが精一杯だ。
それでも何とか掻い潜ってパンチを繰り出すスパークルだが・・・・・・。
シュイーン!!
「うわっ・・・?」
「ふっ!!」
「あぁ!?」
イタイノンはその場で姿を消し、スパークルの横に現れたかと思うとパンチを当て損ねてよろけた彼女に蹴りを食らわせて吹き飛ばす。
スパークルは地面に転がりつつも、何とか倒れずに体勢を整える。
バチバチバチバチ・・・!!!
そこへイタイノンは体を帯電させると、前かがみになってからのけぞらせた後、口から黒い電気のレーザーを放つ。
「ぷにシールド!!」
「うっ・・・!!」
肉球型のシールドを展開し、苦しい表情をしつつも何とかレーザーを防ぐ。しかし、消滅したレーザーの中からイタイノンが姿を現した。
「!?」
「ふん!!」
「きゃあぁ!!!」
一瞬あっけにとられたスパークルに、イタイノンは回し蹴りを食らわせ、空中へと吹き飛ばされるスパークル。
シュイーン!
「ふっ!!」
その先に瞬間移動をしたイタイノンが片方の手に電撃をまとわせた白いオーラをまとわせるとそれをスパークルの腹部に押し当ててゼロ距離で放った。
ドカァァァン!!!!
大きな爆発が起こり、煙が晴れたときにはスパークルが地面に倒れ伏していた。
「う、ぅぅ・・・!」
「もう終わりなの? 今日はなんだか脆いの」
スパークルは体を起こし、こちらを見つめたまま近づいてこないイタイノンを見つめる。
「うぅ・・・!」
「フォンテーヌ、逃げてぇ・・・!!」
倒れるフォンテーヌにゆっくりと近づいていくグレース。構える彼女のステッキからピンク色の光線が放たれようとしていた。
イタイノンと二人、どちらも見つめるスパークル。どうにかして二人を助ける方法はないのか・・・?
しかし、こんなところで考えていたらどちらとも対応できない。臨機応変にどうにかしなければ・・・・・・。
スパークルはそう思うと、傷ついた体を起こして立ち上がる。
「あたしは・・・お手当てを、諦めないよ!!」
スパークルはまずメガビョーゲンにコントロールを奪われているグレースを止めようと駆け出していこうとする。
「させないの・・・!!」
イタイノンは体を帯電させると、再び片手を突き出して電撃を放つ。
「!!」
「ぷにシールド!!」
スパークルは気づいた直後、ステッキから肉球型のシールドを放って電撃を防ぐ。その隙にグレースの元へと駆け出していく。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あっ・・・!!」
フォンテーヌへと迫ろうとしたグレースに飛びかかり、ステッキから放たれた光線はフォンテーヌの顔スレスレを通り過ぎて地面に着弾する。
スパークルはグレースをうつ伏せに倒し、抑えつける。
「ご、ごめん!! グレース!!」
「う、ううん・・・ありがとう・・・」
仲間を地面に押し付けているという端から見れば酷いことをしていることにスパークルは謝るも、グレースはフォンテーヌをこれ以上傷つけなくてよかったと安堵の声を漏らす。でも、まだメガビョーゲンに体のコントロールは奪われたままだ。
「メ、メガ!?」
メガビョーゲンはグレースを動かせなくなったことに戸惑い、振りほどかせようとするも、スパークルが必死に抑え込んでいるために動かすことができない。
「フォンテーヌ、今のうちに!!」
スパークルの叫びにフォンテーヌは頷くと立ち上がり、メガビョーゲンへと向かっていく。
「メガー!!!」
メガビョーゲンはそうはさせないと言わんばかりに、両腕のアンテナから赤黒い光線を放つ。
「ふっ!! 氷のエレメント!!」
フォンテーヌは飛び上がってかわすと、ステッキに氷のエレメントボトルをセットする。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ステッキから氷を纏った青い色の光線が放たれる。
「メ、メガ、ビョー・・・ゲン・・・?」
頭部のアンテナに青い光線が直撃し、メガビョーゲンは頭から両腕のアンテナの部分までが氷漬けになっていく。
「うりゃぁぁぁぁ!!!!」
「え、え、ちょっ、スパークル!?」
スパークルは大人しくなったグレースの両足を掴むと、ジャイアントスイングをする。
「おぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
スパークルはそのままグレースを投げ飛ばした。悲鳴を上げていたグレースだが、その体はメガビョーゲンへと迫っていく。
「は!? ッ!!」
ドォーン!! パリンッ!!!!!!
「メガビョーゲン・・・!!??」
メガビョーゲンに自分が当たるということを察すると、覚悟を決めたように目を瞑る。そして、氷漬けの顔面にロケット頭突きを食らわしたような形になり、メガビョーゲンは吹き飛んで地面へと倒れる。
「ふわぁ~・・・・・・」
固いメガビョーゲンに思いっきり頭に打ち付けたグレースはそのまま目をグルグルと回しながら、地面へと落下していく。
「グレース!!」
フォンテーヌは落下していくグレースを寸前で受け止め、彼女を抱きとめる。
「グレース、本当にごめん!! 思い切りやっちゃったけど大丈夫!?」
「ふぇ・・・は、はいぃ・・・だ、大丈夫ですぅ・・・」
目を回してはいたが、グレースはなんとか無事な様子。
「それよりも、メガビョーゲンを・・・・・・」
「ああ、そうだね!!」
キュン!
「「キュアスキャン!!」」
スパークルは肉球を一回タッチすると、ステッキをグレースと同じように目を回して倒れているメガビョーゲンに向ける。
ニャトランの目が光り、メガビョーゲンの中にいるエレメントさんを見つける。
「あそこだ!! 雷のエレメントさん!!」
エレメントさんは、頭部のアンテナ部分の先にいる模様。
「二人とも行こう!!」
「うん!!」
「ええ!!」
3人はお互いに頷き合うと、それぞれのヒーリングステッキに光のエレメントボトル、水のエレメントボトル、花のエレメントボトルをそれぞれはめ込む。
「「「エレメントチャージ!!」」」
そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。
「「「ヒーリングゲージ上昇!!」」」
ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。
「プリキュア!ヒーリングフラッシュ!!」
「プリキュア!ヒーリングストリーム!!」
「プリキュア!ヒーリングフラワー!!」
3人はそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、黄色の光線、青色の光線、ピンク色の光線を同時に放つ。光線は螺旋状になって混ざっていった後、メガビョーゲンに直撃した。
その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、6本の手が雷のエレメントさんを優しく包み込む。
菱形状に、水型状に、花状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんを外へと出す。
「ヒーリングッバイ・・・」
メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。
「「「「「「お大事に」」」」」」
雷のエレメントさんは、学校に設置されているパラボラアンテナの中へと戻り、蝕んだ箇所が元に戻っていく。
「・・・・・・ふん。まあ、いいの。囮としての役割はもう果たしたの」
イタイノンは特に気にする様子もない、満足したような様子でその場から姿を消した。
中学校でのメガビョーゲンの脅威が去った後、スパークルは校舎の屋上にあるパラボラアンテナに聴診器を当てる。
「エレメントさん、大丈夫?」
『大丈夫です! 助けてくださってありがとうございます!』
雷のエレメントさんが無事なことを聞いたプリキュアたちは安堵の声を漏らす。
『他の私の仲間も、どうか助けてあげてください!』
「任せておいて!!」
雷のエレメントさんは、スパークルの気合の入った言葉を聞くと、パラボラアンテナの中に戻っていった。
「さあ、行こう!!」
「残りはあと2体だ!」
プリキュアたちは頷くと、この学校から近い緑が溢れる公園へと向かっていく。
「スパークル」
「何? グレース」
「さっき私を止めてくれたことなんだけど・・・」
「あっ・・・ごめん、あの時は本当にごめん!! とっさにあれしか思いつかなくって・・・」
スパークルはグレースに行った仕打ちを謝罪した。止めるためとはいえ、仲間に向かってあんなことをしてしまうなんて・・・・・・。
しかし、グレースは怒りたいのではなく、むしろ笑顔を浮かべていた。
「ううん、ありがとう。スパークルがああしてくれなかったら、私、友達を傷つけたかもしれなかったから」
「グレース・・・」
「私がまたああなったら、また止めてね」
スパークルはグレースの言葉に顔を真っ赤にさせると、頬を照れくさそうに掻く。
「・・・次は、ちゃんと考えるから・・・あれはちょっとね・・・」
グレースとスパークルが絆を強くしたところで、3人は急いで公園へと向かった。
一方、メガビョーゲンが暴れているすこやか山では・・・・・・。
「ん~・・・ふわぁ~・・・」
昨夜から眠っていたクルシーナが目を覚ましてあくびをする。両腕を上に伸ばして伸びをしようとしたところ・・・・・・。
「? うわぁっ!? っと!」
思わず木から転げ落ちそうになったクルシーナはなんとか踏ん張ると、彼女の視界に広がっていたのはかなり凄惨な光景だった。
「へぇ・・・かなり蝕んできたんじゃない?」
クルシーナは自分のメガビョーゲンがしっかり仕事をしていることに、不敵な笑みを浮かべる。
「お嬢!!!!」
「ん?」
声がする方に振り向いてみると、バテテモーダが見上げていた。
「順調!! 好調!! 快調っすよ!! お嬢が眠っている間にメガビョーゲンはかなり蝕んだようでっせ~!!」
「見りゃわかるわよ、そんなの」
バテテモーダの無駄に明るい声に、クルシーナは頭を掻きながら適当に返す。
「プリキュアどもは?」
「まだ、来てないっす。恐れをなして逃げ出したんじゃないっすかぁ~?」
「・・・あいつら本当に来ないつもり?」
バテテモーダの報告を耳に入れて、独り言のようにボソリと呟くクルシーナ。
そういう反応をする彼女だが、来ない理由を本当はわかっている。ドクルンとイタイノンにもメガビョーゲンを生み出してもらって、その対処に回っているからだ。だが、今回はアタシたち3人はあくまでも陽動、プリキュアたちが苦戦している間にヘバリーヌが地道に蝕んで、このすこやか市を私たちのものにしてやろうという作戦なのだ。
アタシが確認する限りでは、メガビョーゲンの反応は昨夜まではここを除けば3体あったが、今1体反応が消えて、現在は2体になっている。おそらく誰かのメガビョーゲンがやられたであろうが、本命であるここから遠いところで反応しているメガビョーゲンはやられていないので問題はない。あいつらは見事に陽動にはまっている。
本当にあいつらは、アタシの思い通りに引っかかってくれる。本当に何も知らなくて、勢いだけでお手当てをやろうとしている、本当にバカな連中だ。
そういう彼女たちを、私は敢えてわざとらしく呟くことによって、遠くで嘲笑ってやるのだ。本命のメガビョーゲンがすでに活動を再開していることも知らず、役に立たずお荷物にしかならないヒーリングアニマルを連れ、無駄なことを続けているあの連中を。
「どうせだったら見る影もないくらいに蝕んで、範囲を広げてやろうかしら」
クルシーナはプリキュアが来ないうちに、すこやか山どころか範囲を広げてやろうと目論むのであった。