ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
シビレルダとの決戦です。そして、クルシーナにある変化が・・・。

次回で原作第28話がベースの話は最後になります。


第91話「真実」

「グレース!!」

 

「無事だったんですね!!」

 

「もう大丈夫なの!?」

 

怪物と化したシビレルダに大苦戦し、大ピンチのプリキュア三人の前に駆けつけたのは、キュアグレースだった。

 

三人はグレースに声をかけ、特にフォンテーヌはその体を心配していたが・・・・・・。

 

「うん! もう大丈夫だよ!! なんだか前より元気になったみたい!!」

 

グレースは三人に笑顔を向けながら言う。

 

「キュアグレース・・・・・・」

 

「!! ダルイゼン!! クルシーナ!!」

 

グレースは呼ぶ声に反応して振り向くと、そこにはダルイゼンとクルシーナの姿があった。

 

「やっぱりアンタも来たんだ。病室で大人しく待ってるのかと思ったけどね」

 

クルシーナは不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

「待ってなんかいられないよ!! 確かに病気は苦しかったけど、私はちゆちゃんやかすみちゃん、しんらちゃんに励まされたの!! 今度は私がみんなを助ける番だよ!!」

 

グレースは強い口調でクルシーナに反論する。

 

「っ・・・病気になって、チヤホヤされたぐらいで浮かれてんじゃねぇよ。それで病気になった奴らを理解したつもりかよ」

 

クルシーナはその言葉に一転して不機嫌そうな表情になり、攻撃的な口調で批判する。

 

「難しいことはわからないけど、私は病院になった医者や支えてくれたみんなに感謝してるの。私はその人のためにも恩返しがしたい!! だから、私は、私を支えてくれた、みんなが生きる地球を守りたい!!!!」

 

グレースは負けじと反論し、その強い意志を持った眼差しを崩さない。

 

「それに・・・・・・しんらちゃんにも会えて、私は嬉しかった。顔を見られただけでもよかったと思ってる。ここでお手当てをして、もう一度しんらちゃんに会いたい!! あの日の約束を、綺麗な自然を一緒に見にいきたい!!!!」

 

ズキン、ズキン、ズキン!!

 

「っ!!??」

 

グレースが旧友にも会えたという喜び、そして成し遂げたいというその叫びを聞いた直後、クルシーナの頭にまた痛みが走った。今度は普通では、ごまかすことができないほどの。

 

クルシーナは思わず、顔を顰めて頭を手で抑える。失われていたはずの何かが、頭の中に甦ってくる。

 

「ウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・ウァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

シビレルダは起き上がって空中へと飛び上がると両手を広げる。そこから木の実のエフェクトのようなものが出現すると、そこから種のような光弾を次々と放った。

 

「ぷにシールド!!」

 

ステッキのラビリンがそう叫ぶと、肉球型のシールドが展開され、種のような光弾を防ぐ。

 

「ふっ!!」

 

そして、そのまま飛び上がってシビレルダへと突っ込んでいく。

 

「ウァァァァァァァァ!!!!」

 

シビレルダは飛び出してくる、グレースに対して巨大な拳を繰り出す。

 

「うっ・・・・・・きゃあぁっ!!!!」

 

グレースはシールドごと突っ込もうとしたが、拳のほうが威力が強く打ち破られてしまう。

 

「「グレース!!」」

 

吹き飛ばされたグレースを、少し疲労が回復したのかなんとか立ち上がったフォンテーヌとスパークルが背後から受け止める。

 

「ありがとう、二人とも。大丈夫なの?」

 

「なんとかね・・・」

 

「ちょっと休んだぐらいだけど・・・戦えるよ!!」

 

グレースはボロボロになっている二人の身を心配していたが、二人はそれを吹き飛ばすように強い口調で返した。

 

「はぁっ!!」

 

そこにハープの奏でる音が聞こえると、風で作り出された輪がシビレルダの足元へと放られる。

 

「ウゥゥ? ウゥゥゥゥゥゥウァァァァァァァ!!??」

 

シビレルダの足元から強烈な風が発生し、シビレルダは耐えようとしていたが、耐えきれずに空中へと飛ばされ、そのまま地面へとひっくり返った状態のまま、叩きつけられる。

 

「私も動けます」

 

ハープを持って、先ほどの攻撃を行ったアースが前に出てそう言った。

 

「早く、シビレルダを浄化してあげましょう!」

 

アースの言葉に、グレースたち3人も頷くとステッキを構える。

 

ドゴォォォォォン!!!!

 

「ウァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

シビレルダは轟音を立てながら起き上がると、翼を広げて宙へと飛び上がる。

 

「ウァァァァァァァァァッ!!!!」

 

シビレルダはそのまま急降下して両手を地面へと叩きつける。プリキュア4人は飛び上がって交わす。

 

「「「はぁっ!!!」」」

 

グレースたち三人はステッキを振るってそれぞれの色の光線を放ち、シビレルダの顔に直撃させる。

 

「ウゥゥゥ・・・ウゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

「はぁっ!!」

 

「ウゥゥ!?」

 

シビレルダは顔を顰めながら苦しみの声をあげ、その隙を狙ってアースが頬に蹴りを加えて再び後ろへと倒す。

 

「ウァァァァ!!!!」

 

しかし、シビレルダはすぐに翼を広げて土煙を吹き飛ばすと、空中へと飛び上がる。

 

「アァァァァァァァァ!!!!!!」

 

シビレルダは口から赤とピンクが入り混じった光線を放つ。プリキュアたちは前へ飛んでかわし、そのままシビレルダへと突っ走っていく。

 

「ウァァァァァァァ!!!!」

 

シビレルダは小さな日傘のようなものを生成すると、プリキュアに向かって飛ばす。

 

プリキュアたちは横に避けたり、日傘を蹴り飛ばして弾いたりするなどしてシビレルダへと迫っていく。

 

そんな中、フォンテーヌは木へと飛び移り、木から木へと飛び移って近いところからシビレルダへと飛び出す。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「ウゥゥゥ!!」

 

シビレルダの顔面に向かって蹴りを繰り出し、シビレルダは巨大な腕でガードする。

 

「はぁっ!!!」

 

「グゥゥゥゥゥ!? グァァァァァァ!!!!!」

 

そこへアースがシビレルダの背後から蹴りを入れてよろつかせるも、シビレルダは振り払うように腕を動かす。

 

「「はぁぁっ!!」」

 

「グゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

アースが飛びのいて避けると、グレースとスパークルがシビレルダの背中に向かって光線を放つ。

 

「ウァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「「あぁっ!?」」

 

「「きゃあぁ!?」」

 

シビレルダは苛ついたのか、再び雄叫びをあげながら周囲に衝撃波を放つ。プリキュアたちは吹き飛ばされるも、地面に着地して踏ん張る。

 

「攻撃の手を緩めちゃダメラビ!!」

 

「こうなったら、ひたすらに!!!!」

 

「動きを鈍らせていくしかないペエ!!」

 

ヒーリングアニマルたちは鼓舞するように叫び、プリキュアたちはそれに奮い立たせて立ち向かっていく。

 

「まだまだ、行けるよ!!」

 

「こうなったら、動けなくなるまで力を振り絞るしかないわね!」

 

「あたしたちの持ってる力をあいつにぶつけようよ!!!!」

 

「ええ。私たちの有り余っている力を、全部絞り出して行きましょう!!」

 

プリキュアたちも自分を鼓舞しながら、シビレルダへと向かっていく。

 

クルシーナはその様子を、特にキュアグレースを無表情で注視して見つめていた。

 

「キュアグレース・・・あいつ・・・・・・」

 

あのピンクのプリキュアを見ていると、頭が痛くなる。だが、この頭痛が今後の活動に支障が出てくるかもしれない。そのために解決しておこうと考え、彼女を見ておくのだ。

 

キュアグレースは、さっきまでは病気に苦しんでいて、自分の手元にいた。そして、脱走者が味方になることを引き換えに、あいつを苦しめるのを諦めて回復させ、連れていかせた。

 

その際に、激しい頭痛が発せられ、何かを思い出しそうになった。

 

そして、気に食わないシビレルダを実験で怪物にした後、キュアグレースがやってきた。そいつに問答した後、あいつは自分の旧友の名前を出して、約束を叫んだのだ。

 

この時も、激しい頭痛に襲われ、何かを思い出しそうになったのだ。

 

そんなことを考えながら、キュアグレースのことを見つめるクルシーナ。

 

「・・・・・・・・・」

 

キュアグレースは他の3人と一緒に、シビレルダに対応し、攻撃をかわしつつ、光線を放ち、吹き飛ばされても体勢を立て直して蹴りを入れようとしている。

 

ーーーー苦しい、よ・・・たす、けて・・・。

 

なぜか頭の中に甦るのは病気で苦しみ、助けを求めるキュアグレースの姿。

 

そして・・・・・・。

 

「っ・・・・・・!!!」

 

クルシーナは再度頭痛に襲われると、突然驚いたように目を見開いた。

 

「ぁぁ・・・あぁ・・・・・・!」

 

「?? クルシーナ?」

 

ダルイゼンが不審に思い、声をかけることも聞かず、クルシーナの頭の中にある映像が甦った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しんらちゃん、ごめんね・・・本当は病気のあなたのところにいてあげたいんだけど・・・』

 

『大丈夫。お父さんは気にしないで仕事してきて』

 

それは人間だった頃の記憶・・・父親と思われる女装の男性が心配そうに見つめるも、しんらは笑顔でそう答えた。

 

『・・・花を見にきたの?』

 

『え・・・?』

 

『・・・花を見にきたの?』

 

『・・・・・・』

 

コクコク

 

『おいで』

 

『あ、ま、待って・・・』

 

入院している病院の中、キュアグレース、つまりは花寺のどかに出会ったのだ。

 

『しんらちゃ~ん!!』

 

『のんちゃん・・・!』

 

『今日も来ちゃったぁ!』

 

花寺のどかを、のんちゃんと呼ぶようになり、病院内で親しくなった。

 

『へぇー、その自然ってそんなに綺麗なんだ』

 

『そうだよ。もっと小さな頃に一緒に行ったの。綺麗だったなぁ~。とても空気が澄んでたよ』

 

『アタシもそんな自然見に行きたいな』

 

『見に行こうよ! 一緒に!!』

 

『あ・・・』

 

『お互い病気を治して、退院できたら一緒に行こうよ!! その自然に!!』

 

一緒に病気を治したら、綺麗な大自然を見に行こうと約束したこと。

 

『のんちゃん!! しっかりして!!』

 

『はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・』

 

『待ってて!! 今、看護師さんに・・・!!』

 

『しんら、ちゃん・・・苦しい、よ・・・たす、けて・・・・・・』

 

『誰かぁ!! 誰かいないのー!!??』

 

『はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・』

 

『っ・・・私が運ばなきゃ・・・!!!』

 

病院の外を連れ回していたら、突然のどかは倒れ、しんらは助けるために担いで運んでいったことがある。

 

そのあとは、彼女にとっては辛い出来事だった。

 

『残念だけど・・・あなたの娘さんの、病気は・・・!!』

 

『嘘よ・・・嘘言わないで!! そんなことあるはずないわ!! うちの娘が治らないんて・・・!!』

 

『お父さん、落ち着いてくれ・・・!!』

 

『!?』

 

設楽という医者が、自分のお父さんと対面し、その話を聞いてしまった。自分の病気はどうやっても治らないということ、そしてそれを否定するように逃げ出したこと。

 

『ぅぅぅ・・・ぁぁぁ・・・・・・』

 

その数ヶ月後・・・眠る気力も起きず、生きる気力もなくなり、体も動かない・・・夢も希望も湧かない。そして、彼女の頭の中は歪んだ思考で支配された。この世界がなくなってしまえばいいと、みんなみんな苦しんでいればいいと・・・!!

 

そう怨みを抱いていた時、あいつの声が頭の中に響いた。

 

『苦しいのか? 辛いのか?』

 

・・・・・・誰? 誰なの?

 

苦しいわよ・・・辛いわよ・・・生きているのに、動けないことが・・・!!

 

『自由に走り回りたいか?』

 

・・・自由に動きたい。自由に生きたい。鳥籠のようなこんな場所なんか嫌。

 

全部、壊してやる・・・病気にしてやりたい・・・!! 全ての人間を・・・医者を・・・苦しめてやりたい・・・!!!!

 

『いい憎しみだ。まるで地球を憎んでいるとも思える』

 

嫌いよ、こんな世界。私を拒絶する世界なんかいらない・・・!!!!

 

『我が全て楽にしてやろう。自由に行動できるように力を与えてやる』

 

本当・・・? 本当なの? それ・・・。

 

『その代わり、我のために働き、我のために尽くすのだ』

 

何だっていい・・・自由に動けるなら・・・何だってする・・・!!!!

 

『地球を我らの住む世界のような、快適な環境にするために・・・私の大切な娘としてな』

 

快適な環境・・・? あなたの住む世界・・・?

 

誰なの? あなたは、誰なの・・・?

 

『・・・我が名は、キングビョーゲン。今からお前を娘とする、ビョーゲンズの支配者である』

 

そう、キングビョーゲン・・・自身のお父様が話しかけてきたのだ。

 

『・・・!!』

 

そして、ハッとしたように目を覚ます。相変わらず、ベッドに横たわるこの体は動かない。

 

すると何か物音がし、病院の窓から何かがすり抜けるように入ってくる。その紫がかったような赤黒い靄はしんらが横になっているベッドの下へと素早く移動する。そして・・・・・・!!

 

ズオォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

『っ!!?? あぁ・・・!』

 

ベッドの下から赤黒い靄がしんらを包み込むように襲いかかる。しんらは一瞬驚きの表情をするも、それを受け入れるかのような恍惚とした表情になった。

 

赤黒い靄は無抵抗のしんらを包み込む。しんらは視界が赤く染まっていくも、不思議と苦しさを感じない。一体、どうなっているのか・・・??

 

そんなことを考える間も無く、しんらの意識は闇へと落ちていった。

 

そして、自身が気がついた時には、再びあの声が響いていた。

 

『地球上にいるビョーゲンズたちよ・・・我はキングビョーゲン。時は満ちた・・・この星をビョーゲンズのものにするため、今こそ忌々しきヒーリングアニマルを滅する! さあ、我の元に集うがいい!!!』

 

その声が聞こえると同時に、目の前に光が見えていた。しんらはそれに救いを求めるかのように手を伸ばした。

 

そして、ベッドに眠っているしんらの瞳が大きく見開かれた。周囲から赤い靄を見ている人でもわかるように赤く光らせながら。その姿はすでに人の肌ではなく、悪魔のようなツノとサソリのような尻尾が生えていた。

 

やがて赤黒い靄はしんらごと浮かび上がると、そのまま勢いよく窓の外へと飛び出していく。

 

病院からは他の場所からも3つの赤い靄がその近くへと飛び出していったが、その一人であるしんらは病院の近くの地面へと赤黒い靄に包まれたまま、着地したしゃがみ込む姿勢のまま静止する。

 

そしてゆっくりと立ち上がると、赤い靄が静かに薄れていき、その姿を晒した。

 

薄いピンク色のような明らかに人ではない肌に、白を基調としたようなマジシャンのような衣装、頭には悪魔のようなツノとお尻にはサソリのような尻尾が生えている。ビョーゲンズの一人、クルシーナの誕生であった。

 

クルシーナは背後を振り向くと、自分以外の3人の仲間が視界に写ったが、何よりも気になるのがその3人の後ろに立っている病院であった。

 

『・・・・・・ふっ♪』

 

クルシーナは不敵な笑みを浮かべると、その場から姿を消す。

 

『嘘・・・患者がいない・・・!? 大変!! 早く院長に・・・!!!』

 

たまたま病院内を見回りに来ていた看護師が物音に気づいたのか、病室に入ると患者の姿が消えていた。看護師は大慌てでその病院の院長に電話をしようとするが・・・・・・。

 

『・・・その必要はないわ』

 

『・・・え?』

 

看護師の背後から声が聞こえてくると、看護師は疑問に思う。そして、ゆっくりと振り返るとそこには人でないものーーーークルシーナが立っていた。

 

『・・・ふふっ♪』

 

『っ・・・きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

クルシーナは不敵な笑みを浮かべると、手のひらを広げて赤い光弾を発射し、看護師から悲鳴が上がるのであった。

 

そして・・・クルシーナにまた別の映像が甦る。

 

『だいじょうぶ・・・?』

 

ベッドの上で危篤になるのどかを見ていた、しんらはそう呟いて彼女の手を握る。

 

『のどかを心配してくれるの?』

 

『うん・・・・・・』

 

のどかの母親が微笑みながら聞いてきたので、そう肯定した。

 

『私が連れ回したりなんかしたから、のんちゃんはあんなことになったんだ・・・』

 

『君のせいじゃないよ。君はのどかと一緒にいてくれたんだろ?』

 

『私たちは恨まないわ。だってあなたのおかげで、一人悲しそうな顔をしてたあの子が笑顔になったんだから・・・』

 

『・・・・・・・・・』

 

のどかが眠った後、しんらは彼女の両親に申し訳ないと思っていた。しかし、父親も母親もしんらのせいじゃないと励ましてくれた。そんな言葉は、彼女の心を晴れやかにすることはできなかった。

 

『病室に、戻ります・・・・・・』

 

しんらは悲しそうにそう呟くと、のどかのいる病室から離れていった。

 

『うっ・・・おかしいなぁ・・・さっきまで、なんともなかった、のに・・・』

 

しかし、病室へと戻っていくしんらの表情は苦しそうな顔をしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナは放心したような表情をしていたが、いつの間にかズキズキしていた頭痛も消えてなくなっていた。

 

彼女はそのような状態が数秒続いた後、口元に笑みを浮かべる。

 

「・・・ふふっ、そうか・・・そうだったのね」

 

クルシーナは何かを悟ったかのようにそう呟く。まるで何か憑き物が取れたかのような、そんな状態だった。

 

「私、人間だったのね・・・そして、ビョーゲンズ・・・クルシーナになった。ふふっ、ふふふふふふ♪」

 

「クルシーナ、どうした??」

 

自身がビョーゲンズになるまでの記憶を取り戻したクルシーナは笑みをこぼすと、心配になったダルイゼンが声をかける。

 

「ふふふ♪ い~や? なんでもないわ」

 

クルシーナは笑いながらそう答えると、再びプリキュアとシビレルダの戦いを見つめ始めた。

 

「のんちゃん・・・・・・」

 

そして、キュアグレースを見つめながらそう呟いた。

 

「ウゥゥゥゥゥゥ、ウァァァァァァァ!!!!」

 

シビレルダは宙に浮かび上がると、ドリルのような髪を周囲に逆立たせて、そこから赤い光線を放つ。

 

「ふっ!!」

 

「「「「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」

 

「ウァァァ!?」

 

激しい戦いにお互い疲弊しつつも、プリキュアたちはその光線を掻い潜りながら飛んでいくと、同時に4方向から飛び蹴りを食らわせ、ダメージを受けたシビレルダは地面へと落下していく。

 

「よし!! このまま一気に!!」

 

グレースたちが浄化の体勢に入ろうとした、その時だった・・・・・・。

 

「ウゥゥゥ・・・ナンデ・・・ナンデデスノ!!??」

 

「「「「っ!?」」」」

 

どこかで少し意思を取り戻したのか、唸り声しか上げていなかったシビレルダが言葉を発し始めたのだ。

 

「ワタクシハ・・・ワタクシハ・・・!! タダ、ゲンキデイタカッタダケデスノニ!!!! ナンデワタクシガ、ビョウキニナラナケレバナラナインデスノ!!??」

 

「あ・・・・・・」

 

グレースはよく見ると、シビレルダの左右の瞳から赤い涙がこぼれているのが見えた。

 

「ダイキライ!! ミンナ、ダイキライデスノ!!!! ニンゲンモ・・・ケンコウテキナヤツラモ・・・チキュウモ・・・ミンナミンナキエテシマエバイイデスワ!!!!」

 

「シビレルダ・・・・・・」

 

怒りの咆哮を上げているシビレルダは再び口から赤とピンクが入り混じったようなオーラを溜め始める。

 

「ねえ、みんな・・・・・・あいつ、泣いてるよね・・・?」

 

「ええ・・・私にもよく見えるわ・・・」

 

「私もしっかりと見えます・・・あれを見てると、なんだか胸が、苦しくなるのです・・・」

 

スパークルの言葉に、フォンテーヌとアースも肯定し、心を痛め始めていた。

 

「私、わかるよ、その気持ち・・・」

 

「ウゥ!!??」

 

そんな中、グレースははっきりと声を出す。それに反応したシビレルダは目を見開いた。

 

「私も、何で病気になったんだろうって、何で動かないんだろうって、病院のベッドで横になったときにそう思ってた。心細くて、不安で、しょうがなかった。でも、友達やお母さん、お父さん、そして病院のみんなが支えてくれたおかげで、病気に向き合うこともできたし、生きる希望も持てたの。だから、わかるの、あなたのその気持ち・・・!!」

 

「ウゥゥゥゥゥゥ、ウゥゥゥゥゥゥ、ウァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

グレースのその心情を吐露したことで心を乱したのか、シビレルダは拒絶するかのように苦しみ出す。

 

「だから、今度は私が救いたい!!! 病気になっている人を・・・病気で苦しんでいる人を・・・!!! そのために私は、これからもラビリンとお手当てを続けるんだよ!!!!」

 

グレースは睨みつけるようなキリッとした表情でそう主張した。自分は病気になったことがあるからこそ、苦しむ人を救いたい。だから、自分はお手当てを続けるんだと・・・!!!!

 

「ウゥゥゥゥゥゥ・・・ウァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

シビレルダはその言葉を否定するかのように、口に溜めていた赤とピンクの入り混じったオーラを光線状にして放った。

 

光線は着弾して爆発を起こし、大きな土煙が上がる。その中から飛び出してきたのは、間一髪で避けたプリキュアたちだった。

 

「みんな!!」

 

「ええ。もう、楽にしてあげましょう・・・!」

 

「あの子の苦しむような叫び声なんか、もう聞きたくないもん!!」

 

「この胸の痛みは・・・きっとシビレルダの痛みかもしれません。私は、あの方を救いたい!!」

 

グレース以外のプリキュアたちも鼓舞されたのか、強い口調で口々にそう言った。

 

「クルナ・・・!クルナァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

シビレルダは拒絶するような怒りの叫び声を上げながら、小さな日傘のようなものを無数に作り出して一斉にプリキュアたちへと投下した。

 

「空気のエレメント!!」

 

アースはハープに空気のエレメントボトルをセットする。

 

「ふっ!!!!」

 

ハープから無数の空気の塊を発射し、小さな日傘を次々と空気の中へと包んでいく。その間にグレースたち3人はシビレルダへと飛んで向かっていく。

 

「シビレルダ・・・もう、こんな辛いこと・・・終わりにしてあげる!」

 

グレースのその言葉を合図に、3人はミラクルヒーリングボトルをステッキにセットする。

 

「「「トリプルハートチャージ!!」」」

 

「「届け!」」

 

「「癒しの!」」

 

「「パワー!」」

 

グレース、フォンテーヌ、スパークルの順で肉球にタッチしていき、ステッキを上に掲げる。すると、花畑が広がっていき、背後には自然豊かな森が広がっていく。

 

「「「プリキュア! ヒーリング・オアシス!!」」」

 

3人は一斉にメガビョーゲンへとステッキを構え、ピンク・青・黄色の3色の光線が螺旋状になって放たれる。螺旋状の光線は混ざり合いながら一直線に怪物と化したシビレルダに直撃する。

 

「ウゥゥゥ、ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・ワ、ワタクシ、ハ・・・ワタクシハ・・・!!! ウゥゥゥゥゥゥ、ウァァァ、ァァァ・・・!!! ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!」

 

光線を受けたシビレルダは、絶叫を上げると光に包まれていく・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おとうさまぁ!!』

 

『麗子!!』

 

『ワタクシ、おおきくなったらおとうさまのようなひとをすくえるひとになりたいですわ!!』

 

『いい夢だな・・・きっとなれるさ、麗子なら・・・!!』

 

あれ・・・? これって・・・??

 

『麗子!! 大丈夫か!?』

 

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、おとう、はぁ、さま・・・!』

 

『大丈夫だ!! 今、病院の人が見てくれる!!』

 

ワタクシの、お父、様・・・・・・?

 

『麗子・・・ごめんよ・・・お父さんは無力だ・・・』

 

『・・・・・・・・・』

 

『お前が目を覚まさないのはわかってる・・・でもせめて、お父さんが側にいてやるからな・・・』

 

・・・・・・・・・。

 

『麗子様。ご主人は忙しいので、私が来てあげましたよ』

 

『・・・・・・・・・』

 

『目はまだ覚まさないのですね。でも、私も、ご主人も、あなたが起きてくるのを待っておりますぞ』

 

・・・・・・・・・。

 

『麗子!!』

 

『・・・・・・・・・』

 

『麗子、起きて!! 麗子!!』

 

『母さん、止めるんだ!!』

 

『でも、麗子が・・・麗子が!!』

 

ワタクシの、お母様・・・??

 

・・・・・・・・・。

 

・・・ああ、そうでした・・・・・・思い出しましたわ・・・・・・。

 

手を握ってくれた、支えてくれた・・・・・・あの暖かい、気持ち・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

プリキュア・ヒーリング・オアシスが直撃し、シビレルダは絶叫を上げると、メガパーツを入れられる前の元の小さな姿へと戻っていく。彼女の体の中の禍々しいオーラが抜けていき、徐々に元の姿へと戻っていく。

 

「ヒーリン・・・グッバイ・・・・・・」

 

完全にテラビョーゲンとしての姿へと戻ったシビレルダは、穏やかな表情を浮かべてそう言うと、ヒーリング・オアシスの癒しの光へと包まれていった。

 

「「「「「「お大事に」」」」」」

 

シビレルダが浄化されたことによって、彼女が怪物となった際に蝕んでいた箇所が元の色を取り戻していく。

 

「ワフ~ン♪」

 

体調不良だったラテも額のハートマークが黄色から水色に戻り、元気になった。

 

ドサッ!!

 

「「「「っ!!」」」」

 

その直後、地面に何か落ちたような音が聞こえ、プリキュアたちが振り向くとそこにはシビレルダが倒れていた。

 

「え・・・あれって、シビレルダだよね? 何で消えてないの・・・?」

 

スパークルは浄化技を受ければ消えるはずのシビレルダが消えていないことに驚く。

 

「・・・・・・・・・」

 

一緒に見ていたアースが警戒しながら近づき、体を起こしてみると確かにシビレルダだが、その様子はすっかりと変わっていた。

 

薄いピンク色だった肌は、人の肌に戻っており、悪魔のようなツノやサソリのような尻尾は生えていない。ピンク色のドレスも患者服に戻っており、その表情は安らかな寝息を立てていた。

 

「これは・・・人間です・・・!」

 

「「えぇっ!?」」

 

アースが呟いた言葉に、グレースとスパークルは驚く。

 

「そうだったのね・・・! シビレルダは人間から進化させられたテラビョーゲンだったんだわ!!」

 

「!! 本当にいたんだ・・・・・・」

 

フォンテーヌは病院に行く前のアースの言葉を思い出し、確信を得ていた。メカニズムはわからないまでも、人間からビョーゲンズに進化していたテラビョーゲンは実在していたと、これで本当のことだとわかったのだ。

 

パチパチパチ・・・・・・。

 

「「「「っ!!」」」」

 

プリキュアたちが見ている中、拍手の音が聞こえ、振り向くとそれはクルシーナだった。

 

「・・・ふっ♪」

 

木から背中を離していたクルシーナは不敵な笑みを浮かべながら、こちらを見ている。

 

「クルシーナ・・・!!!!」

 

彼女を見た途端、フォンテーヌの中に怒りの炎が燃え上がる。

 

「あいつ、許せないし!!」

 

「数々の非道な行い・・・見過ごすわけにはいきません!!」

 

スパークルもアースも同じように、クルシーナを睨みつけながらそう言った。

 

「今のラビリンたちならできるラビ!! この勢いで、クルシーナも、浄化するラビ!!!」

 

「うん!!」

 

ラビリンが鼓舞するように叫ぶと、グレースたちは頷く。あんなに苦戦したシビレルダを浄化できたのだから、クルシーナも浄化できるはずだ。プリキュアたちはそう信じていた。

 

それを見ていたクルシーナは不敵な笑みをさらに深くした。

 

「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」」」」

 

プリキュアたちは一斉に、クルシーナに向かって飛び出した。

 

「・・・ふふっ♪」

 

クルシーナは笑みをこぼしてその場から飛び出して姿を消すと、一瞬でプリキュアたちの前に現れ、背中から面積の広い、長い葉っぱのようなものを伸ばし、同時に片手を突き出すように構える。

 

そして、葉っぱからラフレシアのような花を生やすと、それらと片手からピンク色の禍々しいオーラを溜め始める。それは先ほど吸収したアースの浄化技、そして自分の持っている力・・・その二つが合わさり・・・・・・。

 

ズドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!

 

「「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

同時に禍々しいピンク色の極太な光線が放たれ直撃し、着弾して凄まじい轟音を立てたところからピンク色の禍々しいオーラの光の柱が浮かび上がった。

 

やがてその光の柱も幻のように消えていき、宙にかなり舞っていた土煙が晴れ始める。

 

完全に土煙が晴れた時、そこにあったのは極太な光線を受けてできた巨大なクレーターと、その中にプリキュアの変身が解除されてしまったのどかたちが倒れ伏していた。

 

「うぅぅぅ・・・・・・」

 

「あ・・・変身が・・・!」

 

「うっ・・・!?」

 

のどかは呻いていて、ちゆは自分たちがプリキュアの変身解除されてしまったことに気づく。そして、のどかが顔を上げると、そこにはダルイゼンが無表情で立っていた。

 

「あ・・・!?」

 

「のどか!!」

 

「ちょっと!! またのどかっちに何かしたら!!」

 

ちゆたちがそう叫ぶ中、ダルイゼンはのどかの前にしゃがみ込む。

 

「思い出したよ」

 

「え?」

 

「俺を育てたのは、キュアグレース・・・お前だって」

 

「・・・・・・え?」

 

ダルイゼンは不敵な笑みを浮かべながらそう告白すると、のどかは呆然と彼を見つめる。自分がダルイゼンを育てた・・・? 一体、どういうこと・・・?

 

「メガビョーゲンの一部だった俺は、お前の中で成長して、この姿になったのさ」

 

「!?」

 

のどかはそのダルイゼンの言葉を告げられ、表情が凍りついた。

 

「ラビ・・・!?」

 

「「「えっ・・・!?」」」

 

このことはラビリンやちゆたちも信じられないような目でこちらを見ていた。その反応を見たダルイゼンは不敵な笑みを浮かべると、その場から立ち上がる。

 

「お前にはもう一人、懐かしい奴がいるだろ?」

 

「え・・・どういう・・・?」

 

怯えた表情のままののどかは震えた声で尋ねようとすると・・・・・・。

 

「のんちゃん♪」

 

「!!??」

 

背後からのどかの耳に囁く声。それを聞いたのどかは驚きに目を見開いた。この声、忘れもしない声だった。

 

「久しぶり♪ 元気にしてたぁ?」

 

優しそうな甘い声で囁くとその人物はのどかの目の前にゆっくりと歩いて立つ。のどかがガクガクと首を向けながらその人物を追うと、そこには先ほどお見舞いに来ていたワンピース姿の人物だった。

 

「しんら・・・ちゃん・・・?」

 

「ふふっ、覚えてたんだ。嬉しいなぁ」

 

目の前に立つ少女ーーーーしんらは笑顔だったが、のどかは呆然とした表情だった。

 

「なんで・・・しんらちゃんが、ここに・・・?」

 

しんらはこの場所にはいないはず、なのになぜこの場に姿を表したのか? ダルイゼンの誕生だけでも混乱しているのどかは思考が追いつかなかった。

 

「あれ? まだ気づかないの?・・・ふっ」

 

しんらは目を丸くしながら彼女を見ると、その直後に不敵な笑みを浮かべる。そして、片手の指をパチンと鳴らすと人肌は薄いピンク色へと変わり、悪魔のようなツノとサソリのような尻尾が生え、頭上から飛んできた中折れ帽子が彼女の頭へと収まり、ビョーゲンズのクルシーナとしての姿を露わにした。

 

「・・・ふふっ♪」

 

「ぇ・・・クルシー、ナ・・・? しんらちゃんが、クルシー、ナ・・・?」

 

「そうよ、のんちゃん。私がしんらよ、来栖しんら」

 

クルシーナは自分の胸に手を当てながら、自分がしんらであることを明かした。

 

「しんらっちが、クルシーナ・・・? え・・・なんで・・・!?」

 

「来栖・・・!!??」

 

ひなたはお見舞いに訪れたしんらがビョーゲンズだったことに戸惑いを隠せない。ちゆはクルシーナが発した苗字が引っかかり、ハッとしたように目を見開く。

 

ーーーー本当は名前を教えちゃいけねぇが、来栖、毒島、板井、あと他にも2人の患者を任された。

 

そう。来栖というのはあの世界に行った時に、設楽先生が話していたのだ。

 

「思い出したわ・・・!! 来栖さんは、設楽先生の話していた患者の名前・・・!! その一人がクルシーナだったんだわ!!!!」

 

「うぇぇ!? じゃあ、設楽先生が救えなかったって言ってた患者って・・・!?」

 

「えぇ・・・クルシーナたちのことだったのよ・・・!」

 

思い出したちゆはそう話すと、ひなたも驚きを隠せなかった。

 

「すっかり元気になっちゃって、私、嬉しいわ。だって、病気から治って元気になった奴ほど蝕みがいがあるんだもの♪」

 

クルシーナは甘い声を保ちながらも、物騒なことを言う。のどかは震えていた。

 

「ウソ、だよ・・・ウソだよっ!! しんらちゃんが、ビョーゲンズになってるなんて・・・テラビョーゲンになっちゃってるなんて・・・!!!」

 

のどかは目の前にいる友人が地球を蝕もうとする敵に変わったことが信じられず叫ぶ。病院時代に一緒に治そうと誓っていた友人がビョーゲンズとなっているなんて、のどかには到底信じられることではなかった。きっと、このビョーゲンズがしんらに化けているのであろうと思い込んでいた。

 

クルシーナはそんなのどかを見て、彼女の前でしゃがみ込み顔を近づける。

 

「・・・ねえ、のんちゃん。病院で会った時のこと、覚えてる? 一緒にお花に水あげたよね? 綺麗な自然を見に行こうって約束したよね? 病院の外を抜け出して、一緒に花火を見に言ったじゃない。忘れちゃった?」

 

クルシーナは昔を思い出しながら話す。のどかが初めてしんらに会った時、花を見せてもらった。一緒に花にお水をあげたのだ。一緒に自然を見に行こうという約束もしたし、病院の外を二人でこっそり抜け出して、山の上で花火を見に行ったりもした。これはのどかとしんらしか知らないことであった。

 

「ど、どうして・・・それを・・・!?」

 

クルシーナの言葉に動揺したのどかが震える声で尋ねる。

 

「だから、言ってるじゃない。私がしんらだって」

 

クルシーナは立ち上がって優しく微笑みながらそう答えた。

 

「ウソだ・・・ウソだぁ!! そんははずないよぉ!!! なんで・・・なんでしんらちゃんが・・・しんらちゃんが・・・・・・」

 

のどかはあまりのショックに体をフラつかせ、瞳から光が消えて背後に倒れそうになる。親友のしんらちゃんがテラビョーゲンになった、そんな悪夢のような出来事が目の前で起きている。

 

これは夢だ・・・早く覚めてほしい・・・。

 

のどかの思考は考えられなくなるほどに、止まりかけていた。

 

「「のどか!!」」

「のどかっち!!」

 

ちゆたち3人は倒れそうになるのどかを背後から支える。

 

「大丈夫!? のどかっち、しっかりして!!」

 

「しんらさん!! どういうことなの!? しんらさんがテラビョーゲンになったって!?」

 

「のどかを傷つけるために言ってるなら許しませんよ!!」

 

心配してのどかの体を揺さぶるひなた。そして、ちゆとアスミは険しい表情でクルシーナに問いかける。

 

「・・・そんなことして何のメリットがあんのよ? まあ、いいわ。お前らだけに教えてやるよ」

 

クルシーナは話し相手が変わった途端に一転して冷たい口調に戻り、彼女たちの視線を意に介さず話し始める。

 

「私はビョーゲンズとして生まれ変わったの。お父様と、彼のおかげでね」

 

クルシーナはダルイゼンを指しながら言った。

 

「ダルイゼンのおかげって・・・どういうこと??」

 

ひなたは眉を顰めながら尋ねる。ダルイゼンが、しんらをクルシーナにしたことに何の関係があるのか?

 

「私ね、のんちゃんが危篤になった時に手を握ったことがあったの。その時に、のんちゃんの中にいたダルイゼンの一部が私に流れ込んできたワケ。そうでしょ? ダルイゼン」

 

「ああ・・・お前の始まりも俺だったな。それも思い出したぜ」

 

クルシーナは同意を求めると、ダルイゼンもそう肯定する。

 

「私は最初、急に体調が悪くなって苦しくなったの。ダルイゼンの一部が私を侵食してね。病院も移動になっちゃったし、そこにいた設楽っていうヤブ医者にも治せないって言われちゃったし、私は絶望したわ。一生、動けないんだ、って。そんな時、お父様の声が聞こえてきて、私は察したの」

 

クルシーナは説明の途中で、プリキュアたちに歩み寄って顔を近づける。

 

「病気が、私に微笑みかけてくれた、って」

 

その言葉にちゆたちは言葉を失う。それも構わずにクルシーナは顔を離すと再び話し始める。

 

「私はお父様を、病気を受け入れたの。そしたら、苦しさなんかあっという間になくなって、最高の気分になったの!! こんな快楽はないって!! こんなに動ける喜びはないって!! お父様とダルイゼンには感謝しないとね」

 

クルシーナは笑みを浮かべながらそういうと、立っているダルイゼンの横に並び、彼の腕に抱きつく。

 

「なっ・・・おい!!」

 

「別にいいじゃない。ダルイゼンには感謝してるんだから、もちろんお父様にもね。私は、ダルイゼンが大好きよ、お父様もそうだけど」

 

ダルイゼンは戸惑ったように叫ぶと、クルシーナは乙女のような表情でそう言った。

 

すると、段々と冷静になったダルイゼンもその場を楽しもうと笑みを浮かべる。

 

「ああ・・・一生、そばにいてやるさ」

 

「嬉しい♪」

 

嬉しそうな声を出すクルシーナ。その光景をちゆたちは呆然と見つめている。

 

「ぁ・・・し、しんら、ちゃん・・・・・・」

 

のどかは光の灯らない瞳でその光景を見つめていた。そして、二人が何をしているのかを彼らの今の状況から認識すると・・・・・・。

 

「っ・・・しんらちゃんから離れてっ!!」

 

のどかは睨みながらそう叫んだ。大事な親友に触れていることが気に入らず、のどかは叫ぶ声をあげたのだ。

 

「・・・ふっ」

 

「・・・ふふふ♪」

 

クルシーナとダルイゼンは、のどかのそんな姿を見ると不敵な笑みを浮かべる。睨む瞳は虚ろで、どう見ても壊れているようにしか見えない。

 

「のどかっち!?」

 

「のどか、落ち着いて!! 彼女はクルシーナなのよ!!」

 

「そうです!! 正気に戻ってください!!」

 

のどかの様子があまりにもおかしいと感じたちゆたちが心配して声をかける。

 

「ふふふ。のんちゃんったら、可愛いんだから♪」

 

クルシーナはその様子を見て、優しく微笑む。

 

「全く面白い・・・ますます気に入ったよ、キュアグレース。俺を育てただけじゃなく、大切な友人を間接的にテラビョーゲンにするとはな・・・?」

 

ダルイゼンは笑みを浮かべながらそう話す。

 

「ダルイゼン、そろそろ帰ろ?」

 

「ああ、そうだな・・・面白いものも見れたし」

 

クルシーナは甘えたような声でそう言うと、ダルイゼンも満足したようにそう言った。

 

「キュアグレース・・・また会おうぜ」

 

「のんちゃん、また遊ぼうね♪」

 

ダルイゼンとクルシーナはそう言い残すと、その場から去っていった。

 

「ぁぁ・・・しんら、ちゃん・・・」

 

のどかは手を伸ばしてそう呟くと、そのまま倒れて動かなくなってしまった。

 

「っ、のどか!! のどかぁ!!」

 

「のどかっち、しっかりしてよぉ!!」

 

ちゆとひなたは心配しながら声を掛け続けるも、全く反応を示さず、のどかの絶望に満ちたような表情には一筋の涙が溢れていたのであった。

 

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