ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです!


第76話「取引」

 

りりという少女に連れて行かれたヒーリングアニマル、ペギタンを追って駆け出したちゆとかすみ。そんな彼女たちの前に現れたのは片手に拘束するように掴み、りりを肩に担いだビョーゲンズのドクルンだった。

 

そのりりは指一本動かす様子はなく、ペギタンもぐったりとさせたまま気を失っているように見える。

 

「お前・・・その娘とペギタンに何をした・・・?」

 

かすみは睨みつけた表情のまま、警戒しながら問う。

 

「何って、この小娘が持っていたこのヒーリングアニマルを預かっただけですよぉ?」

 

ドクルンは近くの壁にりりを下ろして寄りかからせると、ペギタンを握ったまま不敵な笑みでこちらを見る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

りりは肩で息をしながら、汗を浮かばせながら苦悶の表情を浮かべている。顔色もあまりよくなく、すでに顔面蒼白だ。

 

「そうじゃない!! なんでその娘の体調が悪そうなんだと聞いている!! お前が何かやったんだろう!?」

 

はぐらかすような感じで言うドクルンに、かすみが怒りながら問う。

 

「お仕置きですよ。泥棒のね」

 

ドクルンに不敵に笑いながら言う。

 

「お仕置き、だと・・・?」

 

「ええ。この小娘は人のヒーリングアニマルを勝手に持ち去った挙句、返そうともせずに逃げ出したわけですから。これは立派な泥棒でしょうに」

 

かすみが呆然としたように呟くと、ドクルンはりりを見下ろしながら答える。かすみは俯いて何も言葉が出てこない。

 

「だからってここまでやる必要があるの!? 相手はまだ幼い子供なのに!!」

 

ちゆが震える声で批難するように言った。ペギタンを持って行こうとしたとはいえ、相手は自分たちよりも小さな子供なのだ。それなのにここまでのことをする必要があるのか。

 

「何を怒っているのですか? せっかくあなたのヒーリングアニマルを取り返してやったというのに」

 

ドクルンは冷めたような口調になり、首を横に振りながら答えた。

 

(そうか・・・そう、だな・・・この娘はペギタンを持って行こうとしたんだ。だから、こうやって苦しんでいてもおかしく・・・)

 

「っ!?」

 

かすみは心の中に芽生えてきた邪な感情に目をハッと見開くと、考えを払いのけるように頭を振る。

 

「白々しい!! ちゆに返す気なんてないくせに・・・!!」

 

かすみはごまかすように声を上げ、ドクルンを睨みつけながら叫ぶ。

 

「・・・全く血の気の多い奴らです。本当に勢いだけの正義感ね」

 

ドクルンはやれやれといったような感じでそう呟くと、背後を振り向く。

 

「フーミン、このうるさい奴の相手をやりなさい」

 

「わかったですぅ・・・ドクルンお姉様ぁ・・・!」

 

ふわふわしたような声が聞こえてきたかと思うと、ドクルンの背後から6枚の翼を生やしたフーミンが飛び上がり、翼を一斉にかすみへと投下した。

 

「っ、はぁっ!!」

 

かすみは黒いステッキを取り出すと、前方にシールドを張って翼の攻撃を防ぐも、やはり力負けしてどんどん押し返される。

 

「かすみ!!」

 

「わ、私のことはいいから・・・! ちゆはペギタンを・・・!!」

 

「でも・・・プリキュアに変身できない私じゃ・・・!!」

 

攻撃されて苦しそうに表情を歪めるかすみにちゆが叫ぶ。かすみはフーミンの相手をしている間に、ドクルンからペギタンを取り返すように言うが、そもそもペギタンは向こうにいる。プリキュアに変身できない自分では、取り返すことができるようには思えない。

 

「ちゆは自分が正しいと思ったことをやるんだ!! プリキュアにならなくてもちゆならわかるはずだ!!」

 

「っ・・・・・・」

 

かすみは受け止めながらも、ちゆを励まそうとする。しかし、彼女の顔には不安の表情が拭えない様子だった。

 

「何をよそ見してるですかぁ・・・?」

 

「ぐっ・・・!!」

 

その様子を不快に思ったフーミンは自分の周囲に赤い禍々しい球体を出現させると、それを光線状にして放った。

 

「はぁっ!!」

 

かすみは黒いステッキから展開していたシールドをさらに大きくして、光線を防ごうとするが・・・・・・。

 

「ぐぅっ・・・あぁぁ!!」

 

翼による攻撃、光線による二つの攻撃でシールドを突破され、かすみは吹き飛ばされてしまう。

 

しかし、かすみは体勢を立て直して着地すると、フーミンへと飛び出す。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

「っ!!」

 

一気に詰め寄ってパンチを繰り出すかすみに、フーミンは両手を使って受け止める。

 

「んぅ!!」

 

「っ!!」

 

フーミンは両手でかすみの拳を押し返すと、口を開いて何やら禍々しいエネルギーを溜め始める。

 

「っ!?」

 

かすみはそれに気づいて驚いたような表情をした直後、フーミンは口から赤い波動のような光線を放った。

 

「うぅぅぅ・・・!!!」

 

波動に飲み込まれたかすみは不快な音に耳を塞ぎつつも、とっさに押されていく。地面に倒れないように着地すると、波動が収まったかと思うと・・・・・・。

 

「んぅっ!!」

 

「っ!!」

 

フーミンが一気に詰め寄ってパンチを繰り出し、かすみはとっさに気づいてジャンプでかわす。見かけや雰囲気によらず、地面を砕くほどの強力なパンチが繰り出されていた。

 

空中へと逃げたかすみを、フーミンは翼を広げて速度を上げて突っ込む。

 

「うわぁっ!?」

 

かすみは体当たりを避けて地面へと着地し、フーミンは間髪入れずに翼を投下する。

 

「っ! はぁっ!!」

 

かすみはそれも飛んで避け、壁を足で蹴ってステッキから黒い光線を放つ。

 

「んぅぅ!!」

 

フーミンは光線を飛び上がってかわすと飛び蹴りのモーションで急降下し、かすみへと突っ込む。

 

「っ!! はぁっ!!!」

 

かすみはすかさずパンチを繰り出し、フーミンの蹴りとぶつかり合った。

 

「かすみ・・・」

 

ちゆはその戦いを不安そうに見つめていた。プリキュアに変身できれば、彼女の元へと駆けつけることができるのに・・・。

 

「さてと、こっちもそろそろ始めましょうかねぇ」

 

ドクルンの声が聞こえてくるとちゆは彼女の方を振り向く。彼女は懐からメガパーツを取り出す。

 

「それは、メガパーツ・・・!?」

 

ちゆが声を上げる。その様子にドクルンはふんと笑うように鼻を鳴らす。

 

「前々から試してみたかったんですよね。ヒーリングアニマルにメガパーツを埋め込んだらどうなるのかを」

 

ドクルンはニヤリと笑みを浮かべながら、ペギタンへとメガパーツを近づける。

 

「ぅぅ・・・!? ペェェェェ!!!」

 

その時、ペギタンがゆっくりと目を見開くと、目の前にメガパーツが迫っているのが見え、悲鳴に近い叫び声をあげる。

 

「おや、起きてしまいましたか。まあ、でも、こいつを入れることには変わりありませんけどねぇ」

 

ドクルンはペギタンが目を覚ましたことに一瞬手を止めるも、構わずにメガパーツを近づけていく。

 

「ぺ、ペェ・・・」

 

ペギタンは近づいてくるかけらを恐怖で目が離せずに、体を震わせる。

 

「っ、やめて!!」

 

その様子に声を張り上げたのはちゆだった。ドクルンは声が聞こえると寸前でその手を止めて、ちゆの顔を見る。

 

「っ! ちゆ!!」

 

ペギタンはまさに自分を捕まえているドクルンの前に立つちゆを目にして叫ぶ。

 

「これ以上、ペギタンに酷いことしないで!!」

 

ちゆは声は震えつつも、慎重になって言葉を紡いでいく。

 

「・・・やめて欲しいですか? 返して欲しいですか?」

 

ドクルンが目を細めながら冷静に問う。ちゆは敵である彼女に頷き返す。実質的な人質として捕らえられているペギタンを救うためだ。

 

「いいでしょう。こちらが出してくれることをやっていただければ」

 

「・・・いいわ、なんでもするから。ペギタンを傷つけないで」

 

ちゆは険しい表情をしながら、そう答えるとドクルンはふふっと笑みを浮かべると懐にメガパーツをしまい、代わりに赤いかけらを取り出すとそれをちゆの前に放る。

 

「それをあなたの体の中に入れてください」

 

「これは・・・メガパーツ・・・じゃ、ないわね・・・」

 

ちゆはメガパーツに似た得体の知れないものに寒気を覚えつつも、それはメガパーツではないと察する。

 

「察しがいいですね。それは私の体の一部であるかけら、まあテラパーツだとでも言っておきましょう」

 

「テラ、パーツ・・・」

 

「そうです。もちろんメガパーツよりは遥かに強力で利便性のあるものです。それをあなたの体の中に入れるだけでいいんです。そうしたら大人しくペギタンは返してあげます」

 

ドクルンは笑顔でテラパーツについて説明すると、ちゆは頬に一筋の汗を流しつつもゴクリと息を飲む。

 

「こんなものを、私の中に入れたら・・・」

 

「タダでは済まないでしょうね。でも、あなたがやらなければ私はメガパーツをこのヒーリングアニマルの中に入れます。そっちの方が面白そうですしね」

 

「ち、ちゆ!! 僕のことは気にしちゃダメペエ!!」

 

ちゆは得体の知れないものを自分の中に入れることを想像してゾッとする。これを入れたら無事で済むという保証はないし、もしかしたら死んでしまうかも知れない。そういう想像力がちゆに選択を躊躇させていた。

 

ドクルンは笑みを浮かべ、ペギタンを見つめながら言う。ドクルンに不穏な何かを感じたペギタンはちゆに叫ぶ。

 

「・・・わかったわ」

 

ちゆは意を決して、恐る恐る足元に落ちている赤いかけらーーーーテラパーツを拾い上げる。それを見てペギタンが驚いたように目を見開く。

 

「ダ、ダメペエ!! そんな得体の知れないものを入れたら、がぁっ・・・!?」

 

「あなたは黙っていなさい」

 

ドクルンが叫ぼうとしているペギタンを握りしめて黙らせる。

 

「ペギタン!!」

 

「どうしたんですか? 早くやってください」

 

ちゆは痛めつけられているペギタンに叫ぶも、ドクルンは冷淡な口調で催促する。

 

「わ、わかってるわ・・・!」

 

ちゆはテラパーツを見つめるも、手が小刻みに震える。額と頬には緊張から汗が滲んでいた。

 

「んぅ!!」

 

「っ、ぐっ・・・!!」

 

その傍らではかすみがフーミンの翼の振り下ろしによる攻撃をステッキで防いでいたが、ふとちゆの方を見てみると彼女が赤いかけらのようなものを入れようとしているのが見えた。

 

もしかしてあれは・・・メガパーツか・・・!?

 

「っ!! ダメだ、ちゆ!! それは・・・うわぁっ!!」

 

「よそ見をしている場合ですかぁ・・・?」

 

かすみはちゆに呼びかけるがあまり防御が疎かになり、フーミンの翼に吹き飛ばされてしまう。

 

「・・・本当に、ペギタンを返してくれるのね?」

 

「心外ですね。私はちゃんと約束は守る女ですよ?」

 

ちゆがもう一度険しい表情でドクルンを見るも、彼女はまるで貼り付けたような笑顔をしたまま話す。

 

ちゆはそれを確認すると、もう一度テラパーツを見つめる。

 

「っ・・・」

 

ちゆは恐怖を押し殺すかのように目をぎゅっと瞑り、両手でテラパーツを抱くように持つと、そのまま恐る恐る自分の胸へと近づけていく。その様子をドクルンは笑みを浮かべながら見つめている。

 

「ち、ゆ・・・・・・」

 

逆にペギタンは彼女を不安そうに見つめている。

 

「・・・・・・!」

 

そうしている間に、ちゆの胸にテラパーツが触れる。ちゆは心の中でとてつもない恐怖感に襲われ、これ以上先にテラパーツを進めることを躊躇する。

 

ちゆの中にはいまだかつてない緊張感が襲いかかっていた。

 

「どうしたんですか? 今更、怖くなったとか?」

 

「っ・・・」

 

全く手を動かそうとしないちゆに、しびれを切らしたドクルンが冷たい声で口出しする。

 

「できないのなら、私が手伝ってあげましょうか?」

 

「・・・できるから、心配は無用よ」

 

ドクルンの施しを突っぱねると、ちゆはぎゅっと目を瞑る。彼女の額には先ほどよりも汗が滲み出ており、その緊張感が最高潮になっていることを物語っていた。

 

そして、ちゆは意を決したように体の震えを止めると・・・・・・。

 

「っ・・・!」

 

ガッ・・・ズズズズッ・・・!!

 

ちゆは両手で押し込むようにテラパーツを自分の胸に触れさせた。すると、テラパーツがちゆの体の中に飲み込まれていく。

 

「うっ・・・っ・・・!!」

 

ちゆは迫り来るともしれない恐怖に自身の体を抱いて大きく震わせる。そんな彼女の体からは赤く禍々しいオーラが発言していた。

 

自分にやってくるのは一体なんなのか? 病気? それとも、体が変質してしまうのか?

 

「ちゆー!!!」

 

ペギタンはテラパーツを自分の体の中に入れてしまったちゆに向かって叫ぶ。

 

「ふっ! はぁ!・・・!?」

 

かすみはフーミンの繰り出すパンチをいなしていたが、ちゆの方を見て驚愕する。

 

「ふふふっ♪」

 

ドクルンはちゆの体に微量のオーラが溢れていることに笑みを漏らす。

 

「は、ぁ・・・ふっぅ・・・」

 

ちゆはしゃがみこんで体を震わせていたが、やがて赤く禍々しいオーラは彼女に飲み込まれるように静かに消えていく。

 

「??」

 

・・・何も・・・起きない・・・?

 

ちゆは自分に何も痛みや苦しみが襲ってこないことに目を見開く。手を頭や尻にやって見るが、ツノは生えておらず、尻尾も生えているわけではないため、体に何も変化がおきていない。これは一体、どういうことなのか?

 

(ふむ・・・まだ何かが起きるには時間がかかるということなんでしょうね・・・。とりあえずはいいでしょう)

 

「テラパーツを中に入れましたね。では、約束どおり、このヒーリングアニマルは返しましょう。さっきも言いましたが、私はちゃんと約束を守る女なので」

 

ドクルンは心の中でそう分析した後、笑みを浮かべながらそう言うとペギタンを掴んでいる手を離す。

 

「っ、ちゆーーー!!!!!」

 

ドクルンから解放されたペギタンは急いでちゆの元へと飛ぶ。

 

「ペギタン!!」

 

ちゆは涙目になりながら、飛び込んできたペギタンを優しく抱き止める。

 

「ちゆ、なんともないペエ?」

 

「ええ・・・でも、なんでなのかしら?」

 

ペギタンはちゆの中にテラパーツが入ったことを心配して言うも、ちゆはむしろ何故なんともないのか疑問で仕方なかった。

 

「メガァ!!!!」

 

そこへ灯篭のような姿のメガビョーゲンが歩きながら現れ、口から病気を吐いてこちらへと徐々に蝕んできているのが見えた。

 

「メガビョーゲン!!」

 

ちゆはドクルンの背後から現れた、そのメガビョーゲンの姿に気づく。

 

「おや、もうここに来てしまいましたか」

 

メガビョーゲンが現れたことにドクルンは不敵な笑みを浮かべる。自身が神社で生み出したときよりも、さらに大きくなっている気がする。

 

「ちゆ、行くペエ!!」

 

「ええ!!」

 

ペギタンの言葉を合図にちゆは変身ステッキを持った。

 

「スタート!」

 

「プリキュア、オペレーション!!」

 

「エレメントレベル、上昇ペエ!!」

 

「キュアタッチ!!」

 

ペギタンがステッキの中に入ると、ちゆは水のエレメントボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。

 

そして、肉球にタッチすると、水をイメージとしたエネルギーが放出され、白衣のような形を形成され、それを身にまとい水色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

そして、髪型もそれぞれをイメージをしたようなものへと変わり、水色へと変化する。

 

キュン!

 

「「交わる二つの流れ!」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

 

「ペエ!」

 

ちゆは水のプリキュア、キュアフォンテーヌに変身した。

 

「はぁっ!!」

 

「メガァ!?」

 

フォンテーヌはすぐにメガビョーゲンへと飛び出し、顔面に蹴りを食らわせた。

 

「さてとあっちの戦いも気になるけど、こっちはどうなるのかしらね」

 

ドクルンはぐったりしているりりの隣へと移動すると、メガビョーゲンを見つつも彼女の様子も見る。

 

「うぅぅ・・・・・・」

 

りりは体をぐったりとさせながらも、苦しみながら呻いている。

 

「ふふっ♪」

 

ドクルンはその様子を見ながら、りりの頭に手をゆっくりと置いて優しく撫で始める。

 

「メガァ!メガメガ!!!」

 

メガビョーゲンは灯篭の扉から火の玉のようなものを次々と放つ。

 

「ふっ!! はっ!!」

 

フォンテーヌはバク転をしながら放たれる火の玉を交わしていく。

 

「雨のエレメント!!」

 

その中でステッキに雨のエレメントボトルをセットする。

 

「はぁっ!!」

 

大粒の水を纏った水色の光線をステッキから放つ。

 

「メ、メガァ・・・!?」

 

光線を体に受けて怯むメガビョーゲン。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

「ビョーゲン!?」

 

フォンテーヌはそこへ立て続けに蹴りを入れて、メガビョーゲンを転倒させる。

 

キュン!

 

「「キュアスキャン!」」

 

転倒している間に、フォンテーヌは肉球を一回タッチして、メガビョーゲンに向ける。ペギタンの目が光り、メガビョーゲンの中にいるエレメントさんを発見する。

 

「火のエレメントさんペエ!!」

 

エレメントさんは顔の上、屋根の真ん中部分にいる模様。

 

フォンテーヌが浄化の動作に移ろうとしている一方で、かすみは・・・・・・。

 

「っ・・・くっ・・・!!」

 

かすみはフーミンの翼による攻撃をステッキでいなしているものの、攻撃に移ることができずに防戦一方だった。

 

「あっ・・・!」

 

その時、フーミンの翼が手を直撃し、ステッキを弾き飛ばされてしまう。

 

「!! んぅぅ!!!」

 

フーミンはその隙をついて、左右の翼を交互に動かして羽を飛ばして行く。

 

「くっ・・・ぐっ、うわぁぁぁぁ!!!」

 

ステッキを失ったかすみは腕を交差して耐え凌ごうとするも、羽は強力な爆発を起こし、その羽が運悪く次々と腕に着弾したかすみは吹き飛ばされてしまう。

 

吹き飛んだかすみはフォンテーヌの横に転がされて、倒れ伏す。

 

「かすみ!!」

 

「うぅぅ・・・」

 

フォンテーヌがボロボロになったかすみに駆け寄る。

 

「メッガァ・・・!!」

 

「!・・・!!」

 

そのフォンテーヌの隙をついて、メガビョーゲンは転倒から起き上がってしまう。

 

「メガァ!!!」

 

メガビョーゲンは口から燃えるような赤い光線を放つ。

 

「ぷにシールド!!」

 

かすみの前にフォンテーヌが立ってペギタンがそう叫ぶと、肉球型のシールドが展開され、燃えるような光線を防ぐ。

 

「うぅぅ・・・熱っ・・・!!」

 

赤い光線はかなりの高熱を帯びていて、フォンテーヌはその熱さに顔を顰める。

 

「ぐっ・・・!?」

 

かすみは起き上がろうとしているが、その隙にフーミンが自分たちの背後にいるのに気づく。フーミンは口に禍々しいオーラを溜めていた。

 

「っ・・・!!」

 

かすみはそれがフォンテーヌに放とうとしていることに気づくと、痛みを押して立ち上がり、フォンテーヌの方へと駆け出す。

 

「!? かすみ!?」

 

振り向いて驚くフォンテーヌをよそに、かすみは彼女へと駆け出して突き飛ばす。そこへフーミンが小さく圧縮させた赤い波動を放った。

 

さらにメガビョーゲンの赤い光線がぷにシールドを突破して、かすみへと迫る。

 

「!? うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「っ!! かすみぃ!!」

 

かすみはメガビョーゲンとフーミンの攻撃を同時に食らってしまい、フォンテーヌが悲痛な叫びをあげる。

 

かすみは膝から崩れ落ちて、地面へと倒れ伏す。

 

「かすみ!!!!」

 

フォンテーヌは傷ついてボロボロのかすみに駆け寄る。

 

「かすみ!! しっかりして!! かすみ!!!!」

 

フォンテーヌはかすみを仰向けにしてあげると、激しく揺さぶる。しかし、かすみは意識が朦朧としているのか、弱々しい呻き声しか漏らさない。

 

「おやおや、随分と動きにキレがないみたいだけど?」

 

ドクルンはその様子を見ながら、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「・・・ん?」

 

ふと何やら近くで気配を感じたドクルンが、りりの方を見る。なんとりりの体から禍々しい赤いオーラが漏れ出しており、今にも何かが体から離脱しそうな様子だった。

 

「うっ、うぅぅ・・・ぐっ、うぅぅ・・・」

 

りりは手を胸に押さえつけるようにし、そのうめき声を大きくさせながら、首を振ってもがくように動き始めた。その顔には汗がかなり滲んでいた。

 

「そろそろ、何か出てきそうですねぇ・・・」

 

ドクルンはりりの中に入れたメガパーツが順調に成長していることに不敵な笑みを浮かべ、その体から新たなテラビョーゲンが誕生しそうなことを察していた。

 

「うぅぅぅぅぅ、うぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

りりの体の中の赤黒い靄が蠢いて、彼女はさらに苦しみ、やがて悲鳴に近い叫び声をあげると激しく蠢き始める。

 

そして、赤く光ったかと思うと、りりの体内から赤黒い靄が勢いよく飛び出し、まるで逃げるかのように屋根を飛び移って行くと山の方へと消えていく。

 

「おや? 行っちゃったわね。まあ、いいか」

 

ドクルンもその様子に目を丸くして呟くも、すぐに肩をすくめながらそう呟いた。

 

りりは先程までの苦悶の表情が嘘のように消え、安らかな寝息を立てていた。

 

「ぅぅぅ・・・・・・」

 

「かすみ!!目を覚まして!!」

 

かすみはフォンテーヌの声に答えることができず、弱々しく呻き続けている。

 

「ダメだわ・・・全く起きる気配がない・・・!!」

 

フォンテーヌはその状況に焦りが生まれ始めていた。

 

「ペエ・・・・・・」

 

ペギタンもその様子を見て、困ったような表情を浮かべていた。

 

「メガァ!!!!」

 

そんな状況をよそにメガビョーゲンはこちらを気にすることなく、口から赤い光線を放って病気を蝕むことを再開させていた。

 

「っ!! メガビョーゲンを止めないと!! でも・・・このままだとかすみも・・・!!! 一体、どうすれば・・・!!!!」

 

フォンテーヌはメガビョーゲンとかすみを交互に見やりながらも、どちらへ向かえばいいのかわからずにいた。そういった状況に陥ったことで焦りに焦りが生まれ、冷静な判断ができなくなっていた。

 

「フォン、テーヌ・・・」

 

「!! かすみ!!」

 

そんな時、かすみがかすれたような声で呼びかけ、フォンテーヌの手を弱々しく握る。表情に力が入っておらず、今にも意識を失ってもおかしくない状態だ。

 

「なんとも、ないか・・・? さっきの、攻撃、も・・・体の中の、かけら、も・・・」

 

「それよりもかすみのほうよ!! いつも無茶ばかりして・・・!!」

 

かすみは弱々しい声ながらも、フォンテーヌを心配していた。フーミンの攻撃が当たってないか、先ほどのドクルンのテラパーツを入れられた体の調子も。しかし、フォンテーヌはボロボロになっているかすみの方が重傷で、目も当てられない状態だった。

 

「すまない、な・・・いつも、私、は、何の役にも、立ってない・・・」

 

「なんで自分を卑下するの・・・?」

 

フォンテーヌは瞳を潤ませながらそう言うと、彼女の手を引っ張って立ち上がらせる。

 

「かすみは、頑張ってるじゃない・・・!! 他人を助けようとしてるじゃない・・・!!だって、霞がいなかったらペギタンとずっと離れ離れになってたかもしれない・・・かすみが勇気付けてくれなかったら、私は諦めてたかもしれない・・・!! 私はかすみに助けられたのよ!!」

 

「ちゆ・・・・・・」

 

強い口調で訴えるフォンテーヌに、かすみは複雑な心境で見つめる。

 

「だから、自分を卑下しないでよ。かすみが役に立ってないなんて、ないんだから。私たちのことを考えてくれているんだから」

 

かすみはフォンテーヌの言葉に少し考えるように俯くと、涙目になって顔をあげる。

 

「ちゆ・・・私は・・・!」

 

かすみは瞳を潤ませると、フォンテーヌの胸に顔を埋める。

 

「私は、ちゆが信用してくれてないと思ってた・・・!!」

 

「えっ・・・?」

 

「だって、ちゆ、私に話してくれなかった・・・ペギタンがいなくなったときも、私に笑顔でごまかして学校に行こうとした・・・寂しいなら寂しいって言えばいいのに、本当のことを言ってくれない・・・。ちゆは友達なのに、なんで話してくれないんだって思った・・・ちゆは、私が嫌いになったのか・・・?」

 

かすみは泣きそうな表情でフォンテーヌに告白する。ちゆは寂しいときは寂しいと言えばいいのに、感情を抑え付けているような感じがする。それを私に言ってくれないなんて、ちゆは私のことが嫌いになってしまったのだろうか。

 

フォンテーヌはかすみの姿を見て察した。自分は相手を心配させないつもりでいても、彼女を余計に心配させて、苦しい思いをさせてしまったことに。

 

「・・・ごめんなさい。かすみがそこまで思い詰めてるなんて思わなかったの。あのとき、素直に言っていれば、かすみがここまで無茶をしなかったかもしれなかったのに」

 

フォンテーヌはゆっくりとかすみの頭に手を置いて撫で始めた。その光景はまるで妹を慰めている姉のようだった。

 

「もう隠したりしないから、ね? 辛いときは辛いってちゃんと話すわ。だから、もう泣かないで・・・かすみ・・・」

 

「フォンテーヌ・・・」

 

フォンテーヌがそう言うと、かすみは涙が出そうなくらいに瞳を潤ませる。

 

と、そこにフーミンが翼を広げて赤い光線を放ってくる。

 

「ふっ!」

 

それに気づいたフォンテーヌがぷにシールドを展開して光線を防ぐ。

 

「もぉ・・・何を和んでるですかぁ・・・!!」

 

フーミンが膨れたような顔をしながら、こちらを睨みつけている。

 

「かすみ、まだ戦える?」

 

「ああ、なんとか・・・」

 

かすみはちゆから体を離すとフーミンへと向き直る。

 

ステッキは遠くへと弾かれてしまったが、なんとかいけるか・・・。かすみはそう考えるとフォンテーヌの方に視線を向ける。

 

「フォンテーヌ、なんでもいいからそのボトルの力を私に打ってくれないか?」

 

「・・・スパークルが一緒の時にやったことね。でも、ステッキは?」

 

「なくても大丈夫だ。私を信じて、打ってくれ!!」

 

「・・・わかったわ」

 

かすみは以前スパークルに打たせたように、フォンテーヌにも打たせるように指示。フォンテーヌはステッキがあったからできたんじゃないかと心配するが、かすみは強い口調でそう言うとフォンテーヌも覚悟を読み取った。

 

「氷のエレメント!!」

 

フォンテーヌは氷のエレメントボトルをステッキにセットする。

 

「はぁっ!!」

 

ステッキから放たれる氷を纏った光線をかすみに向かって放つ。

 

「氷の力よ!!」

 

かすみは手を後ろへと伸ばすと、青い光線を自分の体内へと吸収していく。

 

パァ・・・・・・!!!!

 

かすみの体が青白く光ると、彼女の髪型が青白い色に変わっていき、手袋も青白いになる。黒いフードが青色へと変わり、服装が水色のスカートになり、瞳が青色へと変わった。

 

「姿が変わってるペエ!!」

 

「綺麗・・・!」

 

かすみの神秘的な姿に、フォンテーヌとペギタンは思わず見惚れる。

 

「姿がまた変わってるですぅ・・・でも、私だってすごいですぅ・・・!!!!」

 

フーミンは6枚の翼を一気にかすみへと投下する。

 

かすみは両腕に氷を纏ったブレードへと変化させると、その6枚の翼を受け止める。

 

「っ・・・!!」

 

「ぐっ・・・はぁっ!! ふっ!! はぁっ!!!」

 

かすみは氷のブレードで6枚の翼を弾き返すと、襲い来る翼をブレードでいなしていく。

 

「!?」

 

「ふっ!! はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

驚くフーミンをよそに、かすみは彼女へと近づいていくと後ろへ飛び上がって背後へと着地し、振り向きざまにブレードの腕を振るって斬撃を放つ。斬撃はフーミンの背中の翼の根元を直撃して、フーミンの翼全体が凍りついていく。

 

「!? ひゃっ!!!」

 

フーミンは悲鳴をあげて、吹き飛ばされて尻餅をつく。

 

「・・・・・・?」

 

彼女は吹き飛んだことに驚いていて、呆然と虚空を見つめていた。しかし・・・・・・。

 

「んぅ・・・眠くなってきたですぅ・・・」

 

途端にハーブティーの効果が切れたのか、そのまま彼女は横になって眠りについてしまった。

 

「よし・・・!!」

 

かすみはフーミンが戦闘を放棄したことを確認すると、すぐそばにあったステッキを拾ってメガビョーゲンへと駆け出す。

 

「メガァ!! メガァ!!!!」

 

そのメガビョーゲンは火の玉のようなものをフォンテーヌに目掛けて放つ。

 

「ふっ!!! はぁっ!!」

 

フォンテーヌは火の玉を交わして、最後に放った一つにステッキから青い光線を放って飛び込む。火の玉へと包まれるフォンテーヌ。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

しかし、フォンテーヌは包まれる火の玉をすぐに払い除けて空中でクルクルと回転すると、メガビョーゲンへと飛び込み顔面に蹴りを入れる。

 

「メ、ガァ・・・!?」

 

怯んだメガビョーゲンは思わず背後へとよろける。

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

そこへ駆けつけてきたかすみがステッキから冷気を纏った太い光線を放つ。

 

「メ!? ガガッ・・・!!?」

 

太い光線に包まれたメガビョーゲンは全身を凍りつかせたと同時に、横へと倒れた。

 

「かすみ!!!」

 

「今だ、フォンテーヌ!!」

 

かすみの叫ぶ声を合図に、フォンテーヌは水の模様が描かれたヒーリングボトルをステッキへとかざす。

 

「エレメントチャージ!!」

 

そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。

 

「ヒーリングゲージ上昇!!」

 

ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。

 

「プリキュア!ヒーリングストリーム!!」

 

キュアフォンテーヌはそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、水色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。

 

その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、火のエレメントさんを優しく包み込む。

 

水型状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんを外へと出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。

 

「「お大事に」」

 

火のエレメントさんは、神社の灯篭の中へと戻り、蝕んだ箇所も元に戻っていく。

 

「まあ、いいわ。目的はすでに果たしたし」

 

ドクルンはフーミンの側に移動しながらそう言うと、二人はその場から姿を消していった。

 

「やったな!! フォンテーヌ!!」

 

「ええ、かすみのおかげよ」

 

かすみとフォンテーヌはお互いの顔を見合わせて微笑む。

 

「あ!? そうだった!!」

 

かすみはペギタンを連れて行った少女ーーーーりりのことを思い出し、壁に横たわって眠っているりりに近寄る。

 

「キミ、大丈夫か・・・?」

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

かすみはりりに声をかけるも、彼女は安らかな寝息を立てながら眠っている。

 

「もう大丈夫みたいね、その娘」

 

「そうだな・・・」

 

フォンテーヌはりりがなんともないことに安堵し、かすみはそれを見てホッとした。

 

「フォンテーヌ! もう一体のメガビョーゲンも浄化しないとペエ!」

 

「そうね」

 

ペギタンがそう声をかけると、フォンテーヌは頷く。そして、かすみの方を向く。

 

「かすみはその娘を家まで届けてあげて。おそらくこの近くだと思うわ」

 

「え・・・私がか?」

 

「ええ、だってかすみはどんな相手にも手を差し伸べる優しい友達だもの」

 

かすみはいきなりりりを任されることに戸惑うも、フォンテーヌは優しく微笑んでそう言う。

 

「・・・わかった。なんとかしよう」

 

「うん、頼んだわ」

 

フォンテーヌはそう言って、もう一体のメガビョーゲンを浄化するべく駆け出して行った。

 

かすみはフォンテーヌが走り去っていくのを見届けると、りりの方を見る。

 

「フォンテーヌ・・・たまに無茶なことを言うよな・・・」

 

かすみは少し呆れたような声を漏らしつつも、りりを背中に乗っけておんぶすると歩き出す。

 

「さてと、家はどうやって探そうか・・・・・・」

 

かすみは何のヒントもないまま、りりの家を探そうと奔走し始めるのであった。

 

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