ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
ケダリーに続いて、新たなビョーゲンズが登場!
そして、かすみは・・・・・・?
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・・・・・・・」
クルシーナは病気に苦しむのどかを抱えたまま、病院の裏の山の中へと入っていた。プリキュアたちと遭遇すると面倒なことになるので、別のルートから山の中を歩いていた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「フフフ♪」
クルシーナは、苦しそうに呼吸をするのどかに笑みを浮かべる。連れて行かれていることに気づかないことから、意識は朦朧としている様子。元気や体力がないせいで、症状が重くなっているのは確かだが、容態は安定しているので、今のところ問題はないと踏んでいた。
それも、自身が体に埋め込んだテラパーツのおかげなのだが・・・・・・。
ダルイゼンと合流しようと考え、ゆっくりと歩いていると・・・・・・。
「クルシーナァァァァァー!!!!」
「っ・・・」
聞き覚えのある叫び声に顔を顰めるとその場で立ち止まり、首を横に倒す。クルシーナの首スレスレで何かが通り過ぎ、自身の立っていたところの前に何かが地面に衝突した。
クルシーナは首を戻すと衝突した場所を不機嫌そうな表情で見つめる。
「ウツバット、危ないじゃないの!! 猛スピードで来なくてもいいっての!!」
「ウツゥ・・・」
顔面を打ったのか顔を抑えるウツバットをよそに、叱責するような言葉を吐くクルシーナ。
「ゥゥゥ・・・それはごめんウツ・・・あっ!?」
ウツバットは配慮が足りなかったと謝るが、それと同時にあることを思い出して顔をあげる。
「それどころじゃないウツ!! 新しいテラビョーゲンが生まれそうウツ!!」
「っ!?・・・それは本当?」
「本当ウツ!! プリキュアの向かい側にある部屋の窓から赤い靄が飛び出して行ったのを見たウツ!!」
ウツバットの報告に、目を見開くクルシーナ。窓から飛び出して行ったというのであれば、それは本当だろう。
それにしても、生まれるのがやけに早い。このキュアグレースの中にいたメガパーツを活性化させたのと同じすぐに出てきた。あいつの赤い靄の力なのか、それともメガパーツを入れたからか・・・?
ネブソックやコリーノみたいに感じて、正直期待はできないが、とりあえずは見にいくのもいいだろう。
「・・・そいつは、どこに行った?」
「この病院の裏山に飛んで行ったウツ。多分、山の奥にいると思うウツ」
「・・・わかった。とりあえず、行ってみるか。帽子に戻れ」
クルシーナはテラビョーゲンとなる赤い靄を追ってみることにし、ウツバットから聞いた彼女はそう指示を出すと、ウツバットは中折れハットに変身してクルシーナの頭におさまる。
クルシーナは特に速度を変えることはなく、ゆっくりといつものペースで歩いていく。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・あれ? こいつ、確かのプリキュアの」
ウツバットはクルシーナに抱えられているのどかを見て、声をあげる。
「気づくの遅いんだよ。さっきからいただろうが」
「なんでこいつがいるウツ? しかも、苦しそうだし・・・」
クルシーナは不快感を隠さずに言うと、ウツバットは彼女を心配そうな口調で言う。
「アタシが連れ出してやったのよ。もっと苦しみを味あわせてやるために」
「なるほどウツ・・・・・・」
クルシーナが不機嫌そうに説明すると、ウツバットは気の進まなそうな声を出す。
「・・・何、その声。アタシのやり方に文句あるわけ?」
「い、いや!! クルシーナの気持ちを考えたら当然ウツ!! 昔、そういう目に遭ったなって思ったら、辛くて・・・」
クルシーナが反応してこちらを睨みつけてきたので、ウツバットは昔の話を思い出しながら肯定する。
「・・・・・・忘れたわよ、昔のことなんか」
クルシーナはそう吐き捨てると、歩くスピードが速くなっていく。
しばらく歩いていくと、山の奥の開けた場所へと出てきた。そこには一本の木が立っているのが見えた。
そして、その木の側には、何やら赤い靄の塊のようなものが見えた。
「・・・あれだな」
クルシーナは真ん中に立っている一本の木にのどかを降ろして寄りかからせると、うねうねと蠢いている赤い靄に近づいていく。よくみると着地してしゃがみ込んだままの体勢の少女が中にいるのが見えた。
「・・・この生まれ方」
クルシーナは、テラビョーゲンの誕生の仕方に何か引っかかるような感じがした。そういえば、自分はどのようにして生まれたのかと。
そんなことを考えているうちに少女はゆっくりと立ち上がり、赤い靄が静かに薄れていく。
少女の姿は、長い金髪の髪を縦ロールに、白いレースの入ったピンク色のドレスを着込んだ格好をしており、肌はクルシーナと同じような薄いピンク色の肌をしていた。
「・・・・・・・・・」
少女は自分の手を見ながら、握ったり開いたりを繰り返していた。
「ワタクシの、体・・・ちゃんと、動きますわ・・・」
少女は体全体を見ながらそう言った。
「アンタが、新しいテラビョーゲン?」
「っ!!」
そこへクルシーナが背後から話しかけると、少女は反応してこちらを振り向く。
少女は自分の後ろにいたクルシーナの笑みを見ると、自身も笑みを返し、体をそちらに向き直すと両手でドレスの裾を掴み、片足の膝を軽く曲げると腰を曲げて頭を下げた。
「お初にお目にかかりますわ、クルシーナ様。ワタクシ、シビレルダと申しますわ。以後、お見知り置きを」
「・・・随分と礼儀正しいのね」
シビレルダと名乗ったテラビョーゲンは自己紹介と挨拶を交わすと、クルシーナは感嘆とした声を出す。まるで、以前生み出したコリーノのようだった。
挨拶を終えると、シビレルダは周囲をきょろきょろと見渡す。そして、その表情を不快に顰めさせていく。
「・・・ここ一帯、全くもって不愉快ですわ。こんなところ、1秒たりともいたくないですの。クルシーナ様もそう思いますわよね?」
どうやらシビレルダは周囲の自然に不快感を覚えている様子、こちらに共感してもらおうと質問を投げかけてきた。
その様子を見たクルシーナは不敵な笑みを浮かべる。
「だったら、病気に蝕んでやればいいのよ。自分好みの空間に染めちゃえば、アンタも快感を覚えるはずよ」
「・・・そうですわね。それはいいアイデアですわ! では、早速ーーーー」
シビレルダはクルシーナの考えに共感すると、どこからかレースの入ったいかにもお嬢様っぽい日傘を取り出して差す。
「ワタクシ、クラリエット様とクルシーナ様のために、地球を病気に染め上げて差し上げますわ」
「っ!!・・・クラリエット?」
シビレルダは笑みを浮かべながらそう言うと、すぐに何かを探し始めた。しかし、クルシーナはクラリエットという名前を聞いて顔を不機嫌そうに顰める。
やっぱり、こいつ・・・クラリエットの差し金か・・・。赤い靄だったときの気配からして、そうだとは思っていたが・・・・・・。
あいつ、もう起きているのでは・・・? そうでなければ、いくら強いあいつでも赤い靄をこんなところにわざわざ飛ばす力があるわけがない。
どちらにしろ、アジトに戻って地下室を確認する必要はあるだろう。
とりあえず、まずはこいつをどう使うか・・・・・・。
「まあ! 随分と生き生きしてて不愉快ですこと。でも、これはこれで使えますわ」
クルシーナがそんなことを考えているうちに、シビレルダは気になるものを見つけたようだ。それはこの山で生えているであろうアケビだった。
「あいつ・・・もしかして・・・!」
クルシーナはシビレルダの取る行動が気になっていた。ネブソックは自分で自然を蝕み、コリーノには戦うばかりで蝕みもしなかった。なのに、このテラビョーゲンは素体となるものを探している・・・? ということは・・・?
クルシーナの驚きをよそに、シビレルダは自身の髪を手で掻き分けるように動かし、黒い塊のようなものを出現させる。
「進化くださいまし、ナノビョーゲン」
「ナノ〜・・・」
生み出されたナノビョーゲンがアケビに取り憑く。山になっている生き生きとしたアケビが病気に蝕まれていく。
「・・・!?・・・!!??」
アケビの中に宿っているエレメントさんが病気に蝕まれていく。
そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。
「メガ、ビョーゲン!!」
枝のような足を4本生やし、アケビのようなものを生やしたツルのような腕を4本生やしたメガビョーゲンが誕生した。
「メガビョーゲンを作れるのね・・・」
「やっと当たりを引いたウツね」
「ええ・・・アタシの力だけじゃないけど・・・」
シビレルダはメガビョーゲンを作ることができるテラビョーゲンであった。その事実を知るが、それは自分の力だけじゃなく、あいつの力が入っていることに不快感を感じていた。
「メガァ〜!!!」
メガビョーゲンは口から赤い光線を吐き出して、周囲の自然を病気に蝕ませていく。
「ここはちょっと様子を見ておこうかしらねぇ」
クルシーナはのどかのそばに移動すると、そのお手並みを拝見しようと見物を決め込むのであった。
クルシーナに責め立てられ、自責の念に駆られて病院から逃げ出したかすみは、森の中をさまよっていた。別にどこに行くわけでもなく、誰の元に向かっているわけでもなかった。
その表情は虚ろになっており、瞳に光が灯っていない。足元はフラフラとさせながら、一歩一歩踏みしめるかのように歩いていた。いや、おもちゃのように動かしていると言った方が正しいかもしれない。
「・・・・・・・・・」
ーーーーお前に守ることなんかできやしないんだよ。
ーーーーみんな傷つくし、苦しむだけ。
頭を空っぽにして歩いていても、クルシーナの言った言葉が呪詛のように響く。みんなを自分を置いていき、ビョーゲンズに寄り添われるあの時の悪夢が現実感を帯びてくる・・・・・・。
それが聞こえ、見えてくるたびに、目の中から何かが湧き上がってくる。
それは・・・・・・涙だった・・・・・・。
「私は・・・ビョーゲンズ・・・ビョーゲンズ・・・」
まるで機械のように無機質な声が口から出てくる。自分はこういう声を出せたのかと不気味に思う。
クルシーナによってビョーゲンズだということを彼女自らの口で暴露されたかすみ。それは否定しようのない事実だった。のどかを助けるどころか側にいて苦しめ、クルシーナによって変な洗脳すらされてしまった。いくら否定しようとしても、ビョーゲンズだということを拭い去ることができない。
否定ができない・・・そうか・・・・・・私は、ビョーゲンズの一人だったのか・・・。
かすみはその事実をクルシーナに思い知らされ、絶望に打ちひしがれていた。
かすみはちゆたちの元へ戻ることができず、ましてのどかと一緒に来なかったことで何か言われることを恐れていた。連れていかれたなどと言えるわけがない。
裏切り者・・・信じていたのに・・・あなたが側にいながら・・・どうして一緒にいなかったの・・・?
そんな言葉を彼女たちから言われることを恐れ、彼女たちに対する罪悪感も余ってかすみは病院から逃げ出してきたのだ。
のどかの両親には、側にいてあげてと言われていたのに・・・彼女たちにも迷惑をかけてしまった。連れ去られたなんて言えるわけがない、自分がやったって言われるに決まっている・・・。
こんなことを彼女の両親から聞きたくなかった・・・だから、誰にも会うことのない森の中へと逃げ出したのだ。
自分が住んでいた場所は、元々森だった。だから、ここで会えなくても、一人になったとしても、どうせ最初に戻るだけだ。森の中で暮らしていれば・・・暮らしていれば・・・何も気に病むことはない。
しかし、いくら森の中にいても彼女の心は晴れなかった。
かすみはしばらく歩いていると疲れてしまったのか、森の一本の木に寄りかかり座り込んだ。
何も・・・考えたくない・・・何も考えたくない・・・何も考えなければ・・・いずれ、全部忘れて・・・。
ピィピィッ!
「っ!」
そんな時、一羽の鳥が足元でこちらを見ているのが見えた。それは温泉に入っていたときにかすみに懐いていたいつかのヒヨドリであった。
かすみはそれをきょとんと見つめた後、微笑みそのヒヨドリへと手を伸ばした。しかし、ヒヨドリはなぜかこちらに飛んで来ない。
「っ・・・怪我、してるのか・・・?」
何かにぶつけたのか、足を怪我している様子だった。
「・・・待ってろ。何か応急処置できるもの・・・!」
かすみはすぐに服を弄って怪我を処置できるものを探す。ポケットの中に手を入れてみると・・・・・・。
「あ・・・これは・・・」
それは、ちゆが持っているように渡された白いハンカチだった。
「っ・・・!」
かすみはすぐに白いハンカチを紐になるように千切ると、ヒヨドリを片手で掬い上げ、それを負傷している足に傷を塞ぐように結びつけた。
「よし、これで大丈夫・・・」
かすみは応急処置を完了させると、ヒヨドリを地面へと降ろす。
ピィ!ピィピィピィ!!
「そうか・・・よかった・・・っ!!」
ヒヨドリはこちらを見ながらお礼を言っているようで、かすみはそう返事をした。そのときだった・・・かすみの中にある思い出が甦る。
ーーーーかすみちゃんが元気になってよかった・・・。
ーーーー私のサンドイッチと一つ交換だね♪
ーーーーありがとう、かすみちゃん、大好きだよ。
甦るのどかの笑顔。それはまるで太陽のように眩しかった。
かすみはそれを思い出し、彼女の瞳から涙をウルウルと潤ませる。
「のどかぁ・・・・・・」
愛しの少女の名前を呟く。おおらか市で一緒にお弁当を食べた時のあの笑顔は、もう見ることはできないのか・・・・・・。
心の底から大好きだって、言いたかった・・・。
ーーーーかすみは私たちの大切な友達よ。
ーーーー誰よりも気遣いができるし、大切なもののために守ろうとしてる。
ちゆの言ってくれた言葉を思い出し、いろんなことを聞き、いろんなことを学んだ。
「ちゆぅ・・・・・・」
森しか居場所のない自分に住むところを与えてくれた少女の名前。彼女からは本当にいろんなことを教わった・・・・・・。
ーーーーもぉ〜! かすみっち、何笑ってんの〜!?
ーーーーかすみっちが新たな仲間になったということで!! カンパーイ!!
ファミレスでひなたとはしゃいだ思い出。そして、ひなたのワゴンカフェが出すジュースで、一緒に歓迎会なるものをやってくれた。
「ひなたぁ・・・・・・」
ひなたの名前を呟く。いつも元気で明るく、ある時は一緒に遊んでくれたひなたの方が優しかった・・・・・・。
ーーーー私はかすみさんを怖がったりなんかしません!!
ーーーーそれはグレースやフォンテーヌ、スパークルだって一緒のはずです!!
ーーーーかすみさんは自分の力を受け入れることができる優しい方です。
ーーーー仲間として、友達として、よろしくお願いしますね
アスミがあの時に言った言葉が甦る。最初は自分を避けていたが、徐々に打ち解けていき、しまいには自分のことを大切な友達だと認めてくれた。
「アスミぃ・・・・・・」
仲良くなり、自分をフォローしてくれたアスミの名前を呟く。もっと仲良くしたかったけど、きっとそれも叶わないだろう。
「ラビリン、ペギタン、ニャトラン、ラテぇ、みんなぁ・・・・・・ヒック・・・グスッ・・・」
そして、彼女たちの相棒のヒーリングアニマル、特訓はよくわからなかったけど、いい思い出を作れたのは彼らのおかげだと、言いたかった・・・・・・。
ポロポロと涙がこぼれ・・・やがて、かすみの瞳に光が戻ってきた。彼女たちの言葉、思い出を思い出し、自分がどういう存在なのか再認識したのだ。
かすみはしばらくその場ですすり泣いた。気が済むまで泣いた。今までの悲しみを、洗い流すために。
やがて泣き声が収まると、かすみは涙を拭う。そして、彼女は立ち上がった。自分の選択をするために。
しかし、私はビョーゲンズ・・・そんな自分が彼女たちのためにやれることは・・・・・・。
かすみは意を決して、ある人物に会うために、気配のする病院の裏山へと走っていくのであった。
一方、ケダリーと交戦中のフォンテーヌたちは苦戦を強いられていた。
スパン!! スパンスパン!!
「うっ・・・うぅぅ・・・!!」
鞭のように腕をしならせながら高速で振るい、防戦一方のフォンテーヌへと隙を見せない攻撃を仕掛けるケダリー。
「きゃあぁっ!!」
フォンテーヌは吹き飛ばされたが、背後からスパークルが彼女を受け止めた。
「うっ・・・」
「フォンテーヌ!!」
「っ、あの動きを封じられれば・・・!!」
「・・・やってみます!」
フォンテーヌの言葉に、アースが彼女たちの前に出る。
「空気のエレメント!!」
アースは空気のエレメントボトルをアースウィンディハープにセットする。
「はぁっ!!」
駆け出してくるケダリーに、ハープから空気の弾を連続で放つ。
ケダリーはそれを素早く動いて避けていったが、その弾の一つがケダリーの近くで破裂すると、その弾は空気の膜のようになって、ケダリーを包み込む。
「っ!? ふっ!! っ!!」
空気の膜の中に閉じ込められたケダリーは中で暴れるも、膜を打ち破って出ることができなくなった。
「やったー!!」
「そのまま一気に・・・!!!」
スパークルとフォンテーヌが動きを封じることに成功して喜ぶ中、アースはそのまま風のエレメントボトルを取り出す。
「アースウィンディハープ!」
風のエレメントボトルをハープにセットする。
「エレメントチャージ!!」
アースはハープを手に取って、そう叫ぶとハープの弦を鳴らして音を奏でる。
「舞い上がれ! 癒しの風!!」
手を上に掲げると彼女の周りに紫色の風が集まり始め、ハープへとその力が集まっていく。
「プリキュア! ヒーリング・ハリケーン!!!」
アースはハープを上に掲げてから、それを振り下ろすとハープから無数の白い羽を纏った薄紫色の竜巻のようなエネルギーが放たれる。
そのエネルギーは一直線に空気の膜に包まれたケダリーへと向かい、直撃する。
「うっ・・・うぁぁぁっ!! ぼく、きえるっ・・・ヒーリン、グッバ〜イ・・・」
ケダリーは自分が敗北したことを悟りながら、そのまま光のエネルギーに包まれて消えていった。
「お大事に」
ケダリーが浄化されたと同時に、彼が蝕んだ自然が元の色を取り戻していく。
「・・・ケダリーは浄化したわ!!」
「へぇ・・・やるじゃん」
フォンテーヌがそう叫ぶと、ダルイゼンは感心したような口調でそう言う。
「っ? あっちでクルシーナが何かやってるみたいだな」
ダルイゼンは山の奥に視線を向けると不敵な笑みを浮かべた。
「なんですって!?」
「クルシーナがやってるって、どういうこと!?」
「さあな・・・お前たちの目で確かめたら?」
険しい表情でそう叫ぶフォンテーヌとスパークルに、ダルイゼンはそう言い放つとそのまま姿を消した。
「みなさん・・・!」
そこへラテを抱えてアースが戻ってくる。
「ラテ・・・!?」
「え、なんで戻ってないの・・・!?」
「どうやら・・・まだ終わっていないようです・・・」
ラテが元気になっていないことをフォンテーヌとスパークルが動揺している中、アースは険しい表情で聴診器をかざして、彼女の心の声を聞くことに。
(山の奥で割れる木の実さんが泣いてるラテ・・・山の奥で何かが泣いてるラテ・・・)
「何かって、何・・・?」
「わかりません・・・」
「かなり曖昧な表現ね・・・」
スパークルは疑問を抱くも、アースとフォンテーヌには心当たりがない。
「クゥ〜ン・・・ウゥ〜ン・・・」
「? どうしたのですか?」
ラテが何かを訴えるように鳴くと、アースはさらに聴診器をかざす。
(のどかとラビリンがピンチラテ・・・)
「「「っ!?」」」
プリキュアの3人は驚愕した。なんと、病室にいるはずののどかとラビリンに何かあったというのだ。
「え、なんで・・・のどかっちにはかすみっちがいるんじゃないの!?」
「のどかとかすみに何かあったんじゃ・・・!?」
「行きましょう!! もしかしたら、この山の奥にいるのかもしれません!!」
プリキュア三人は嫌な予感を感じ、とりあえずはビョーゲンズがいると思われる山の奥に急いでいくことにしたのであった。
「メガァ〜!!」
シビレルダの生み出したメガビョーゲンは山の奥で赤い光線を吐き出しながら、開けた場所の自然を蝕み続けていた。
「おーっほっほっほっほ!! その調子ですわ!! どんどん蝕んでしまいなさい!」
シビレルダはメガビョーゲンが順調に病気を侵攻させていっていることに高笑いをしていた。
「この辺は大方、蝕んできたわねぇ。そろそろ場所を移動したらどう?」
「えぇ、そのつもりですわ。メガビョーゲン!! あっちに行きますわよ!!」
「メガァ・・・!」
クルシーナのアドバイスに、最初からそのつもりだったシビレルダはメガビョーゲンに指示を出して、クルシーナが来た道とは別の道から他の場所へと向かっていく。
「クルシーナ様はいかないんですの?」
「アタシはちょっとね。こいつもいるし、やることがあるから。任せるわ」
「・・・こいつって、もしかしてこの人間はプリキュアですの?」
シビレルダはクルシーナにそう尋ねると、投げやりな返事が返ってきたので、クルシーナの横で苦しそうに呼吸をしているのどかを見やる。
「ええ、そうよ。まあ、今は変身できないけどね。ヒーリングアニマルは捕らえてるし、こいつもこんな状態じゃあねぇ」
クルシーナは不敵に笑いながらそう言うと、シビレルダは険しい表情をし始める。
「・・・もしやれるのであれば、ここでやっておくべきではありませんの? 今のうちに邪魔な芽は積んでおくべきだと思いますわ」
シビレルダはどうやらそのプリキュアを始末すべきだと、クルシーナに進言しているようだ。
「まあ、待ちなさいよ。こいつは意外と使えんの、どうせ他のプリキュアどももこっちに来るだろうから、ちょっと利用してやろうと思ってね。そうすれば、こいつだけじゃなくて、そいつらもまとめて始末できると思うけど?」
「ですけど・・・!!」
「・・・アタシの作戦に、なんか文句あんの?」
クルシーナはシビレルダを制しながらそう言うも、食い下がろうとする彼女に脅すような低い声を発する。
クルシーナが考えているのは、このキュアグレースを人質にして、あいつらの牽制と戦力低下に使おうというもの。一人欠けたプリキュアなど自分の敵でもないし、シビレルダとそのメガビョーゲンに足止めをしてもらって体力を消耗させれば、こっちが優勢に働くであろうということだ。
「・・・クルシーナ様がそう言うのであれば、ワタクシは何も言いませんわ」
身が震えたシビレルダは一応納得しておくと、ここに来るであろうプリキュアたちを迎え撃つためにメガビョーゲンと一緒に移動していった。
「ふん!」
クルシーナはその様子を見て、不機嫌そうに鼻を鳴らす。そもそもあいつは、地下室に眠っているクラリエットが放った赤い靄が病院の患者に取り憑いてビョーゲンズとして進化したのだろう。そのクラリエットが元になっているというだけでも気に入らない。
「・・・・・・・・・」
シビレルダが向かっていくのを見送った後、クルシーナは木に寄りかかって昼寝を決め込もうとしたが、その直後に険しい表情を浮かべる。
「・・・そこにいんだろ?」
さっきから感じていた気配の方を向き、不機嫌そう叫びをあげる。
そして、見つめている木の陰から出てきたのは、脱走者ことーーーーかすみだった。
「クルシーナ・・・・・・」
かすみは観念して出てくると、クルシーナの前へと歩いて出ていく。
「アタシに何の用? あんだけ言ったのに、のこのこ出てくるなんてさぁ」
クルシーナは不機嫌そうな様子でそう言った。ビョーゲンズだという自覚のないやつはムカつくだけだし、むしろここで吸収して消滅させてやりたい気分だ。
「・・・お前に話がある」
「どうせアンタの話なんか面白くもなんともないし。キュアグレースを返せだとかいうくせに。聞く前からお断りだっつーの」
かすみは真剣な表情でいうが、クルシーナはあっちにいけと言わんばかりにシッシッと手を払うような動作をする。
「違う!! 頼むから聞いてくれ・・・!!!!」
かすみは叫びながら懇願する。話を聞いてくれなければ、今度こそのどかは助からないかもしれない。だからこそ、クルシーナと慎重に話さないといけないと感じていた。
「何よ、その言い方、アタシが生み出した存在程度の分際で。それが人にモノを頼む態度なのかしらねぇ?」
クルシーナは嫌味っぽく吐き捨てると、さらにそっぽを向き始める。正直、こいつの話は聞きたくない。だからこそ、人に頼むなどというできもしない誠意を要求する。どうせできないだろうけど。
「っ・・・!!」
かすみはクルシーナのその反応に歯を食いしばりながら悔しそうにすると、怒る気持ちを落ち着かせて冷静になる。そして、口を開いた。
「クルシーナ様、どうか私の話を聞いてください・・・!!!!」
かすみは精一杯の誠意のある言葉で、クルシーナに懇願した。これものどかを助けるために・・・・・・。
クルシーナはその言葉に片目を開けるという反応を見せると、かすみに向き直る。
「そこまで言うんだったら、聞いてやらなくもないけど?」
誠意を見せたことに内心驚いているクルシーナは、かすみの話を聞いてやることにした。どうせこいつは、聞いてやらないと引かないだろうし、仕方なく聞いてやるのだ。お願いを聞くかは別だが。
かすみは考えるようにしばらく沈黙した後、彼女の前で膝をつき、両手と頭を地面につけた。
そして・・・・・・・・・。
「お願いします。のどかを、これ以上苦しめないでください!!!!」
断腸の思いを持って、クルシーナに向かってそう叫んだのであった。