ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作23話がベースになります。
アスミとかすみ、可愛いを知る話です。


第64話「可愛い」

 

ビョーゲンキングダムーーーーそこは、ビョーゲンズたちだけの世界。

 

そんな場所に幹部たちが珍しく集合していた。ダルイゼン、シンドイーネ、グアイワルの3人は囲んで背中合わせで座り込んでおり、その周囲のそれぞれの岩場にはクルシーナ、ドクルン、イタイノン、ヘバリーヌがいる。

 

「・・・せっかく俺がメガパーツを分けてやったのに、無駄にするとはなぁ」

 

「うっさいわね! そもそもあんたからはもらってないですぅ~!」

 

グアイワルの煽り言葉に、シンドイーネが不機嫌そうに返す。

 

「っ! ふん・・・あれを使えるのは俺のおかげということを忘れるなよ?」

 

「・・・元はと言えば、クルシーナたちの発見だろ?」

 

「ぐっ・・・!!」

 

グアイワルが偉そうに言うと、ダルイゼンに図星を当てられて明らかに動揺する。

 

「そうよ。何、お前の手柄みたいに言ってんのよ」

 

寝そべっていたクルシーナが嫌味たらしく返す。

 

「もっと言えば、大きくする方法を見つけたのはバテテモーダなの」

 

イタイノンは携帯ゲーム機を操作しながら淡々と返す。

 

「大体、私たちはあなたにメガパーツをあげた覚えはないんですけどねぇ」

 

「ぐっ・・・!!」

 

ドクルンは手に持っているメガパーツを小さなスコープのような道具で覗きながら、ニヤリと笑みを浮かべながら言う。

 

「いいなぁ~・・・ヘバリーヌちゃんも欲しい~・・・!!」

 

ヘバリーヌは三人娘がメガパーツを持っているのを羨ましがっていた。

 

「プッ・・・なぁ~に? 人があげたものを奪って、手柄を横取りした挙句、自慢~? 最悪~♪」

 

ダルイゼンと三人娘に指摘されたグアイワルを、シンドイーネがバカにして笑う。

 

「ぐぬぅぅぅ・・・手柄を横取りされたのはこっちだ!!」

 

グアイワルは悔しそうな顔しながら怒鳴る。

 

「ヘバリーヌ・・・」

 

「なぁ~に~? ノンお姉ちゃん」

 

声をかけてきたイタイノンにヘバリーヌが返事をすると、彼女の横にメガパーツが一つ投げられる。

 

「それ、やるの」

 

「えっ、いいの~? ノンお姉ちゃんのメガパーツでしょ~?」

 

「どうせ試しに手に入れてみただけなの。たくさんあってもあれだからお前にやるの」

 

イタイノンの計らいに、ヘバリーヌは瞳をキラキラとさせる。

 

「ありがと~! ノンお姉ちゃん、だーいすき♪」

 

「・・・ふん」

 

ヘバリーヌはメガパーツを拾い上げて笑顔を見せると、イタイノンは鼻を鳴らしてゲームをやり込む。

 

「だから、そんな大切なものを勝手に渡すな!!」

 

「お前には関係ないの・・・!!」

 

抗議の声を上げるグアイワルに、イタイノンは睨みながら言う。

 

「大体、なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないの? 私のものをどうしようと私の勝手なの・・・!!」

 

イタイノンはゲームに視線を移しながらそう言い放った。

 

「そ、それは・・・!!」

 

「おい」

 

正論を言われてなおも食い下がろうとするグアイワルに、クルシーナの冷たい声が響く。

 

「アタシたちはお前の戯言にあとどのぐらい付き合えばいいんだ・・・??」

 

グアイワルが振り向けば、クルシーナがこちらを睨みつけているのが見えた。その威圧感にグアイワルは思わずたじろぐ。

 

これ以上いえば、間違いなく消されると・・・グアイワルは直感で判断した。

 

「そこでボケッと座ってる暇があるんだったら、地球の一か所でも蝕んでこいよ、アタマデワル。そこにいる他の二人とは頭の出来が違うんじゃないのか・・・? メガパーツもアタシたちよりうまく使えるんだろ? バテテモーダからわざわざ奪ったぐらいだしなぁ・・・」

 

クルシーナが不敵な笑みを浮かべながらそう言う。ダルイゼンとシンドイーネはその様子を呆然と見ていた。

 

「くっ・・・今に見てろ・・・!!」

 

グアイワルは悔しそうな声を上げると、立ち上がって単身地球へと向かっていった。

 

「ふん・・・・・・」

 

クルシーナは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 

「行っちゃった・・・」

 

「ふん、いいのよ。いっつも偉そうなんだから、あれだけ言わせておけば」

 

ダルイゼンがグアイワルの背中を見つめながら言うと、シンドイーネは不機嫌そうに返す。

 

そんな中、クルシーナは自身のメガパーツを取り出して見つめる。

 

「ねえ、ドクルン」

 

「なんですか?」

 

「あの街を襲ったアタシたち以外のテラビョーゲン、あと一人いたわよね?」

 

クルシーナは唐突にドクルンへと質問を飛ばす。それを聞くとドクルンは冷めたような表情になる。

 

「・・・いましたね、確かに。それがどうかしたのですか?」

 

「別に。あと器は何人集めればいいのかって、聞きたかったってだけ」

 

クルシーナはメガパーツを眺めながら言う。キングビョーゲンの娘、もといその器となれるテラビョーゲンをあと何体増やせばいいかを聞きたかったのだ。

 

ドクルンは作業の手を止めると考えるように少し間を置いたあと、口を開いた。

 

「・・・あと三人ですね。あなたの言うその一人は病院で眠っているのでしょう?」

 

「そうね。試しにそいつにメガパーツを与えてやったんだけど、目覚めなかったわね。時間をかけて馴染ませないといけないのか、もっとたくさん集めないといけないのか・・・」

 

クルシーナは昨日の成果を報告する。

 

「・・・そのテラビョーゲンのダメージの回復次第ではないですか? なんせあのプリキュアに一度浄化されかけたぐらいですからね」

 

ドクルンは懐にメガパーツをしまうとその場から立ち上がる。

 

「行ってくるの?」

 

「ええ。ちょっと試したいこともありますからね」

 

背後から尋ねるイタイノンにドクルンはそう言うと地球へ向かうべく、その場を後にする。

 

「いってらー」

 

クルシーナはドクルンの方を見向きもせずに手を振りながらそう言うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見て見て!! 可愛いよ~!!!」

 

ひなたの自宅である平光アニマルクリニック。その彼女の部屋で、ひなたが何かをお披露目しようとしていた。

 

「ふわぁ・・・!!」

 

「わぁ・・・!!」

 

「「おぉ・・・!!」」

 

のどかとちゆ、ヒーリングアニマルたちがそれを見て感嘆の声を上げる。

 

「ジャジャーン!!」

 

ひなたがそう言いながら見せたのは、黒い革ジャン姿に身を包んだアスミ。そして、ボーダー柄ニットに白いズボン、サングラスをしていたかすみの姿があった。

 

「アスミちゃんとかすみちゃん、そういう格好も似合うね!!」

 

「素敵!!」

 

「カッコイイラビ!!」

 

かすみはみんなにそう言われると顔を紅潮とさせる。

 

(のどかは褒めてくれたのかな。ちょっと嬉しい・・・)

 

かすみは大切な存在と認識しているのどかに褒めてもらえたことをとても嬉しく感じていた。

 

「ふふふん♪ まだまだ~!!」

 

ひなたはそう言うと二人を更衣室へと連れていく。

 

そして出てきたのは、トリマー風のエプロン姿に変わっていたアスミと、ピンク色のナース姿をしたかすみだった。

 

「可愛い!!」

 

「似合ってるペエ!!」

 

さらにひなたは二人を更衣室へと連れ込んで、コーディネート。

 

アスミは紫色の猫の着ぐるみパジャマを着せ、かすみには茶色のモコモコのパジャマを着せた。

 

「キャワイイ~!!!!」

 

ひなたは興奮しながらアスミとかすみを交互に頬ずりする。

 

「どこで売ってんだ・・・?」

 

ニャトランはその様子を呆れたように見ていた。

 

「アスミン、これ!絶対可愛いから、持ってみて!!あとかすみっちもこれつけてみて!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

アスミはひなたから猫の口元を模したようなマスクを受け取り、不思議そうに見ながらそれを口元に持ってくる。かすみは戸惑いつつも、クマの耳がついたモフモフの帽子を受け取り、頭につけてみる。

 

「・・・ひなたはさっきから『可愛い』とおっしゃいますが、可愛いとはなんですか?」

 

「えっ・・・?」

 

アスミが言葉に純粋な疑問を持ち、ひなたに尋ねる。

 

「可愛いというのは、よくわからないな・・・それも好きってことなのか?」

 

「へっ・・・?」

 

かすみもよく意味が分かっておらず、この前に教わった『好き』と同じであると考える。

 

「アスミとかすみはこの前、『好き』って感情を学んだの」

 

「はい。『好き』は美味しくて、暖かく譲れない思いです」

 

「そして、ほっこりとして、その人を大切だって思うような、そんな感じだ」

 

ちゆがそう言うと、アスミとかすみが学んだことを話し始める。

 

「では、『可愛い』はなんですか?」

 

「好きと同じなの、かな・・・?」

 

アスミとかすみは素朴な疑問をもう一度問う。

 

「・・・可愛いは可愛いだよ。ねっ?」

 

「う~ん、よく考えると『可愛い』と『好き』は似てるよね。でも、なんとなく違うっていうか・・・」

 

ひなたに問われたのどかは、説明が難しくなんとなく考え込んでしまう。

 

「可愛いと好きになるラビ!!」

 

「それ、可愛いか・・・?」

 

お気に入りのラベンだるまちゃんを抱きしめながら言うラビリンに、ニャトランは呆れたような様子だ。

 

「好きだから可愛く見えちゃうペエ!」

 

「好き・・・可愛い・・・好き・・・」

 

「あっ、可愛いと抱きしめたくなる!!」

 

のどかたちが話しているのを、アスミとかすみは一緒にキョロキョロしながら聞いていたが、具体的な回答は得られない。やがて難しい顔をして困った顔になっていく。

 

「ますます、わかりません・・・・・・」

 

「えっと、可愛いから好きで、好きだから可愛い、でも好きは好きなわけだから・・・つまり、どういうことだ・・・?」

 

二人はますます考え込んでしまう。そんな二人に口を開いたのは、ちゆだった。

 

「アスミとかすみも、可愛いを実感できたらわかるんじゃないかしら」

 

「あっ、そうだ!!」

 

ひなたは何かを思いつくと、アスミとかすみを普段の服装に着替えさせて、アニマルクリニックの方へと向かう。

 

ラテをひなたの姉であるめいにお願いして、トリートメントをしてもらう。

 

「はい。できた!」

 

「ワン♪」

 

ラテの姿はツヤツヤになっていて、桃色の可愛いフリルのついたカチューシャとリストバンドがされている。

 

「ラテ、可愛い!!」

 

のどかはその姿を見て喜び、ラテを自分の手元に抱く。

 

「お姉、急だったのにありがと~!」

 

「時間があれば、もっと可愛くできたんだけど、今日はここまでね、ラテちゃん」

 

「ワン♪」

 

めいがそう言ってラテを撫でると彼女は笑顔を見せた。

 

「ねっ、可愛いって思うっしょ?」

 

アスミとかすみは、ひなたにそう言われると綺麗になったラテを見つめる。すると、かすみが目を輝かせているラテを見つめていると・・・。

 

「あ、あぁ・・・!」

 

かすみも瞳をキラキラとさせ始める。そして、自分の中に何か熱い何かがこみ上げてくるのを感じ、胸に手を当てる。その顔は何かを感じたかのように頬を紅潮させていた。

 

一方、アスミは・・・・・・。

 

「ラテをこんなに喜ばせてくださって、感謝いたします」

 

「は、はぁ・・・」

 

アスミはめいの手を取りながら、お礼を言うとめいは困惑する。

 

「あはは・・・・・・」

 

その様子を見たのどかたちは困惑したり、苦笑いをしたりしていた。

 

「な、なあ・・・のどか」

 

「ん? どうしたの、かすみちゃん」

 

そこへかすみがのどかに声をかけた。かすみは手をモジモジとさせながら顔を紅潮とさせている。

 

「わ、私も、ラテを抱いてもいいか?」

 

「うん、いいよ・・・」

 

かすみの言葉に疑問を持ちつつも、のどかはラテを差し出すと彼女はゆっくりと抱き始める。

 

「あぁ・・・」

 

かすみは抱いているラテを見つめる。ラテは屈託のない笑みを浮かべながらこちらを見ている。かすみはますます胸が熱くなるのを感じた。

 

「っ・・・・・・」

 

かすみはゆっくりとラテの頭に手を伸ばし、彼女の頭を撫でる。

 

「ワン♪」

 

「あぁ・・・ああ・・・!!!!」

 

かすみは笑顔を見せてくれるラテに、瞳を潤ませながら言葉にならない声を上げる。そして、顔を少しずつ、彼女へと近づけていく。

 

「ふふ、ふふふ・・・」

 

「ワン♪」

 

かすみは自分の頬を近づけて、頬ずりをした。ラテは嬉しそうで、それをしているかすみ本人も自然と笑顔になっていた。

 

「かすみっち、嬉しそうだね!」

 

「・・・はっ!?」

 

ひなたの声が聞こえて、我に返ったように目を見開き、ラテから顔を離す。

 

「あ、ありがとう・・・のどか・・・」

 

「う、うん・・・」

 

かすみは顔を真っ赤にして、ラテをのどかに手渡す。のどかがラテを受け取ると、かすみは顔を隠すように壁に近づき、彼女たちに背を向けてしまった。

 

「こ、これが、可愛いって、こと、なのか?」

 

歯切れの悪そうな声でかすみが言う。そんな彼女の耳をよく見ると真っ赤になっており、気のせいか頭から煙が出ているようにも感じる。

 

「えっと、それはね・・・・・・」

 

「確かに、可愛いって思ったけど・・・」

 

(それは、恥ずかしいってことだと思うわ・・・)

 

ひなたは戸惑ったように声をあげ、のどかは苦笑いをしながら言う。ちゆは心の中で可愛いと異なる感情であると考え始めた。

 

(なんだろう・・・なんだかわからないけど、消えたい気分だ・・・!!)

 

かすみは顔を真っ赤にしながらも、そんなことを考えている。『可愛い』というのはよくわからない・・・・・・。

 

「?」

 

アスミはその様子を見て、首を傾げているのであった。

 

まあ、それはさておき・・・・・・。

 

「めいさんは、カフェもやっていましたよね?」

 

「ええ」

 

アスミがそう尋ねると、めいは答える。

 

「お姉、器用なんだ~!」

 

「「ふふふ♪」」

 

ひなたは顔を紅潮とさせながら笑顔で答える。それにはのどかとちゆも笑みを浮かべる。

 

コンコンコン!

 

「「「「!!」」」」

 

ふとドアがノックされて、のどかたちが視線を向けると、横に開かれてそこから一人の青年が現れる。ひなたの兄である、ようただ。

 

「ひなた、そろそろいいかな?」

 

「っ! やばっ・・・ごめんみんな!! この後、用事があるんだった!!」

 

ようたがそう言うと、ひなたは慌てて思い出したように謝る。

 

「この人は、誰だ・・・?」

 

「ひなたのお兄さん、ようたさんよ」

 

かすみが疑問を問うと、ちゆがかすみとアスミに紹介する。ようたは微笑んで見せた。

 

ひなたは犬用のキャリーバックを持って、ようたについていくと、のどかたちも一緒に行くことに。

 

「確かお兄さんは、獣医さんでしたね」

 

「犬を大事にしてくれると聞いたぞ」

 

「うん! パパもだよ!」

 

アスミとかすみが、ひなたと話していると、みんなはひなたの父であるてるひこが診察をしている医務室へ。

 

そこでは、てるひこが猫の首あたりを触診していて、飼い主である少年が心配そうに見つめていた。

 

「うーん、ちょっと緊張しているね~。最近、妹さんが生まれたんだよね?」

 

「はい・・・あっ!」

 

「急に新しい家族が増えて、緊張しているんだよ。なぁ?」

 

てるひこがそう言って猫の顎を撫で、猫は気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴らしていた。

 

「なぜ、あそこまでわかるのでしょう? 言葉を交わしているわけでもないのに・・・」

 

その様子を見て、アスミは素朴な疑問を抱いていた。

 

「相手のことを知りたーいって思って、よーく見るとわかっちゃうんだって。パパ、言ってたよ」

 

不思議そうにてるひこを見つめているアスミに、ひなたがそう話した。

 

「そうか・・・それは、私も、わかるな・・・」

 

「えっ・・・?」

 

かすみがふとそんなことを言うと、ひなたたちは彼女の方を向く。

 

「私にも聞こえるんだ。自然の森の声・・・森に住む動物たちの声・・・森に咲く植物たちの声・・・私は、それを聞くと、寂しくないって思えるんだ・・・」

 

かすみは胸に手を当てながらそう答える。

 

「かすみっちには、あの猫ちゃんは、どう見えてるのかな?」

 

ひなたがそう尋ねてみると、かすみは猫の表情を見やる。

 

「あの男の子と一緒にいて、動物を理解してくれるお父さんと一緒にいて、喜んでいるような感じがするんだ・・・」

 

かすみがそう答えると、のどかたちは微笑んでみせる。

 

「連れてきたよ」

 

そこへようたが戻ってきた。その手には黒い毛に白い丸の眉のような模様が特徴の小さな柴犬であった。

 

「ふわぁ~♪」

 

「あ・・・ああ・・・!!」

 

のどかはそれを見て感嘆したように声を上げ、かすみは瞳を潤ませて言葉にならない声を上げる。

 

「うちで預かってる保護犬のポチットだよ♪」

 

「ポチじゃなくて、ポチット?」

 

「眉毛がポチッとしてるから!!」

 

ひなたはようたから小さな柴犬ーーーーポチットを受け取りながら答える。

 

「ポチット、楽しんでこいよ?」

 

ようたはポチットを撫でながら、ひなたに預けるとその場を後にした。

 

「ひなたちゃん、少し触ってもいい?」

 

「うん、いいよ♪」

 

「わ、私も、いいか・・・?」

 

「かすみっちも、もちろんだよ!!」

 

のどかとかすみがそう言うと、ひなたは許可を出す。

 

「ふわぁ・・・♪」

 

「っ・・・・・・」

 

「あ、ただ、この子・・・」

 

「!・・・キャンッ!!」

 

のどかとかすみが触ろうとポチットへと手を伸ばすが、その瞬間ポチットはひなたの手から抜け出して彼女の後ろへと隠れてしまった。

 

「え・・・・・・」

 

かすみはその様子を見て、手を伸ばした状態のまま呆然とする。そんなポチットは気のせいか、かすみを見て怯えたような感じになっていた。

 

「ごめん! 驚かせちゃった!?」

 

「違う違う、この子、あたしたち以外には臆病で・・・」

 

ひなたは話をしながら、ポチットを自分の手元に抱きよせる。

 

「大丈夫だよ~♪ みんな可愛いポチットと仲良くなりたいだけ♪」

 

ひなたはそう言いながらポチットを頬ずりしながら安心させてあげ、ポチットも笑顔になる。

 

「可愛い?」

 

アスミはひなたの発した『可愛い』という言葉に反応する。彼女はまだその言葉の意味がよくわからなかった。

 

「なあ・・・」

 

「「「「??」」」」

 

ようたがいなくなったことでようやく顔が出せるニャトランが声を出す。

 

「さっきから、かすみが動いてねぇんだけど・・・?」

 

ニャトランの言葉に、みんなはかすみを見ると、彼女は立った状態のまま真っ白になっていた。

 

「か、かすみちゃん!?」

 

「立ったまま気絶してるラビ!!!」

 

のどかがかすみの顔を見て仰天した。かすみは呆然とした表情のまま、瞳は虚ろになっていて、体全体が真っ白になっていたのであった。

 

「かすみ!! しっかりして!!」

 

「そ、そうだよ!! ポチットはかすみっちを嫌がったわけじゃなくて・・・!! 元々ーーーー」

 

「??」

 

のどかたちが、必死にかすみを宥めようとしているが、彼女のショックは治りそうな様子はあまりなかった。アスミはその様子を、首を傾げながら見つめているのであった。

 

結局、かすみが動くようになるまでには、30分ぐらいかかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとね。あたしの用に付き合ってくれて」

 

「ううん。ラテもいつもと違うドッグラン、楽しいと思うから」

 

「でも、ポチット、怖がらないかしら・・・?」

 

「大変だと思う。でも少しずつ、いろんなことに慣れていってほしいから。パパとお兄にも相談して決めたんだ♪」

 

のどかたちは話しながら、ひなたたちの動物病院で併設されているものよりも大きなドッグランへと向かおうとしていた。ひなたの持つペット用のキャリーケースの中にはポチットが入っている。

 

ズーン・・・・・・。

 

「はぁ・・・・・・」

 

かすみはため息をつきながら、暗いオーラを出しながらわかりやすいくらい落ち込んでいた。

 

「かすみっち、元気出してよ~・・・ポチットは嫌がったわけじゃなくて、のどかっちにも行ったけど、あたしたち以外には臆病なんだよ~」

 

「・・・でも、私のことを避けてるように見えたぞ・・・私は、森の動物たちにも避けられたことがなかったのに・・・・・・」

 

ひなたがそう擁護しようとするが、かすみは悲しそうな虚ろな目で見つめてくる。

 

「わ、私もだったけど、ポチットくんはかすみちゃんに驚いちゃっただけで、怖かったわけじゃないと思うよ!!」

 

「・・・体を震わせているように見えたが?」

 

「あ、えっと・・・」

 

ポチットを見ていたかすみは暗い声でその励ましを一蹴すると、のどかは励ますことが思いつかずに考えてしまう。

 

「き、きっと人に慣れてないだけなのよ!!」

 

「・・・ひなたには懐いているのにか?」

 

「うっ・・・えっと、それは・・・!」

 

ちゆの言葉も、かすみには通用せず正論を返されてしまい、戸惑うちゆ。

 

「はぁ・・・やっぱり、ポチットは私のことが嫌いなんだ・・・」

 

のどかたちから確信が持てるような言葉を得ることができず、かすみはため息をついて暗いオーラを出し続けるだけだった。

 

「ま、まあ、ドックランに行けばワンちゃんいっぱいいるから大丈夫だって!! ポチットもきっと慣れてくるって~!!」

 

「・・・本当かぁ?」

 

「大丈夫大丈夫!! あたしに任せてって!!」

 

「・・・わかった、信じる・・・」

 

かすみはひなたの言葉に、まだ暗い顔のままだったが、少しは元気を取り戻した。

 

「ひなた、最近病院のお手伝いをしてるんだぜ!!」

 

「すごいわね!ひなた!!」

 

「お手伝いって言っても、ほんの少しだよぉ・・・」

 

ニャトランがそう言うとちゆは感心したような声を出し、ひなたは顔を紅潮とさせて照れる。

 

「前は絶対無理だーって思ってたけど、今は、あたしにもできることがあるかもって思えて・・・」

 

ひなたは顔を紅潮とさせながらも答える。

 

かつては自分の姉や兄にコンプレックスを抱いていた自分、でものどかたちが励ましてくれたから、自分にも自信が持てるようになり、自分でもできることがあると思えるようになったのだ。

 

のどかたちはその様子に微笑んでみせる。

 

「私もポチットくんと仲良くなりたいなぁ♪」

 

「ラビリンもラビ!!」

 

のどかとラビリンは笑顔でそう言った。

 

「ワン♪」

 

「ラテも仲良くなりたいのね♪」

 

ちゆは笑顔で返事をするラテを見てそう理解した。

 

「私も、ポチットと、仲良くなれるの、かな・・・?」

 

かすみは心配そうな顔でそう言った。ラテは自分に懐いているが、普通の犬であるポチットは自分を怖がって懐いてくれない。そんな自分がドックランに来て大丈夫かと思ってしまう。

 

そんな彼女の手をひなたが手に取った。

 

「なろうよ! あのドッグランで慣れるように一緒に遊べば、絶対に仲良くなれると思うよ!!」

 

「!!」

 

ひなたがそう言うとかすみは驚いたような顔をする。

 

「私も仲良くなりたいし、かすみちゃんと一緒だったら仲良くなれると思う♪」

 

「っ!!」

 

のどかにもそう呼ばれると、かすみは不安そうな表情から眉はハの字にはしつつも、口元で笑みを見せていく。

 

「そ、そうだな・・・仲良く、したい、な・・・」

 

かすみはたどたどしい口調ながらも、ポチットと仲良くしたいことを話した。それを見てのどかたちは微笑みかける。

 

「俺はもう仲良いんだぜ~!」

 

「ニャトランは友達を作るのがうまいペエ」

 

「まっ、可愛いもの同士だからニャー♪」

 

「ポチットはね、ボールで遊ぶのが大好きなんだよ~♪」

 

ひなたたちが楽しそうに話しながら、ドッグランへと歩いていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

そんな中で、かすみはその言葉にまだ引っかかるものがあった。

 

「なあ・・・・・・」

 

「「??」」

 

「結局、『可愛い』ってどういうことなんだ?」

 

かすみがひなたが言っていたよくわかっていないことをここで問う。

 

「うーん、そうだよね・・・難しいよね~」

 

「どう説明すればいいのかなぁ・・・?」

 

のどかとひなたは歩きながらも、根本的な言葉の意味の説明に戸惑ってしまう。

 

「めいさん、だったか、綺麗にされたラテを抱いて見たときに、ほっこりとは違う何か熱いものが、胸の中に溢れたような気がしたんだ。これが、そういうこと、なのかな・・・?」

 

かすみは自分の胸に手を当てながら話す。ラテを抱いていたときに湧き上がった感情、これはかわいいということなのだろうか。

 

「きっと、そうなんじゃないかな」

 

「!!」

 

「人それぞれだと思うけど、さっきのラテを見て何かを感じたなら、きっとそうなんだと思うよ」

 

「そうなの、かな・・・」

 

のどかがそう推測するも、かすみはまだよくわからなかった。これは自分が感じていた『好き』にも似ていたからだ。これは好きなのか、可愛いのか・・・?

 

「可愛いって思ってるに決まってるよ~!!」

 

「えっ・・・?」

 

「だって、あのラテを見て可愛いって思えない人なんかいないもん!!」

 

「可愛いって、思う・・・?」

 

ひなたが興奮気味にそういうも、かすみはわかりそうでわからないといったような感じだった。

 

「俺たちだって可愛いものだから、かすみが俺たちを見ればそれがわかるんじゃね?」

 

「そうかな・・・?」

 

「極端じゃないペエ・・・?」

 

ニャトランがそう言うと、かすみは疑問に思いつつも彼らの顔を見つめる。

 

じー・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ニャァ」

 

まずはニャトランの姿をじっと見つめる。

 

じー・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ペエ・・・・・・」

 

次にペギタンの表情をじっくりと見ると、彼は緊張したかのように顔を強張らせている。

 

じー・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

「ラビ?」

 

その次にのどかの頭の上に乗っているラビリンの姿を見る。ラビリンは笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

かすみは3匹のヒーリングアニマルの姿を順番に、繰り返し見ていく。

 

「うーん・・・・・・」

 

「どう・・・?」

 

「なんか感じたか?」

 

難しそうな顔をするかすみに、のどかとニャトランが尋ねると、かすみは胸に手を当てながら口を開いた。

 

「・・・・・・何も感じないな」

 

「ズコー!!」

 

かすみのストレートな発言に、ニャトランがこけそうになる。

 

「なんでだよ!? 俺たちは可愛いだろ!?」

 

「うん、可愛い・・・可愛い、と思うけど、胸が熱くなるような感じがしないんだ・・・」

 

ニャトランが焦ったように言うと、かすみは両手に胸を当てながらそう言い、そして考え込んでしまう。

 

「かすみにはまだわかんないのかもしれないペエ・・・」

 

ペギタンはかすみにはまだわからない次元の話ではないかと推測する。

 

「そのうちわかるようになるって~!! ドックランには可愛いワンちゃんがいっぱいいるからね~!!」

 

「可愛い、ワンちゃん・・・」

 

ポジティブなひなたの発言にも、かすみは考え込んでしまう。

 

「ひ、人それぞれっていうのは各自いろいろって意味で!! 大丈夫!! そのうちわかるわよ・・・!!」

 

「「「??」」」

 

そんな時、一緒に歩いているはずのちゆの声が背後から響き、のどかたちは振り向く。アスミの方をよく見ると、なんだか彼女の体が透けていた。

 

(アスミも『可愛い』で悩んでるんだな・・・私も、理解できるのだろうか・・・)

 

かすみはアスミも自分と同じようにわからないことを気にしている様子で、それを感じたかすみもその気持ちを理解できるのか不安になっているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ドクルンはトウモロコシがたくさんなっている畑へと姿を現した。

 

「さてと、今回はどれから行こうかしらねぇ」

 

ドクルンはそう言いながら周囲を見渡すも、周り一面はトウモロコシだらけ。他に目につけるものとすれば、畑の真ん中に立っている案山子ぐらいか。

 

「まあ、あのぐらいでもいいか・・・」

 

ドクルンはつまらなそうな表情でそう言い捨てると、ナノビョーゲンを発生させようとする。

 

シュイーン! グシャ!!

 

「・・・?」

 

すると、その直後に誰かが瞬間移動をして案山子の頭を踏み潰す。ドクルンは突然の出来事にやろうとしていた動作を止めてしまう。

 

「ふん! このグアイワルの凄さをとことん見せてやる!!」

 

先ほど、ビョーゲンズたちに煽られて出撃していったグアイワルだった。どうやらいつも以上に息巻いている様子。

 

「だが、最後のメガパーツを使ってしまうのは惜しいな・・・こいつがもっとあれば・・・」

 

グアイワルは自身が持っているメガパーツを見ながら、どうやって増やせばいいか悩んでいた。

 

「そのトウモロコシたちを利用すればいいのでは?」

 

「?・・・なっ!?」

 

ドクルンがその背後から声をかけると、グアイワルが振り向いてこちらを驚いたような表情をする。

 

「ドクルン!? なんでお前がここに!?」

 

「私も蝕みに来たに決まってるじゃないですかぁ。たまたま場所が被っただけです」

 

ドクルンはメガネを上に上げながら、ニヤけた表情のまま言った。

 

「ふん、まあいい。今からこの俺の凄さを見せてやるんだからな!!」

 

「頑張ってください。私は別の場所に行ってますから」

 

ドクルンはそう言いながら、ここでメガビョーゲンを発生させるのは諦めて移動しようとする。

 

「お、おい待て!!!」

 

なぜかグアイワルが慌てたような様子で、こちらを呼び止める。

 

「なんですか? あなたの戯言に付き合ってるほど暇じゃないのですが」

 

「戯言かどうかは俺の活躍を見ればわかる。俺が一番メガパーツを使いこなせるってことをな!!」

 

ドクルンは振り向きざまに面倒臭そうな表情を浮かべながら言うと、グアイワルはなぜか不敵な笑みを浮かべながらそう豪語してくる。

 

「・・・バテテモーダから奪っておいて、何を言ってるんですか?」

 

ドクルンは冷ややかな表情でそう言い放った。相手から取るという姑息な行為をしておいて、何が活躍だ、何か使いこなせるだ・・・全く期待できない。

 

「お、俺は盗んでない!! あいつから預かっただけだ!!」

 

「泥棒はみんなそう言うんですよ」

 

グサッ!!!

 

「ぐっ・・・!」

 

グアイワルは否定するも、ドクルンは動揺することなく反撃し、グアイワルの胸に棘が刺さったようなダメージを与える。

 

「大体、筋トレしてるくせに、メガビョーゲンに戦闘を任せておいて、自身は全く戦わないとか、舐めてるんですか?」

 

グサッ!!!

 

「ぐはぁ!!」

 

「そんな無駄な筋肉を鍛えるくらいなら、いっその事デブの方がまだ魅力がありますよ」

 

グサッ!!! グサッ!!!!

 

「ぐぉぉ!!! あ、あぁ!?」

 

グアイワルの心にさらにダメージを与え、さらに案山子の上から地面へと落ちる。

 

ドクルンはそれに面白がるような笑みを浮かべる。

 

「もういいですか? 私はあなたの雑談に付き合ってる暇はないので」

 

ドクルンはそう言って前を向くと手を振りながら歩き去っていく。

 

「覚えてろ、ドクルン!! 今に吠え面をかかせてやる!!!!」

 

グアイワルが何か叫んでいるが、ドクルンはニヤけた表情を崩さないまま、足早に去っていく。

 

トウモロコシ畑を後にし、自然の中の道を歩いていく。

 

「グアイワルもからかったことですし、そろそろ仕事をしようかしらねぇ」

 

そう言いながら歩いていくと、見えてきたのは芝生が一面に広がっていて、木の柵で囲まれている中でトンネルやトラックがあり、そこでは大勢の人が犬たちと戯れている姿があった。

 

「犬か・・・」

 

ドクルンはそう呟いた途端に、ある記憶が甦る。

 

ーーーーりょう!! 見て!! かわいいわよ!!

 

ーーーーあぁ・・・本当、かわいい・・・!!

 

キュアフォンテーヌーーーーちゆと一緒に隣町のペットショップに行って、犬を見ていた気がする。その時は、自分は瞳をキラキラさせて、その無垢な瞳を見つめていた気がする。

 

「ふふふ・・・ワンちゃん・・・ワンちゃん・・・ふふふ・・・」

 

その姿を思い出した瞬間、ドクルンの顔はだらしなくヘラヘラと笑みを浮かべていた。

 

「ドクルン? ドクルン!!」

 

「・・・はっ!?」

 

スタッドチョーカーになっているブルガルが呼びかけると、ドクルンは我に返る。

 

「何をぼうっとしてるブル?」

 

「ごめんなさい、少し取り乱しました」

 

ドクルンはメガネを上に上げながらそう言うと、もう一度ドックランを見つめる。

 

人間と戯れている犬たちの姿を見つめ、ドクルンは不敵な笑みを浮かべる。

 

「まあ、少し様子を見てみようかしら」

 

ドクルンはドックランへと向かうべく、木の階段を降りていくのであった。

 

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