ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第22話がベースです。
かすみを登場させたことによって話が多くなって大変になって、話を考えるのも苦労してます。
でも、頑張って書いていきます。


第61話「心配」

 

マグマに満たされた世界、ビョーゲンキングダムーーーーそこでは、シンドイーネが何やら寂しそうにしている様子だった。

 

「はぁ〜・・・」

 

シンドイーネは岩場を指でなぞりながら、ため息を吐いていた。

 

「どうして私はキングビョーゲン様が好きなのかしら? ずっとお会いできないまま・・・思いは報われないのかしら・・・」

 

シンドイーネは最近、キングビョーゲンに会っていないことを悲しく思っていた。

 

思えば愛しのキングビョーゲンに仕えて数ヶ月が経とうしているが、いまだに主人は自分のことを振り向きすらもしない。本当はキングビョーゲンは、自分のことをなんとも思っていないのではないかと感じてしまう。

 

内なる思いが膨れ上がって、そのプレッシャーに押しつぶされそうだった。

 

「単純な話なの。働きもしない奴にパパが姿を現すわけがないの」

 

そんな彼女の背後にいるイタイノンが背を向けて足をブラブラとさせながら、嫌味のように言う。

 

「なんですって!? あんたも大して働いてないじゃないの!!」

 

シンドイーネが岩場に拳をたたきつけながら、怒りの声を返す。

 

「私はお前と違って要所要所で動いているからいいの。パパの駒であるお前とは扱いが違うの」

 

「っ〜〜〜〜!!・・・はぁ・・・」

 

イタイノンはそんな怒りをさらっと受け流して淡々と言葉を返す。シンドイーネは心底悔しそうにすると、相手をするのが疲れたと言わんばかりに冷めて岩場に突っ伏す。

 

「こういう時、キングビョーゲン様の癒しが欲しいわ〜!!」

 

シンドイーネは駄々をこねる子供のような大きな声で言う。

 

コン!コン!

 

「っ・・・??」

 

そんな悲しそうなテンションの彼女の前に、二つのあるものが投げ込まれるように置かれる。それは自分が生まれて初めて見るような緑色のかけらだった。

 

「これは・・・?」

 

シンドイーネが緑色の禍々しい物体を拾い上げて疑問を抱いていると、上から声が聞こえてきた。

 

「メガパーツ」

 

声の持ち主を見上げてみれば、そこにはダルイゼンとクルシーナの姿があった。

 

「それを使えば、メガビョーゲンをすぐに成長させられるわよ」

 

クルシーナが緑色のかけらーーーーメガパーツの特徴を律儀に教える。

 

「おいおい!! それは!?」

 

そこへ別の場所からグアイワルが姿を現して抗議の声を上げた。

 

「キングビョーゲン様に会いたいんなら、これでもっともっと地球蝕んじゃえば?」

 

「そうよ。成果を少しでも出せれば、お父様は会いに来てくれるどころか、喜んでくれるかもね」

 

ダルイゼンとクルシーナは珍しく穏やかな笑みを浮かべながら、シンドイーネを諭す。

 

「・・・そうね。キングビョーゲン様を復活させて、この思いをぶつけて見せるんだから!!」

 

何やら自信のついたシンドイーネは嬉々して、地球を蝕むべくその場から姿を消した。

 

「全くもって単純なやつなの」

 

クルシーナの隣に移動したイタイノンがそう言う。

 

「おい!ダルイゼン!! クルシーナ!! 大事なものを何勝手に渡してるんだ!?」

 

グアイワルが二人に対して抗議の声を上げる。

 

「・・・さっさと蝕むために使えるものはどんどん使えばいい。隠す必要とかある?」

 

「大体、あれはアタシとダルイゼンのメガパーツよ。アタシたちのものをどうしようとアンタには関係ないだろ?」

 

「くっ・・・!」

 

ダルイゼンとクルシーナは不敵な笑みを浮かべながらそう言い放ち、グアイワルは顔を顰めながら睨みつけていた。

 

「でも・・・メガビョーゲンばかりに使ってるのも勿体無い気がするのよねぇ」

 

クルシーナはメガパーツの一つを見つめながら呟く。メガビョーゲンに使用してせっかく巨大化させても、アースには全く通用していないことがわかっているので、出撃するたびにこれではいつもと変わらないだけだ。

 

急成長させる以外にも、もっと有効的な使い方があるはず・・・。クルシーナはそう考えていた。

 

「・・・ふん」

 

イタイノンも同じように手に入れたメガパーツの一つを見つめていたが、すぐに懐にしまい込むと幹部たちに背を向けて歩き出す。

 

「どこ行くの?」

 

「・・・仕事なの」

 

背後から声を掛けるクルシーナに、イタイノンは淡々と答えると地球に向かうべく歩いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーうぅ・・・んぅ・・・んん・・・。

 

ドクン、ドクン、ドクン

 

胸を押さえて苦しむマゼンダ色の髪の少女。

 

ーーーーはぁ・・・はぁ・・・くっ・・・うっ・・・!!

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

ーーーークゥ~ン

 

ーーーーだ、大丈夫、だよ・・・ラテ、早く、帰ろう?

 

子犬を抱えながら、苦しいのに作り笑顔を見せるマゼンダ色の髪の少女。

 

ーーーーはぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!!

 

重そうに体を引きずりながら、懸命に歩いていくマゼンダ色の髪の少女。

 

ーーーーう・・・あ・・・。

 

おぼつかない足を躓かせ、倒れ込んでしまう少女。

 

ーーーーあ・・・あ・・・。

 

倒れて、誰も見つけてくれない状況に絶望する少女

 

ーーーー助けて・・・ちゆちゃん・・・ひなたちゃん・・・。

 

ーーーーお母さん・・・お父さん・・・。

 

ーーーーラビリン・・・・・・。

 

「ああ!?・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

かすみは眠っている布団の上から飛び起きる。息を切らせており、その額や頬にも汗が滲んでいる。

 

「ま、また・・・あの夢か・・・」

 

額の汗を拭いながら呟くかすみ。

 

彼女たち、グレースたちプリキュアと出会う前、メガビョーゲンの猛攻で意識が落ち、その際に見た夢。自分が取り憑いていた少女の中に存在し、苦しめていた自分・・・。あれがのどかたちと出会った今でも、こうして悪夢としてみるのだ。

 

それはまるで、彼女に贖罪として償えと訴えかけているかのように。

 

「のどか・・・・・・」

 

自分の手を見つめながら、彼女の名前をつぶやく。

 

それはそうと、周囲を見渡すとそこは襖で囲まれている部屋だった。

 

「ここは・・・?」

 

かすみは自分の記憶の中を思い返し、ここがどういう場所なのかを思い出そうとする。

 

「あ、そうか・・・ここは、ちゆの家だ・・・」

 

家族との接見をこなし、ちゆが襖に囲まれている部屋に案内されて、その部屋に泊まっていいと言われた気がする。

 

ーーーーおかえり、ちゆ。? その娘は?

 

ーーーーえっと・・・かすみよ。風車かすみっていうの。

 

ーーーーは、始め、まして・・・。

 

ーーーーあ、あのね、お母さん。彼女をしばらくホームステイさせて欲しいの。

 

ちゆは自分を家へと連れてきた際に、彼女の母親らしき人に私を紹介してくれた。でも、その母親は不思議そうにちゆを見ていた。

 

かすみ自身も辿々しくなりながらも答える。ちゆの言った「風車」・・・という言葉には引っかかるが、自分を家に泊まるための虚言なのだろうと思った。

 

本当はちゆがとっさにつけた名字なのだが・・・。

 

ーーーーしばらくってどういうこと?

 

ーーーーえっと、ね・・・かすみはね、外国から日本に帰ってきたばっかりなの・・・!

 

ーーーーえっ?

 

ーーーー日本に帰ってきたのはいいんだけど、元々住んでいた場所がなくなってて、困っていたところを私が見つけたの。放っておけなかったから、家がないならうちに来たらって誘ったの・・・!

 

いろいろわからない言葉が気になるが、ちゆは必死に取り繕うとしているのはわかる。

 

すると母親らしき人は怪しむような目をしながら、自分に顔を近づけてきた。

 

緊張して、背中に嫌な汗をかきそうだった。

 

ーーーーあ、あの・・・。

 

ーーーーかすみちゃんって言ったかしら? ホームステイという割には、ちゆと同い年ぐらいの子で、日本人みたいな名前なのね。

 

ーーーーに、日本人・・・?

 

ーーーーそれに荷物も持ってないし、どうしちゃったのかしら?

 

日本人みたいな名前・・・? 声には出さなかったが、その言葉の意味がわからなかった。なぜならそんな言葉は生まれて初めて聞いたから。

 

ーーーーそ、そうなの!! 外国に長い間住んで勉強してたの!! それで、お金がなくなって路銀が尽きてしまったのよ・・・!! それに荷物がないのも、誰かに盗まれちゃったんですって!!

 

ちゆが慌てたように説明する。これも自分を家に泊めるためなのであろうということはわかる。

 

ーーーー・・・・・・。

 

ーーーーあ・・・えっと・・・。

 

ーーーー・・・そう、わかったわ。

 

ちゆの母親らしき人は顔を離すと、穏やかな優しい笑みを浮かべる。

 

ーーーー歓迎するわ。ようこそ、かすみちゃん。日本に帰ってきて早々、災難にあって大変だったわね。

 

ーーーー・・・!!

 

ーーーー困った時はお互い様だし、こんな可愛い子を追い返すのは可哀想だものね。

 

かすみはその言葉を聞いた瞬間、なんだかよく分からない暖かいものが流れてきたような気がした。でも、それは悪い気はしないということは理解できた。

 

ーーーーよ、よろしく、お願い、します・・・。

 

こうしてかすみは晴れて沢泉家で暮らせるようになったのであった。その際に隣にいたちゆが息を吹いていたのを見て、まずいことは特にないというのはなんとなく察した。

 

その家で暮らしていることをかすみは思い出し、穏やかな笑みを浮かべる。

 

とりあえずは着替えて、みんなのところに行くことにする。

 

ちゆから着ていいともらった寝巻きを脱いで畳んだ後、枕の横に置いてあった自分の本来の服を着る。袖無しの白いワイシャツのようなものに袖を通し、ベルトがついた赤いスカートを履く。

 

そして、足紐の付いた黒いストッキングを履き、両手に籠手のようなものをつけて、その上から赤い手袋をする。最後にシャツにアスコットタイをして、頭の金髪に黒い二つのリボンを両サイドにつける。

 

ちゆに教えてもらった鏡という、自分の姿が見える道具で自分の姿を見つめる。ちゃんと自分がつけていたものは身につけているのかを。

 

「うん・・・!!」

 

かすみは鏡の自分を見て頷いた後、襖の扉を開けて部屋の外に出るとみんながいる場所へと向かっていく。

 

「おはよう、かすみ」

 

「おはよう、ちゆ」

 

途中、自分の部屋を出てきたちゆに挨拶をして、一緒に食卓へと向かっていく。

 

「おはよう、ちゆ、かすみちゃん」

 

「おはよう、お母さん」

 

「お、おはよう・・・ございます・・・」

 

かすみは若干緊張しながら、食卓の中へと入る。手をモジモジとさせながら、顔を少し紅潮させていた。

 

そして、ちゆの家族たちも起床して食卓へと並び、テーブルには色とりどりの献立が並べられる。

 

「おぉ〜!! 私が知らないような、美味しそうなものがいっぱいだ〜♪」

 

食卓の料理に目を輝かせるかすみ。鰆の西京焼き、ナスのお味噌汁、出し巻き卵、きゅうりや大根の浅漬け、そしてホカホカの白いご飯。どれもかすみにとっては見たことのない食べ物だ。

 

「えっ・・・かすみお姉ちゃん知らないって・・・日本の普通のご飯だよ?」

 

その言葉を聞いていたちゆの弟・とうじが疑問を抱く。

 

「が、外国にずっと住んでいたから、こういう料理をあまり見たことがないのよ・・・!!」

 

「あら、そうなの・・・?」

 

焦ったちゆがそう説明すると、なおが再度かすみに聞き返す。日本人という程なのに、ここで日本の料理を素で知らないなんて言ったら、日本人じゃないのが丸わかりだ。まあ、そもそも格好は日本人ではないが・・・。

 

しかも、外国自体もわからないと言ったら、ますます家族から怪しいと疑われるだろう。

 

「その外国というのがよく、んんっ!?」

 

「ちょっとかすみ・・・私に話を合わせて・・・!!」

 

ちゆの予想が当たったかのように不用意な発言をしようとしたため、隣に座るちゆがかすみの口を塞いで、耳元で小さな声で囁く。

 

そして、かすみにこう言って欲しいと耳元で伝えると彼女は頷く。ちゆは彼女の口からその手を離すと彼女は話し始める。

 

「そ、そうなんだ・・・! 外国、から帰ってきたばかりで、しかもずっと外国、ぐらしだったから、あまり日本の食べるものを見たことがないんだ・・・!!」

 

かすみはなんだか申し訳ない気持ちになりつつ、顔を引きつらせながらなおの質問に答える。

 

ちゆもかすみも、なんとも苦しい理由だったが・・・。

 

「あらまあ。だったら、遠慮しないでたくさん食べるといいわ」

 

「い、いいのか・・・!?」

 

「もちろんよ。だって、かすみちゃんはもう家族の一員だもの」

 

「そうだぞ! それに育ち盛りの子は食べないと大きくなれないからな!!」

 

なおとちゆの父・りゅうじの言葉に、かすみは目をキラキラとさせる。

 

「あ、ありがとう・・・! じゃあ、早速・・・!!」

 

かすみはそう言って、用意された箸に手をつけようとするが・・・・・・。

 

「かすみさん!!」

 

「おぉ!? な、なんだ・・・!?」

 

ちゆの祖母・はるこがキリッとした声を出し、かすみはびっくりして動きを止める。

 

「ご飯をいただくときは手を合わせて『いただきます』を言うんですよ。外国でもやっていたはずでしょ?」

 

「あ・・・・・・」

 

「っ!? げほっげほっ・・・!!」

 

はるこの厳しい指摘に、かすみは頭が白くなり、ちゆがビクッとして食べ物を喉に詰まらせそうになる。ここでもごまかさないと怪しさ倍増である。

 

「かすみ・・・!!」

 

ちゆはなんと言えばいいかわからないかすみの耳元に口を近づけるとコショコショと告げる。

 

「そ、そうだな・・・長旅、で疲れていて忘れていた・・・!」

 

かすみはちゆに伝えられたことを言うと、姿勢を正して赤い手袋をした手を合わせる。ちょっとごまかすには無理があるような気はするが、はるこは特に怪しみはしなかったようだ。

 

「いただきます」

 

かすみはそう返事をすると、箸を手に取り、まずはナスの味噌汁の入ったお椀を手に取る。そして、お椀を自分の口元に傾けて汁をすする。

 

「っ!? お、おいしい・・・」

 

かすみはその汁を口にした瞬間、なんだかわからないが、ほっこりとした何かが体の中に流れてくるのを感じた。まるで、体が喜んでいるかのよう。

 

かすみは衝動的に味噌汁をすすり、中のナスを食す。

 

「ん〜♪」

 

「おいしいよね! だって、おじいちゃんの特製だもんね」

 

恍惚とした表情を見せるかすみに、とうじがそう声をあげると祖父であるきよしは何も言わずに食事を進める。

 

「ハハ・・・」

 

かすみは味噌汁を食べ終えると、次は茶碗の白いご飯を食す。

 

「んんん〜!! この食べ物もツヤがあって、ふっくらしておいしいな!!」

 

「この魚もおいしいわよ〜」

 

「ふわぁ〜、本当か!? この世界の食は本当に進んでいるな!! 生きてるって感じだ!!」

 

かすみは、なおにそう言われるとますます瞳をキラキラとさせる。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

ちゆはその様子を見て、一安心といった感じで息を吐く。

 

正直、ヒヤヒヤした・・・。かすみが自分の言うことに言ってくれなかったら、融通の利かない子だったらと思うと気が気でなかった。

 

そういえば、アスミも何もわかっていないというのをのどかが一生懸命にごまかしていたと聞く。その気持ちが今ならわかる気がする。

 

ちゆは朝ご飯に夢中になり、そしてとうじを始めとした自分の家族と交流をするかすみを微笑ましく見ていた。

 

「・・・この白いご飯、もっと、食べたいな・・・」

 

かすみは空になった茶碗を突き出して、辿々しくしながらも白いご飯を要求していた。

 

「私がよそうわ」

 

「本当か!! ありがとう!!」

 

ちゆはかすみから茶碗を受け取ると、ご飯をよそって彼女に渡す。

 

「はむはむ・・・んん〜!! 最高だな!!」

 

ちゆや彼女の家族はその様子を微笑ましく見つめていた。

 

「じゃあ、行ってきます!」

 

制服姿のちゆはカバンを持って、今日も出かけていく。

 

「ちゆ、どこに行くんだ?」

 

「学校よ」

 

「学校?」

 

ちゆは最後に再びかすみに耳元でコショコショすると、襖を開けて出て行く。

 

「行ってきます!!」

 

ちゆはそれだけ答えると、かすみの疑問を残したまま、家を後にしていく。

 

「あ、待ってくれ・・・!」

 

かすみは慌ててご飯を口の中に掻っ込むとお茶碗と箸を置く。

 

「ごちそうさま、でした! 待ってくれ! ちゆ!!」

 

かすみは手を合わせながらそう言うと、席を立ち上がりちゆの後を追っていく。

 

「よく食べる子ね」

 

なおはかすみの席に置いてあった空になった食器を見て、作りがいがあると微笑ましく感じたのであった。

 

そして、学校へと登校していくちゆ。その後ろをかすみが走ってきていた。

 

「ちゆー!!」

 

「? かすみ」

 

後ろから呼ぶ声が聞こえて、振り向いて立ち止まる。かすみが自分と並ぶと再び歩みを進めて、一緒に並んで歩く形となる。

 

「あなたまで学校に着いてくることはないのに・・・」

 

「すまない・・・家にいても、何をしていいのかわからなくてな・・・」

 

ちゆの言葉に、かすみは肩身が狭い思いをしながらわかりやすく落ち込んでいた。

 

「学校とは、どういうところなんだ?」

 

かすみはその表情から一変して、明るい表情を見せながら言う。

 

「学校はね、勉強するところなのよ。のどかとひなたもいるわ」

 

「のどか・・・!!」

 

かすみはのどかも学校に来ているということを聞き、顔を紅潮させる。

 

「私も学校に行っていいか!?」

 

「え・・・ちょっ・・・顔が、近い・・・!」

 

かすみは次の瞬間、ちゆの両手を握ると瞳をキラキラとさせながら、顔を近づけてきて、ちゆは彼女を落ち着かせるように努める。かすみはハッとした後、彼女から顔を離していく。

 

「かすみは生徒じゃないんだから、学校に入っちゃだめよ。それにその格好じゃ、怪しい人と思われちゃうでしょ」

 

「私は、そんなに怪しいのか・・・!?」

 

「そうじゃないけど・・・かすみは私と同じ年頃の少女にしか見えないから、学校の校舎内をうろうろすると先生に怒られちゃうってこと・・・!」

 

「そ、そうか・・・この時代の女の子たちは学校というところに通っているんだな・・・」

 

ちゆがその申し出を拒否すると、かすみは再び落ち込んだ。ちゆは彼女の発した言動が少しずれていると思いつつも、敢えてツッコまないことにした。

 

「はぁ・・・私ものどかと一緒に学校に行ければなぁ・・・」

 

かすみはため息をつく。そして、悲しそうな表情を浮かべていた。

 

(かすみは、のどかと一緒にいたいのかしら?)

 

ちゆはかすみの今の表情を見て、そう考えた。そういえば、この前メガビョーゲンを浄化して、彼女に会った時も思いっきり抱きしめていたような気がする。

 

ちゆはそんな困った顔のかすみは放っておけないと思い、どうすればいいか考える。

 

「ねえ、かすみ」

 

「?・・・なんだ?」

 

ちゆに声をかけられたかすみは俯いていた顔を彼女に向ける。

 

「学校が終わったら、一緒にのどかの家に行きましょう。終わった後にいけば、のどかと一緒に帰れるはずだから、家に行くこともできるわよ」

 

「本当か・・・!?」

 

「ええ!」

 

かすみは表情を明るくさせると、再びちゆの両手を握る。

 

「ありがとう、ちゆ! ちゆは優しいなぁ・・・!!」

 

「こ、困っている人を放っておけないだけよ・・・」

 

かすみが瞳をキラキラさせて再び顔を近づけてきたことに、表情を引きつらせながらも答えるちゆ。

 

なんやかんやで校舎の門の前に着く二人。

 

「じゃあ、また後でね」

 

「ああ。またな」

 

学校の校門へと入っていくちゆを、かすみは手を振りながら見送った。

 

「・・・・・・はぁ」

 

ちゆの姿が見えなくなった後、かすみはため息をつく。

 

「早くのどかに会いたいな・・・」

 

かすみはのどかに対する思いが溢れつつも、今は我慢することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のどかたちの中学校の休み時間・・・・・・・・・。

 

「ふふっ、アスミちゃん、今朝は嬉しそうだったなぁ〜」

 

のどかは今朝の出来事を思い出し、嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

それはのどかの両親がアスミに部屋を与えてくれたことだ。アスミはこの日、家族の一員になれることに嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「そりゃそうでしょ! あたしも自分の部屋をもらえた時、めっちゃ嬉しかったし!」

 

「だね♪」

 

のどかとひなたは楽しそうに会話をしていたが、そんな中、一人心配そうにしていたのはちゆだった。

 

「・・・アスミ、大丈夫かしら? 家に一人でいるんでしょ?」

 

「あ、そう言われると・・・」

 

ちゆのその言葉に、のどかは一転して心配そうな声をあげる。お父さんとお母さんは仕事で家を出たし、自分も今は学校だ。もしかして、何かやってしまっているのではないか?

 

「ラビリンもラテもいるんだし、1人じゃないって! 心配ないない♪」

 

「まあ、それもそうね・・・」

 

楽観的な発言をするひなたに、ちゆもアスミのことは心配していた。

 

「そう言うちゆちーこそ、かすみっちは大丈夫なの?」

 

「それも心配よ。さっきも、私の登校に着いてきてたりして・・・?」

 

ちゆはその質問に疲れたような顔をしながら答えて説明しようとして言葉を止める。窓の向こうに何かが動いているのが見えたのだ。

 

「? ちゆちー、どうしたの?」

 

ひなたが呼ぶ声にも構わず、ちゆは窓の人物を見つめる。

 

様子をよく見てみると、タイツのような靴下に、金髪のような髪が映る。それは窓から見える木の上に登っているようで、そこからこちらを覗いている。しかも、その視線は不安そうに窓の方を見ているのどかから見えないところで、顔を赤らめながら彼女を見つめている。

 

その人物はこちらに気づくと「あっ」とでも言いたげな反応をし、彼女に向かって引きつったような笑みを浮かべながら手を振る。

 

「かすみ!?」

 

「うぇっ? かすみっち!?」

 

「かすみちゃん!?」

 

ちゆは目を見開くと思わず立ち上がって彼女の名前を叫ぶ。のどかとひなたも呆然としていたが、かすみの姿を見た途端に驚いたような表情をする。

 

かすみは引きつった笑顔で見ていたが、突然彼女の体が傾き、落っこちていくのが見えた。

 

「あぁ!?」

 

「木から落っこちたんじゃないの!?」

 

「行こう!!」

 

のどかたち3人はかすみが木から落ちたと推測し、席から立ち上がって校舎裏へと向かった。

 

一方、そのかすみは・・・・・・。

 

「痛たぁ・・・まさか、枝が折れるとは・・・」

 

かすみはお尻を打ったようで痛みに呻きながら、お尻をさすっていた。

 

「かすみー!!!!」

 

そこへちゆの呼ぶ声が聞こえてくる。

 

「あ・・・ちゆ、みんな・・・」

 

かすみは声が聞こえた方に振り向くと、ちゆたち3人がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・かすみちゃん、大丈夫? ケガはない?」

 

「も・・・もう、かすみっち、ヒヤヒヤさせないでよ・・・!」

 

「す、すまない・・・ちょっと油断してた・・・」

 

走ってきたのか息を切らしている3人。心配をさせてしまったことにかすみは謝罪する。

 

「かすみ・・・なんで学校に入ってきちゃったの? そんな格好で入ったら怪しまれちゃうじゃない・・・」

 

「私のこの格好は、変なのか・・・?」

 

ちゆの指摘に、かすみは自分の服装を見ながら言う。

 

「そ、そうじゃないけど、私たちと格好も違うのに、入ってきたらみんながおかしいと思うでしょってこと・・・!!」

 

ちゆは意味を歪曲しているかすみにちゃんと説明する。制服姿ではない人間姿のかすみが校舎内をうろつくと、その格好なだけに不審な人物に見えてしまうということを言いたいのだ。

 

「そ、そういうものなのか・・・?」

 

「そうなの・・・!」

 

かすみの質問にもきっぱりと返してあげる。ここではっきり言わないと彼女はまた同じ過ちを繰り返すだろう。

 

「じゃあ、この服を脱いでしまえば・・・」

 

かすみはそう言いながら、自分の着ている服に手をかけようとすると、3人は慌て始めた。

 

「ス、ストップーーーー!!!!」

 

「か、かすみちゃん!? 何をしようとしてるの!?」

 

ひなたとのどかがかすみの手を押さえる。こんなところで服を脱がれたりしたら、余計問題になってしまう。

 

「何って、この格好が怪しいから身につけないようにしようとーーー」

 

「そういう問題じゃないの!!!」

 

「脱いだら全部丸見えになっちゃうし!!!」

 

「・・・それの何が問題なんだ?」

 

かすみはキョトンとしながら言う。どうやらこの場で服を脱ぐことがどんなに不味い状況かわかっていない様子。

 

のどかたち3人は思った。この娘は、ある意味アスミよりも大変な娘だと・・・。

 

服を脱ぐことの何が問題なのか、説明をすると長くなりそうなので・・・。

 

「と、とにかく服は脱いじゃダメだよ!!!」

 

「もっと怪しい目で見られちゃうから!!」

 

「わ、わかった・・・すまない・・・」

 

のどかとひなたに押されて、かすみは服から手を離した。

 

「かすみ・・・」

 

ちゆはかすみに近づくと彼女の右腕を取る。

 

「あなた、ケガしてたでしょ?」

 

「あ・・・いつの間に・・・」

 

かすみは取られた腕をよく見ると、枝で切ったような傷があるのが見えた。

 

「私、あなたが木から落ちた時、心臓が止まるかと思ったんだから」

 

ちゆはかすみにそう言いながら、ポケットから何かを取り出そうとしていた。その間、かすみは顔を俯かせた。

 

「だって・・・のどかに会いたかったから・・・」

 

「私に・・・?」

 

「うん・・・本当は我慢しようと思ったんだが、いつまでも出てこないから心配で見に来てしまったんだ・・・」

 

かすみは悲しそうな声で言った。自分の大切な人であるのどかに早く会いたかった。ただ、それだけなのに、近くにいて会いたくても会えない、そんなもどかしさも積もったのだ。

 

のどかはそんな落ち込んでいる様子のかすみの手を握る。

 

「・・・そうだったんだ。ごめんね、気づかなくて。あとで一緒に遊ぼう。私の家で」

 

「!!!! い、いいのか!?」

 

かすみはその言葉を聞いた瞬間、顔を上げて驚く。

 

「もちろんだよ。だって、かすみちゃんは友達だもん」

 

「ああ・・・!!!」

 

かすみはその言葉を聞いた途端、ぱあっと明るい表情になった。

 

「約束だぞ・・・のどか・・・!!」

 

「う、うん・・・!」

 

かすみが顔を近づけてくることに苦笑しつつも笑みを見せるのどか。ちゆとひなたはその様子を見て、なんとも言えない表情を見せていた。

 

しかし、その日の放課後のこと・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

ずーん・・・・・・。

 

かすみは、ちゆやひなたと帰路についていた。しかし、そこには花寺のどかの姿はない。彼女は暗いオーラを出しながら、フラフラとしながら歩いていた。

 

「のどかっち、慌てて帰っちゃったね・・・」

 

「私、余計なこと言ったかしら・・・?」

 

ちゆはなんだか申し訳ないというような表情をしていた。

 

ーーーーあ、のどか・・・!

 

ーーーーご、ごめん! かすみちゃん!! 私、急いでいるから!!

 

ーーーーあ、えっ・・・?

 

校門の前で待っていたかすみは、そこから出てくるのどかを迎えたが、彼女は何やら慌てたように駆け出し、かすみを素通りして行ってしまった。

 

かすみは何だかわからなかった。のどかに置いて行かれた・・・のどかと一緒に帰れなかった・・・のどかは自分に何も話してくれずに走って行った・・・。

 

もしかして、私・・・・・・のどかに嫌われた・・・? 一緒に彼女の家に行くって、約束したのに・・・。

 

ーーーーそ、そんな・・・。

 

かすみはすっかり落ち込んでしまい、遅れて出てきたちゆとひなたと一緒に歩いており、現在に至るという感じである。

 

「・・・・・・・・・」

 

「かすみっち、元気出してよ〜。のどかっちは別に嫌になったとかそういうんじゃないから・・・!!」

 

「そ、そうよ・・・! ちょっと急用を思い出しただけだから・・・!!」

 

「・・・それは私と遊ぶことよりも大切なのか?」

 

ひなたとちゆが落ち込んでいるかすみを宥めようとしているが、彼女は涙目の虚ろな瞳でこっちを見てきた。

 

「そ、それは・・・!」

 

「多分、アスミンのことじゃない!? アスミンが心配だから家に急いで戻ったんだよ!!」

 

「ご、ごめんなさい・・・!! 私が、のどかを心配させるようなことを言ってしまったから・・・!!」

 

ちゆとひなたは気を遣って、かすみの心を傷つけないようにするも、かすみは暗いオーラを出したままだ。

 

「・・・いいんだ。ちゆはのどかのために言ってくれたんだろう?」

 

「え・・・?」

 

「のどかがそれで笑顔になってくれるなら、それでいい。でも・・・」

 

かすみはそう言うと自分の胸に手を当てる。

 

「なんだか、胸が、ジクジクと痛むんだ・・・これは一体、何なんだ?」

 

かすみは体を震わせ、目元もよく見るとじんわりと涙がこぼれそうになっていた。それにこの胸が痛くなるという現象がよくわかっていない様子。

 

ちゆとひなたはそんなかすみの様子を見て、悲しそうな表情を浮かべていた。

 

そんな時だった・・・・・・。

 

「まぁ〜、あれ何〜?」

 

「もしかして、幽霊〜・・・?」

 

「「「??」」」

 

3人は通り過ぎた二人のおばさんが、何やらボソボソと話していたのが気になった。そして、前を向くと・・・・・・。

 

「何、この子・・・?」

 

二人のサラリーマンみたいな男性が、何かを不思議そうに見ていた。

 

その視線の先にいたのは・・・・・・体が透けている、金髪の女性・・・・・・。

 

「うぇぇ!?」

 

「アスミ!?」

 

「何で、体が透けているんだ・・・?」

 

3人はその正体がアスミだということに気づいて驚く。彼女は一体、どうしたというのだろうか・・・?

 

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