ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

60 / 144
原作第21話がベースです。
謎の少女がプリキュアに接触します!


第59話「少女」

 

マグマに満たされた世界、ビョーゲンキングダム。そこにはグアイワルが報告がある事項の下、幹部たちがビョーゲンズの主である、キングビョーゲンに召集されていた。

 

まず、この前の一部始終を見ていたグアイワルが報告を行った。

 

「何・・・バテテモーダが・・・?」

 

キングビョーゲンに知らされたのは、バテテモーダがプリキュアに浄化させられたということだ。

 

余談ではあるが、バテテモーダはキングビョーゲンにわざわざ約束までを取り付けた挙句、意気揚々と出撃して行った。ちなみに、このことは三人娘以外は誰も知らない。

 

「はっ、しかとこの目で」

 

目の前でバテテモーダの末路を見ていたグアイワルは間違いないと報告。

 

「そうですね。しかも、もうあれでは消えてなくなっているでしょうねぇ」

 

目撃者の一人であるドクルンも同じように肯定し、バテテモーダは完全に消滅していることを確信として伝える。

 

「いやだぁ~、バテテモーダのやつ、浄化されちゃったのぉ~?」

 

それを聞いていたシンドイーネはまるで邪魔者がいなくなったと言わんばかりに嬉しそうだ。

 

「私たちの仲間が一人消えたっていうのに、不謹慎なやつなの」

 

その様子を見ていたイタイノンが軽蔑の目でシンドイーネのことを見やる。

 

もとよりバテテモーダは他人に媚びを売るようなやつだったので、ダルイゼンらはともかく、三人娘からもそんな好かれたようなやつではなかったが。

 

「まだまだ使えたものを・・・」

 

キングビョーゲンは残念だと言わんばかりの惜しむような様子で話す。

 

「もぉ~!! プリキュアの奴ら、許せませんよね!! キングビョーゲン様!!」

 

と、主が仲間のことを惜しいと感じていると察すると、シンドイーネは一転して態度を変える。

 

「お前はどっちが本心なの・・・?」

 

イタイノンはシンドイーネを心底呆れたような様子で見る。

 

「ちぇ・・・せっかく人手が増えたと思ったのに・・・」

 

間接的に活発的なやつに押し付けていたダルイゼンは面倒くさそうに言う。

 

「ふん、所詮は出てくんのが早すぎたんだよ。あの古のプリキュアに似たやつの前にはね。なのに一人勝手に突っ走っちゃってさ」

 

クルシーナは惜しいとも思わない冷たい口調でそう言った。

 

「普段はいい子だったんですけどねぇ・・・」

 

ドクルンはメガネを上げながら言う。

 

「出世なんか考えないで、後輩ぶってたほうが幸せだったに違いないの」

 

イタイノンは興味のない言い方をしながらも、もう少し考えていれば消滅はしなかったのではないかと少しは惜しむような発言はしていた。

 

「モーダちゃん、消えちゃったんだ~・・・もっと遊びたかったのになぁ~・・・」

 

ヘバリーヌは遊び相手がいなくなってしまい、年頃の子供のようなつまらなそうな表情をしていた。

 

「新しく現れたプリキュアは、力は受け継いではいるものの、テアティーヌのパートナーとは別人かと・・・」

 

「力を、受け継いでいる・・・?」

 

それぞれが反応を示す中、グアイワルは古のプリキュアに似てはいるものの、ヒーリングガーデンの女王・テアティーヌと共に、キングビョーゲンに挑んできたプリキュアとは別人ではあると明言。

 

「要するにアタシたちが襲った街に現れたやつとか、大昔にお父様が戦ったやつとか、それとは全部違う別の存在だってことよ。気配や力は似ていたけど、似ているだけであいつとは違ったわね」

 

「ぬぅ・・・・・・」

 

クルシーナが補足して説明すると、キングビョーゲンが唸り始める。

 

「そんな目障りなやつ、このシンドイーネにおまかせください!! 見事、消しとばしてやりますから!! キングビョーゲン様ぁ!!」

 

「実力もわかっていないのに、どうやって戦うの? 自信たっぷりに突っ込んだところで、お前もバテテモーダの二の舞になるだけなの」

 

えらく上機嫌なシンドイーネに、イタイノンが注意をするかのように諭す。

 

「まあ、とにかく、今後はその新しく現れたプリキュアにも警戒しつつ、私たちはいつも通りに地球を蝕むという活動をしていくということでいいんじゃない?」

 

クルシーナがそう結論付けると、キングビョーゲンは一応納得したような反応を示したようで。

 

「・・・よかろう。ところで、例の脱走者の件だが・・・」

 

「脱走者?」

 

「あ~、そのこと?」

 

キングビョーゲンが話題を切り替えると、その話にダルイゼンらが疑問を持つ中、クルシーナは面倒臭そうな表情で頭をかく。

 

「それだったら、問題ないわよ。あいつは今、地球であのプリキュアどもが住んでる街にいて、絶対に合流するはずだし」

 

「・・・そもそも、脱走者って何? 俺、そんなこと聞いていないけど?」

 

クルシーナが状況を説明すると、ダルイゼンが疑問を持つ。

 

「・・・パパ、こいつらに話してないの?」

 

その様子を見ていたイタイノンがキングビョーゲンに問う。

 

「あの時は極秘だったからな。クルシーナ、ドクルン、イタイノンにしか話していない」

 

「キングビョーゲン様ぁ!! そういうのは話してくれれば、私もそいつもあっという間に消しとばしてみせますのに・・・」

 

キングビョーゲンがそう言うとシンドイーネが話に割り込んで、不満を漏らす。

 

「消し飛ばす必要はないわよ。あいつは保険だからね」

 

「保険とはどういうことだ?」

 

クルシーナの意味深な発言に、グアイワルが疑問を吐露する。

 

「それはあいつのある能力にあるわけ。前、あいつを追跡して逃げた跡を見てみたんだけど、その周りの生き物の生気が少し減ってたの。それを利用すれば、プリキュアを一人始末できるんじゃないかなって思ってね。まあ、あいつは無自覚だろうけどさ」

 

不敵な笑みを浮かべながら話すクルシーナ。幹部たちは特に感情を出すこともなく、黙って聞いていた。

 

「だから、そいつがプリキュアと合流しても特にこちらには支障はなし。むしろ、それも作戦の一つだし、始末に失敗しても最悪そいつをこっちに引き込めばいいしね」

 

「なるほどね・・・」

 

特に興味がなさそうに聞いていたダルイゼンが淡々と返す。

 

「では、お前たち、今後の活動も期待しているぞ」

 

「「「はっ!」」」

「はーい」

「わかりました」

「・・・わかったの」

「はーい!」

 

幹部7人のそれぞれの返事を聞くと、キングビョーゲンは姿を消していった。

 

そして、幹部たちは解散した後、三人娘は珍しく一緒になって席を囲んでいた。

 

「さてと、これの事だけど」

 

クルシーナは懐から緑色のかけらを取り出す。これは先日、自分のメガビョーゲンが残したとされる、いわばメガビョーゲンのかけらみたいなものだ。

 

「まだ不明確ですけどね、これに関しては・・・」

 

ドクルンもこれが何なのかを調べていないため、首をかしげながら言う。

 

「この前、バテテモーダがやっていた、メガビョーゲンを急成長させるということはわかっているの」

 

イタイノンは手に持っている自分の緑色のかけらを見ながら言う。

 

今現在、三人が持っている緑色のかけらはクルシーナが7個、ドクルンが7個、イタイノンが3個とバテテモーダに一個ずつ与えたのみだ。

 

その結果、バテテモーダは一つ使用し、メガビョーゲンをあっという間に急成長させる方法を発見した。

 

「まあ、他にも使い方はありそうだけど、あいつらにとっての対抗手段になり得ることは確かね」

 

緑色のかけらは他にもいい使い方はあるはず。それ次第によっては、プリキュアを撃ち負かせるほどの力とキュアアースを圧倒できるほどの力をつけさせることができるかもしれない。

 

「それは少しずつ検証していくとしましょうかしらね」

 

クルシーナは緑色のかけらを懐にしまってから立ち上がり、二人の前から歩き去っていく。

 

「行ってくるんですか?」

 

「当然でしょ」

 

「いってらっしゃいなの・・・」

 

ドクルンとイタイノンは、クルシーナに手を振りながら見送るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平光アニマルクリニック。そこは、すこやか市にある平光てるひこが院長として経営する動物病院である。

 

その病院の末っ子の娘であるキュアスパークルに変身する、平光ひなたは散歩でもしようと外を歩いていた。

 

「ん~、いい天気だよね~!」

 

「そうだな~、こういう天気だといいことの一つぐらいはありそうだぜ」

 

体を伸ばしながらテクテクと歩いていくひなた。そんな彼女の肩にはパートナーのニャトランが一緒についてきている。

 

「そういえば、のどかっち大丈夫だったのかなぁ?」

 

「もしかして、アスミのことか?」

 

「うん・・・引き受けるって言ってたし・・・」

 

ひなたはのどかのことを心配していた。杞憂だとは思っているが、本当に何もわからない彼女のことをフォローできているのだろうか?

 

ここでひなたの言う彼女というのは、キュアアースに変身する精霊の女性のことだ。彼女には名前が無かったため、彼女の方からつけてくれるようにお願いし、現在はのどかたちがアスミという名前をつけている。

 

そのアスミは地球で生まれたばかりのため、帰る家も寝るところも知らない。それどころか地球全体が家と言い、終いにはどこでもいいと言わんばかりに地面の上で寝そべろうとする始末。

 

それを見かねて三人は話し合いの末、のどかが自分の家に彼女を住ませてあげることにしたのだ。その理由はニャトランからも聞かされたが、彼女はラテのパートナーであることからのどかの家で一緒に住んだ方がいいということだった。

 

そんなのどかがアスミを相手に苦労していないだろうか、親になんて説明をするんだろうとか、彼女と仲良くやれているんだろうかとか、いろいろと心配になった。

 

「まあ、のどかなら大丈夫じゃね? めげないし、強いからさ」

 

「うん、そうだよね!」

 

ひなたはニャトランの言葉を聞いて、二人は大丈夫だろうと安心していた。

 

そんな二人は山のあたりを差し掛かったところを歩いていると、そこに見覚えのある人物が。

 

「ん? あれって・・・?」

 

「? どうかしたのかニャ?」

 

ひなたは足を止めるとそこには黒いフードを被って歩いている人物の姿が見えた。しかも、どこかで見たことがあるフードの人物だったから気になった。

 

杖代わりにして利用しているステッキはよく見るとあの時のメガビョーゲンで使用したステッキによく似ている。人物はよく見ると、ステッキのようなものを杖代わりにして歩いている。しかし、その動きはほとんど進んでおらず、まるで引きずるような歩き方だ。

 

訝しみながら見ているとその人物は足を踏み出そうとして、地面へと倒れるのが見えた。

 

「ああ!?」

 

ひなたはそれに動揺し、フードの人物へと駆け出していく。

 

「ねえ、大丈夫!?」

 

ひなたは倒れたフードの人物の近くにしゃがみ、体を仰向けにして上半身を起こすような体制にすると人物の体を揺さぶる。

 

その拍子にハラリと被っていたフードが剥がれ、金髪の少女の顔が見えてくる。その髪には二つの黒いリボンが対となって付けられている。

 

「えっ・・・女の子・・・!?」

 

「うぅぅ・・・・・・」

 

フードの人物が少女だということに戸惑うひなた。すると、少女が呻るような声を出し、顔が苦しむような表情へと変わる。

 

「あ・・・キミ、大丈夫!?」

 

「うっ・・・私、は・・・もう、ダメ、だ・・・」

 

ひなたが声をかけるも、少女は体を震わせながらかすれた声を出している。

 

「うぇぇ!? えっと、えっと・・・ニャトラン! こういう時ってどうすればいいの~!?」

 

「ニャ!? お、俺に聞かれても・・・!」

 

ひなたはどうしたらいいかわからずに、ニャトランに助けを求めるも振られた彼も困惑していた。

 

「と、とりあえず病院に・・・って、病院ってどっちだっけ!?」

 

パニックになっているひなたは病院の場所もわからなくなるほど混乱していた。

 

「わ、私、は・・・・・・」

 

少女が表情に力を無くしていき、そのピクピクとした動きも弱々しくなっていく。そして、そのまま力尽きる・・・その時だった。

 

ギュルルルルルルルルルルルル!!!!!

 

「・・・・・・へっ?」

 

突然、獣が唸っているかのような大きな音が彼女から鳴り響く。ひなたは思わず、目を丸くしたなんとも間抜けな表情になる。

 

ギュゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 

また、大きな音が鳴り響く。しかも、その音はよく耳を澄ませると倒れている少女のお腹から聞こえているようだった。

 

「大きな音が、さっきから、聞こえ、て・・・それで体や、あた、ま、がクラクラ、して・・・目が・・・見えなくなって、きて・・・私は、もう・・・ダメ、だ・・・」

 

少女は苦しそうにしていた表情から一変して、目をぐるぐると回したような表情になっていた。というよりも、本当に目を回していた。

 

「・・・・・・えっと?」

 

「・・・もしかして、お腹が空いているのかニャ?」

 

どうやら少女は空腹で倒れただけのようだったことを知り、ひなたとニャトランは戸惑いながらも冷静になっていた。

 

とりあえず、自分の家に連れて帰ることにした。

 

ひなたは空腹でフラフラな少女を支えながら歩き、散歩で進んでいた道を引き返していく。

 

懸命に彼女を運ぶように歩いていくと自分の家でもある平光アニマルクリニックが見えてきた。

 

「あっ・・・お姉! お姉!!」

 

ひなたはテラス席のテーブルを拭いている自身の姉・めいを呼ぶように声をかける。

 

「あら、ひなた・・・って、その娘どうしたの?」

 

「この娘、空腹で倒れてたの・・・! 何か食べるものを・・・!!」

 

「??」

 

めいは振り返ると妹がフードの人物を抱えているのを見て訝しげな表情になる。慌てるように叫ぶひなたの言葉にも、首を傾げるばかりだった。

 

そして、少女は黄色いワゴン車の近くのテラス席に座らされている。

 

「・・・・・・・・・」

 

少女は疲労が溜まっているのか、椅子にもたれかかりながらぐったりとしている。

 

その様子をひなたと、どうしたらいいかわからないという理由で彼女が呼び出したちゆが見つめている。

 

「・・・ねえ、ひなた」

 

「何?」

 

「この娘って、あの・・・?」

 

「うん・・・この前、メガビョーゲンの浄化に協力してくれた娘だと思うんだけど・・・」

 

ひなたとちゆは隣同士で、目の前の少女に聞こえないような声で話す。正直、あの時は意識も朦朧となりかけていたので、はっきりと見れなかったが、このフードによく似た人物だったような気がする。

 

「はい、どうぞ!」

 

「っ!!」

 

そんな彼女の前にカラフルなお皿に乗った、ピンク色のハートの包装紙に包まれたお菓子が差し出される。それはすこやかフェスティバルにも出店した際に出したこともあるパンケーキだ。

 

少女はそれに気づくとぐったりとさせていた表情を元に戻して、じっくりとそのパンケーキを見る。

 

「・・・・・・・・・」

 

じっくりとじっくりとそのパンケーキを見る。まるで怪しいものを見るかのように。

 

「・・・これは、なんだ?」

 

少女は差し出してくれた女性ーーーめいの方を見ながら言う。

 

「うちの店の特製のパンケーキよ。見たことない?」

 

「うん・・・見るのは初めてだ・・・」

 

「外国の方なのかしら? でも、それにしては日本語は上手だし、外国にもパンケーキはあるもんね」

 

「外国ってなんだ? そんなところがあるのか?」

 

「????」

 

めいは少女の言動に困惑して、ますます首をかしげるばかりだ。

 

「あ・・・お、お姉!! ありがと!! もう仕事に戻っていいから・・・!!」

 

「え、でも・・・!!」

 

「き、きっと彼女はお腹が空きすぎて、落ち着いていないんだと思います・・・!!」

 

「そ、そうそう!! だから、もう心配しないでいいから!!」

 

少女と向かい側の席に座っていたひなたとちゆがその様子を見かねて、めいに仕事に戻るように言う。めいは余計に訝しむが、二人は上手いことを言い、ごまかすように黄色いワゴンの方に押しやる。

 

そんな三人の様子を不思議そうに見つめつつも、少女は再びパンケーキに向き直る。

 

「・・・・・・・・・」

 

茶色の円盤みたいなものが二つ重なっている、それは彼女にとっては見たこともない謎の物体。少女は息を呑むと恐る恐る包み紙ごと手に取り、それをもっと見えるように顔に近づける。

 

触ってみるとふわふわとした感触がし、生暖かいものが赤い手袋越しに伝わってくる。鼻でスンスント嗅ぐが、特に危険な香りをしてはいない。しかし、紙に包まれているということは、手で触れてはならないものにも見える。

 

これは、食べられるのか・・・?

 

少女はただのパンケーキに在らぬ疑いを持っていた。

 

「あ、あのさぁ・・・」

 

「??」

 

「食べないの?」

 

「!?」

 

少女が全く手に持っているだけで食べてくれないことを見かねたひなたが声をかける。そんな彼女の言葉を聞いて、少女は驚いたような表情を浮かべる。

 

「こ、これは、食べれるのか・・・!?」

 

「当たり前じゃん!! なんだと思ってたの!?」

 

「で、でも、私はこんなもの見たこともないし・・・」

 

少女の仰天な発言にひなたがツッコミを入れる。食べれるものだとわかっていても、少女は不安そうにパンケーキを見つめる。

 

今度はそれを見たちゆが声をかける。

 

「食べてみて」

 

「っ・・・」

 

「誰だって見たことがないものには戸惑うわよね。でも、ひなたはいい子よ。人を騙すなんてことしないわ。だから、彼女を信じて」

 

ちゆが穏やかな表情でそう言うと、少女は彼女の顔とパンケーキを交互に見つめる。

 

ギュルルルルルルルルル!!!!

 

「っ・・・」

 

自分の腹部からまた大きな音が鳴った。それと同時に体がフラつくように感じる。

 

この大きな音、フラつきとうまく動けないのを収めるためにはこのパンケーキを口にするしかないのだろう。

 

そう思った瞬間、今までのしがらみが解けた少女は思い切ってパンケーキにかぶりつく。

 

「!!??」

 

少女はその瞬間、衝撃を受けた。この円盤のような物体が食べたことないのに、美味しく感じられるなんて・・・!!

 

「あむ!あむ!!ん~!!!!」

 

少女は瞳をキラキラとさせながら、パンケーキをほうばっていく。その様子を見ていたひなたとちゆは・・・。

 

「す、すごい喜んでるし・・・」

 

「え、ええ、見ているこっちがまぶしくなっちゃうくらいにね・・・」

 

あまりにも様子の変わった彼女に少し戸惑いの表情・声をあげながらも、二人はお互いに顔を見合わせて笑みを浮かべる。

 

「ジュースも飲む?」

 

「ん?」

 

ひなたに声をかけられると少女は食べている手を止めて、ごっくんと飲み込む。

 

「ジュース? それも美味しいのか?」

 

「うんうん! 美味しいよ!!」

 

「ふわぁ~!! それは飲んでみたいなぁ!!」

 

ひなたの返答を聞いて瞳をキラキラとさせる少女。なにやら年頃の少女のようにワクワクしている。

 

ーーーーのどかみたいだったラテ・・・

 

(本当に、のどかに雰囲気が似ているような気がするわ・・・)

 

そんな中、ラテの言葉を思い出したちゆは確かにその感受性が豊かそうなところが彼女に似ていると感じた。

 

「はい!お待たせ!!」

 

そして、少女はひなたによってピンク色のカップのジュースを差し出される。

 

「・・・この黄色い動物の足みたいな形のものはなんだ?」

 

「それはね! グミっていうの!!」

 

「グミ?」

 

「そう! このジュースはね、あたしが考えたメニューで、そのグミと一緒に飲めば幸せな気持ちになるんだよー!!」

 

「おぉ~!! それは素敵だなぁ!!」

 

少女がカップの中に入っている黄色いグミに疑問を持つと、ひなたは嬉々しながら説明する。すると、少女も表情をキラキラとさせていた。

 

少女は早速、その素敵なジュースをストローですする。

 

「ん~、ぷはぁ! 美味しい~!! よくわかんないけど、口の中がさっぱりするなぁ~!!」

 

少女は瞳をキラキラとさせながら、ジュースを存分に味わう。

 

そんな笑顔になっている少女に対し、ちゆはこんなことを聞いてみた。

 

「ねえ、あなた・・・」

 

「ん?」

 

「あなたって何者なの?」

 

ちゆは気になったことを聞いてみると、少女はジュースをテーブルの上に置くと、高潮していたテンションを下げるように表情を俯かせる。

 

そして、彼女は口を開いた。

 

「それが、よくわからないんだ・・・」

 

「えっ?」

 

「私は気がついたら変な場所にいて、そこがなんだか怖くなって、ここへと逃げてきたんだ。この格好だって気がついたらしていたし・・・」

 

少女はどこからかステッキを手に持って掲げる。

 

「このステッキもなんで持っていたかわからない・・・あの怪物を止めようと思った時にいつの間にか持っていたんだ・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「で、でも、自分が誰なのかはわかるよね?」

 

アスミンじゃあるまいし、と心の中で言葉を押し留めつつも、ひなたは問う。しかし、少女は首を振った。

 

少女の反応を見て、ちゆは困ったような、悲しそうな顔をする。そんな彼女の耳元にひなたが声をかける。

 

「ねえ、この娘、アスミンと同じなのかな・・・?」

 

「どうしてそう思うの・・・?」

 

「だって、あたしたちと女の子してるのにパンケーキやグミも知らないんだよ? それに自分の名前もわからないのはおかしくない?」

 

「記憶を失っているだけってこともあるんじゃないかしら? 何かあって、自分の名前を思い出せないだけかもしれないってこともあるんじゃない?」

 

「うーん・・・・・・」

 

ちゆの言葉にひなたは考え込んでしまう。自分たちと同い年ぐらいの女の子なのに、食べ物の名前を知らないのはおかしい。それに名前も家もないなんて、アスミと同じ系統なのではと思ってしまう。

 

しかし、ちゆの言っていることも一理あるのだ。記憶を失っていれば、自分の名前をわからないのは確かだし、食べ物の名前も忘れているだけかもしれない。そういうこともありうるのだ。

 

お腹が空いているということもわかっていないようなのが気になるが、どう判断したものか・・・。

 

「あの・・・・・・」

 

「「??」」

 

「私のこと、何か知ってるのか・・・?」

 

そんな二人の会話に、少女が声をかけてくる。

 

「い、いや! わかんないけど・・・!!」

 

「あ・・・そ、そうか・・・・・・」

 

ひなたが慌てたように否定すると、少女はわかりやすいくらいに落ち込む。

 

「でも、これだけはわかるわ」

 

「??」

 

「あなたは好奇心旺盛で優しい人。さっき食べているものに嬉しそうにするし、怪物が現れた時には恐れないで立ち向かう。そういう人に見えるわ」

 

「!?」

 

ちゆの微笑みながら言ったことに、少女は目を見開いて頬を紅潮させる。

 

「そうか・・・・・・」

 

少女は足をモジモジとさせながら呟く。よくわからないが、自分の中に暖かい何かを感じた。

 

「へへ」

 

「ふふふ」

 

ちゆとひなたは少女が嬉しそうな顔を浮かべたことに、笑みを浮かべた。

 

「ところで・・・」

 

「「??」」

 

「キミたちはどうして怪物を知っているんだ? 戦ったことがあるのか?」

 

「「!?」」

 

少女の問いに二人は動揺する。そういえば、彼女は自分たちがプリキュアだということを知らないのだ。

 

「い、いや! それは・・・!!」

 

「か、怪物を近くで見たことがあるの・・・!! もちろん、私たちも逃げてるけど・・・!!」

 

「??」

 

少女は、ひなたとちゆの慌てたような反応に首をかしげるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、今日はどうしようかしらね」

 

その頃、町ではクルシーナが地球を蝕むべく素体を探していた。

 

「この辺は殺風景ね・・・まあ、でもこういう場所がおあつらえ向きなのかしら」

 

クルシーナがいるのは山や小川が近くにある建物よりは、畑や田んぼなどがありそうな場所。人目もあまり気にする必要がないので、特に怪しまれることもなく活動ができる場所だ。

 

そのあたりに素体がないかどうかを確認していると、彼女の視界に映る人物が。

 

「? ダルイゼン」

 

「? クルシーナか・・・」

 

クルシーナが声をかけると、ダルイゼンは特に動じることなく答える。

 

「アンタもこの辺にいたんだ?」

 

「いたら悪いの?」

 

クルシーナの言葉に、ダルイゼンは面倒くさそうに答える。

 

ダルイゼンはクルシーナの解答を特に待たずに、ある花へと近づく。それは複数の花弁が付いているのが特徴の黄色い花、マリーゴールドだ。

 

「ねえ」

 

ナノビョーゲンを取り憑かせようとするところで、クルシーナが声をかけたので動きを止める。

 

「アンタはどう思ってんの?」

 

「・・・何が?」

 

「バテテモーダのことよ。人手が増えたとかなんとか言ってたけど、本当のところはどうなわけ?」

 

クルシーナが質問したのは、古のプリキュアに似たあいつに浄化されたバテテモーダのことだ。人手が減ったことに残念に思っていたが、他人に興味のないこいつがそんなことを思うはずがない。

 

ダルイゼンは少しの沈黙の後、口を開いた。

 

「興味ないよ。誰かが増えようが減ろうが、俺は特に何も気にしないし、やることも変わらない」

 

「あっそ・・・過去は振り返らないっていう考えなわけ? っていうか、アンタに過去なんかあったっけ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

まるで気にも止めないという言い方をするダルイゼン。しかし、その言い方にクルシーナは不機嫌そうに顔を顰める。

 

「・・・まあ、別にいいけど。アタシもあいつなんかに思入れなんかないし、小賢しい自惚れ屋だったってだけだし」

 

「・・・そうなの?」

 

解答に興味のないクルシーナはそっぽを向きながらも、バテテモーダの消滅には何の感情も湧かないことを話す。ダルイゼンは返しつつも、まるで興味もない感じだった。

 

「とりあえず、仕事したら? アタシもやるけど」

 

「お前に言われなくても」

 

クルシーナとダルイゼンはお互いに背を向けて、目的のために動き出す。

 

クルシーナはまっすぐ歩いていくと、畑にスイカがたくさんあるのが見えた。

 

「フフフ・・・今の季節といえば、これだもんねぇ」

 

クルシーナはそのスイカの一つに目をつけると、不敵な笑みを浮かべる。

 

その場で手のひらを広げるとそこに息を吹きかけ、黒い塊のようなものを出現させる。

 

「進化しろ、ナノビョーゲン」

 

「ナーノー」

 

生み出されたナノビョーゲンが鳴き声を上げながら、畑のスイカへと入っていく。農家の人によって作られているであろう、スイカが病気へと蝕まれていく。

 

「・・・!?・・・!!」

 

スイカに宿るエレメントさんが病気に蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!」

 

スイカのような体に両手・両足が生え、頭から蔓のようなものをたくさん生やした一頭身のようなメガビョーゲンが誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲンズたちによって、そんなことが行われる中、カフェワゴンでは・・・・・・。

 

「ねえ、思い出せないんだったら、名前考えない? せっかく会ったのも縁だしさ、名前わかんないのなんか嫌じゃん?」

 

「そうね。名前を考えれば、少なくとも自分には困らないと思うわ」

 

「そうだな・・・じゃあ、名前はキミたちがつけて・・・・・・」

 

近くのテーブルで三人が、少女の名前について話そうとしていた。少女は名前をつけられることに損はない。だから、自分では思いつかないから名前をつけてもらおうと思った、その時だった・・・・・・。

 

ドクン!!!!!!

 

「!!??」

 

少女は自分の中の鼓動が鳴り、そして何かの声が聞こえてくるのを感じ、椅子から立ち上がる。

 

「え、なに!? どしたの!?」

 

「どうかしたの・・・?」

 

突然、少女が立ち上がったことに戸惑いを隠せないちゆとひなた。少女は虚空を見つめていた。

 

「泣いている声が、聞こえる・・・」

 

「泣いている、声・・・?」

 

少女が呟いた言葉に、ひなたは疑問を抱くも、少女はその言葉を気にせずに意を決したような表情をすると走り出す。

 

「あ、待ってよ・・・!!」

 

「泣いている声って、もしかして・・・!!」

 

少女が突然走り出したことにひなたが叫ぶ。ちゆは少女の声に引っかかるものを感じ、ある推測にたどり着いた。

 

「みんなー!!!!」

 

そこへもう一つの叫ぶ声が聞こえてきた。それはのどかのパートナーであるラビリンだ。

 

「メガビョーゲンラビ!!」

 

「えっ!?」

 

「やっぱり・・・!!」

 

ひなたは少女が何かに気づいたとき、ラビリンからメガビョーゲンが現れたことに驚く。ちゆは察していたことが的中したと錯覚。

 

「行きましょう!!」

 

「うん!!」

 

ちゆはひなたに声をかけると、メガビョーゲンの出現場所に向かうべく走り出した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。