ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
エピローグ的な話なので、今回は短めです。

今回で原作第28話ベースの話は終わりになります。
次回より、それぞれの新たな物語が始まっていきます。


第92話「軍門」

 

「本当か!?」

 

「本当の本当に、なんともないの!?」

 

「うんっ!! 元気元気〜♪」

 

「もう一度、検査は必要だが・・・確かに顔色も見違えるようだ・・・」

 

病院へと戻ったちゆたち。のどかの両親や担当の先生はつい先ほどとは違って、元気になっているのどかを見て唖然としていた。

 

「へへっ♪ お騒がせしました!!」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

しかし、その様子を察していて、心配そうに見つめているのは入り口付近で見守っていたちゆたちだった。先ほどまでクルシーナの正体が友人であることを知ってショックを受け、精神が壊れる寸前だったのに、現在は先ほどとは打って変わって高いテンションになっている。

 

どう見ても・・・ちゆたちにはのどかの様子がそれにしか見えなかったのだ。

 

「のどか!!」

 

やすことたけしは、愛する娘のことを抱きしめる。

 

「お父さん・・・お母さん・・・私、もう大丈夫だから」

 

のどかはそう言うが、二人は彼女を抱きしめたまま離さない。

 

「お父さん? お母さん?」

 

「・・・心配なんだ」

 

「今回はこれで済んだけど・・・また、いつか倒れるかと思うと・・・!!」

 

やすことたけしは心情を吐露する。大丈夫とは言っても、また娘が苦しい目に遭うかもしれない。そう思うと、のどかのことが心配で気が気でない・・・・・・。

 

「・・・・・・大丈夫」

 

「「??」」

 

「「「・・・!!??」」」

 

両親に向かってそう呟き、両親に抱きつくのどか。しかし、ちゆたちは気づいてしまったのだ。微笑むのどかの表情が虚ろになっていることに・・・・・・。

 

「もしものときは・・・また、戦う・・・一緒に戦ってくれるお友達も、たくさんできたの・・・何度倒れても、私は負けない・・・・・・」

 

のどかは両親から体を離すと強い口調でそう言った。虚ろな表情を二人に隠したまま。

 

「のどか・・・!!」

 

のどかとやすことたけしは、お互いを抱きしめ合った。両親二人の見えていないところで、のどかの表情はまた虚ろになっていた。

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

ちゆたちはお互いに目を合わせながら、心配そうな表情で見つめていた。

 

のどかの両親と担当医師が病室をあとにした後、ちゆたちが病室の中へと入る。のどかは窓の方を向けながらラジオ体操のような動きをしていた。

 

「のどか・・・・・・」

 

ちゆが前に出て心配そうに声をかけると、のどかは気づいてこちらに振り向く。その瞳は虚ろになっていたが、のどかは笑顔を見せた。

 

「あ、ちゆちゃん♪ 私、もう少しで退院できるの。嬉しいなぁ♪ あんなに苦しかったのに、こんなに動けるようになるなんて、本当に生きてるって感じだよね〜♪ まるで、さっきのしんらちゃんみたい♪」

 

「のどか」

 

のどかは笑顔を向けながら長々と話し始め、ちゆは彼女の名前を呼ぶ。

 

「そういえば、しんらちゃんに会って苦しくなった後の記憶がないの。なんだか誰かに抱かれているような感覚はして、まるでお母さんみたいに感じたんだ♪ 本当に誰だったんだろうね〜♪」

 

「のどか・・・!!」

 

しかし、のどかはその呼びかけに反応せず、構わずに話し始める。ちゆは少し語気を強くした。

 

「かすみちゃんもどこかに行っちゃったけど、きっとこっちに戻ってくるよね〜♪ だって、友達だもん♪ もしくは今頃、ちゆちゃん、しんらちゃんの家で私たちの帰りをーーーー」

 

「のどかっ!!!!」

 

のどかは一方的に話を続けようとし、ちゆは耐えきれなくなって叫んだ。

 

「? どうしたの・・・? ちゆちゃん。あ・・・」

 

首を傾げながらそう言うのどかに、ちゆは自身の両手を彼女の肩に置く。

 

「のどか・・・もう、逃げるのはやめましょう・・・?」

 

ちゆは心配そうな表情で、のどかを見つめながら言った。

 

「なんで? 私、逃げてなんかいないよ・・・? だって、しんらちゃんが・・・」

 

「ウソよ!!! だって、のどかの目には私のことが見えてないもの・・・!! クルシーナ・・・しんらさんのことばかり考えてる・・・!!」

 

ちゆは泣きそうな表情になりながら、そう訴えた。先ほどからのどかの言葉を支離滅裂になっていて、この場にいるはずのないしんらのことを考えている。明らかに普通ではなかった。

 

そして、その言葉に乗じるかのようにひなたとアスミも前に出る。

 

「そうだよ、のどかっち!! もういい加減現実を見ようよ!! しんらっちは、クルシーナだって!!」

 

「のどか、正気に戻ってください!! しんらさんはここにはいないのです!! しんらさんはビョーゲンズになってしまったのですから!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

二人がそう訴えると、のどかは放心したようにみんなを見つめる。

 

「っ・・・うぅぅ・・・うっ、うぅぅ・・・!!!!」

 

のどかは現実を突きつけられたかのように、頭を抱えながら泣きそうな表情をし始める。

 

「ウソだ・・・しんらちゃんはビョーゲンズになってない・・・しんらちゃんはクルシーナじゃない・・・クルシーナじゃないの・・・ビョーゲンズになんかなってないの・・・!!!!」

 

のどかはブツブツと呟きながら、クルシーナがしんらであることを否定する。先ほどのショックが甦り、またのどかの心は崩壊しそうになる。

 

「・・・のどか。私はのどかとしんらさんがどのように過ごしたかはわからないけど・・・明らかにのどかしか知らないことを話してた。それはクルシーナが、しんらさんである証拠よ」

 

「あぁ・・・あぁぁぁ・・・!!!!」

 

ちゆは苦渋の思いで、のどかに現実を向けさせようと話していく。その度にのどかは体をガクガクと震わせる。

 

「しんらっちが病院に居たってことは・・・クルシーナは人間だったってことだよね? ヘバリーヌが先生の娘だっていうのもホントみたいだし、さっきのシビレルダも人間だったから、合ってはいるよね?」

 

「あぁぁぁぁぁ・・・!!!!」

 

ひなたが思っていることを言うと、のどかの震えが大きくなった。

 

「のどか!! また苦しいのであれば、私たちに話してください! 私たち、友達ではないですか・・・!!!!」

 

「うぅぅぅ・・・うぅぅぅぅぅ・・・!!!」

 

「のどか!! ラビリンもその気持ちは一緒ラビ!! ちゃんと話してほしいラビ!!」

 

アスミとラビリンの訴えるような叫びに、のどかは表情を歪める。そして・・・・・・。

 

のどかはちゆの胸に顔を埋めた。そして、嗚咽を漏らし始める。

 

「ごめん・・・ヒック・・・ごめんね・・・! ちゆちゃん・・・ひなたちゃん・・・アスミちゃん・・・ラビリン・・・私、ショックだったの・・・一緒に病気を治そうねって約束してくれたしんらちゃんが・・・ビョーゲンズになってるなんて・・・認めたく、なかった・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「病気を治して、一緒に自然を見に行こうって約束したのに・・・私だけ、先に治って・・・退院して・・・しんらちゃんは一人ぼっちに・・・・・・もしかしたら、私のせいで・・・!!!」

 

泣きながら心情を吐露するのどかに、ちゆたちは何も声をかけることができなかった。そして、のどかはしんらがビョーゲンズ、クルシーナになったのは自分のせいじゃないかと責め始めたのだ。

 

ちゆたちもその時だけは何かを言うことができた。

 

「・・・のどかのせいじゃないわ」

 

「ぇ・・・?」

 

「しんらさんがクルシーナになったのは、ビョーゲンズの仕業よ。ビョーゲンズの誰かがしんらさんを唆して、彼女をビョーゲンズにしてしまったに違いないわ」

 

「そうだよ!! それに、さっきのシビレルダも人間だったんだよね? だったら、しんらっちも浄化すれば、人間に戻すことはできるよね!?」

 

「そうです。のどか、まだしんらさんはいなくなったわけじゃないんです。変わってしまっただけです。私たちが元の人間に戻せば、取り戻すことはできるはずです」

 

ちゆたちはそれぞれのどかに励ましの言葉をかける。奪われただけで失われたわけじゃない。取り戻すことさえできれば、また自分たちのところに友人として戻ることも可能なはずなのだ。シビレルダとの戦いで、その希望は見えていた。

 

「のどか・・・のどかは優しいから抱え込んじゃうのもラビリンは見てるラビ・・・ラビリンはのどかが救いたいと思うなら、その意思を尊重するラビ。のどかの大切な友人なら尚更ラビ!」

 

ラビリンは複雑な気持ちを抱きつつも、そう言った。自分たちの故郷を襲撃したビョーゲンズを救おうとするのは正直言ってやりたくない。でも、のどかが友達を助けるというのは間違ったことじゃない。内心は複雑だが、それでものどかの言うことを尊重して行動することにしたのだ。

 

「みんな・・・うん、そうだね・・・まだしんらちゃんは消えてない・・・取り戻せるんだもんね・・・」

 

希望が見えたのどかはちゆから体を離すと涙を拭う。

 

「よーし!! 私、もっとお手当て、頑張んないと!!」

 

のどかは気合の入った言葉を口にしながら笑顔で答えた。

 

「悲しむ時間は終わったか?」

 

「そうだね!」

 

「僕たちも、ビョーゲンズになった人間を元に戻す方法を考えてみるペエ!」

 

「ええ、そうね。私たちも強くならないとね」

 

「ワン♪」

 

「私も、のどかたちとお手当てをしていきたいです」

 

ちゆたちはそれぞれ思い思いを口にしていく中、のどかは心の中であることを考えていた。

 

(・・・クルシーナ、しんらちゃんのこともそうだけど・・・ダルイゼン。あなたを育てたのが私なら・・・私が何とかしなくちゃ・・・しんらちゃんも取り戻さないと!)

 

のどかは一人、静かにそう決意を固めていた。

 

「ん? あれ? そういえば、かすみっちは・・・??」

 

「「「え・・・・・・??」」」

 

そして、ひなたの言葉により、のどかたちはかすみがその場にいないことに気づくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふん。そんなに単純なことじゃないのよ」

 

クルシーナは病院の近くの木の上で、のどかたちの様子を見て、会話を聞きながら不機嫌そうにそう言った。

 

「ふふっ♪ のんちゃんが元気になってくれた。よかった♪ これでまた遊べるね」

 

途端にクルシーナはしんらだったときの優しい笑顔を貼りつけながらそう言うと、その場から姿を消し、森の中の開けた場所へと現れた。

 

「・・・やっとお戻りね」

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナが話しかけるようにそう言うと、ザッザッと地面を踏むような音が聞こえたかと思うと、フードを被ったかすみが姿を現わす。

 

「プリキュアには見つからないようにしてくれたみたいね」

 

「・・・ああ。思わず飛び出しそうになったけどな。それにしてもーーーー」

 

クルシーナは感心したように言うのに対し、かすみは警戒しているような低い声だ。

 

「あそこまでやる必要があったのか? のどかが壊れたらどうするつもりなんだ?」

 

「別に壊すつもりなんかなかったわよ。動揺してるみたいだったから、苦しめてやりたかっただけ。結果的に元に戻ったんだからいいでしょ? お仲間のおかげで」

 

「っ・・・」

 

かすみは険しい表情で問いかけるも、クルシーナはどこ吹く風で答える。かすみはあっけらかんとしたクルシーナの答えに顔を顰める。

 

シュイーン!

 

「おや、ここにいましたか」

 

「ドクルン」

 

風を切るような音が聞こえてきたかと思うと、二人が振り向いた先にはドクルンの姿があった。

 

「アンタが見てたテラビョーゲンはどうしたの?」

 

「まだ目は覚めてはいませんが、調整はしましたし、大丈夫でしょう。あとは自力でビョーゲンキングダムにたどり着くはずです」

 

「あら、そう・・・」

 

クルシーナは淡々と尋ねると、ドクルンは答える。

 

「・・・なんだか私と同じ、憑き物が取れたような顔をしていますねぇ?」

 

「はぁ? どこをどう見たらそう見えんのよ?」

 

「いえ、そんな感じがしただけなので♪」

 

「・・・ふんっ!」

 

何かを見透かしたようなドクルンの笑みに、クルシーナは不機嫌そうな表情になる。

 

「おや? そちらの脱走者は?」

 

「ああ〜、今日からアタシたちの仲間になるやつよ」

 

「・・・いつの間にかそんなことを。どんな裏ワザを使ったんですか?」

 

「大したことしてないわよ。こいつから懇願してきたの。キュアグレースを苦しめたくないんだって」

 

ドクルンがかすみの存在に疑問を提示すると、クルシーナはあっけらかんと答える。

 

「そうだよ、悪いか・・・?」

 

「・・・あまり合理的ではありませんが、まあいいでしょう」

 

かすみは険しい表情を崩さずに答える。ドクルンは何やら腑に落ちないような感じだったが、とりあえずは納得することにした。

 

かすみちゃーん!!!!

 

かすみー!!! どこなのー!!??

 

かすみっちー!!!! どこ行っちゃったのー!?

 

「ちっ・・・あいつら探りに来たわね・・・」

 

かすみを探す声が聞こえてくる。プリキュアどもだろう。見つかったらややこしいことになると、クルシーナは舌打ちをした。

 

「のどか・・・・・・」

 

かすみは悲しそうな表情で声のする方向を向きながら、愛しの少女の名前を口にする。

 

かすみさーん!!!!

 

叫ぶ声が大きくなる。どうやらこっちに近づいてきているようだ。

 

「見つからないうちに早く退散するわよ」

 

クルシーナはそう言うと、手を突き出すように構える。すると、楕円の形のゲートが出現し、その中は空が赤色の世界が広がっていた。

 

「いくわよ、『カスミーナ』」

 

「っ、カスミーナ・・・・・・」

 

クルシーナは脱走者に名付けた名前を呼びながら、ゲートの中に入っていく。かすみは後ろ髪を引かれる思いを抱きつつも、ドクルンの後を続いてゲートの中へと入り、人間の世界を後にした。

 

「ここは・・・・・・」

 

「ビョーゲンキングダム。私たちの世界です」

 

ドクルンは微笑みながら答えると、さっさと前へ進んでいくクルシーナの後をついて行くようにへと歩いていく。かすみは辺りをきょろきょろとしつつも、二人の後をついて行く。

 

「ああーもう! 今日はめちゃくちゃ最悪。あのお姉様、余計な行動ばっかり起こして・・・後で見にいってみるけどね」

 

「復活させたくない気持ちはわかりますが、やらないと復活のための器が揃いません。それにお父さんに怒られてしまいますしね」

 

「わかってんのよっ、そんなこと」

 

クルシーナはシビレルダを思い出して不機嫌になっているようで、ドクルンが諫めようとしていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

かすみはそんな様子をなんとも言えない表情で見つめていた。

 

そして、幹部たちが待つ場所へと辿り着き、赤い空にはキングビョーゲンの靄が浮かび上がり、その下には幹部たちが全員集合していた。

 

クルシーナとドクルンは前に出て、かすみはそこで待つように指示され立ち止まる。

 

「ただいま帰ったわよ、お父様」

 

「ドクルン、戻りました、お父さん」

 

二人は赤い空に浮かび上がる自分たちの父親に挨拶をする。

 

「クルシーナよ、また何か紹介したいものがいると聞いたが・・・・・・」

 

「ええ、今日からビョーゲンズの新しい仲間になるテラビョーゲンよ」

 

キングビョーゲンの問いに、クルシーナはあっけらかんとした感じで答える。

 

「何よ・・・また邪魔な奴が増えるの・・・!?」

 

「・・・ふむ、クルシーナが連れてくる奴は、少し興味が湧くがな」

 

シンドイーネは顔を顰めながらそう言い、グアイワルは真面目な表情をしつつも、興味深そうにしていた。

 

「・・・まあ、鬱陶しくないならなんでもいいの」

 

「うるさくないなら、いいですぅ・・・すぅ・・・」

 

イタイノンは然程興味もなさそうに言い、フーミンはその彼女の肩に寄りかかりながら眠っていた。

 

「どんな仲間なんだろうね〜? それはヘバリーヌちゃんを痛めつけてくれるのかなぁ〜♪」

 

「・・・お前は少し黙ってろなの」

 

ヘバリーヌが想像したのか悶えながら言うと、イタイノンが顔を顰めながら諌める。

 

「見て驚くと思うわよ。出てきなさい」

 

クルシーナは不敵な笑みを浮かべながら、背後にいるかすみに声をかける。地面を踏む足音が聞こえてきたかと思うと、そこからフードを被ったかすみがビョーゲンズの幹部たちへとお披露目された。

 

「・・・其奴は」

 

キングビョーゲンは神妙そうな声を上げて呟いた。顔はわからないのであれだが、実際は驚いているのだ。

 

「っ!? こいつって・・・!?」

 

「例の脱走者だと・・・!?」

 

シンドイーネとグアイワルもその姿を見て驚いていた。プリキュアと一緒にいたはずの脱走者だったからだ。

 

「嘘ぉ〜!? お姉さ〜ん!?」

 

「っ!! 私たちの邪魔したやつですぅ・・・!?」

 

「っ・・・まさか、こいつがそうなの・・・?」

 

ヘバリーヌはもちろん、フーミンも目が覚めてしまうほどに驚き、イタイノンは一人不快そうな表情を浮かべていた。

 

「ええ、今日からアタシたちの仲間よ。ほら、お父様に自己紹介して」

 

クルシーナは幹部たちにそう明言すると、かすみにキングビョーゲンに挨拶するように言う。かすみは幹部たちをきょろきょろと見つめると、目の前に浮かぶキングビョーゲンの前に片膝をついてしゃがみ込む。

 

「・・・キングビョーゲン様、私はカスミーナと申します。以後、あなたと、他のビョーゲンズたちのために地球を蝕んでご覧に入れましょう」

 

かすみは複雑な心境を内心に抱きつつ、キングビョーゲンに忠誠を誓う。

 

「クルシーナ、これは・・・?」

 

「仲間に引き入れたのよ、プリキュアの一人を利用してね。まあ、こいつは自分からアタシの元に来たいって言ってたんだけどね」

 

キングビョーゲンの厳かな声にも、クルシーナは平然とした口調で答える。

 

「カスミーナよ。お前にはビョーゲンズとして、我に忠誠を誓う覚悟はあるか・・・?」

 

キングビョーゲンに問われると、かすみは少し考える。ビョーゲンズに信用してもらうためにはどうすればいいか? 自分にはナノビョーゲンを出す力もなければ、特別な力を持っているわけではない。

 

本当はこんなことを言いたくないが、自分の身のため仕方がない。そう思ったかすみは口を開いた。

 

「・・・私は、人間が嫌いです。快適なはずの世界から私を拒絶した人間を許せません。地球を汚し、環境を破壊しようとする人間を、それらを守ろうとするプリキュアたちも理解できない。私はあいつらを苦しめてやりたい、そのためにキングビョーゲン様、ビョーゲンズに魂を売る覚悟です・・・!!!!」

 

かすみは苦渋の思いでそう叫んだが、その言葉に口を開いたものがいた。

 

「口だけだったら、いくらでも言えるの・・・!!」

 

かすみの言葉が気に入らないイタイノンはその場から姿を消すと、彼女の前に現れて右拳に電撃を纏って殴りかかろうとする。

 

かすみはその右拳を視界に捉えると・・・・・・。

 

「ふっ!!!!」

 

パシッ!!!!

 

「っ!?」

 

かすみはその拳を片手で受け止め、イタイノンはそれに驚いた。拳から電気がいっているというのに、かすみが平然と受け止めたことが意外だった。

 

「・・・ふーん、実力はあるってわけね」

 

「イタイノンの拳を受け止めるとは、あの女はなかなかだな」

 

シンドイーネは顰めつつも実力は認めるようなことを口にし、グアイワルは思ったほど強いことに関心を覚えていた。

 

イタイノンの拳の電気がおさまった後も、かすみは平然と立っていた。

 

「っ・・・いつまで掴んでるの・・・!」

 

「・・・すまない」

 

イタイノンは不愉快そうに顰めながら言うと、かすみは謝罪の言葉を口にしながら手を離す。

 

「お姉さん、いつの間にか強くなったの〜?」

 

「イタイノンお姉様の攻撃を受け止めるなんて・・・許せないですぅ・・・」

 

ヘバリーヌは意外そうな表情をしていたが、フーミンは面白くないのか、不快そうに顰めていた。

 

「まあ、あとでこいつの肉体はいじるし、いいでしょ? お父様。アタシたちが面倒みるからさ」

 

クルシーナは娘が父にお願いをするかのような雰囲気で話す。

 

「・・・まあ、よかろう。好きにやってみるがいい。カスミーナはお前に任せるぞ、クルシーナ」

 

「ありがと♪」

 

キングビョーゲンから許可を出され、クルシーナは笑顔でお礼を言う。

 

「ああ、お父さん。あとテラビョーゲンがもう一人、今育っていますので、誕生したら紹介しますね」

 

「ほう・・・楽しみにしているぞ、ドクルン」

 

「はい♪」

 

ドクルンは笑みを浮かべながらそう言い、キングビョーゲンは寛容に返す。

 

「・・・・・・・・・」

 

一方、一人静観していたダルイゼンはクルシーナを意味ありげな様子で見つめていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キングビョーゲンとの接見の後、クルシーナたち、キングビョーゲンの娘たちはあの街にある廃病院を模した自分たちのアジトへと来ていた。

 

「ここがアタシたちのアジトよ」

 

「ふわぁ・・・・・・廃病院という割には綺麗だな・・・」

 

「・・・お前、来たことあるだろ、なの」

 

「あ・・・そうだったか・・・?」

 

「だって、あなたが生まれた場所でしょうに」

 

「怖すぎて覚えてないんだよな・・・」

 

かすみはまるで初めて来たような発言をし、イタイノンとドクルンに突っ込まれる。廃病院の中へと入っていく娘たちに続いて、かすみも中へと入っていく。

 

あとは適当に散開し、クルシーナ、ドクルン、イタイノンの三人娘はかすみの新たな活動の拠点として、いろんな場所へと案内をしようとしていたが・・・・・・。

 

「あ・・・・・・!」

 

「・・・どうしました?」

 

「アタシ、よらなきゃいけないところあったわ。二人とも、カスミーナを適当に案内しといて」

 

クルシーナはそう言いながら一人、3人から離れてどこかへと向かっていく。どこへ行くのかわかっているドクルンとイタイノンは特に引き止めもせずに、とりあえずかすみのために用意した部屋へと向かっていく。

 

病室の一つである一室の部屋の前にたどり着くと、ドクルンはそこの扉を開ける。

 

「ここがあなたの部屋です」

 

「ふわぁ・・・・・・」

 

かすみは中を見ると、よく綺麗にされている部屋に驚く。

 

「別に驚くほどの部屋でもないの」

 

「い、いいだろ! こんなに綺麗な部屋は初めてなんだから!!」

 

イタイノンに突っ込まれた、かすみは顔を赤らめながらも答えた。

 

かすみはそのまま部屋に入り、ベッドの上で寝ようとしていたが・・・・・・。

 

「おっと!! その前に」

 

「っ!?」

 

突然大声を出したドクルンに、かすみは心臓が飛び出すのではないかというほどに驚いた。

 

「あなたには私の部屋に来てもらえますか?」

 

「??」

 

かすみは首を傾げながらも、ドクルンへと着いていき、途中でイタイノンとは別れるも、彼女の部屋へとやって来た。

 

「はい、これ」

 

「っ!? こ、これは・・・!?」

 

かすみはドクルンに手渡されたものを見て驚く。それは、メガビョーゲンの一部でもあるメガパーツだったからだ。

 

「あなたには私のちょっとした実験にも付き合ってもらいます。これをあなたの体の中に入れてください」

 

「こ、これを中に入れるのか・・・!?」

 

ドクルンの発言に、かすみは動揺を崩さない。のどかがメガパーツを埋め込まれて苦しんでいたことも思い出してしまい、体が震える。

 

「大丈夫でしょう。だって、あなたはビョーゲンズなんですから♪」

 

「そ、そういう問題なのか・・・!?」

 

ドクルンは満面の笑顔を貼り付けながらそう言うも、かすみは狼狽しながら言った。実はシビレルダにメガパーツを埋め込んだ後の暴走も見ているため、これを入れたら自分もああなるのではと危惧していた。

 

かすみがメガパーツを入れるのを躊躇していると、ドクルンが歩み寄って彼女の片手を掴む。

 

「怖いのなら私も手伝いますよ・・・!」

 

「や、やめろ!! わ、わかった!! わかったから・・・!!!! 自分でできるから!!!!」

 

ドクルンがかすみの手に持っているメガパーツを無理矢理押し込もうとしたため、動転したかすみは彼女を諌め、メガパーツを入れることを承諾する。

 

「では、早くしてください。待つのはあまり好きではないので」

 

ドクルンはそう言いながら手を離して、かすみに委ねることにした。

 

(ええい! もう一か八かだ!!)

 

ビョーゲンズの仲間になると言った以上、彼女との関係を拗らせるわけにはいかない。そう考えたかすみは心の中で叫びながらメガパーツを入れることにした。

 

かすみは手に持たされたメガパーツをゆっくりと体に近づけていく。緊張のせいか、体が震えて額から汗が滲み出てくる。

 

「うぅぅ!!!!」

 

目をギュッと瞑り、思い切ってメガパーツを体へと押し当てた。

 

ズズズズズ・・・・・・。

 

かすみの体に触れたメガパーツが、ゆっくりとかすみの体の中へと入り込んでいく。

 

そして・・・・・・。

 

ドックン!!!!!

 

「うっ・・・!?」

 

かすみの目が大きく見開かれ、彼女の体に激痛が走った。

 

「ぐっ・・・うっ、ぅぅぅ・・・!!!!」

 

かすみは胸を押さえながらよろよろした足取りで後ずさっていき、部屋の壁に背中をぶつける。

 

「うっ・・・ふ、ぅっ・・・くっ・・・!!」

 

「あなたの中に入ったメガパーツが体に馴染もうとしているんですよ。しばらく経てば治ります」

 

かすみは苦しそうに唸っている中、ドクルンは笑みを浮かべながら眺めていた。

 

そして・・・・・・!!!!

 

「ぐっ・・・うぅぅぅ・・・うぁぁっ!!!!」

 

かすみは体を後ろに仰け反らせると、体を震わせながらある変化を遂げていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、クルシーナは地下室で眠っているクラリエットのところへとやってきていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナは手に持っていた、のどかの体の中で育っていたテラパーツの赤い靄の一部をクラリエットに与える。

 

すると、クラリエットの包まれている赤い靄がうねうねと激しく動き始めた。

 

「・・・おい」

 

ふと、クルシーナが不機嫌そうな口調で眠っているクラリエットに叫ぶ。

 

「本当は起きてんだろ? お前の名前を言っていたテラビョーゲンが一人いたぞ。お前が何かしなければ、名前なんか呼ばないと思うんだけど。なあ、どうなんだよ・・・?」

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナはそう問いかけるも、クラリエットの周りの赤い靄が動いているだけで、彼女自身は何も口を開かない。

 

何も話さない、正しくは話そうとしていないのか、クルシーナは顔を顰めて右手からピンク色のオーラを迸らせる。

 

「ここで攻撃ぶっ放してやってもいいんだぞ。おい!」

 

「・・・・・・・・・」

 

クルシーナはオーラを迸らせた片手を突き出して問いかける。あくまでも喋らないなら実力行使に及ぶしかない。

 

しかし、クラリエットは何も答えようともせず、脅しにも反応しなかった。

 

「ちっ」

 

クルシーナは舌打ちをすると、片手のオーラを納めて下に降ろす。

 

「目を覚ましたら覚えてろよ、クソお姉様」

 

クルシーナは不機嫌そうな口調でそう言うと、地下室を後にしていった。

 

その直後、赤い靄がうねうねと動いたかと思うと・・・・・・。

 

「・・・・・・フフ♪」

 

眠っているはずのクラリエットの口元に薄っすらと笑みが浮かぶのであった。

 

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