ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
今回は後日談的な話として書いているので、いつもよりは短めです。
かすみの様子も・・・・・・。


第77話「心声」

 

「メガ!! メガ!!」

 

ドォン!! ドォン!!!!

 

メガビョーゲンが出現した神社内にて、シンドイーネが生み出した狛犬型のメガビョーゲンと交戦中のグレースたちプリキュア3人。

 

しかし、メガビョーゲンが口から放つ黒い光弾のせいで、メガビョーゲンに近づけずにいた。

 

「っ・・・」

 

「避けてるだけじゃどうにもならないラビ!!」

 

「今は良くても、そのうちに疲れて攻撃を受けてしまうかもしれません・・・」

 

「くっ・・・!」

 

「ええい!! ちょっとでも隙があれば、こんなやつ!!」

 

プリキュアたちも避け続けてばかりで防戦一方、体力が削られるのも時間の問題であった。

 

「オーッホッホッホッホッホ!! やっぱり3人じゃ無理だったわね!!」

 

余裕の表情を見せるシンドイーネは高笑いしながらそう言う。

 

「これで4人よ!!」

 

「っ!?」

 

その時、叫ぶ声が聞こえてきたかと思うと、フォンテーヌがこちらへと飛んできた。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「メガァ!?」

 

フォンテーヌは急降下しながら、メガビョーゲンの顔面に蹴りを入れる。

 

「チャーンス!!」

 

フォンテーヌが来たことで余裕が出てきたプリキュアたち。攻撃されたことでできた隙を見逃さず、スパークルとアースが飛ぶ。

 

「はぁっ!!」

 

「ガァ!?」

 

「はぁっ!!」

 

「メガァ!?」

 

スパークルとアースは、メガビョーゲンの体に続けて蹴りを入れてよろつかせる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「ビョーゲン!!??」

 

最後にグレースが渾身の蹴りを食らわせて、メガビョーゲンを地面へと倒した。

 

キュン!!

 

「「キュアスキャン!!」」

 

グレースがすかさず肉球を一回タッチして、メガビョーゲンに向ける。ラビリンの目が光り、メガビョーゲンの中にいるエレメントさんを見つける。

 

「宝石のエレメントさんラビ!!」

 

エレメントさんはメガビョーゲンの首の部分にいる模様。

 

そして、アースは両手を合わせるように祈り、浄化の準備へと入る。

 

一枚の紫色の羽が舞い降り、ハープのような武器へと姿を変える。

 

「アースウィンディハープ!!」

 

そう呼ばれたハープに、風のエレメントボトルがセットされる。

 

「エレメントチャージ!!」

 

アースはハープを手に取って、そう叫ぶとハープの弦を鳴らして音を奏でる。

 

「舞い上がれ! 癒しの風!!」

 

手を上に掲げると彼女の周りに紫色の風が集まり始め、ハープへとその力が集まっていく。

 

「プリキュア! ヒーリング・ハリケーン!!!」

 

アースはハープを上に掲げてから、それを振り下ろすとハープから無数の白い羽を纏った薄紫色の竜巻のようなエネルギーが放たれる。

 

そのエネルギーは一直線にメガビョーゲンへと向かい、直撃する。

 

竜巻のようなエネルギーはメガビョーゲンの中で二つの手へと変化し、宝石のエレメントさんを優しく包み込む。

 

メガビョーゲンをハート状に貫きながら、光線はエレメントさんを外に出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていく。

 

「お大事に」

 

宝石のエレメントさんが狛犬の像の中へと戻ると、メガビョーゲンが蝕んだ神社が元の色を取り戻していく。

 

「ワフ~ン♪」

 

メガビョーゲンが2体浄化されたことにより、体調不良だったラテも額のハートマークが黄色から水色に戻り、元気になった。

 

「ちっ・・・!! 帰ってドラマの続き見ないといけないから、今日はこの辺にしといてあげる!」

 

シンドイーネは悔しそうに舌打ちをして、そう言い放つとその場から姿を消した。

 

「終わった、終わった~!」

 

スパークルはお手当てが無事に終わったことに嬉々している。

 

「かすみちゃんは?」

 

「あの娘を家まで届けに行ったわよ」

 

「あの娘って、ペギタンを連れて行った娘・・・?」

 

グレースがかすみの行方を聞くと、フォンテーヌはそう答え、スパークルの質問にも頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュアが戦っている最中、かすみはりりをおんぶして彼女の家を探すために、歩きながらきょろきょろと目線を動かしていた。

 

「どこなんだろうな・・・この娘の家・・・」

 

しかし、どこもかしこも家だらけで、彼女の家がどこなのかがわからない。

 

「そもそも私、この娘には初めて会ったし、家なんか知らないし・・・」

 

かすみはおんぶしているりりに視線を向けながら言った。この娘には初めて会った上に、家にすら行った事がない。それでどうやって家を探せと?

 

「それにしても・・・・・・」

 

かすみはりりの眠っている表情をよく見る。ちゆたちよりは小さいとは言え、整った顔立ちをしている。

 

(可愛いな・・・のどかやちゆ、ひなたにもこういう時があったんだろうか?)

 

かすみは人間というものをよく知らない。でも、人間が成長して大きくなるということはなぜか知っている。のどかたちにもこんな可愛い姿があったのだろう。

 

可愛い・・・可愛いな・・・。ちょっと愛でたくなる・・・・・・。

 

すると、かすみは急に足を止める。そして、眠っているりりをおんぶしているとはいえ、じっと何かを観察するように見つめる。

 

(病気で苦しんでいた時の顔・・・可愛かった・・・他の誰かも蝕めば、こんな可愛い顔を・・・)

 

かすみの頭の中にこんな考えが生まれる。彼女の瞳はなぜか虚ろに黒く濁っていた。

 

「ん・・・」

 

「っ!?」

 

かすみはりりが気がついたことに驚くと、瞳の色が戻り、慌てて前を向いて歩き始める。

 

「ん・・・あれ・・・?」

 

「気がついたか・・・?」

 

りりは誰かにおぶられている感覚に疑問を持ち、かすみはこちらを向かずに声をかける。

 

「私・・・・・・」

 

「疲れてたんじゃないか? 道端で倒れていたんだ」

 

かすみはビョーゲンズのことを説明せずに、りりが疲れて倒れていたことだけを説明した。

 

「あ、お姉さん・・・!!」

 

「気にするな。困った人を助けるのに、理由なんか必要ないだろ」

 

「そ、そうじゃなくて・・・!!」

 

かすみは謝ろうとしているのかと考えてそう声をかけたが、りりはどうやら違った様子。

 

「ジョ、ジョセフィーヌは・・・?」

 

(ジョセフィーヌ? もしかして、ペギタンのことか・・・?)

 

かすみはペギタンのことを尋ねられたと考える。

 

しかし、この娘は大事にペギタンを持っていたはず、慎重に発言をしなければ・・・・・・。

 

「・・・その子は、元の飼い主のところに帰ったよ」

 

「!! そ、そうですか・・・」

 

かすみはペギタンがヒーリングアニマルだとバレないように、彼女を傷つけないように慎重に答えた。りりはそれを聞くと、表情を暗くさせて俯く。

 

かすみはりりの表情が気になって振り向くと、再び前を向いて歩き出す。

 

「私、その飼い主と友達なんだ」

 

「えっ・・・?」

 

「その娘が会いたいって言ってたって、お願いしてみようか?」

 

「ほ、本当ですか・・・?」

 

りりは驚いたような反応をして、かすみに尋ねる。

 

「もちろんだ。ペギ・・・ジョセフィーヌに親切にしてくれたしな・・・」

 

「・・・!! ありがとうございます・・・」

 

りりはかすみのその言葉を聞くと泣きそうな表情で瞳を潤ませる。

 

「!? ど、どうした!? 私、変なこと言ったか・・・!?」

 

かすみはりりの表情を見て慌て始める。何か、彼女を傷つけるようなことを言ってしまったのではないかと。

 

「う、ううん、違います。ジョセフィーヌにまた、会えるんだなって・・・思って・・・」

 

かすみはりりが瞳から涙を潤ませている表情を見て、ちゆに教わったことを思い出し始める。人間は本当に嬉しいときは泣くこともあると。

 

そういえば、ペギタンにやっと会えたときのちゆも泣きそうになっていたことを思い出す。

 

かすみはその表情と記憶を思い出すと、りりのその表情はそうなのだろうと安堵する。

 

「そうか・・・」

 

かすみはそう呟くと、再び前を向いて歩き始める。

 

「あ、あの・・・! 私、もう自分で歩けます・・・!!」

 

「ダメだ・・・! キミは道端で倒れていたんだぞ。また倒れたりしたら大変だ。私がキミの家まで運んでやる」

 

りりはかすみのおんぶから降りようとお願いしたが、かすみはすぐに却下した。なぜなら先ほどドクルンにメガビョーゲンのかけらを入れられていて相当苦しんでおり、それが治ったばかりなので体に不調が残っているかもしれない。だから、せめて家の前まで運びたいと思っているからだ。

 

「あ、はい・・・」

 

りりはそれを聞くと言葉に甘えるかのようにかすみの背中に身を委ねる。

 

「ところで・・・」

 

「? どうしましたか・・・?」

 

かすみは何やら言いづらそうな声を出すと、りりはそれに反応する。

 

「キミの家は、どこにあるんだ・・・?」

 

「・・・はい?」

 

かすみが振り向きながら苦笑しながら言うと、りりは目を丸くしたままそう呟いた。

 

結局、りりに道を案内してもらい、ようやく家にたどり着くことができた。かすみはりりを彼女の家の前で降ろした。

 

「案内をさせてしまってすまなかったな・・・」

 

「い、いえ! いいんです!! お姉さんには倒れたところを助けてもらいましたし、おあいこです」

 

かすみは申し訳なさそうに頭を下げ、りりは慌てたように手を振る。

 

「そ、そうか・・・」

 

「はい、だから、気にしないでください!」

 

りりがそう言うとかすみは何やら照れ臭そうに言った。かすみは気を取り直した後、りりの顔を見る。

 

「ジョセフィーヌには絶対に会わせる。約束だ」

 

「いいんですか? 私が勝手に持って行っちゃったのに・・・」

 

「いいんだよ。りりちゃんはジョセフィーヌを大切にしてくれたじゃないか。それだけでもりりちゃんは優しいし、私は悪いとは思わない。きっと、会わせるから」

 

かすみは微笑みながらそう言うと、りりも暗かった表情を明るくさせた。

 

「それに・・・・・・」

 

「??」

 

「りりちゃんはもう、一人じゃないかな。自分の友達もちゃんといる気がする。顔を見てるとそんな気がするんだ。私の思い違いかもしれないけど」

 

「!!」

 

りりは、かすみのその言葉に目を見開くと、今日学校に通ってた時のことを思い出す。ジョセフィーヌがいるおかげで話すことができた、転校して初めての友達ができた。そういえば、もう一人じゃない気がする。

 

「そう、か・・・私はもう一人じゃない・・・一人じゃないんだね・・・」

 

りりはジョセフィーヌのことを思い出して、笑みを浮かべ一人瞳を潤ませる。かすみはその様子を見て、微笑むと踵を返す。

 

「じゃあ、またな・・・」

 

かすみは別れの言葉を言うと、りりの家を後にしようとする。

 

「さようなら。ありがとうございました・・・」

 

りりは去っていくかすみの背後に頭を下げて別れの言葉を告げた。

 

(りりちゃん、可愛かったな・・・もう、病気に蝕んでやりたいぐらい・・・)

 

りりの家を離れていくかすみは、微笑みながらも・・・・・・瞳を虚ろに、黒く濁らせながらそんなことを考えていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズル・・・ズル・・・ズル・・・・・・。

 

すこやか市の山の中、りりという少女から離脱した赤い靄の塊はそこへと逃げ出していた。ズルズルと体をスライムのように地面を引きずりながら、どこかへと向かうように歩いていく。

 

山を降りるように下っていくと、その赤い靄に見えてきたのは一件の病院であった。立っている看板には「すこやか総合病院」と書かれていた。

 

赤い靄はそれを立ち止まっているように見つめていたが、よく見ると換気のためなのか、2階部分の窓が一箇所だけ空いているのが見えた。

 

赤い靄はその場で種のような4本足の蜘蛛のようなものに姿へと変えると、それを見つけたと言わんばかりに病院に近づき、建物の壁を登るように進んでいき、窓の中へと入り込んでいく。

 

入った先は病室であり、そこには4台のベッドが並んでいて、そのうち2台に誰かが眠っているようだった。

 

種は誰かをきょろきょろと見渡すように動くと、まるで何かを決めたのかの如く、そのうちの1台のベッドへと近づいていく。

 

カサカサ・・・カサカサ・・・。

 

「ん・・・誰か、いるの・・・?」

 

ベッドの主が音に目を覚ましたようで、外に声をかけてきた。その低めの少女のような声に種はそれに動きを止めるも、すぐにベッドへと移動を進めていく。

 

種はベッドの手前の縁の部分へとよじ登ると、横になっている患者を見据えるように立ち止まる。

 

カサカサ・・・カサカサカサ・・・・・・。

 

「ん・・・?」

 

呻くような声にも構わず、種はその患者が認識する暇もなくと飛び上がり・・・・・・・・・。

 

「!? う・・・っ!!??」

 

驚いたように目を見開く患者に襲いかかるように赤い靄へと変わり、その体の中に入り込んでいく。患者は苦しそうな呻き声をあげると、そのまま操り人形から糸が切れるかのように動かなくなる。

 

ビクン・・・ビクン・・・。

 

そのまま患者の体は痙攣するかのように動く。そして、その患者の体の中には赤く淀んだ何かが蠢いているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、りりはすっかり仲良くなった女子生徒の友達と一緒に下校していた。

 

「じゃあ~ね~♪」

 

「また明日♪」

 

りりは笑顔で手を振りながら友達と別れ、家へと着いた。

 

トントントン・・・。

 

1人家へと帰宅したりりは夕食の支度をしていた。魚肉ソーセージを包丁で切って下ごしらえをしていると、思わず手を止める。

 

そういえば、ジョセフィーヌにおやつとしてあげていたなと、彼女の頭の中にわずかとはいえ過ごしていた日を思い出す。

 

また、会いたいな・・・・・・。

 

りりはあの日々を思い返すと、まるで楽しかったと思うのと、寂しく思うのが混じり合って複雑な気分になっていた。

 

そんな時だった・・・・・・。

 

ピンポーン!

 

「あ・・・はーい・・・」

 

インターフォンが鳴ったことに気づき、りりは手を拭いた後に玄関へと向かう。その扉を開けると・・・・・・。

 

「こんにちは」

 

そこには昨日会ったちゆと、彼女の手元にはジョセフィーヌこと、ペギタンの姿があった。

 

「あ・・・あの・・・ご、ごめんなさーーーー」

 

「あなたに!」

 

りりはペギタンを勝手に連れていったことを謝ろうとしたが、その言葉を遮ってちゆがペギタンを差し出す。

 

「会いたいって聞かなくって♪」

 

ペギタンを手に取るりり。

 

「やあ! また会ったね、りりちゃん♪」

 

「かすみお姉さん・・・!?」

 

ちゆの横からかすみが姿を現し、りりはそれに驚く。

 

「言っただろ。絶対に会わせてあげるって」

 

かすみは微笑みながら言う。

 

「ねえ、ときどき遊びに来ても構わない?」

 

「わぁ・・・!!」

 

パァ・・・・・・!!

 

りりはちゆからそれを聞くと瞳を輝かせ、笑顔になった。りりはペギタンを抱きかかえると頬ずりし始めた。

 

「「ふふっ♪」」

 

ちゆとかすみはお互いに顔を見合わせて、笑みを浮かべる。

 

「「「ふふっ♪」」」

 

遠くでそれを見守っていたのどか、ひなた、アスミもお互いに笑みを浮かべる。

 

(りりちゃん、元気になってくれてよかったな・・・)

 

かすみは心の中でりりが元気になってくれたことに安堵の感情を抱く。しかし、それと同時になぜか名残惜しさを感じていた。

 

(でも、惜しいな・・・病気で蝕まれた姿を、見たかったような気がする・・・・・・)

 

「っ!?」

 

かすみはそこまで考えて目をハッと見開き、手に胸を当て始める。

 

(わ、私は・・・今、なんてことを、考えた・・・!!??)

 

かすみは自分の中に邪な感情が流れてきたことに、戸惑いを隠せない。今までだって、こんな考えをすることなんか一度もなかったのに、最近の自分はどうしてしまったのだろうか。

 

「? どうしたの? かすみ」

 

「い、いや、なんでもない・・・ちょっと、疲れたのかもしれない・・・先に家に戻ってるよ・・・」

 

「??」

 

かすみの様子がおかしいことに気づいたちゆが尋ねると、かすみは話そうとせずに適当な理由をつけてその場を離れていく。

 

「かすみちゃん?」

 

「かすみっち?」

 

「かすみさん?」

 

「・・・ふっ♪」

 

のどかたちが家から離れようとするかすみに疑問を覚えて声をかけるも、かすみは笑みを浮かべて見せた後、そのまま歩いて行ってしまった。

 

「どうしちゃったのかな?」

 

「わかんない・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

のどかとひなたはその様子を心配そうに見つめていたが、アスミは彼女の様子をなんとも言えない表情で見つめていた。

 

一方、かすみは・・・・・・。

 

「っ・・・」

 

のどかたちから見えなくなるところまで歩いて行った後、壁にもたれかかる。かすみはそこで手を再び胸に当てると、ギュッと握るように力を入れる。

 

(私は、一番考えちゃいけないことを考えてた。しかも、あいつらと似たようなことを・・・)

 

かすみは悔やんでいた。りりという少女の目の前で、邪な考えに至ったことに。彼女を蝕んでみたいと考えるなんて、まるでビョーゲンズのあいつらのようだと。

 

ーーーーアタシたちと同族の気配がするんだよ、お前からは。

 

ーーーー私たちと同族のあなたが何を言っているのですか?

 

ーーーー私たちと同族のお前が、守る必要なんかどこにもないの。

 

「っ!? 違う・・・違うッ!!!! 私があいつらなわけ、ない・・・!!!!」

 

三人娘が言い放った言葉が記憶として思い出され、それを拒絶するかのように頭を抱え、首を振って否定する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!」

 

まるで毒のように精神を蝕み、それに伴って呼吸が乱れ、汗が吹き出してくる。そんなはずがない・・・私が、あいつらと同族なわけが・・・・・・!!!

 

ーーーーお前の居場所なんかどこにもないの。

 

ーーーー自分が普通じゃないってことに気づいてないんですか?

 

「うっ・・・うぅぅぅぅぅ!!! 違う!! 違う!!!!」

 

三人娘の言葉が心を乱す槍のように突き刺さってくる。その度にかすみは首を振って否定する。

 

・・・そうだ、楽しかった思い出を・・・のどかたちとの楽しい思い出を・・・!!

 

ドッグランで一緒に犬と戯れたこと、おおらか市の大自然で一緒に遊んだこと、のどかたちと一緒にジュースで乾杯したこと、ファミレスで一緒に興奮したこと・・・・・・。

 

それを思い出していくと、乱れた精神が少し緩和するような気がした。自分はあいつらなんかじゃない・・・私は私であると・・・!!

 

かすみは少しずつ精神を落ち着かせ、フラフラと歩きながらちゆの家である沢泉家と戻っていく。

 

「少しずつだけど、あいつはいい感じに成長してるわね」

 

その様子を家の屋根の上からクルシーナが見ていた。かすみーーーー脱走者はプリキュアたちのそばにいるおかげで確実に成長して行っており、おそらく何らかの変化を遂げているようだが、自分の中の何かに気づいておらず、それを否定して苦しんでいるようだ。

 

肉体的に苦しんでいないのがあれだが、精神的に苦しんで顔を歪めているのもまた格別ね。見てて面白い・・・・・・。

 

それはそうとして、そろそろ頃合いかもしれないわね・・・。

 

「ふふふ・・・♪」

 

クルシーナはその場から去っていくかすみを不敵な笑みを浮かべながら見送ると、その場から姿を消した・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュイィィィィィン!!! ギュィィィィィィィィィィン!!!!!

 

『キャアァァァァァァァ!!!!』

 

『ぐわぁぁぁぁぁ!!!!』

 

「ひぃぃ・・・!!??」

 

三人娘がアジトとする廃病院、そこではキングビョーゲンの娘たちだけで鑑賞会が行われていた。クルシーナはどこかに行ってしまったので、現在はイタイノン、ドクルン、ヘバリーヌ、フーミンの4人で鑑賞を行っている。

 

今、映像に映っているのは、怪物のような顔をした大男がチェーンソーを振りかぶって男性を切り刻み、女性が悲鳴をあげているシーンである。

 

先ほどからビクビクしていたドクルンはそのシーンを見た瞬間に悲鳴を上げ、顔を青ざめさせる。

 

「キヒヒ・・・!!! チェーンソーでバラバラなの!! 体がミンチなの!!!」

 

イタイノンはそのシーンを見て大喜びし、あまりのリアルなシーンに興奮していた。

 

「あ〜あぁ〜、この男性キャラ死んじゃったね〜。あの女性を逃がそうとするなんて、カッコよかったんだけどなぁ〜」

 

ヘバリーヌはある意味好みであった男性が殺されたことに、名残惜しそうにしていた。

 

「んぅ・・・うるさいですぅ・・・騒ぐせいで眠れないですぅ・・・」

 

脱走者との戦いでエネルギー切れのフーミンは、目を擦りながらそう呟く。

 

「ん? ドクルンお姉ちゃん、どうしたの? 膝なんか抱えちゃって」

 

ヘバリーヌが悲鳴以来、ずっと黙っているドクルンを見ると、彼女は膝を抱えて俯いていた。

 

「ありえない・・・ありえないわ・・・!! あんな怪物、この世に存在するわけがない・・・!! あの顔はメイク、そうメイクよ・・・ああやって服の赤い跡だって、絵の具をやっているからに違いない・・・男性をチェーンソーで切り刻むのだって、悪党を罰しているからよ・・・ハハハ、ハハハハハハハ・・・!!!!」

 

ドクルンは恐怖のあまりなのか、顔を青ざめさせながらブツブツと何かを呟いており、さらには笑っていて気が動転しているようだった。

 

「ドクルン、うるさいの!!!!」

 

イタイノンはブツブツとうるさいドクルンに黙るように叫ぶ。

 

「あれ〜? この女性の仲間ってもう一人いたよね〜? どこに行っちゃったのかなぁ?」

 

「ぃっ!?」

 

ヘバリーヌは女性の仲間が現れないことに、考え込むかのように疑問を抱いていた。その声に反応したドクルンが急に立ち上がる。

 

「お化けに連れ去られたなんて絶対にウソ!!!! この世に存在しないし、あんな化け物いるわけ無いわ!!! あぁぁぁ・・・非科学的〜・・・」

 

ドクルンは恐怖をごまかすように叫び声を上げると、そのままフラついてひっくり返ってしまった。

 

「ドクルンお姉様ぁ・・・?」

 

「はぁ・・・・・・」

 

フーミンはドクルンが倒れたことに疑問を呟く。イタイノンは振り向いてドクルンのそんな様子を見て、やれやれと首を振りながらため息を吐いていた。

 

「ネムレン、ヘバリーヌ」

 

「ネム?」

 

「なぁ〜に?」

 

「ドクルンを部屋まで運んでやるの」

 

「わかったネム」

 

「はーい!」

 

ネムレンはカチューシャから茶髪の三つ編みツインテールの、メガネをかけた人間の姿へと変化するとヘバリーヌと一緒に担架をドクルンの側へと持ってくる。そして、卒倒した彼女を二人で担いで担架に乗せるとそのまま二人で運びながら、ドクルンの部屋へと向かって行った。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

イタイノンはその姿を見届けると、呆れたように声を漏らしながらテレビへと視線を戻す。

 

『キャアァァァァァァァァ!!!!!!』

 

ギュィィィィィィィィン!!!!!!

 

車に乗って逃げようとした女性の背後から、男がシートごとチェーンソーで貫くシーンを真剣に見つめる。

 

「ドクルンも、こんなのが怖いなんてビョーゲンズとして恥ずかしいの」

 

この廃病院には、ビョーゲンキングダムには、怪物よりも恐ろしい存在がいるというのに・・・・・・。

 

イタイノンは先ほどのドクルンの反応に呆れながら、残りの映画を見ようと思うのであった。

 

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