ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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前回の続きです。
ドクルンが打ち立てる、かすみを利用した作戦とは?


第94話「圧力」

 

音楽の授業が終わった後のお昼休み、のどかたち3人は中庭のベンチにいた。

 

みんなでお弁当を食べようとしていたが、のどかのお弁当は・・・・・・。

 

「でっか!! めっちゃサイズアップしてない!?」

 

「いっぱい食べると元気になるって言うでしょ?」

 

「そりゃそうだけど・・・・・・」

 

ちゆとひなたのお弁当に対し、のどかのお弁当はその二人と比べて倍のサイズをしていた。普段は二人と変わらない大きさのお弁当のはずなのだが、なぜか今回はいつもより多くなっている。

 

ちゆとひなたは、そんなに食べようとするのどかを心配そうに見つめていた。

 

♪〜、♪♪〜、♪♪〜♪〜♪〜

 

「ん?」

 

「この音は・・・?」

 

そんな中、突然聞こえてきたトランペットの音に二人は反応する。

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

「・・・・・・はぁ」

 

ことえは近くのベンチでトランペットの練習をしており、一通り吹いた彼女は一息ついた。

 

パチパチパチパチ・・・・・・。

 

「金森さん、凄いね♪」

 

「昼休みに練習なんて、大変ね」

 

見つけたのどかたちは、そんなことえに拍手を送っていた。

 

「自主練なんだ・・・休んでた分、取り戻したくて・・・」

 

ことえはそう答えて、再びトランペットを構えて吹く。

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

すると・・・・・・。

 

「金森・・・」

 

そこへ吹奏楽部のゆうとが近づいてくる。

 

「昼休み、ここでの練習はクレームが来るから禁止されてるの、知ってるだろ?」

 

「ああ、そっか!! ごめんなさい!!」

 

「音楽室で他のメンバーと練習しろよ」

 

「でも・・・感がまだ戻らないから・・・みんなの練習の足を引っ張るわけには・・・」

 

ゆうとが静かにそう注意するも、ことえは不安そうな表情をする。

 

「・・・放課後は奥の庭なら演奏しても平気だから」

 

「うん・・・ありがとう・・・・・・」

 

ゆうとはそう言うと静かにその場を後にし、彼の背中にことえは俯きながらお礼を言った。

 

「ことえっち・・・あんなに練習してるのに・・・」

 

のどかたちもことえの側から離れた後、ひなたは彼女のことが気になっていた。

 

「金森さんたちは演奏会に向けて、高いレベルを目指しているのよ」

 

「頑張ってる人って応援したくなるね♪」

 

「だね♪」

 

「ふふっ♪」

 

3人はお互いに笑みを浮かべると、食事を終えて教室へと戻っていく。

 

そんな中、ことえは不安そうな表情を隠さなかったのであった。

 

それから、学校の下校時刻になった頃・・・・・・。

 

「のどかにぴったり・・・のどかにぴったり・・・」

 

アスミとヒーリングアニマルたちはのどかのストレス解消のための方法を探していたが、さっきまでいた海辺で考えてもあまりいい案が見つからずにいた。

 

そんな彼女たちは、のどかの学校の近くを歩いている。

 

「そろそろ帰るペエ・・・?」

 

「ラビ・・・」

 

ペギタンとラビリンは帰ろうと考えていたが・・・・・・。

 

「私は、もう少し探してもいいですか・・・?」

 

「ニャ?」

 

「のどかはいつも一生懸命です。だから、のどかのために私も頑張りたい・・・」

 

アスミはまだ諦めず、のどかのためにと思い探そうと考えていた。

 

「あれ? みんな・・・」

 

「のどか、ちゆ、ひなた・・・・・・」

 

十字路に差し掛かったところ、のどかたちとアスミたちは鉢合わせをした。アスミはのどかの元へと駆け寄る。

 

「のどか、気分転換にどんなことをしたいですか?」

 

「・・・えっ?」

 

「聞いちゃうのかよ!?」

 

アスミはのどか本人に尋ねようとして、ニャトランに突っ込まれる。

 

「どうしたの? いきなり」

 

疑問に思ったひなたがアスミに尋ねる。

 

「のどか、最近ランニング頑張りすぎラビ・・・!!」

 

「少し控えて、楽しく気分転換をしたほうがいいペエ・・・!」

 

「・・・え?」

 

隠れていたラビリンとペギタンが不安そうな顔でそう言う。

 

「どのぐらい走ってるの!? 急に増やすと体に悪いわよ!!」

 

「えぇ!?」

 

「あっ! 急にお弁当が大きくなったのもそのせい!?」

 

のどかが無茶をしていると知ったちゆとひなたは彼女を問い詰める。あくびをしているといい、お弁当が大きいといい、最近ののどかは様子がおかしい。二人はそう感じていたが、ラビリンとペギタンの言葉で怪しいとますます感じたのだ。

 

「あわわ・・・あ、あの。でもね・・・単にもっと鍛えなきゃって思っただけで・・・!」

 

のどかが慌てながら弁解しようとしていると・・・・・・。

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

「「「「??」」」」

 

また、どこかでトランペットの音が聞こえてきた。音がする方向に振り向いてみると、ことえとゆうとが昼休み中に言っていた学校の奥の庭で練習をしていた。

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

「今のところ、ダメだ。焦りすぎ」

 

「はい!」

 

「もう一度、ここから」

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

ゆうとがことえに指導しつつ、再び二人はトランペットを吹き始める。

 

「意外すぎ・・・吹奏王子が練習に付き合うとか・・・」

 

その様子を意外そうに見ながら、ひなたはそう呟いた。

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

二人はある程度演奏を終えると、ことえは申し訳なさそうな表情をする。

 

「ごめんね、上手くできなくって・・・」

 

「焦りすぎ」

 

「うん、気をつけます・・・」

 

「じゃなくて・・・風邪なんか誰でも引くんだから、気にしすぎ」

 

「え・・・?」

 

「一人で頑張ればどうにかなるほど、吹奏楽は甘くないよ」

 

ことえはそう言ったが、ゆうとは静かにそう返す。ことえが遅れていることは彼も気にかけており、気にするなという意味で声をかけていたのだ。

 

「・・・うん!」

 

「じゃあ、頭から」

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

ゆうとの言葉に元気を取り戻していくことえ。二人は再び練習のため、トランペットを吹き始めた。

 

「「ふふっ・・・♪」」

 

その様子を見ていたちゆとひなたは笑みを浮かべる。

 

「焦り・・・・・・」

 

ゆうとの言った言葉が気になったアスミは、のどかのことを見る。そんな彼女は二人を真剣な眼差しで見つめているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あの青年と少女、すごく仲がいいな。いいことだ」

 

その二人の練習風景を、どこかの柱の上でかすみが見てそう呟いた。彼女はその中でも、病気から回復したばかりのツインテールの少女ーーーーことえに目をつけていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

かすみはそれを悲しそうに見つめる。あの娘を病気で蝕まなければならないとなると、心が痛くなる。

 

『私は素体を探してくるので、あなたはあの少女の様子を監視して、少女を孤立させてください』

 

『・・・一人にするだけでいいのか?』

 

『大丈夫です。プリキュアに嗅ぎ付けられると厄介なので、見つからないように。最悪なら適当にメガビョーゲンを生み出して、暴れさせても構いません』

 

『だが、私にメガビョーゲンを生み出す力は・・・』

 

『できますよ。あなたはメガパーツで進化したんですから、同じビョーゲンズであればできるはずです』

 

ドクルンから告げられた作戦、それはかすみ自身がことえを一人にさせて、病気を蝕む状況を作りやすくさせること。終わったら、あとは自分がやるとも言っていた。

 

心配なのは、私にメガビョーゲンを作ることができるのかということ。もし作れてしまえば、私は完全にビョーゲンズになったということだ。でも、まだ他人を病気に蝕みたいという気持ちが湧かないということ、人間を慈しむという気持ちがあることから、どうやらまだ人の心は残っているようだ。

 

かすみは自身の赤い手袋をした手を見つめ、ギュッと握りしめる。

 

「でも、私がやらなきゃ・・・・・・のどかが・・・・・・」

 

本当はやりたくない。でも、クルシーナにこんなことも言われていた。

 

『のんちゃんの中にはテラパーツが入ってるの。アタシの体の一部をね』

 

『アタシの合図一つでテラパーツを活性化させて、すぐにのんちゃんをメガパーツを埋め込んだのと同じように病院送りにできるわよ。アンタが逆らったり、裏切ったりしないうちはあいつを苦しめないであげる。もし反するようなことをしたら・・・わかってるわよね?』

 

クルシーナにそう忠告されているかすみ。カスミーナが少しでも歯向かうような素振りを見せたら、のどかを再び苦しめると言われているかすみは従わざるを得なかった。

 

愛しののどかを、助けるために・・・・・・。

 

かすみは改めて意を決したような表情になった後、ことえを一人にするタイミングを伺う。

 

しかし、そこに・・・・・・。

 

「っ、のどか・・・・・・」

 

そこへのどかたち4人が二人の様子を見にやってきたのだ。なぜか学校に通っていないアスミの姿もある。

 

これではことえに手を出せないばかりか、4人に見られてしまうかもしれない。それだけは避けないといけない。

 

二人はトランペットの練習をしていて、プリキュアの4人はそれを見ている。

 

この状況で、プリキュアの気を逸らせるものはないものか・・・・・・。

 

そう考えながら状況を見つめていると、プリキュアの4人がその場から離れていくのが見えた。4人はどうやら帰路についている様子。

 

プリキュアたちが離れたのを見てフードを深く被り、かすみはチャンスとばかりに飛び出して行こうとするが、その近くに別のビョーゲンズの気配が。

 

それはドクルンでも、クルシーナでもない。でも、知っている気配だ。

 

気配を探ってきょろきょろしていると、遠くにグアイワルの姿があるのを視認した。どうやら彼は、二人に目をつけている様子。

 

かすみは邪魔されると思い飛び出そうとするが、それは杞憂だった。

 

グアイワルは両腕を鳴らして、握り拳を合わせると黒い塊を出現させる。

 

「進化しろ!ナノビョーゲン!!」

 

「ナノー!」

 

そう叫びながら胸を逸らすようなポーズをするとナノビョーゲンが生み出され、青年ーーーーゆうとの持っているトランペットへと取り憑く。

 

「うあぁっ!?」

 

ゆうとはその拍子に思わずトランペットを落としてしまい、トランペットは病気に蝕まれていく。

 

「・・・!?・・・!!」

 

トランペットの中に宿るエレメントさんが病気に蝕まれていく。

 

そのエレメントさんを主体として、巨大な怪物がその姿をかたどっていく。凶悪そうな目つき、不健康そうな姿、そしてそれを模倣する様々な自然のものが姿として現れていき・・・。

 

「メガビョォォォォォーゲェェェェェン!!」

 

管楽器のような姿のメガビョーゲンが誕生した。

 

「グアイワル・・・メガビョーゲンを作り出したか・・・・・・」

 

かすみはグアイワルを見て険しい表情を浮かべる。ドクルンが生み出せると言うから生み出そうとしたが、思わぬ伏兵が入ったようだった。

 

それは自身にとって妨害になるかと思っていたが・・・・・・。

 

「っ、トランペットが!!」

 

「今は逃げないと!!」

 

ゆうとがトランペットに手を伸ばそうとするが、ことえに押される形でその場から避難していく。

 

かすみはそれを見つめると柱の上から飛び降りて、グアイワルへと近づく。

 

「グアイワル・・・・・・」

 

「ん? お前はカスミーナか・・・」

 

かすみは険しい表情でグアイワルを見つめた後、彼に背を向けると口を開いた。

 

「・・・・・・感謝する」

 

「何の話だ・・・? っておい!!」

 

かすみはそれだけ言うが、グアイワルは何のことだかわからず聞こうとするも、かすみの姿はすでに消えていた。

 

「ふん・・・まあ、いい。さらに進化しろ! メガビョーゲン!!」

 

グアイワルは気を取り直して5個のメガパーツ、前回よりも多めにメガパーツをメガビョーゲンに投入した。

 

一方、その頃・・・ゆうととことえの二人は学校から離れるように逃げ出そうとしていた。

 

キュイーン!

 

「「!?」」

 

すると、そこへフードを被ったかすみが二人の目の前に姿を現す。

 

「っ・・・誰だ!?」

 

ゆうとはことえの前に出て、かすみを警戒する。

 

「・・・・・・お前には用はない」

 

かすみはそう呟くとその場から姿を消して、一気にゆうとへと詰め寄る。

 

「っ!? うわぁぁっ!!」

 

胸倉を掴まれて投げ飛ばされ、壁へと叩きつけられるゆうと。彼はそのまま意識を失ってしまった。

 

「菅原くん!!」

 

ことえがゆうとが心配するも、彼が倒れるのを見つめていたかすみがことえの方を見る。

 

「ひっ・・・!?」

 

ことえは小さく悲鳴を上げて後ずさるも、かすみはズカズカと歩み寄って距離を詰められる。

 

ドガッ!!

 

「うっ!? あぁ・・・・・・」

 

ことえはそのままかすみに腹部を殴られ、意識を失ってしまう。そして、前のめりに倒れ、かすみがその体を受け止める。

 

「・・・・・・すまないな」

 

かすみは眉をハの字にしながらそう呟くと、ことえを肩へと担ぐ。

 

「・・・・・・・・・」

 

そして、同じく倒れているゆうとの姿を見つめた後、その場からことえと一緒に姿を消した。

 

一方、ドクルンは・・・・・・。

 

♪~、♪♪~、♪♪~♪~♪~

 

学校の音楽室の中におり、椅子の一つに座りながらチューバを吹いていた。彼女の前には譜面とその上に楽譜があり、それを見ながら音を奏でていた。

 

♪〜、♪〜、♪〜・・・・・・・・・

 

そのうちに何かを思うかのように吹くのをやめる。

 

「・・・・・・ふむ。音楽というのは退屈ね」

 

ドクルンはつまらなそうな表情で、楽譜を見つめながら呟く。

 

シュイーン!

 

と、そこへことえを連れ去ったかすみが姿を現す。

 

「・・・どうでしたか?」

 

ドクルンが彼女が現れることを察知したかのように、かすみの方を向いて声をかける。

 

「・・・上手くいった。とりあえずこの娘を連れてきた」

 

「・・・・・・孤立させろとは言いましたが、まさか連れ去ってくるとは、私の想像を遥かに超えてますねぇ」

 

「楽器で遊んでただけのお前に褒められても嬉しくない」

 

かすみは険しい表情をしながら答えると、ドクルンは不敵な笑みを浮かべながら言う。かすみはそれに不快感を覚えながらも、眠っていることえを椅子に座らせる。

 

「心外ですね。私は活き活きしているものか吟味していただけです」

 

「どうだかな・・・・・・」

 

ドクルンは皮肉の言葉に平然と返すと、かすみは険しい表情でそう呟く。

 

「メガビョーゲンを使ったのですか?」

 

「・・・いや、その前にグアイワルがいた」

 

「グアイワル・・・? 彼は何をしているのでしょうか? さっきも器の中に唐辛子を入れて煮立たせていましたが・・・まあ、いいでしょう」

 

グアイワルも出撃していたことに疑問を持つドクルン。ビョーゲンキングダムで何やらバカな実験をしていたが、思い出す価値もないので忘れることにした。

 

「・・・さてと」

 

ドクルンは椅子から立ち上がると懐からメガパーツを取り出す。それをゆっくりとことえと近づけていく。

 

「っ・・・・・・」

 

かすみはその様子に顔を顰め、ゴクリと唾を飲み込む。

 

「彼女には可哀想ですが、もう一度苦しんでもらいましょう。病気になった人間ほど、良いテラビョーゲンが生まれますからねぇ」

 

ドクルンは不敵な笑みを浮かべながら、メガパーツをことえの体へと近づけていく。そして、ことえにメガパーツが押し当てられる。

 

ズズズズズ・・・。

 

メガパーツがことえの体の中へと入っていく。すると・・・・・・。

 

ドックン!!!!

 

「っ!? うっ・・・い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ことえの目が見開かれたかと思うと、彼女の体が仰け反って悲鳴が上がる。胸から禍々しい赤いオーラが吹き出されたかと思うと、ことえは再び意識を失った。

 

彼女の顔色は悪くなっており、時折眉をピクピクと動かすだけだ。

 

「ふむ・・・私が以前メガパーツを埋めたあの少女よりは全然苦しんでますねぇ。まあ、問題はないでしょう」

 

ドクルンはことえの体がメガパーツの力に耐えきれないのではないかと懸念しつつも、そうなった時はそうなったと言わんばかりに踵を返す。

 

「・・・すまない。私には、何もできない・・・」

 

かすみはそんなことえの様子を悔しそうに顰めながらそう言った。自分だって本当はこんなことをしたくない。でも、やらなきゃ自身の大切な友達がまた苦しむことになる。だから、やるしかないんだと・・・・・・。

 

「あなたにやれることはありますよ」

 

「っ・・・!!」

 

ドクルンがそう声をかけると、かすみは顔を顰めて睨みつけた。

 

「これをちょっとお借りしましょうかねぇ」

 

彼女が触れているものは先ほど吹いていた二つのチューバだった。

 

「ふむ・・・・・・カスミーナ」

 

「・・・・・・何だ?」

 

ドクルンの声に、かすみは苛立っているような低い声で返す。

 

「このチューバのうちの一つにナノビョーゲンを打ち込んでみてください。今のならあなたならできるはずです」

 

「まだメガビョーゲンを出す気なのか!? グアイワルが出しているんだからいいだろ!?」

 

かすみはドクルンのその提案に反論する。グアイワルが足止めになっているのだから、これ以上はメガビョーゲンを出す必要はない。かすみはそう考えていたのだ。

 

ドクルンはかすみのその言葉を聞くと、笑みを消して無表情になる。

 

「・・・カスミーナ、自分の立場をお分かりで?」

 

「っ・・・・・・」

 

「あなたはビョーゲンズで、人間ではありません。人間を庇おうなんて考えているのであれば、その行いは論理的ではないのですよ。プリキュアを助けるためにビョーゲンズに入ろうだなんて、どう考えてもおかしいでしょう? 結局は苦しめる羽目になるんですから」

 

「私は・・・・・・」

 

ドクルンの低い声で言われ、かすみは言葉を詰まらせて何も言うことができない。かすみの中にはまだ地球を蝕むことに迷いがあるのだ。プリキュアを守るためにビョーゲンズの軍門に下ったが、結局それでプリキュアを苦しめては何の意味もない。何のためにビョーゲンズに入ったのかわからなくなるのだ。

 

ドクルンはその様子を見かねて、かすみへと近づくと耳に囁いた。

 

「クルシーナに忠告はされたんですよね? 歯向かったらどうなるかって・・・」

 

「っ!!」

 

かすみはその明言に目を見開く。クルシーナの忠告はドクルンにも理解されていた。つまりは逆らえば、のどかが・・・・・・。

 

「・・・内側から苦しめる方と、外側から苦しめる方、どっちがマシですか?」

 

かすみはドクルンにそう尋ねられ、思わず想像してしまう。内側、つまりは体の中・・・外側、つまりは体の外、周り・・・・・・。

 

かすみは瞑目しながら、考えてはいけないことを考えた結果・・・・・・。

 

「・・・・・・わかった」

 

かすみは目を開けてしっかりとした口調でそう言うと、覚悟を決めたのかドクルンから離れチューバの一つへと近づいていく。

 

そして・・・・・・。

 

かすみはクルシーナと同じように掌に息を吹きかけ、黒い塊を出現させる。そして、自身の前を漂うそれを掴んで何かを込めるように握ると、その手を突き出すように開く。

 

「進化しろ、ナノビョーゲン!!」

 

「ナノー・・・!」

 

かすみから生み出されたナノビョーゲンは鳴き声を上げながら、チューバへと取り憑いていく。

 

「ふふっ♪ さてと、私も・・・」

 

ドクルンは音楽室の外へと出ると、すぐに素体になりそうなものに目をつけた。それは赤い箱の中に入っているもの。

 

「ふふっ・・・♪」

 

赤い箱の中の扉を開け、中に入っている消火器を確認すると、不敵な笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ラテがぐったりしたことからビョーゲンズが現れたことを察知したプリキュアたちは学校へと引き返していた。

 

「あそこだ!!」

 

「参りましょう、みなさん!!」

 

ひなたが奥の庭にいるメガビョーゲンを発見、アスミの言葉を合図にのどかたちはそれぞれ変身アイテムを手にして構える。

 

「「「「スタート!」」」」

 

「「「「プリキュア、オペレーション!!」」」」

 

「エレメントレベル、上昇ラビ!!」

「エレメントレベル、上昇ペエ!!」

「エレメントレベル、上昇ニャ!!」

「エレメントレベル、上昇ラテ!!」

 

「「「「キュアタッチ!!」」」」

 

ラビリン、ペギタン、ニャトランがステッキの中に入ると、のどか、ちゆ、ひなたはそれぞれ花のエレメントボトル、水のエレメントボトル、光のエレメントボトルをかざしてステッキのエネルギーを上げる。

 

アスミは風のエレメントボトルをラテの首輪にはめ込む。すると、オレンジ色になっているラテの額のハートマークが神々しく光る。

 

のどかたち3人は、肉球にタッチすると、花、水、星をイメージとしたエネルギーが放出され、白衣のような形を形成され、それを身にまといピンク、水色、黄色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

そして、髪型もそれぞれをイメージをしたようなものへと変わり、のどかはピンク、ちゆは水色、ひなたは黄色へと変化する。

 

ラテとアスミは手を取り合うと、白い翼が舞い、ラテが舞ったかと思うとハートの中から白い白衣のようなものが飛び出す。

 

その白衣を身に纏い、ラテが降りてきたかと思うとハープが飛び出し、さらにアスミは紫色を基調とした衣装へと変わっていく。

 

衣装にチェンジした後、ハープを手に取り、その音色を奏でる。

 

キュン!

 

「「重なる二つの花!」」

 

「キュアグレース!」

 

「ラビ!」

 

のどかは花のプリキュア、キュアグレースに変身。

 

キュン!

 

「「交わる二つの流れ!」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

 

「ペエ!」

 

ちゆは水のプリキュア、キュアフォンテーヌに変身。

 

キュン!

 

「「溶け合う二つの光!」」

 

「キュアスパークル!」

 

「ニャ!」

 

ひなたは光のプリキュア、キュアスパークルに変身した。

 

「「時を経て繋がる、二つの風!」」

 

「キュアアース!!」

 

「ワン!」

 

アスミは風のプリキュア、キュアアースへと変身した。

 

「「「「地球をお手当て!!」」」」

 

「「「「ヒーリングっど♥プリキュア!!」」」」

 

4人はプリキュアへの変身を完了した。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

メガビョーゲンが出現したことにより、逃げ惑う学生たち。その中をプリキュアの4人はメガビョーゲンに向かって駆け出していく。

 

「うわっ、デッカ!!」

 

スパークルはまた大きく成長しているメガビョーゲンを見て驚く。

 

「アースはみんなの避難を、私たちはメガビョーゲンを!!」

 

「わかりました」

 

フォンテーヌはそう指示を伝えると、メガビョーゲンへと飛び出していく。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「メェ・・・ガァッ!!!!」

 

「ぐっ・・・きゃあぁぁ!!!」

 

フォンテーヌは蹴りを入れようとしたが、メガビョーゲンのピストンのような左手で受け止め、そのまま押し返すように吹き飛ばした。

 

「火のエレメント!!」

 

スパークルは火のエレメントボトルをステッキにセットする。

 

「はぁっ!!」

 

ステッキから火を纏った黄色い光線をメガビョーゲンに目掛けて放つ。

 

「メガビョーゲェェェェェェェ〜ン!!!!」

 

メガビョーゲンは肩に生えていたトランペットの先端を向けるとそこから音波のようなものを放ち、光線を打ち消してしまった。

 

「嘘っ!?」

 

「デカイだけじゃニャいぞ、あいつ!!」

 

「いつも通りではダメってこと!?」

 

「ビョォォォォォォォォ〜!!!!」

 

メガビョーゲンの攻撃に驚いている中、メガビョーゲンは肩の先端部分を頭上に向けると音波を発射する。すると大多数の波長のような光弾が地面へと向かって降り注ぐ。

 

フォンテーヌとスパークルは飛び上がって光弾を交わしていく。光弾は着弾して爆発を起こしていく。

 

「っ・・・!!」

 

グレースがそんな爆撃の中を駆け出し、メガビョーゲンへと向かっていく。

 

「グレース!! 危ないラビ!!」

 

「危なくても・・・動いていれば、何かきっかけが見えてくるはず!!」

 

グレースはラビリンの制止も聞かずに、爆撃を駆け抜けてメガビョーゲンへとそのまま突っ込んでいく。

 

「葉っぱのエレメント!!」

 

グレースはステッキに葉っぱのエレメントボトルをセットする。

 

「はぁっ!!」

 

「メガビョォォォ〜ゲェン!!」

 

ステッキからピンク色の光線を放つも、メガビョーゲンの肩の先端部分から放つ音波によってかき消されてしまう。

 

(っ・・・少しでも突破口を・・・!!)

 

「近づきすぎてはダメっ!!」

 

フォンテーヌが制止をかけるも、グレースは聞かずに走り続け、メガビョーゲンの足元に近づき飛び上がった。

 

キュン!

 

「キュアスーーーー」

 

肉球を一回タッチして、メガビョーゲンに向けようとしたその時だった・・・・・・。

 

「メッガ、ビョォォォォォォ!!!!」

 

ブォォォォォォォォ!!!!

 

「っ!? きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うぁぁ!?」

 

「うっ・・・!!」

 

「メガァ!?」

 

「うぉぉぉ!? な、何だ!?」

 

横からとてつもない勢いの音波が襲い、グレースは吹き飛ばされ、フォンテーヌやスパークルも顔を顰め、メガビョーゲンとグアイワルがその力に驚いた。

 

「い、一体何なの・・・!?」

 

「あのメガビョーゲンの攻撃じゃなかったよね!?」

 

フォンテーヌとスパークルは突然の攻撃に戸惑う。今の攻撃は目の前にいるメガビョーゲンの攻撃ではない。

 

「うっ・・・うぅ・・・!?」

 

グレースは倒れながらもその攻撃の正体を突き止めようと向くと、そこには・・・・・・。

 

「メガビョーゲン!?」

 

「うぇっ!? 何!? もう一体いたの!?」

 

目の前にいるメガビョーゲンとは、別のメガビョーゲンだった。そのことに驚くフォンテーヌとスパークル。

 

「邪魔だ、プリキュア。グアイワル、ここを通るぞ」

 

「通るって・・・・・・おい!?」

 

「メェェェェ・・・ガァァァァ・・・」

 

同じ管楽器のような姿のメガビョーゲンの肩の上に乗るフードの人物はそれだけつぶやくと、グアイワルが話そうとするのも聞かずに歩き去っていく。

 

「うぅ・・・あ・・・!?」

 

グレースは通り過ぎていくメガビョーゲン、その上にいるフードの人物を見てハッとした。あの姿は、会ったばかりのかすみの姿に似ていると。

 

もしかしたら・・・あの人物は・・・・・・??

 

「うっ・・・ま、待って・・・!!」

 

グレースは痛む体を起き上がらせて、メガビョーゲンを追っていく。

 

「グレース!?」

 

「どこへ行くの!?」

 

グレースは、フォンテーヌとスパークルの言葉を聞かずにメガビョーゲンの方へと駆け出していく。

 

「グレース!! 一人で無茶しちゃダメラビ!!」

 

(あの娘は・・・あのフードは・・・!?)

 

グレースは嫌な予感がしつつ、ラビリンの叫び声も聞かずに追いかけていく。

 

「・・・・・・・・・」

 

フードの人物は追いかけてくるグレースを冷徹な眼差しで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メガァ!!!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

校舎内では、消火器のような姿に黒いホースのような両腕、赤い格納庫のような両足をを持ったメガビョーゲンが暴れ、生徒たちが悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。

 

メガビョーゲンは両腕のホースから赤い液体を噴射し、校舎や木を泡だらけにして赤く蝕んでいく。

 

「ふふふ・・・まずまずね。時間稼ぎにはちょうどいいわ」

 

その様子を校舎の屋根の上から見ていたドクルンは笑みを浮かべる。

 

そして、ドクルンは隣に視線を見やる。そこには・・・・・・。

 

「うっ・・・うぅ・・・」

 

メガパーツを入れられたことえが、顔色を悪くして苦しんでいた。

 

「まるで生気がないわねぇ・・・病み上がりなのか、元々この娘は病気に強くないのか・・・」

 

ドクルンは無表情で見つめながらそう分析している。この前、小さな少女に入れた時は然程苦しんではいなかったが、この娘は病み上がりの体のせいなのか生命力が弱いように感じる。

 

「早めにメガパーツを成長させて、出したほうがいいかしら」

 

ドクルンはそう考えると、ことえの体に触れて赤いオーラを注ぎ込む。

 

「!? うっ・・・あぁ・・・ぁ・・・!」

 

ことえの目が一瞬見開かれたかと思うと苦しむような声を上げ、体を震わせ始めた。彼女の中にあるメガパーツが活性化され始めているのだ。

 

「ふふっ・・立派に育って、いいテラビョーゲンになってくださいね♪」

 

「うっ・・うぅぅぅ・・・!! うぁ・・・ぁぁ・・・!!」

 

ドクルンがそう言いながら囁くも、ことえは苦しみの声を上げながら体を震わせる。

 

「カスミーナの方は大丈夫かしら? 時間稼ぎの囮になるって言ってたけど」

 

一方で、かすみがメガビョーゲンと歩き去った方向を向きながら、ドクルンはそう呟く。

 

「・・・まあ、グアイワルも自信家のくせに、肝心なところで役に立たないこともあるしねぇ。うどの大木も使いようで、二人と二体いれば大丈夫ね」

 

ドクルンは笑みを浮かべながら、そう言ったのであった。

 

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