ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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第6話、後編になります!


第6話「快楽」

「きゃあぁぁぁ!!」

 

「うわあぁぁぁ!!」

 

「こっちだー!!」

 

女性客の悲鳴と男性客の悲鳴、そして避難誘導をしつつも逃げるもの。ゆめぽーとの別館は阿鼻叫喚で、様々な人の声で溢れていた。

 

「メガー!!」

 

チュドーン!!!

 

イタイノンとメガビョーゲンはステージ会場から場所を移動して、紳士服・婦人服売り場にいる客たちを襲っていた。

 

もっと恐怖で逃げ惑う人たちを見下ろし、かつ病気で蝕むために。別段、人が得意というわけではなくむしろ人がいない場所を好むイタイノンだが、あの快楽を忘れられず、ひたすら人ばかり襲っていた。

 

「キヒヒヒ・・・この辺もだいぶ人がいなくなったの」

 

気がつくと人もだいぶまばらとなり、病気で蝕んだ場所が残るばかり。もちろん、パパーーーーキングビョーゲンの言いつけも忘れない。

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンはひたすら指揮棒を振りながら指示、トランペット、バイオリン、小太鼓は光線や波動を放って破壊しつつ、病気に蝕んでいく。

 

「イタイノン・・・この調子でどんどん蝕もうネム」

 

「言われなくても、なの・・・」

 

不敵な笑みを隠さないイタイノン。そんな彼女を羊のパートナーーーーーネムレンは推しつつも、心配そうに見つめる。

 

「これでプリキュアをやっつけちゃえば、キングビョーゲン様に褒めてもらえるネム」

 

ネムレンの言葉に、イタイノンの頭にとある映像がよぎる。

 

ーーーー熊のようなぬいぐるみを床に叩きつけ、見下ろすかのように見る白衣の人。

 

「・・・・・・・・・」

 

イタイノンの体は少し震えていた。

 

なぜ、今の映像がフラッシュバックしたのか・・・?

 

「・・・イタイノン? どうしたネム?」

 

心配したネムレンが声をかけると、ハッとなったイタイノンは首を振っていつもの調子を取り戻す。

 

「なんでもないの・・・」

 

気づけばだいぶ蝕む場所も減ってきた模様。床も壁も破壊されてボロボロで、売られているきれいな服と共に真っ黒けだ。メガビョーゲンも気のせいか、少し大きくなった気がする。

 

ここは自分だけの場所になったが、どうせならもっと場所を広げたい・・・。

 

そう思い立ったイタイノンは暴れているメガビョーゲンに近づく。

 

「メガビョーゲン、あっち」

 

「メガビョーゲン!」

 

この別館から出るように指を指し、メガビョーゲンは指示に従って出口へと歩いていく。トランペットから放たれる光線を放って入り口を破壊すると、外へと飛び出した。

 

建物の中の騒ぎで異変を感じ取ったのか、人はほとんどいなくなっている。

 

逃げ惑う人々の姿が見れないのは残念だが、外にもこんなに不快感を感じるほどの場所がある。もっともっと病気で蔓延させて、パパの快楽を満たさなければ・・・。

 

「メガビョーゲン、もっと蝕んで」

 

「メガー!!」

 

小太鼓から波動が放たれ、近くの芝生が病気へとあっという間に蝕まれる。

 

「メガー!!」

 

バイオリンから楽譜のような光線が放たれ、街路樹が病気へと蝕まれていく。

 

「ビョーゲン!!」

 

トランペットから放たれる光線が近くの小さな建物を破壊し、病気へと侵されていく。

 

この調子でメガビョーゲンは外の景色をどんどん蝕んでいくのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひなたは二人の姿を見たとき、いろいろな状況を放棄してこんなことを思った。

 

ーーーーめっちゃかわいい!!!!

 

思わず口に出したその言葉は、グレースやフォンテーヌ、そしてビョーゲンズも唖然とさせた。

 

どう思うか賭けに出ていたニャトランは、ひなたの思わぬ反応に笑いが止まらなかった。まさか、敵がいるのにこんな面白い反応をする奴がいるとは。

 

友達思い・・・仲間を大事にしようとする・・・かなりノリがいい・・・。

 

まさに自分の理想のパートナーだった。それに仲間を助けようとする姿勢は何か心に熱いものを感じた。

 

しかも、自分よりも他人の心配をしてくれる・・・。

 

「お前、最高だよ! やっぱり俺、ひなたのことが気に入ったぜ!」

 

ニャトランの肉球が光る。

 

「心の肉球にキュンときた!!」

 

きっとひなたと一緒ならパートナーができる。そう思い、ニャトランは話した。

 

「なあ、ひなた。俺と一緒にプリキュアにならないか?」

 

「え、あたしもなれるの?」

 

「あの怪物、ビョーゲンズから地球を守るんだ!」

 

「地球を守る・・・」

 

「そう。お前の好きなものや大切なものを、守るんだよ!」

 

ひなたにも大事なものがある・・・大切な友達がいる・・・だからこそ、プリキュアに向いている、ニャトランはそう思いながら、手を差し出す。

 

そして、何よりも・・・ひなたは、自分が彼女の落とした口紅を届けようとして地面に衝突しかけたときも助けてくれた。今思えば、あれも運命だったのかもしれない。

 

「ひなた、お前ならできる! っていうか、俺はお前と組みたい!」

 

「・・・!」

 

ひなたはのどかとちゆのことを思い出していた。二人は今、怪物につかまっている。それを助けることができるなら・・・!

 

ひなたは立ち上がり、ニャトランへと歩み寄る。

 

「うん! わかった。やるよ、ニャトラン!」

 

二人の手と手が触れ合ったとき、あふれんばかりの光が立ち上った。

 

「な、なんだ!?」

 

「この光は!?」

 

「ひなたちゃん!?」

 

グアイワル、フォンテーヌ、グレースが驚く中、ひなたとニャトランの前には一本のステッキが現れていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃、イタイノンとメガビョーゲンはゆめぽーとの庭的な場所を病気に蝕んでいた。

 

芝生や街路樹、更には植えている花や面している海にも病気を蔓延させていく。

 

「メガビョーゲン!」

 

メガビョーゲンは庭園のような場所にも楽譜のような音波を放ち、病気へと蝕んでいく。

 

もうゆめぽーとの外のほとんどのものを病気で蔓延させたはず。気のせいか、メガビョーゲンがさっきよりも大きくなった気がする。

 

「ここもだいぶ蝕めるところがなくなってきたの・・・」

 

「そろそろ移動する・・・?」

 

イタイノンは暴れているメガビョーゲンを見ながら考える。もう自分は十分満足しているが、どうせだったら、もっと蝕むことができればクルシーナに吠え面をかかせられるかも・・・。

 

イタイノンはこの辺一帯を本当にないくらいに蝕ませた後、場所を移動させようと考えた。

 

「まだ蝕めてない場所があるの・・・そこを徹底的にやってからにするの」

 

「でも、もう十分大きいんじゃないかネム?」

 

「それで満足したらダメなの・・・ドクルンとクルシーナに足元を掬われるの」

 

心配そうなネムレンをよそに、イタイノンは不敵な笑みを浮かべる。

 

「メガー・・・」

 

「・・・ん?」

 

イタイノンはメガビョーゲンの様子がおかしいことに気づく。どうやら、トランペットから音が何も出なくなってしまったようで、指揮棒で叩いている。

 

カンカン!カンカン!

 

メガビョーゲンが叩き続けていると、トランペットはプルプルと震えた後、体を縮こませると・・・。

 

ポン!! ポン!!

 

トランペットの口から何かが吐き出された。

 

「!!」

 

イタイノンは瞬間移動をして何かを片手でキャッチする。握られていたものは中に病気のような赤い色をしたオンプが入った玉だった。しかも、2つだ。

 

「・・・これ、何なの?」

 

「見たことない玉ネム~」

 

メガビョーゲンの楽器から吐き出されたものだから、何か蝕むのに役に立つのは確かだ。でも、いまいち何のかわからない。

 

そういえば、ドクルンもメガビョーゲンが産んだ卵を持ち帰ってきたはず。もしかしたら、あの女に使えるかもしれない。

 

ーーーー帰ったらドクルンに調べてもらうの。

 

とりあえず、服のポケットに入れておくことにした。

 

・・・と、その時である。

 

「メガ!?」

 

「!!??」

 

「! 何ネム!?」

 

振り向くと何やらピンク色の光の柱が上がっていくのが見えた。自分にとって不快感しか湧かない、神々しい光。

 

その場所はゆめぽーとの中だ。確か、グアイワルがいたはず。まさか、失敗したのか?

 

あいつもあいつですぐに過信するところがある。調子に乗って失敗することも多くはなかった。

 

失敗したということは、あっちのゆめぽーとの蝕んだ場所は元に戻っていっているはず。ということはもっと蝕めるはず。プリキュアに会うリスクは大きいが、今のメガビョーゲンなら勝てると思う。

 

それに今なら人もたくさんいないし、思う存分自分の場所ができる。

 

イタイノンはそう決すると、メガビョーゲンに指示を出す。

 

「メガビョーゲン、あっち」

 

「メガビョーゲン!」

 

イタイノンとメガビョーゲンはゆめぽーと、もとい光の柱の方へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニャトランとパートナーとなり、プリキュアーーーーキュアスパークルとなったひなたは可愛くなった自分の姿に興奮していた。

 

しかし、いつまでも興奮してはいられない。怪物をどうにかしないと。

 

ニャトランの言う通りに飛ぶと、体が軽く自分の体じゃないような気がした。この勢いでグレースとフォンテーヌを救出。

 

さらに光線を放ち、はじき返された光線をさらに弾きかえすなど、メガビョーゲンを圧倒。大いに立ち回った。

 

さあデビュー戦、大技で浄化の時間だ。

 

菱形の模様が描かれたヒーリングボトルをステッキへとかざす。

 

「エレメントチャージ!!」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「ヒーリングゲージ上昇!!」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングフラッシュ!!」

 

スパークルはそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、黄色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、光のエレメントさんを優しく包み込む。

 

菱形状にメガビョーゲンを貫きながら、光線は木のエレメントさんを外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「お大事に」」

 

光のエレメントさんは、鏡の中へと戻り、蝕んだ箇所も元に戻っていく。

 

「ふん、思いの外やるようだな。だが、あっちはどうかな? もう大きくなっているじゃないか?」

 

グアイワルは意味深に言うと撤退していった。

 

「え、勝ったの? やったー! あたしすごーい!」

 

スパークルは喜び、二人にハイタッチしようとするが・・・。

 

ドォーン!!

 

「ええ!? な、何!?」

 

「まだ終わってないラビ!!」

 

「メガビョーゲンは、あと一体いたはずニャ!」

 

突然の轟音にスパークルが驚き、ラビリンとニャトランが言うと、3人は辺りを警戒する。

 

ドォーン!!

 

また、轟音。しかも、少し大きくなった。こっちに近づいてきている・・・。

 

3人は周囲を警戒する。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

しかし、あれほど鳴っていた轟音が聞こえなくなった。

 

「あれ? 音がしない・・・?」

 

「いなくなった、ってこと?」

 

グレースとスパークルが気を抜いた・・・その瞬間・・・。

 

ビィィィィィィィィッ!!

 

チュドォーン!!

 

「きゃあ!!」

 

「え、何!?」

 

突然、3人の眼の前の地面に光線が直撃し、爆発と共に破壊音が響く。3人は思わず、片腕で防御姿勢を取る。

 

「メガビョーゲン!」

 

「グアイワル、やっぱりしくじったの。しかも、1人増えてるし。まあ、いいの。数の暴力は手数で払拭するの」

 

煙が晴れた後、フォンテーヌが光線が飛んできたところを見ると・・・。

 

「見て!あそこ!!」

 

フォンテーヌの言葉に、二人も見上げてみると・・・。

 

「ええ!? 怪物!? しかも、さっきのよりもデカくない!?」

 

そこにはゆめぽーとの屋根の上に乗っているメガビョーゲンと、ゴシックロリータの服を着た少女がいた。メガビョーゲンを連れているということは、ビョーゲンズだろう。

 

「あの子は・・・?」

 

「ビョーゲンズのイタイノンラビ!」

 

「あんな可愛い子が・・・?」

 

そう話していると、イタイノンの顔の後ろから小さな羊のマスコットのような生き物が姿を現れた。

 

それを見て、驚愕するものが2人、唖然とするものが1人いた。

 

「「!?」」

 

「え・・・シプリン・・・?」

 

「・・・ネムレンだネム」

 

唖然としていたーーーーニャトランが名前をつぶやくと、ネムレンはぎこちないながらも訂正した。

 

「え?ニャトラン、あの可愛い子と知り合い?」

 

「・・・ああ、そうだよ」

 

ひなたの言葉を肯定するニャトラン。

 

「シプリンも、ビョーゲンズになってたペエ・・・?」

 

「なんで、そんなこと・・・?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ペギタンとラビリンがそう言うも、ネムレンは辛そうに目をそらしながら何も答えない。

 

「おい!シプリン!」

 

先ほどまで顔を俯かせていたニャトランがネムレンに向かって叫ぶ。

 

「お前、なんでビョーゲンズに・・・!? 一緒に地球を癒そうって約束したはずだろ!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ニャトランの悲痛な叫びも、ネムレンは俯いたままで答えようとしない。

 

「シプリン!!」

 

「・・・さい」

 

「え・・・?」

 

小さな声でぶつくさ言うネムレン。ニャトランがその言葉に戸惑っていると・・・。

 

「うるさい!! ニャトランには関係ないよ!!」

 

ネムレンは感情が爆発したかのように叫ぶ。

 

「関係ないってことないだろ!! 俺たちは友達じゃんか!!」

 

「何が友達なの!? 一緒に地球を癒すとか言って、自分だけパートナーなんか見つけて! 私のことなんかどうでもよかったんでしょ!!」

 

「そんなことない・・・!! オレは・・・!」

 

「もう放っておいてよ!! 地球もニャトランたちも大嫌いなんだから!!」

 

悲痛に叫ぶネムレンを見かねたのか、イタイノンは手で優しく髪の後ろに下げさせる。

 

「相棒をたぶらかすのはやめてほしいの。見てて見苦しいだけなの。メガビョーゲン」

 

「メガ、ビョーゲン!!」

 

イタイノンはメガビョーゲンに指示すると、少し大きくなった怪物は屋根の上から飛び上がり、3人を押しつぶそうと飛び降りる。

 

「来るラビ!!」

 

3人は飛び退いてかわす。

 

「「はあぁぁぁぁ!!」」

 

フォンテーヌとスパークルはその直後に蹴りを入れようとするが、そこにトランペットと小太鼓がそれぞれ攻撃を受け止める。

 

「「きゃあ!!」」

 

トランペットと小太鼓はそのまま二人を吹き飛ばすも、大抵を立て直す。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

一方、グレースはハート型の光線をメガビョーゲンに放つも、バイオリンが黒い光線を放って相殺する。

 

「メガ、ビョーゲン!!」

 

「え、きゃあぁぁ!!」

 

そこへメガビョーゲンが指揮棒を長く伸ばすと、まるでブーメランを投げるかのようにグレースへと投げつけた。指揮棒が直撃したグレースは地面へと落ちる。

 

「グレース!!」

 

フォンテーヌとスパークルは近づこうとするも、トランペットが二人の前に光線を放って近づけないようにする。

 

更にトランペットはフォンテーヌに向かって突進し、バイオリンはスパークルに近づいて弦を振りかぶる。

 

「ぷにシールド!!」

 

「くっ・・・」

 

フォンテーヌはぷにシールドで防ぐも、攻撃が重くなかなか返せない。

 

「ああもう!楽器が邪魔で近づけないし!!」

 

スパークルはステッキで防ぐも、攻撃の隙をつくことができない。

 

パッパラッパー!パッパラパッパー!!

 

トランペットはぷにシールドで防ぐ、フォンテーヌに向かって光弾を乱れ打ちする。

 

「うっ・・・くっ・・・あぁ!!」

 

フォンテーヌは光弾を防ぎきることができず、吹き飛ばされてしまう。

 

「フォンテーヌ!! きゃあ!!」

 

バイオリンはスパークルに楽譜の光線を放つ。直撃して爆発し、地面へ吹き飛ばす。

 

すると、メガビョーゲンは3つの楽器を自分の周囲を囲むように配置する。

 

「うぅ・・・え、何?」

 

グレースはなんとか立ち上がるも、メガビョーゲンの行動に疑問を抱く。

 

そして、指揮棒を構え直すと・・・。

 

「メガー!!」

 

ブウォン!! ブウォン!! ブウォン!!

 

ブウォン!! ブウォン!! ブウォン!!

 

トランペット、バイオリン、小太鼓が、メガビョーゲンの指揮を振ると一斉に音楽を奏で始めた。

 

「きゃあぁぁ!!」

 

「な、何? この音・・・!?」

 

「頭がおかしくなっちゃう・・・!!」

 

3人は不協和音を聞かされ、思わず耳を塞ぐ。音は明らかな不快な音で、頭が痛くなる。

 

突然、演奏が止まり、頭痛がなくなったかと思うと・・・。

 

「え・・・?」

 

「メガビョーゲン!!」

 

「「「きゃあぁぁぁぁ!!!」」」

 

メガビョーゲンが指揮棒を伸ばして、3人を薙ぎ払い吹き飛ばす。

 

「くっ・・・!」

 

「これじゃあ、メガビョーゲンに近づけない・・・」

 

ブウォン!! ブウォン!! ブウォン!!

 

「嫌ああぁぁぁ!!」

 

「うっ・・・くぅ・・・」

 

「ああぁぁぁ!!」

 

3人は立ち上がろうとするが、3つの楽器はさらに不協和音を奏でて苦しめてくる。このままでは防戦一方だ。

 

ビィィィィィィ!!

 

チュドーン!!!!

 

また、音が止むと3つの楽器は黒い光線を3人それぞれに向かって放った。

 

煙が晴れた頃には、ボロボロになって倒れている3人の姿があった。

 

「キヒヒヒヒ・・・プリキュアなんか大したことないの。これだったら私でも捻り潰せるの」

 

イタイノンはメガビョーゲンがプリキュアを圧倒している姿を見て、笑みを浮かべる。

 

「うっ・・・・・・」

 

「このままじゃ・・・やられる・・・!」

 

スパークルとフォンテーヌは強力なメガビョーゲンに絶望に近い感情を抱いていた。

 

「諦めちゃダメだよ!!!」

 

そう叫んだのはグレースだった。伏していた状態から立ち上がろうとしている。

 

「私たちが諦めたら・・・この場所も・・・生きている人たちも・・・みんな、みんな苦しむことになっちゃう・・・そんなのダメ・・・!」

 

グレースは立ち上がると再びステッキを構える。

 

「私は守りたい・・・ここも、この大好きな町も、親切にしてくれる町も、みんな守りたい!!」

 

グレースの守りたいという気持ちに感化され、フォンテーヌとスパークルも立ち上がる。

 

「でも・・・あの楽器をどうにかしないと・・・!」

 

「あいつに近づけない・・・! でも、あれめちゃめちゃ強いし!」

 

「大丈夫!」

 

フォンテーヌとスパークルの弱気な言葉に、グレースが笑顔を見せる。

 

「私たち3人なら、きっとできる!!」

 

グレースの言葉に、フォンテーヌとスパークルは頷き、ステッキを再び構える。

 

「ふん。見え透いた虚栄心なんかくだらないの。メガビョーゲン、トドメ!!」

 

「メガー!!」

 

イタイノンはメガビョーゲンに命令すると、指揮棒を振り上げる。

 

「! またあれが来るわ!!」

 

フォンテーヌが言う。また不協和音の音波を奏でる楽器たちの合図だ。

 

「バラバラに攻撃しちゃダメラビ!!」

 

「3人で同時に、足並みを揃えて攻撃をしかけるペエ!!」

 

「ニャ!!」

 

「うん!!」

 

3人はステッキを構えて、臨戦態勢をとる。メガビョーゲンは指揮を振ると・・・。

 

トランペット、バイオリン、小太鼓が一斉に音を奏で始めた。

 

「いまラビ!!」

 

「「「ぷにシールド!!」」」

 

ステッキから肉球のシールドを展開し、さらに3人は同時にそれぞれの楽器に向かって飛び上がる。

 

不快な音波はぷにシールドによって打ち消されていき、それぞれの楽器へと近づいていく。

 

「メガ!!??」

 

それに驚くメガビョーゲン。そうしている間に、3人のぷにシールドが楽器を捉えようとする。

 

「メガ!!」

 

メガビョーゲンは指揮棒を慌てたように振ると、楽器たちは体をふるって打ちのめそうとするが、ぷにシールドが防ぎ受け止める。

 

「っ・・・!」

 

「くっ・・・!!」

 

「うっ・・・!!」

 

3人は相手からすごい力を感じながらも、徐々に楽器の体を押しのけていき・・・。

 

「「「はあぁぁぁぁ!!!」」」

 

それぞれの楽器を弾き飛ばした。

 

「メ、メガッ!!??」

 

3つの楽器はメガビョーゲンへと吹き飛んで直撃し、仰向けに倒れる。

 

3人は同時に着地し、その中の一人、キュアグレースがステッキをメガビョーゲンへと向ける。

 

「「キュアスキャン!!」」

 

ラビリンの目が光り、メガビョーゲンの中にいる、苦しんでいる様子のエレメントさんを見つける。

 

「光のエレメントさんラビ!」

 

「場所は左肩!!」

 

そうしている間にメガビョーゲンは再び立ち上がり、指揮棒を長くするとそれをブーメランのように投げつけてきた。

 

「ぷにシールド!!」

 

スパークルが素早く前に立って、肉球型のシールドを展開し、指揮棒を上へと弾く。

 

「はあぁぁぁ!!!」

 

さらにステッキから光線を出して、飛び上がったグレースがハート型の光線をステッキに向かって放つ。

 

「メ、メガァ!?」

 

ピンク色の光に包まれた指揮棒はメガビョーゲンへと飛んでいって、顔へと直撃。思わず、メガビョーゲンは膝をついたのであった。

 

「今だよ、フォンテーヌ!!」

 

「メガビョーゲンを浄化ラビ!!」

 

「ええ!!」

 

フォンテーヌは水の模様が描かれたヒーリングボトルをステッキへとかざす。

 

「エレメントチャージ!!」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「ヒーリングゲージ上昇!!」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングストリーム!!」

 

キュアフォンテーヌはそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、水色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、水のエレメントさんを優しく包み込む。

 

水型状にメガビョーゲンを貫きながら、光線は光のエレメントさんを外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「お大事に」」

 

光のエレメントさんは、トランペットの中へと戻り、蝕んだ箇所も元に戻っていく。

 

「・・・ふん。まあ、いいの。今日は満足なの」

 

イタイノンは心に満たされたような気持ちを抱きながら、その場を後にしようとする。

 

「シプリン!!」

 

ニャトランが姿を隠した友人に向かって叫ぶ。イタイノンは足を止めると顔だけを後ろに向ける。

 

「オレはお前がそっちにいるなんて許さないからな!! 絶対、お前の目を覚まさせてやるニャ!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

イタイノンと彼女の中に隠れるネムレンは何も答えずに退散していったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃病院へと戻ってきたイタイノンは、地下の実験室に来ていた。

 

扉を開けると、そこには部屋の中から窓越しから観察しているドクルンの姿があった。

 

イタイノンはその光景に黙って近づいていき、ドクルンの背後で立ち止まる。

 

「・・・まるで変質者みたいなの」

 

「おや、お帰りなさい。どうでした?」

 

「・・・いつも通りなの」

 

「それはよかったです。それにしても、この娘ったら面白いんですよねぇ」

 

何がよかったのかはわからないが、付き合うと疲れるので、話を聞いてやることにする。

 

「先日、私が持ってきたメガビョーゲンの卵、あれ与えてやったでしょう?」

 

「・・・それがどうかしたの?」

 

「あれを与えて数時間経つというのに、この娘、メガビョーゲンを拒絶するように抵抗しているんですよぉ」

 

よくわからなかったイタイノンは窓越しから覗いてみると、苦痛に顔をしかめる少女から何か蠢いているのが見えた。どうやら受け入れるのを拒んでいるかのよう。

 

抵抗して何の意味があるの? 抵抗したって苦しいだけだと思うけど・・・。

 

「あれってずっと前からこういう状態なの?」

 

「そうですねぇ。普段ならナノビョーゲンに取り憑かれるはずなのですが・・・」

 

イタイノンは「あっ」と思い出したかのように、ポケットから玉のようなもの2つを取り出す。

 

「私のメガビョーゲンからこんなものが出てきたの」

 

「・・・ほう?」

 

ドクルンはイタイノンから2つの玉を取ると、観察するかのような目で見る。

 

「・・・もしかしたら、メガビョーゲンの卵と同じようなものかもしれませんねぇ」

 

ドクルンはそう言うと部屋へと入っていき、ベッドの上で寝たきりになっている少女へと近づく。

 

パリンッ!!!!

 

「!?」

 

そして、2つの玉のうちの一つを床に叩きつけた。

 

イタイノンは突然の行動に驚いていた。一体、何をしているの・・・?

 

すると、玉の割れたところから赤色のものが飛び出していき、少女の体へと取り憑いていく。

 

「・・・!?・・・!!」

 

少女からかすれたような声が聞こえ、気のせいか少女の顔がますます苦痛に歪んでいるようにも見える。

 

「フフ。やはりね・・・」

 

ドクルンは不敵な笑みを浮かべながら部屋を出ると、窓から少女を観察する。

 

「あの玉は、私のメガビョーゲンの卵と同じ効果があるみたいですねぇ・・・」

 

「そんなの見てればわかるの」

 

イタイノンはドクルンに背を向けると出口に向かって歩き出す。

 

「おや? もう帰るんですかぁ? ここからが面白いというのに」

 

「今日はもう疲れたの。帰ってゲームでもするの」

 

「そうですかぁ。ご苦労様でした・・・」

 

ドクルンは引き止めようともせずに愉快そうな声で返す。イタイノンはそれに少しイラっとしたが、相手にすると喜びそうなので放っておくことにした。

 

地下室から出ると、イタイノンはいまだに出てこない相棒を気にかける。

 

「ネムレン・・・」

 

髪に隠れているはずの相棒に声をかけるが、反応はない。

 

「・・・いい加減に出てくるの」

 

しばしの沈黙の後、イタイノンの髪から顔出すネムレン。その顔はなんだか辛そうな表情だった。

 

「・・・・・・・・・」

 

ネムレンは黙ったまま何も答えない。

 

イタイノンは手のひらを広げると、そこに立てと言わんばかりに手のひらを振る。ネムレンは少し戸惑いつつも、手のひらへと足をつける。

 

「・・・イタイノン、あ」

 

何か話そうとするネムレンだが、イタイノンはまるで皆まで言うなと言わんばかりに彼女の頭を優しく撫でる。

 

「・・・一緒にゲームやる?」

 

「え・・・?」

 

「あんなネムレンをたぶらかす虎猫のことなんか忘れて、ゲームするの」

 

ネムレンがイタイノンの方を見ると、彼女は無意識なのか優しい微笑を浮かべていた。

 

ニャトランがパートナーとなってプリキュアの味方になり、思うところもある。でも・・・。

 

「・・・うん」

 

でも、今は珍しく見せる彼女の優しさを噛み締めようと心に思うのであった。

 




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