ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
この話は総集編的な話ですが、一部のビョーゲンズも登場します。
夏休みのある日、のどかたちはみんなで遠くに出かけようとバスに乗って、すこやか市から離れていたバス停へと到着していた。
「ひなたちゃん、まだかなぁ〜?」
メンバーは揃っていたのだが、ひなただけはまだ来ていなかった。
「ここに現地集合だって自分から言ったのに、本人が来てないってどうなんだ?」
かすみは険しい顔をしながら、ひなたがいないことに不満を漏らしていた。
「寝坊してるのかしら? ちょっと電話してみる?」
ちゆはそう言いながら、持っている携帯で電話をかけようとした。その時だった・・・。
「わぁ〜!!!!!」
「「「「!!??」」」」
「「??」」
バス停の陰に隠れていたひなたとニャトランが背後から大きな声を出し、のどかたちは声を上げた。
「もぉ〜! ひなた!! ニャトラン!!」
「びっくりしたラビ・・・!!」
「えへへ〜、サプライズ、サプライズ〜♪」
みんなは驚いた様子で、ひなたのサプライズは成功した。
「まあ、お二人とも遅かったですね」
「遅いぞ、ひなた。みんな、キミを待ってたんだぞ・・・!」
と思いきや・・・アスミは表情がまるで変わっておらず普通に接し、かすみはひなたが来るのを知っていたかのように不満を言うだけであった。
「あれ? なんで、アスミンとかすみっち、驚かないの〜!?」
「驚きましたよ?」
「全然わかんないし〜!」
アスミは笑顔でそう答え、戸惑うひなたは腕を振りながらツッコミを入れる。
「キミのいたずらなんか何度も見てるんだから驚くもんか。気配が丸出しだったぞ」
「かすみっち〜! そんな特殊能力は使わなくていいんだよぉ〜!!!」
「気配は能力じゃない!! 体質だ!」
かすみが不満そうな表情で冷たくあしらうと、二人はギャーギャーと喚き始める。
「のどかたちぐらいびっくりしてくれないと、脅かし甲斐がないんだよなぁ〜」
二人にだけ脅かしが不発に終わったことで、ニャトランはつまんなそうな様子でそう言った。
「そうなのですね。私もそれくらいビックリしてみたいですね〜」
「できるものならやってほしいもんだな」
アスミは微笑みながら答え、かすみはそっぽを向いたような態度で言った。のどかたちはキョトンとした表情で、二人を見ていた。
「ん? ふふふ・・・♪」
一方、ひなたは何かを思いついたのか、ニヤリと笑みを浮かべ、のどかたちと顔を合わせるのであった。
ビョーゲンキングダムーーーーマグマに満たされていることで、そこは真っ赤な景色が広がっている世界。
そこではクルシーナが一人邪魔されることなく寝そべり、フーミンが壁に寄りかかりながら眠りについていた。
「はぁ・・・やることない暇人ってこういうことを言うのかねぇ・・・」
クルシーナは答えもしない空に向かって、こんなことを呟いていた。
「すぅ・・・すぅ・・・」
「新入りはのんびり寝てるし・・・」
横になって眠っているフーミンに視線を向けると、淡々とした口調で言う。
「んぅ・・・すぅ・・・」
「・・・いや、眠ってんのか起きてんのかわかんないやつだったわね」
フーミンがコクリコクリとしている中、一瞬だけ目を開いて目を閉じる姿にクルシーナは呆れたように見る。
「・・・とりあえず、こいつを引っ張り回しましょうかね。新入りの教育も必要だしね」
クルシーナはそう言って起き上がると、フーミンへと近づく。
「フーミン、起きて」
目を瞑っているフーミンの頬をペチペチと叩く。すると浅い眠りだったようで、フーミンが顔を顰め始める。
「んぅ・・・クルシーナお姉様ぁ・・・?」
「ちょっとアタシに付き合ってくれない? アンタにいろいろと教えたいこともあるし」
「??」
フーミンは眠たそうな目を擦りながら言うと、クルシーナが笑みを浮かべながらそう言った。
「んぅ・・・・・・」
しかし、話を聞けているかどうかもわからないフーミンはコクっと顔を前に倒して、寝ようとしていた。
「っ・・・おーきーろー!!!!」
「うぅ・・・あぁ・・・んぅ〜・・・」
クルシーナはそれを見て顔を顰めると両手で頬を強く、リズムカルに叩き始める。フーミンは可愛い呻き声をあげると、再び目を開けて目を擦りながらも立ち上がる。
そして、懐からドクルンからもらった水筒を出すと、その中にあるハーブティーを飲み干す。
「んっ!!??」
体の中をチクチクとさせる刺激物がフーミンの体中に回り、まるで悪寒のように体全体がビクッとなり、フーミンの目が見開かれる。
「目が覚めたですぅ・・・」
「あっそ。ならアタシについてきな」
クルシーナは呆れた様子で淡々と呟くと、フーミンに背を向けて歩き始める。フーミンもその背後をついていく。
「アンタ、プリキュア共がいるあの街についてよくわかってないでしょ? アタシが案内してあげようと思ってね」
「はぁ・・・・・・」
「ついでに地球を蝕んでやろうと思うの」
「ふぅ・・・・・・」
「・・・って、聞いてんの? アンタ」
フーミンはどこ吹く風のように適当な返事をし、説明しているクルシーナは不機嫌そうな口調になる。
「聞いてますよぉ・・・?」
「随分と興味のなさそうな反応ね。まあ、いいけど・・・」
どこか腑に落ちないような反応をしつつも、クルシーナはフーミンと共に地球へと向かっていくのであった。
「はぁ〜・・・気持ちいいなぁ〜・・・」
沢泉家では、かすみが一人温泉へと浸かっていた。
さっきまではちゆの母、まおのお手伝いをしていて、それが終わった後に日頃の疲れを癒そうと入っているのである。
「それにしても・・・ちゆ、一体どこに行ったんだ・・・?」
かすみは家を後にしたちゆの行動に疑念を抱いていた。いつもなら自分を誘ってくれるのに、今日に限っては違う行動を取るなんて・・・・・・。
それは、数分前のこと・・・・・・。
『ちゆ、出かけるのか・・・?』
『ええ、ちょっと用事をね。外におつかいに行ってくるだけだから』
ちゆはそう伝えると、かすみは何か困っているのだろうと考える。
『なら、私も一緒にーーーー』
『だ、大丈夫よ!! 一人でもいけるから。かすみは家で大人しく留守番してて』
『だが・・・・・・』
『ほ、本当に大丈夫だから!! ありがとう、その言葉だけでも嬉しいわ』
かすみは自分がついていこうとすると、なぜかちゆの言動がおかしくなり、かすみは首を傾げる。
かすみは追求しようとしたが、ちゆは押し切った上でそのまま家を後にしてしまったのである。気のせいだと思うが、何やら心に焦りがあったような気がする。
「・・・何か怪しいな。ちゆは私に隠しごとをしているのか?」
温泉から出たかすみはシャンプーで頭をゴシゴシとしながら考える。
・・・友達なのに、隠し事? 何か言いたくないことでもあるのだろうか?
かすみはそんな風に少しネガティブに考えてしまったが、ちゆが言えない恥ずかしいことがあるなら仕方がないと考えた。
かすみはシャンプーを洗い流すと、再び温泉に浸かり始める。
「でも、気になるなぁ・・・聞いちゃダメなんだろうけど、なぜか隠されると尚更聞きたくなってしまう・・・」
かすみは聞かれたくないことを理解しつつも、どうしても気になるというジレンマから頭がモヤモヤしてしまう。
ピィピィッ!! ピピピ!!
「!!」
そこへ鳥の鳴き声が聞こえてきて、そちらに振り向くと一羽の小鳥が塀の上に止まっているのが見えた。
あれはこの辺の公園でも見かけるヒヨドリだろうか。その小鳥はかすみの方をじっと伺うように見ている。
「おいで。一緒に温泉に入らないか?」
かすみはそう言いながら小鳥に手を差し伸べるかのように前に出す。
ピピピッ!!
小鳥は特に警戒することなく、鳴きながらこちらへと飛んできた。かすみは自分の指で止まり木のように一本だけ伸ばしてあげると、ヒヨドリはその指に止まってきた。
ピピピッ
「ふふっ♪」
かすみは指に止まった小鳥を慎重に撫でてあげると、笑みをこぼす。
「なあ、聞いてくれないか。ちゆったら、私に何か言えないことがあるらしいんだ。何だと思う?」
答えてくれるとは思えない小鳥の頭を撫でながら、かすみはそう問う。温泉に入って癒されていても、こうして動物と戯れていても、やっぱり気になって仕方がない。
ピィピィ!
まるで質問に答えてあげているかのように小鳥はかすみに向かって鳴き出す。それを見てかすみはきょとんとしたような表情になりつつも、再び微笑む。
「ふふっ・・・そうだよな。自分で聞かないと、わからないよな」
かすみはまるで小鳥の考えを読んだかのように納得した。小鳥に聞いてもわからない、だったら自分で聞かないといけないなと。
ピピピッ!!
「あ・・・」
小鳥はかすみの指から離れるように青い空へと飛び去っていく。かすみはその様子を見て笑みを浮かべる。
「よし! じゃあ、ちゆを探さないとな」
かすみは温泉から出ると脱衣所へと戻っていく。温泉に浸かって濡れた髪や体をバスタオルで拭いていく。
「そういえば、昨日ひなたが何か企んでいるような顔をしていたな。ちゆの行動と関係あるのかな」
かすみは昨日出かけた際のひなたの顔を思い出しながら、脱衣所で脱いだ自分の服、袖無しの白いシャツを羽織り、アスコットタイを着ける。ベルトがついた赤いスカートを履き、足紐がついた黒いストッキングを履き込むと、頭に黒いリボンを身につける。
そして籠手と赤い手袋を身につけると、脱衣所を後にし、外へ出るために玄関へ。
「お母さん、ちょっと出かけてくる!」
「いってらっしゃい!!」
かすみは受付の中にいるであろう、まおに声をかけて、黒いブーツを履く。
「あ・・・・・・」
ここでかすみはちゆの言っていた言葉を思い出す。
ーーーー家で大人しく留守番してて。
「・・・まあ、気になって仕方がないし、家にいたってやることもないし、そんなことをしていられないな」
かすみはそう自分に言い聞かせ、沢泉家を出ていった。
「ちゆ・・・どこにいったのかな?」
かすみはちゆがどこにいったのかは見当もついていないため、とりあえずはキョロキョロと歩き回りながら探していた。
「こういう場合、どこに行けばいいんだ・・・?」
かすみは場所を知っている人に尋ねればいいと思うが、正直町の人とはあまり会話したことがないため、誰を尋ねればいいのか・・・・・・。
「そうだ! のどかに聞いてみよう!」
と、ここでかすみはのどかに会うことを思いつく。ちゆはのどかの友達で、自分にとっても友達だ。3人はいつも揃っているし、彼女の居場所を知っているはず。
早速、のどかの家に向かうことにした。
以前、ちゆに教えられた道を通って、のどかの家にたどり着き、自宅のインターホンを押す。
ピンポーン♪
「はーい」
インターホンを鳴らした後、しばらくするとのどかが玄関のドアを開けてきた。
「あ、かすみちゃん」
「のどか、おはよう。遊び来ちゃった♪」
かすみはのどかに挨拶し、笑顔を見せる。
家の中へと通されたかすみは、のどかと一緒に彼女の自宅の庭へと出て来る。
「えへへ〜♪」
庭ではラビリンで、植木鉢に植えた何かに水をあげている様子だった。
「おはよう、ラビリン♪」
「かすみ、おはようラビ!!」
かすみが近づいて声をかけると、ラビリンがそれに気づいて挨拶をかわす。
「かすみさん、いらしていたんですね。おはようございます♪」
「アスミ、おはよう♪ ちゆの家にいるのが暇だから、遊びにきたよ♪」
そこへアスミが家から出てきたのを見て、かすみが挨拶をする。
「えへへ〜♪」
「ラビリンはさっきから何をやっているんだ?」
「朝顔に水をあげているラビ〜♪」
「のどかも何かをやっていますが、何をしているのですか?」
「学校の宿題♪ 朝顔の観察日記を書いているんだよ〜」
かすみやアスミが二人の行動に疑問を覚えると、それぞれが答える。のどかは朝顔の観察日記をノートにつけており、アスミとかすみがそのノートを見る。
「朝顔の成長を毎日観察して、その様子を記録するの」
のどかは日記をめくりながら、観察日記を二人に見せてあげる。
「成長の記録ですか・・・・・・」
「花は咲いていないけど、種はあるみたいだな・・・」
「最初に蒔いた朝顔はもう枯れちゃったけど、種が取れるようになったラビ♪」
アスミとかすみが観察している花の様子を見てみると、花は咲いていないようだが、種になっていることから順調に成長はしていっている様子。
「朝顔の成長は早いですね」
「本当、月日が経つのはあっという間ラビ♪」
「そっかぁ〜、私たちが出会って随分経つんだね〜」
月日という言葉を聞いて、ここでかすみが気になることを聞いてきた。
「そういえば、のどかとラビリンはどうやって出会ったんだ?」
かすみはのどかにそう尋ねた。ラビリンはヒーリングアニマルで、のどかは人間、この二人は住む世界も違うはずだ。なのに、どのようにして出会ったのか。前々からかすみは知りたかった。
「私がここに引っ越してきたばかりの頃だったなぁ。この街を散歩しようといろんな場所に行って、そこでメガビョーゲンが現れて、私がなんとかしなくちゃって思ったんだ。そしたら、ワンちゃんが取り残されてるって聞いて、そこにいたのがラビリンたちだったの」
のどかはラビリンと出会ったばかりのことを話し始める。
「のどかが最初にプリキュアになったのですよね? ラビリンはどうしてのどかを選んだのですか?」
「それはーーーー」
アスミに尋ねられ、ラビリンが答えようとすると・・・・・・。
「あ・・・私、そろそろ行かないと・・・」
「おでかけですか?」
「うん、ちょっと学校に用事があって・・・」
のどかが突然そう言うと、かすみは外に出ていた目的を思い出す。
「あ、そうだ・・・!! のどかぁ!!」
「ごめんね! 早く行かないと遅れちゃうから・・・」
かすみはちゆの居場所を尋ねようとしたが、のどかはぎこちない様子で謝罪する。
「それじゃあ、行ってきま〜す」
「あ・・・のどか!!」
のどかはアスミとかすみ、ラビリンを残してその場を後にしていく。かすみはのどかが話を聞いてくれず、アスミはそれが気になってついて行こうとするが、ラビリンに阻まれてしまう。
「のどかのことは気にしなくていいラビ!!」
「でも、のどかにーーーー」
「話の続きラビ!!」
「・・・・・・・・・」
(ラビリン、何を隠してるんだ・・・? のどかも私も話を聞いてくれないし・・・)
ラビリンは先ほどの話の続きをしようと話し始め、腑に落ちないかすみはのどかやラビリンを怪しみつつも、とりあえずはラビリンの話を聞こうとする。
「のどかたちとの出会いは、ラビリンたちが人間界に出た時ラビ。ラビリンは、のどかの言葉で心の肉球がキュンとして、ヒーリングステッキが生まれたラビ」
ラビリンはそう言うと、初めてのどかと一緒にプリキュアに変身したときのことを思い出す。
「そして、プリキュアに変身して、一緒にメガビョーゲンを浄化したラビ!」
「そうか・・・ラビリンはいいパートナーを見つけたってことなんだな。その、心の肉球がキュンと来て・・・」
「そうラビ!! のどかはいつも一生懸命で優しいラビ!!」
ラビリンは自慢のパートナーであるような感じの笑顔で話す。
「私もそう思います」
「そうだな、のどかはいつも誰に対しても親切だもんな」
アスミとかすみは笑みを浮かべながら、それぞれそう言った。
「・・・さてと、ラビリンは出かけるから、アスミはラテ様とお留守番をお願いラビ。かすみもここで大人しくしているラビ」
「えっ、なんで私もーーーー」
ラビリンの言葉に納得がいかないかすみは言い返そうとしたが・・・・・・。
「絶対に家にいるラビよ・・・?」
「う・・・あ・・・うん・・・」
かすみに顔を近づけて、ものすごい剣幕で念を押すように言うラビリンにかすみはたじろいで頷くしかなかった。
ラビリンはそのままどこかへ飛び去って行ってしまったのであった。
「のどか・・・ラビリン・・・」
かすみは出て行った二人が何か隠していることが腑に落ちず、不安そうな表情になる。
「皆さん、今日はお忙しいのですね。私たちは何をしましょうか?」
アスミはそう呟いて、ラテの方を見る。そして、先ほどまでのどかが日記をつけていた朝顔の方を見る。
「あ!そうだ!」
「ワウン?」
「ど、どうした・・・アスミ・・・!?」
大きな声を出すアスミに、かすみもびっくりして振り返る。
「私も、ラテの成長日記を作ります。となると・・・私の生まれる前の出来事について、ちゆたちに話を聞かないといけませんね」
「・・・そうだな。私ものどかやちゆたちが、どうやって出会ったのか、何をしていたのか気になる・・・さっきのラビリンの話で興味が湧いた・・・」
アスミの言葉にかすみは不安げな顔をしつつも、苦笑しながらもっとのどかたちの出来事を知りたいと思う。
「!?・・・っ!!」
それを見ていたラテは、何かまずいものを見るかのような顔をすると二人から離れて何かを持ってくる。
「「??」」
「ワン、ワン♪」
ラテが二人の前に持って来たのは鈴のついたおもちゃだった。どうやら二人にここで遊んでもらいたいと考えているようだが・・・・・・。
「これで遊びたいのですか? ではお散歩がてら、これを持ってみなさんに会いに行きましょう」
「このおもちゃだったら、外に行っても遊べるし、みんなと遊んだほうが楽しいしな♪」
「はい♪」
「・・・クゥ〜ン」
アスミはおもちゃを持って、ラテを抱えるとのどかの家を出発。かすみも一緒にいる方が効率よく見つけられると思い、一緒に同行。
しかし、ラテの表情はどこか浮かない顔をしていたのであった・・・・・・。
そんな頃、ハート形の灯台の上で、クルシーナとフーミンが姿を現していた。
「ここがあいつらの住んでいる街の全景よ」
「んぅ・・・随分と小さいですぅ・・・」
クルシーナは案内をするかのように灯台から見える全景を見せ、フーミンはそれをきょとんとしたような表情で見ていた。
「アタシも最初に出撃したときは驚いたわ。こんな小さな街ごときが、アタシたちにとって不快のある感じがするとは思わなかったしね」
「でも、お姉さまはよくこの街を蝕もうとしてるですぅ・・・」
「当たり前じゃない。この街は地球上で一番蝕みがいのある場所だからねぇ」
クルシーナは当たり前のような感じで言う。
自然豊かな森・・・きれいな川・・・元気に遊ぶ子供たち・・・この街に澄み渡る快適な空気・・・。
その全てにおいて、自分たちビョーゲンズが気に入らない要素のオンパレードだ。だからこそ、この街は蝕みがいがあるのだ。
「さてと、じゃあ街に降りてみようかしら」
「はいですぅ・・・・・・」
クルシーナとフーミンはその場から姿を消すと、すこやか市の商店街があるエリアへと入って来た。
二人はその場で指を鳴らして、自分の肌を人間と同じような肌色に、悪魔のツノとサソリの尻尾を隠して、人間に擬態することを忘れない。
変身が完了した後、クルシーナは辺りをキョロキョロと見渡すも、お店は開いている気配がなく、それどころかあまり人が歩いている気配を感じない。
「そういえば、今は夏休みだっけ」
「夏休みぃ・・・?」
「ええ。人間どものこのクソ暑い日のお休みのことよ。そういうところでよく浮かれたりするのよねぇ」
フーミンに夏休みの意味を適当に教えると、クルシーナは適当にブラブラと歩き始める。
「おまんじゅうのお店、開いてるウツ?」
「後にしろ。今はこいつを引っ張り回してんだから」
帽子になっているウツバットは、どうやらすこやかまんじゅうのお店に行きたいようだが、クルシーナは不機嫌そうな口調で素っ気なく返した。
「足湯・・・お土産ショップ・・・個性的なものが多いですぅ・・・」
「人間どものセンスがわからないくらいにねぇ。最初にきたときは驚いたわ」
フーミンはきょろきょろしながら建物に書かれている文字を興味深そうに読む。一方のクルシーナは肩をすくめながら、つまらなそうに返した。
「ウツバットの言っている、まんじゅうのお店ってなんのことですかぁ・・・?」
「ん? あぁ、すこやかまんじゅうのこと?」
フーミンが珍しく質問をしてきたので、クルシーナはあのことだろうと察する。
「あれは人間どもの作ったものにしては、よくできてるものだったわね。この前、あいつらにも振る舞ったら、喜んで食べてたわね」
「ここで妙なお祭りがやっていたときに、それを食べてハマったウツ♪」
クルシーナとウツバットは、妙なお祭りーーーーすこやかフェスティバルに潜入して、すこやかまんじゅうを食べた時のことを思い返す。
『・・・ふーん』
『いらっしゃい、お嬢ちゃん! すこやかまんじゅう、どうだい!?』
『これって、何でできてんの?』
『おお、興味があるのかい? このすこやか市の名物である、すこやかまんじゅうはなぁ、6種類の野菜を使っててねぇ。イチゴにカボチャに、コマツナに、どれも美味しくて体にいいんだ!』
『ふーん・・・』
『僕も食べたいウツ~!!』
『変な声が聞こえたな・・・?』
『気のせいでしょ。それよりも、そのすこやかまんじゅうとやらを頂戴。全種類4個ずつね』
『まいど!!』
『!! ん~!! 美味しい~!! 最高ね♥』
『ほっぺたが落ちそうウツ~!!』
あそこで食べた饅頭は妙に美味しかった。人間の作ったものにしては最高だった。
「んぅ・・・私も食べてみたいですぅ・・・」
「あっそう? じゃあ、あそこに行ってみようかしらね」
フーミンがすこやかまんじゅうに興味を示したため、それを気に入ったクルシーナは彼女と一緒にすこやかまんじゅうを作っているお店に行くことに。
人間界の夏休みでありながら、そのお店は開いていたため、クルシーナはすこやかまんじゅうをすんなりと買うことができた。
「あ〜む・・・ほぉ・・・!!??」
パァ・・・・・・!!!!
フーミンはすこやかまんじゅうの包みを剥がして、一口かじってみる。すると、口の中に甘さとうまさが伝わってくるのを感じ、フーミンの表情が嬉しさで紅潮していく。
「んむ、んむ、美味しいですぅ・・・」
「ねぇ? あいつの作ったものにしては、マシな方でしょ? あむ・・・んぅ〜♪」
パクパクと摘んでいくフーミンをよそに、クルシーナはそう言いながらすこやかまんじゅうを一個食べるのであった。
「僕も欲しいウツ!!」
「はいはい、わかってるわよ」
帽子のウツバットが駄々をこね始めたので、クルシーナは苛立ちつつも、まんじゅうの包みを剥がすとウツバットの口の中に放り込む。
すると・・・・・・。
「すこ中ー、ファイ!」
「オー!」
「ファイ!」
「オー!」
「??」
何やら掛け声が聞こえてきたかと思うと、生徒らしき隊列が走っていくのが見えた。
「あら。あそこの中学校の奴らかしらね」
「あのジャージ姿は間違いないウツ」
「人間たち、なんで隊列で走ってるですぅ・・・?」
フーミンは生徒たちが走っている理由が理解できないので、クルシーナに問う。
「部活の練習、って奴らしいわよ。元気すぎて、本当に静かにさせたくなるくらいな・・・!!」
クルシーナはフーミンに説明をしようとすると、あの時のことを思い出して説明を止め、目を見開く。
「・・・そうだ。あそこにも行ってみようかしら」
「どこですかぁ・・・?」
「プリキュアどもが通っている中学校よ」
疑問を持つフーミンに、クルシーナは不敵な笑みを浮かべるのであった。
「今日はとてもいい天気ですね」
「そうだな。こんな日だと外で遊びたくなってしまうな」
アスミとかすみはのどかの家を出て、両脇に木々が生い茂る道へと歩いていた。
「ん?」
「あれは、なんだ・・・?」
すると、二人の目の前を一本の竹が通り過ぎようとしていた。竹はなぜか飛ぶように浮いていて、まるで生き物のようだ。
アスミとかすみはそれを見て、互いに目を見合わせるとアスミはその竹を掴んで上へと引っ張り上げる。
「ぺェェェェェェ〜!?」
「ペギタン?」
竹の中にいたのはなぜか頭にねじり鉢巻をしているペギタンだった。
「こんなところで何をしているのですか?」
「た、竹を運んでいただけで特に怪しいことは何も・・・!!!」
「なんで竹を運んでいたんだ・・・?」
「そ、それは・・・あ、ラテ様。今日は晴れてよかったペエ」
「・・・・・・??」
どこかぎこちない様子のペギタンに、ラテへの挨拶で誤魔化されたかすみは疑念の目を向けていた。
と、そこへアスミが腰を屈めてペギタンと同じ位置で目線を合わせた。
「あの、ペギタン。ちゆとの出会いについて教えていただけますか?」
「あ、それは私も気になるな」
「どうしてペエ?」
「ラテの成長日記を作るのです。今までのご様子を綴って、いつかテアティーヌにお見せしようと思いました」
きょとんとしていたペギタンに、アスミがそう説明する。
「それはテアティーヌ様も喜ぶペエ♪ 僕も協力するペエ♪」
「よろしくお願い致します・・・!!」
アスミは興味津々で手帳を取り出すと、ペギタンの話を聞こうと耳を貸す。
「初めて人間界に来た時、僕は自信がなくて、パートナーもうまく探せなかったペエ・・・そんな時・・・僕に勇気を与えてくれたのがちゆだったペエ」
「ちゆは、自分からプリキュアになったんだ・・・」
ペギタンの話を聞くと、かすみはちゆが自分の意思でプリキュアになってお手当をしようとしたと思い、感嘆の声を漏らす。
「僕は最初は自分の力不足で、ちゆを危険に晒すかもしれなかったからパートナーにできなかったペエ・・・でも、ちゆが僕に自信を、いや二人で一緒にやればきっとできると思ったペエ。そんなちゆに心の肉球がキュンと来たペエ」
「ちゆが勇気を与えてくれたんだな・・・やっぱりちゆは、優しいな・・・」
ペギタンの話を聞くたびに、ちゆの優しさにかすみは微笑んでいく。
「ちゆはいつでもどこでもカッコいいペエ〜♪」
ペギタンは頬に手を当てながら顔を赤らめながら、思いを馳せていた。
「ありがとうございました」
「って、ちゆの話をしてたら思い出した!! ちゆに会わないといけなかったんだ!! アスミ、行こう!!」
「ええ、ちゆにもお話を聞きたかったですし」
かすみはハッと思い出して、アスミに声をかけて向かおうとしたが・・・・・・。
「え!? ちゆのところに行くペエ!? 今日はダメペエ!!!!」
「なんでだ!? 私はちゆにいろいろと聞きたいことがあるのに・・・!!」
「と、とにかくダメペエ!!」
「なんで会っちゃいけないんだ!!?? あっ、ペギタン、もしかして私に何か隠してるだろ・・・??」
「うっ・・・!!」
ペギタンがなぜかそれを必死に止めようとしていて、かすみはムキになるが、逆に何かを隠しているんじゃないかと怪しむような目で見つめる。
「と、とにかく話を聞くなら、ひなたの家に行くといいペエ!!」
「そうですか・・・」
「アスミ、何を納得してるんだ!? 私の話はまだ終わってないんだぞ・・・!!」
ペギタンは誤魔化そうとしてそう言うと、アスミは納得し、かすみは苛立ったような感じで叫ぶ。
「まあまあ、かすみさん。ペギタンがそう言っていますし、ひなたの家に行きましょう」
「だが・・・!」
「かすみさんが怒ったら、私は悲しいです・・・!」
アスミが優しく説得しても、かすみは食い下がろうとしたが、アスミは悲しそうに彼女を見つめる。
かすみはアスミが悲しい気持ちになると消えかかったような感じになるのを思い出し、振り上げていた手を下ろす。
「・・・わかった。すまなかったな」
かすみは納得していない表情だったが、謝罪の言葉を述べる。アスミも手帳をしまうとペギタンに頭を下げ、二人はひなたの家に行くために歩き始めた。
それを見送ったペギタンは・・・・・・。
「ペエ・・・今日のかすみ、なんだか怖かったペエ・・・」
ペギタンはその場で息をつく。今日のかすみはなんだか機嫌が悪そうだった。その前にはのどかの家にいることを知っていて、さっき聞いてきたことを答えなかったからだろう。
(ごめんペエ・・・かすみ・・・)
ペギタンは心の中でかすみに謝罪すると、その場から何処かへと飛んで行くのであった。
「なんか今日、みんな冷たいな・・・・・・」
「そうでしょうか・・・?」
「だって、ちゆのところに行くなって普通は言わないだろ? 今日に限って、そんなことを言うなんて・・・みんなおかしいよ・・・」
「きっと事情があるのですよ」
かすみがアスミに不満をぶちまけつつも、二人はひなたの家に向かって歩いていく。
そして、家の近くまで着いた時・・・・・・。
「んじゃ、よろしく〜!」
ひなたが家から出て走っていくのが見えた。
「あ、ひなた・・・!!!」
「遅刻遅刻〜!!」
かすみはひなたに声をかけようとしたが、彼女はそれに気づかずに走って行ってしまった。
そこへニャトランが見送るために、道沿いへと出てきた。側にいたアスミとかすみの姿に気づかずに・・・・・・。
「ニャトラン?」
「あれ!? アスミ!?」
「なんでひなたは走って行ったんだ・・・?」
「おい、かすみもかよ!?」
アスミが声をかけると、ニャトランは二人の存在にようやく気づいた。
「今日のひなたは忙しそうですね・・・」
「そ・・・そうそう〜・・・」
「なぜ忙しいんだ? 昨日まで遊んでたじゃないか・・・」
「あ・・・あいつはいっつもバタバタしてるからさあ・・・!!」
「だから、なぜ・・・」
さっきのペギタン同様に、ぎこちない様子のニャトランにかすみはやはり疑念を抱く。
「出会った時から、忙しいのですか?」
アスミの言葉にニャトランはきょとんとした様な顔になる。
「出会った時・・・? そうだなぁ〜、えへへ♪ あん時もバタついてたなぁ〜!」
ニャトランはひなたがバス停で忘れ物をしていた時のことを思い出していた。
「俺がしゃべる猫だって素直に受け入れてさあ〜、プリキュアを初めて見た時だって、あんな状況ではしゃぐんだもんなぁ〜」
ひなたがうっかり喋ってしまった自分をあっさりと受け入れ、プリキュアを見たときも怪物が暴れている状況で目をキラキラとさせるという、忘れられないあの反応も思い返す。
「そんなひなただったからこそ、俺は組みたいって思ったんだぁ・・・」
そして、一緒にプリキュアをやって、一緒に戦い、メガビョーゲンを浄化した。この時、そう思った、自分たちは最高のパートナーであると。
「ひなたってゆるいところがあるけどぉ、そこがノリ良くていいんだよなぁ〜」
「ひなたは私たちが生まれる前から、ずっと変わってない気がするな」
「ええ、そうかもしれませんね」
アスミとかすみは、ニャトランの話を聞いて、お互いにそう言い笑みを見せる。
「まあ、この俺がついてりゃ・・・って!! 話し込んでる場合じゃなかった!! そんじゃ、またニャ〜!!」
ニャトランはなぜか話を途中で打ち切って、そのまま急いでどこかへと飛んで行ってしまった。
「ああ!? ニャトラン!!!」
かすみはちゆの場所を聞こうと引き止めようとしたが、ニャトランはそのまま行ってしまった。
「二人は似た者同士ですね♪」
「あぁ・・・」
アスミは微笑みながら見送ったが、かすみは手を伸ばして切なそうに見つめていた。
二人はそのままクリニックがある敷地内へと入っていく。
「それにしても・・・今日はなんだか皆さん、お忙しそうですね・・・」
「絶対、何か隠してるな・・・さっきのペギタンとニャトランの話がやけにぎこちなかったし・・・」
「まあ、ラテ少し休憩しましょうか。かすみさんも・・・」
「むぅ・・・・・・」
かすみは二人の言動を怪しんでいて、何かこそこそやっていると睨んでいたが、アスミに諭されて納得が行かない顔をする。
グゥ〜!!
「っ!?・・・っ」
その時、かすみのお腹から音が鳴り、彼女は顔を赤く染める。
二人で敷地内のワゴンの近くにあるテラスで休憩をすることにした。
「はい、どうぞ♪」
「ありがとうございます」
「かすみちゃんには、これね♪」
「ありがとう」
注文したジュースとパンケーキを持ってきてくれたひなたの姉・めいに、アスミとかすみはお礼を言った。
「ゆっくりしていってね。さ〜て! 今日は忙しいぞ〜!!」
「っ!!」
「めいさんもお忙しそうですね・・・今日は何かあるのですか?」
「そ、そうだ・・・! ちゆやひなたも忙しそうにしてたし、でも私たちには教えてくれないし・・・」
めいの言った忙しいという言葉に反応するかすみ。彼女より先に尋ねたのはアスミだった。
「ふふっ♪ 花火大会があるのよ♪」
「花火大会・・・?」
「なんだ、それは・・・?」
「!?・・・ウゥ〜ン・・・」
アスミとかすみはきょとんとしたような顔をしていたが、ラテはその場で気まずそうに耳で顔を隠していたのであった・・・・・・。