ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

94 / 144
原作第29話ベースになります。
今回からビョーゲンズ視点も増えてくるようになります。


第93話「切迫」

 

「ふっ、ふっ・・・えへへ♪」

 

「ふわぁ〜・・・・・・」

 

のどかが病院を退院してから数日、のどかはえらく張り切った様子でランニングのためのウォーミングアップをしており、それを一緒にするラビリンは眠そうにしていた。

 

「のどか?」

 

「っ!?」

 

そこへのどかの母・やすこが声をかけ、ラビリンは慌ててのどかのバッグの中に隠れた。

 

「あ、おはよう。お父さん、お母さん」

 

「「おはよう」」

 

「今朝も、こんな早くから走るの?」

 

「最近、ちょっと走りすぎじゃないか・・・?」

 

のどかはここ最近、必要以上にランニングに打ち込む時間が増えており、のどかの両親は先日の娘が病気になった件も相まって心配そうにしていた。

 

「だいぶ走るの慣れたし、もっと遠くまで行けるといいなぁ〜って」

 

「だったら、お父さんが途中まで車で送ってあげよう」

 

のどかの父・たけしは娘を心配して車の鍵を取り出すと一緒に出ようとする。

 

「それじゃ意味ないよ〜。今は体力つけたいんだも〜ん♪ いってきま〜す」

 

のどかはそう言って玄関を出ると、そのままランニングしに外へと走っていってしまった。

 

「え・・・うわっ、まっ!?」

 

「無理しないでね〜!」

 

「は〜い♪」

 

たけしは動揺して転んでしまったが、やすこはのどかにそう声をかけると、のどかは返事をして走っていった。

 

「・・・・・・・・・」

 

「クゥ〜ン・・・・・・」

 

その様子をベランダからアスミとラテが心配そうに見つめていた。そして、アスミ自身も俯いて暗そうな表情をする。

 

「・・・・・・かすみさん、どこに行ってしまったのでしょうか」

 

「ウゥ〜ン・・・・・・」

 

その理由は自分たちの前から姿を消してしまったかすみのことだ。のどかの病院での騒動があった後、全く姿を消してしまった。のどか、ちゆ、ひなたの3人で一緒に探したが、見つかることはなかったのだ。

 

「・・・のどか、あれからずっと落ち込んでましたし、急に元気になっているところを見ると・・・心配です・・・・・・」

 

クルシーナが旧友だと知ったときは心が壊れる寸前だったが、自分たちがなんとか支えてのどかは気持ちを持ち直した。しかし、今度はかすみがいなくなったことを知って、のどかはえらく落ち込んでいたが、急に元気を取り戻したので、アスミは気が気でないのだ。

 

「クゥ〜ン・・・・・・」

 

ラテはアスミの言葉に呼応するかのように鳴き、のどかを心配そうに見つめていた。

 

一方、その頃ちゆは・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

家族と一緒に朝食を食べていたが、味噌汁のお椀を手にしているちゆの表情は暗かった。

 

「かすみお姉ちゃん、どこに行っちゃったの・・・?」

 

弟のとうじも座っていない席を見つめながら悲しそうな表情を浮かべていた。

 

「っ・・・・・・・・・」

 

ちゆも同じように誰も座っていない席を見つめていた。そこに一緒に朝食を食べているはずのかすみの姿はない。みんなで一生懸命に探したが、見つかっていない。

 

いつもかすみに遊んでもらっていたとうじには、言葉をかけてやることができなかった。

 

「ちゆ、とうじ、早く食べなさい」

 

「うん・・・・・・」

 

「ええ・・・・・・」

 

ちゆの母・なおがご飯の手が進まない二人にそう促す。返事はしつつも、二人は席を見つめたまま手が動かなかった。

 

「そのうち帰ってくるわ・・・だって、私の、私たちの大切な家族なんだもの」

 

「・・・・・・うん」

 

「そうね・・・・・・」

 

何かを察しているなおはそう励ますが、二人は学校へ登校していくまで、暗い表情のままなのであった。

 

のどかはその頃、すこやか市のとある公園の前でランニングをしていたが・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

そののどかの表情は眉をハの字にしていて、なんだか暗そうな表情であった。

 

「・・・のどか?」

 

「えっ?」

 

「どうしたラビ? 前を見て走らないと危ないラビ」

 

「うん・・・・・・」

 

そこへカバンの中から顔を出してラビリンが声をかけるも、よそ見をしていたのどかは前を向いて走り出す。しかし、それは先ほどの両親に聞かせた声とは違い、落ち込んだような暗い声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグマで満たされた世界、ビョーゲンキングダム。この前はカスミーナことかすみが加わり、世界は騒がしくなりつつあった。

 

そんな中、グアイワルは煮えたぎった液体の中に唐辛子を数本入れて、液体を赤く染めていた。それに笑みを浮かべると、それを木のスプーンで少し掬うと口の中に入れる。

 

「ん!? ゴホッ!! ああ!! あぁぁぁ!!! 辛い!!!!」

 

当然ながら唐辛子のスープを飲んだグアイワルは顔を真っ赤にしながらそう叫ぶ。

 

ドカァァァァァァン!!!!

 

すると、同時に後ろにあるマグマが大きな音を立てて噴火した。

 

「うるっさいわね!!! マグマ噴火させんじゃないっての!」

 

轟音をやかましく感じたクルシーナが怒りながら叫ぶ。

 

「普通ならここまでだが・・・・・・」

 

グアイワルはそう言いながら、さらに大量の唐辛子を鍋の中に入れる。すると液体にさらに赤みが増す。そして、その液体を少し掬って口の中に入れる。

 

「うっ・・・はっ、はっ、はぁぁぁぁぁっ!!??・・・かっらぁーーーーーい!!!!!」

 

ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

グアイワルはさらに顔を真っ赤にさせて叫び声をあげ、マグマが先ほどよりも大きく噴火した。

 

「がぁっ!?」

 

「うるさいつってんのよ!!!!」

 

そこにグアイワルに目掛けて石が飛んできて、クルシーナの怒鳴り声が聞こえてくる。

 

「やひゃりな・・・ひれればひれるほど、はらくなふ・・・!!! はらはにへんはいはない!!!!」

 

「いや、何言ってるかわかんないんだけど・・・」

 

辛さのせいでたらこ唇にしながら言うグアイワルを、ダルイゼンは呆れたように見ていた。

 

「メガパーツは入れれば入れるほど、スーパー強くなるということだ!!! 俺の持論は合っていたのだ!!! ふはーっはっはっはっはっはっは!!!! ぐわぁっ!?」

 

グアイワルがメガパーツを取り出しながらそう結論づけていた。高笑いをしていると、そこにお鍋の蓋が飛んできて、顔面に直撃する。

 

「うるさいっつってんのが、聞こえねぇのかよ!! 脳筋頭!!!!」

 

「いてぇ・・・何をするんだ、クルシーナ!?」

 

ドカァァァァン!!!!

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

そこに容赦なくクルシーナのピンク色の光弾を放たれ、爆発が直撃したかと思うとグアイワルは吹き飛んでいった。

 

「ったく・・・・・・」

 

クルシーナはそれを確認すると、腹ただしそうに頭を掻く。

 

「お、おい・・・あそこまでやる必要があったのか? 確かに私もうるさかったが・・・」

 

そこへかすみの咎めるような声が聞こえてくる。

 

「いいのよ。あんな辛い液体を飲んで叫んでいるようなバカは・・・」

 

「やかましくて、見るのも嫌なの」

 

「あんなのはよそでやってほしいですねぇ」

 

「よ、容赦ないな・・・・・・」

 

三人娘が口々に毒のある言葉を言うと、かすみは少し顔を引きつらせながらそう言った。

 

「ワル兄、いいなぁ~、ヘバリーヌちゃんもあんな風にぶっ飛ばされた~い!」

 

「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

「お前たち二人は、マイペース過ぎないか・・・」

 

ヘバリーヌはグアイワルを羨ましそうに見ていて、フーミンは彼女の近くでスヤスヤと眠っていた。

 

「相手にしなくていいわよ、その二人は。さてと、そろそろ煮えてきたかしら?」

 

かすみに諭すようにそう言うと、割り箸を割って目の前のものに視線を向ける。

 

「湯気は出てきたの」

 

イタイノンがそう呟く中、クルシーナは箸を鍋の中に突っ込むと摘まみ上げる。その中に入っていたのは紺色の板のような食べ物、こんにゃくだった。

 

「あーむ、はぁ、はぐいはぐい、はぐはぐ・・・」

 

クルシーナは口の中にそれを含むと熱さに口を動かしつつも、冷ましつつ咀嚼し飲み込む。

 

「うん、悪くないわね・・・・・・」

 

「ねぇ、クルシーナお姉ちゃん、これ何~?」

 

食べたクルシーナが微妙な顔でそう言うと、ヘバリーヌが不思議そうに鍋を覗きながらそう問いかける。

 

「地球の人間が食べてるおでんってやつね。今、旬なんでしょ?」

 

「そうらしいですね。でも、なぜカスミーナの歓迎会をわざわざここでやるんですか? しかも、おでんを囲むなんて・・・」

 

クルシーナがそう答えると、ドクルンがそもそもの疑問を指摘する。アジトである廃病院でもいいはずだが、どうして幹部たちが集まるビョーゲンキングダムを選んだのか。

 

「いいでしょ、別に。廃病院で鍋とか雰囲気ないからここにして見ただけよ」

 

「ここでやってもそんな雰囲気ないの・・・・・・」

 

クルシーナは不快そうな感じでいうと、イタイノンがそれに突っ込む。

 

「うるさい。いいからアンタらもおでん摘めよ。カスミーナも・・・」

 

「はぁぁぁぁぁ・・・・・・!」

 

クルシーナは不機嫌そうにそう告げるとカスミーナの方をみる。彼女はおでんを見ながら瞳を輝かせていた。

 

「これ、食べていいのか・・・!?」

 

「当たり前でしょ。っていうか、食べろ」

 

クルシーナに許可、というよりも命令されたかすみは持っていた割り箸をその場で割ると、鍋に突っ込んで掴み上げる。上がったのはちくわだった。

 

「あーむ。んん~!!! 美味いな~!!!」

 

かすみは、のどかたちと一緒に食べた時と変わらない、頬を赤らめながら言った。

 

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」

 

それをキングビョーゲンの娘たちは、呆気にとられたように見ていた。

 

「ん、これも美味いな~、具材にお汁が染みていて!! あむ、おぉぉぉ!! これも美味いぞ!!!! この細長いやつと似ているのに、もちもちとした食感だ!! ふわぁ、この袋みたいなやつはなんだぁ~!? ん、中に餅が入ってるのかぁ!? これもこれでいいなぁ~!!!」

 

かすみはおでんを次々と摘みながら、独り言のように感想を述べていく。それ故に娘たちは声をかけづらい状況にあった。

 

「・・・あのさぁ」

 

「??」

 

「そんなにはしゃぐほど美味しい?」

 

「ああ・・・美味しいぞ」

 

クルシーナの呆れたような問いかけに、かすみは瞳をキラキラとさせながら答えながら、再び具材を食べ始める。

 

「・・・つーか、フードぐらい取ったら?」

 

「っ!? んぐぅ!? んっ!んっ!んぅぅぅ!!」

 

クルシーナの不意を突かれたような言葉に、動揺したかすみは口の中に入れた食べ物を胸に詰まらせ、顔を青ざめさせながらも胸をトントンと叩きながら飲み込む。

 

「ぷはぁっ・・・いきなり何だ!?」

 

「いきなりも何も、フードぐらい取れつってんの。ご飯を食べてる乙女の顔じゃないし」

 

かすみはそう叫ぶも、クルシーナは淡々としながら答える。すると、かすみの体が汗がダラダラと垂れ始める。

 

「・・・・・・い、嫌だ」

 

「は?」

 

「は、恥ずかしいんだもん・・・姿を晒すの・・・」

 

かすみは口ごもりながらも申し出を拒否すると、クルシーナは何を言ってんだとでも言いたげな表情になる。

 

「今更、何を言ってるんですか? ビョーゲンズのくせに」

 

「人間じゃない肌は慣れていないんだ!! 晒すなんて耐えられない!!」

 

「何を恥ずかしがっているの・・・・・・」

 

ドクルンがおでんを突きながら呆れたように言うと、かすみは羞恥心で叫び、イタイノンも呆れたように呟く。

 

「・・・ヘバリーヌ」

 

「何~?」

 

「カスミーナのフードを引っぺがしてやって」

 

「わかった~♪」

 

クルシーナはヘバリーヌにそう命じると、彼女はおでんを食べる手を止めて、かすみの後ろへと移動する。

 

「ひっ・・・!?」

 

「お姉さん、ヌギヌギしようねぇ~?」

 

「や、やめろ!! お、おい!! 引っ張るなぁ!!」

 

肩に手を置かれて悲鳴をあげたかすみに、ヘバリーヌは妖しい笑みを浮かべて手をワキワキとさせると、フードに手をかける。かすみはあくまでも見られたくないのか、ヘバリーヌの手を掴んで抵抗する。

 

「なんで、そんなに嫌なの~? お姉さんの顔を見たいだけなのに~!」

 

「恥ずかしいと言っただろ!! 自分の顔が変に映ってると思うと見せられるか!!」

 

「全然変じゃないじゃ~ん。可愛いよ~?」

 

「変だ、変!! 鏡を見てそう感じたんだ!!!」

 

かすみはヘバリーヌに反論しながら、脱がさせようとしない。意地でも顔を見られるのが嫌な様子。脱がせまいとするかすみと脱がそうとするヘバリーヌのいたちごっこが続いていた。

 

そんな様子を呆れたように見つめていたクルシーナは見かねて口を開く。

 

「・・・アタシは可愛いと思うわよ」

 

「・・・・・・え?」

 

クルシーナの告白に、かすみは動きを止め彼女の方を向く。

 

「可愛いって言ったのよ、アンタの顔。そういう興味津々なところも、反応も病院にいた頃ののんちゃんにそっくりだしね」

 

「っ!!!!」

 

可愛い・・・・・・そう言われたかすみの動きは止まり、ヘバリーヌに抵抗なくフードを剥がされる。

 

顔を赤らめたままのかすみの姿は、クルシーナと同じように薄いピンク色の肌をしており、頭にはビョーゲンズ特有の悪魔のようなツノが生えていた。

 

「尻尾も出しなさいよ」

 

「っ!?」

 

クルシーナに指摘されてかすみが動揺の顔をしていると、ヘバリーヌが不思議そうにかすみのお尻部分を見つめる。

 

「?? スカートの中がもっこりしてるね~?」

 

「あ、あぁ・・・や、やめ、ひっ・・・うひぃぃぃ!?」

 

ヘバリーヌがペタペタとお尻周りの肌を触り、かすみが止める間も無く、彼女のスカートの中に手を突っ込み、中にあるサソリの尻尾を引き摺り出し、かすみは悲鳴をあげた。

 

「あら、随分と可愛い姿に、可愛い悲鳴じゃない」

 

「み、見ないでくれ・・・聞かないでくれ・・・!!!」

 

クルシーナが反応を面白がるかのように言うと、かすみは赤らめた顔を覆いながら言う。あまりにも恥ずかしいし、穴があったら入りたい気分だ。

 

「ドクルン、こいつにメガパーツを使ったの?」

 

「ええ。ビョーゲンズとして活動をさせるためには、進化して新たな力を手に入れさせる方が手っ取り早いと思いましてね」

 

「・・・シビレルダのときは失敗だったのにねぇ。そう思うとカスミーナはアタシたちと同じ存在かもね」

 

クルシーナが尋ねるとドクルンは肯定し、クルシーナはシビレルダのときは怪物と化して失敗していたことを思い出す。おまけにネブソックのように地球を蝕む力も残ってしまっていたので、幹部としては失敗作だと判断したのである。

 

でも、かすみの場合はどうやら成功したようだ。怪物にもならず、ましてや拒絶反応を起こして死んだわけでもない。かすみはもしかしたら、自分たちと同じ究極の存在かもしれない。

 

「・・・体が捩れるかと思ったぞ、私は」

 

恥ずかしさから冷静になったかすみがジト目をしながら言う。

 

「体が崩壊もせず、クルシーナの言う怪物にもならずに済んでいるんですからいいでしょう。メガパーツの力に負けないだけいいと思いますよ」

 

「死ぬほど痛いし、苦しかったんだが!!??」

 

ドクルンが平然としたような口調で言うと、かすみは突っ込みを入れた。メガパーツを自分に入れて激痛が走った時は、はっきり言って死ぬかと思った。簡単な実験に付き合ったとはいえ、そんな軽い話で済まされるようなものでは決してない。

 

「メガパーツを入れたぐらいで喚かないで欲しいの・・・」

 

「ヘバリーヌちゃんは苦しかったけど、すぐに気持ち良くなれたよ~♪ カスミーナお姉さんも慣れるって~♪」

 

「ふわぁ〜・・・病気は最高です・・・」

 

「お前ら、トラウマとかPTSDという言葉を知ってるか!!?? そんなの慣れたくない!!!!」

 

かすみは思いの丈を叫ぶ。苦しいものは何を超えたって苦しいのだ。それをいつまでも味わいたいとはとても思えない。勘弁してくれと思う。

 

「まあ、いいじゃない。ほら、もっと食べなさいよ。アタシが装ってあげるから」

 

クルシーナは適当に話を流すとかすみのお椀を手に取り、おでんの中の具を次から次へと入れてかすみに差し出す。

 

「あ、ありがとう・・・・・・」

 

かすみはてんこ盛りになったお椀にたじろぎつつも、それを受け取った。

 

「それ、私が狙ってたたまごなの・・・!!」

 

「ケチケチすんじゃないわよ、食べ物ごときで。大体、取られたくないんだったらさっさと食べればいいでしょ」

 

イタイノンが狙ってた食べ物を取られて抗議の声を上げるも、クルシーナは正論を言って反論する。

 

「フーミン・・・食べながら寝ないでください。はしたないですよ」

 

「んぅ・・・おでん食べたら眠くなってきたですぅ・・・」

 

ドクルンはおでんを食べながら、食事中にうつらうつらするフーミンを注意する。

 

「お姉さん、それ食べてもいい?」

 

「あ、ああ・・・いいぞ・・・」

 

ヘバリーヌはかすみのお椀に盛っている油揚げの巾着を要求し、かすみは戸惑いつつも彼女に与える。

 

「・・・・・・・・・」

 

おでんを囲んで談笑しているキングビョーゲンの娘たち。かすみはそんな様子を見て、なんとも言えない表情を浮かべていた。

 

そんな中・・・・・・。

 

「・・・さてと、そろそろビョーゲンズの仕事をするとしましょうか?」

 

「っ・・・!!」

 

「カスミーナ、私についてきてください」

 

ドクルンはおでんをある程度食べ終え、その場から立ち上がるとかすみに手招きをする。かすみは緊張した面持ちでその場から立ち上がる。

 

しかし、かすみは下を向いたまま歩こうとしない。これから地球を蝕むための活動をするかと思うと胸が苦しくなる。

 

「・・・どうしたのですか?」

 

「・・・なんでもない。わかった」

 

ドクルンが振り向いて冷徹な声を出すと、かすみはそう言って彼女の後ろをついていく。

 

ドクルンはそれを確認すると笑みを浮かべ、そのまま人間界へと歩いていく。かすみはその後ろをゆっくりとついていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

「ワン♪」

 

ランニングを終えたのどかが学校に行った頃、アスミはヒーリングルームバッグから哺乳瓶を取り出して、ラテにミルクを与えていた。

 

その傍らでは、ラビリン、ペギタン、ニャトランが話をしていた。

 

「のどかがランニングに熱心なのは良いことじゃねぇの?」

 

「だって! ついこの間ラビ!! メガパーツのせいで苦しんだのは・・・ハードな運動はまだ心配ラビ・・・・・・」

 

最近ののどかは激しい運動を繰り返している。ラビリンはそれをすごく心配していた。

 

つい先日まで、ダルイゼンにメガパーツを入れられてしまい、それにのどかは苦しみ、病院へと入院していた。退院したとはいえ、まだ病み上がりなのだ。のどかが無理をして、いつ倒れてしまうかヤキモキしている。

 

「おまけに・・・かすみが突然いなくなって、大分落ち込んでもいたのに、今日は明るく振舞ってたラビ・・・そういう面で心の方も心配ラビ・・・・・・」

 

「かすみ・・・どこに行っちゃったんだペエ・・・?」

 

さらには病院の入院中にかすみも姿を消した。のどかはそれに対しても、落ち込んだ様子を見せていた。ランニングの時も木にぶつかりそうになったことは何度かあり、その度にラビリンが注意を促したこともあったのだ。

 

「それにしても・・・驚きだよな。テラビョーゲンがさぁ」

 

ニャトランはそれに関連して、先日の戦いも思い出していた。のどかが出て行ったメガパーツが、ケダリーというテラビョーゲンに進化したのだ。

 

「ビョーゲンズが生き物を宿主にして進化したものだったなんて」

 

「僕は、ダルイゼンとのどかの方が驚いたペエ・・・・・・」

 

そして、ダルイゼンが暴露したあの言葉。なんと彼はのどかの体から成長して生まれたビョーゲンズだった。それにみんなは驚きを隠せなかったのだ。

 

「それだけじゃないラビ!! シビレルダが人間そのものが進化したテラビョーゲンだったラビ・・・・・・」

 

「それも驚いたよなぁ・・・。それとクルシーナが・・・のどかの病院時代の友達だったなんてな・・・」

 

ケダリーとは別に誕生したテラビョーゲン、シビレルダはすこやか病院の患者がテラビョーゲンになった姿であった。更にはクルシーナが、のどかの友人であるしんらがテラビョーゲンと化した姿であるという驚愕の事実も発覚したのだ。

 

「のどか、ショックだったと思うペエ・・・・・・」

 

「この前なんか壊れる寸前だったラビ・・・だから、元気に明るくしているのを見ると余計に心配になってくるラビ・・・・・・」

 

ダルイゼンが成長させたのは自分であったこと、クルシーナの正体が自分の病院の友人だったこと、そしてかすみが姿を消したこと、この3つのショッキングな出来事が重なって、実は相当心に参っているであろうのどかを、ラビリンは人一倍心配していた。

 

「そのことと、のどかがランニングに熱心なことと関係はないのでしょうか?」

 

「僕だったら、落ち込んで走れないペエ・・・・・・」

 

「落ち込んでるようには見えるけど、何か隠しているような気がするラビ・・・・・・」

 

「俺だったら、ダルイゼンを怒りたくなるけどな・・・・・・」

 

アスミの言葉に、ヒーリングアニマルたちが口々に言う。

 

「っ!! それだ!!」

 

「「??」」

 

ニャトランが何かを思いついたようで叫ぶ。

 

「いろいろあってストレスや不安が溜まってるんだよ。だから、発散とか紛らわせるために走ってるんじゃないか?」

 

「なるほどラビ!!」

 

ニャトランはいろんな出来事が重なって、のどかも参っているのだろう。それを発散するためにランニングをしているのだと推測する。ラビリンは考えると、納得した。

 

「クゥ〜ン」

 

「どうしました? ラテ」

 

ラテが何かを言いたげな様子でアスミに向かって鳴く。アスミは聴診器を近づけて、彼女の心の声を聞く。

 

(のどかを元気にしてあげたいラテ・・・)

 

ラテもどうやらのどかが心配で、彼女を元気付けてやりたいようだ。

 

「じゃあ、走らなくてもいいストレス発散方法を、みんなで考えるラビ!!」

 

「「「おぉ!!」」」

 

ヒーリングアニマルたちは、のどかを元気づけるべく行動を起こすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃、のどかたちの通う学校では・・・・・・。

 

「ふ、わぁぁぁ〜・・・・・・」

 

のどかたち3人は音楽の授業のために移動をしていて、のどかは大きなあくびをした。

 

「昨日、夜遅かったの?」

 

「ううん、早かったよ」

 

その様子を見てちゆが声をかけると、のどかはそう答える。

 

「うぇ!? 昨日のドラマ見なかったの!? めっちゃ急展開だったんだよ〜!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

ひなたはいつものようにテンションは高かったが、前を歩くちゆの顔は表情が暗かった。

 

「ちゆちー、どうしたの? そんな暗い顔して・・・?」

 

「っ・・・いえ、なんでもないの」

 

ひなたがそれを見て声をかけると、ちゆは暗い顔から笑みを浮かべる。

 

「・・・もしかして、かすみっちのこと?」

 

「っ!!・・・そうね」

 

ひなたは何かを察したように暗い顔でそう言うと、ちゆも同じようにそう答えた。

 

「かすみっち、どこ行っちゃたんだろうね・・・ちゆちーの家にも帰ってなかったんでしょ?」

 

「かすみの部屋には、誰もいなかったわ。昨日の夜になっても、今日の朝になっても、姿は見えなかったわ・・・」

 

ひなたの言葉に、ちゆは頷いてそう答えた。3人は再び暗い表情になる。

 

そんな中、音楽室へと向かっていると・・・・・・。

 

「おい。落としたぞ」

 

3人の背後からかけられる青年の声。3人は振り向くと、その青年の手にはリコーダーが握られていた。

 

「え・・・うわっ、ヤバっ、ごめんごめん!! ありがとう」

 

ひなたは自分の手元にリコーダーがないことに気づき、青年に駆け寄る。

 

「大事にしろよ。傷一つで音が変わる。それと、廊下を塞ぐように歩くの、やめてくれないか?」

 

「わぁ、ごめんなさい!」

 

青年はひなたにリコーダーを渡し、3人に注意を促すと踵を返して立ち去っていく。

 

「ひぃ・・・やっぱり怖いわ、吹奏の王子様・・・」

 

「水槽?」

 

のどかはそれに水槽の中に入れられた王子の姿を想像する。

 

「水槽の王子様?・・・人魚?」

 

「くっ・・・ふふっ・・・」

 

「違う!!違う!!」

 

のどかの見当違いな無意識な一言に、ひなたはツッコミを入れる。その傍らではちゆが吹き出しそうになっていた。

 

「すいそうって、吹奏楽部の『吹奏』。今のは菅原ゆうとくんって言って、楽器の演奏が上手くてうちの学校じゃ有名なんだよ〜」

 

「そうなんだ・・・!」

 

「でも、クールでストイックで、同じクラブのメンバーからも怖がられてるって話・・・・・・」

 

ひなたが、のどかにそう説明をしていると・・・・・・。

 

「それだけ音楽に対して、熱心ってことだよ!!」

 

「ことえっち」

 

「金森さん」

 

背後から話しかけてきたのは編み込んだツインテールの少女ーーーー金森ことえだった。

 

「そっかぁ・・・ことえっちも吹奏楽部だったね」

 

「うん、トランペット担当で、菅原くんはトランペットのパートリーダーなんだ」

 

「・・・金森さん、先週まで休んでいたけど、もういいの? 確か、風邪を拗らせたって先生が」

 

ひなたとことえがそう話していると、ちゆがそう尋ねる。

 

「ああ、もう大丈夫! 定期演奏会前なのに、体調を崩しちゃって最低だよ。ふあぁぁぁ〜・・・・・・ああ、ごめん・・・」

 

ことえは笑みを浮かべながらそう言うと、先ほどののどかと同じように大きなあくびをし始めた。

 

「寝不足?」

 

「ちょっとね・・・花寺さんは眠くないの?」

 

「え・・・?」

 

ことえのこの一言に、のどかは疑問の声をあげる。

 

「あんな時間、私だけだと思ったから驚いちゃった」

 

「・・・えへへ♪」

 

ことえは練習していた公園でのどかが走る姿を目撃していたのだ。それを知ったのどかは照れ臭そうに笑ったのだった。

 

一方、その頃・・・・・・。

 

「ふーむ、学校の雰囲気が違いますねぇ、服装が変わったからでしょうか」

 

「・・・・・・・・・」

 

ドクルンと、彼女に連れられたかすみが校舎の中を歩き回っていた。かすみは、きょろきょろと何かを探すように顔を動かしていて落ち着かない様子だ。

 

「それとも秋という季節だからでしょうかねぇ。こうのどかだと、何かを蝕むたくなります」

 

「っ、のどか・・・?」

 

ドクルンの呟いた言葉に、かすみが反応して振り向く。

 

「?? どうかしたのですか?」

 

「・・・いや、なんでもない」

 

ドクルンが振り向いて問いかけると、かすみは顔を赤らめてそう言った。ドクルンはそれを聞くと無言で前を向いて歩き始める。

 

校舎の階段を降りていると・・・・・・。

 

「っ、止まってください」

 

「・・・・・・?」

 

ドクルンが何かを察したようで、かすみに後ろで止まるように指示する。彼女の視界の先にはプリキュアの3人と一人の少女がどこかへ向かうところだった。

 

「まあ、いますよね・・・・・・」

 

「? 何がいたんだ?」

 

「プリキュアですよ。ここはあの3人の学校でしょう」

 

「っ! のどかぁ・・・」

 

ドクルンはプリキュアを見つけてそう言うと、かすみは儚げそうな表情を浮かべる。

 

「・・・ふふ。あの娘は病気の匂いがしますねぇ。治ったばかりなのが丸わかりです」

 

そんな中、ドクルンはプリキュアの3人に付いているツインテールの少女に目をつけていた。

 

「ふむ・・・クラリエット姉さんを復活させるための糧を、プリキュアたちから手に入れたいところですが、どうしましょうかねぇ・・・」

 

ドクルンは彼女を利用して、プリキュアからクラリエットを復活させるための何かを手に入れようとしていた。

 

クルシーナの報告によると、キュアグレースから抜いた病気の苦しみを十分に吸った赤い靄は、クラリエットの復活に大きな影響を及ぼしたと聞いている。ならば、次はキュアフォンテーヌか黄色いやつから奪うべきだが・・・・・・。

 

「ふむ・・・・・・」

 

ドクルンは少し考え込んだ後、かすみの方を向く。

 

「カスミーナ、少し手伝っていただけますか?」

 

「っ・・・・・・・・・」

 

ドクルンにそう問われたかすみは、彼女の顔を黙って見つめる。

 

「・・・私はビョーゲンズだ。でも、まだ勝手もわからない。あなたの指示に従おう、ドクルン」

 

「ふふっ、いい子ですねぇ」

 

かすみは険しい表情で覚悟を決めたかのようにそう言うと、ドクルンは優しい微笑みを浮かべたのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。