ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
のどかの元に一人の旧友が現れます。しかし・・・。


第86話「旧友」

 

「久しぶり、のんちゃん♪」

 

笑顔で見つめるのどかの病院時代の友人、来栖しんら。

 

「しんら・・・ちゃん・・・?」

 

のどかはそんなしんらを信じられないという目で見ていた。しんらにはすこやか市に引っ越したということを伝えず、あの病院で別れたはず・・・なんでここにいるのか?

 

「驚いた?」

 

「なん、で・・・?」

 

「アタシの両親がのどかのお母さんとお父さんから連絡を受けて、のどかがまた病気になったって聞いて。だから、急いで病院に駆けつけちゃった♪」

 

しんらは笑顔でそう言った。自身の両親から電話を受け、会いたかったしんらは急いで病院へと駆けつけたのだという。

 

「そう、なんだ・・・・・・」

 

のどかはそれを聞いて安堵していた。自分の両親が電話をして駆けつけたのであれば、ここに来るのもおかしなことではない。確か、自分の両親としんらの両親は会っているのを見た気がするから。

 

「のんちゃん、また病気になったなんて、どうしたの? 再発?」

 

「えっと・・・ちょっと、ね・・・無理、しすぎちゃったから、かな・・・」

 

「元気になったと思ってはしゃいでだんでしょ~。病気はいつ襲われるかわからないから油断しちゃダメだよ」

 

「うん・・・そうだね・・・」

 

のどかはぎこちないながらも答える。この病気がビョーゲンズの仕業だとしんらに言えるわけがない。無理が祟って体が動かなくなったと言うしかなかった。

 

「しんらちゃん、病気、治ってたんだね・・・」

 

「うん。ちょっと辛かったけど、なんとか治したよ♪」

 

しんらは垂れた白い花ーーーースノードロップのハーバリウムをのどかのベッドの横にあるデスクに置くと笑みを向ける。

 

ふと、しんらはベッドの横の椅子に座るかすみに視線を向ける。

 

「あ・・・その子は、お友達?」

 

「うん・・・そうだよ・・・この街でできたお友達・・・かすみちゃんだよ・・・」

 

しんらはのどかにそう言われると、かすみの方を向く。

 

「はじめまして。のどかが前の病院に居た時の友人だった、来栖しんらよ。よろしく」

 

「ああ・・・風車かすみだ・・・よろしく・・・」

 

しんらが自己紹介をすると、かすみは戸惑いを覚えながらも答える。

 

「のんちゃんとはどう出会ったの?」

 

「えっと・・・私は外国生まれでな・・・この街に住む際に、ステイホームとしてやってきたんだ。そこでのどかと出会って、仲良くなったって感じだ」

 

「ふーん、素敵な出会いね♪ でも、外国に住んでいたのに日本人みたいな名前ね」

 

「うっ・・・!」

 

かすみはちゆが家族にごまかしていたことを思い出しながら、しんらの問いにそう答えると、彼女は笑顔でそう答えた。しかし、名前のことについて指摘されるとかすみは言葉を詰まらせる。

 

「に、日本に生まれたんだが、すぐに海外に留学になってな・・・日本に戻って勉強したいと思って、戻ってきたんだ・・・」

 

「そうなの。素敵なことじゃない♪ のんちゃんともっと仲良くしてあげてね♪」

 

「ああ・・・もちろんだ・・・」

 

かすみはちゆに教えられたことを記憶から絞り出しながら、なんとか答える。しんらはそれに笑みを浮かべながらそう返した。

 

コンコンコン、ガラガラガラ・・・

 

「のどか、かすみ」

 

「っ! ちゆ、ちゃん・・・」

 

「ちゆ・・・」

 

そんな中、ドアがノックされ扉が開かれると、そこからちゆの姿が見えた。

 

「のどかっち! かすみっち!!」

 

「のどか・・・かすみさん・・・」

 

「ひなたちゃん、アスミちゃん・・・」

 

さらに彼女の後ろからはひなたとアスミの姿もあった。

 

「ん? っ!! 他の人もいたのね・・・!」

 

「こんにちは♪」

 

ちゆはのどかとかすみ以外にいることに驚くが、しんらは笑みを浮かべて挨拶する。

 

「のどかっち、そのめっちゃ可愛い子は誰・・・?」

 

「えっと、この子はね・・・」

 

ひなたが尋ねると、のどかは答えようとするが、その前にしんらは椅子から立ち上がる。

 

「はじめまして、アタシは来栖しんら。のんちゃんとは前の病院でお世話になったわ」

 

「ああ! のどかっちの!!」

 

ひなたはのどかの前の友人であると察すると、病室の中へと入ってとっさにしんらの手を取る。

 

「あぁっ・・・!!」

 

「あたし、平光ひなた!」

 

「私は、風鈴アスミと申します」

 

「よろしくね~、しんらっち♪」

 

「し、しんらっち・・・?」

 

しんらが自己紹介をすると、のどかの病気で尋ねたとは思えないほどのテンションで挨拶をかわすひなたとアスミ。しんらは思わずたじろいでいた。

 

「来栖、しんら・・・?」

 

ちゆはその名前を聞くと、何かが引っかかるように考え始める。その名前はどこかで聞いたことがあるような気がしたからだ。

 

「? どうしたの、ちゆちー?」

 

「え・・・ううん、なんでもない」

 

ぼーっとしているちゆにひなたが声をかけると、ちゆはごまかすように言い、しんらに近づく。

 

「私、沢泉ちゆ」

 

「ちゆさん・・・みんなは、のんちゃんのお友達?」

 

ちゆが自己紹介すると、しんらは三人に尋ねた。

 

「ええ、そうよ」

 

「のどかっちの、大大大親友だよ!!!!」

 

「私は、のどかの家に住まわせてもらっています」

 

「のんちゃんの家に住んでる・・・って、どういうこと?」

 

しんらはアスミの言葉が気になって尋ねてみる。

 

「言った通りの意味です♪」

 

「え、でも、のんちゃんの名字って『花寺』だよね? アスミさんは『風鈴』・・・え、どういうこと・・・?」

 

「ア、アスミは!! ラテのバックパッカーということで住んでるのよね!!」

 

「そ、そうそう!! つまりアスミンは・・・えっと、ラテの飼い主ってこと!!」

 

「アスミとラテは旅の途中ではぐれちゃったことがあって、のどかが拾って、家で預かってたの!! そこにようやくアスミがやってきて、その、この街の勉強のために残ってるのよ!!!」

 

アスミの言葉に混乱しているしんらに、怪しまれていると思ったちゆとひなたが慌てるように説明する。

 

「あ、そうなんだ・・・なるほどね、ワンちゃんもいい飼い主を見つけたね♪」

 

「ウゥ~ン・・・ウゥ・・・」

 

「っ!!」

 

しんらは納得したように言うと、アスミのバッグに入っているラテに笑顔を向けながら撫でようとしたが、ラテは何故だかしんらを怯えるように見ていた。

 

「ラテ?」

 

「ああ・・・怖がらせちゃったのかな、ごめん・・・」

 

ラテの様子にアスミが疑問に思っていると、しんらは慌てたように手を離して謝る。

 

「うぅぅ・・・うっ・・・」

 

そんな時だった・・・ベッドに横たわるのどかが苦しそうな呻き声をあげたのだ。

 

「っ!! のどかぁ!!」

 

「「「!!」」」

 

かすみが叫びながら彼女の手を取り、それに気づいたちゆたちものどかに寄り添う。

 

「のどか!! 大丈夫!?」

 

「のどかっち!!」

 

「のどかさん!!」

 

ちゆたちは心配して声をかける。のどかの容体が急変したのだろうか・・・そんな心配でいっぱいだった。

 

「だ、大丈夫・・・ちょっと苦しくなっただけ・・・」

 

のどかは顔を顰めながらも微笑んで見せる。ちゆたちを心配させないようにしているのだろう。

 

「全然、大丈夫そうに見えないよぉ・・・!!!」

 

「のどか! 本当は苦しいのでしょう!? 苦しいって言ってください!!」

 

「大丈夫・・・私は大丈夫だから・・・」

 

ひなたとアスミが余計に心配するも、のどかはあくまでも微笑んで見せた。

 

すると・・・・・・。

 

ボゥ・・・。

 

のどかとかすみが握り合っている手に白い光が灯り始めた。

 

「・・・っ!? うっ・・・うっ・・・!!」

 

のどかはまるでその光を拒絶するかのように、体を震わせながら苦しみ始めた。

 

「っ、のどか!?」

 

「ど、どうしたの!?」

 

「のどかっち!!・・・のどかっち!!」

 

「のどか!!」

 

「あっ、あぁっ・・・ぁぁっ・・・ぁぁっ・・・うっ・・・うっ・・・!!」

 

かすみは起こった異変に驚き、ちゆやひなたたちは戸惑いながらも、のどかに必死に呼びかけるも、彼女は苦しむ声を上げていて何も答えない。

 

「のんちゃん!!」

 

パシッ!!

 

すると、さっきまで後ろにいたしんらがのどかの手を取る。

 

「うっ・・・うぅっ・・・あっ・・・あぁっ・・・!!」

 

「のんちゃん、しっかりして!! 意識をしっかりと保つの!! アタシも、ちゆさんたちもちゃんとそばにいるんだから!!」

 

「うぁっ・・・ぁぁっ・・・うっ・・・うっ・・・うぅっ・・・!!!!」

 

しんらも必死に呼びかけていたが、それでものどかは苦しみの声を上げ続ける。

 

「一体、どうしたって言うの・・・!?」

 

「どうなってんの・・・!? なんで急に苦しみ出して・・・!? っていうか、なんで手が光ってんの・・・!?」

 

ちゆやひなたはのどかの急変に戸惑いを隠せない。自分たちが来るまではなんともなかったのに、しんらと談笑している少しの間にのどかはまるで容体が悪化するかのように苦しみ出したのだ。

 

「かすみさん、しんらさんと話している間に、何があったんですか!?」

 

「わからないんだ・・・!! 私は、のどかを見てただけなのに・・・!!」

 

のどかのそばにいたかすみにアスミが問いかけるも、かすみは困惑するばかりで何もわからない。

 

すると、のどかの手を握っているかすみとしんらの手の光は強くなる。

 

「うっ・・・うあぁぁぁっ・・・!!」

 

「「「のどか!!」」」

「のどかっち!!」

「のんちゃん!!」

 

のどかはさらに声をあげて苦しむと、片手は胸を抑え、もう片方の手はかすみとしんらの手をしっかり取り、離さずにいた。

 

「私たちが、付いてるからな!! この手は絶対に離さないぞ!!!」

 

「アタシも離さない!! だって、のんちゃんは親友だから!!」

 

かすみも目をギュッと瞑りながらも、のどかの手をギュッと握ってそう言う。しんらも力強い表情でのどかの手を離そうとはしなかった。

 

「っ!!」

 

その様子を見ていたラテはあることに気づいていた。かすみの体が白いオーラに包まれており、しんらからも赤いオーラが発光されているということを。

 

「ワンワンっ!!」

 

「? ラテ・・・?」

 

ラテは何かを訴えるように鳴くと、アスミはしんらもいる手前、正体を悟られないように背後を向きながら聴診器を当ててみる。

 

(のどかの中のビョーゲンズが蠢いているラテ・・・かすみとあの娘からオーラを感じるラテ・・・)

 

「っ!! ちゆ・・・ひなた・・・!」

 

「「??」」

 

アスミはそれを聞くと聴診器を外し、小さな声でちゆとひなたに声をかける。しんらがいて大きな声で話せないので、二人をこっちに来るように手招きをする。

 

「かすみとしんらさんから、オーラが・・・!?」

 

「それでのどかっちの中のメガパーツが動いてるってこと・・・!?」

 

「ええ・・・もしかしたら・・・」

 

アスミはかすみとしんらの発しているオーラが、のどかの中にいるビョーゲンズが動かしているのだという。

 

「のどかの中のメガパーツが苦しんで、出て行こうとしてるのかもしれないペエ・・・!」

 

「そうかもしれねぇな・・・!」

 

ペギタンとニャトランはしんらに聞こえないような声で話し、そう推察する。

 

「のどか・・・頑張れ!!!」

 

「のんちゃん・・・頑張って!! みんなもそばにいるんだから!!」

 

かすみとしんらは二人で手を握りながら、のどかを励まし続ける。

 

「のどかっち、いけるよ!!」

 

「のどか、頑張って!!」

 

「かすみさんとしんらさんも頑張ってください!!」

 

ちゆやひなた、アスミもみんなを励ます。

 

「ぐぅ・・・ぐっ、うぅぅ・・・うぅぅ、ぁぁっ・・・うぁぁぁ・・・うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

しかし、のどかの体の震えは大きくなり、彼女は余計に苦しみだし、片手は胸をギュッと抑えたまま、表情は苦痛に歪んでいて、呻く声も大きくなる。

 

そして、のどかの口から悲鳴のような叫び声が上がったその瞬間・・・・・・。

 

「「「っ!!」」」

 

のどかの体内から赤い靄のようなものが勢いよく飛び出していき、窓の外から逃げるように病院から飛び出していく。

 

「今の何・・・?」

 

「もしかして、メガパーツか!?」

 

ひなたとニャトランを始め、突然の出来事に皆は驚いていた。

 

「のんちゃん? のんちゃん!!」

 

「のどかぁ!!」

 

しんらとかすみの叫ぶ声が聞こえ、皆はのどかの方を見る。のどかの体からメガパーツが出て行ったはずなのだが・・・・・・。

 

「うっ・・・ぅぅ・・・」

 

のどかの表情はいまだに苦しげに歪んでいた。口からうめき声が漏れており、顔色も先ほどよりも悪くなってしまっているようだった。

 

「え・・・なんで!? のどかっちからメガパーツは出ていったんだよね!? なんで治ってないの!?」

 

「私に言われてもわからないわよ!! のどか!! のどかっ!!」

 

「ぅ・・・ぅぅ・・・」

 

ひなたは信じられないような表情を浮かべて呆然としており、ちゆはのどかに必死に呼びかけるも、のどかは苦しげに呻きながら彼女の声には反応しない。

 

「そ・・・そんな・・・メガパーツは出ていったんじゃないのか!? なんで・・・のどかが・・・元気にならないんだ・・・!?」

 

かすみはずっと手を握りしめたまま、泣きそうな声で思いの丈を叫んでいた。のどかは手には僅かに握り返しているようだが、その力は明らかに弱々しかった。

 

「さっきの赤い靄は、何・・・?」

 

一方、しんらは不安そうな表情でのどかの体から出ていった赤い靄が飛び出した方向を見つめていた。病人の体からあんなものが出てくるなんて聞いたことがないし、見たことがない。あれは一体何なのか・・・??

 

「ねえねえ!! どうすればいいの!? これって看護師さん呼んだほうがいい!? それともぉ・・・!?」

 

「だから、私に言わないでってば!!」

 

ひなたは慌てたように叫び、ちゆも混乱しているようで叫ぶように返していた。

 

「ち、ちゆさんたち落ち着いて・・・!!」

 

ひなたとちゆが言い争っているように見えたしんらは、彼女たちを諫めようとしていた。

 

「ちゆ、ひなた、かすみさん!! 赤い靄を追いましょう!! あれがのどかの体力や元気を吸い取ってしまったのかもしれません!!」

 

ちゆやひなたたちがピリピリとした空気になる中、アスミは病室のドアを指差して叫ぶ。メガパーツが何かをしたことが原因であれば、あれを浄化すればのどかの元気は戻るかもしれない。

 

「ええ、そうね・・・早く行きましょう!!」

 

「早くのどかっちを元気にしないと!!」

 

「メガパーツめ、許せない・・・!!!!」

 

ちゆたちは思い思いにそう言うと、病室の扉へと駆け出していく。

 

「え・・・みんな、どこに行くの・・・?」

 

しんらは病室を後にしようとするちゆたちの背中に疑問を投げかける。

 

「あの赤い靄を追うのです・・・!」

 

「あれが元気を奪った原因かもしれないから・・・!」

 

「でも、危ないよ・・・! ちゆさんたちがどうなるかもわからないのに・・・!」

 

アスミとちゆがそう答えると、しんらは心配そうな声を出す。どうやら得体の知れないものに関わって危険な目に遭うかも知れないちゆたちを引き止めようとしてくれているようだ。

 

「しんらっち、ありがと・・・優しいね。でも、あたしたちは行かないと」

 

「友達ののどかを、助けるためだから!!」

 

「・・・・・・そっか」

 

ひなたとかすみがそう言うと、しんらは顔を俯かせて沈黙した後、そう呟いた。

 

「しんらさんはのどかのそばにいてあげて!!」

 

「任せたよ、しんらっち!!」

 

「のどかを頼む・・・!!」

 

「うん・・・みんな、気をつけてね・・・」

 

4人はしんらにのどかを託すと、一目散に病室から飛び出しメガパーツを追っていった。

 

「・・・・・・・・・」

 

しんらは病室の扉をしばらく見つめた後、踵を返してベッドの上にいるのどかのそばに歩み寄る。

 

「うぅ・・・は、ぁ・・・ぁぁ・・・」

 

苦しそうに呻いているのどかをじっと見つめる。そして、彼女のベッドの横にある椅子の上に座って彼女の表情を見つめる。

 

「のんちゃん、アタシが側にいるよ・・・」

 

しんらはのどかに話しかけながら、彼女の手をしっかりと取る。

 

「だからーーーー」

 

「っ!!?? か、はっ・・・ぁぁ・・・」

 

しんらとかすみが握っている手が黒く光り始めると、なぜかのどかの腰が弾かれたように浮き上がる。

 

そして、彼女の体がベッドに着くと・・・・・・。

 

「う、ぐぅぅ・・・うっ・・・んっ、うぅぅ・・・うぅぅぅぅ・・・!!!」

 

のどかは先ほどと同じようにうめき声を上げながら苦しみ、さらには首を左右に振って身をよじらせ、苦痛から逃れるようにもがき始めた。

 

「アタシが、もっと苦しめてあげる・・・フフフ♪」

 

そんな彼女を見つめるしんらの表情は不敵な笑みを浮かべていたのであった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は、しんらが病室に入る数分前に遡る・・・・・・。

 

とある山の木の上で昼寝を決め込んでいるダルイゼン。そこにクルシーナが姿を現す。

 

「もう、戻ってきたのか・・・」

 

「様子見に行っただけじゃん、悪いか?」

 

あんまりなダルイゼンの態度に、クルシーナは不機嫌そうな口調で言う。

 

「で、キュアグレースの様子はどうだった?」

 

「・・・昨日とそんなに変わってない。中のメガパーツも出てくる様子はないし、大分かかるんじゃないの?」

 

「そうか・・・」

 

クルシーナの報告に、ダルイゼンは素っ気なく答えると木の上で昼寝をしようとする。

 

「なあ・・・・・・」

 

「・・・・・・何?」

 

「クルシーナってどうやって生まれたの?」

 

ダルイゼンの突然の問いに、クルシーナはきょとんとする。そして、顰めたような表情をする。

 

「・・・そんなこと知ってどうすんのよ?」

 

「単純な興味だけど?」

 

「っ・・・」

 

ダルイゼンの淡々とした言葉に、クルシーナは不機嫌な態度を余計に不機嫌にさせる。

 

「覚えてないわよ、そんなこと。そもそもそこまでの記憶なんか持ってない」

 

「あっそ・・・」

 

「っ・・・聞いてきといてなんだよ、その態度は。お前だって覚えてないだろ? 自分の宿主なんか」

 

イラっとしたクルシーナが攻撃的な口調になる。

 

「覚えてないね。別に思い出さなくてもいいし・・・」

 

「・・・ふん」

 

ダルイゼンの興味なさげな様子に、クルシーナは鼻を鳴らしてそっぽを向く

 

「・・・ここに居たってイライラするだけだし、あっち行ってるわ」

 

クルシーナはそう吐き捨てると、その場から姿を消す。

 

病院へと戻ったクルシーナは自分がメガパーツを入れた少女の様子を確認するために、病院の窓から侵入して様子を伺う。

 

「・・・ふむ、まだ起きる様子はないわね」

 

クルシーナは赤い靄に包まれている少女を見てそう言った後、病室から廊下へ出て、キュアグレースがいるであろう病室の方へと歩いていく。

 

すると・・・病室から声が聞こえてきた。

 

『っ・・・どこが・・・どこが大丈夫なんだよ・・・!!』

 

『そうラビ・・・!! 全然・・・全然・・・大丈夫じゃないラビ・・・!!!』

 

『苦しいなら・・・苦しいって言ってくれよ・・・!!!!』

 

ドアから聞こえてくる脱走者とキュアグレースのそばにいるヒーリングアニマルの声、それが耳に通り、クルシーナは足を止める。

 

『・・・前はね・・・原因がわからないまま・・・ずっとずっと苦しいのが続いて・・・体も心も、不安で辛いままだったけど・・・今は、ビョーゲンズのせいだって、知ってるもん・・・』

 

『・・・・・・・・・』

 

クルシーナは黙ったまま、扉の近くの壁に背中を預けてよく聞こうとする。

 

『体はやっぱり辛いけど・・・でもね、心は頑張れる・・・だってね・・・ラビリンがいてくれるもん・・・かすみちゃんも・・・一緒にいてくれるから・・・ラビリンと出会って・・・ビョーゲンズと戦う力をもらったもん・・・毎朝ランニングもしてるもん・・・かすみちゃんとも出会って・・・元気になれる気持ちをもらえてるもん・・・』

 

『・・・そうラビ。のどかは強くなったラビ・・・』

 

キュアグレースの弱々しい声、ヒーリングアニマルの涙声・・・・・・それを聞いても、クルシーナは何も動じることなく聞いている。

 

『私は、のどかに何もできてない・・・何もしてやれてない・・・何も、与えてやれてない・・・守れてすらいない・・・!! 私はただ単に他人を傷つけて・・・良いように利用されて・・・こうやって苦しむ人を前に・・・何も、できてない・・・・・・のどかが、大好きなのに・・・!! 私は・・・友達、失格だよぉ・・・ぅぅ・・・』

 

『そんなこと、ないよ・・・かすみちゃんがいてくれたから・・・私も元気付けられたし、健康なままでもいられたんだよ・・・かすみちゃんがいて傷ついたなんて思ってない・・・誰にでも優しいかすみちゃんが何かしたなんて、私は信じてない・・・だって、かすみちゃんは私の、大切な・・・友達、だから・・・』

 

『っ、のどかぁ・・・』

 

『だから、もう・・・泣かないで・・・』

 

「っ・・・」

 

脱走者の嘆く声、クルシーナはその言葉に眉を顰め始めた。

 

『ありがとう・・・のどか、大好きだよ・・・』

 

『私も・・・かすみちゃんのことが、大好き・・・』

 

「くっ・・・!!!」

 

クルシーナはキュアグレースと脱走者の愛の告白のような言葉に、歯をギリギリと食いしばる。

 

「・・・・・・ムカつく」

 

イラっとした気持ちを表すかのように、クルシーナは無機質な声でボソリと呟いた。彼女の心の中には、この病室の中にいる奴らを不幸にさせてやりたいという感情が湧いてきていた。

 

『・・・思い出すなぁ・・・私と、一緒に病気を治そうと約束した・・・お友達・・・』

 

「っ!!??」

 

その直後、クルシーナはキュアグレースが発した言葉に驚いたように目を見開く。

 

もしかして、あいつ・・・あの時のこと、覚えてて・・・??

 

でも・・・・・・・・・。

 

「うざっ・・・」

 

クルシーナはそれだけ吐き捨てるように言うと、中折れハットを外して、その本人であるウツバットと目を合わせる。

 

「ウツバット・・・どっか遊んでて」

 

「ウツ? でも・・・」

 

「いいからどっか行ってろっ・・・!!」

 

ウツバットは急にクルシーナがやり出すことに疑問を抱いていたが、クルシーナが怒りの声をあげる。なにやらクルシーナはイライラしたような様子だった。

 

「・・・・・・わかったウツ」

 

ウツバットはクルシーナの意図を察すると、帽子からコウモリの姿に戻るとどこかへ飛び去っていく。

 

それを見届けたクルシーナは指をパチンと鳴らすと、悪魔のツノとサソリの尻尾を隠し、人間の姿へと変える。そして、マジシャンのような衣装を白いワンピースへと変え、手に水の入ったビンのようなボトルを取り出すとその中に垂れ下がったような白い花ーーーースノードロップを生み出して入れる。

 

そう準備を整えると、クルシーナはキュアグレースの病室の前に立つと、扉をノックして中に入ったのであった。

 

そう・・・つまりはのどかの病室に入ってきたしんらはクルシーナがなりすました姿だったのだ。正しくは、過去の自分の記憶を元にその姿を真似ただけとも言えるだろう。

 

クルシーナはしんらを装いながらも、何かを虎視眈々と伺っていた。のどかに挨拶をかわしながらも、彼女の中のメガパーツを様子を見ていた。

 

(まだ出てくる気配はないわね。待ってんのも面倒だし、隙を見つけてどうにかするか・・・)

 

クルシーナはメガパーツをどうにかして外に出そうと目論んでいたが、そこへタイミングが悪く、ちゆたちプリキュアの面々が来てしまったのだ。

 

(なんで、ここに来るんだよ、あいつらが・・・。まあ、適当に仲良くしておくか・・・)

 

クルシーナはそう考えながら適当に挨拶を交わし、人の良い人物を演じた。青いやつが何か違和感を感じたり、新入りに抱かれている子犬のヒーリングアニマルが何やら怯えているのが気になった。

 

(この青いやつと、この子犬・・・アタシの正体に気づいてるか? 見透かされても、厄介だな・・・)

 

ここでビョーゲンズだとバレるのはまずいと感じていたが、黄色のプリキュアに変身する茶髪のツインテールが話を逸らしてくれたのは好都合だった。新入りの話で余計に反らせたのも好都合だろう。

 

そんな時、キュアグレースが苦しみだし、脱走者の握っている手から白い光が出始めたのだ。

 

(こいつ・・・そうか・・・! やっぱりな・・・!!)

 

脱走者から白いオーラを発しているのも見えたクルシーナは心の中でほくそ笑んだ。まさか、こいつにそのような能力があるとは・・・・・・もう間違いないだろう。

 

(とりあえず、メガパーツをどうにかするなら今だな・・・)

 

脱走者のことも気になるが、とりあえずはキュアグレースの中のメガパーツをどうにかするべく、心配を装ってかすみと一緒に手を握り、彼女に赤いオーラを注入しメガパーツを活性化させる。

 

そして、キュアグレースの体内のメガパーツは、赤い靄となって窓から飛び出していった。彼女の心配する演技をしながら、メガパーツが出ていった窓の外を見つめる。

 

(よし、メガパーツは大丈夫そうだな・・・キュアグレースは・・・フフフ、まだ苦しんでるわね・・・)

 

一方で、キュアグレースを見つめると彼女は全く元気を取り戻していなかった。クルシーナはすでに彼女の中からあるものがないことを察していたため、心の中で笑みを浮かべていた。

 

さらにはキュアグレースのその体を再び、赤い靄が侵食しているのも見えていた。

 

そして、それに気づかないプリキュアたちと脱走者は、何も知らない自分にキュアグレースを託すとメガパーツを追って病室へと飛び出していく。

 

(出ていったわね・・・今、この部屋にいるのはアタシとあいつだけ・・・フフフ・・・)

 

自分が誰なのかも気づかず、自分に託すなんてなんともバカな奴らだ。

 

プリキュアたちが出ていった後、クルシーナはそう思いながら、隠していた不敵な笑みを浮かべ続けていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、のどかの体内から飛び出していったメガパーツを追って、飛び出していったちゆたち。病院の裏にある山の方へと赤い靄が向かっていったのが見えて、追うように駆け出していた。

 

と、そんな時だった・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

かすみがふと足を止めて、背後を振り向く。

 

「? かすみ?」

 

それに気づいたちゆが足を止めて、かすみに声をかける。彼女の表情は眉をハの字にしていて、何か引っかかることがあるような様子だった。

 

それは、あのしんらという少女だった。のどかの病院時代の友人で、一緒に前の病気を一緒に治していたと呟いていた。

 

かすみが違和感を感じていたのは、しんら自体ではなく、彼女の持っていたスノードロップのハーバリウム。その中からわずかな・・・・・・。

 

それにしんらの手から微量な・・・・・・。

 

「っ!?」

 

かすみはもしかしてと言わんばかりに目を見開くと、すぐに険しい表情へと変わる。

 

「かすみ、どうしたの・・・?」

 

「・・・ちゆ、先に行ってくれ」

 

「え・・・?」

 

ちゆの疑問の声も気にせずに、かすみは病院へと引き返していく。

 

「ちょっ、待って!! かすみ!!」

 

ちゆは突然、病院へと戻っていったかすみに叫びながら手を伸ばした。

 

「ちゆちー!!」

 

「急ぎませんと・・・!!」

 

「っ・・・・・・」

 

そこへひなたとアスミの声が聞こえてくる。かすみはどうしたのだろうと気になるが、今はのどかの元気を奪ったであろうメガパーツを追わないと・・・!!

 

ちゆはそう思いながら、かすみのことも心配しつつ、後ろ髪を引かれながらも山の方へと駆け出していく。

 

(あの、しんらというやつ・・・もしかして!!!)

 

かすみは嫌な予感を感じつつ、のどかと彼女がいるであろう病室へと駆け出していくのであった・・・・・・。

 

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