ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
次回からオリストになります。

今年も終わりですね。
皆様は良いお年をお過ごし下さい。


第56話「奇跡」

 

ラテの想いを受けて、グレースたちと一緒にお手当てをすることを決意した精霊の女性、キュアアース。

 

最初はラテ様を守るために、ヒーリングガーデンへと連れ帰り、そこで一緒に暮らすことが彼女を守ることだと思っていた。

 

しかし、自分と同じプリキュアの少女たち、そして彼女たちのパートナーであるヒーリングアニマルたちにそれは違うことを言われる。

 

ヒーリングガーデンの女王、テアティーヌはそんなことを言っていないし、ラテを自分たちに託してこの地球にやってきたんだと。ヒーリングガーデンに帰られては、自分たちのいる意味もなくなると・・・。

 

しかし、精霊の女性はわからなかったのだ。わざわざ地球の病気が残ってしまう彼女を、どうして地球にいさせる意味があるのか?

 

この反応に怒ったラビリンたちと一悶着になりそうになったところを、のどかという少女に諌められ、ラテの気持ちをちゃんと汲み取って欲しいと。精霊の女性はそう言われた。

 

そして、メガビョーゲンと戦う彼女たちの元に行きたいことを聴診器から知った精霊の女性は、ちゃんと彼女の意図も汲み取って一緒に怪物の元へと駆けつけた。

 

『ラテ様・・・これ以上は危険です・・・』

 

『クゥ~ン・・・クゥ~ン・・・』

 

これ以上近づくとメガビョーゲンの攻撃に巻き込まれるから近づくわけにはいかないと諭すも、ラテは鳴き声をあげる。

 

何かを言いたいのだと思い、精霊の女性はのどかに渡された聴診器を当ててみると・・・。

 

(ラテはここにいたいラテ・・・ヒーリングガーデンには帰りたくないラテ・・・)

 

『ラテ様・・・』

 

それは女性にとっても、思いがけない一言だった。

 

『お母様には会いたくないのですか・・・?』

 

(会いたいラテ・・・でも、ラテはここにいるけど、ラテもみんなと一緒に、お手当てしてるラテ・・・!!)

 

確かにお母さんには会いたい・・・本当はものすごく会いたいのだ。でも、精霊の女性に連れられているとはいえ、自分の使命を投げ出すわけにはいかない。

 

自分だって、のどかたちとやり方は違うけど・・・一緒にお手当てをしているんだ。ラテはそう言いたかったのだ。

 

『!! あの方たちと一緒に・・・?』

 

精霊の女性は困惑するも、ラテは女性の膝から飛び降りて、ふらつく体を起こして歩き出す。しかし、その場ですぐに倒れてしまう。

 

『いけません・・・!! 私はお手当てよりも、ラテ様の方が大切なのです・・・!!』

 

精霊の女性は、ラテを守って欲しいというテアティーヌの願いから生まれたのだ。お手当てをして危険な目に合わせるわけにはいかないと、ラテを諭そうとする。

 

『ラテ様をお守りしたいのです・・・!!』

 

精霊の女性はそう訴えかけるも、ラテの決意は固かった。何よりも・・・・・・!!

 

(そのお顔で、そんなことを言わないでラテ・・・!)

 

『!!??』

 

ラテから言われたその言葉に動揺する精霊の女性。

 

(精霊さん、ママのお手当てのパートナー、そっくりラテ・・・。なのに、そんなことを言われたら悲しいラテ・・・)

 

ラテはふらつく体を再び起こしながら、涙目になりながら言う。テアティーヌのパートナーで共にお手当てをした先代の女性にそっくりな彼女に、お手当てを否定して欲しくなかった。

 

ママが慕っていた彼女を、そっくりな彼女自身に否定して欲しくなかったのだ。地球なんかどうでもいいと言われているみたいで、先代の顔でそんなことを言わないでほしいと、ラテは訴えた。

 

(地球さんが泣いてるの、ラテはわかるラテ・・・それしかできないけど、頑張りたいラテ・・・!!)

 

『!!』

 

ラテの言葉を聞いて、精霊の女性はなんだかわからない強い何かを感じた気がした。

 

そして、ラテは精霊の女性に歩み寄って、肉球のついた手を差し出す。

 

(お願いラテ・・・地球さんからもらったパワー、ラテを守ることより、お手当てに使って欲しいラテ・・・!!)

 

ラテの涙ながらの訴え、そして決意・・・・・・。

 

『これは・・・何でしょう・・・? 心が・・・? 私の中で、地球のパワーが高鳴り・・・渦巻き・・・!!』

 

『ワウ?』

 

ラテは精霊の女性が胸を押さえているのに、心配の声を上げる。

 

『いえ、苦しいのではありません。よくわかりませんが・・・ただ、それでも・・・』

 

精霊の女性は聴診器を外すと、伸ばしたラテの手を握る。

 

『あなたの手を取りたいと、どうしようもなく思ったんです』

 

『・・・!!』

 

きっとこれは、運命なのだと・・・彼女と共にいたいという気持ちがあるのだと・・・精霊の女性はよく分からない感情をそのように思った気がした。

 

すると、二人の手が光り出し、そこから紫色のエレメントボトルが飛び出した。

 

精霊の女性は現れたエレメントボトルを手に取る。そして、一つの決意を口にしたのであった。

 

『ラテ様・・・あなたをお守りするためにこの力・・・あなたの願いのために・・・使わせていただけますか?』

 

『ワン!!』

 

ラテは元気に返事をする。繋がりあった心と心、これも何かの縁なのだと、ラテはそう感じたのであった。

 

精霊の女性は暖かい思いを秘めながら、意を決したような表情になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このキュアアース、ラテ様の想いを受け、お手当ていたします!!」

 

そう言いながら怪物へと向き直るアース。そして、アースはそこから飛び上がって工場の屋根に着地する。

 

そして、屋根の上を素早く駆けながら、メガビョーゲンへと迫っていき・・・・・・。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「メガァ・・・メガビョーゲン・・・!?」

 

その勢いに動揺したメガビョーゲンは両腕を交差して、防御体制に入るもアースはメガビョーゲンの顔面に蹴りを入れ、背後へと倒す。

 

「何!?」

 

バテテモーダは急成長させて強力になったはずのメガビョーゲンがあっさり倒されたことに動揺する。プリキュア三人があれほど苦戦していたメガビョーゲンを蹴り一発でよろつかせるとは・・・!!

 

「おぉ~!!」

 

「すごい!!」

 

感嘆するプリキュアたちの前に、アースが立つ。

 

「みなさんはメガビョーゲンを。これは私が引き受けます」

 

グレースたち三人にメガビョーゲンを任せて、自分はバテテモーダとヘバリーヌを受けようとするアース。

 

「・・・うん!!」

 

一瞬放心したグレースたちだが、頷くとメガビョーゲンの方へと向かう三人。

 

「これって・・・言ってくれるじゃないっすかぁ!!!!」

 

挑発されたバテテモーダはアースへと飛び出し、爪を振るう。しかし、攻撃を当てたはずのアースの姿が消える。

 

「!?」

 

「名前など、知る必要はありません」

 

いつの間にか背後に回っていたアースは、バテテモーダの言葉を切り捨てる。

 

「今は、この場で浄化しますので」

 

「っ・・・!!」

 

アースのその言葉に怒りを覚えたバテテモーダは爪を当てようと何度も振るう。

 

「貴様!! 一体、何者だ!? はるか昔、キングビョーゲン様とやりやったっていうのはマジなのか!!??」

 

バテテモーダは叫びながら爪を振るうも、アースは難なくその攻撃を避け、姿を消す。

 

「!?」

 

「私ではありませんが、その力によって私は生まれました」

 

上から声がして見上げると、アースは体を翻しながらバテテモーダに迫っていた。

 

「!? ,消えーーーー」

 

そして、再度姿を消したかと思うと・・・・・・。

 

ドゴッ!!!!

 

「がぁっ!!??」

 

背後へと回っていたアースがバテテモーダの腹部に蹴りを入れ、吹き飛ばす。

 

「ぐわぁぁぁ、はぁぁぁ!!??」

 

吹き飛ばされたバテテモーダは地面を転がり、倒れ伏す。

 

「な、なんてスピードだ・・・!」

 

バテテモーダは明らかに自分よりも実力が上、とても敵うやつではないと確信した。

 

「ンフフ~♪ お姉さん♪」

 

「!!」

 

そこへ横から現れたヘバリーヌが蹴りを入れようと駆け出してくるも、気づいたアースは足を繰り出してその蹴りを防ぐ。

 

「久しぶりだね~、お姉さん♪ 会うのは何年ぶりかなぁ~?」

 

「・・・あなたは、誰ですか?」

 

歓喜の声を上げるヘバリーヌに、アースは冷静に疑問の声で問う。

 

「ん~、覚えてない? あの街でヘバリーヌちゃんの様子を見にきてくれたでしょ~?」

 

「あの街とは、何のことでしょうか?」

 

アースは疑問を投げかけると、ヘバリーヌの蹴りを跳ね返す。ヘバリーヌは空中で一回転すると、後方へと着地する。そして、彼女も疑問に顎に手を当てる。

 

「ん~、忘れちゃってるのかなぁ? 気持ち良くすれば思い出すかも?」

 

「はぁぁぁ!!」

 

考え込んでいるヘバリーヌに、アースが駆け出してくる。

 

「ンフフ~、とぉ!!」

 

ヘバリーヌはその様子に不敵な笑みを浮かべると、足から黒い竜巻をアースに向けて放つ。アースはその黒い竜巻の中を突っ込んで進んでいくと、一気にヘバリーヌへと迫り・・・・・・。

 

「はぁ!!」

 

「よっ、と・・・!」

 

アースは蹴りを入れようとするも、ヘバリーヌは両手で跳び箱を飛ぶように足を乗っけるとアースの背後へと飛ぶ。

 

「はっ! ほぉ!! やぁっ!!!!」

 

ヘバリーヌは振り向きざまにアースに向かって風の斬撃を複数放つ。

 

「っ・・・!!」

 

アースは両腕を交差させて斬撃を防ぐも、当たっているために衣装は少しボロボロになる。そして、その隙を狙おうとヘバリーヌはスケートのように地面を滑ってこちらに迫ってくる。

 

「そーれっ!!!!」

 

ヘバリーヌは両手に風を纏わせると、それを合わせるようにして大きな風をアースに向かって放つ。

 

「ふっ!!」

 

アースはそれを飛び上がってかわす。

 

「よっ!!」

 

ヘバリーヌは竜巻から飛び出すと、壁を蹴って飛び上がり、空中へと飛んだアースへと迫る。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ヘバリーヌは体を回転させると、竜巻のような姿となってアースへと突撃していく。

 

「やあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

それに対して、アースは空中で体を回転させると蹴りのモーションへと入る。

 

ドゴォォォォォォ!!!

 

そして、二つの力がぶつかり合い、爆発のようなものが起きる。

 

「あぁぁぁぁぁん!!!!」

 

「っ・・・!!」

 

お互いに吹き飛ばされ、ヘバリーヌは地面を転がってバテテモーダの横に倒れ伏し、アースは足をブレーキにして倒れないように支える。

 

「へ、ヘバリーヌ嬢!?」

 

バテテモーダはヘバリーヌが吹き飛ばされたことに驚く。もしや、キングビョーゲンの娘ですらも敵わないほどの相手なのか・・・?

 

「ンフフ・・・・・・」

 

しかし、そんな倒れ伏すヘバリーヌから笑い声が聞こえる。そして、彼女はダメージなど受けてもいないかのように、すくっと立ち上がる。

 

「最高!最高だよぉ!! やっぱりお姉さんはお姉さん!! 強さはそのままだよぉ~!! とーっても気持ちよかったもん♪」

 

ヘバリーヌは瞳をキラキラとさせながら、喜びの声を上げる。

 

そんな彼女を、アースは冷静な態度で見つめていた。

 

「あなたの言うお姉さんとは、別人なのではないですか? 私と似ているとか・・・」

 

思わず浄化すべき敵に疑問を投げかけてしまうアース。ヘバリーヌはそれを聞くと一転して目を丸くさせ、顎に手を当てて考える。

 

「ん~、そうなのかなぁ? でも、お姉さんはお姉さんだし、力も気配も全然同じだし~♪」

 

ヘバリーヌは少し訳がわからなくなってきたように感じる。お姉さんがお姉さんじゃない? じゃあ、ヘバリーヌちゃんがあの街で会ったことがあるお姉さんは誰なのか? でも、あのお姉さんに外見もプリキュアとしての力もそっくりなのだ。

 

これは一体、どういうことなんだろう~?

 

ヘバリーヌがそんなことを考えている一方、メガビョーゲンの相手をしているプリキュアたちは・・・・・・。

 

「「キュアスキャン!!」」

 

グレースが肉球に一回タッチして、ステッキをメガビョーゲンに向ける。ラビリンの目が光り、怪物の左肩にいるエレメントさんがいるのを見つけた。

 

「いた!!」

 

「太陽のエレメントさんラビ!!」

 

エレメントさんは見つけた。あとはメガビョーゲンを浄化するだけだ。

 

「メガァ・・・!!」

 

メガビョーゲンは抵抗をするために、再び片目に禍々しいエネルギーを溜めて、ドス黒いレーザーを放つ。

 

「「「きゃあぁぁぁぁ!!!!」」」

 

メガビョーゲンの攻撃を受けて吹き飛ばされてしまうグレースたち。

 

ヘバリーヌが圧倒され、自分はボロボロにされている。こうなったら・・・!!

 

バテテモーダは立ち上がると、メガビョーゲンの方を振り向く。

 

「来い!! メガビョーゲン!! こいつも潰すぞ!!」

 

「メガァ・・・」

 

バテテモーダの指示を受けたメガビョーゲンは、電気を纏わせた両腕のケーブルを構える。

 

「ビョーゲン!!!」

 

「一発逆転!! 下克上だぁ!!!」

 

多勢に無勢と言わんばかりに、メガビョーゲンとバテテモーダは同時にアースへと襲いかかる。

 

「あ~! ずるい~!! ンフフ・・・」

 

勝手に飛び出していこうとするバテテモーダに、ヘバリーヌは不満そうな表情をしてそう言うと、一転して恍惚な表情を浮かべて両腕を広げる。すると、彼女の体から風が巻き上がり、ヘバリーヌの体を包む。

 

「おねえ~さん♪ ヘバリーヌちゃんをもっと気持ちよくしてぇ~!!!!」

 

ヘバリーヌはその勢いのまま俊足で飛び出し、アースへと迫っていく。

 

アースは三者を見やると、両手を祈るように合わせ、目を開く。

 

一枚の紫色の羽が、ハープのような武器へと姿を変える。

 

「アースウィンディハープ!!」

 

そう呼ばれたハープに、風のエレメントボトルがセットされる。

 

「エレメントチャージ!!」

 

アースはハープを手に取って、そう叫ぶとハープの弦を鳴らして音を奏でる。

 

「舞い上がれ! 癒しの風!!」

 

手を上に掲げると彼女の周りに紫色の風が集まり始め、ハープへとその力が集まっていく。

 

「プリキュア! ヒーリング・ハリケーン!!!」

 

アースはハープを上に掲げてから、それを振り下ろすとハープから無数の白い羽を纏った薄紫色の竜巻のようなエネルギーが放たれる。

 

そのエネルギーは一直線にメガビョーゲンへと向かい、直撃する。

 

竜巻のようなエネルギーはメガビョーゲンの中で二つの手へと変化し、太陽のエレメントさんを優しく包み込む。

 

メガビョーゲンをハート状に貫きながら、光線はエレメントさんを外に出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていく。

 

そして、エネルギーはバテテモーダにも襲いかかる。

 

「俺の野望がぁぁぁぁぁぁ!!! ヒーリングッバァ~イ!!!!」

 

バテテモーダはキングビョーゲンに取り付けた約束、そしてお嬢たちのそばに並べないことの無念を叫びながら、薄紫色のエネルギーの中へと消えていった。

 

さらに光線はヘバリーヌにも襲いかかり・・・・・・。

 

「いやいやいやいやぁぁぁぁぁぁぁん!! 激しいぃぃ、激しいよぉ~!! こんな幸せな気持ちになれるなんてぇ~、ヘバリーヌちゃん、もう最高ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

ヘバリーヌは頬に手を当てて今まで以上に嬉しそうな表情を浮かべながら悶え、叫び声をあげると薄紫色のエネルギーの中に飲み込まれていった。

 

そして、メガビョーゲンによって蝕まれた地面や屋根は元の姿へと戻っていく。

 

「・・・お大事に」

 

アースは祈りを捧げるような格好を解いた後、そう呟いた。

 

「3体一気に・・・!?」

 

「めっちゃ凄い・・・!!」

 

プリキュアの三人はキュアアースの実力に驚きを隠せない。

 

そんな様子を伺っていた4つの影があった。

 

「ふん、野望か・・・」

 

バテテモーダの作戦とその末路、一部始終を見ていたグアイワルは不敵な笑みを浮かべると姿を消した。

 

「・・・・・・・・・」

 

「はぁ・・・やっぱり見に行って正解でしたね」

 

「あのプリキュア、侮れないやつなの」

 

そして、さらにそれを見つめるのはクルシーナ、ドクルン、イタイノンのビョーゲン三人娘。ドクルンとイタイノンは無表情で見下ろしながら呟き、クルシーナに至っては無言のままだ。

 

あのプリキュアは自分たちにとっては脅威になる。そう感じざるを得ない。自分たちの父親が忠告していたのだから、間違いない。

 

「それにしても、この娘のマイペースさには呆れますね・・・」

 

「メガビョーゲンを生み出しているんだから、管理しておけなの・・・」

 

ドクルンとイタイノンが呆れたように言いながら見つめているのは、アースの必殺技に巻き込まれて消えたはずのヘバリーヌの姿だった。

 

「ンフ・・・ンフフ・・・へへへ・・・」

 

ヘバリーヌは体中が焼け焦げたようにボロボロになっているのにも関わらず、ビクンビクンと体を痙攣させながらも、まるで幸せな夢でも見ているかのように恍惚な表情を浮かべていた。

 

彼女はクルシーナの手下の小さなコウモリに体を持ち上げられている。

 

実は必殺技に巻き込まれる直前で、クルシーナがコウモリの手下を飛ばし、ヘバリーヌが巻き込まれた後の彼女をあのエネルギーの中からコウモリが小さな体で触れ、こちらに転移をさせたというわけだ。その結果、ヘバリーヌは体内のビョーゲンを浄化されずに、無事に彼女たちの元にいるというわけだ。

 

そのせいか、小さなコウモリの体からもプスプスと煙が出ていて、ボロボロになっている。

 

それにしても・・・・・・。

 

「幸せそうに寝てますね・・・」

 

「全く・・・クルシーナが助けに来なかったら、どうなってたと思ってるの・・・?」

 

ため息をつくしかないドクルンとイタイノン。そんな彼女たちの感情も毛ほども知らず、ヘバリーヌは笑みを漏らしながら眠っているだけだ。

 

そんな中、クルシーナは集まっているプリキュアの中、その一人であるキュアアースの姿を見つめていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「クルシーナ?」

 

「・・・・・・ふん」

 

クルシーナはイタイノンの呼びかけにも応じず、そのまま背後を向けると歩いていく。

 

「さてと、あの街の様子はどうなってるだろうね」

 

クルシーナはそう言うと、ヘバリーヌを連れて姿を消した。

 

「まあ、今は機嫌が悪いのでしょう。とりあえず、様子を見ましょうか」

 

「・・・・・・・・・」

 

ドクルンが肩に手を置きながらそう言うと、イタイノンはなんとも言えないような表情を浮かべる。そして、彼女たちもそのまま姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュアたちは戦闘を終えた後、変身を解き、工場に聴診器を向けていた。

 

『ありがとうございます! みなさんのおかげで助かりました!』

 

太陽のエレメントさんはそう言うと、工場の中へと戻っていった。

 

「よかったラビ!!」

 

エレメントさんが無事だったことに安堵するのどかたち。メガビョーゲンを急成長させられ、また前みたいな後遺症が残るのかと思ったが、なんともないようで安心した。

 

エレメントさんの診察を終えると、精霊の女性へと向き直る三人。

 

ところが、問題はこれで終わりではなかった・・・・・・。

 

「クゥ~ン・・・」

 

「ラテ様・・・!?」

 

ラテの体調がいまだに戻っていないのだ。額のハートマークはいまだに黄色に点灯している。

 

「「「ラテ様!?」」」

 

ヒーリングアニマルたちがラテの症状が改善していないことに驚きの声を上げる。

 

「え・・・?」

 

「どういうこと・・・!?」

 

「なんで!? メガビョーゲンを浄化したから、元に戻るんじゃ・・・!?」

 

本来ならメガビョーゲンを浄化すれば、元に戻るはずの体調が戻る様子がない。これは一体どういうことなのか・・・? また、ビョーゲンズとは関係ない体調不良が再発したのか?

 

「クゥ~ン・・・」

 

すると、ラテは何かを訴えるように弱々しく鳴いている。

 

もしかして・・・まさか・・・!?

 

のどかたちは顔を見合わせると、ラテに聴診器をあてる。

 

(街の方で、空気が泣いてるラテ・・・)

 

「「「!!??」」」

 

「ラテ様・・・?」

 

その言葉に驚きを隠せない三人。街の方・・・? 街の方って・・・?

 

「!!!!」

 

まさか・・・・・・!!!!

 

ハッとしたのどかたちは林の中へと駆け出していき、すこやか市の街の様子を見に行くために向かっていく。

 

「あ、みなさん・・・!」

 

精霊の女性は叫ぶも、ラテの方を見つめると彼女たちの後を追うべく駆け出していく。

 

のどかたちは林の中へと駆けていき、街がよく見渡せる丘の上へと向かっていく。

 

そして、そこから見えた光景は・・・・・・。

 

「「「!!??」」」

 

目の前に広がっている街の光景に驚きを隠せない。その表情は、呆然・・・愕然・・・絶望・・・そのどれにも取れるような顔だ。

 

「え・・・!?」

 

「どういうことラビ・・・!?」

 

驚愕・・・信じられないと言ったような表情で見るのどかとラビリン。

 

「何・・・これ・・・!?」

 

「ちゆたちの、街が・・・!?」

 

呆然・・・これはどういうことなのかと言いたげな表情で見るちゆとペギタン。

 

「あたしたちの、街が・・・!?」

 

「ありえねぇよ!! こんなの・・・!!」

 

愕然・・・ありえないと言った表情で街を見つめるひなたとニャトラン。

 

みんながみんな、かすれたような声で呟く。

 

「まるで、病気の街、みたいです・・・・・・」

 

「クゥ~ン・・・」

 

精霊の女性も険しい表情で街の様子を見やる。

 

彼女たちの目の前に広がる光景は、すこやか市の街に赤い靄のようなものが広範囲にかけて広がっている光景だった・・・・・・。

 

そう。戦いはまだ、終わっていなかったのだ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・うぅ・・・うっ、んん・・・!!」

 

商店街の建物の横で倒れているフードの少女。眠っているようだが、その表情は顰められており、苦しんでいる様子だった。

 

「うぅぅ・・・うぅんんん・・・!!!」

 

少女はまるでもがくように首を振り、瞑っている目をピクピクとさせる。

 

ーーーーうぅ・・・んぅ・・・んん・・・。

 

ドクン、ドクン、ドクン

 

胸を押さえて苦しむマゼンダ色の髪の少女。

 

ーーーーはぁ・・・はぁ・・・くっ・・・うっ・・・!!

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

ーーーークゥ~ン

 

ーーーーだ、大丈夫、だよ・・・ラテ、早く、帰ろう?

 

子犬を抱えながら、苦しいのに作り笑顔を見せるマゼンダ色の髪の少女。

 

ーーーーはぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

重そうに体を引きずりながら、懸命に歩いていくマゼンダ色の髪の少女。

 

ーーーーう・・・あ・・・。

 

おぼつかない足を躓かせ、倒れ込んでしまう少女。

 

ーーーーあ・・・あ・・・。

 

倒れて、誰も見つけてくれない状況に絶望する少女

 

ーーーー助けて・・・ちゆちゃん・・・ひなたちゃん・・・。

 

ーーーーお母さん・・・お父さん・・・。

 

ーーーーラビリン・・・・・・。

 

「!!?? はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

フードの少女は目を見開き、息を切らす。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・うぅ・・・!」

 

傷ついた体を起こし、息を整える。周囲を見渡せば、そこはすでに赤い靄で包まれていた。

 

「あぁ・・・ああ・・・!」

 

ただただ呆然、絶望するしかない。少女は無力な自身の両手を見つめる。そして、ギュッと握りしめる。

 

「・・・・・・のどか」

 

辛そうな、悔しそうな顔をしながら名前をつぶやく少女。

 

・・・そうだ。私はあの娘の体内で成長して、外の世界で生きてみたいと、自分の意思で生きてみたいと、そう思っていたんだ。

 

でも、私はそれによって彼女を苦しめ、彼女のお友達にも迷惑をかけてしまった。私はどうしてだか、それだけが罪悪感があって仕方がない。

 

「のどかぁ・・・!!」

 

少女は目から暖かい何かをポロポロとこぼしながら、名前を呼ぶ。それは、まるで誰かに助けを求めるかのよう。

 

しかし、少女は誰も来るはずがないとわかっていたように、握りしめていた両腕を下ろす。

 

少女はふと自分が戦っていた怪物のことを思い出す。怪物からはまだ泣いている声が聞こえてくる。

 

「・・・追わないと」

 

少女はそう思い、近くに落ちていたステッキを拾う。

 

「私が少しでも泣いている声を止めないと・・・!!」

 

怪物に勝てる見込みは全くない。でも、自分がが立ち向かえば、この街の被害は最小限にとどまり、泣いている声が少しでも泣き止むかもしれない。

 

「うっ・・・くっ・・・!」

 

少女はステッキを杖代わりにして、傷ついた体を懸命に立ち上がらせる。

 

そして杖をつきながら、ゆっくりとその泣いている声を辿りながら、怪物を止めるために向かっていくのであった。

 

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