ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
今回で長編は最後になります。
数分前・・・・・・。
「いろんな何かが交差しているが、泣いている声は、こっちから聞こえたな・・・」
フードの少女は、メガビョーゲンの気配をたどってトンネルの中を突き進んでいた。ステッキを突き、足を引きずりながらも、そこに行かなくては行かなきゃと前へと進んで行く。
自分はどうして、泣いている声をたどっているのだろうかと疑問に思うことがある。なぜそんな声を追って、泣き止ませる必要があるのか。
よくわからないが、私の中でそれらを止めなくてはならないという何かが、それは良くないという何かが自分の中に溢れ出してやまないのだ。
それは自分の意思なのか、本能的な何かなのか?
自分がどうして生まれたのかはわからない。気がついたときには無機質な部屋にいて、殺風景とも言えるような部屋にいて、そこがどこなのかも皆目見当がつかない。
しかし、そこにいてはいけないと、なんだか自分の中の何かがそう感じたような気がした。だから、私はなぜか出来る瞬間移動をして、あそこから逃げてきたのだ。そして、なんだか空気がきれいなこの街へとやってきたのだ。これも本能の一つなのだろうか?
この街に来て、空気が苦しいと感じたその時、何やら泣いているような声が聞こえ、自分はわからないが、この体とは別に苦しい何かが自分の中に流れ込んできたのだ。
でも、今この時だけはわかる。
これは、自分の意思であると・・・。それだけは間違いないと言い聞かせる。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
トンネルの距離が長く感じる。それでもフードの少女は息を切らしつつも、歩いていく。
すると、トンネルの中に赤い靄みたいなものが侵食しているのが見えた。
「!! これは・・・ついさっきできたもの。ということは、本当にこの先に泣いているものが・・・?」
トンネルの壁に付いている赤い靄を見て、これは先ほど侵食したものだと見受けられる。触ってみると新しいと感じさせるくらいできたばかりの病気で、生暖かく感じる。
ということは、泣いている声はその先に・・・・・・。
「行くぞ・・・・・・!!」
少女はステッキをつきながら、赤い靄の先へと進んで行く。
トンネルを抜けて外に出ると、そこにはあの怪物が蝕んだと見られる赤い靄が広がっているのが見えた。
別に驚きはしない。なぜだかわからないが、驚きはしなかった。
少女はキョロキョロと見渡すとそこに巨大な怪物の姿があった。
「いた、あそこ!! っ!?」
怪物の姿を見た少女だが、その傍らにコスプレをした3人の少女が倒れ伏しているのが見えた。
「まずいな・・・早く助けて、泣き止ませないと・・・!!」
少女は今にも飛び出していきたいが、体がボロボロのままではまた返り討ちにあうだけだ。どうにかして回復させないといけない。何か手を貸せるものはないかと辺りを見渡す。
ふと彼女が見たのは、ここが海に面している場所だということ。まだ、赤く汚されていない海があるのが目に見える。
「よし、あれを使えば・・・!!」
少女はステッキを突きながら、海の方へとゆっくりと向かっていくと杖代わりにしていたステッキを海に向かって構える。
少女は目を瞑ると彼女の周囲がブワッと風が吹き、体が光り始める。すると、海の方も彼女に呼応するかのように光っていく。
「水の力よ!!」
少女はそう叫ぶと、海の水がまるで呼ばれたかのように飛び出してくる。そして、少女が黒いステッキを掲げるとその力が集まっていく。
パァ・・・!!!!
そして、そのステッキが青く光ったかと思うと、少女の黒いフードが暗い水色に変わっていき、フードから見えている金髪が水色の髪に変わっていく。
さらにステッキも暗い水色に変わっていき、その先端には水色の玉のようなものが取り付けられていた。
「よし! 癒しよ!!」
少女はそう叫びながらステッキを真上に掲げると、ステッキから呼ばれたかのように水が少女の体を包み込む。
「っ・・・こぽっ・・・」
少女は傷が染みているのか、顔を少し顰め、水が体を痛めつけて苦しく感じていたが、水球に包まれた形となった少女のボロボロになっていた傷がみるみるうちに回復していく。
少女の傷が完全に傷が癒された時、水球は弾けるように散開し、そこには水も滴る女性と言わんばかりの、そして傷がきれいさっぱりと無くなった生まれ変わったような少女の姿があった。
「最初からこうすればよかったな・・・」
少女は水の力を使えば癒すこともできたはずなのに、なんで思いつかなかったのかと感じた。
「よし、あの娘たちを助けて・・・っ!?」
少女はコスプレ姿の少女たちを助けようと向かうが、ふと怪物が別の方向を向いているのを見て、そこに視線を向けるとそこには子犬の姿があった。
「あの怪物・・・あの子犬に攻撃しようとしているのか・・・!?」
少女はそれに気づくとその子犬を助けようと飛び出していき、その場から姿が消える。
怪物ーーーーメガビョーゲンはレーザーを放つべく、一番上の別れた部分に禍々しいエネルギーを溜め始める。
「や、やめて・・・うぅ・・・あ・・・!!」
ラテに撃とうとしていることを察したグレースは立ち上がろうとするが、ダメージが積み重なり、意識が朦朧としている状態では腕に力が入らなかった。
「ダ、ダメ・・・!!」
薄眼を開けながら叫ぶフォンテーヌの声はどこか弱々しかった。
「ラテ、逃げてぇ・・・!!」
スパークルも手を伸ばそうとするも、その手は弱々しくラテには届かない。
「!! ラテ様・・・!! あぁ!!」
「お前の相手はこのアタシだって言ったはずだろ?」
アースはラテを助けようと動くも、彼女の目の前にクルシーナが瞬間移動をして、蹴りを入れる。アースもクルシーナに阻まれて助けに行くことができない。
そんな三人の行動もむなしく、無情にもメガビョーゲンの禍々しいエネルギーは溜まっていく。
そして・・・・・・・・・。
ビィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!
メガビョーゲンから極太のレーザーが放たれる。それはラテに迫っていき・・・・・・。
そのラテの背後に少女は姿を現し、彼女はラテを抱えると再び姿を消す。
ドカァァァァァァァァァァン!!!!
そして、誰もいない場所にレーザーは着弾して爆発を起こした。
煙が晴れていき、そこには攻撃を受けて倒れているラテの姿は・・・・・・存在しなかった。
「!?」
クルシーナはラテが倒れていないことに目を見開く。体調が悪く動きが鈍っているあの子犬が、素早く動いた? いや、そんなことがあるはずがない。
「ラテ・・・?」
「ラテがいない・・・!?」
「消えちゃったの・・・!?」
グレースたち三人もその光景に戸惑いを隠せない。
「ラテ様・・・どこに・・・!?」
アースはラテが消えたことに戸惑い、焦ったようにキョロキョロと辺りを見渡す。すると、何やら一つの影が立っているのが見えた。
「あ、あれを見るラビ!!」
ラビリンが何かを見つけたようで叫ぶ。グレースたち三人が視線の先には、黒いフードを被った少女の姿があった。
「誰なの・・・!?」
「わ、わからないペエ・・・」
「ビョーゲンズ、じゃ、ねぇよな・・・?」
「見たこともないんだけど・・・?」
「あ・・・ラテ・・・!!」
突然現れた見慣れない人物に戸惑いの声を上げるフォンテーヌとスパークル。そして、そんな彼女の手にはラテを抱いているのが見えた。
少女は間一髪で瞬間移動を使い、ラテを助け出したのであった。
「キミ、怪我はないか・・・?」
「ワン!」
「そうか・・・よかった」
フードの少女の気遣うような声をかけると、ラテは元気に返事をする。フードの少女はそれを見て口元に優しい笑みを浮かべると、彼女をゆっくりと地面に下ろす。
そして、ラテに手を伸ばして頭を優しく撫でる。
(なんだろう・・・まるでのどかたちに優しくされているみたいラテ・・・)
ラテはフードの少女にのどかたちに優しくされているのと同じような気持ちを感じた。暖かいような、冷たいような感覚。でも、優しい感覚・・・・・・。
フードの少女はラテから手を離すと立ち上がり、メガビョーゲンの方を睨む。
「ふーん、やっと出てきたのねぇ、脱走者!!」
クルシーナは待っていたとでも言いたげな加虐な笑みを浮かべる。少女は倒れているプリキュア3人の前に瞬間移動をして現れる。
「メガビョーゲン!! これ以上はこの私が許さないぞ!!」
少女はそう言いながら、水色に変化したステッキをメガビョーゲンに構える。
「お前のような失敗作に、この成長したメガビョーゲンを止められるのかしら?」
クルシーナは完全に少女を見下すように言い放つ。その言葉では少女の表情は睨みつけたまま変わらない。
「たとえ何度やられても、私は諦めない!! 私はお前の泣き止む声を止めるだけだ!!」
「ふん。やれ、メガビョーゲン」
「メガァ・・・・・・」
少女の揺るがない声に、クルシーナは鼻で笑うとメガビョーゲンに指示を出す。メガビョーゲンは赤い球体を前に出して、そこから赤い空気を噴射する。
少女は駆け出してその攻撃を交わすと、メガビョーゲンへと飛び出していく。
「メガァ・・・メガァ・・・!!」
メガビョーゲンは次々と空気を噴射していくも、少女はその度に瞬間移動をしながらかわしていく。
そうだ。私も必死になれば、あいつだって止められるはずだ・・・。
そう考えながら、メガビョーゲンの攻撃をかわしつつ迫っていく。
「ふっ!!」
そして、少女は怪物との距離がわずかという場所で飛び上がる。
「メガァ・・・!!」
ビィィィィィィィィィィ!!!!
「はぁ!!」
メガビョーゲンは一番上の分かれた部分に禍々しいエネルギーを溜め、それをレーザーとして飛んだ少女に向けて放つ。少女はステッキを振るって、水を帯びたシールドを展開するとそれを防ぐ。
しかも、そのレーザーはそのシールドに吸収されていく。
「え・・・!?」
「あれって、ぷにシールドラビ・・・!?」
「しかも、攻撃を吸収してる・・・!?」
シールドはよく見ると自分たちも使うぷにシールドにそっくりだ、あれほど強力だったレーザーを防いだ上に、それをシールドに吸収していくという状況にプリキュアたちは驚きを隠せない。
「あの吸収の力は、アタシの能力と似ているわね。ますます興味深いわ」
「あいつってクルシーナと同族ウツ・・・?」
「アタシが生んだのには間違いないわね」
クルシーナはその光景を見て、不敵な笑みを浮かべる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
少女はそのステッキを振り上げた後に、振り下ろすと極太の暗い青色のエネルギーを放つ。
「メ、メ、ガァ・・・!?」
直撃を受けて耐えようとするメガビョーゲンだが、徐々に押されていき、そのまま光線と共に地面へと叩きつけられた。
「ステッキから光線を出した・・・!?」
「もしかして、あの娘もプリキュアなの・・・!?」
「でも、ぷにシールドにあんな力見たことないペエ・・・!!」
「それに格好もプリキュアじゃないよな・・・?」
自分たちと似たような技を使う少女に驚くスパークルとフォンテーヌ。しかし、格好はどう見てもプリキュアじゃないし、フードを被っていて顔などはよく見えず、彼女たちは戸惑うばかりだ。
地面へと着地をする少女は、舞い上がる煙を見つめる。
「メガァ・・・!!」
ビィィィィィィィィィ!!!
「っ・・・!!」
煙の中からレーザーが放たれ、驚いた少女はとっさに飛びのいてかわす。
「メガァ・・・」
煙が晴れて、宙に浮いたメガビョーゲンの姿が現れる。
「くっ・・・まだ、ダメか・・・!」
決定的なダメージを与えられていないことを感ずる少女はなんとかしなければと周りをキョロキョロと見渡す。
ハッと彼女は倒れているプリキュアたちに目が入る。
そうだ、メガビョーゲンの中にいる何かが泣き止んでいるのは、さっき別の形ではあるが、あの怪物と戦っていた彼女たちのおかげなのかもしれない。彼女たちの力を借りれば、もしかしたら・・・。
そう思い、少女はプリキュアたちの方向を向く。
「キミたち!! 手を貸してくれないか!?」
「「「??」」」
少女の叫びを受けて、グレースたちは呆然とする。突然、現れた正体不明の人物の登場でもびっくりしたのに、その彼女に助けを求められていて考えが追いついていない。
「キミたちがあの怪物を泣き止ませているのだろう? だったら、力を貸して欲しい! 私はもうあの泣いている声を聞くのは嫌なんだ!! 頼む!!」
少女の顔は見えていないが、何やら必死になっていることが伝わる言葉だ。グレースはそう感じて、傷ついた体をゆっくりと動かしながら、体を震わせながらも立ち上がっていく。
それに彼女はラテを助けてくれたのだ。協力しない理由はないし、もとより自分たちはメガビョーゲンを止めるつもりで戦っている。
そんなグレースの姿に鼓舞されたのか、フォンテーヌとスパークルもゆっくりと立ち上がる。
「みんな、行こう・・・!!」
「私も、そのつもりよ・・・!!」
「うん・・・!!」
グレースたち3人はそう言いながら、フラフラとしながら駆け出しつつも、少女の横に並ぶ。
「メガァ・・・!!」
メガビョーゲンは上の分かれた部分からレーザーを放つ。
「「「「っ!!」」」」
4人はレーザーを飛びのいてかわす。
「!あっ・・・!?」
スパークルが着地した先で体をよろつかせてしまい、倒れそうになる。どうやらダメージは相当なものだったようで、体も限界のようだった。
(目が霞んできて・・・!!)
視界もピントがうまく合わないかのように、ぼやけたりクリアになったりを繰り返しており、意識を保っているのもやっとのようだった。
「メガァ・・・!!」
そんな状態でもメガビョーゲンは容赦なく、スパークルに目がけてレーザーを放つ。
「スパークル・・・!!」
「くっ・・・!!」
そこへフォンテーヌが駆け出していき、スパークルの前でぷにシールドを展開してレーザーを防ぐ。
「うっ・・・」
しかし、フォンテーヌも体力の限界なのか、レーザーを抑えきれずに徐々に押されていく。
「まずい、あの二人がピンチだ・・・なんとかしないと・・・!!」
少女はキョロキョロと見渡すと、道にあった街灯に目を移す。あれはまだ赤い靄に蝕まれていない様子。
あそこからなら、別の力を・・・!
少女はそう思い、ステッキを街灯に向ける。
「光の力よ!!」
少女はそう叫ぶと、点いていない街灯の光が点き、光がまるで呼ばれたかのように飛び出してくる。そして、少女が黒いステッキを掲げるとその力が集まっていく。
パァ・・・!!!!
そして、そのステッキが黄色く光ったかと思うと、少女の黒いフードが暗いオレンジ色に変わっていき、フードから見えている金髪がオレンジ色の髪に変わっていき、瞳は金色に変わる。
さらにステッキが暗いオレンジ色に変わって二本になり、その先端にはビームサーベルのようなものが生えていた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
少女はメガビョーゲンに向かって飛び出し、レーザーを吐いている隙をついて両手にあるステッキを振るう。
「メガァ・・・メガァ・・・!?」
「はぁっ!!!」
「メ、ガァ・・・!?」
少女が右左と振るうビームサーベルの攻撃でメガビョーゲンの体がよろけ、最後はクロスさせて振るう。攻撃を受けたメガビョーゲンはそのまま地面へと墜落する。
「大丈夫か!? 二人とも!!」
「うぅ、助かったわ・・・」
「あ、ありがと・・・っていうか、また何か変わってる・・・?」
少女は膝をついているフォンテーヌとスパークル、二人の近くに降りてその身を案じる。スパークルは少女の攻撃が変わっているのが気になっている。
「メガァ・・・!!」
「「っ・・・!?」」
「っ!!」
メガビョーゲンは宙に一気に飛び上がって、赤い球体を前に配置する。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「メガァ・・・!?」
そこへグレースが横からドロップキックを食らわせて吹き飛ばす。
「うっ・・・」
しかし、キュアグレースは着地した途端に体をフラフラさせ、膝をついてしまう。
「おい、キミも大丈夫か!?」
少女はグレースに駆け寄りながら言う。グレースもダメージのせいで体が限界を迎えており、立っているのもやっとの状態のようだった。
「三人がそんなに疲弊しているとは思わなかった・・・すまない・・・!! ここは少し休んでくれ・・・!!」
「っ!! く、うぅ・・・!!」
少女はそう言って彼女たちの身を案ずるが、グレースは無理して立ち上がろうとしている。
「私は、お手当てを諦めたくない・・・!! やめるわけにはいかないの・・・体が動く限りは続けるんだ・・・この素敵な街が、みんなが、苦しんでいるのを見るのは、もう嫌だから・・・!!」
グレースは体を震わせながらも、立ち上がりながらそう叫びを口にしていた。
「そう、ね・・・私たちはお手当てを止めるわけにはいかないもの・・・!! 設楽先生が住んでいたあの街、みたいに、これ以上、この綺麗な地球を奪われるわけにはいかないわ・・・!!!」
「あたしたちが、頑張らない、と・・・何も救えないし・・・何も助けてあげられないし・・・!! だから、やらないといけないんだよ・・・!! もう誰かを失うなんてことは、あっちゃダメなんだよ・・・!!」
そんな彼女に鼓舞されたかのようにフォンテーヌとスパークルも体をよろつかせながら立ち上がり、戦う意思を見せようとしている。
「キミたち・・・どうしてそこまで・・・?」
少女は体がボロボロになってまで、そんな状態でどうして戦おうとするのかわからなかった。立ち向かったとしても、メガビョーゲンを泣き止ませられる保証なんてないというのに・・・。
「だって・・・私たちは・・・」
「「「この街やみんなが大好きだから!!!!」」」
グレースたち三人は、メガビョーゲンにステッキを構えつつも少女に向かってそう言った。
三人がプリキュアとして戦えるのは、すこやか市という街を大切だと思っているから、そして守りたいものがたくさんあるからだ。その思いがあるからこそ、どんなに強敵が相手でも彼女たちはお手当てを諦めないのだ。
「それと・・・」
グレースは少女の方を振り向く。
「ラテを守ってくれてありがとう・・・」
「・・・!!」
グレースは少女に向けて満面の笑みを見せた。少女はそれに顔を赤らめて、何やら体の中に熱い別の何かを感じるような気がした。
「何よ、あの三人は満身創痍じゃない。そこまでしてお手当てしようとするなんてバカじゃないの?」
クルシーナはボロボロで疲弊している彼女たちを見て、バカにしたような口ぶりをしていた。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「!!」
そこにアースが飛び出して蹴りを入れようとするも、クルシーナは飛び上がってかわす。
「そういえば、お前と戦ってたの忘れてたわねぇ」
「私も・・・」
「は・・・?」
アースは何か胸のうちにある言葉を吐くように何かを紡ごうとしていた。
「私も、なんだかお手当てをしたくなりました。よくわかりませんが、あの三人を見ていると胸が熱くなって、心が熱くなって、お手当てをもっとやりたいという気持ちになるのです・・・!!」
アースはどうやらあの三人に鼓舞されたようで、お手当てをしたいという気持ちになっていた。なんだかよくわからない感情、それはラテ様のあの決意を聞いた時と同じだった。
自分はそれを作られたものではない、嘘の気持ちではないと感じ、プリキュアとして目の前にいる敵を浄化すると決めたのだ。
「ふん、何を訳のわかんないこと言ってんだか。燃えろ!!!」
クルシーナはアースの言葉の意味を理解する気にもならず、目からピンク色のビームを放つ。
「ふっ!! はぁぁぁぁぁ!!!!」
アースは飛び上がってビームをかわすと、そのままクルシーナに向かって駆け出す。
ビィィィィィ!! ビィィィィィ!! ビィィィィィィ!!!
クルシーナは次々とビームを放つも、アースは避けながらクルシーナはへと迫っていく。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そして、彼女に迫った時、アースは渾身の拳を繰り出す。
「オラァァァ!!!!」
ドゴォォォォォォォン!!!!
クルシーナも拳を繰り出し、二人の拳がぶつかり合い、彼女たちを中心に大きく土煙が舞い上がる。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
フォンテーヌは飛び上がって、メガビョーゲンに蹴りを入れる。しかし、怪物には全く通用しておらず、赤い球体をフォンテーヌの前に出す。
「メガァ・・・!!」
「きゃあぁぁぁ!!!」
球体から強力な赤い空気を噴射され、フォンテーヌは吹き飛ばされる。
「葉っぱのエレメント!!」
「火のエレメント!!」
「「はぁっ!!」」
グレースとスパークルは持っているエレメントボトルをステッキにセットすると、ステッキの先から光線を放つ。
「メッガァ、ビョーゲン・・・」
メガビョーゲンは少し苦しそうにするも、すぐに体を高速回転させて光線を弾く。
「っ・・・やっぱり攻撃が効いてない・・・!!」
「というよりも、私たちの力が入っていないのかもしれないわ・・・!!」
「うぇぇ!! どうすんの!?」
グレースたち三人は、メガビョーゲンへの攻撃の勢いがなくなっていることを感じ始めていた。啖呵を切ったはいいものの、とはいえ体力も体も限界だ。このままではいずれまた、メガビョーゲンに押されてしまうだろう。
そんな彼女たちの前に少女が飛び出す。
「私に任せろ!! キミたちはその隙に泣き止ませる準備を・・・!!」
「な、泣き止ませるって何!?」
少女の放ったある言葉に思わず聞き返してしまうスパークル。
「いいから早くやってくれ!!」
少女は特に意味を言うこともなく、メガビョーゲンへと再び飛び出していく。
「ラテが『泣いてる』っていうから、きっと浄化しようとしてるんじゃないのかな・・・?」
「そ、そうね・・・よくわからないけど、そうかもしれないわ・・・」
「な、なるほど・・・」
グレースの推察に、一応納得するフォンテーヌとスパークル。そうしている間に少女はメガビョーゲンへと駆け出していく。
「メガァ・・・メガァ・・・!!」
メガビョーゲンはレーザーを次々と放つも、少女は飛んで避けたり、ステッキを振るってシールドを展開して防ぎながら、怪物へと迫っていく。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
「メガァ・・・!?」
少女は飛び上がって飛び蹴りを食らわせて、メガビョーゲンを吹き飛ばす。
「ふっ!!!」
少女は地面に着地した後、両手のステッキを振ってその先から光の鎖みたいなものをメガビョーゲンに放つ。そのまま鎖はメガビョーゲンをぐるぐる巻きにして縛る。
「メ、ガ・・・!?」
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
「メッガァ・・・!!!???」
少女は体から光を発光させて、それをステッキに伝わせると先にある鎖を通し、光がメガビョーゲンに直撃する。メガビョーゲンはその光に苦しみ始め、さらには怪物の内部で変化が起きていた。
それは中にいるエレメントさんの姿が、透けていてノイズが走って今にも消えそうになっていたものから、透明感がなくなり、生気を少し取り戻したのだ。
「エレメントさんが元に戻ったラビ!!」
「あの娘、すごい・・・!!」
グレースは仮死状態も同然だったエレメントさんを回復させたことに驚くばかりだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「メッガァー・・・!!!???」
少女はそのままステッキを思いっきり振りかぶって投げとばす。向かっていた先はアースとクルシーナが戦っている場所であった。
「アース!!!」
フォンテーヌが叫ぶと、アースは声に気づいてこちらを振り向く。
「!?」
その光景に目を見開いたクルシーナは、その場から飛びのいて戦線を離脱する。
「!! ふっ!!」
一方のアースは、飛んで体を回転させながらメガビョーゲンへと向かっていく。
「はぁぁぁぁ!!!!」
「メガァ・・・!?」
アースはメガビョーゲンの顔面に渾身のパンチを食らわせて吹き飛ばす。メガビョーゲンは地面に叩きつけられて、土煙を立たせる。
アースはそのまま少女の隣へと降りると、彼女を不思議そうに見る。
「あなたは・・・一体、誰なのですか?」
「わ、私は・・・」
アースがこちらを顰めるように見て、突然質問をしたことに言い淀む少女。
「メ、ガァ・・・」
「!! はぁっ!!」
「ビョーゲン・・・!?」
メガビョーゲンが起き上がろうとしていることに気づいた少女は、ステッキから黄色いエネルギーを放ち、着弾したメガビョーゲンに爆発を起こす。
「アース!! 今ならやれるよ!!」
「お願い!!」
「・・・わかりました。行きましょう」
そこへプリキュア3人の声が聞こえたことで、アースはとりあえずメガビョーゲンの浄化を優先させようとする。
アースは両手を祈るように合わせる。一枚の紫色の羽が舞い降り、ハープのような武器へと姿を変える。
「アースウィンディハープ!!」
そう呼ばれたハープに、風のエレメントボトルがセットされる。
「エレメントチャージ!!」
アースはハープを手に取って、そう叫ぶとハープの弦を鳴らして音を奏でる。
「舞い上がれ! 癒しの風!!」
手を上に掲げると彼女の周りに紫色の風が集まり始め、ハープへとその力が集まっていく。
「プリキュア! ヒーリング・ハリケーン!!!」
アースはハープを上に掲げてから、それを振り下ろすとハープから無数の白い羽を纏った薄紫色の竜巻のようなエネルギーが放たれる。
そのエネルギーは一直線にメガビョーゲンへと向かい、直撃する。
竜巻のようなエネルギーはメガビョーゲンの中で二つの手へと変化し、空気のエレメントさんを優しく包み込む。
メガビョーゲンをハート状に貫きながら、光線はエレメントさんを外に出す。
「ヒーリングッバイ・・・」
メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていく。
「お大事に」
そして、メガビョーゲンに蝕まれた場所が元に戻っていき、すこやか市の街や商店街なども元の色合いを取り戻していく。
「ワゥ~ン!」
体調不良だった子犬ーーーラテも額のハートマークが黄色から水色に戻り、元気になった。
「あーあ、やられちゃった・・・。まあ、いいわ。もう今日は疲れたし、それにこいつもどうにかしないといけないしね・・・」
クルシーナはメガビョーゲンが浄化されてしまったのを残念に見やりつつも、特に気にしていないような口ぶりで言うと、呆れたような表情でまだ眠っているヘバリーヌを見やる。
「あぁん・・・お姉ちゃん・・・♪」
「・・・ふん」
なんだか気持ちよさそうにしていて、いい夢でも見ているようなヘバリーヌの赤らめた寝顔。クルシーナはそれを見て、そっぽを向くように鼻を鳴らす。
そして、そのまま二人は姿を消した。
「やったよ!! アース!!」
「ええ、みなさんのおかげです」
4人は集まって互いの健闘を褒めあう。
「ラテ様も無事でよかったです」
「ワン!」
アースはラテを抱き上げて、無事であることに安堵する。
グレースたち3人は自分たちもお手当てを諦めないことが功をなしたが、それとは別に、何よりも評価してほしい人物がいた。
「だって、さっきいたあの娘のおかげで・・・あれ?」
スパークルはそう言いながら振り向くも、そこに少女の姿はなかった。
「あの娘、どこ行っちゃったの・・・!?」
「もっと、お礼を言いたかったのに・・・」
フォンテーヌやスパークルが辺りをキョロキョロするも、少女の姿は消えていてどこにもいない。
「ウゥ~ン・・・」
「? どうしましたか? ラテ」
ラテが何か言いたげな鳴き声を発していることに気づいたアースが声をかける。
「ラテ、どうしたの?」
とっさにグレースが聴診器をラテに当てて、彼女の心の声を聞く。
(さっきの子、まるでのどかみたいだったラテ・・・)
「私みたいって・・・どういうことなのかな・・・?」
「ラビリンは、よくわからないラビ・・・」
ラテが心の声で発した意味深な台詞に首をかしげるグレース。
「・・・・・・・・・」
そして、アースはどこかわからない虚空を見つめながらも、その表情は険しい顔をしていたのだった。
一方、その様子をその少女はどこか高いところで見つめていた。
少女の姿はフードは普通の暗い色に戻っており、髪はすでにオレンジ色から金髪に戻っていた。
「泣き止んで、よかった・・・」
少女はそう呟くと薄っすら笑みを浮かべながら、その光景に背を向けて去っていくのであった。
「はぁ・・・・・・」
廃病院の中の自室、クルシーナはベッドに寝転がりながらため息をついていた。
自分が考えているのは、古のプリキュア似た存在とあのフードを被ったあの女の存在だ。古のプリキュアについては、自身の退屈しのぎになりそうなやつではある。しかし、あいつはメガビョーゲンを簡単に負かすばかりか、今後の作戦の邪魔になるかもしれない。何か方法を考えなくてはいけない。
それと、お父様・キングビョーゲンが脱走者と称するあの女。あれは、自分が植物園で生み出したやつに間違いはないだろうが、あいつは立派な失敗作だ。でも、あいつも使いようによっては使えるかもしれない。それをどうしたものか。
お父様にはああ言って放置することにしてもらったが、いかにしてあいつらを貶めるための道具として利用するか。
そして、クルシーナは自身のポケットから弄って何かを取り出す。それは自身が生み出したあのメガビョーゲンが手に入れた緑色のかけらのようなものだ。
「・・・・・・・・・」
禍々しい赤色の何かを澱ませるそのかけらはまるで生きているかのように蠢く。こいつも何かに使えそうだと持ち帰ったが、一体何に使えるのか自分にもわからない。一度、検証してみないといけない。
地球を蝕むための課題は山積みだ。そう思うと何だかかったるくて、やる気がなくなってくる。
「はぁ・・・」
クルシーナは緑色のかけらをほっぽり出すと、ベッドに横になる。
こういう時は、眠って全てを忘れてやるのに限る。
そう思いながら、クルシーナは目を閉じようとするが・・・・・・。
「クルシーナ! クルシーナ!!!!」
「・・・何よ?」
扉をバンバンと叩く音と同時に呼ぶ声が聞こえ、その扉が開かれる。クルシーナは不機嫌な口調で、声の主であるドクルンに聞き返す。
「お父さんが呼んでますよ。何やら緊急招集のようで・・・」
「・・・・・・・・・」
そんな緊急収集になるようなことが起きているだろうか? 自分にはそうなるような思い当たる節はないが・・・・・・。
とはいえ、クルシーナはベッドから起き上がると立ち上がって、地べたに放置しているヘバリーヌに近づく。
「ほら、起きろ!!」
「あぁぁぁぁぁん♪・・・あれ? クルシーナお姉ちゃん?」
クルシーナはヘバリーヌの腹を蹴り飛ばすと、その小娘から甘い声が大きく発したかと思うと、目をパチクリとさせながら目を覚ます。
「・・・消されそうになったくせに、呑気なやつね」
クルシーナは呆れたような表情で見つめながらそう言うと、ため息をつく。
「お父様の招集。さっさと来い」
クルシーナはそう言うとドクルンの後をついていくように部屋を後にする。
「あぁん♪ お姉ちゃんたち、待ってぇ~♪」
ヘバリーヌも猫なで声を漏らしながら、彼女たちを後をついていくべく部屋を後にする。
そして、部屋の中には赤く淀んだ何かがあるかけらだけが残されたのであった。