ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです!
気球大会の続きですが、かすみに再び異変が・・・・・・。


第82話「我慢」

 

『さあ!午後の競技がスタートして、気球が離陸し始めました!!』

 

アスミをカズたちのチームのメンバーに加えた気球大会の午後の部、アナウンスが流れると共に多くの気球が再び空へと飛び立った。アスミはカズたちと同じジャケット着て、ラテ共にチームメイトとその様子を見つめていた。

 

「よし!行こう!!」

 

浮間の言葉を合図に、アスミたちはゴールへと先回りをしようと移動し始めた。

 

そして、のどかたち4人は先にゴール近くの橋の上で、飛んでくる気球を見つめていた。

 

「アスミンってば大丈夫かな・・・?」

 

「大丈夫。だってアスミは風のエレメントの力から生まれたんだもの」

 

「正確にいうなら、地球が生み出した風の力ってところかな・・・私と同じ人間じゃないし、大丈夫だと思うぞ」

 

「頑張って・・・アスミちゃん・・・」

 

のどかたちはみんなアスミを応援しながら見守っていた。

 

そんなアスミは車で移動しながら、カズが乗る気球と空の両方を見ていた。

 

アスミは鳥が上へと上がっていく様子を見て、何かが見えたようだが・・・・・・。

 

その近くで、不穏なある影が動いていた。

 

「はぁ・・・今日のここはやけに人間が多いの・・・」

 

「空に気球という乗り物を飛ばす大会をしてるからネムね」

 

イタイノンがげっそりしたような顔をしながら、空に浮かぶ気球を見上げていた。

 

「ふん、くだらないの。そんなしょうもないお祭り潰してやるの・・・!!」

 

イタイノンは不機嫌そうな声を出しながら、素体となるものを探そうとする。

 

「熱い空気を感じる・・・俺の実験にぴったりだ」

 

「・・・?」

 

そこへ声がしたかと思い振り向くと、グアイワルの姿があった。

 

「グアイワル・・・?」

 

「んぅ? その声はイタイノンか?」

 

ボソリと呟くイタイノンに気づいたグアイワルがそちらを振り向く。

 

「実験って、ビョーゲンキングダムでやってたあれ、なの?」

 

「そうだ。水を黒くすれば黒くなる、黒くなったものを黒くすればさらに黒くなる、つまりはメガパーツをたくさん入れれば、メガビョーゲンも強くなっていくということだ!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

グアイワルの主張にイタイノンは呆れたように見ていた。

 

「成長することが強いとは限らないの。デカくても使えなきゃ役に立たないのと一緒なの」

 

「ふん、言っているがいい!! お前もこの俺のほうが正しかったと言うことになるぞ!!」

 

「・・・浄化されてもお断りなの。忠告はしてやったの」

 

尊大な態度のグアイワルに、イタイノンはそれだけ吐き捨てると彼から離れた場所に移動する。

 

会場がある場所へと歩いていくと、車や人がどんどんとイタイノンとは反対方向に移動していくのが見えた。

 

「なんだか人が向こうに移動しているネム」

 

「ということは、この方向に歩いていけば、人はいないの」

 

イタイノンは自分の歩く方向に人がいないと確信してどんどん歩いていく。

 

ようやく河川敷の下の会場と思われる場所を見ると人はいるが、入りづらいというわけではない。イタイノンは河川敷の下へと降りていく。

 

キョロキョロと辺りを見渡しながら、素体となるものを探していく。

 

「気球なんかは風に流されて役に立たなくなるの。だから、それ以外にするの」

 

「風に流されたらおしまいネムね」

 

イタイノンは敢えて気球を狙わずに、他の使えそうな素体を周辺を歩いて探していく。

 

すると・・・・・・。

 

「っ! あれならいいの・・・!」

 

イタイノンがそう言いながら目をつけたのは、アウトドアでバーベキューを楽しんでいる家族の姿、その中にあるものだ。

 

その家族は離れてアウトドアテーブルの椅子に着き、食材が焼かれるのを楽しみに待っている。イタイノンはその隙に炭が燃えているバーベキューコンロに近づく。

 

「キヒヒヒヒ・・・・・・」

 

イタイノンは不敵な笑みを浮かべると、両袖を払うかのような動作をして黒い塊のようなものを出現させ、右手を突き出すように構える。

 

「進化するの、ナノビョーゲン」

 

「ナノナノ〜」

 

生み出されたナノビョーゲンはバーベキューコンロの下にある炭に取り憑く。燃えている炭が病気へと蝕まれていく。

 

「・・・!?・・・!!」

 

石炭に宿るエレメントさんが病気へと蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョーゲン!!」

 

バーベキューグリルのような黒い胴体に炭の棒のような両腕と車輪のような3本足、頭に宝石のような飾りのついたメガビョーゲンが誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなビョーゲンズたちの活動に気づいていないアスミ達は、車でゴール付近へと到着した。

 

「ターゲットの少し手前についた。風はね・・・ちょっと今、見てるから待ってて。どう?」

 

「う〜ん・・・よくわかんない・・・。やり直してみる」

 

チームメイトの浮間と吹田が風を読むのに苦戦する中、アスミは一人近くの木々や草むらを見渡していた。

 

その頃、カズの乗る気球はゴール近くに来てはいるものの、午前中と同じように進路からずれ始めていた。

 

「進路がずれてきてる・・・」

 

不安な表情を浮かべるカズ。

 

『・・・そのまま進んでください』

 

と、そこに無線からアスミからの強い声が聞こえてきた。

 

「でも、それじゃあもっと外れて・・・?」

 

「大丈夫。この風は、あの後あちらのターゲットへ向かいます」

 

「ワン!」

 

力強く答えるアスミ。カズはそんなあすみを信じて気球を調整し始め、浮間たちもアスミを信じるように互いに頷きあった。

 

気球はしばらく進んでいたが、逆にゴールから離れて行ってしまっていた。

 

「やっぱりダメか・・・くっ・・・」

 

また午前中と同じように失敗する・・・カズがそう諦めかけた、その時だった・・・!!

 

ビュゥゥゥゥ!!!

 

「うわぁ!? か、風が・・・!?」

 

カズが思わず帽子を飛ばされないように抑えるほどの風が吹く。すると、気球が進路から戻るように動き始めたのだ。

 

『絶対に・・・私もラテも、勝ちを諦めませんので・・・!!!!』

 

「・・・うん、よし!」

 

無銭からのアスミの声に気持ちを取り戻したカズは、ゴールに印をつけるための準備を始めた。

 

その時だった・・・!!

 

「クチュン!! クチュン!!」

 

「っ、ラテ!?」

 

「クゥ〜ン・・・」

 

ラテが2回くしゃみをした後、ぐったりし始めたのであった。

 

一方、のどかたちは・・・・・・。

 

「近づいてきた!!」

 

「よし!行けるぞ!!」

 

カズたちの気球がゴールに近づいてきたことに、のどかやかすみが気づく。

 

「頑張れ〜!!」

 

「頑張れ〜!!!!」

 

「頑張れぇ〜!!」

 

のどか、かすみ、ひなたは声援を送り始める。

 

「よし来い・・・来い!!」

 

ゴール付近で待つ浮間も声援を送りながら、カズが紐のついた印を投げるのを待っている。

 

「頑張れ〜!! 頑張ーーーー」

 

ドクン!!!! ドクン!!!!

 

「っ!?」

 

かすみは声援を送り続けていたが、その最中に何か気配を感じ取って目を見開く。

 

「かすみ? どうしたの?」

 

「泣いている声が・・・」

 

急に声援を止めたかすみが気になって声をかけたちゆに、かすみがそうつぶやく。

 

そして、カズがゴールに狙いを定めて袋を投げようとした、その瞬間・・・!!!!

 

ドカァァァァァァン!!!!!

 

「「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」

 

「「「!?」」」

 

突如離れたところから爆発が起こり、驚いてのどかたちや皆がその方向を振り向く。

 

立ち込めた煙の中が晴れていくと・・・・・・。

 

「メガァ〜〜」

 

気球のような姿にツノの生えたメガビョーゲンが姿を現し、それを見ていた人々はその場から逃げ始めた。

 

「ビョーゲンズよ!!」

 

「めっちゃいいとこだったのに!!!」

 

「っ〜〜!!!」

 

現れたメガビョーゲンにひなたやかすみが怒りを露わにしていると、そこへたけしとやすこが駆けつけてきた。

 

「大変だ!!」

 

「のどかはみんなと先に逃げて!!」

 

「わかった・・・!」

 

やすこの言葉を受けて、のどかはそう答えるとみんなと一緒に場所を移動し、人のいない橋の下へと避難する。

 

「みなさん!!」

 

「アスミちゃん!!」

 

そこへアスミもラテを連れて合流する。

 

「メガビョーゲンは二体いるぞ!! 泣いている声が2ヶ所聞こえる!!」

 

「わかりました。行きましょう!!」

 

かすみの言葉にアスミはそう答えると、みんなは彼女の言葉を合図に変身ステッキを持つ。

 

「「「「スタート!」」」」

 

「「「「プリキュア、オペレーション!!」」」」

 

「エレメントレベル、上昇ラビ!!」

「エレメントレベル、上昇ペエ!!」

「エレメントレベル、上昇ニャ!!」

「エレメントレベル、上昇ラテ!!」

 

「「「「キュアタッチ!!」」」」

 

ラビリン、ペギタン、ニャトランがステッキの中に入ると、のどか、ちゆ、ひなたはそれぞれ花のエレメントボトル、水のエレメントボトル、光のエレメントボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。

 

アスミは風のエレメントボトルをラテの首輪にはめ込む。すると、オレンジ色になっているラテの額のハートマークが神々しく光る。

 

のどかたち3人は、肉球にタッチすると、花、水、星をイメージとしたエネルギーが放出され、白衣のような形を形成され、それを身にまといピンク、水色、黄色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

そして、髪型もそれぞれをイメージをしたようなものへと変わり、のどかはピンク、ちゆは水色、ひなたは黄色へと変化する。

 

ラテとアスミは手を取り合うと、白い翼が舞い、ラテが舞ったかと思うとハートの中から白い白衣のようなものが飛び出す。

 

その白衣を身に纏い、ラテが降りてきたかと思うとハープが飛び出し、さらにアスミは紫色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

衣装にチェンジした後、ハープを手に取り、その音色を奏でる。

 

キュン!

 

「「重なる二つの花!」」

 

「キュアグレース!」

 

「ラビ!」

 

のどかは花のプリキュア、キュアグレースに変身。

 

キュン!

 

「「交わる二つの流れ!」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

 

「ペエ!」

 

ちゆは水のプリキュア、キュアフォンテーヌに変身。

 

キュン!

 

「「溶け合う二つの光!」」

 

「キュアスパークル!」

 

「ニャ!」

 

ひなたは光のプリキュア、キュアスパークルに変身した。

 

「「時を経て繋がる、二つの風!」」

 

「キュアアース!!」

 

「ワン!」

 

アスミは風のプリキュア、キュアアースへと変身した。

 

「「「「地球をお手当て!!」」」」

 

「「「「ヒーリングっど♥プリキュア!!」」」」

 

4人が変身を完了すると、かすみが声をかける。

 

「私はもう一体のメガビョーゲンの方に向かうから、みんなは現れたメガビョーゲンを対処してくれ!!」

 

「一人で大丈夫なの・・・!?」

 

「私は平気だ。少しでも病気の進行を食い止める!! だからそっちも!!」

 

心配するひなたをよそに、かすみはステッキを持ちながら力強い声で言う。

 

「わかった・・・!! 気をつけてね!!」

 

「そっちも油断するなよ!!」

 

お互いに激励の声を掛け合いながら、かすみは現れているであろうもう一体のメガビョーゲン、そして4人は現れたメガビョーゲンの前に立ちはだかるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メッ、ガガガガガガガァ!!!」

 

「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

イタイノンが生み出したメガビョーゲンは口から石炭を発射すると、周囲に着弾させて赤い靄へと蝕ませていく。怪物の姿を見た人々は悲鳴を上げながら、逃げ出し始める。

 

「キヒヒヒヒ・・・人間の悲鳴、久しぶりに食らえるの・・・!」

 

イタイノンはそれを河川敷の上から眺めながら、不敵に笑っていた。

 

「メガガガ!! メガガガガガ!!!!」

 

「うわぁっ!!」

 

「嫌ぁっ!!」

 

メガビョーゲンは石炭を逃げ惑う人々にも発車し、恐怖を煽りながら地平を蝕んでいく。

 

「やめろぉぉっ!!!!」

 

「メガァ・・・??」

 

そこへ叫び声がしたかと思うと、何かが飛び出しメガビョーゲンの顔面に蹴りを加える。しかし、あまりダメージを受けた様子はない。

 

イタイノンがその影を見ると、脱走者ことかすみだった。

 

「随分と来るのが早いの・・・」

 

イタイノンはいつもより早く妨害するものが現れたことに顔を顰める。

 

「もう少しで勝てそうだったのに・・・邪魔をするなんて許さない!!!!」

 

かすみはいつにも増して険しそうな表情をしながらメガビョーゲンを睨む。

 

「ん? 今日はお前一人なの? プリキュアどもはいないの?」

 

イタイノンは脱走者しか来ていないことに見下したような笑みを浮かべる。グアイワルがメガビョーゲンを発生させているのは先ほどの轟音から明らかだ。でも、敢えてバカにするために聞いて見た。

 

「こんなメガビョーゲンぐらい、私一人で十分だ!!!」

 

「ふん・・・メガビョーゲン、やれなの」

 

「メッガァ!!!!」

 

やけに感情的になっているかすみに、イタイノンは不機嫌さを隠そうともしない口調でメガビョーゲンに指示を出す。メガビョーゲンは炭の棒のような片手をかすみに振るう。

 

「ふっ!! はぁぁぁぁぁっ!!」

 

「メガ・・・?」

 

かすみは飛んで交わした後に、棒の上に乗るとそこから駆け上がるように迫り、メガビョーゲンの顔面にパンチを食らわせて飛び退く。しかし、メガビョーゲンはビクともしていない様子。

 

「メガァ!!!」

 

メガビョーゲンは地面に着地したかすみに向かって石炭を吐き出す。

 

「っ!! はぁっ!!」

 

「メガァ・・・??」

 

かすみは飛んで交わし、今度は反対側に飛び移るとメガビョーゲンの肩に蹴りを繰り出して飛び退く。それでも、メガビョーゲンにはビクともしていない様子。

 

「うっ・・・硬いっ・・・!!」

 

かすみはパンチした片手やキックした足に痛みを感じて顔を顰めていた。メガビョーゲンが思ったより硬かったのだ。

 

「メガガガガガガ!!!!」

 

「っ、はぁっ!!」

 

かすみはメガビョーゲンが吐き出す石炭をステッキから出すシールドで防ぐ。

 

「メェ〜〜〜ガァッ!!!!」

 

「ふっ!!!」

 

メガビョーゲンが足元の車輪を動かしてこちらへと駆け、炭のような両手を振るう。かすみは空中でとっさに翻して交わし、逆に伸ばして来た腕を掴む。

 

「ふっ・・・んんんんんん〜〜〜〜っ!!!!」

 

「メ、メガァ・・・!?」

 

かすみは顔を赤くしながらも地面を踏ん張って力を入れ、メガビョーゲンを持ち上げる。

 

「はっ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「メガァ〜〜〜!?」

 

そして、すぐに開けた場所へと放り投げ、メガビョーゲンは背中から地面へと叩きつけられる。

 

「なんて馬鹿力なやつなの・・・?」

 

「メガビョーゲン、負けそうネム・・・」

 

イタイノンは重量はありそうなメガビョーゲンをかすみが持ち上げたことに驚く。

 

「少し手を貸してやるの・・・」

 

ため息をつきながらそう言うと、イタイノンは倒れているメガビョーゲンの側へと移動する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・っ? させないぞ!!」

 

息を整えているかすみはイタイノンに気づいて彼女の行動を阻止しようとする。その片手にはメガパーツが握られていた。

 

「・・・ふんっ!」

 

「っ!? うっ・・・!!」

 

イタイノンはメガパーツを持っていない手で電撃を放ち、駆け出したかすみはそれに動きを止めてしまう。

 

その隙にイタイノンはメガパーツをメガビョーゲンに押し当てて埋め込む。

 

「メガ!? メガガガガガガガガガガガァッ!!!!!!」

 

メガビョーゲンが苦しみ出すも、その体は禍々しいオーラに包まれていく。

 

「メェ〜ガァ〜!!!!」

 

オーラが晴れるとメガビョーゲンは先ほどよりも数倍に巨大化した。

 

「っ!!」

 

「メッガァ!!!」

 

かすみが驚く間も無く、メガビョーゲンは両手の炭のような棒を燃えるように赤くしていくと、地面へ叩きつけた。

 

「っ!? あぁぁっ!!!」

 

地面から熱が噴き出しながら迫り、かすみは飛んで交わそうとするも、飛んだ足元から熱風が襲い、吹き飛ばされる。

 

「っ・・・!!」

 

「メガガガガガガガ!!!!」

 

かすみはすぐに体制を立て直して着地するも、メガビョーゲンは大粒になった石炭を口から乱射して、周囲に着弾させる。河川敷の周囲がさらに病気へと蝕まれていく。

 

「っ、やめろっ!!!!」

 

かすみは怒りの叫びを上げながら、メガビョーゲンへと駆け出していく。

 

「メェ〜ガァッ!!!!」

 

メガビョーゲンは赤い炭のような棒を地面へと叩きつける。熱風を地面から噴き出させながら迫るも、かすみは足元から大きく噴き出す瞬間を狙ってジャンプで飛び上がる。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

かすみは空中での回転で勢いをつけながら、黒いステッキを振りかぶる。

 

「っ、なにぃ!?」

 

「メガァ!!!」

 

「うわぁぁっ!!!!」

 

攻撃は金属のような音がしただけで聞いておらず、動揺した隙を突いてメガビョーゲンは体を回転させてかすみを吹き飛ばした。

 

地面へと叩きつけられ、転がっていくかすみ。

 

「ぐぅぅ・・・っ!?」

 

「メガガ!!!!」

 

痛みに呻いているかすみに目掛けて、メガビョーゲンが大粒の石炭を放ち、爆発を起こした。

 

煙が晴れるとかすみは傷つきながらも、立ち上がろうとしていた。

 

「キヒヒ・・・やっぱりお前相手にはメガパーツで一つで十分なの」

 

イタイノンはかすみの様子を見て不敵な笑みを浮かべる。

 

「うっ・・・よくも・・・よくも邪魔してくれたな・・・勝てそうだったのに・・・!!!!」

 

かすみはメガビョーゲンを暴れさせたイタイノンに怒りの言葉を吐く。

 

「勝てそう? 気球大会のことなの? あんなものやったって意味なんかないの」

 

イタイノンは気球大会のことを冷酷に吐き捨てる。

 

「ふざけるな・・・!!! カズさんたちが、せっかくチームの気持ちがまとまって・・・いいところを見せるところだったのに・・・お前たちが全部邪魔したんだ・・・!!!! 許せない!!!!」

 

「チームなんかくだらないの。足を引っ張って恥をさらすくらいなら、一人でいたほうがマシなの」

 

かすみは怒りの感情が膨れ上がっていくが、イタイノンはそれを否定して主張する。

 

「はぁ〜っ・・・はぁ〜っ・・・はぁ〜っ・・・!!!」

 

かすみは怒りの感情が落ち着かずに息が乱れてきており、黒いオーラが纏い始める。それはまるであのドックランの時のようなよくわからない黒々とした感情・・・・・・。

 

しかし、自身がネガティブな感情に駆られていることに気づいたかすみはハッとした表情になると、首を振って落ち着かせようとする。

 

「ダ、ダメだ・・・!! あの力を使ったら・・・!!!」

 

ポチットの時みたいに、また怖がられてしまう・・・そんな恐怖心からかすみは感情を落ち着かせようとすると、黒いオーラが薄まっていく。

 

「どうしたの? もっと怒ればいいの。一人でいれば、好きなだけ怒ることだってできるの」

 

イタイノンはかすみを挑発して怒らせようとするが、かすみは耳を通さずに心を落ち着かせようとしていた。

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・!!」

 

ちゆに緊張したときや我を忘れそうになった時は、息を吸って吐いてを繰り返す、こうすることで気持ちを落ち着かせることができると教わったかすみは、それを試して感情に駆られないようにする。

 

「・・・ふん。メガビョーゲン、こいつは無視して会場をめちゃくちゃにしてやるの」

 

「メェ〜ガァ〜!!」

 

イタイノンはかすみの様子にすっかり興が醒め、メガビョーゲンにもっと周囲を病気に蝕むように指示を出す。

 

「ふぅ・・・っ!? やめろって言ってるだろ!!!!」

 

かすみはそれを聞くと、怒りの叫び声を上げながら駆け出すが、途中で立ち止まってしまう。また自身の体の黒いオーラが濃くなっていったからだ。

 

「うっ・・・ダ、メ・・・あの力は、ダメ、だ・・・!」

 

胸を手で抑えながら飲み込まれそうになる力に苦悶しながらも、必死で押さえつけようとするかすみ。

 

「何を我慢しているの? 怒りたければ怒ればいいの。溜め込んだって苦しくなるだけなの」

 

「う、あ・・・!」

 

「・・・・・・・・・」

 

イタイノンは再度挑発して煽ろうとしたが、かすみは苦しそうにしていた。イタイノンはその様子をしばらく見ていたが、その場から瞬間移動をすると・・・・・・。

 

バチバチバチ・・・!!!

 

「・・・ふんっ」

 

ドゴォッ!!!!

 

「っ!?」

 

かすみの前に瞬時に現れ、彼女の腹部に雷撃を含めた赤いオーラを纏わせた鉄拳を食らわせる。彼女の体の中に赤いオーラが注ぎ込まれていく。

 

「あっ・・・カ、ハッ・・・!」

 

かすみは腹部への激痛に大きく息を吐き出すと、そのまま膝から崩れ落ちて地面へドサリと倒れてしまった。

 

「ぅぅ・・・・・・」

 

無防備なところにダメージを受けたのか、かすみはビクンビクンと震わせながら地面に倒れ伏し、その場から立ち上がることができない。

 

「・・・体がガラ空きなの。我慢してるからそうなるの」

 

イタイノンは倒れたまま立ち上がらないかすみを見下ろしながら吐き捨てる。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ぁ・・・ぁ・・・・・・」

 

「・・・ちょっとやり過ぎたの。まあ、こいつが我慢してるのが悪いの」

 

かすみが弱々しい声を上げながら、痛みなのか体をビクンビクンと痙攣させている。イタイノンはその様子をしばらくの間見下ろした後、頬をぽりぽりと掻きながら、かすみの近くにズカズカと歩き寄る。

 

倒れているかすみを片手で持ち上げて担ぎ上げる。

 

「・・・風がなんだか不愉快なの」

 

少し強くなってきた風に不快感を口にしながら、自身の生み出したメガビョーゲンの元へと歩いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、グアイワルはメガパーツを3個投入させた巨大なメガビョーゲンと交戦中のプリキュアたちのところには突風が吹き始めていた。

 

気球型のメガビョーゲンはふわふわと浮き始め、風に流され始めた。

 

「風がメガビョーゲンを動かしています」

 

「っ! アース、お願い!!」

 

「承知しました」

 

アースは頷くとアースウィンディハープを取り出し、弦を軽く弾いて音を奏でる。すると、風のリングが飛び出し、アースはそれを手に取る。

 

さらに手に取った風のリングをメガビョーゲンのサイズに合わせて大きくする。

 

「はぁっ!!」

 

そして、風のリングを投げてメガビョーゲンに引っかかるように足元に仕掛けると、そこから強烈な竜巻が吹き荒れ、メガビョーゲンを包みながら高く浮かび上がらせた。

 

「メガァ〜!?」

 

「あぁ〜っ!? 踏ん張れ!! 踏ん張るんだ!!」

 

動揺したグアイワルは檄を飛ばす。

 

「ふっ!!」

 

「メガァ〜〜〜〜〜!?」

 

アースが弦を弾いて、右手を空へと掲げるとその動きに合わせてメガビョーゲンが空中へと飛ばされ、地面へと叩きつけられた。

 

「いっちゃえ! アース!!」

 

アースはスパークルの言葉に無言で頷くと浄化の構えに入る。

 

「アースウィンディハープ!」

 

アースはそのまま風のエレメントボトルをハープにセットする。

 

「エレメントチャージ!!」

 

アースはハープを手に取って、そう叫ぶとハープの弦を鳴らして音を奏でる。

 

「舞い上がれ! 癒しの風!!」

 

手を上に掲げると彼女の周りに紫色の風が集まり始め、ハープへとその力が集まっていく。

 

「プリキュア! ヒーリング・ハリケーン!!!」

 

アースはハープを上に掲げてから、それを振り下ろすとハープから無数の白い羽を纏った薄紫色の竜巻のようなエネルギーが放たれる。

 

そのエネルギーは一直線にメガビョーゲンへと向かい、直撃する。

 

竜巻のようなエネルギーはメガビョーゲンの中で二つの手へと変化し、空気のエレメントさんを優しく包み込む。

 

メガビョーゲンをハート状に貫きながら、光線はエレメントさんを外に出す。

 

「ヒーリングッバイ・・・」

 

メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていく。

 

「お大事に」

 

エレメントさんが気球の中に戻ると、このメガビョーゲンが蝕んだ場所が元に戻る。

 

「ちぃっ!! まだ諦めんぞ!!」

 

グアイワルは悔しそうに言うと、その場から姿を消していく。

 

「あとはかすみちゃんのところにいるメガビョーゲンだけだよ!」

 

ドォォォォン!!!!

 

「「「「!!」」」」

 

グレースの言葉に皆は頷いて駆け出して行こうとすると、テントのあった会場のあたりから爆発音が響き渡る。

 

「あれは・・・!?」

 

「もしかして、もう一体のメガビョーゲンが・・・!?」

 

「嫌な予感がします・・・!!」

 

メガビョーゲンが起こした爆発であると察知したプリキュアたち。その中でもアースは不穏な気配を感じてそう呟いた。

 

「あ・・・! アース!!」

 

アースはスパークルが叫ぶのも気に留めずに、一人メガビョーゲンの元へ走り出していく。

 

「私たちも行きましょう!!」

 

フォンテーヌの言葉に、グレースとスパークルは頷くと彼女の後を追って駆け出していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その爆発音が起きた場所では・・・・・・。

 

「メガガガガガガガガガ!!!!」

 

メガビョーゲンが大粒の石炭を口からマシンガンのように吐き出しながら、周囲を病気へと蝕んでいた。

 

「メガガガガガガガガガガ!!!!」

 

さらに川の方にも石炭を吐き出していき、赤い液体へと染めていく。

 

「ふむ・・・邪魔が入ったけど、メガビョーゲンは順調なの」

 

イタイノンは丘の上からその様子を見ていた。その側にはメガビョーゲンとイタイノンの攻撃で意識を失ったかすみの姿がある。

 

「ぅぅ・・・・・・」

 

かすみは意識がないにも関わらず、呻き声を漏らしており、体もフルフルと震わせていた。

 

「こいつ、本当に眠ってるの? さっきから声はしてるし、体が動いてるの」

 

イタイノンはかすみが本当に意識を失っているのか怪しんでいた。先ほどから彼女の体から自分と同じ赤いオーラに包まれていて、それを拒絶するかのように体が動いている。

 

「かすみさーん!!!!」

 

「!!」

 

そこへかすみを呼ぶ声が聞こえてきたかと思うと、イタイノンが振り向くと紫色のプリキュアーーーーキュアアースがこちらに駆けてくるのが見えた。

 

「っ!? これは・・・!?」

 

足を止めたアースが河川敷のあまりの惨状に驚いて言葉を失う。

 

「嘘・・・会場が・・・!?」

 

「あんなに病気が広がってる・・・!!」

 

そこへ後を追ってきたスパークルとフォンテーヌがその惨状を見て絶句する。

 

「キヒヒヒ・・・随分と遅かったの、プリキュア」

 

「イタイノン!!」

 

イタイノンが笑いながら声をかけると、プリキュアたちがこちらを振り向く。

 

「!? かすみちゃん!!」

 

かすみがその側で倒れているのを見て、叫ぶグレース。

 

「こいつ、今日は調子が悪そうだったの。メガビョーゲンの相手には全くならなかったの」

 

「うっ・・・」

 

イタイノンはかすみを足で踏みつけながら、不敵な笑う。

 

「かすみさんに酷いことをしないでくださいっ!!」

 

「・・・ふん」

 

友人を足蹴にされたアースが怒りの声を上げるとイタイノンに飛びかかろうとする。しかし、イタイノンはパンチが到達する前に瞬間移動をして、かすみから離れる。

 

「やれなの、メガビョーゲン」

 

「メガガガガガガ!!!!」

 

メガビョーゲンの側に移動したイタイノンは指示を出すと、メガビョーゲンはアースとかすみに目掛けて石炭を吐き出す。

 

「っ!!」

 

「「「ぷにシールド!!」」」

 

グレースたち3人はアースの前に飛び出すと、肉球型のシールドを展開して石炭を防ぐ。

 

「アースはかすみちゃんをお願い!!」

 

「メガビョーゲンはあたしたちに任せて!!」

 

「・・・わかりました」

 

アースが返事をすると、グレースたち3人はメガビョーゲンへと立ち向かっていく。

 

「はぁっ!!」

 

「メガ・・・?」

 

「たぁっ!!」

 

「メガァ・・・!?」

 

「やぁっ!!」

 

「メガァ〜!?」

 

フォンテーヌがメガビョーゲンに顔面に蹴りを入れるも、ビクともしなかったが、そこへスパークル、グレースの順に立て続けに蹴りを入れ、よろけたメガビョーゲンは地面に倒れる。

 

「っ・・・やっぱり3人集まると厄介なの」

 

イタイノンはその様子を見て、顔を顰める。紫のやつは脱走者を見ているから動けないとして、それでも3人揃ってメガビョーゲンを攻撃されるのは厄介だ。

 

「!!・・・そうだ、ついでにあれもやってみるの」

 

ピンクのやつと青いやつから感じる微量の自分と同じ気配、そこからクルシーナとドクルンが何かをやっていたことを唐突に思い出すと、イタイノンは自身のポニーテールを前に出して見つめる。

 

キュン!

 

「キュアスキャン!!」

 

スパークルはメガビョーゲンが倒れている隙に、ステッキの肉球を一回タッチしてメガビョーゲンに向ける。ニャトランの目が光り、メガビョーゲンの中にいるエレメントさんを見つける。

 

「宝石のエレメントさんが、右腕のあたりにいたぞ!!」

 

エレメントさんの居場所を特定したものの、その間にメガビョーゲンが立ち上がる。

 

「メェ〜ガァ!!」

 

メガビョーゲンは赤く燃えた右手を地面へと叩きつける。地面から熱が吹き出しながらグレースたちに迫る。

 

「っ!!」

 

グレースたちの地面から熱風が放出され、寸前で空中へと逃げる3人。

 

「ここは氷のエレメントで動きを止めるペエ!!」

 

「ええ!! 氷のエレメント!!」

 

ペギタンの助言を受けて、フォンテーヌはステッキに氷のエレメントボトルをセットする。

 

「はぁっ!!」

 

「メ、メガァ・・・??」

 

ステッキから冷気を纏った青い光線が放たれ、メガビョーゲンに直撃し氷漬けになっていく。

 

「よし!! 今のうちに浄化を!!」

 

グレースたち3人はそのまま浄化技の構えに入ろうとしたが、そこへイタイノンが背後から姿を表す。

 

「そうはさせないの!!」

 

「「「きゃあぁぁぁっ!!!」」」

 

イタイノンは片手からグレースたちに向かって雷撃を放って吹き飛ばす。

 

「っ、イタイノン・・・!!」

 

「私が相手になってやるの・・・!!」

 

体に電気を帯電させたイタイノンはニヒルな笑みを浮かべながらそう言うとその場から姿を消し、フォンテーヌの横へといつの間にか姿を表す。

 

「っ!?」

 

「っ!!!」

 

「あぁぁぁぁ!?」

 

そのまま電気を纏った掌底をフォンテーヌの腹部に食らわせて吹き飛ばす。

 

「「フォンテーヌ!!」」

 

「よそ見してる場合なの・・・?」

 

「「っ!!」」

 

フォンテーヌを心配するグレースとスパークルの間に、イタイノンが現れる。

 

「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

イタイノンは両手を二人に向けて広げると、そのまま手から雷を纏った赤く禍々しいエネルギー波を放って吹き飛ばす。

 

「はぁ・・・はぁ・・・うぅぅ・・・!?」

 

フォンテーヌは腹部の痛みに呼吸が乱れながらも立ち上がるも、氷漬けになっていたメガビョーゲンから湯気が立っているのが見えた。

 

ピキピキピキピキ・・・パリーン!!!

 

「メガァ〜!!!!」

 

そして氷にヒビが入った後、体中が熱で燃えるように赤く染まったメガビョーゲンが氷漬けから解放されてしまった。

 

「そんなっ・・・!!」

 

「氷のエレメントの力が・・・!!」

 

氷漬けから脱したメガビョーゲンに動揺するフォンテーヌとペギタン。

 

「メガガガガガガァ!!!」

 

その隙をついてメガビョーゲンが赤く燃えた大粒の石炭を吐き出す。

 

「っ!! フォンテーヌ!!」

 

イタイノンの攻撃からなんとか立ち上がったグレースはフォンテーヌの前に飛び出す。

 

「ぷにシールド!!」

 

「うっ・・・うぅぅ・・・あぁぁぁっ!!!」

 

「きゃあぁぁぁ!!!!」

 

グレースは肉球型のシールドを展開するも、体中に熱を帯びて強力になった石炭攻撃の前に、シールドは3発で粉砕され、フォンテーヌ共々爆発に巻き込まれてしまう。

 

「みなさん・・・!!!」

 

アースはその戦いの様子を見て、3人を心配する。

 

「うっ・・・ぅぅ・・・」

 

「!!」

 

そんな中、アースが体を起こしながらも見ているかすみが苦痛に歪めながら呻き声を上げる。その体からは赤いオーラが放出されていた。

 

「うぅぅ・・・嫌だ・・・嫌だぁっ・・・私は、あの力を使いたくない・・・!!」

 

「かすみさん!! かすみさん!! 目を覚ましてください!!!!」

 

アースが必死に呼びかけるも、苦しむように唸るかすみの体からは赤いオーラが放出され続け、髪が金髪から銀髪へと点滅を繰り返しているのであった・・・・・・。

 

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