またこれから書いていこうと思います。
空が雷電にガンプラバトルに負けた後、空が仁に引かれて来たのは二人の通う大学の部室棟にある一室。
その部屋の表札には「ガンプラ模型部」と書かれていた。
ここまで連れてこられて改めて思い出す、さっきは勢いで雷電に勝つなんて言ったが、ガンプラバトルをやるというなら当然ガンプラを作るということだ。
しかしながら俺はガンプラを作れない、
もっと的確に言葉を選ぶなら作ろうとしないというのが正しいのかもしれないが・・・、
そんなことは些細な問題で、重要なのは俺はガンプラを作らないということだ。
「いや、今日はいいかなぁなんて・・・」
「いいからいいから、ここまで来たんだ、ちょっとだけだって!」
歯切れの悪い言葉で入るのを拒否しようとする俺の思いを知ってか知らずか仁は模型部の扉を開けた。
「お疲れ様で~す」
「お、お邪魔します・・・」
いつもそうしているであろうとわかる程手馴れた動きと挨拶と共に入っていく仁とは対照におずおずと申し訳なさそうに入る。
部室自体は思ったよりも広いものであったが中は模型部と聞いて想像するような部屋そのものであり、机の上にはニッパーやヤスリ等のプラモデルを作るための工具や塗料、エアブラシ等が置いてある。
「ん、お疲れ~」
「あ、杉本さんお疲れ様です。」
部室内では何人かが机に向かってガンプラ作りに勤しんでいたが、一人が振り返り俺たちが入ってきたことを確認して挨拶を返す、眼鏡を掛けた杉本と呼ばれた男の人は本人には失礼だろうがとてもそれっぽい人だった。
「ん~、入部希望者かな?」
「い、いやぁそういうわけでは・・・」
「実はですね・・・」
相変わらず歯切れの悪い俺の代わりに仁が事の顛末を説明する。
説明の最中に雷電 條の名前が出た瞬間何人かの腕が止まったようだったが、杉本さんは変わらぬ様子で聞いていた。
まずい、このままでは勝手に話が進んでいっていしまう。
「別に入部するって決めたわけじゃ・・・」
「春日井君だったかな?」
「は、はい?」
「詳しい話は部長が来ないとできないから、適当に寛いでいてくれ~」
何とかして話を中断させてこっちの話を聞いてもらおうとしたが、逆にこっちの言葉を中断させられてしまった、どうも杉本さんはマイペースな人のようだ。
しょうがないから部長が来るまで待って部長に自分の意を伝えることにした。
寛いでいてくれと言われたが、何をしていればよいのやらと部屋を見渡していると仁が部屋の一角で手招きしていた、ちょうど仁にも言いたいことがある。
仁が手招きしていた場所にはショーケースがあり、中に様々なガンプラが飾られている。
「ここにはこの部で作られたガンプラの中でも完成度が高いって認められたものが飾られているんだぜ」
「ふーん、お前が作ったものがあったりするのか?」
「ない!」
自慢げに言うから一体でもあるのかと思ったよ、調子のいいやつめ・・・
しかしながら仁の言うとおり、ショーケースの中のガンプラはとても出来がよく、素人の自分にも解るぐらい丁寧に作られている。
「大体な、この模型部にしたって俺は入部するなんて一言も言ってないぞ。」
「でもガンプラバトルをやるならガンプラが必要不可欠だぜ?」
「それはそうだけど・・・」
ショーケースのガンプラを一通り見終わり、仁に文句を言っていると近くの机上においてあるGP01、ガンダム試作1号機のガンプラが目に留まる。
俺はそれに惹かれるように近づき、思わず手に取った。
そのGP01はショーケースに飾ってあるのとは遜色無いくらいに手が込んでる物であり、手の入れ所が徹底して違ってる、スカートアーマー裏のモールドの追加などは最低限に抑えている反面、関節をいじって稼動域を広げるような改造が随所に施されており、言うなれば飾るガンプラというより動かすガンプラといった風だ。
「これは誰が・・・?」
「僕が作ったガンプラだよ。」
声のした方を振り向くとこの部屋には少し不釣合いな、清涼感のある人がいた、さっきまでは部室内にいなかった人だ。
「あ、部長お疲れ様です。」
「この人が・・・」
「ああ、ガンプラ模型部部長の浦川 浩輔だ、よろしく。」
仁いわくこの人、浦川さんが部長らしい。
浦川さんは雰囲気に違わず礼儀正しく自己紹介をして右手を出してきた、握手を求めているのだろう。
「ど、どうも、春日井 空です。」
「さて春日井君、詳しい話は杉本から聞いたよ。」
出された手を握り返すと浦河さんは満足そうに頷き、本題を切り出した。
「まずは君の意見を聞きたい。」
浦川さんは一呼吸置いて続けた、
「君はこのサークルに入るつもりはあるかい?」
とてもシンプルに、本質だけの質問だった。
正直いって入りたいか入りたくないかと言えば半々といったところだ、ガンプラを作らないがそれは興味がないというわけではない、むしろ人並以上にはあるつもりだ、それでもガンプラを作りたいという気持ちは全く起きなかった。
そんな感情がない交ぜになった結果出た言葉はなんとも情けないものであった。
「いや、俺なんかガンプラ作ったことないですし・・・」
まず質問の答えにすらなっていなかった。
空の言葉を聞き、浩輔は続けるように言った
「しかし、ガンプラに興味がないわけではないようだが?」
「えっ!?」
空は心底びっくりした、まるで心を覗かれたように思っていることを口にされたからである、
「ふふ、ガンプラに興味のないものが人のガンプラのスカートアーマー裏なんか見ないだろう?」
机の上に置かれたGP01を見ながら浦川さんは言った、あの動作からでもそれだけのことがわかるのか・・・
「だけど、何かの理由で作っていないといったところか。」
会ってから10分も経っていないのに自分の心情のほとんどを言い当てられた、とても洞察力やカンの鋭い人だ、単に自分がわかりやすいのかもしれないが・・・
空が驚愕して絶句しているので、浩輔は言葉を続けた、
「個人的には部員が増えることは歓迎したいのだが強制するわけにもいかない、だけど君自身答えに迷っているようなら・・・」
そう言うと浦川さんはGP01を手に取った、
「ガンプラバトルで答えを決めようじゃないか!」
まさかの発言にさらに絶句する、さらに浦川さんは言葉をつづけた、
「雷電條に勝ちたいんだろう?なら俺に躓いてもいられないぞ。」
先ほどまでとはうってかわって真面目な表情で語りかけてきた。
そう、ゲーセンで確かに感じたあの悔しさを払拭するために雷電に勝ちたいと言ったんだ、その気持ちに嘘はない。
浩輔の言葉にリベンジの覚悟を思い出した空は顔を上げた、
「・・わかりました、やりましょう。」
決意を新たにした空を見て浩輔は満足そうに頷き、部室内の端に置いてあるバトルシステムを起動させる。
「バトルシステムまでおいてあるんですか・・・」
バトルシステムは普通、ゲーセンだったりおもちゃ屋、量販店などに置いてあるものであり、大学のそれも1サークルが所有しているのは稀だ。
「いやぁうちの顧問が研究用にって言って持ってきたを貸してもらってるのさ。」
どうやらその顧問はバトルシステムを貸してもらえるほどPPSE社とコネを持っているらしい
「」