ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
のどかとオリ幹部、初会話だと思います!
本編の新作がいよいよ来週28日から放送になりましたね。楽しみです!
「メガー!!」
クルシーナのメガビョーゲンはクラゲが泳いでいる水槽あたりを襲っていた。不健康そうな頭部の口から病気を吐き出す。
「いいわよ。ここも真っ赤な病気に染めちゃいなさい」
「メガビョーゲン!」
メガビョーゲンは触手から玉を吐き出しながら、他の水槽も病気へと蝕んでいく。
「順調に行きそうウツね」
「ええ、大分大きくなったわね」
メガビョーゲンは先ほど深海魚のコーナーにいたときよりも大きくなっていた。この調子でいけば、この水族館じゅうを蝕めるのも時間の問題だろう。
一方、メガビョーゲンの中に閉じ込められているラビリンは檻の中で病気に蝕まれるのを見ているしかできない。
「このままじゃ・・・!」
ラビリンはなんとか外から出ようと檻の鉄格子に力を入れるも全く動かない。
「あ、開かないラビ・・・!」
体の中で体当たりをしようとする。しかし、壁は固くビクともせず、逆に自分の体がはじかれてボロボロになるだけ。
「メガー!!」
中で暴れるラビリンを鬱陶しく感じたのか、右の触手を小さな水槽の中へと伸ばして水を吸い上げる。まるで汲み上げるかのように頭部へと吸収すると・・・。
「ラビ!? うっ・・・ゲホッゲホッ・・・!」
檻の中に赤い霧が降りてきて、吸ってしまいむせるラビリン。
「アッハハハ! そうやって暴れてればどうにかなると思ってんの?」
「おとなしくしてろウツ。どうせお前なんかが頑張ったって何もできないウツ」
ラビリンの無駄な抵抗をあざ笑う二人。
「ゲホゲホゲホ!!・・・あ・・・」
赤い霧を大量に浴びてしまい、耐えきれなくなって倒れてしまうラビリン。額には脂汗が滲んでいた。
「フフフ」
その様子をクルシーナは愉快そうに見つめる。
「さて、次の場所に行きましょう」
「ウツ!」
「メガビョーゲン!」
クルシーナとメガビョーゲンはさらに病気を拡大するべく、移動を再開した。
「の、のどかぁ・・・」
弱々しい声でパートナーの名前を口にするラビリン。赤い霧はもう出ていないが、今は立ち上がれないほどに無力感が漂っていた。
水族館の魚や動物たちも、きっとラテ様も、みんな苦しんでるのに・・・!!
「のどかぁーーー!!!!」
助けられない悔しさから、ラビリンはパートナーの名前を叫ぶのであった。
のどかがラビリンを探しに行く数分前ーーーー。
「急いでメガビョーゲンを探しましょう! 被害が大きくなる前に!」
ちゆは先にメガビョーゲンを倒すことを提案する。ペギタンのことも心配だが、メガビョーゲンの被害が大きくなるのも見過ごせない。病気が拡大する前に阻止するべきだ。
しかし、それに反対したのはひなただった。
「ちょっと待ってよ!ペギタンとラビリンを見つけるのが先でしょ!?」
「でも・・・!」
「ペギタンだってちゆちーのこと探してるよ!一人で心細くて泣いてるかも!! ラビリンだってきっとのどかっちを探してるよ!!」
ひなたはペギタンを見つけるのが先決だと主張する。メガビョーゲンの被害が大きくなるのはわかるが、ペギタンのことだって大事だ。内気で寂しがり屋なペギタンが一人でいるのを耐えられるわけがない。
ラビリンは人一倍正義感が強い。プリキュアになれないとお手当てができないのも知っている。だから、メガビョーゲンを見つけていたら真っ先にのどかたちを探しに行くだろう。
「メガビョーゲンが現れたのよ!? 放っておくわけにはいかないじゃない!!」
お互いがどっちも大事だと思っている。それが故にどちらかしか選べないことで、二人の主張は拮抗していた。
そんな二人に声をかけたのはのどかだった。
「どっちも探そう!」
のどかの言葉に、二人は彼女の方を向く。
「ペギタンは私たちの大切なお友達だし、それにメガビョーゲンを見つけても、ちゆちゃん、プリキュアになれないでしょ? 私もラビリンを探さないとプリキュアになれない」
のどかはきっとメガビョーゲンを探していれば、ペギタンが見つかると信じていた。もちろん、ラビリンのことも。これだけ騒ぎになっているのであれば、ペギタンとラビリンだってきっとメガビョーゲンのところに向かっているはず。だから、きっと見つかるはずなのだ。
「ね? 早く見つけてお手当てしよう!」
二人に笑顔を見せるのどか。言い争いよりも、とにかく動いた方が先決。その過程でどっちもやればいいのだ。
「・・・わかったわ」
「行こっ! ちゆちー」
「ちょっと、ひなた・・・!」
ひなたはちゆの手を取ると走り出した。
二人が駆け出していった、その時である・・・。
のどかぁーーーーー!!!!
「!? ラビリン!!」
どこからかラビリンの叫ぶ声が聞こえた。声の方向からすると、どうやらこの館内にいるみたいだ。
のどかもラビリンを探そうと走り出した。
水族館内を走っていると・・・・・・。
「あっ・・・!」
先ほど見ていたクラゲの水槽が赤く染まっているのを見つけた。それはまるで絵の具をこぼして、水と混ざったかのような色だ。
「クラゲさんたちが・・・ひどい・・・!」
クラゲがぐったりと床に横たわっているのが見える。病気によって水が汚れたせいで体が動かなくなっている様子だ。
他の水槽を見れば、クラゲの水槽と同じように全てが赤く染まっている。
「早くラビリンを見つけて・・・メガビョーゲンを浄化しないと・・・!」
のどかぁーーーー!!!!
「!?」
また、ラビリンの叫ぶ声が聞こえた。今度は暗い通路の方向だ。のどかhそこへと走っていく。
(ラビリン、どこ? どこへ行ったの?)
「ラビリーン!!」
のどかは通路の向こうへと名前を呼ぶも、返事は返ってこない。
もしラビリンに何かあったら・・・! そんなの嫌だ・・・! 絶対に見つける!!
のどかはそう思いながら、暗い通路へと走っていくのであった。
「メガー!!」
上の頭部から赤い霧を吐き出し、プールの水を病気へと蝕ませていく。
メガビョーゲンはさらに二本の触手からプールの水を吸い上げ、頭部の口から赤い霧を更に吐き出し、観客席やステージ上の看板を病気へと侵していく。
「かなり成長したウツね」
「本当ねぇ、かなり強くなってるんじゃない?」
クルシーナは不敵な笑みを浮かべる。
ここに来るまでにこいつを生み出した深海魚コーナーの他にも多くの場所を病気で蝕んだ。クラゲのある円柱のような水槽、アシカやペンギンが飼われている水槽、おみやげコーナー、大海の巨大な水槽、そして通路のような水槽とほとんどの場所を蝕んできた。
これならここ一帯も本当に自分たちの住処にできる。お父様も喜んでくれるだろう。
あとはプリキュアさえどうにかしてしまえば・・・ここ一帯の病気を阻むものは誰もいなくなる。
「あ・・・あぁ・・・」
一方、檻の中で倒れ伏しているラビリンは絶望に近い感情を抱いていた。メガビョーゲンが度々触手から水を吸収して赤い霧を浴びせてくるため、体がうまく動かない。
本当に自分がこんなにも無力だったとは・・・。
「これでわかったウツ? お前がどんなに努力をしたって足元にも及ばないウツ」
そんなラビリンの感情とは裏腹に、ウツバットは言葉を吐いてくる。
「な・・・なん、で・・・」
「ウツ?」
「なんで、ビョーゲンズなんかと・・・一緒、に・・・」
ラビリンは言葉を絞り出しながら、ウツバットに問いかける。
ウツバットはしばらくの間の後、口を開いた。まあ、こいつに話しても特に問題はない。
「決まってるだろ。人間なんか自分勝手で救う価値なんかないからウツ」
「え・・・?」
「人間は酷いウツ。動物たちをこんなところに閉じ込めて見せしめにしてるなんて、呆れて物が言えないウツ。そんな勝手な生き物の星なんかをお手当てして何の意味があるウツ。いっそ腐ってしまえばいいウツ」
ウツバットは若干怒りを滲ませながら言う。ラビリンはそれを聞いて言葉を絞り出す。
「に、人間にだって・・・いい人はいる、ラビ。私の、パートナー、だって・・・困ってたところを・・・助けてくれた・・・ラビ」
ラビリンは反論する。確かに最初にパートナーを探していた頃は、人間たちに跳ね飛ばされ、子供達に追いかけられたりして酷い目にあった。人間なんか信じられないと思った。
でも、のどかは苦しんでいる人を放っておけないと私たちを助けに来てくれた。その言葉が自分の想いと重なり、心の肉球にキュンときたのだ。それで思ったのだ、人間にだっていい人はいるんだと。
「ハッ、でもお前のパートナーはきやしないじゃない。見捨てて逃げたんじゃないの?」
「の・・・のどかは、絶対、来る、ラビ・・・」
ラビリンはクルシーナを睨みながら言った。のどかはそんなことをするようなパートナーじゃない。きっと来てくれるはず。
「のどかぁーーー!!!!」
ラビリンはそう信じて、自分がここにいるんだということをのどかに知らせるために叫ぶ。
クルシーナはそれを見て「ふん」と鼻を鳴らす。
「まあ、せいぜいあがけば? どうせメガビョーゲンを止められるわけがないけど」
クルシーナはメガビョーゲンの頭部に目を向けると、何やら頭部の上にサンゴみたいなものが生えていて、メガビョーゲンが何やらビクンビクンと震えている。
「ん?」
クルシーナは疑念の表情を浮かべる。今までメガビョーゲンにこんな反応をすることがあっただろうか?
そんなことを考えていると、サンゴの穴から赤い玉のようなものが顔を覗かせていき、ポンという音と共に玉が飛び出した。
「おっと!」
「ウツ!」
クルシーナとウツバットは赤い玉をそれぞれキャッチする。その形はまるでサンゴの卵のようで、大きさは手のひらにすっぽりと収まるサイズだった。
二人がそれぞれ取ったものと合わせると全部で4つある。
「順調に大きくなっているってことね」
「キングビョーゲン様に喜んでもらうのは秒読みじゃないかウツ?」
ウツバットは赤い玉をクルシーナに渡すと、帽子の姿へと戻る。
バン!!!!!!
そのとき、観客席側にある扉が強く開かれた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
出てきたのはキュアグレースこと、花寺のどかだった。走ってきたのか息がかなり上がっていて、汗もかいている。
「あら、遅かったじゃない。もう来ないかと思ったわよ」
クルシーナはプリキュアが来ることを見越したかのような言い方で話す。ラビリンがいる時点でプリキュアがいることは確定だろう。他のプリキュアだってどこかにいるはず。
「! ラビリン!!」
ステージの上にいるメガビョーゲンの中で倒れ伏しているラビリンに向かって叫ぶ。
「の、のどかぁ・・・」
のどかの声が聞こえたラビリンは涙をポロポロとこぼす。やっぱり、助けに来てくれた・・・!
のどかはその横にいるクルシーナの姿を見入る。
「ラビリンに何をしたの!?」
「何って、騒がれると困るから大人しくさせてやっただけよ」
のどかの若干怒りを滲ませた言葉に、クルシーナは当然だと言わんばかりに答える。
「ひどい・・・なんてひどいことを・・・!」
ラビリンはすでにボロボロだ。クルシーナやメガビョーゲンに手ひどく痛めつけられたのであろう。のどかは動揺を隠せなかった。
「そうだ。本人の前でもっと痛めつけたらどうなるのかしらねぇ? メガビョーゲン!」
「メガー!」
ニヤッと笑うクルシーナはメガビョーゲンに指示をし、メガビョーゲンは両サイドの触手をくるくると巻き戻すと、体を前へと屈むように縮こませる。すると、檻の中が見えなくなるほどに閉ざされた。
「うぅ・・・うあぁ・・・あぁ・・・!」
檻の中からラビリンが苦しむ声が聞こえてくる。
「!? やめて!!」
「やめてと言われてやめるやつがいるかよ」
「あぁ・・・ああ・・・あ・・・」
のどかの叫びに、クルシーナは嘲笑する。相手の苦しむ顔が拝めているのにやめるなんてもってのほかだ。ラビリンの苦しむ声は止まらない。
のどかは今すぐにでも助けたいが、プリキュアになっていない自分があの怪物に立ち向かっても勝てるはずがない。それはラビリンがいないときに経験した。
「やめて・・・お願いだから、やめてよ・・・!」
膝をついて泣きそうな声でポロポロと涙を流すのどか。ラビリンがいるのに何もできない自分を皮下するばかり。
クルシーナはそれを見て、顎に手を当てて考え始める。
このままあいつを再起不能にして、少しでも戦力を減らしてやりたいところ。まあ、正直3人が2人になったところで大して大差はないけど、ついでにあいつのもっと苦しむ顔を見られれば、万々歳だ。
ふと、右手に持っているサンゴの卵を見る。こいつは、メガビョーゲンから生まれた卵。この前の小娘の取り憑いていた赤いモヤモヤを思い出すと・・・。
ーーーーそうだ。いいこと思いついちゃった。
クルシーナは再び悪い顔をすると、のどかの方に顔を向ける。
「わかった、やめてあげる」
「え・・・?」
「クルシーナ!?」
驚いて顔を上げるのどかとウツバット。
「だから、このヒーリングアニマルを痛めつけるのはやめてあげるって言ってんの」
「本当に・・・?」
「ええ」
のどかの言葉に肯定するクルシーナ。
「クルシーナ、何言ってるウツ!?」
「お前は黙ってろ」
納得がいってないウツバットを黙らせると、クルシーナは言葉を続ける。
「このウサギも離してあげるわ。その代わり・・・」
クルシーナはのどかに指を突き立てる。
「お前が犠牲になれーーーー」
「!?」
彼女の言い放った言葉に、驚愕したのはラビリンだった。
「お前が犠牲になるんだったら、このウサギを解放してあげる。助けたいでしょ? このウサギを。ヒーリングアニマル一匹救えるんだったら安い取引だと思うけどね。まあ、拒むんだったらこのまま痛めつけるだけだけど」
のどかはそれを聞いて思考する。
私は何のためにプリキュアをやっている? 自分が健康になりたいから・・・? プリキュアをやっていて、その力でメガビョーゲンを倒せるから・・・?
違うーーーー苦しんでいる人を、放っておけないから!! だから、ラビリンと地球をお手当てしたいと思った。
「のどか! 言うことなんか聞いちゃダメラビ! う・・・ゲホゲホ!!」
メガビョーゲンがプールに触手を伸ばして水を吸収し、ラビリンに再び赤い霧が降り注ぐ。
「お前は口を閉じてろ。さあ、どうすんの?」
目を閉じて考える、のどかの答えは決まっていた。
「・・・わかった、私が代わりになる。だから、ラビリンをこれ以上苦しめないで」
「のどか!?」
のどかの言葉に驚愕するラビリン。
「いいの? お前が苦しむ羽目になるけど?」
「うん。私はもう苦しむ人を見たくないの。それで誰かが傷つくことも、辛い思いをするのも嫌なの。だから、私はラビリンを助ける!!」
その答えを聞くとクルシーナはニヤッと笑みを浮かべた。
ーーーー自分よりも、相手のことを考えているなんて、ホント・・・バッカみたい。
「!?」
クルシーナの姿がステージから消える。そして、のどかの背後から悪意のある声が聞こえた。
「・・・交渉成立、ね!」
背後に瞬間移動したクルシーナはのどかの服の襟を掴むと、病気に染まっているプールに向かって思いっきり投げ飛ばした。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
バッシャアァァァァン!!!!
のどかはそのままプールの中へと落ちていき、激しい水しぶきが上がる。
「のどかぁー!!」
プールへと沈んだのどかに向かって悲痛に叫ぶラビリン。
「フフフ・・・」
「クルシーナ、考えがあるなら言って欲しいウツ」
「うるさい」
クルシーナはウツバットの文句を一蹴すると、手に持っていたサンゴの卵を一個自分の口に含み、咀嚼して口の中で転がすように細かくする。
そんな中、クルシーナにプールへと落とされたのどかは、一瞬意識が飛んでいた。
(あ、あれ? 私・・・)
「!! ぶふっ!?」
目を覚まして、水の中にいることに気づいたのどかはとっさに口を押さえる。
体を動かして周囲を見渡してみると、水は赤く染まっていてすっかり濁っている。泳いでいるはずのイルカの姿はなく、プールはすっかりともぬけのからである。
ーーーーとりあえず、プールから上がらないと・・・!
「ん、んんぅ! んんぅ!!」
のどかはジタバタと手足を動かすも、まるで水上へ上がっていく気配がしない。むしろプールの底へと沈もうとしていた。
「フフ・・・」
そこへ笑みを浮かべたクルシーナが上から降りるように現れた。まるで、水の抵抗など感じてもいないかのように。
「!!」
のどかがクルシーナに気づくと手足の動きを止める。クルシーナはのどかに近づくと彼女の腰に腕をまわし、自分の近くに引き寄せる。そして、もう一方の手で頭を押さえながら・・・。
「ん!?」
彼女に口づけを交わした。のどかは突然の行為に驚きを隠せなかった。
数秒間続く口づけ。そして、のどかの体の中に淀んだ何かが蠢き始めた。
「のどかぁ・・・」
一方、ラビリンはプールに落ちたのどかを心配していた。ここから出られるなら今すぐにのどかを助けたいが、出れないことにはどうすることでもできない。
ザパァン!!!!!
すると、プールから飛沫が上がり、そこから出てきたのはクルシーナと、彼女にお姫様抱っこのようにされているのどかだった。
クルシーナはステージに足をつけると、奥の方に向かって歩いていく。長テーブルの前で足を止めると、のどかの顔を見つめる。
「うっ、うぅ・・・うぅぅぅ!!」
「の、のどか!!」
なんと、のどかは両手で喉を押さえながらプルプルと震えていた。表情も苦痛に歪んでいる。
「フフフ・・・」
ーーーー心地よい程の苦しむ表情だ。見ていて笑みが止まらない。
苦しむのどかを長テーブルの上に寝かせると、メガビョーゲンの方に向き直る。
「約束だからそのウサギは解放しないとねぇ。メガビョーゲン」
「メガー!!」
メガビョーゲンは檻の中に二本の触手を突っ込むと、ラビリンをまるで投げ捨てるかのように放り投げる。
「あぁ! のどかぁ!!!」
投げられたラビリンは空中で態勢を立て直すと、のどかのところに歩み寄る。
「のどか! 大丈夫ラビ!?」
「うぅ・・・うっ! う、うぅ・・・」
どう見ても大丈夫ではなかった。のどかは身を捩らせて苦しんでいる。ラビリンの言葉にもまるで聞こえていないほどだった。
「のどかに何したラビ!?」
ラビリンは怒りを滲ませながらクルシーナに問う。
「さあね、お前が知ったところでどうにもならないわよ。どうせその娘もそんな状態じゃプリキュアにだって慣れないしねぇ」
クルシーナは面倒臭そうにしながらラビリンの質問には答えようとはせず、メガビョーゲンに向き直る。
「メガビョーゲン、ここ一帯を徹底的に蝕んじゃいなさい」
「メガビョーゲン!!」
メガビョーゲンは触手でプールの水を吸い上げると頭部から赤い霧を吐き、観客席あたりを病気で蝕んでいく。
「さてさて、あとはあの二人だけね・・・」
クルシーナはうまくいったと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべた。残るプリキュアはあと二人、そいつらを潰せば侵略活動だってスムーズにいくはず。
「あぁ・・・ああ・・・」
「う・・・うぅ!! あ、あ・・・」
ラビリンは苦しむのどかを見て、どうすることもできない。
のどかに出会う前、一人でメガビョーゲンに立ち向かってもあっさりとやられ、苦しむラテ様を前に何もすることができなかった。ラビリンにはその時の記憶がフラッシュバックしていた。
自分の無力さを改めて思い知り、余計に絶望感が増していく。
「だ、誰か・・・誰か助けてラビー!! ちゆー!! ひなたぁー!! ペギターン!! ニャトラーン!!」
今も水族館内で戦っているであろう仲間たちの名前を呼ぶも、それは虚しく蝕まれた観客席へと溶けていくのであった。
一方その頃、プリキュアに変身してメガビョーゲンと戦っているちゆとひなたは・・・。
「ん〜〜〜〜、こざかしいっ!!!」
シンドイーネは苛立っていた。プリキュアのパートナーとなっているヒーリングアニマルのペンギンを人質として利用しようとした手前、栗色の元気娘がリュックサックを投げつけた挙句、よく考えもせずに自分へと襲い掛かってきたのだ。
おまけに、メガビョーゲンのせいでペンギンを手放してしまい、プリキュアへの変身を許してしまったのであった。
「え、こざかしいってどういう意味?」
言葉の意味がわからないスパークルは単純に疑問に思う。そうしている間に、メガビョーゲンの触手が襲い掛かってくる。
スパークルはそれに気づくと背後へと飛び退く。入れ替わりにフォンテーヌが飛び上がり、襲い来る触手をキックで払いのける。
「生意気って意味!」
「え!? めっちゃ失礼じゃん!!」
フォンテーヌから律儀に聞かされると、スパークルはちょっとばかしイラっときた。
「メーガー!!」
メガビョーゲンが口から病気を吐き出す。今度はスパークルが前に出る。
「ぷにシールド!!」
ニャトランがそう言うと肉球型のシールドが展開され、メガビョーゲンの攻撃を防ぐ。
フォンテーヌとスパークルは同時に飛び上がり・・・。
「「はあぁぁぁぁぁ!!!」」
「メガー・・・ビョーゲン」
二人同時に息を合わせて飛び蹴りを繰り出す。メガビョーゲンが触手で防ぐも、光の力で態勢がよろける。
「「キュアスキャン!!」」
スパークルがステッキをメガビョーゲンへと向け、ニャトランの目が光るとメガビョーゲンの中にいるエレメントさんを見つけた。
「泡のエレメントさんニャ!!」
「フォンテーヌ、今だよ!!」
フォンテーヌは頷くと、水の模様が描かれたヒーリングボトルをステッキへとかざす。
「エレメントチャージ!!」
そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。
「ヒーリングゲージ上昇!!」
ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。
「プリキュア!ヒーリングストリーム!!」
キュアフォンテーヌはそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、水色の光線を放つ。光線は螺旋状になっていた後、メガビョーゲンに直撃した。
その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、泡のエレメントさんを優しく包み込む。
水型状にメガビョーゲンを貫きながら、光線は泡のエレメントさんを外へと出す。
「ヒーリングッバイ・・・」
メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。
「「お大事に」」
泡のエレメントさんは、水槽の泡へと戻っていき、蝕んだ箇所も元に戻っていく。
「ムキーッ!! ホント小賢しいッ!!!!」
シンドイーネは心底苛立った様子で撤退していった。
「早くのどかの元に向かいましょう!」
「うん!!」
ペギタンも見つかって一安心だが、まだメガビョーゲンを全部倒したわけではない。別れたのどかのことも心配だ。早く彼女の元へと行かなければ・・・。
そんな時だった・・・。
助けてラビー!! ちゆー!! ひなたー!! ペギターン!! ニャトラーン!!
どこからか助けを求める声が聞こえてきた。
「!! この声は・・・!?」
「ラビリンの声ニャ!!」
「もしかして、二人に何かあったんじゃ・・・!?」
「急いで向かうペエ!!」
さっきの声がしている方向は、どうやらイルカショーが行なわれている場所のようだ。もしかしたら、そこにメガビョーゲンとのどかとラビリン、そしてラテもいるはず。
4人はお互いの顔を見て頷くと、意を決して声がする方向へと走っていく。
ーーーー二人とも、無事でいて・・・!!
「・・・ん? メガビョーゲンの反応が消えたわね」
「きっとビョーゲンズの誰かが失敗したウツね」
クルシーナとウツバットは会場の扉の方向を向きながら言った。おそらく意気揚々と出ていったシンドイーネだろう。彼女もここに来ていたらしい。
やっぱりビョーゲンズは油断している。そう感じさせざるを得ないのだった。
「メガー!!」
メガビョーゲンは変わらず、頭部の口から赤い霧を撒き散らし、イルカを模した看板や隣接する建物へと病気に蝕んでいた。
「この辺も蝕む場所がなくなってきたわね」
「もう十分なくらいウツ」
ーーーーこの施設はもう私たちの場所だ。もう誰も止めることなんかできはしない。
足をぶらぶらとさせながら、クルシーナが不敵な笑みを浮かべる。
「うぅ・・・うぅぅ!! うぅぅ・・・!」
「のどかぁ・・・」
クルシーナの後ろの長テーブルでは、寝かされているのどかが喉を押さえながら苦しんでいた。額には脂汗が滲んでおり、表情は苦痛に歪んでいた。その隣ではラビリンが寄り添って声をかけ続けている。
「フフフ・・・」
のどかの方に首を向けたクルシーナは彼女の苦痛に歪む表情を見てニヤリと笑みを浮かべた。やはり人間の苦しみは最高のスパイスだ。私たちにとっては快楽そのものである。無駄な抵抗だとわかっているのにもがいているのがまた心地よい。
クルシーナは右手をのどかの頭に伸ばすと、子供をあやすかのように優しく頭を撫でる。本当にかわいそうで・・・本当にバカな女だ・・・。
「う・・・あ・・・あぁ・・・」
まだまだ彼女には苦しんでもらわないと・・・。
これからやってくるプリキュア二人を叩きのめして、絶望を見せつけてやるために・・・。
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