ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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原作第28話がベースになります。
この話を機にかすみの物語が大きく変わったり、今まで伏線にしていたいろんな謎が明らかになっていくと思います。


第84話「慰め」

 

「うっ・・・うぅぅ・・・」

 

苦しい・・・・・・体中が激痛に苛まれる・・・・・・。

 

体が動かなくなっていくのがわかる・・・・・・。

 

グレース!!

 

ラビリンの声だ・・・・・・。

 

「うっ・・・うぅぅ・・・」

 

体を動かそうにも、まるで固まったかのように動かない・・・・・・。

 

苦しい・・・・・・呼吸もうまくできない・・・・・・。

 

グレース!!

 

ラビリンの声がまた聞こえてくる・・・・・・。

 

「うぅぅぅ・・・・・・」

 

でも、動かない・・・・・・体が動かない・・・・・・。

 

グレース!! グレース!!!!

 

ラビリンの声がまた聞こえる・・・・・・今度は何回も・・・・・・。

 

でも、立ち上がることができない・・・・・・体の中を何かが抉っているような感じだ・・・・・・。

 

・・・あれ? こんなこと・・・こんな感覚・・・前にもあったような・・・・・・。

 

浮かぶのは、一人で遊んでいたあの花畑での出来事・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・ああ、そうか・・・そうなんだ・・・・・・。

 

・・・・・・私の病気はーーーー。

 

・・・・・・????

 

なんだか、見たことのある女の子の姿が・・・・・・。

 

あれは・・・・・・しんら、ちゃん・・・??

 

なんでしんらちゃんが、私の前に・・・・・・??

 

・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のどかがビョーゲンズたちに襲われる数分前・・・・・・。

 

気球サークルのチームたちとちゆたちは変わらず、パンケーキを片手に談笑していたが・・・・・・。

 

「あれ? のどかは?」

 

「かすみちゃんの姿も見えないぞ・・・?」

 

「「「??」」」

 

のどかの両親である、たけしとやすこはのどかとかすみがいつの間にかいなくなっていることに気づく。

 

「そういえば、どこに行ったんだろう・・・?」

 

「かすみまでいなくなるなんて・・・」

 

ひなたとちゆはどこかへ行ってしまったのどかとかすみを心配していた。

 

「クゥ~ン・・・ウゥ~ン・・・」

 

すると、ラテが何かを訴えるように鳴きながら、森の方を見ていた。

 

「どうしたのですか? ラテ」

 

アスミはラテが気になり、聴診器で心の声を聞いてみる。

 

(あの森から、嫌な気配がするラテ)

 

「嫌な感じ? まさか・・・!?」

 

ラテの言った言葉にアスミは目を見開く。

 

「嫌な予感がするわ・・・!」

 

「もしかして、のどかっちとかすみっちに何かあったんじゃ・・・!?」

 

「行きましょう!!」

 

妙な胸騒ぎを感じたちゆとひなた。アスミの言葉を合図に、ラテが向けていた方向にある森の中に向かおうとする。

 

「? みんな、どこに行くの??」

 

その様子を見たやすこはアスミたちに疑問を投げかける。

 

「のどかたちはどうやら森の中に入って行ってしまったみたいなんです・・・!」

 

「私たちが連れ戻しに行ってきます!」

 

ちゆとアスミは、のどかの両親にそう説明する。

 

「そうなのかい? じゃあ、僕たちも」

 

「いいえ、お二人はここにいてください! 私たちが連れ戻しに行きます!」

 

たけしとやすこも一緒について行こうとしていたが、アスミがそれを制する。もしかしたら、ビョーゲンズがその場所にいるかもしれない。そうなれば二人を危険にさらすばかりか、自分たちの秘密もバレてしまう必要がある。連れて行くわけにはいかなかった。

 

「そう? でも気をつけてね・・・」

 

やすこは心配そうな顔をしながら、たけしと一緒に森へ向かうのを踏みとどまった。

 

ちゆ、ひなた、アスミの3人は嫌な気配を感じながら森へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その森の中・・・・・・。

 

「うっ・・・くっ、うっ・・・ぅぅ・・・」

 

ダルイゼンにメガパーツを入れられてしまったキュアグレースは、地面に倒れ伏して苦しんでいる。そんな彼女の体を赤く淀んだ何かが侵蝕していき、全体を覆い尽くし、グレースは変身が解けてしまった。

 

「のどか!!のどかっ!!」

 

ラビリンはのどかを心配して呼びかけるも、のどかは倒れ伏したまま動かない。

 

「早く出て行くラビ!!!!」

 

ラビリンはのどかの背中を叩いてメガパーツを追い出そうとしたが・・・・・・。

 

「無駄だよ」

 

「っ!?」

 

「いつ出てくるかはメガパーツとの相性次第、自分の意思じゃ取り出せない」

 

ダルイゼンは笑みを浮かべながら答える。

 

「ふふふっ♪ あ〜あ、可哀想に・・・一人で出しゃばるからそうなるんだよ」

 

クルシーナは不敵に笑いながら、バカにするようなことを言う。仲間を連れてくればよかったのに、一人と一匹が変な正義感で首を突っ込むからそうなる、人間というのはどこまでも愚かな存在だと思う。

 

「ヒーリングアニマルにできるのは、せいぜい心配することぐらいさ」

 

ダルイゼンがラビリンを嘲笑するように吐き捨てる。

 

しかし、ラビリンにはのどかが倒れたことと同じぐらい信じられないことがあった。

 

「かすみ・・・!! これはどういうことラビ!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「なんで!! どうしてラビ!? どうして、かすみがビョーゲンズなんかの味方を・・・!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ラビリンが瞳をウルウルと潤ませながら叫ぶ。そう、今まで一緒にいて、仲間であるはずのかすみだ。

 

かすみはまるでグレースの身動きを取れなくして、ダルイゼンにメガパーツを入れやすくするような状況を作った。それはどう考えても、ビョーゲンズの味方をするかのような行動だった。

 

当の彼女は、力に飲み込まれたような状態ではないが、瞳を真っ赤に染めており、ラビリンの叫びに応えることなく、無表情で見つめている。

 

「黙ってないで・・・答えてほしいラビ・・・!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

ラビリンの泣きそうな悲痛な叫びにも、かすみは黙って見つめたままだ。まるで心を無くしているかのようだった。

 

「アタシが教えてあげよっか?」

 

「っ??」

 

「その脱走者はねぇ、アタシたちと同じビョーゲンズの仲間だからよ」

 

「っ!?」

 

クルシーナがラビリンに向かって無常とも言える言葉を言い放った。

 

ラビリンは衝撃を隠せなかった。かすみがビョーゲンズの仲間・・・・・・?

 

「・・・そいつ、お前が生み出したやつだったんだ?」

 

「そうよ。アタシが育てている植物園があるんだけど、そこでキュアグレースから成長させた病気の花を埋めた鉢植え、その花から生まれ落ちたみたいなんだよね」

 

「へぇ・・・キュアグレースのねぇ」

 

ダルイゼンはクルシーナの言葉に反応し、キュアグレースが関わっていると知るとより関心を持ったように呟く。

 

「そ、そんなのウソラビ!! だってかすみはラビリンやのどかたちと一緒に楽しく遊んでたラビ!! 地球や自然を大事にしようとしてたラビ!! そんな優しいかすみがビョーゲンズなわけがないラビ!!!!」

 

ラビリンはクルシーナの言ったことが信じられず、叫び声をあげる。かすみはつい先日まで、自分たちと遊び、共に戦い、共に笑いあっていたのだ。そんなかすみがビョーゲンズの一員・・・? にわかに信じられることではなかった。

 

「本当よ。だって、そいつはアタシが生み出したんだから。大体お前、そいつの姿を見ておかしいと思わなかったの? あいつが解放した力の、その禍々しいオーラはアタシたちとおんなじオーラ。しかも、自然の能力を吸収するとかも、アタシと同じ能力。これらを聞いて、どこがビョーゲンズの仲間じゃないって言えるワケ?」

 

「やめるラビ!!!! お前の話なんか聞きたくないラビッ!!!!」

 

ラビリンはクルシーナの話を拒絶する。

 

「ハッ、そうやっていつまでも目から背けてれば? 全部事実なんだからね」

 

クルシーナは見苦しいラビリンを見て嘲笑の言葉をかける。

 

「っ!!・・・うっ・・・!」

 

すると、かすみの瞳が赤色から元の色へと戻り、頭を抑えて顰め始めた。

 

「っ、かすみ!!」

 

「あ、ラビリン? 私、何を・・・・・・確か、森でのどかとラビリンを追いかけて・・・」

 

ぼんやりとしたように呟くかすみ。まるで眠っていたかのように森に入った後の記憶がない。

 

「・・・っ!?」

 

そして、かすみは自身の足元を見て驚愕の表情を浮かべる。そこには俯せで倒れ伏したまま、苦しんでいるのどかの姿があったからだ。

 

「のど、か・・・?」

 

かすみは理解が追いつかなかった。いつの間に森の中に来ていたと思ったら、自分の愛しい人物が倒れ、苦しんでいる・・・。

 

それを理解した時、彼女の中のある感情が弾けた。体中から恐怖や焦りが湧き出し、汗が吹き出してくる。

 

「のどかぁ!! のどかぁっ!!!!」

 

「うっ・・・うぅぅ・・・くっ・・・」

 

「のどかぁ!! しっかりしろ!!」

 

かすみは完全に取り乱した様子でのどかに駆け寄り体を揺さぶる。のどかは苦しそうに呻いたまま、かすみには反応しない。

 

「そんなぁ・・・どうして・・・!?」

 

さっきまでは元気にパンケーキを一緒に食べていたのに、気がついたらのどかが倒れているなんて信じられないことだった。かすみは顔を伏せたまま体を震わせる。

 

「お前がやったんだろ?」

 

「っ!!」

 

そんな彼女をあざ笑うかのようなクルシーナの言葉が聞こえてくる。

 

「お前が、プリキュアなんかの味方をしたせいで、キュアグレースはそうなったのよ」

 

「っ!?」

 

「だって、お前の目の前にそいつが倒れてるってことは、お前がなんかやった、そういうことでしょ?」

 

「ウ、ウソだ・・・私が、のどかに、手を掛けただなんて・・・?」

 

クルシーナの責め立てるような言葉に、かすみは動揺して心を乱されていく。信じられない・・・私が大好きなのどかを手にかけるわけがないと否定しても、彼女の中から動揺は消えてくれない。

 

「かすみ!! クルシーナの言葉に耳を貸しちゃダメラビ!!!」

 

「何よ、アタシはウソは一つも言ってないわ。だって、手を貸したのは本当じゃない」

 

「ウソだぁ・・・そんなのウソだぁっ・・・!!!!」

 

ラビリンがかすみに向かって叫ぶも、クルシーナはそれに反する言葉を言い放ち、逆にかすみを追い詰める。

 

「ああ・・・あぁぁ・・・」

 

「かすみ!! かすみっ!!」

 

かすみは苦しむのどかを見つめたまま、絶望の表情で声にもならない声をあげ、ラビリンの叫びにもまるで反応していない。

 

その様子を見て、ラビリンはクルシーナをキッと睨む。

 

「お前がかすみに何かしたんだラビ!! 一体、何をしたんだラビ!!??」

 

「さあねぇ。お前に教えると思ってる? 現実から目を反らすようなお前に」

 

ラビリンはかすみが自分の意思でそんなことをするわけがないと怒りの叫びを上げるも、クルシーナはただ単に不敵に笑うだけだった。

 

「のどか!! かすみ!!」

 

「ん?」

 

「おぉ?」

 

そこへここにいる誰でもない声が聞こえてくる。ビョーゲンズの二人がそちらに向くと、フォンテーヌとスパークルが飛んできていた。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

フォンテーヌとスパークルは共にダルイゼンとクルシーナに向かってキックを放つが、二人はその場から飛んで避けた。

 

彼女たちに続いてアースも駆けつけ、のどかとかすみに寄り添う。

 

「ふっ、遅かったね」

 

「グレースと役にも立たない脱走者を残したまま、何をしてたのかしらぁ?」

 

ダルイゼンとクルシーナがそう言うと、二人はのどかとかすみの方を振り向く。

 

「っ、大丈夫!?」

 

「かすみっち! 何があったの!?」

 

「あぁ・・・ああぁ・・・・・・」

 

「かすみさん、しっかりしてください!!」

 

かすみはスパークルの問いにも、アースの呼びかけにも反応しておらず、涙をポロポロとこぼしている。

 

「キュアグレースにメガパーツを入れてやったのさ」

 

「「「!?」」」

 

その問いに代わりに答えるように、降り立ちながらダルイゼンが答える。その言葉にプリキュアの3人は驚愕していた。

 

「なんで!? 意味わかんないし!!」

 

「どうしてそんなことを!!??」

 

スパークルとフォンテーヌは怒りの叫びを上げる。

 

「アタシが進言してやったのよ。キュアグレースにメガパーツを入れればってね。プリキュアだから失敗しないか心配だったけど、やっぱりプリキュアも人間ね。割と簡単にうまくいったわ。しかも、そいつのおかげでねぇ」

 

同様に降り立ったクルシーナが嘲笑うかのように答え、かすみを指差す。

 

「え・・・何・・・?」

 

「かすみさんのおかげってどういうことですか・・・!?」

 

クルシーナの言っていることが理解できなかった。かすみは自分たちプリキュアの味方なはず、なのにどうしてかすみのおかげだと言うのか・・・?

 

「言った通りの意味よ。そいつが、キュアグレースにメガパーツを入れられるように協力してくれたの」

 

「っ・・・ああぁ・・・ああぁぁ・・・・・・」

 

クルシーナは傷口に塩を塗り込むように笑みを浮かべながらそう言うと、かすみは頭を抱えながら絶望の声を漏らす。

 

「デタラメ言わないでっ!!!」

 

「かすみさんがそんなことをするわけがありません!!!」

 

フォンテーヌとアースが叫ぶような声で否定する。

 

「事実よ、全部。アタシはウソなんか一つも言ってない。つーか、お前らそいつのこと知らなすぎでしょ。少しは足りない頭で考えた方がいいんじゃないの? そこのグレースみたいに寝首を掻かれる前にさぁ」

 

クルシーナは二人の言葉を吐き捨てるように言うと、彼女たちに背を向ける。

 

「一旦帰ろ、ダルイゼン」

 

クルシーナはダルイゼンの肩に手を置いてそう言う。

 

「ああ・・・じゃ、頑張ってよ、キュアグレース」

 

「お大事に」

 

クルシーナとダルイゼンはそう言うと、その場から姿を消して去っていった。

 

「のどか!! しっかりするラビ!! のどかぁ!!」

 

ぐったりとした苦痛の表情のまま目を覚まさないのどかに必死に呼びかけるラビリン。

 

「のどか・・・のどか・・・のどか・・・」

 

「かすみさん、気をしっかり持ってください!!」

 

かすみは動揺した表情のまま、のどかを見つめて彼女の名前をブツブツと呟くだけだ。戦意を喪失したように放心した状態の彼女がに気づいているアースは彼女に呼びかける。

 

「かすみ、しっかりして!!」

 

「かすみっち!!」

 

「あぁ・・・っ!? あぁぁ・・・あぁ・・・あぁぁぁっ!!!!」

 

「「あっ!?」」

 

フォンテーヌとスパークルもかすみに駆け寄って声をかけるも、彼女は手をかけられた途端、体がビクンと震わせる。そして、先ほどの出来事がビジョンとして蘇ったかすみは体をブルブルと震わせると、二人を突き飛ばして立ち上がり距離を取る。

 

かすみは自分の肩を抱くように抱え、体を小刻みに震わせていた。

 

「触らないでくれ・・・!! 私は・・・私はぁ・・・!!」

 

「かすみ、落ち着いて!!」

 

「っ!?」

 

フォンテーヌが諫めるように叫ぶと、それにかすみは目を見開いて頭を抱え、再び地面に膝をつく。

 

「あぁ・・・違う・・・違うんだ・・・! 私は、私は・・・二人が嫌いなんじゃなくて・・・でも・・・でも、のどかを、のどかを・・・私がのどかに手を掛けて・・・違う・・・あぁ・・・違う・・・二人が嫌なんかじゃなくて・・・でも、のどかに・・・嫌だ、嫌だ・・・来ないで・・・でも、嫌いなんかじゃなくて・・・でも、来ないで・・・触らないで・・・嫌だ、来ないで・・・うあ・・・あぁ・・・」

 

「かすみっち・・・」

 

かすみは涙を流しながら呟いている。クルシーナの言い放った言葉と、仲間の手を払いのけたこと、そして克服したはずの自分の力、この三つがない交ぜになって彼女を苦しめていた。いつしか仲間に手を掛けてしまうのではないか、でも自分は愛しい人を手にかけるはずがないと。

 

フォンテーヌとスパークルはそれを呆然と見ているしかなかった。

 

「かすみさん!!」

 

「っ!?」

 

そんな彼女をアースが後ろから抱き止める。

 

「嫌だ・・・嫌だ・・・触らないでくれ・・・離せ!!!!」

 

「かすみさんっ!!!」

 

アースから逃れようとジタバタと暴れるかすみ。そんな彼女を離さないようにギュッと抱きしめる。

 

「嫌だ!! 嫌だよぉ!! 離して!! 触らないでくれ!!! 触るなぁ!!!!」

 

ゲシッ・・・ゲシッ・・・

 

「うっ・・・ぐっ・・・!」

 

しかし、そんなことでかすみの心は穏やかにならなかった。かすみはついには背後にいるアースを肘で叩き始め、腹部に受けたアースは苦痛に呻く。

 

それでも彼女はかすみを離さなかった。いろいろとわからないこともあるが、少なくとも言えることは、彼女は大切な仲間だから。

 

そして、しばらく抱きとめていると、かすみの様子が段々と落ち着いてくる。

 

「うぅぅ・・・うぅぅ・・・あぁぁ・・・!」

 

かすみは肘でど突いていた手をやっと止めると、辛そうな表情を浮かべた後、体から力を抜きアースに体を委ねた。

 

「うっ・・・落ち着き、ました・・・? かすみさん」

 

アースは滲んだ汗と苦痛の表情をしながらも、口元に笑みを浮かべながら言う。

 

「アースゥ・・・すまない・・・すまない・・・スパークルも・・・フォンテーヌも・・・すまない・・・私が・・・私が、のどかを・・・!」

 

「かすみさんのせいではありません。かすみさんはのどかを守ろうとしたではないですか」

 

「そうよ、かすみがのどかをあんなことにするわけがないもの」

 

「悪いのはあいつらだよ!! のどかっちだけじゃなく、かすみっちにまで酷いことして!!」

 

泣きじゃくるかすみに、アースは寄り添い、フォンテーヌはのどかに寄り添いながら、かすみに優しく声をかける。スパークルは二人を酷い目に合わせたビョーゲンズに怒りを露わにした。

 

「とりあえず、のどかのお母さんとお父さんのところに戻りましょう。二人が心配するわ」

 

フォンテーヌはここにいても仕方がないと諭し、みんなは森の外へと向かっていく。その間、フォンテーヌはぐったりとしたのどかを担ぎ、アースはかすみに寄り添いながら歩いていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

かすみはのどかの様子を見ながらも、まだその心は晴れていないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

ビョーゲンズ二人の襲撃後、のどかを連れて戻ったアスミたち。容体が悪くなり、肩で苦しそうに息をしているのどかをたけしの車に乗せた。

 

「すまない、のどかのお父さん、お母さん・・・私は、何もできなかった・・・」

 

「そう落ち込まないで、かすみちゃん。みんなが一緒にいてくれたおかげで、怪我とかはせずに済んだんだから」

 

「でも・・・私が森に行くのを止めていれば・・・のどかの具合が悪くなることもなかったんだ・・・!!」

 

「そう自分を責めないで。かすみちゃんのせいじゃないわ。のどかを一人にした私たちにも責任はあるもの」

 

顔を俯かせていたかすみは自分自身を責め立てるも、たけしとやすこはそんな彼女を優しく励ます。

 

「みんな、ありがとう・・・とにかく病院に連れて行くから・・・」

 

「アスミとラテは、うちに泊まってもらうのでご心配なく・・・」

 

「お二人はのどかのそばについていてあげてください・・・」

 

「ありがとう・・・」

 

ちゆたちの気遣いにやすこが礼を言う中、たけしは車の中で苦しそうにしているのどかを見つめる。

 

「どうか・・・再発じゃありませんように・・・」

 

「っ!?」

 

「え・・・再発って・・・?」

 

たけしが呟いた言葉に、ひなたとかすみが反応する。このような状態が、今までもあったと言うのだろうか?

 

「前の病気の時と様子が似てるの・・・原因不明でね。ただ、見守るしかできなかった・・・」

 

「今でもどうして治ったんだか、わからなくてね・・・あんなのはもう、二度とゴメンだ・・・」

 

のどかをやすことたけしが見つめる中、ちゆたちも心配する面持ちで見ていた。

 

「っ・・・・・・・・・」

 

かすみはのどかを見つめながら、歯ぎしりをするほどに悔しさをにじませ、握っている両手を震わせていた。

 

やすことたけしはのどかを病院に連れて行くため、先に車で帰っていく。それを見送ったちゆたち・・・・・・。

 

「ねえ! メガパーツのせいって言わなくていいのかな・・・?」

 

「それは・・・・・・」

 

「言ってどうするんだ・・・??」

 

ひなたの言葉にちゆが困ったように返していると、そこにかすみの淡々とした声が聞こえてくる。

 

「得体の知れない怪物のせいだって言って、のどかのお父さんやお母さんを余計に心配させる気か? そんなことになったら、二人に申し訳ないよ・・・」

 

「かすみの言う通り・・・言ったって余計に心配させるだけペエ・・・」

 

「知ったところで、治せるわけじゃないからな・・・」

 

「あぁ・・・そっか・・・」

 

かすみの暗い声に、ペギタンやニャトランも反応して答える。

 

みんな、のどかのことを心配して話をする中、かすみは拳をギュッと握りしめたまま、顔を俯かせて立っているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、沢泉家に帰ってきたかすみは床についていたが、のどかのことが心配で眠れずにいた。

 

「のどか・・・・・・」

 

彼女の名前を天井に呟くも、特に彼女の声が返ってくるわけでもない。でも、のどかのことを思うと何もない天井に声を出したくなる。

 

「私は・・・どうしたらいいんだ・・・?」

 

かすみは心配気な表情で、虚空を見つめていた。私はあの時、きっとのどかに手を掛けてしまった。ビョーゲンズの仕業だとしても、自分がやったことに変わりはない。守るどころか、敵の見方をしてしまうなんて、私はどのような顔をしてのどかに会えばいいのか。かすみはわからなかった。

 

そんな時だった・・・・・・。

 

「かすみ? もう寝ちゃった?」

 

「かすみさん」

 

襖の外からちゆとアスミの声が聞こえてくる。

 

「起きてるぞ」

 

かすみは体を起こすと襖に向かって起きていることを呼びかける。そうすると襖の扉が開かれ、枕を持ったちゆとアスミ、そしてラテの姿が見えた。

 

「どうしたんだ・・・?」

 

「うん、私も眠れなくてね」

 

「私も・・・」

 

「・・・・・・そっか」

 

「ワン!」

 

「ラテも眠れないんだな・・・」

 

疑問に思うかすみに、ちゆとアスミは笑みを浮かべながら言う。ラテもアスミの手からかすみの方に駆け寄り、かすみはそのラテに微笑みながら頭を撫でる。

 

ちゆとアスミは、かすみを両サイドから囲むように横になった。

 

「むぅ・・・・・・・・・」

 

かすみはその状態にムッとしたような表情をする。ちゆとアスミは自分に触れるか触れないかの近さで横になっている。

 

「なんだか寝にくいのだが・・・・・・」

 

「あら、いいじゃない。どうせ離しても眠れないでしょう?」

 

「私は、かすみさんのそばでもっと眠りたいです」

 

かすみは寝苦しさを呟くも、ちゆとアスミは楽観的な言葉を呟き、かすみも特に否定はしなかった。

 

三人はその後、しばらく会話もないまま、沈黙していたが・・・・・・。

 

「ちゆ、アスミ、まだ起きてるか?」

 

「起きてるわ」

 

「なかなか寝付けないですね・・・」

 

寝付けないかすみは互いに隣になっているちゆとアスミに声をかけると、二人は返事をする。三人が眠れないのは無理もないことだ。なぜなら三人が考えているのはビョーゲンズの策略で病気になってしまったのどかのことだからだ。

 

「のどか・・・大丈夫かしら・・・」

 

ちゆはのどかに対する不安を口にした。

 

「私が、ちゃんと守れていれば・・・・・・」

 

その言葉にかすみは瞳を潤ませながら呟いた。

 

「かすみさんのせいではありません。私たちも、もう少し早く気づいていればよかったんです」

 

アスミは辛そうな表情をしながら言った。

 

「のどかは・・・本当に、私が手を掛けてしまったのか・・・?」

 

「え・・・どういうこと・・・?」

 

かすみが悲しそうな表情で呟いた言葉に、ちゆが反応して疑問の声を漏らした。

 

「森の中に入っていったのどかを追っていたのに、気がついたら目の前にのどかが倒れていて、ビョーゲンズの奴らが、私がやったって言ったんだ・・・本当に私がやってしまったのだろうか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

かすみは暗い表情で自分がどうしていたのかという経緯を話す。ちゆとアスミはその言葉に何も言えなかった。

 

「なあ、二人とも・・・」

 

「「??」」

 

「二人には私がどう見えてる? 人間? 人でないもの? それとも、別の何か? 外見も・・・二人にはどう見えてるんだ・・・?」

 

かすみがそう尋ねる。二人はかすみがどういう経緯でこのようなことを聞いているかはわからなかったが、しばらく考えた後、ちゆから口を開いた。

 

「・・・かすみは、人間よりも人間らしいと思うわ。誰よりも気遣いができるし、大切なもののために守ろうとしてる。たまに不思議な現象に戸惑うこともあるけど、かすみは私たちの大切な友達よ」

 

「ちゆ・・・・・・」

 

ちゆは心情を吐露すると、かすみは目を見開いて彼女を見つめる。

 

「それに、かすみがのどかに手を掛けただなんて、私は信じない。だって、かすみはのどかのことが大好きなんだもの。好きな人を手に掛けたなんてあり得ないわ」

 

「だ、だ、だだだ、大好き!? ち、違うぞ・・・!! わ、私はのどかが、か、可愛いと思っているだけで、好きっていうわけでは・・・!!」

 

ちゆの言った『好き』という言葉にかすみは顔を真っ赤にしながら否定し、そこからボソボソと小さい声で恥ずかしそうに呟く。

 

「私もかすみさんが手を掛けたなんて信じられないです」

 

「アスミ・・・」

 

「かすみさんは自分の力を受け入れることができる優しい方です。この前も自分の力を受け入れて、共にメガビョーゲンを倒しました。そんなかすみさんがのどかを傷つけるわけがないんです」

 

「・・・・・・・・・」

 

(自分の力を受け入れることができる・・・・・・)

 

かすみは、アスミのその言葉を聞くと真面目な表情になった。

 

ーーーー自分が誰なのか、何者なのかを知らないといけない・・・・・・。

 

かすみはそう心の中に決意を秘めていた。

 

でも、何よりもまずは・・・のどかのことを気にしなくてはいけない。

 

「アスミ・・・ちゆも・・・ありがとう。少し元気・・・出た」

 

「私もかすみと話してたら、少し気持ちが軽くなったわ・・・」

 

「私も・・・のどかのことは心配ですが・・・悲しい気持ちが少しは薄れたと思います」

 

かすみはちゆとアスミの言葉に、少し救われたような気持ちになる。ちゆとアスミも辛そうにしながらも、口元に笑みを浮かべるほどには気持ちが軽くなった。

 

「私・・・明日、のどかのところに行ってくる。少しでものどかのためにできることをしたい」

 

「・・・そうね。でも、できることなんてあるのかしら?」

 

「きっとかすみさんにはあるはずです・・・私は、かすみさんを信じています・・・」

 

かすみはそう決意の言葉を呟くと、ちゆは心配そうに、アスミはかすみを信頼する言葉を話す。

 

「二人とも、もし私が・・・いや、なんでもない・・・・・・」

 

「「??」」

 

かすみは何かを伝えようとしたが、それを取りやめて掛け布団を深く被る。ちゆとアスミはかすみが何かを言おうとして辞めたことに疑問を抱きつつも、今はのどかのことを考えようと忘れることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ビョーゲンキングダムでは、戻ったダルイゼンとクルシーナ、そしてビョーゲンズの幹部たちが集まって話をしていた。

 

「ダルイゼン、クルシーナ・・・最近、地球を蝕むことが疎かになっているようだが・・・?」

 

「心外ね、アタシはちゃんとやってるわよ。ダルイゼンは知らないけど」

 

キングビョーゲンの言葉に、クルシーナはあっけらかんと返す。

 

「俺たちはちょっとした実験をね。俺たちみたいなテラビョーゲンがもっといれば、メガビョーゲンを作れる人が増える。前のフーミンもそうだけど、そういう仲間がいれば結果的に捗ると思ってね」

 

「そうそう、そうすれば、地球を蝕む効率性も上がるでしょ」

 

「進化を待たずに増やそうということか・・・」

 

ダルイゼンとクルシーナがそう説明する。

 

「だからって・・・まさか、プリキュアを宿主に選ぶとはね・・・」

 

「面白そうでしょ? プリキュアとは言っても所詮は人間、メガパーツを入れるのなんて簡単よ。それにあいつらからどんなテラビョーゲンが生まれるのか、結構楽しみになると思うけどね」

 

「ふん、クルシーナはともかく、ダルイゼン、全てにおいて興味がなさそうなお前が珍しい・・・」

 

「どういう風の吹き回し? なの・・・」

 

「・・・別に。ただの気まぐれさ」

 

「・・・まあ、そのプリキュアからバテテモーダみたいに立派なテラビョーゲンさえ生まれてくれれば、私たちも少しは仕事がしやすくなるでしょうね」

 

「その子は痛くしてくれるのかなぁ〜、気持ちよくしてくれるのかなぁ〜? 楽しみだねぇ〜♪」

 

「ふわぁ〜・・・地球を蝕めればなんでもいいですぅ・・・」

 

ダルイゼンとクルシーナの話に、他のビョーゲンズたちの反応はマチマチである。

 

「・・・よかろう。好きにやってみるがいい」

 

キングビョーゲンは承諾するような感じで、ダルイゼンとクルシーナの話を終えた。

 

「ところで、我の娘たちよ・・・クルシーナでもいいのだが・・・」

 

「どうしたの?」

 

「・・・クラリエットの様子はどうだ?」

 

キングビョーゲンは次に娘たち、特にクルシーナに別の話をし始める。話がわかっているのか、クルシーナは「ああ〜」と声を漏らす。

 

「アジトの地下室で眠ってるわよ。メガパーツを入れたり、いろいろ試してはいるんだけど、全く起きる気配がないのよねぇ・・・」

 

クルシーナは両手をすくめながら、つまらなそうに答える。

 

「・・・まあ、あれだけやられた状態ではねぇ」

 

「起きないのも無理はないの・・・」

 

ドクルンとイタイノンも思い出してきたのか、口々に答える。

 

「お姉ちゃん、クラリエットって誰〜?」

 

「ふわぁ〜・・・聞いたこともない名前なのぉ・・・」

 

そもそも三人娘よりも後に生まれていて、話をよくわかっていないヘバリーヌとフーミンが尋ねる。

 

「・・・アタシたちと同じ場所で生まれたテラビョーゲンよ」

 

その質問にはクルシーナが答えた。それも嫌そうな顔で・・・・・・。

 

「お姉ちゃんと・・・?」

 

「ふわぁ・・・?」

 

「私たち4人は元々同じ場所でテラビョーゲンとして生まれたんです。その後に私たちがアジトにしている街、あそこを襲撃して私たちのものにしたのですが、現れたあの紫の、そっくりのプリキュアに倒されかけましてね・・・」

 

「アタシが手下を使って助けなかったら、どうなってたことやら・・・まあ、おかげで完全にビョーゲンズとして消え去ることなく、今は地下室で眠ってるわけだけどね」

 

「そいつ、偉そうだったから、別に起こさなくていいと思うの。そのせいで油断してやられたってこともあるの・・・」

 

三人娘が口々に、もう一人のビョーゲンズに対して説明をしていく。イタイノンに限っては文句だけだったが・・・・・・。

 

「ふ〜ん、おバカなのかなぁ? そのクラリエット、お姉ちゃん・・・?」

 

「ふわぁ〜・・・口先だけにしか聞こえないですぅ・・・」

 

「そうね・・・でも、あれでも、悔しいけど、アタシたちより強くはあるんだけどねぇ・・・」

 

ヘバリーヌとフーミンはさりげなく酷いことを言うが、クルシーナは目を反らしながらそう言った。

 

「一応、仲間を増やしたり、メガパーツの数を増やして入れたりしてるんだけど、それでもあいつは起きる気配がないのよね・・・」

 

「ふむ、そうか・・・まあ、よい、引き続き頼むぞ・・・」

 

「はーい・・・」

 

クルシーナの報告にキングビョーゲンはそう言い残し、幹部たちの前から姿を消していったのであった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、廃病院の地下室に眠っているビョーゲンズの一人は、特に変わった様子もなく眠り続けていた。赤い靄に包まれたまま、少女は微動だにしない。

 

ズォォォォォ・・・・・・。

 

すると、炎が吹き出すかのように赤い靄が蠢く。そこから何かが飛び出しかと思うと、それはカラスのような黒い羽であった。

 

その黒い羽が無機質な地面へと落ちると、それは赤い靄へと変化して小さな鳥のような姿を形成していく。その姿は一羽の黒い九官鳥のような姿だった。

 

黒い九官鳥は鳴くことなく、そのまま扉へと近づく。しかし、扉は硬く閉ざされていて、この姿では開けることができない。

 

すると、黒い九官鳥は再度赤い靄へと変化すると、ドアノブの下にある鍵穴の中へと入り込み部屋から出ていく。そして、落ちた先の地面で黒い九官鳥のような姿へと変えると、その場から飛び去っていく。

 

そして、部屋の中で眠っている少女は・・・・・・。

 

「・・・・・・フフ」

 

眠っているはずだが、赤い靄が飛び出していくと同時に、口元に笑みを漏らしていたのであった・・・・・・。

 

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