ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

72 / 144
今回はオリストになります。2〜3話ぐらい投稿予定です。
ビョーゲンズに新たなメンバーが加わります!


第71話「眠り」

 

「コホン、第二回!! プリキュア緊急ミーティングを始めるラビ!!」

 

ラビリンが突然、ベッドの上でヒーリングアニマルたちと共にそう言い始めた。

 

その日、のどかの家にはちゆ、ひなた、アスミ、かすみが集まっていた。今日はラビリンが、プリキュアのみんなに話があると言い、ちゆやかすみたちを呼び出したのだ。

 

「今回の議題は?」

 

「ズバリ、かすみラビ!!」

 

ちゆが聞くと、ラビリンはかすみのことを見る。

 

「わ、私か・・・!?」

 

かすみが驚きながら言うと、ラビリンは頷く。

 

「今回は、かすみが持っている不思議な力についてペエ」

 

ペギタンが代わって、のどかたちに今回の概要を説明する。

 

「まあ、確かにかすみっちって・・・いろいろと不思議だな~って思うところがあるよね」

 

ひなたもこれまでのかすみの姿を思い出しながら言う。

 

「ビョーゲンズやメガビョーゲンの居場所を察知したり・・・」

 

「この前は、アスミちゃんと同じ風の力を使ってたよね」

 

「そうですね・・・あれは確かに私と同じ力でした」

 

ちゆとのどかも思い当たる部分があり、アスミも思い返してみる。

 

「なあ、かすみってどうしてこんな力を持っていたんだニャ?」

 

ニャトランはかすみに聞くも、彼女は少し困ったような顔を見せる。

 

「前も言ったが、私は自分のことがわからないんだ。気づいた時にはここにいて、こんな能力を持っっていたんだ。なんでこんな能力を持っていたかなんか、私にはわからない・・・」

 

「そうなんだね・・・」

 

かすみはニャトランやプリキュアたちにそう説明する。自分は好きでこんな能力を持っていたわけでもないし、望んで手に入れていた能力という訳でもない。いつの間にか持っていただけ。

 

どうしてこんな能力を持っているかなんて想像がつかない。

 

「まあ、それは置いておくとすると、まず俺たちはかすみの不思議な力についてはあまりよくわかってない。でも、かすみと一緒に戦っているうちにいろんなことがわかっただろ?」

 

「そうね・・・かすみは私が見る限りでは、ビョーゲンズに対抗できる力を持っていると思うの」

 

「持っているステッキもあたしたちに結構似てるもんね~・・・」

 

「ああ・・・これのことか?」

 

かすみは黒いステッキを取り出して彼女たちに見せる。確かによく見れば、パートナーが入るようなハートマークもあり、エレメントボトルを差し込むような場所があるのが見える。先っぽの光線を出す部分もハートマークなので、プリキュアたちが使うステッキに似ていることは確かだ。

 

「本当に似ているわね・・・」

 

「色が黒いだけだもんね」

 

「確かに・・・よく似ているな・・・」

 

ちゆとのどかは自分のステッキを出して見比べながら言った。

 

「えっと、それで・・・僕たちはかすみを見て考えたペエ。かすみのことを知っておけば、今後のお手当てもうまく行くようになるんじゃないかと思ったペエ」

 

「なるほどですね・・・」

 

ペギタンの説明に、アスミは半ば納得する。

 

「で、また特訓するの? あたしたちに特訓は必要ないんじゃなかったっけ?」

 

「まだ何もないけど・・・今日は特訓じゃないニャ」

 

ひなたはまた特訓をするのだろうと考えてそう言ったが、ニャトランはそれを否定する。

 

「今回はかすみを知るために、かすみに知ってもらうためにこんなのを考えたラビ!!」

 

ラビリンのその言葉を合図に、ペギタンとニャトランが幕を広げ、ラビリンがその前へと飛ぶ。

 

「題して、お互いを知ってお手当てを効率良くしていきましょう作戦ラビ!!」

 

「「「「「??」」」」」

 

ラビリンたちの提案に、のどかたちが呆然としていると・・・・・・。

 

「・・・えっと、私がのどかたちとどうすればいいんだ?」

 

かすみは首を傾げながら苦笑したような表情でラビリンたちに聞く。

 

「うーん、でもかすみちゃんとは仲良くしてるけどなぁ・・・」

 

のどかもどうすればいいかよくわかっていないようで、顎に手を当てて考え込んでしまう。

 

「仲良くはなってると思うけど、お互いをもっと知ることでもっと仲良くなって、お手当ての際の連携を強くするっていう狙いがあるんだニャ!」

 

ニャトランが説明すると、プリキュアたちは少しは理解ができたようで・・・・・・。

 

「お互いに知らないことを話して、もっと結束力を強くしていけば、今後のお手当ても効率よくいけると考えてるペエ!」

 

「なるほど・・・」

 

ニャトランとペギタンの説明に、納得したようにちゆが頷く。

 

「でもさあ、相手が自分の知らないことってあんまり打ち明けづらくない?」

 

「そうね・・・中には事情があって言えなかったり、恥ずかしいことだってあるかもしれないものね・・・」

 

ひなたとちゆが心配そうな感じでそう言う。

 

「かすみ、何かやましいことでもあるラビ?」

 

「いや・・・それはないが・・・」

 

二人の言葉を受けてラビリンがかすみに問うも、かすみはなんとも言えない表情で返す。

 

「だったら問題ないラビ!! 早速のどかと正面切って、話してみるラビ!!」

 

「えぇ・・・」

 

ラビリンの言葉に、呆れたような口調で返すかすみ。まだ、賛成したわけでもないのになし崩しに変なことをやらせる羽目になってしまった。

 

のどかとかすみは対面するように座り直し、お互いの顔を見つめる。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

二人は、困ったような表情をして沈黙していた。正直、面と向かって話したことは一度もない。

 

「ぅぅ・・・・・・」

 

のどかの顔を見つめていたかすみの顔が紅潮していく。大好きなのどかがこちらを見つめてくることに何だか恥ずかしくなってくる。

 

「っ・・・・・・」

 

のどかも少し顔を赤くしていく。暑いわけでもないのに、変な緊張からか汗が出てしまう。

 

「・・・二人とも、何も話さないの?」

 

「だ、だって・・・!!」

 

ひなたの呟いた言葉に、顔を赤くしたかすみがこっちを向いて言う。

 

「ほら二人とも!! 早くお話をするラビ!!」

 

「お、お話って・・・何を話せばいいんだ・・・!?」

 

「そ、そうだよ、ラビリン!! かすみちゃんと何を話していいかわかんないよ・・・」

 

ラビリンが催促するも、かすみとのどかは困惑するばかりだ。そもそもまともに二人きりで話したことがないので、どういう話題を振ればいいのかわからない。

 

「そんなの自分で考えるラビ!!」

 

「えぇぇ・・・そんなこと言われても・・・」

 

のどかはますます困惑しても、ラビリンは何も言ってくれず、再びかすみの表情を見る。

 

「っ・・・・・・」

 

「ぅぅ・・・・・・」

 

しかし、のどかもかすみも顔を俯かせながら、手をモジモジとさせている。

 

「もどかしいね・・・」

 

「それどころか、変な空気になっちゃってるけど・・・」

 

ひなたとちゆも微妙な感じで見つめている。

 

「これが、知る方法へとつながるのですか?」

 

「多分、違うと思うニャ・・・」

 

アスミがニャトランに問うと彼も困ったように言う。

 

「ああもう!! じれったいラビ!!」

 

先ほどから何も話さない二人に業を煮やしたのか、ラビリンがのどかの背中を押し始める。

 

「ラ、ラビリン!? 何を!?」

 

「距離感を間違えているのなら、もっと近づいてみるラビ!!」

 

「ちょっ、ちょっと待っーーーーふわぁ!?」

 

ラビリンが強く押したために、困惑しているのどかの体がかすみに急激に接近する。

 

「ふわぁっ!?」

 

かすみはのどかがいきなりよろけて倒れてきたことに困惑する。

 

「「あ・・・・・・」」

 

気づいた時には二人の顔はもはや目と鼻の先と言えるほどに近づいていた。

 

それで一番動揺したのは、かすみだった。

 

のどかの顔が私の近くに・・・近くに・・・近くに!!??

 

「あぁ・・・あぁ・・・」

 

かすみの顔が真っ赤なリンゴのように染まっていく。そして、のどかの顔が急接近したその恥ずかしさに耐えきれなくなったかすみは・・・・・・。

 

「ふわぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

ゴーン!!

 

「あ痛っ・・・!」

 

かすみは明らかにパニックになり、勢い余ってのどかの額にぶつかってしまう。

 

「ふわぁぁ・・・ふわ、ふわぁ・・・ぁぁ・・・」

 

かすみは立ち上がって距離を取ろうとするが、体をフラフラとさせており、真っ赤な顔をしているその目はグルグルと回していた。そして・・・・・・。

 

ドタン!!!!

 

そのまま背後へと倒れてしまった。

 

「「「「あぁっ!?」」」」

 

「ペエ!?」

 

「ニャ!?」

 

「ラビ!?」

 

かすみが倒れたことにのどかたちは驚いて、かすみへと駆け寄る。

 

「かすみっち、大丈夫!?」

 

「しっかりしてください!!」

 

「か、かすみちゃ~~ん!!」

 

「ふわぁぁぁぁ・・・・・・」

 

「気絶しちゃってる・・・!?」

 

のどかたちが彼女の体を起こすも、かすみはすっかり目を回して気絶してしまっていた。

 

「・・・ラビリン」

 

「ラ、ラビリンは何も悪くないラビ!!」

 

ニャトランの冷めたような表情を見て、ラビリンはそっぽを向きながら返したのであった。

 

「ふわぁ~・・・・・・」

 

そして、なんとなくかすみの表情が少し幸せそうにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲンキングダムーーーーそこではクルシーナ、イタイノンがキングビョーゲンに報告があるとのことで、幹部たちが集結していた。

 

「何用だ? クルシーナ、イタイノン」

 

キングビョーゲンが呼び出した本人である二人に問う。クルシーナは不敵な笑みを浮かべる。

 

「お父様に会わせたい奴がいるの」

 

「私たちの新しい同志なの」

 

「同志・・・?」

 

「あんた、また新しいやつを生み出してきたの?」

 

クルシーナとイタイノンに、グアイワルとシンドイーネが詰め寄る。グアイワルは冷静だが、シンドイーネは面倒臭そうな顔をしている。

 

「ほう・・・? そやつは今、どこにいる?」

 

キングビョーゲンがそう言うと、クルシーナはその幹部がいるであろう方向を向く。

 

「出てきていいわよ」

 

クルシーナは遠くにいる影に呼びかける。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

「誰も現れないよ~?」

 

「っ・・・」

 

しかし、影は現れる気配がなく、ヘバリーヌが気の抜けたように言うとクルシーナは不機嫌そうに顔を顰めると、イタイノンの方を見る。

 

「イタイノン」

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナは冷めたような声で、イタイノンに名前で命令する。彼女は目を細めると影がいる方向へと近づいていく。

 

すると数分も経たないうちにイタイノンが何かを背負って戻ってくる。そして、それを乱暴に地面へとドサリと落とす。

 

それは藍色のシスター服を着込んでいる一人の少女だった。しかし、姿は明らかに人ではなく、水色の肌に頭のベール越しにツノが出ており、サソリのような尻尾も生えている。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

そんな少女は周囲の状況も知らずに、スヤスヤと安らかな寝息を立てながら眠っている。

 

「こいつが新しいやつなの?」

 

「寝てますし・・・・・・」

 

シンドイーネとドクルンが呆れたような様子で言う。

 

「っ・・・おい、お前起きるの!! パパの目の前なの!!」

 

イタイノンは顔を顰めると、少女の体を起こして肩を激しく揺さぶる。

 

「ん、んぅ・・・ふわぁ~・・・」

 

少女はその行いによって瞑っていた目を開けるとあくびをした後に、イタイノンの顔を見る。

 

「・・・おはようございますぅ、お姉様~」

 

「おはよう、じゃないの!! 今、どういう状況なのかわかってるの!?」

 

「??」

 

呑気なセリフを満面の笑みで言う少女に、イタイノンは険しい表情で叫ぶ。少女はそれに疑問符を付けると、周囲を見渡し始める。

 

「みなさん、どうかしましたかぁ?」

 

少女は周囲にいる幹部たちに不思議そうな表情でそんなことを言う。

 

「いや、どうかしましたかって・・・」

 

「ちょっと驚いちゃってるんだよね~」

 

ドクルンは目頭を押さえながら言い、ヘバリーヌはなんとも言えないような顔ながらもいつもの口調で言った。

 

「・・・・・・・・・」

 

「はぁ・・・・・・」

 

ダルイゼンは呆れたような様子で、クルシーナはため息をつく。自分たちは仲間を増やすために行動しているのは確かだ。だが、扱いづらい幹部が生まれてくるとなると、仕事以上に労力がかかるのではないかと心配になってくる。

 

クルシーナは無言で少女に見えるように親指を背後にいるキングビョーゲンへと突き立てる。

 

「・・・はっ!?」

 

少女はクルシーナが指した方向を見ると、顔のようなものが空に浮かんでいるのを視認してハッとなる。

 

そして、イタイノンからゆっくりと体を離すと、青色のロングヘアをかき分けてから静かに頭を下げる。

 

「お父様、フーミン、お父様に会いに来ましたぁ~」

 

「・・・少し心配ではあるが、よくぞここまで来たな、フーミン」

 

フーミンと名乗った少女は満面の笑顔でそう言うと、キングビョーゲンは寛大に返す。

 

「今、こいつもお父様って言った?」

 

「そうね。こいつもお父様の器の一人だからねぇ」

 

ダルイゼンが気になることを問うと、クルシーナは淡々と返す。

 

「イタイノンお姉様ぁ・・・」

 

「っ・・・おい、フーミン・・・!」

 

フーミンはイタイノンの腕を抱き締めながら寄り添うにもたれかかると、イタイノンは嫌そうに困惑する。

 

「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

「えぇ!? 寝てるの!!??」

 

なんとフーミンはイタイノンにくっついたまま、いつの間にか眠っていた。

 

「こいつ、本当に大丈夫なの・・・?」

 

「とてもキングビョーゲン様のお役に立つとは思えないんですけど・・・」

 

あまりにも怠惰な性格に、ダルイゼンやシンドイーネからは呆れたような声が上がる。

 

「おい、寝るななの!! ちゃんと起きろなの!!」

 

「んぅ・・・? あ・・・!!」

 

イタイノンが激しく揺らしながら言うと、フーミンは寝ぼけた頭を覚醒させる。フーミンはイタイノンからゆっくりと体を離すと、キングビョーゲンに向き直る。

 

「お父様ぁ。私もお父様やお姉様たちと同じように、地球を蝕んでお役に立ちたいですぅ♪」

 

フーミンは天使のような明るい笑顔でそう宣言する。

 

「それは構わんが・・・」

 

「では、早速行ってきま・・・すぅ・・・」

 

キングビョーゲンがそう言うとフーミンは出撃しようとするが、歩いている最中で前のめりに倒れてしまう。しかも・・・・・・。

 

「お、おい!!?」

 

「歩いている最中に寝ちゃったよ~?」

 

これにはグアイワルとヘバリーヌも驚きを隠せない。

 

「イタイノン」

 

「??」

 

「フーミンのバックアップをしてやれ。一緒に彼女の活動をサポートしてやるのだ」

 

すぐ眠ってしまう癖を心配になったキングビョーゲンはイタイノンにも一緒に出撃してもらうことを命じた。

 

「な、なんで私が・・・!?」

 

イタイノンはそれを聞いて不満そうに叫ぶ。

 

「別にいいじゃない。アンタが生みの親なんだし」

 

「責任はちゃんと取るべきだと思いますけどね」

 

クルシーナとドクルンから野次馬のような言葉が飛ぶと、イタイノンは悔しそうに歯ぎしりする。そんな表情はしつつも、眠っているフーミンへと近寄る。

 

「おい、いい加減にしろなの!! 蝕みに行くのか、寝るのかどっちなの!?」

 

「んぅ・・・蝕みに行きますぅ・・・でも、眠いですぅ・・・」

 

「~~~っ!!」

 

イタイノンは胸ぐらを掴んで揺さぶると、フーミンは反応する。しかし、フーミンは顔を上に上げたまま、顔を起こそうとしない。

 

イタイノンはそれを見て、イライラするように唸り、体をガクガクと震わせる。結局、彼女が地球へと連れて行く羽目になるのであった。

 

「・・・本当に大丈夫なの?」

 

クルシーナは二人が出撃する最後まで呆れたように言葉を返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、のどかたちはすこやか市の街を歩いて向かっていた。

 

「かすみちゃん、大丈夫?」

 

「っ!?・・・っ!!」

 

のどかが声をかけると、かすみはドキッとする。彼女はのどかの心配するような表情を見て、またドキッとして目を逸らす。

 

「だ、大丈夫だ・・・ちょっと顔が熱いだけで・・・」

 

「顔が熱い? もしかして、熱があるのかな・・・?」

 

そう言ってのどかはかすみに顔を近づけようとすると、かすみの顔が赤く染まっていく。

 

「うわぁぁぁ~っ!?」

 

「痛っ!!」

 

かすみは悲鳴をあげると勢い余って頭突きを食らわせてしまい、のどかは額を押さえ始める。

 

「っ・・・!!」

 

かすみはハッとすると、のどかに背を向ける。その顔を相変わらず赤くなっており、両手は恥ずかしそうに頬に当てられていた。

 

「ほ、ほほほ、本当に、なんでもないんだ!! き、気にしないでくれ・・・!!」

 

「でも、心配だよ~・・・」

 

「だ、大丈夫だと言ってるだろ・・・!!」

 

かすみはパニックになりながらそういうも、のどかは彼女に気を遣おうとして「大丈夫だ」「心配ない」と何度も連呼する。

 

「なんかさっきので、のどかっちとかすみっちが微妙な空気になっちゃってるんだけど・・・?」

 

「かすみさん、あれからのどかと全く目を合わせようとしていませんね・・・」

 

ひなたとアスミが二人には聞こえないように、みんなに声をヒソヒソさせながら言った。

 

「顔を近づけられたっていうか、ラビリンが無理やりのどかの背中を押したからああなったんじゃねぇの?」

 

「あ、あれは、悪かったラビ・・・」

 

ニャトランが指摘すると、ラビリンはバツの悪そうな表情をしながら言った。

 

「余計に話しづらくなっちゃったわね・・・」

 

「先が不安ペエ・・・」

 

ちゆとペギタンも心配そうに二人を見つめている。

 

グゥ~!!!

 

「っ!?」

 

突然、どこからか音が鳴ったかと思うと、かすみの目が見開かれ自身のお腹を押さえ始める。どうやら先ほどの音はかすみのお腹の音のようだった。

 

かすみはのどかから背を向けた状態のまま、さらに距離をとる。

 

「あ、かすみちゃん・・・!」

 

「聞いたな?」

 

「えっ?」

 

「聞いただろっ、私の体から鳴る音を・・・!!」

 

「近くにいるんだから聞こえるよ~!」

 

「聞かれた・・・聞かれたぁ・・・うぅぅぅ・・・顔が、熱い・・・!」

 

のどかとかすみは口論になっていくが、途中でかすみが再び背を向け、頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

 

「ペエ・・・」

 

「うずくまっちゃったぞ・・・?」

 

ペギタンとニャトランがかすみを見ながら言う。はたから見れば、痴話喧嘩をしているようにも見えなくはないが・・・・・・。

 

「お腹が空いているから、イライラしちゃってるんじゃないかしら・・・?」

 

ちゆが心配そうにその様子を見つめる。

 

「うーん・・・じゃあ・・・」

 

何かを考えたひなたはのどかとかすみの二人に近づく。

 

「ねえ、二人とも」

 

「?」

 

「ぅぅ・・・?」

 

ひなたが呼びかけるとのどかと蹲っていたかすみが振り向く。

 

「お昼、食べに行かない?」

 

ひなたの提案に、二人は少し呆然と見ていたのであった。

 

5人は、場所を変えて近くのファミレスへとやってきた。5人で座れる席へと案内され、メニューを見ていたかすみは・・・・・・。

 

「おぉぉ~・・・何だ・・・これは・・・!! 知っている料理が一つもない!!」

 

かすみは瞳をキラキラと輝かせながら、嬉しそうな表情で言う。

 

「そ、そうなの・・・?」

 

「ああ、そっか・・・かすみっちもアスミンと同じだったよね~・・・」

 

ちゆとひなたは苦笑しながら言った。かすみはファミレスというものを知らず、もちろんこのお店で出されている料理は一つも見たことがないのだ。

 

「この、ビーフカレーというのはどんな料理だ・・・?」

 

かすみは『お肉たっぷりのビーフカレー』を指差しながら問う。

 

「カレーよ」

 

「カレーだよ~」

 

ちゆとひなたはストレートに答える。

 

「カレーってなんだ?」

 

かすみはそもそものカレーについて問いかける。

 

「様々なスパイスを使って味をつけた料理のことよ」

 

「から~い食べ物なんだよ」

 

「そうなのか・・・?」

 

ちゆとひなたがちゃんと説明してあげると、かすみは感嘆の声を上げる。

 

「じゃあ、これはこのビーフっていうのは何だ?」

 

「牛のお肉よ」

 

「カレーに牛のお肉が入ってるんだよ」

 

かすみにビーフという言葉の意味も、ちゆとひなたはちゃんと教えてあげる。

 

「この、チーズハンバーグは?」

 

「これも牛のお肉。こねて焼いて作ってるのよ」

 

「ハンバーグの中に、とろ~っとしたチーズが入ってて美味しいんだよ~♪」

 

かすみは次にメニューのチーズハンバーグを指して問うと、ちゆとひなたもわかりやすく教えてあげる。

 

パシッ!

 

「なんでも知ってるんだな!!」

 

かすみがちゆとひなたの手を握って、まぶしいぐらいの笑顔を向ける。

 

「え、ええ・・・」

 

「な、なんでも聞いてよ・・・」

 

「わかった!!」

 

ちゆとひなたが戸惑いながら言うと、かすみは手を離すとメニューへと戻す。

 

「これは、どんな食べ物なんだ??」

 

「豚肉を油で揚げた料理よ」

 

「サクサクでジューシーで美味しいんだよね〜♪」

 

かすみはとんかつ定食を指差す。ちゆとひなたはわかりやすく説明と表現をする。

 

「これは??」

 

「味の付いたご飯に、卵を焼いたものを上に乗せた料理よ」

 

「味の付いたご飯・・・?」

 

かすみがオムライスを指差すと、ちゆが説明する。ちゆが言う味の付いたご飯に、かすみが食いつく。

 

「ケチャップの付いたご飯よ」

 

「ケチャップ・・・ああ、朝に出てくるあの丸っこい食べ物につけたものか・・・!」

 

「そうそう。あの赤い調味料ね」

 

かすみはちゆの朝ごはんに出てきたソーセージにつけていた調味料を思い出す。

 

「で、これはね、ふわふわとろとろしてて、ケチャップとの相性がたまらないんだよね〜♪」

 

「ふわぁ〜♪ 美味しそうだな!!」

 

ひなたが味の表現を説明して、かすみが瞳をキラキラとさせる。

 

「これは??」

 

かすみは次にイクラ丼御膳を指差す。

 

「サケっていう魚がいるんだけど、その卵を醤油に漬けたものをご飯にかけた料理よ」

 

「プチプチは結構苦手だけど・・・慣れるとすごい美味しいんだよ〜♪」

 

ちゆとひなたがしっかりと説明してあげる。

 

「これは??」

 

かすみは次にマグロの兜御膳を指差す。

 

「マグロっていう魚がいるんだけど、その頭を煮込んだ料理よ」

 

「身がほろほろしてて、とーっても美味しいんだよ〜♪」

 

「ふわぁぁ〜!!」

 

かすみとひなたはお互いの手を取り合う。

 

「ここの食べ物はね〜、みーんな美味しいんだよ〜!!」

 

「ふふふ・・・美味しいものばかりで幸せだぁ〜・・・」

 

「かすみっちは本当に食べるのが好きなんだね〜♪」

 

二人は何かが通じ合ったかのように、その空間だけを輝かせて二人だけの世界に浸っていた。

 

「あ、あはは・・・」

 

「私たちにはわからないような何かがあの二人に現れてるわね・・・」

 

のどかとちゆはそんな二人の様子を困ったような感じで苦笑していた。

 

グゥ〜!!

 

「!!」

 

かすみのお腹から音がなり、彼女は恥ずかしさから顔を紅潮させて俯く。

 

「そろそろ食べよっか・・・」

 

「うん・・・」

 

ひなたはかすみのお腹が空いていることを察すると、彼女を始めとしたみんなに声をかけた。

 

のどかはオムライス、ちゆはとんかつ定食、ひなたはチーズハンバーグ、アスミはイクラ丼御膳を選んだ。そして、かすみが選んだのはビーフカレーだった。

 

テーブルに色とりどりの料理が並べられていく。

 

「ははっ・・・♪」

 

かすみはそれを見て喜びの表情を浮かべると、スプーンを手に取ってご飯とカレーをすくって口へと運ぶ。

 

「んん〜!! これは、これで、驚くほどに美味しい・・・!!」

 

かすみがカレーの美味しさに喜んでいると・・・・・・。

 

「はい♪」

 

「えっ・・・あむ」

 

ひなたがフォークに刺したハンバーグをかすみの口の中へと運ぶ。

 

「これも美味しいでしょ〜? 美味しいものはみんなで食べたほうが美味しいよ〜♪」

 

「っ・・・!!」

 

かすみは口の中でもぐもぐとハンバーグを食べると、ひなたのその言葉に表情を暗くさせていく。

 

「そうだな・・・確かに美味しい・・・素晴らしい料理だ、こんなに素晴らしい料理・・・この街に来なかったら知る所以もなかった・・・」

 

「かすみちゃん・・・?」

 

かすみは気落ちしたような声で言うと、のどかがそんな彼女の姿を心配になる。

 

かすみは顔をさらに俯かせるが・・・・・・。

 

「すこやか市の技術力は、本当に素晴らしいな!!!」

 

途端に顔を上げると、瞳をキラキラとさせながらそう言い放った。

 

「それは違うと思うわ・・・」

 

「なんかあたしも、それはちょっとずれてるって感じる・・・」

 

ちゆとひなたはかすみのその言葉に呆れたように苦笑しながら返した。

 

「じゃあ、私も・・・!」

 

かすみはカレーをすくって取ると、それをひなたへと差し出す。

 

「くれるの?」

 

「こうやると美味しくなるんだろう? 私の料理を食べて欲しい・・・!」

 

ひなたはかすみの言葉に、彼女の顔をじっと見た後に笑みを浮かべる。

 

「うん!!」

 

ひなたは頷くとかすみのカレーを一口食べる。

 

「ん〜、美味しいし!!」

 

ひなたはほっぺたが落ちそうに感じるくらい自分の手を当てながら喜ぶ。

 

「みんなで食べると美味しいのですか? では、私も」

 

アスミは自身のイクラ丼をスプーンですくって、かすみに差し出す。

 

「!! ふふふっ・・・あーむ♪」

 

かすみはアスミが自分の分をくれたことに笑みをこぼすと、口の中へと運ぶ。

 

「ん〜!! その料理も美味しいぞ♪」

 

かすみは頬を手に当てながら、その味を噛み締めていた。

 

「なら、私もこれをアスミに」

 

かすみはカレーを一口すくって、アスミの口へと運んでいく。アスミはそれを口の中へと入れる。

 

「どうだ・・・?」

 

かすみは口をもぐもぐとさせるアスミを見て呟く。そして、ごくんと喉に通した後、口を開く。

 

「不思議な感覚、です・・・でも、なんだか、悪い感じは致しません」

 

アスミは自分の中に何か熱いものが溢れてくるような感じがした。かすみとひなたはそれを見て微笑んだ。

 

のどかとちゆはその様子を微笑ましく見つめていた。

 

「っ!? っ・・・」

 

ふとのどかの視線に気づいたかすみがハッとすると、顔を赤くして俯かせる。

 

「あ、あはは・・・」

 

のどかはその様子を見て苦笑いをするしかなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、すこやか市の街の中では・・・・・・。

 

「さてと、今日もいい素体はないものか、なの」

 

イタイノンは商店のある場所付近でキョロキョロとさせながら、メガビョーゲンにさせる素体を探していた。

 

その傍らでは・・・・・・。

 

「すぅ・・・すぅ・・・・・・」

 

フーミンが地面の上で横になりながら、スヤスヤと寝息を立てながら眠っている。

 

「っ・・・」

 

イタイノンはその様子を視界に移すと顔を顰めさせた後、彼女に近寄る。

 

「寝るななの!! お前もメガビョーゲンにできる素体を探すの!!」

 

「んぅ・・・眠いですぅ・・・」

 

「知らないの!! お前の体調の都合なんか!!」

 

イタイノンが胸ぐらを掴んで揺さぶっても、フーミンは全く動く気配すらない。パパにあんなに啖呵を切っておきながら、何も行動しないとはどういう了見だろうか。

 

「んぅ・・・んん・・・わかったですぅ・・・私も探すですぅ・・・」

 

フーミンは目をこすりながらも、渋々といった感じで素体を探しに行こうとする。

 

「お前を一人にさせると心配だから、私も着いていくの」

 

「私は、一人でも探せますよぉ・・・」

 

「嘘をつけ、なの・・・」

 

どうせすぐに眠ってしまうに決まっている・・・・・・。今までの行動から、イタイノンはフーミンを監視することにした。

 

「素体・・・素体・・・」

 

フーミンはブツブツと言いながら、街中をきょろきょろと歩く。

 

「・・・・・・・・・」

 

イタイノンはそれを睨むような視線で彼女の背後を見つめていた。彼女が突然倒れないか、心配だからだ。またあんな風にして仕事を放棄されても困るからだ。

 

「素体・・・そ、た、い・・・」

 

「あぁっ!?」

 

案の定、フーミンは突然前かがみになると地面へと倒れていく。イタイノンはそれにハッとなるとすぐに彼女の体を腕で抱きとめる。

 

「やっぱり監視して正解だったの・・・」

 

イタイノンはフーミンのことを呆れたような様子で見やる。

 

「なんでフーミンは眠っちゃうネム?」

 

「私が知るはずがないの・・・生まれた時から眠ってたし、面倒な輩だとは思ったの・・・」

 

ネムレンの言葉に、イタイノンは淡々と返した。フーミンはあのおおらか市で誕生した直後から、横になって眠っていた。自分から動こうとしなかったので、生みの親であるイタイノンが連れて行かなかったら、あのまま眠っていたままだったのかもしれない。

 

「起きるの、フーミン・・・! 何度も言わせるな、なの・・・!!」

 

「んぅ・・・」

 

イタイノンが再度注意をしても、フーミンは顔を顰めるだけで全く起きる感じがしない。

 

「・・・・・・はぁ」

 

こんな状態にイタイノンはため息をつくしかない。自分が生み出したとはいえ、本当に面倒くさいやつだ。これだったらヘバリーヌを相手にした方がよっぽどマシだ。

 

ジャンジャンジャンジャンジャ〜ン♪

 

「??」

 

「っ!?」

 

対処に困っているとどこからともなく音楽のようなものが響き始め、するとフーミンの目がパッチリと開いた。

 

「あっちにいい素体のものがいるですぅ・・・」

 

「!? おい・・・!!」

 

フーミンはおもむろに立ち上がるとその場から姿を消してしまう。イタイノンは突然、いなくなった後輩に慌てるも、音がする方向を向くとフーミンはそこにいた。

 

「っ・・・いきなり消えるな、なの・・・!!」

 

イタイノンはイライラしてフーミンに当たり散らそうとしたが、彼女は音に耳を傾けているのか反応をしようとしない。

 

フーミンは目の前にある音を出すものを見つめる。それは・・・・・・弾き語りを行っている男性と彼が手に持っているアコースティックギターだった。

 

「おい、聞いてるの!? フーミーーーー」

 

「私、地球を蝕むですぅ・・・」

 

抗議をしようとしたイタイノンの言葉を遮って、フーミンは唐突に口を開く。

 

「・・・は?」

 

「素体を見つけたの・・・だから、地球を蝕むですぅ・・・」

 

イタイノンが訳がわからないように返すも、フーミンは生きてるって感じがするものを見つけたようで、先ほどと同じことを宣言する。

 

イタイノンはそれを聞くと、段々と表情を落ち着かせる。

 

「ふーん・・・じゃあ、やってみればいいの」

 

「やってみるですぅ・・・」

 

イタイノンが素っ気なく言うに対し、フーミンは満面の笑みを浮かべながら言った。

 

フーミンは再び男性の方を見ると、アコースティックギターをその場においてどこかへと向かおうとしているのが見えた。

 

「・・・ふふふ」

 

フーミンはそれを見届けた後、狙いをつけたものに対し笑みをこぼす。

 

「ふわぁ・・・」

 

フーミンはあくびをしながら開いた口を3回叩き、黒い塊を出現させる。

 

「進化するですぅ、ナノビョーゲン」

 

「ナノォ・・・」

 

生み出したナノビョーゲンが鳴き声をあげながら、アコースティックギターへと取り付く。男性が大切にしているであろう、アコースティックギターが病気へと蝕まれていく。

 

「・・・!?・・・!!」

 

アコースティックギターの中に宿るエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メッガ、ビョーゲーン!!」

 

ギターのような体に両手、両足を持ったメガビョーゲンが誕生したのであった。

 

「??」

 

そこへ男性が戻ってくるが、その場所に異変を感じて駆け寄ってくる。

 

「!?」

 

「メガ、ビョーゲン!!」

 

「うわぁぁぁぁっ!!!!」

 

男性はメガビョーゲンの姿に驚くと、恐怖から逃げ惑う。

 

「メガビョーゲン、あなたの素敵な音色でここ一帯を蝕んでくださいですぅ・・・」

 

「メガァ!!」

 

フーミンは天使のような笑顔を向けながら、メガビョーゲンに蝕むように指示を出した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。