ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

8 / 144
本編第5話がベースです。
今回は思ったほど長くなってしまったので、3部に分けます。まずは前編です。


第7話「苦悶」

ビョーゲンキングダム、どこを見渡しても人間が住めるような場所が存在しない閉鎖的な世界。ビョーゲンズにとっては快適な世界であるその場所で、今日も幹部たちが収集されていた。イタイノンとグアイワルがキングビョーゲンへと報告しに来たからだ。

 

ーーーープリキュアが3人に増えた。

 

それを聞いたキングビョーゲンは怒ることも、嘆くこともなく、ただ浮かんでいるだけだ。

 

「この短期間でプリキュアが3人になるとはね・・・」

 

「全く呆れたわよ。アタシがいない間にもう一人増えてるんだから」

 

「プリキュアが何よ。あんな小娘たち、とっととけちょんけちょんにしちゃえばいいのよ」

 

「プリキュアは単体でも浄化できるほどの力がありますねぇ。そう楽観的にはいかないんじゃないですかぁ?」

 

「・・・忘れるな」

 

各自が勝手な意見を述べる中、キングビョーゲンが厳かな口を開く。

 

「プリキュアの存在は今、我々に単独できるヒーリングアニマルがいないという証。まずは我が体を取り戻すことが先決だ」

 

「ですよねー♥」

 

明らかにプリキュアやヒーリングアニマルを警戒していない態度に、シンドイーネが調子のいい発言をする。

 

「ふん。相変わらず調子いい・・・」

 

「うるさいわね!」

 

若干不快感を隠さずに言うダルイゼンに、苛立つシンドイーネ。

 

「大体プリキュアがいたんじゃ、地球を病気に犯すことだってできないの」

 

「おばさんは、頭ん中お花畑でウジ虫でも沸いてんじゃないの?」

 

「誰がおばさんよ! 言われなくてもわかってるわよ! そんなこと!!」

 

イタイノンとクルシーナが好き勝手な暴言を吐き、シンドイーネはますますイライラする。

 

「キングビョーゲン様。このシンドイーネが気高きキングビョーゲン様のお身体を取り戻すために、今日も全力で行ってまいりまーす♥」

 

シンドイーネはそう言うと意気揚々と地球へと向かっていた。

 

「ふん」

 

「・・・なんかクルシーナ、機嫌悪くない?」

 

「さて? 私にはわかりかねますが。最初からああだったので」

 

「クルシーナが仏頂面なのはいつものことなの」

 

「だが、あんな気迫で不機嫌なあいつは初めて見るな」

 

なんだか不機嫌な様子のクルシーナに、珍しくダルイゼンがドクルンとイタイノンに問いかけるが、二人はどこ吹く風だ。それもそのはず、呼びに行った時からすでにご機嫌斜めだったのだ。

 

3人がこしょこしょ話していると・・・。

 

「おい」

 

「「「!?」」」

 

「何こそこそと話してんだよ?」

 

4人がヒソヒソしていることに気づいたクルシーナが、いつもよりも攻撃的な態度で呼びかける。3人はびくりとしたが、ドクルンは相変わらずニヤッとしている。

 

「・・・別に」

 

「クルシーナには関係ないの」

 

「俺は何も聞いていないぞ」

 

ダンッ!!!

 

「ウソつけ!! アタシがどうのこうの言ってただろうが!!」

 

右足を踏みつけるように叩きつけ、4人を睨みつけるクルシーナ。珍しくイタイノンも無表情を崩して動揺している。

 

「・・・俺、急用を思い出したから」

 

「私はあの娘の様子を見に行かないとねぇ」

 

「あっ! おい! ずるいぞ!!」

 

「逃げるな、なの!!」

 

ますます怒るクルシーナに関わりたくないダルイゼンとドクルンは適当な理由をつけ、グアイワルとイタイノンの制止の声も聞かずに去っていく。

 

そこに間髪入れずにクルシーナがグアイワルの前に瞬間移動をする。

 

「あ・・・」

 

「オラァっ!!」

 

「グヘッ!?」

 

顔面に蹴りを入れられたグアイワルは突き飛ばされて倒れる。イタイノンは「ああ・・・ああ・・・」と小さく震えていた。

 

「ハッ、憂さ晴らしにもなりやしない! 地球に行ってくる!」

 

クルシーナはそう吐き捨てると瞬間移動をして消える。

 

「ったく、なんなんだよ・・・あいつは・・・」

 

グアイワルは蹴られた頬を抑えながら不満を口にする。

 

「・・・クルシーナ、怒らせてはいけないやつ、なの」

 

「本当に一体何があったネム?」

 

イタイノンは体を抱きしめるようにして震わせており、彼女のカチューシャ姿のネムレンは明らかに様子がおかしいクルシーナの様子に心配そうに声を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すこやか市のとある建物の屋根の上。クルシーナはまだ苛立ちを隠していなかった。

 

「ったく、何よもう! あいつらと来たら!!」

 

あいつらというのは誰かはわからないが、少なくともビョーゲンズの誰かだろう。

 

「アタシの知らないところでメガビョーゲンを大きく成長させちゃうなんてさ!」

 

そう、クルシーナは自分が出撃した以上にドクルンやイタイノンが活躍していることが気に入らなかった。自分はあっさり倒されたのに、あの二人のメガビョーゲンだけはプリキュアを圧倒していた。本当に気に入らない。

 

「そんなことで怒ってたウツ」

 

「そんなことって何よッ! アタシにとっては死活問題だっての死活問題!」

 

「クルシーナはいつも生きてるって感じがするぐらいうるさいウツ」

 

ウツバットの言葉に青筋を立てたクルシーナは握りこぶしを帽子になっている彼へと叩き込む。

 

バシッ! バシッ! バシッ! バシッ!

 

「痛い! 痛い、痛いウツ!」

 

「下僕のくせにアタシに口答えしてんじゃないっての!」

 

「げ、下僕じゃないウツ〜!」

 

「あら、ごめんなさい。下僕じゃなくて、小間使いの間違いだったわ」

 

「それも違うウツ〜! あ、痛い! 体が凹むウツ!!」

 

「うるさいうるさい!!」

 

ウツバットに何度も拳を叩き込んでも、クルシーナの怒りは治まらなかった。

 

でも、ウツバットが痛がるような様子を見て、ちょっとだけ・・・満たされた。

 

しかし、本当の感情は表に出さず、あくまでも不機嫌そうな顰めた顔をする。

 

「あーあ、もう!お父様もあいつらもグータラでやんなっちゃうわ」

 

「・・・でも、それがビョーゲンズウツ。病気してるからやる気なんか起きないウツ」

 

「そういうもんなのかね・・・」

 

ため息を吐くクルシーナ。プリキュアのことを軽視しすぎだ。ヒーリングガーデンのことなんか二の次だ。確かにあそこにヒーリングアニマルたちはお父様が大方再起不能にしたからいない。でも、見習いを全員潰したわけではない。そこから降りてきたウサギとペンギンとネコはすでにパートナーを見つけていて、しかも一人一人がメガビョーゲンを浄化できる技を持っている。

 

そんな奴らを放置して地球を病気で蝕むなど、いつまでも進まないいたちごっこになること間違いなし。

 

まあでも、そんな大した作戦を思いつかないのも事実だ。一つ分かるのはプリキュアの3人がメガビョーゲンを見つけられない場所で地道に病気で蝕むことをやるしか・・・・・・。

 

「クルシーナ、僕らじゃ考えてもあれだから早く蝕みに行こうウツ。ブッ!?」

 

「さりげなくアタシを『僕ら』のカテゴリーに入れるな! わかってんだよ、言われなくても!」

 

ウツバットの言葉にムカッとしたクルシーナが拳を一発入れる。こいつは余計な一言がいつも多すぎるのだ。

 

クルシーナは屋根の上から飛び降りると、そこは建物の入り口の前。入り口の横の看板には『健やか水族館』と書かれていた。

 

「水族館ね・・・・・・」

 

クルシーナはまるで興味がないというような顔をしつつも、水族館の中へと入っていく。

 

「ガラス張りの中に魚がいるわね。どういう趣味?」

 

建物の中へとさらに入っていけば、水槽の中に水が満たされていて、魚が泳いでいるだけ。ただそれだけのシステム。別段面白いことなど一つもない。

 

まあ、魚だけではなく、ガラス張りの部屋の中にいるのはアシカやペンギンといった動物たちがいるのも見かけた。まあ、これもこれといって面白いこともないが・・・。

 

「全く、地球の人間たちってこんなもの見て何が面白いのかねぇ? っていうか、趣味悪すぎでしょ」

 

「檻の中に閉じ込めているなんて、人間って本当にひどい奴らウツ」

 

クルシーナはつまらなそうに館内を徘徊する。自分にとって面白いものなんて何一つない。人間界の娯楽っていうのはよくわからん。

 

今度は動物のショーとやらがやるというステージへと入ってみる。すると、大勢の人間たちと奥にあるのはプールのような水槽で泳いでいるイルカが。

 

イルカはプールから飛んだり、人間の男女が乗せたりするなどしている。それが行われるたびに人間たちが大喜びをしている。

 

クルシーナも年相応の少女の外見だが、喜ぶどころかつまらなそうに見ている。イルカが泳いでいるだけのショーなんか何が面白いのか。

 

やがて興味を失くしたクルシーナはショーが終わる前に、そのまま扉を開けてステージを後にするのであった。

 

「地球の人間たちの感性がわからん・・・」

 

そうぼやくクルシーナだが、頭の上の帽子になっている相棒はカタカタと体を震わせていた。

 

「ん? ウツバット? 何、カタカタ震えてんのよ?」

 

「・・・・・・信じられないウツ。あんな風に動物たちを酷使して見世物にしてるなんて・・・!」

 

ウツバットはどうやら人間がイルカに乗ったり、イルカたちにジャンプさせているのが気に入らないらしい。同じアニマルという名の動物だから肩入れしているのか?

 

まあ、クルシーナにとってはどうでもいいことだったが・・・。

 

「ふん。知らないわよ、そんなこと。生きるための餌ぐらいは与えられてんじゃないの?」

 

「餌を与えて・・・生きておかせて・・・あんな風に下僕のように酷使されるなんて・・・人間には動物の苦しみがわかっていないウツ!」

 

そのウツバットの言葉に、クルシーナの歩みが止まる。彼女の頭の中に一つの映像がフラッシュバックした。

 

ーーーー横になった自分。そして、虚空へと伸ばされる自分の手。

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナはその映像が頭から消えた後、しばらく沈黙していた。そして、拳を振り上げると・・・。

 

バシッ!!!

 

「痛っ! な、何もひどいことは言ってないウツ!」

 

ウツバットが抗議の声を漏らすも、クルシーナは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ウツ・・・?」

 

「そうね。健康的なやつには苦しみがわからないわよねぇ・・・」

 

クルシーナはそう呟くと再び歩みを進めていく。その口調はいつもと落ち着いたものだった。

 

健康的な環境など極めて不快だ。それはもちろん人間でも、この水族館の動物であっても、健康的な環境であれば苦痛など感じていないのと同じだ。

 

そう。ここの水族館の魚共は飼育員か何だか知らない人間たちの手かはわからないが、健康的すぎるのだ。自分が本当に不愉快に思えるほどに・・・。

 

最近のドクルンとイタイノンは調子に乗っている気がする。赤い卵と音符の玉がメガビョーゲンから出てきたからといって何を浮かれているのであろう。ものすごくツヤツヤ、生き生きとしていた。全くもって気に入らない。

 

幹部に八つ当たりをしても、魚なんか眺めても、相棒をいじくって遊んでいても晴れない苛立ち。これを治めるにはやはり生き物の苦痛に関する快楽が必要だ。

 

そうだーーーー今日はこの水族館を蝕んでやろう・・・ここに他の奴らが来ようと構うものか。

 

クルシーナは再び周囲を見渡していると、「深海魚コーナー」と描かれた地下につながる階段を見つける。

 

何やら不快なものを感じた彼女は地下へと降りていく。深海魚という展示のためか、地下は暗くライトが灯されている。

 

その中の大きな水槽の一つ。そこにはこれまでつまらなそうに見ていた魚よりも明らかに大きい魚がいた。そして、その底には何度も枝分かれしたような植物のようなものーーーーサンゴがあった。

 

「・・・暗いところにいるのに、生きてるって感じね」

 

まるでイタイノンのようだ。あいつもよく引きこもってゲームをしていて、そのときの彼女は何だか生き生きとしているようだ。まあ無表情なので、本当のところはよくわからんが・・・。

 

クルシーナは健康的なサンゴを見て、不敵な笑みを浮かべた。

 

右手の握りこぶしを開き、手のひらに息を吹きかける。

 

「進化しろ、ナノビョーゲン」

 

「ナーノー」

 

生み出されたナノビョーゲンは鳴き声を上げながら、水槽の底にいるサンゴに取り憑く。サンゴが徐々に病気に蝕まれていく。

 

「あぁ・・・ああああ・・・」

 

サンゴの中にいる妖精、エレメントさんが病気へと染まっていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!」

 

頭部のようなものにリュウグウノツカイのような口付きの触手、頭の下にある体にはケージのような体、そしてイカのような足を4本持つメガビョーゲンが誕生した。

 

水槽の中から現れたメガビョーゲンは手始めに、口のようになっている触手から病気の泡をばらまく。綺麗だった水槽がまるで赤いものが沈殿するかのごとく汚れ、病気に蝕まれていく。

 

水槽の中の魚たちは突然の怪物にびっくりして、どこかへと行ってしまったようだ。

 

「うわあぁぁぁー!!」

 

「か、怪物ー!!」

 

深海魚コーナーにいた客がメガビョーゲンに気づいて逃げ出していく。

 

「あーあ、どんどん汚れていくわね。まあ、アタシにとっては愉快そのものだけど」

 

人間の無力さが本当に心地いい。これで苦しんでくれるやつがいればもっといいが。

 

ここの深海魚コーナーの水槽は意外にも大きい。この中でメガビョーゲンを暴れさせて赤く染めてしまえば、メガビョーゲンも大きくなっていくはず。

 

プリキュアもここにはまだいないようだし、姿もどこにも見てない。心置きなくここ一帯を病気で蝕むことができる。

 

「メガビョーゲン、その調子でもっと蝕め」

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンはクルシーナの命令に従い、水槽の中に次々と病気をばらまいていく。

 

「・・・ウツ?」

 

帽子になったウツバットは何やら、健康的で不快なもの、でもどこか懐かしいような気配を感じた。

 

この気配、もしかしてプリキュアが・・・?

 

ウツバットは突然、クルシーナの頭の上の帽子から小さなコウモリへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いないね・・・ペギタン・・・」

 

「そりゃそうだろう!」

 

「外に出たとか・・・?」

 

「ないな〜。アイツ、怖がりだからな〜」

 

のどか、ちゆ、ひなたの3人は水族館に遊びに来た・・・はずなのだが、今はいなくなってしまったペギタンを探していた。

 

イルカショーを見たり、水槽の魚たちを見たりと、プリキュア3人での交流会だったのだが、突然ペギタンが姿を消してしまったのだ。

 

今はひなたの妙案で館内のお土産売り場を探しているのだが、見つかる気配が全くしない。

 

「おーい、ペギタ〜ン! ぬいぐるみのフリはもういいよ〜!」

 

ひなたはなぜか床に落ちていたペンギンのぬいぐるみを片付けながら、コショコショ声で呼びかける。ペギタンが見つかると大変なことになるため、慎重に探しているのだ。

 

ちゆはぬいぐるみがある場所を見つめて、何かを感じていた。

 

と、その時である・・・!

 

「クチュン!! クチュン!!」

 

「「!?」」

 

「ラテ・・・!?」

 

ラテの額のハートマークの色が変わり、くしゃみをしてぐったりとし始めたのだ。この反応は・・・!

 

しかも、ペギタンが行方知れずなこんなときに・・・!

 

「こんなときにビョーゲンズかよ・・・!」

 

「しかも、2回くしゃみしたラビ・・・!」

 

ラビリンの、2回くしゃみをした、それは要するに・・・。

 

「早くどこかで診察ラビ・・・!!」

 

ラテが突然体調を崩したということは、どこかでビョーゲンズが現れたという証。悪行を止めないとラテの体調はよくならないのだ。

 

「こっち!!」

 

プリキュアの活動をあまり見られるわけにはいかない。ひなたは隠れられる場所を見つけて、のどかとちゆも後に続く。

 

のどかが聴診器をかざして、ラテの心の声を聞いてみると・・・。

 

(ここの泡が泣いてるラテ・・・、真っ暗なところで赤い植物が泣いてるラテ・・・)

 

「ここの? もしかして、水槽の泡・・・?」

 

「赤い植物って、ここだとサンゴのことかしら? でも、真っ暗なところ?」

 

ちゆとひなたは周りを見渡してみるも、病気で染まっている水槽は見当たらないし、暗い場所もあるわけでもない。

 

「真っ暗な場所・・・あ、ここって深海魚コーナーがあったよね!?」

 

ひなたが思い出して叫ぶ。ここには深海魚の水槽も存在するが、雰囲気を演出してか、深海魚は比較的灯りを消した真っ暗な感じになっているのだ。そこのサンゴが狙われたのかもしれない。

 

しかし、メガビョーゲンを浄化するか・・・ペギタンを探すか・・・3人の心は噛み合っていなかったのである。

 

パサパサパサ

 

「・・・ラビ?」

 

羽音が背後から聞こえて振り向くラビリン。すると、暗い通路に何かが飛んでいくのが見えた。

 

それはーーーーこっちからはシルエットにしか見えなかったが、まるでコウモリのような姿・・・。

 

・・・コウモリラビ?

 

そういえば、ラビリンたちの仲間にコウモリのような見習いがいたはず・・・今は連絡も取れなくて忽然と姿を消してしまい、消息不明だ。

 

もしかして、あの姿は・・・!

 

ラビリンは突然、ひなたのフードから飛び出す。

 

「ラビリン!?」

 

「おい! どこに行くんだよ!?」

 

突然の行動にひなたとニャトランが驚く。こんな事態だというのに一体どこへ行くつもりなのか・・・?

 

「ちょっとあっちを見てくるラビ!!」

 

ラビリンは理由も言わずに、そのまま暗い通路の向こうへと行ってしまった。

 

「あ、待ってよ! ラビリン!!」

 

のどかがラビリンに向かって叫ぶも、彼女は通路の奥へと消えてしまった。

 

ラビリンは飛んでいる影を追いかける。暗い通路へと入っていくと、影が扉を開けて入っていくのを見る。

 

扉が閉じる前にラビリンは奥へと入っていく。そこは階段だった。

 

周囲を見渡すと下の階段へと影が向かっていくのが見えた。

 

「あっちラビ!」

 

ラビリンは影を見失わないように飛んでいく。一体、どこへ向かおうとしているのか・・・?

 

すると影がB1と書かれた扉を開けて入っていくのが見えた。ここも扉が閉まる前に入っていく。

 

「ラビ!?」

 

ラビリンは驚愕した。ここは真っ暗な空間ーーーーおそらく、ひなたが言っていた深海魚コーナーだろう。

 

その深海魚が飼われているであろう水槽が・・・絵の具をこぼしたかのように赤く染められていた。

 

「こ、これは大変ラビ・・・!!」

 

懐かしさを感じて影なんかを追いかけている場合ではない・・・! 早くのどかたちを連れてこないと・・・! それに、のどかはラビリンがいないとプリキュアになれない。

 

そう思ったとき・・・ラビリンの背後から風を切ったような音がしたかと思うと・・・!

 

「ムギュッ!?」

 

ーーーー突然、体が締め付けられた。それはまるで手で握られたかのよう。

 

いや、握られたかのようではない、実際に握られているのだ。それも、捻り潰されかねないほどに強く。

 

「アンタね・・・一体、どこに行ってたのよ!?」

 

怒ったような女の声が聞こえてくる。

 

「って、これウツバットじゃないわね・・・」

 

女は異変を感じたのか、握ったものを弄るかのように指で押したり、肌触りを撫でてみる。

 

疑問に思ったラビリンが背後を向いてみると、それは見知った女の顔だった。

 

「クルシーナ!!」

 

「・・・ん?」

 

ラビリンを握っている女ーーーークルシーナは握っているものをようやく認識すると不敵な笑みを浮かべた。

 

「あら? 誰かと思えばウサちゃんじゃない。こんなところで一人ぼっちで何をしているのかしらぁ?」

 

「は、話すラビ・・・! ぐっ・・・うっ・・・!」

 

ラビリンは拘束を振りほどこうともがくも、クルシーナは握り潰さんと言わんばかりに彼女を握る。

 

「もぞもぞと鬱陶しいのよ・・・大人しくしろ!」

 

「うっ・・・あ・・・あぁ・・・」

 

苦しみの声を上げるラビリン。ぎっちりと握られていて拘束を振りほどくことができない。

 

「苦しい? アッハハハ! 抵抗するから悪いんじゃない」

 

クルシーナがラビリンの苦しむ顔に笑い声を上げる中、彼女はそのまま体から力が抜けてしまった。

 

「クルシーナ? 何してるウツ・・・ウギャアァ!?」

 

そこへウツバットが現れるも、突然壁へと叩きつけられた。クルシーナがラビリンを持っていない手で吹き飛ばしたのである。

 

「お前、アタシに断りもなしにコウモリの姿に戻るなんていい度胸してるじゃない」

 

「だ、だって〜・・・懐かしい気配がしたウツ〜・・・」

 

「知らないわよ、そんなこと! 次はその体毛を毟ってやるからね!」

 

「そ、それは勘弁ウツ〜〜!!」

 

ラビリンは懐かしい声を聞き、声をした方へと視線を向けるとーーーー次にした表情は驚愕だった。

 

「モ、モリリン!?」

 

ラビリンはブルガルとシプリンのときもそうだったが、理解が追いついていない。友達なはずの彼女がなぜここにいるのか・・・?

 

「ウツ? 誰かと思えば、どこかの弱虫ウサギウツね。懐かしい気配はそれだったウツね」

 

ウツバットはめり込んだ壁から抜けると、特に何かを感じたような表情をすることもなく、淡々と喋る。

 

「嘘・・・嘘ラビ!! モリリンがビョーゲンズと一緒にいるなんて・・・!!」

 

ラビリンは友達が敵になったことを認められずに悲痛な叫びを上げる。ラビリンに、あんなに寄り添ってくれた友達だったのに・・・!

 

そんな感情もモリリンはどこ吹く風だ。何も表情を変えていない。

 

「アンタ、こいつと知り合いなの?」

 

「そうじゃないと言えば嘘になるウツ。こいつとはヒーリングガーデン以来の腐れ縁ウツ」

 

「・・・ふーん」

 

クルシーナはウツバットの答えを聞いても、全く興味がなさそうな感じだ。別にこいつのプライベートなんかどうでもいい。そもそも、ビョーゲンズにプライベートがあるのか不明だが・・・。

 

「メガビョーゲン!!」

 

クルシーナの隣にメガビョーゲンが現れる。彼女が見渡すと大体の水槽が病気で蝕まれ、赤く染まっている。

 

「大体、ここも蝕まれてきたわね」

 

「次の場所に移動するウツ?」

 

「もちろん。もっと範囲を広げないとねぇ・・・」

 

クルシーナは面白そうに言った。ドクルンとイタイノンを見返し、お父様に快楽を与えるためにはもっともっと蝕まないと・・・!

 

「モリリン! 目を覚ますラビ!! が・・・あっ・・・」

 

涙をポロポロとこぼしながら叫ぶラビリンを、クルシーナは再び強い力で握り締める。

 

「うるさいやつ、ね!」

 

「わあぁぁぁー!!」

 

苛立ったクルシーナは握っていたラビリンを放り投げる。その先にいたのは、メガビョーゲン・・・!

 

「メガー!!」

 

メガビョーゲンは口のような触手を使って、飛んできたラビリンをキャッチ、そのまま丸呑みにしてしまった。

 

触手から上の頭部へ移動するかのように膨らみが動いていく。それが頭部へと完全に収まり、ゴクンという音がメガビョーゲンからしたと思うと・・・。

 

「ラビ・・・!」

 

ラビリンがメガビョーゲンの腹の一部となっている、檻の中へと落ちてきた。彼女はグルグルと目を回していた。

 

「そこで大人しくしてるウツ。どうせここはビョーゲンズのものになるんだからウツ」

 

ウツバットは無表情で、淡々としたような声でラビリンを見下ろしていた。

 

「さてと、別の場所に行こうかしら。ウツバット、帽子に戻れ」

 

「わかったウツ」

 

ウツバットは大人しくクルシーナの帽子へと戻る。

 

そして、クルシーナとメガビョーゲンはラビリンを檻の中に閉じ込めたまま、別の場所を病気で蝕むべく移動する。

 

「モ、モリリン・・・」

 

友人の名前をつぶやくラビリン。目から涙をポロポロとこぼしながら、自分を責めることしかできないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ラビリン、どこ? どこへ行ったの?)

 

ちゆとひなたと別れたのどかはラビリンを見つけるべく、ぐったりしたラテを抱えたまま水族館の中を走っていた。ラビリンがいないとのどかはプリキュアに変身できないのだ。それだとメガビョーゲンも浄化できない。

 

「ラビリーン!!」

 

のどかは通路の向こうへと名前を呼ぶも、返事は返ってこない。

 

もしラビリンに何かあったら・・・! そんなの嫌だ・・・! 絶対に見つける!!

 

のどかはそう思いながら、暗い通路へと走っていくのであった。

 




感想・評価・指摘、お願いしまーす!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。