ヒーリングっど♥プリキュア byogen's daughter   作:早乙女

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今回はオリストになります。
前回、登場したビョーゲンズの正体とは??

オリスト書くのって大変ですね。


第98話「王子」

 

マグマに満たされた世界ーーーービョーゲンキングダム。その世界で、キングビョーゲンに収集されているクルシーナたちは、歩いて自分の父親の元に向かっていた。

 

「お父様・・・急に収集するなんて、何事なわけ?」

 

「特に大したことは起こしていないはずですが、私の育てたテラビョーゲンがここに来たのでしょうか・・・?」

 

クルシーナは不機嫌そうな表情を浮かべながら言うと、ドクルンは何かを考えるように顎に手を当てながら呟いていた。

 

「・・・私は、もう少しゲームをしていたかったの」

 

「ノンお姉ちゃんは、いっつもやってるよね~?」

 

「お前は余計なことを言わずに黙ってるの・・・!」

 

イタイノンがかったるそうに言うが、ヘバリーヌが思ったことを言うと睨んで言い返す。

 

「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

「お前は寝るか、歩くかどっちかにするの・・・!!」

 

寝ながら歩いているフーミンに、イタイノンはツッコミを入れる。

 

「寝ながら歩けるってある意味すごいわね・・・」

 

「本当に天の才能だと思いますよ。しかも、ぶつかってないし・・・」

 

クルシーナとドクルンは、驚いたような呆れたような感情でそう言った。

 

「・・・なあ、いつもこいつはそうなのか?」

 

「そうなのよ。こいつは隙さえあれば、すぐに眠れる天才ビョーゲンズなのさ・・・」

 

「・・・すごいな」

 

かすみは呆れの入った言葉で問いかけるも、クルシーナは律儀に答えるとフーミンをじっと見つめる。

 

「私も参考にしたい・・・!」

 

「いや、お前は何を言ってるの・・・?」

 

かすみの唐突な言葉に、イタイノンは呆れたような調子でツッコミを入れる。

 

「・・・やめときな。バカが移るだけよ」

 

「え・・・でも、天才なのだろう??」

 

「言葉が足らなかったわね。そいつみたいなのを、バカの天才って言うのよ」

 

「そ、そうなのか・・・??」

 

「そうなの」

 

クルシーナが不機嫌そうな表情で諭すと、かすみはきょとんしたような表情になる。訂正した言葉を言うと、かすみは目をパチクリとさせるのであった。

 

「もうそろそろ着きますよ」

 

「わかってるっての。・・・ん?」

 

ドクルンが諌めるかのようにそう言うと、クルシーナは不機嫌そうに答える。すると、何かが見えたようで顔を顰める。

 

「誰かいるわね・・・?」

 

クルシーナの目には赤い空に浮かぶお父様の顔と、彼と一人話す人影があった。

 

「こっちの任務はもう完璧さ。もう美しいくらいにねぇ」

 

「っ!!??」

 

そこにいたのは、クルシーナにとっては会いたくない人物であった。

 

「な、なんであいつがここに・・・!?」

 

クルシーナはその人物を見た途端に、激しく動揺した。その水色の肌をしている、タキシードの王子のような貴族風の衣装を身につけている人物は変な美的感覚を持っている気持ち悪いやつだからだった。

 

「どうしたんですか? クルシーナ。早くお父さんの元にいかないと・・・って、なんで歩こうとしないんですか?」

 

「前を見ればわかんでしょ!! 前を見れば!!」

 

「・・・ああ、ヒエール王子ですか」

 

クルシーナが騒ぎ立てるように言うと、ドクルンは納得したような反応をする。

 

「ねぇ~ねぇ~、お兄さんお兄さん~♪」

 

「っ!!!!」

 

すると、個人的な興味を持ったのかヘバリーヌがいの一番に駆け出して、その人物に近づいた。その様子にクルシーナはさらに動揺する。

 

「な、なんだキミは!? 気安く僕に話しかけて!! 美しさのカケラも無い!!」

 

「美しさなんかわかんないも~ん。どういうのが美しい・・・ヘバリーヌちゃんをもっと罵倒してくれることぉ~??」

 

「ええい!! あっちに行け!! 醜い!!」

 

「あぁ~ん♪ そんなに罵ってくれるなんて・・・ヘバリーヌちゃん感激~!! でも、クルシーナお姉ちゃんの方がもっと素敵だけどね~♪」

 

ドクルンがヒエールと呼ぶ青年と、ヘバリーヌはなぜか小競り合いの喧嘩をしていた。ヒエールの方が嫌悪感を露わにしていて、ヘバリーヌに対しまるでハエを追い払うかのような動作で手を動かす。

 

「クルシーナ姫・・・? っ!!」

 

ヘバリーヌがボソリと言ったヒエール。ハッとなって視界を動かすと、クルシーナの姿が映った。

 

「げっ」

 

「おお!! 何とクルシーナ姫!!」

 

「あぁん♪」

 

クルシーナが不味ったような声を出すと、ヒエールは近くにいたヘバリーヌを突き飛ばして歩み寄ってきた。

 

「いつ見てもあなたは何て清らかで美しいんでしょう!!」

 

「ふんっ!!」

 

「あぁっ・・・!!」

 

クルシーナはそう言いながら近づいてくるヒエールを蹴り飛ばす。

 

「お、おい・・・! なんで仲間を突き飛ばしたんだ・・・!?」

 

それを咎めるかすみが諭すような口調で言うと、クルシーナは不機嫌そうな表情を向ける。

 

「こいつは、ビョーゲンズのくせに美しいものや、生きてるって感じのものを愛する変態よ・・・!!」

 

クルシーナは嫌悪感を一つも隠さずにそう言い放った。

 

「そんなことをおっしゃらずに、姫・・・私たちは愛を誓い合った仲ではありませんか・・・!!」

 

「誓ってねーよ、そんなもん!! っ、ちょっと!!離せ!! この変態!!!」

 

ヒエールはすぐに立ち上がると、クルシーナを体を抱き締める。彼が嫌いなクルシーナは顔を両手で押し付けながら引き剥がそうとする。

 

「はいはい、じゃれ合うのはいいですが、お父さんの目の前ですよ・・・!!」

 

ドクルンは全く進展がなく、ドタバタし合う二人にそう注意するのであった。

 

クルシーナとヒエールが落ち着いた頃、キングビョーゲンの娘たちとヒエールは父親である彼の前に集まっていた。

 

「今日は戦力の一つとして、ヒエールに来てもらった。ダルイゼンが蝕む以外の行動をしている間、ヒエールにしてもらおうという魂胆だ」

 

「・・・それでヒーリングガーデンにいるはずのこいつが来たわけね」

 

キングビョーゲンの元に来たヒエールについて説明を受けていた。ダルイゼンと代わる戦力として、ヒーリングガーデンで任務中の彼を収集したのだ。

 

「美しいキミにも会いたくなったからね・・・♪」

 

「気持ち悪いからやめろ」

 

ヒエールの口説き文句に、クルシーナは不快感を隠さずに淡々と切り捨てた。

 

「ヒエール、任務そのものの進捗はどうなのですか? うまく行っているのですか?」

 

「・・・・・・僕は昔のことは振り返らない主義なんだ。そう言うのは醜いもののやることだからね」

 

「うまく行ってないなら、うまく行ってないって言えばいいの・・・・・・」

 

ドクルンが尋ねるとヒエールは遠い目でみるような感じで虚空を見つめ、イタイノンは呆れ気味に呟いた。

 

「でも、君たちは醜いわけでもなく、むしろ美しい!! キングビョーゲン様の娘はいつ見ても素敵だからね!!」

 

「はいはい・・・どうもありがとうございます・・・」

 

「褒めたって何も出ないの・・・」

 

ヒエールは調子のいいことを言って、ドクルンとイタイノンの双方を呆れさせている。

 

「その中でも特に美しいのはキミだよ、クルシーナ!! キミは本当にバラのように華やかで、小川のように清らかで、カナリアのさえずりのように美しい・・・・・・!!」

 

「気持ち悪いんだよ・・・・・・!!」

 

ヒエールの口説く言葉に、不快感を露わにするクルシーナ。いつ見ても気色悪いし、言動がどう聞いても気持ち悪い。それしか感じなかった。

 

「随分と・・・愉快なやつだな・・・・・・」

 

「何言ってるかわかんないなぁ〜」

 

「すぅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

かすみはその様子を呆れたように見つめ、ヘバリーヌはいつもの調子で、フーミンは眠っていたりとマイペースな反応を見せていた。

 

「ヒエールよ。これから好きにやっているダルイゼンの代わりに、地球を蝕んでもらいたい。お前には期待しているぞ・・・」

 

「おまかせください。ビョーゲンズのためにも、地球を赤く美しく染め上げて差し上げますよ」

 

「・・・・・・ふん」

 

キングビョーゲンの期待を背負って、ヒエールはそう豪語する。その様子をクルシーナは不機嫌そうに鼻を鳴らしていた。

 

「・・・クルシーナ、お前もついて行ってやれ。ヒエールの手助けをしてやるのだ」

 

「えぇぇ!? こいつと行くのぉ〜!?」

 

キングビョーゲンから発せられた思わぬ言葉に、クルシーナは動揺して指を差しながら叫ぶ。

 

「どうしたんですか? クルシーナ。あなたの婚約者ではないですかぁ。サポートをしてあげないのですか?」

 

「違うわ!! 誰が婚約者よ!!!!」

 

ドクルンがからかい半分でそう言うと、クルシーナは憤慨する。

 

「・・・イチャイチャするんだったら、他でやって欲しいの」

 

「これのどこがイチャイチャしてるって言うのよ!?」

 

イタイノンは淡々とそう言い、クルシーナはツッコミを入れる。

 

「クルシーナ・・・何か不満か・・・?」

 

「っ・・・・・・!!!!」

 

キングビョーゲンが詰め寄ると、クルシーナは険しい表情で言葉を詰まらせる。そして・・・・・・。

 

「わかった!! わかったわよ!! 行きゃいいんでしょ!! 行きゃ!!」

 

「嬉しいよ・・・! クルシーナ姫。さあ、僕と一緒に地球を美しく染め上げよう」

 

クルシーナが周りからの圧に耐えられなくてそう叫び出すと、ヒエールは承諾をもらったかのようにクルシーナの腕を掴む。

 

「あ、ちょっ・・・手を離しなさいよ!! 自分で歩けるっての!!」

 

「僕とキミはいずこへと・・・!!」

 

「意味わかんないっての!! 離せ!! はーなーせー!!!!」

 

ヒエールが引っ張りながら連れ出そうとし、クルシーナはその手を振りほどこうとする。

 

「なんというか・・・あいつを見ていると私も不快な気分になるな・・・」

 

かすみは険しい表情でヒエールを見つめながらそう言った。

 

「ちょっとカスミーナ!! お前も来るんだよ!!」

 

「わ、私もか・・・う、うわぁぁぁっ!?」

 

クルシーナの呼ぶ声にかすみは困惑するも、クルシーナが伸ばした植物のツタにグルグル巻きにされ、強引に連れて行かれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビョーゲンキングダムでそんなことが起きている頃・・・・・・のどかたちはすこやか市の山へとやってきていた。

 

「う〜ん! 気持ちいいなぁ〜!!」

 

のどかは山の展望台があるところから景色を見ながら、体を伸ばしていた。今日ののどかはいつもの私服ではなく、赤色のニット帽とキャンプ用のピンクの衣装を身につけている。

 

「のどかっち〜! テント張るの手伝ってよ〜!!」

 

「あ、は〜い!」

 

ひなたの呼ぶ声が聞こえ、のどかは返事をするとその場から歩いて戻っていく。

 

のどかが戻るとちゆとひなたの二人で作業をしていて、白いポールのようなものを布に通しているところであった。

 

「あれ? 私は何を手伝えばいいの?」

 

「のどかは手伝わなくても大丈夫よ。私とひなたでやってるから」

 

「そ、そうそう!! のどかっちはキャンプを楽しんでていいんだよ!!」

 

のどかが戸惑っていると、ちゆは優しく微笑みながらそう言い、ひなたも慌てたように言っていた。

 

「そう言いながら、ひなたは手伝わせようとしてたでしょ? 言ったじゃない、今日はのどかのために、私たちがリフレッシュできるようにするって」

 

「わ、忘れてなかったけどさ〜! このテント張るのすごい面倒臭いんだも〜ん!」

 

「文句言わないの。一緒に組み立てれば終わるはずよ」

 

「もっと楽なのあったじゃ〜ん!! 広げるだけで立つテントとか、ワンタッチで骨組みを簡単に組み立てられるテントとか・・・!!」

 

ひなたがうんざりしたようにそう言うと、ちゆが諭すように言ったが、ひなたは引き下がらずに文句を言っていた。

 

「別にいいじゃない。苦労して組み立てたほうが、その後の達成感もかなりあるはずよ」

 

「ぶぅ〜」

 

ちゆがそう利点を説明すると、ひなたは顔を膨らませながら手を動かしていた。

 

「アスミちゃんはどこに言ったの?」

 

「そういえば、アスミがいないわね・・・」

 

のどかとちゆはきょろきょろとアスミを探し始める。

 

「なんか、魚取ってくるって言って、川の方に行ったよ〜」

 

「食料はここにあるんだけど・・・・・・」

 

ひなたが呑気な声でそう言うと、ちゆは食料がいっぱい詰まったクーラーボックスを見て苦笑いをしながらそう言った。

 

今日は週末のお休みの日、のどかたちは山へとキャンプにやってきていたのだ。ビョーゲンズが起こした事件からのどかが回復し、ちゆたちが考えてくれたメニューで日頃のトレーニングも欠かさず行っている。

 

そんな頑張っているのどかのために、ひなたが日頃の疲れをリフレッシュをさせてあげようとのどかに内緒でみんなで考え、自然豊かなすこやか山でキャンプをすることになったのだ。

 

「アスミちゃんも頑張ってるんだね♪」

 

のどかは笑みを浮かべながらそう言った。

 

一方、紫色のサンバイザーをつけているそのアスミは川の前で釣竿を持ちながら構えていた。

 

「釣りとは・・・一に己の直感を感じ・・・二に魚の動きを感じ取り・・・そして、三で一気に釣り上げる・・・それが奥深い釣りの人道・・・!!」

 

アスミは瞑想しながら意味深なセリフを呟くとキリッとした目を見開き・・・・・・。

 

「ふっ・・・!!!」

 

釣竿を一気に放って、釣り針を川の中へと沈み込ませ、魚がかかるのをじっと待つ。

 

「かっこいいラビ!!」

 

「ちゆもよく見てる『釣りマスターシロー』のセリフペエ・・・!!」

 

「ワン♪」

 

ヒーリングアニマルたちはその様子を見守りながら、それぞれ口々にそう言った。

 

バチャ!! バチャバチャ!!

 

「うおぉぉ!! お魚がいっぱいいるニャ〜!!」

 

ニャトランは川の中にいる魚に興奮していて、川面を叩きながらはしゃいでいた。

 

「ニャトラン、うるさいラビ!!」

 

「お魚が逃げちゃうペエ・・・・・・」

 

釣りをしているアスミのことを気にせずに、はしゃぐニャトランに注意するラビリンとペギタン。

 

「いやぁ、なんかよぉ・・・猫の本能っていうやつ? なんか魚を見ると興奮しちまうんだよなぁ〜」

 

「卑しいことを考えてるラビ・・・」

 

ニャトランが照れ臭そうにそう言うと、ラビリンは呆れたように見ている。

 

「ラビリンたちはヒーリングアニマルラビ!! そんな卑猥なことを考えちゃダメラビ!!」

 

ラビリンがニャトランを注意するが・・・・・・。

 

「何だとー!! そういうラビリンだって、ニンジンにうつつを抜かしてんじゃないのかよ!?」

 

「ラビリンはそんなことしないラビ!! 常に地球をお手当てすることを考えてるラビ!!」

 

「どうかなー?? この前だって、なんか変なアニメにハマってたの見たぞー」

 

「そ、それは・・・ち、地球のお手当てに関係があるから見ているだけラビ!! かっこいいだなんて思ってないラビ!!」

 

「思ってんじゃねぇか!! 俺のこと言えねぇだろうが!!」

 

「ニャトランと一緒にしないで欲しいラビ!!」

 

「一緒じゃねぇかよ!!」

 

「「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」」

 

ちょっとしたことからラビリンとニャトランが口論を始めてしまい、しまいには睨み合う二人。

 

「お二人とも静かに!!!!」

 

「「っ!!??」」

 

そこへアスミの珍しく大きな声が響き、ラビリンとニャトランがビクッとして振り向いてみるとそこには険しい表情をしたアスミがこちらを見ていた。

 

「うるさくて集中ができません。静かにしていただけますか・・・??」

 

「で、でも・・・」

 

「静かにしていただけますか??」

 

「は・・・はいラビ・・・」

「は・・・はい・・・」

 

アスミは一転して怖い笑みを浮かべてそう言うと、ラビリンが言い訳をしようとしたが、彼女に威圧されて二人とも押し黙った。

 

「アスミ・・・ちょっと怖かったペエ・・・・・・」

 

ペギタンは彼女の気迫にプルプルと体を震わせていた。

 

アスミは正面を向いて目を瞑ると、魚の動きを感じるように読もうとしていた。それはまるで、自身が見ていたアニメの主人公、シローのよう・・・・・・。

 

すると周辺は静かになり、川の音と風で木の葉がそよぐ音だけが聞こえてくる。

 

アスミはその中、じっと目を瞑ってそのタイミングを伺っていた。ヒーリングアニマルたちは緊張感を持ちながらも、固唾を飲んで見守っていた。

 

木の葉がゆっくりと川へとヒラヒラと舞い落ち、飛び出す魚がぴちょんと水音を立てた、その時・・・・・・。

 

「っ!! はぁっ!!!!」

 

ザッパァァァァン!!!!

 

釣竿がぐいっと曲がり、アスミは目を見開くと釣竿を思いっきり引っ張り上げた。

 

「「おぉぉぉ!!!」」

 

「ペエ・・・!!」

 

「ウゥゥン・・・!!」

 

その気迫にラビリンとニャトランは思わず声をあげ、ペギタンとラテはすごいものを見るように見ていた。

 

ところが・・・・・・。

 

「あぁ・・・・・・」

 

釣竿を引き上げたアスミの表情はそんなにいいものではなかった。

 

「魚に逃げられてしまいました・・・・・・」

 

「「ズコー!!」」

 

アスミは何もかかっていない釣り針を見ながらそう言うと、ラビリンとニャトランは思わずコケそうになる。

 

「釣りというのは難しいものですね・・・・・・」

 

「普通にリールを巻き上げれば釣れると思うペエ・・・」

 

「えっ・・・そうなのですか・・・??」

 

アスミは何とも言えない表情をしていたが、ペギタンに指摘されて驚いたような表情になる。どうやらアニメだけの知識で得たようで、そこまでは知らなかったようである。

 

「でも、シローはあんな風に簡単に釣り上げていました」

 

「あれはアニメだからできることなんじゃねぇの・・・?」

 

「食料集めの先が思いやられるラビ・・・・・・」

 

アスミが見ていたアニメを思い出してそう言うも、ラビリンもニャトランもその様子を見て呆れたような感じになっていた。

 

「食料はちゆが用意しているはずペエ・・・でも、みんな楽しそうだから黙っておくペエ」

 

ペギタンはその様子を困ったように見ていたが、みんなは楽しそうなので言わないことにしたようである。

 

「諦めずに、もう一回釣りますよ・・・!! せいっ!!」

 

アスミは決意を秘めたかのような表情をすると、もう一度竿を振って釣り針を川の中へと放る。

 

「今度はしっかりと釣ってほしいラビ・・・!!」

 

「ワンワン♪」

 

アスミに立派な大物を手に入れてほしいと願いつつ、ヒーリングアニマルたちは彼女を見守る。

 

一方、のどかたちは・・・・・・。

 

「あぁ〜、やっと終わったぁ〜・・・・・・」

 

時間をかけながらもようやくテントを設営し終え、ひなたは座り込んでヘトヘトになっていた。

 

「まだよ、ひなた。まだバーベキューの支度が残ってるでしょ?」

 

「うぇぇ〜!! もう疲れたぁ・・・休憩しようよ〜・・・!!」

 

持ってきた食料の準備をしているちゆがそう促すと、疲れているひなたは不満を垂れる。

 

「言い出しっぺでしょ。ほら、のどかのために準備するの!!」

 

「うぅぅぅ・・・キャンプがしたいなんて言わなきゃよかったぁ・・・・・・」

 

ちゆにそう諭され、ひなたは自分が提案したことに後悔の言葉を言いつつ、彼女と一緒に食事の準備をするために立ち上がった。

 

「ひなたちゃん、お願い! ちゆちゃんたちと一緒に頑張ろうよ!! 私のためなんだよね?」

 

「っ・・・!!」

 

そんなひなたにのどかは彼女の手を取ると、キラキラした瞳でそう言った。顔が赤くなるひなただが・・・・・・。

 

「そ、そうだよ・・・あたしが提案したんだもん・・・! のどかっちのために、あたしが頑張んないとダメだし〜!! 疲れてるけど〜、もっと張り切っちゃうよ〜♪」

 

ひなたはのどかのその姿に好感を覚えたのか、急にやる気を出して走って行く。

 

「ちゆちー、あたし、カボチャ切るね。ちゆちーはバーベキューの火の準備をしてくれる?」

 

「急に元気になったわね・・・・・・えっと、炭はどこにあったかしら?」

 

ひなたはあまりの代わりように呆れながら見つつも、火の準備をしようと木炭を探し出す。

 

「ふふっ♪」

 

のどかはその様子を笑顔で見守った後、彼女たちから離れて近くの草原へと歩き出し、その場に座ると寝転がり始めた。

 

そんなのどかにまるで寄り添うかのように、風がそよいで草原の草木をなびかせる。

 

「んん〜、やっぱり気持ちいいなぁ〜♪」

 

のどかは草原の上で思いっきり体を伸ばしながらそう言った。

 

「こうやることがないと、なんかやりたくなっちゃうよね」

 

のどかは少し退屈していた。自分を気遣っているとはいえ、ちゆやひなたは手伝わなくていいと言ってくれている。でも、何もしないとなると何かをやりたくなってしまう。

 

「あ、そうだ。アスミちゃんの様子でも見に行こうかな?」

 

のどかはそう言って立ち上がると、この近くにある川へと向かうことにした。

 

茂みを掻き分けながら進んで行くと、川の流れる音が聞こえてきた。そして、アスミが釣りをしている様子と、そこにヒーリングアニマルたちがいるのが見えた。

 

「アスミちゃーん!!」

 

のどかはアスミに声をかけようとしたが・・・・・・。

 

「静かに!!」

 

「ふわぁ!? ア、アスミちゃん・・・?」

 

アスミは大きな声をあげると、のどかはビクッとして立ち止まり、困惑したような表情になる。

 

「魚釣りは静かな中で行うもの・・・大きな声を出されると集中ができません!」

 

「は・・・はぁ・・・?」

 

アスミがしっかりとした声でそう説明すると、のどかはなんともいえないような声を漏らす。

 

「アスミは今、極限の中にいるラビ・・・話しかけてはダメラビ・・・!」

 

「よ、よくわかんないけど・・・私のために食料集めをしてくれているんだよね・・・?」

 

ラビリンが真面目な顔でそういうと、のどかは戸惑いを隠さない声で言う。

 

「そのはずペエ・・・でも・・・・・・」

 

「なんか趣旨が変わっちまってるみてぇなんだよなぁ・・・」

 

ペギタンは不安そうに見ていて、ニャトランは呆れたように見つめていた。

 

「はぁっ!!!!」

 

そんな中、アスミは再び釣竿を振り上げる。すると・・・・・・。

 

「うっ・・・うぅぅぅ・・・・・・!!」

 

なぜかアスミの手元に釣り針は戻って来ず、それどころかアスミ自身が引っ張るのに苦戦している。

 

「アスミちゃん!?」

 

「どうしたんだ!?」

 

「ワンワン!!」

 

アスミの異変に気付いたのどかとニャトランが呼びかける。

 

「な、なんだか・・・竿が重くなって・・・何かに引っ張られているような・・・うっ・・・!!」

 

「っ!! 魚がかかったんだラビ!!!! アスミ!! リールを巻いて引き上げるラビ!!」

 

アスミが引っ張られる竿を必死に引っ張っていると、ラビリンは魚が釣り針にかかったことを察知して叫ぶ。

 

「っ、はい!!」

 

アスミは返事をすると釣竿についているリールを巻いて糸を引き上げようとする。

 

「うぅぅぅ・・・!!!!」

 

しかし、魚も激しく抵抗しているようで、アスミは引っ張られそうになる。

 

「アスミちゃん、頑張って!!」

 

「頑張るラビ!! アスミ!!」

 

「アスミ、頑張れ〜!!」

 

「うっ・・・くっうぅぅぅぅぅ・・・!!!!」

 

のどかやラビリン、ニャトランたちの応援を受けながら、逃げられないように必死に魚と格闘をするアスミ。

 

「うっ、うぅぅぅぅぅぅ・・・・・・!!!」

 

魚は釣り針から逃れようと必死に動き回り、アスミも顰めつつも負けじと応戦する。

 

パシャパシャ!!

 

「結構大きいラビ!!」

 

「もしかして、主を釣ってんじゃねぇのか!?」

 

川から一瞬水音を立てると魚の姿が見えた。結構、大きな鮭の姿が見えており、川の主を釣っているのではないかというくらいの大きさだ。

 

「うっ・・・うぅぅ・・・もうすぐ釣れそう、です・・・!!!」

 

アスミは手応えを感じたのかそう言い、リールを掴んで糸を巻き上げる。魚の力は相変わらず強いが、アスミも順応できるようになっていく。

 

アスミはゆっくりと慎重に糸を巻き上げ、そして・・・・・・。

 

「せいっ!!!!」

 

釣竿を思いっきり引っ張り上げ、釣り針を川から出した。

 

「ふわぁ〜!!!」

 

「ラビ・・・!!」

 

「ニャ・・・!!」

 

「ペエ・・・!!」

 

のどかたちの上空を飛ぶように出された釣り針には1メートルぐらいの鮭がかかっていた。

 

「アスミちゃん、やったね・・・!!!」

 

「ええ。根気強く釣りをしていたおかげです。みなさんの応援も♪」

 

「「ふふっ♪」」

 

のどかとアスミは互いに喜び、笑みを浮かべた。

 

「なぁーなぁー!! 早速食べようぜ!!」

 

「ニャトラン、お行儀が悪いラビ!!」

 

「しっかりと下処理しないとダメペエ・・・・・・」

 

「わかってんだよ、そんなこと!!」

 

猫の姿故なのか、魚を食べることを急かすニャトランに、ラビリンとペギタンが咎める。

 

「さあ、これをちゆたちの元へと持っていきましょう♪」

 

アスミはそう言うと魚を網の入れ物のようなものに入れる。

 

「あれ? 一匹だけでいいの?」

 

「ちょっとシローの気分を味わいたかっただけです。釣りは本当に奥深いですね♪」

 

「そうなんだ♪」

 

のどかとアスミはそんな会話をしながら、ヒーリングアニマルたちと一緒にちゆとひなたの元へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃・・・・・・ハート型の灯台の上にある人影があった。

 

「ん〜、なんて美しい町なんだろう。あの辺もこの辺も、全部僕のものにしたい気分だ」

 

そう言いながらすこやか市の街の風景を見ているのはビョーゲンズのヒエールであった。

 

「そう? アタシは何もかも不愉快な気分になるけどね・・・・・・」

 

一緒に行きたくもない奴に無理矢理連れて行かれて、不機嫌なクルシーナは同じようにすこやか市の街を見ながら、不快さを隠さずに言った。

 

「ヒエールは、美しいものが好きなのか・・・?」

 

そこへかすみがヒエールに尋ねる。

 

「当然さ。僕はヒーリングガーデンを見て、とても美しいと思った。そこからだね、僕が美しさに目覚めたのは・・・。あんなに綺麗なものを見ていると自分のものにしたくなる。だから・・・僕のものにしようと思ってね。もっと綺麗に、美しく染め上げてね♪」

 

「・・・・・・そうか」

 

ヒエールが流暢に答えると、かすみは静かにそう呟いた。

 

ヒエールはかすみの姿を見つめると何を思ったのか、彼女に近づいて片手で彼女の顎に当てるとグイッと上げさせる。

 

「でも、よく見るとキミも美しいね。まるで人間の苦しみから生まれた宝石のようだねぇ」

 

「な・・・なんだ・・・??」

 

微笑みながら答えるヒエールに、かすみが困惑していると・・・・・・。

 

ズガンッ!!!!

 

「あぁ〜・・・!」

 

彼の横からクルシーナが蹴りを食らわせて吹き飛ばす。

 

「・・・・・・アタシたちの所有物に触らないでくれる?」

 

「うぅっ・・・相変わらず、姫は素直じゃないなぁ」

 

クルシーナが不機嫌そうにそう言うと、ヒエールは埃を払いながら、むしろ喜んでいるような笑みを浮かべながらそう呟く。

 

「ちっ・・・・・・で、どうすんのよ?」

 

気障りなセリフに舌打ちをすると、クルシーナは本題に戻そうとする。

 

「ふふっ、もちろん作戦は考えているさ。そこのフードの美しいキミにも協力してもらうよ」

 

「私か・・・?」

 

ヒエールはかすみを指差しながらそう言うと、かすみは驚いたように目を開く。

 

「そうさ。キミと同じように、このすこやか市を街に染め上げるためのね・・・♪」

 

ヒエールはそう言いながら、不敵な笑みを浮かべるのであった。

 

「・・・・・・ふん」

 

その様子にクルシーナは不機嫌そうに鼻を鳴らした。はっきり言って自分たちの大事な仲間を、こいつなんかの作戦に利用されるのが気に入らない。

 

かすみはヒエールの言葉を受けて、クルシーナの方を見る。どうやら許可をもらおうとしているようだが、クルシーナは彼女の顔を見て表情を顰める。

 

「・・・・・・クルシーナ」

 

「好きにしたら? アタシは今回、やらないからね」

 

名前を呟くかすみに、クルシーナはそっぽを向きながらもそう言い放つ。

 

「では、一緒に行こうか・・・えっと・・・?」

 

「・・・・・・カスミーナだ」

 

「そうそう、カスミーナ。僕と一緒に、踊ってくれ。赤く舞う病気の上で」

 

「・・・・・・・・・」

 

ヒエールはかすみに向かってそう呟くと、かすみは彼の顔をじっと見つめていたのであった。

 

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