ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter 作:早乙女
かすみの選んだ道とは・・・・・・?
のどかとラビリンがいると信じ、山の奥へと向かうフォンテーヌたち。
そんな彼女たちがその道中で見たのは・・・・・・。
「いたよ!! メガビョーゲン!!」
「まだ大きくはなってないみたい・・・!」
「速やかに浄化しましょう!」
枝のような足を生やし、アケビのようなものを生やしたツルのような腕を4本生やしたメガビョーゲンが、赤い光線を吐き出して木々を病気に蝕んでいる光景だった。
プリキュアたちはメガビョーゲンを阻止しようと駆け出すが・・・・・・。
バジュッ!!
「「「っ!!」」」
どこからともなくピンク色の光弾が放たれ、それに気づいたプリキュアたちは飛び退く。
「せっかく順調に蝕んでいますのに、邪魔させるわけにはいかなくってよ?」
「っ、誰!?」
プリキュアたちは声がする方向に振り向くと、木の上に日傘を構えたシビレルダが立っているのが見えた。
「あれって、テラビョーゲン・・・?」
「ケダリーの他にもいたの!?」
フォンテーヌとスパークルはケダリーの他にもテラビョーゲンが生まれていたことに驚いていた。
「あら、それは失礼いたしました」
シビレルダは構えていた日傘を下ろすと、木の上から飛び降りる。
「ワタクシ、シビレルダと申しますわ。以後、お見知り置きを。クラリエット様とクルシーナ様のために、地球を真っ赤に蝕んで差し上げますわ」
シビレルダは持っていた日傘を差しながら、ドレスの裾を持ちながら丁寧にお辞儀をする。
「クラリエット・・・って、誰?」
「クルシーナ・・・やっぱり、あいつも生み出してたのね・・・!!」
スパークルは聞いたことのない名前に疑問符をつけるも、フォンテーヌは険しい表情でそう言った。
「のどかとかすみさんは、どこにいるのですか!?」
アースも険しい表情をしながら、シビレルダにそう問いかける。
「のどか? かすみ? 誰だか存じ上げませんけど、あなたのお仲間だというプリキュアはこの奥にいらっしゃいますわよ」
「っ! やっぱり、連れ去っていたのね!!」
フォンテーヌはシビレルダの言葉に険しい表情で睨みつける。
「もっとも、もう死にそうな感じでしたけど?」
「っ!? 死にそうって・・・ウソだよね・・・!?」
さらにシビレルダの言い放った言葉に、スパークルが体を震わせる。
「言った通りの意味ですわ。早くいかないと、あのプリキュアはもう体が持たなくってよ?」
「そんな・・・!!」
スパークルはシビレルダの言葉に凍りつく。
「かすみさんが、いない・・・?」
アースは、のどかしかいないことに疑念を抱く。のどかが連れ去られているのであれば、やられたことを考えるとかすみもいるはずだが、彼女がいない・・・・・・?
「かすみをどこにやったの!? のどかと一緒にいたはずよ!!」
「だから、そのかすみっていうのは誰ですの? いるのはプリキュア一人ですわよ」
アースの代わりにフォンテーヌが睨みつけながら問うも、シビレルダは苛立ったように答えた。
「かすみっち、もしかしてあいつらにやられちゃったんじゃ・・・?」
「考えちゃダメよ!! かすみがなんでいないのかわからないけれど、まずはのどかを助けるのが先決だわ!!」
弱気な発言をするスパークルに、フォンテーヌは強い口調でそう言った。
「そうです! まずはのどかを助けましょう!!」
アースも強い口調で、シビレルダにそう言い放った。
「行かせるとお思いまして? クルシーナ様の邪魔はさせませんわ!!」
シビレルダは日傘を閉じて構えながらそう言った。
「なら、あなたとメガビョーゲンを浄化して、私たちはそこを通らせてもらうわ!!」
フォンテーヌの言葉を合図に、フォンテーヌとスパークルはステッキを構え、アースは腕を構えて浄化しようと臨戦体勢になる。
「メガビョーゲン、やっておしまい!!」
「メガァ・・・!!」
シビレルダに指示されたメガビョーゲンは口から赤い光線を吐きつける。
「「ぷにシールド!!」」
フォンテーヌとスパークルは肉球型のシールドを展開して、赤い光線を防ぐ。
その間をアースが横から現れてメガビョーゲンへと駆け出していく。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「メガァ!?」
アースは二人に気を取られているメガビョーゲンの横から膝蹴りを食らわせて後ろへと倒す。
「あの紫のプリキュア、結構なお相手だとお見受けしますわ」
シビレルダはアースの戦闘を見て、不敵な笑みを浮かべた。
キュン!
「「キュアスキャン!!」」
フォンテーヌはメガビョーゲンが倒れている隙に、ステッキの肉球に一回タッチしてメガビョーゲンに向ける。ペギタンの眼が光り、メガビョーゲンの中にいるエレメントさんを発見する。
「実りのエレメントさんペエ!!」
エレメントさんはツルについているアケビの根元部分にいる模様。
「よし、今のうちに浄化を・・・」
フォンテーヌは浄化の構えを取ろうとした、その時だった・・・・・・。
バジュッ!!
「っ! きゃあぁっ!!」
フォンテーヌは横から飛んできたピンク色の光弾に当たってしまい転がる。
「「フォンテーヌ!!」」
「ワタクシもいるんですわよ? そう簡単に浄化なんかさせませんわ!」
横を見ると、シビレルダが畳んだ日傘を構えており、どうやらそこからピンク色の光弾を放った模様。
シビレルダはそう言い放つと、その場から姿を消すとスパークルの背後へと移動していた。
「!? スパークル!!」
「!!」
シビレルダが日傘をスパークルに振るおうとし、それに気づいたアースが両腕を交差させて受け止める。
「アース!!」
「お二人は早くメガビョーゲンを・・・!!」
アースは抑え込んでいるうちに、メガビョーゲンを浄化するように言う。
「わかったわ!!」
「アース、ごめんね!!」
フォンテーヌとスパークルは今のうちに、メガビョーゲンを浄化しようとする。
「邪魔ですわ」
「ぐっ・・・!!」
シビレルダは日傘をアースから離すと横に薙ぎ払う。アースは左手で防ぐも力負けして吹き飛ばされるが、倒れないように踏ん張る。
そこへシビレルダが飛び出して、日傘を槍のように振るう。アースは避けつつ、受け止めつつで攻撃を防いでいく。
シビレルダはその勢いに任せて日傘を開いた状態で、アースの顔に投げつける。
「!? うっ・・・」
アースは顔に飛んできた日傘に視界を塞がれつつ振り払うも、目の前にいたシビレルダの姿がない。彼女を探そうと当たりを警戒していると・・・・・・。
「こっちですわよ!」
「!! ふっ!!」
宙に舞った日傘からシビレルダが現れ、日傘を閉じるとアースの上から振るう。アースも負けじとキックを振るい、日傘とキックがぶつかり合う。
日傘とキックが互いに押し合って、シビレルダは再び宙へと飛ぶと日傘を瞬時に閉じてその先にピンク色の禍々しいエネルギーを溜め込み、アースに目掛けて放つ。
「!?」
アースはその場から飛びのいて、ピンク色のエネルギー砲を避ける。
「うふふ♪」
「凄まじいパワーです・・・!」
笑みを浮かべるシビレルダに対し、アースは険しい表情を浮かべていた。
「メガビョーゲン、そっちに行きましたわよ!!」
シビレルダは二人を見て、メガビョーゲンに指示を出す。
「メッガァ〜!!」
メガビョーゲンは4本のツルに付いているアケビを二人に向けると、そこから同じ大きさのアケビを二人に向かって放った。
「「ふっ! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
フォンテーヌとスパークルはアケビを避けながら駆け出して行くと、飛び上がると蹴りを食らわせようとする。
「メッガ・・・!」
メガビョーゲンは枝のような4本の足を地面へと埋める。そこへ二人の蹴りが直撃するが・・・・・・。
「メェッガァ!!!!」
「「あぁぁっ!!」」
メガビョーゲンは二人の蹴りに耐え抜くと、そのまま反動を利用して二人を吹き飛ばす。
「メガァ・・・!!」
メガビョーゲンは何やら枝のような足に何かを注ぎ込むように体を動かすと、そのメガビョーゲンの周りから広範囲が赤い靄に蝕まれていく。
「あぁ!?」
「まだそんな力が残っていたの・・・!?」
「早く浄化しなきゃ・・・!!」
スパークルとフォンテーヌは地面が一気に蝕まれたことに対し、すぐにメガビョーゲンを浄化しなくてはと思う。
「火のエレメント!!」
スパークルは火のエレメントボトルをステッキにセットする。
「氷のエレメント!!」
フォンテーヌは氷のエレメントボトルをステッキにセットする。
「「はぁっ!!」」
二人は同時にそれぞれの属性を纏った色の光線を放つ。
「メッガァ〜!!」
メガビョーゲンはツルに付いているアケビを4つに分けるようにパックリと割ると、飛んできた二つの光線を受け止める。
「「っ・・・!?」」
「メッガァ!!」
メガビョーゲンはそのままその割れたアケビから種のような禍々しい光弾をマシンガンのように放つ。
ドカン!!ドカン!!ドカン!!
種は着弾して爆発を起こし、さらに地面を赤い靄に包んでいく。
二人は避けた後、再度メガビョーゲンに飛び出していく。
「メッガァ!! メガァ!! メガァ!!」
メガビョーゲンはアケビから種のような光弾を次々と放つ。
「きゃあぁ!!」
スパークルは避けながらも向かっていたが、光弾が当たって吹き飛ばされてしまう。
「はぁっ!!・・・っ! あぁぁっ!!」
フォンテーヌはぷにシールドを張ったステッキを向けながら駆け出し、防ぎながら接近するも、足元に放った光弾の爆発に巻き込まれてしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「はぁ・・・何か・・・はぁ・・・また、強くなっちゃってるし・・・」
フォンテーヌとスパークルは息を切らしながらも、特に大きさの変わっていないメガビョーゲンに疑問を抱いていた。
「あぁぁっ!!」
そこへアースが吹き飛ばされ、フォンテーヌとスパークルの近くで踏ん張って着地する。
「「アース!!」」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アースもケダリー、シビレルダとテラビョーゲンの連戦で疲労が見えていた。
「大分育ちましたわね。このままうまくいけば、クラリエット様とクルシーナ様のお望みを叶えられそうね」
いつの間にかメガビョーゲンの近くに姿を現したシビレルダがそう言った。
「クラリエットって、誰なの!?」
スパークルは先ほどからシビレルダが口にしている名前が気になって問う。
「あなた方が知る必要がありまして? 他人の苦しみも理解しないあなた方に」
「他人の、苦しみ・・・?」
「そうですわよ。あのプリキュアの女、病気みたいでしたけど、あなた方は助けに行くと言いながらも、その病気になった人の苦しみなんか理解していらっしゃらないのですよね。そんな輩は苦しんで当然のことですわ」
シビレルダはスパークルの言葉を不愉快に感じたのか、冷淡な口調でそう言い放った。病気の苦しさを理解しないようなやつは、病気に苦しんでいたほうがいいと。
「そんなことないわ!! 私たちだって、病気になれば苦しいって気持ちになるし、他人が苦しんでるのを見れば辛い気持ちになるわ!! 確かに病気になった人をかわいそうだとは思うけど、だからと言って他人を苦しめていいっていう理由にはならないわ!!」
「そんなものはあなた方の理屈ですわ。本当に病気になったっていう人の発言ではないですの」
フォンテーヌが反論すると、シビレルダはそれをきっぱりと切り捨てる。
「言っていることは難しくてわかんないけど・・・あたしはのどかっちの友達なの!! 友達を放ってなんかいけないよ!!」
「っ・・・何が友達ですの・・・!! ワタクシは、友達なんかできたこともないですのに・・・!!!!」
スパークルの言葉に、余裕の表情をしていたシビレルダが一変して険しい表情へと変える。
「何はともあれ、これ以上他人を傷つけるのは許しません!!」
アースはシビレルダを睨みつけながら、強い口調でそう言い放った。
「っ・・・メガビョーゲン!! やってしまいなさい!!」
「メッガァ〜!!」
シビレルダは怒りながらメガビョーゲンに命令すると、ツルに付いたアケビをプリキュアたちに向けた。
「のどかを、これ以上苦しめないでください!!」
一方、かすみは敵であるクルシーナに向かって頭を下げていた。クルシーナの側には、病気で苦しんでいるのどかの姿があった。
のどかや友達を、これ以上傷つけたくないし、苦しめたくない・・・そんな想いからかすみはクルシーナに頼み込むしかないと考えたのだ。
クルシーナはかすみのそんな姿を無表情で見つめていた。
「・・・・・・・・・」
クルシーナは無言でかすみの前に歩み寄ると、その場にしゃがみ込んで彼女を見下ろす。
「・・・お前のその頼みを聞いたとして、アタシに何のメリットがあるわけ?」
「っ・・・」
「ビョーゲンズのアタシにそれを言うってことは、アタシに生きるのをやめろと言っているようなもんよ。わかってる?」
「・・・・・・・・・」
かすみはこう言われることは想定の上だった。このビョーゲンズにとっては、のどかを苦しめられないなら、誰を苦しめればいいんだという話。しかし、この街の住民や友達を差し出すわけにはいかない。
だったら、どうすればいいか・・・・・・相手を出すことができないのであれば・・・・・・。でも、それではもしかしたらのどかたちと敵対することになってしまう。それでも、彼女たちを苦しめるくらいなら・・・・・・!!
かすみは意を決して、口を開いた。
「だったら、私を苦しめてください!!」
「・・・?」
その発言にクルシーナはきょとんとしたような表情をした。
「・・・どういうこと?」
「私をビョーゲンズのところに連れて行って、私を苦しめればいい!! 私はのどかの体内で成長した、のどかの生き写しみたいなもの、私を苦しめるということは、のどかを苦しめるのと同じことだ。だから、私を連れて行けば、お前にとっても都合がいいだろう・・・?」
「・・・・・・・・・」
クルシーナはその言葉に少し間を置いた後、しゃがんだ状態から立ち上がった。
「お前はビョーゲンズで、あいつは人間だ。苦しませ方の次元が違う。まして、お前なんかを苦しめたところでアタシは何の価値も見出せない。だって、お前とあいつじゃ、似てても全然違う。そんなお前があいつの代わりになる? 冗談は顔だけにしてほしいね。あいつを助けたいからそういうことを言ってんだろ?」
「お前は他人で苦しめることができればそれでいいんだろ? だったら、私でも例外じゃないはずだ。病気で苦しめられないんだったら、別のことで私を苦しめればいい。私もビョーゲンズなら、他人を苦しめることができるはずだ。他人の苦しみは私の苦しみ、その苦しみはお前への快楽。悪いことは何もないはずだよ」
「・・・・・・・・・」
クルシーナはかすみのいつの間にかタメ口を無くしたその言葉に口を閉じる。そして、のどかとかすみの両方を見やった後、もう一度口を開く。
「お前、それがどういうことかわかってる? お前はアタシたちに従ってビョーゲンズの一員となって、お前が関わった人間との付き合いも全部否定することになんのよ。それがたとえプリキュアの連中であってもね。それでもいいっての?」
「私は構わない・・・!!!」
「そこにいるキュアグレースとも一緒にいられなくなるのよ。それでもいいっての?」
「私はのどかを傷つけないためなら、それでもいい・・・!!!!」
クルシーナが忠告のような言葉を言うが、かすみはそれに動揺することなく強い口調で言った。それもわかった上での発言だった。このまま、のどかやちゆたちを傷つけるくらいなら・・・。
「ふふっ、ふふふふふふ・・・」
「何がおかしいんだ・・・!?」
「い〜や? キュアグレースを守るとか言ってるけど、ビョーゲンズの一員になるってことは結局はあいつらを傷つけることになるって思ってねぇ。言ってることが矛盾してるわよね? それが面白くってね」
かすみを笑うクルシーナはそこまで指摘すると、彼女に顔を近づける。
「いいわ。お前がアタシたちのところに来るかわりに、あいつを苦しめないであげる、今回はね。元気も元に戻してあげるし、テラパーツから放出された赤い病気も抜いてあげる」
「ほ、本当か・・・・・・??」
クルシーナが頼みを聞いてくれたことに、安堵したような表情をするかすみだが、クルシーナは一変して無表情に変える。
「ただし、お前にはビョーゲンズの一員として活動すると同時に、その理由を誰にも言わないこと、たとえプリキュアであってもね。もし歯向かったら・・・わかってるわよね?」
「・・・・・・わかった、約束する」
「・・・ふふっ♪」
無表情だったクルシーナは、考えるように間を置いたかすみの言葉に笑みを浮かべた。
「立て。いつまでも地面に這いつくばってないでさ」
クルシーナがそう命令すると、かすみはゆっくりと立ち上がった。そして・・・・・・。
ドスッ!!!!
「がぁっ・・・!?」
「・・・交渉成立ね」
突然、クルシーナはかすみの腹部を突き破るようにして中に入れ、そう言った。かすみはあまりの激痛に体をくの字に曲げて息を吐いた。
「がっ・・・な・・・な、に・・・を・・・??」
「安心しろ。アンタの中にあるあいつの元気を抜くだけだから」
「ぐっ・・・が、ぁ・・・!」
かすみは激痛に呻きながら突然の行動に狼狽するも、クルシーナは耳元でそう言い聞かせながら手を弄るように動かし、その度にかすみは苦痛に呻く。
「あ゛っ・・・がぁぁ・・・ぁっ・・・」
体を弄られる激痛が頭に断続的に続き、かすみの体が悲鳴をあげ、気が狂いそうになる。それでも、かすみは苦痛で顔を歪めながらも、クルシーナの首に手を回して痛みに耐えようとする。
その行いが数分間続いた後・・・・・・。
ズボッ!!!
「あ・・・あぁ・・・!」
クルシーナは何かを掴むとかすみの体から手を引っこ抜き、激痛を味わっていたかすみはその場から崩れ落ちた。そして、痛みを緩和させるかのように体を丸めて小刻みに震わせる。
「大袈裟ね、たかがこの程度で。人間もそうだけど、アンタも辛抱がないのね」
痛みに震えるかすみを見下ろしながら、クルシーナは不敵な笑みで嘲笑の言葉を浴びせる。その手には白く光る何かがあった。
「ぐっ・・・それ、は・・・?」
かすみは痛みで飛びそうな意識を保ちながら、クルシーナの手に持っているものを見る。
「あいつの元気よ。っ・・・全く生き生きと輝いていて、本当不愉快だわ。とっととこいつに戻すか」
手に持っているものに不愉快そうな顔をしたクルシーナは早く手放したいと言わんばかりに、ぐったりしているのどかに近づいていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
のどかは顔を土気色に変えており、呼吸も荒くなっていてそろそろ限界のようだった。
(・・・呼吸が止まる前触れの呼吸してる。もう少しあいつと話してたら危なかったわね)
クルシーナはのどかを見つめながらそう考えると、空いているもう一方の手でのどかに手を伸ばす。
「しんら、ちゃん・・・苦しい、よ・・・たす、けて・・・」
「っ!!」
のどかは朦朧とした意識なのか、過去の夢でも見ているのか、朧げに弱々しい声で旧友に助けを求めた。
それを聞いたクルシーナは手を止めるも、何やらズキリと頭の中に痛みを感じた。先ほどのシビレルダがテラビョーゲンになった瞬間を目撃した時と同じように、何かが引っかかった。
しかし、そんなの知るかと言わんばかりに険しい表情になると、躊躇なくのどかの体に手を突っ込んだ。
「ぐっ・・・!? か、か・・・はぁっ・・・!」
その瞬間、のどかの目が大きく見開かれ、痛みで息を大きく吐き出すが、クルシーナはすぐに何かを掴むとそれを引きずり出すように引っ張る。それはこれまでの赤い靄とは全く違う、紫がかったような赤い靄だった。
「うっ・・・うぁぁ、ぁっ・・・!」
「っ・・・!」
クルシーナによって徐々に引きずり出されていく赤い靄。それによって身体中に激痛が走り、その苦しみの声をあげるのどか。しかし、クルシーナはそんな彼女の声もおかまいなしに赤い靄を引っ張っていく。
「あ゛ぁぁっ・・・あ゛ぁぁぁぁぁ・・・!!!」
「ふふっ・・・いい感じの赤い靄の塊ねぇ。キュアグレースの苦しみがピリピリと伝わってくるわぁ♪」
のどかは苦しみながら、濁ったような声をあげる。クルシーナは苦しそうな声を聞いて笑みを浮かべつつも、彼女の中で成長した赤い靄を見ていた。
クルシーナは恍惚としたような感情に浸りながら、赤い靄をさらに引っ張り出していく。
「ぐぅぅ、あ゛ぁぁぁぁっ・・・が、ぁぁぁぁぁぁ・・・!!!!」
「何か引っかかってんのかしら? テラパーツの塊が中々出てこないわねぇ・・・」
「ぐっ、うぅぅぅ・・・ぐ、が、ぁぁっ・・・!!」
クルシーナは赤い靄を引っ張り出そうとするも、のどかの体から引っ張り出てこない。濁った苦しみの声を上げていたのどかだが、クルシーナが無理に引っ張り出そうとすると、もがくように首を左右に振りながら体を震わせて苦しむ。
「うぅぅぅぅ・・・」
その様子を辛そうに見つめていたかすみは、痛む体に鞭を打ちながら立ち上がりよろついた足取りでクルシーナに近づき、彼女が掴んでいる赤い靄を掴む。
「っ?」
「私にも・・・手伝わせて、くれ・・・」
かすみは苦悶の顔が残っていながらも、強い眼差しでそう言った。ぐったりしたように息も絶え絶えだが、そこにはのどかを助けたいという気持ちが宿っていた。
「・・・ふん、好きにしたら?」
クルシーナは不機嫌そうな表情ながらもそう言うと、二人は一緒に赤い靄を引っ張る。
「ぐ、ぁぁぁぁぁ・・・ぐぁっ、がぁ・・・!!!!」
のどかが獣のような声をあげる中、赤い靄は二人の力でなのかどんどん引きずり出されていく。
「うっ、ぐっ、ぁぁぁぁぁ・・・!!」
「か、はぁ・・・ぐっ、がぁぁぁぁ・・・!!!!」
「がっ、ぐっ、ぅぅ・・・ぐが、ぁぁぁぁぁ・・・!!!」
のどかは赤い靄が引っ張り出される度に、濁った声を上げ、苦しみ、時には首を左右に振りながらもがく。それでもクルシーナは約束のため、かすみはのどかを助けるために引っ張ることを諦めなかった。
「・・・・・・・・・」
クルシーナはそんな中、彼女を無表情で見つめ、先ほどの頭痛を思い出す。何かを思い出しそうだったが・・・・・・。
「うぅぅぅぅ・・・うぁっ!! うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
のどかが一際大きな悲鳴のような絶叫をあげ、赤い靄が完全に彼女の体が引きずり出される。クルシーナとかすみはその勢いで尻餅をつくも、クルシーナの手には赤い靄が掴まれていた。
「よし、いい感じにテラパーツから発した赤い靄が成長したわね」
クルシーナは紫がかった禍々しい赤い靄を見つめながらそう言うと、立ち上がってもう片方の白く光るのどかの元気を彼女の体へと押し当てる。光はゆっくりと彼女の体の中へと入っていく。
すると・・・・・・。
「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」
あれだけ苦しみの表情を浮かべていたのどかの顔が安らかな表情になり、顔色も土気色から元の肌色を取り戻し、呼吸も安定して静かな寝息を立てている。
「・・・終わったわよ」
「っ、のどか!」
クルシーナは淡々とそれだけ言うとのどかから離れ、入れ替わりにかすみがのどかのそばに駆け寄る。
「・・・少し時間やるから、別れの挨拶ぐらいしてきたら? こいつも連れていけ」
「・・・ありがとう」
「礼なんかいらねぇよ」
クルシーナは二人に背を向けながらそう言うと、捕らえていたラビリンも放る。かすみはラビリンをキャッチするとその場でお礼を言い、そのままのどかを抱っこしながら病院へと向かっていく。
クルシーナはかすみが離れると、背後からその場を歩き去ろうとするかすみ、そして担がれるのどかの様子を見る。
「・・・キュアグレース」
クルシーナはかすみ、そして彼女に担がれているのどかの名前を呟きながら見つめる。
ズキン、ズキン・・・・・・。
「っ・・・」
すると、クルシーナの頭の中にまた痛みが走る。それも先ほどよりも大きな痛み・・・何かが引っかかる。
かすみの後ろ姿が、自分を小さくしたかのような少女の後ろ姿に見えてきていた。
「なんだ・・・私は、あいつを・・・担いだことがある・・・?」
頭痛に呻きながらも、何か思い出せそうな感じを出していたのであった。
シビレルダと、そのメガビョーゲンと交戦中のフォンテーヌ、スパークル、アース。
「メガァ〜!!」
メガビョーゲンは4つのツルに付いているアケビを伸ばして、拳のように叩きつけて攻撃する。
「はぁぁっ!!」
フォンテーヌは襲い来るアケビ攻撃を掻い潜りながらメガビョーゲンに迫り、蹴りを繰り出す。
「っ! きゃあぁっ!!」
しかし、地面を足に埋めているせいで踏ん張る力を強くしたメガビョーゲンのアケビ攻撃を食らってしまう。
「やあぁっ!!」
「メガァ・・・!!」
「っ!! うっ・・・あぁっ!!」
入れ替わりにスパークルも飛び出していくが、メガビョーゲンはアケビから種のような光弾を次々と放ち、スパークルは避けていくが、光弾の直撃を受けてしまう。
「メガビョーゲン!!」
次にアースが低く飛びながら迫っていき、メガビョーゲンはアケビを伸ばしていくも、アースはアケビに乗っかりながら避け、さらに飛んでくるアケビを華麗に避けてメガビョーゲンへと接近する。
「はぁぁぁぁぁっ!!!」
メガビョーゲンの顔面に蹴りを繰り出そうとした時・・・・・・。
「ふっ・・・!」
バジュッ!!
「!? っ!! あぁ!!」
そこへ先を読んだようなシビレルダのピンク色の光弾が迫り、アースは間一髪で避けるが、そこへアケビが迫ってアースを捕らえ、そのまま地面に叩きつけて吹き飛ばす。
「はぁ・・・はぁ・・・ちょっと・・・休憩したいかも・・・」
「はぁ・・・ダメよ・・・はぁ・・・ここで・・・止まったりなんかしたら・・・」
スパークルが弱音を吐き始めるも、フォンテーヌが諭す。のどかを助けるという気持ちが奮い立たせてはいたものの、フォンテーヌとアースも額に汗が滲んで息が上がっており、動きも鈍くなり始めていた。
「どうしたんですの? 許さないと息巻いた割には、動きが疎かになっているようですが?」
シビレルダがそんなプリキュアたちを嘲笑しながら言った。
「ふーん・・・あいつも新しいテラビョーゲンか」
その様子を彼女たちから見えない木の上からダルイゼンが静観していた。
「メガビョーゲンは作れるみたいだけど、クルシーナやイタイノンほどのものじゃない。でも、進化させさえすれば、いろいろと使えるのかもな」
ダルイゼンは、シビレルダを見ながらそう分析していた。
「あのアケビと、シビレルダをどうにかできれば・・・!」
「・・・やってみましょう!!」
アースは前に出て、アースウィンディハープを取り出す。
「空気のエレメント!!」
アースはハープに空気のエレメントボトルをセットする。
「はぁっ!!」
無数の空気の弾をメガビョーゲンに向けて発車する。
「メガァ・・・!?」
空気の弾はメガビョーゲンの前で爆発すると、ツルに付いているアケビを包み込み、その攻撃を封じた。
「今よ!!」
「OK!!」
攻撃が封じられた今が好機だと踏んだフォンテーヌとスパークルが飛び上がる。
「させませんわよ!!」
「それはこっちの台詞です!!」
「っ!! きゃあぁ!!」
シビレルダは光弾を放とうと日傘を二人に構えるも、そこへアースが腕を振るって風を起こし、シビレルダの行動を封じる。
「火のエレメント!!」
スパークルは再度、火のエレメントボトルをステッキにセットする。
「はぁっ!!」
ステッキから火を纏った黄色い光線をメガビョーゲンの足元に目掛けて放つ。
「メェ!? メガ、ガ・・・!?」
地面が光線で熱せられたことでメガビョーゲンが苦しみ出し、熱さのあまり枝のような足を出しそうになる。
「はぁぁぁっ!!」
「ビョーゲン!?」
そこへフォンテーヌがドロップキックを顔面に放ち、地面から枝のような足が引っこ抜けたメガビョーゲンは吹き飛ばされた。
「よし、今だペエ!!」
「早く浄化するニャ!!」
ペギタンとニャトランの言葉を合図に、フォンテーヌとスパークルは頷くと水のエレメントボトル、光のエレメントボトルを取り出し、ステッキにはめる。
「「エレメントチャージ!!」」
そう言いながら光るステッキの先をハート型の模様を空中に描き、肉球に3回タッチする。
「「ヒーリングゲージ上昇!!」」
ステッキの先のハートマークに光が集まっていく。
「プリキュア!ヒーリングストリーム!!」
「プリキュア!ヒーリングフラッシュ!!」
フォンテーヌとスパークルはそう叫びながら、ステッキをメガビョーゲンに向けて、青色の光線と黄色の光線を同時に放つ。光線は螺旋状になって混ざっていった後、メガビョーゲンに直撃した。
その光線はメガビョーゲンの中に入ると、螺旋状のエネルギーは手へと変化して、4本の手が実りのエレメントさんを優しく包み込む。
水型状に、菱形状にメガビョーゲンを貫きながら、光線はエレメントさんを外へと出す。
「ヒーリングッバイ・・・」
メガビョーゲンは安らかな表情でそう言うと、静かに消えていった。
「「「「お大事に」」」」
実りのエレメントさんが山のアケビへと戻っていくと、赤い靄に包まれた山が元の色を取り戻していく。
「くっ・・・クルシーナ様の元に退却ですわ!!」
シビレルダは後ずさりをしながらそう言うと、プリキュアたちに背中を向けて飛びながら逃げ去っていこうとする。
「あ、待ちなさい!!」
「コラァー!! 逃げるなー!!!!」
「逃がしはしませんよ!!」
プリキュアたちはそう言いながら、シビレルダのことを走って追っていく。
「なんだ・・・案外大したことないじゃん」
一部始終を見ていたダルイゼンは失望したようにそう言うと、クルシーナの元へ行くべくその場から姿を消す。
一方、クルシーナは・・・・・・。
「ん?」
蝕んでいた辺りの木が戻っていくのを見ていた。
「何よ、もう終わったの? やっぱりあいつの差し金でも、大したことないわね」
クルシーナは呆れたようにそう呟く。メガビョーゲンをあっさりと浄化されるくらいなら、シビレルダというテラビョーゲンもその程度なのだろう。もはや期待するに値しない。
「クルシーナ様ぁ・・・!!」
「っ・・・・・・」
そこへ逃げてきたシビレルダ、そしてその後を追ってきたグレース以外のプリキュアたちの姿が見えた。
クルシーナはシビレルダを見て、不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「のどか・・・・・・」
かすみはのどかの病室へと戻ってきていた。その側にはベッドでスヤスヤと眠るのどかの姿があり、その枕元にはラビリンの姿が。
「私は、キミと一緒で・・・楽しかった・・・一緒にサンドイッチを食べたことも、犬と戯れたことも・・・私にとっては、いい想い出だった・・・」
かすみは眠るのどかに儚げな表情を浮かべながらそう呟く。
「私は・・・・・・のどかのことが・・・大好きだよ・・・・・・」
かすみは瞳をウルウルと潤ませながら言う。その時だった・・・・・・。
「んん・・・んぅ・・・・・・」
「っ!!」
のどかがゆっくりとその目を開けた。意識を回復させたのだ。
「あ、かすみちゃん・・・・・・」
「のどかぁ!!」
「きゃっ」
かすみは目を覚ましたのどかに思わず、彼女の体に乗っかって抱きしめた。
「私は、気がどうにかなりそうだった・・・! メガパーツが抜けたのに、のどかがまだ治ってないということに・・・のどかの体調が悪化して意識が戻らなくて・・・!!」
かすみは嗚咽を漏らしながら心情を吐露した。のどかはきょとんとしていたが、すぐに笑みを浮かべて彼女の頭を撫でた。
「あ!! ちゆちゃんたちは!?」
のどかは自身の中のメガパーツを追っていったであろう友人の行方を案じて尋ねた。
「・・・まだ、戻ってない。多分、戦ってるんだろう・・・」
「っ!! ラビリン!! ラビリン!!!!」
のどかはそれを聞くと、枕元で眠っていたラビリンを揺すって起こす。
「ぅぅ・・・ラビ? あれ、ラビリンは・・・」
ラビリンは目を覚ますと辺りを見渡し始める。どうやら自分がいつの間にか眠っていたことに気づいていなかったようだ。
「ちゆちゃんたちを追わなきゃ!! 」
「え・・・だ、大丈夫ラビ!? のどか!!」
「うん、もう大丈夫。なんだかさっきよりも元気になったみたい」
「っ・・・わかったラビ」
ラビリンはのどかを心配していたが、彼女のその言葉を聞いて納得し、二人はベッドから立ち上がる。
「かすみちゃんも一緒に!!」
「・・・・・・・・・」
のどかは意を決した表情で、かすみに手を差し伸べるが、彼女は暗い表情をして顔を背けた。
「かすみちゃん・・・?」
「・・・のどかは先に行っててくれ。私はちょっと探したいものがあるから」
疑問に思うのどかに、かすみは暗い声でそう告げた。
「でも、かすみちゃんが・・・」
「のどか!! 行くなら早く行かないと大変なことになるラビ!!」
のどかはそんなかすみに声をかけようとしたが、ラビリンが時間を争うと言わんばかりにのどかに催促する。
「・・・わかった。かすみちゃん、来てね!! 私、信じてるから!!」
「っ!!」
のどかはかすみにそう言い残して病院の外へと駆け出していく。かすみはその言葉に目を見開いた後、瞳をウルウルと潤ませる。
「のどかぁ・・・」
かすみは嗚咽を漏らしながら、彼女の名前を呟く。その言葉は、きっと彼女には届いてないだろう。
かすみの目からは涙がポロポロと溢れてくる。
「ちゆぅ・・・ひなたぁ・・・アスミぃ・・・みんなぁ・・・」
もう、私はキミたちの側にはいられない・・・・・・だって、きっとまた私は、キミたちを傷つけてしまうから・・・・・・。
私がもし、ビョーゲンズの一員になっても・・・許してくれるよね・・・? だって、みんな・・・優しいんだもん・・・。
一緒にいたいよ・・・のどか・・・・・・いつまでも、一緒に・・・・・・。
でも、きっとそれも叶わない。だったら、せめて最後は・・・・・・。
・・・・・・そうだ、ちゆが言ってた。笑顔でいないと・・・。
かすみは涙を自分の腕で拭うと、儚げな微笑みを浮かべ始める。目についた涙は残ったままだけど。
「のどか・・・・・・」
もうみんなのところへと向かってしまった。その少女が出ていったところを見つめる。
「みんな・・・すまない・・・ありがとう・・・・・・」
キミたちから離れることを許してほしい、そしていろんな想い出をくれたことに感謝したい。
「さようなら・・・・・・」
かすみは満面の笑みを浮かべながらそう言った。悔いはないよという意思を顔に現すかのように。しかし、その目からは我慢しきれなかった涙が流れていた。
そして、かすみはその場から姿を消した・・・・・・。